東大×生成AIシンポジウム

更新日:令和5年7月4日 総理の一日

 令和5年7月4日、岸田総理は、都内で開催された東大×生成AIシンポジウム「生成AIが切り拓(ひら)く未来と日本の展望」に出席しました。

 総理は、祝辞で次のように述べました。

「皆さんこんにちは。御紹介にあずかりました、内閣総理大臣の岸田文雄です。
 今日は、この東大×生成AIシンポジウム、お招きにあずかりましたこと、心から厚く御礼申し上げます。また、この後パネルディスカッションなどに、政府の関係者も参加させていただきます。心から御礼を申し上げます。

 本日のテーマであります、生成AI(人工知能)の技術の進歩のスピード、誠にこのスピードの速さに驚かされます。こうしたシンポジウム、会合、私も動画や映像を通じて御挨拶させていただくことも随分多いわけですが、最近はこの映像や動画で参加させていただきますと、本当に、岸田文雄だろうか、実は、フェイク動画ではないかと、ふと思ってしまうぐらい、この分野の技術の進歩は目まぐるしいわけであります。今日はリアルでの出場ですので、そういった心配はないわけでありますが、生成AI、本当に世界に大きな衝撃を与えています。インターネットに匹敵する技術革新である、こういったことを仰る方も多くいらっしゃいます。

 文献調査や問合せ対応など、業務の効率化にも大いに活用することができるでしょう。また、本日のシンポジウム、これから17時まで予定されているということですが、こうしたシンポジウム、終了した直後に、議論の概要が、日本語と英語で出来上がっている、こういったことであれば、大変便利なことでありましょう。また、医学分野においては、新薬の創出や、新たな医療手法の開発など、生成AIが活用されることが期待されています。多くの可能性や夢を皆さんが語っておられます。

 一方、生成AIは、先ほども申し上げたように、自然な会話や、本物と見分けがつかないような画像を、容易に作り出すことができるがゆえに、フェイク情報による社会の混乱を生んでしまうのではないか、こういった懸念も指摘されています。さらには著作権の侵害、プライバシーの保護に対する懸念、こういった指摘もあります。

 私は、この4月に、Chat GPTを開発したオープンAI社のサム・アルトマンCEOとお会いいたしました。G7の首脳の中で、最も早い面会であったそうですが、その際に私が申し上げたことは、AIには、ポテンシャルとリスクの両面がある。そのバランスを取りながら、社会の中でどう活(い)かすか、これを考えていく、こういったことでありました。

 また、東京大学を始めとする若手研究者の方々と車座対話というのをやらせていただいて、生成AIがいかに革新的か、具体的にどうやってAI活用を進めていくのか、などについて、お話をお伺いしました。中でも、AIを巡る国際ルールについて、G7議長国を務める日本が果たす役割は大きい、という期待の声も頂きました。

 こうした声を踏まえて、今年5月に、私が議長を務めたG7広島サミットでは、我々が共有する民主的価値に沿った、信頼できるAIというビジョンにおいて合意いたしました。特に生成AIに関しては、私から広島AIプロセスを提案し、担当閣僚の下で速やかに議論し、本年中に結果を出してもらうこととなりました。日本が主導して、まさに今、国際ルール作りが動いています。

 生成AIを巡っては、規制が必要か否か、の二者択一ではなくして、各国それぞれの事情に応じて、様々な意見がまだら模様となっている、これが現実です。しかも、技術の変化が速いために、舵(かじ)取りは極めて難しいのですが、これからAIと共存していくに当たって、世界の人々にとって、必要不可欠なことは何か、これを考えていくことが重要であると考えています。
 OECD(経済協力開発機構)などマルチステークホルダーの議論を重視し、同時に、各国の文化や法体系等の違いも尊重しつつ、信頼できるAIの実現のために、必要不可欠な共通の原則、これを取りまとめていきたいと思います。

 生成AIが話題となって以降、日本政府は、AI戦略会議とAI戦略チームを速やかに立ち上げ、精力的に議論を続けてきました。

 重点事項としてまず挙げたいのは、日本自身のAI開発力の強化です。AIは、様々な産業分野での活用が期待されていますが、裏返して言えば、一定程度、AIを開発する力を持たなければ、多くの産業で競争力を一気に失う恐れもある、ということだと思います。

 日本のAI開発力は、現時点で、世界と比較して、決して高くはない、こう言わざるをえません。しかし、生成AIは、今、革命の初期段階であり、原理の解明、新たなモデルの開発など、まだまだやることがたくさんあると言われています。

 今年の春、東京大学の入学式で、先ほど動画で御挨拶された藤井総長は、ノースイースタン大学のジョセフ・アウン学長の著書を引用されて、「AIやロボット技術の進化した時代の大学教育では、創造性を育む基盤として、経験学習が重要である、そして、大学が力を注ぐべきなのは、こうした学習の場をつくること、それを学生の皆さんに主体的に活用してもらいたい」このように仰ったと伺っています。

 生成AIの鍵を握るのは、計算資源と良質なデータです。政府としては、日本の研究者やスタートアップ向けに、計算基盤やデータを提供する場をつくり、日本の技術力の向上、新たな産業創出につなげていきたいと考えています。AIビジネスに果敢に挑戦するスタートアップや若手事業家をコンペ方式で募り、日本でAIの開発に思う存分取り組んでいただけるような事業の企画、といったアイディアも出ています。優れた技術や資本を持つ日本企業と、スタートアップなどが、それぞれ切磋琢磨しつつ、日本のAI開発力を底上げできるよう、しっかりサポートしていきたいと考えています。

 国際ルールと整合的な形で、様々なリスク対応を具体化し、AIの信頼性・透明性を高めていくこと、これも重要です。

 AIの開発者(注)、提供者、利用者向けに、個人情報保護法などの現行法令や、AIに関する総務省・経産省が定めるガイドラインの遵守と必要な情報の開示などを、呼びかけていきます。
昨日、村井英樹総理補佐官から、大規模なAI開発事業者に対して、協力要請をさせていただきました。
同時に、現行のガイドラインを、生成AIの普及を踏まえて、見直していきます。また、学校等の教育現場における生成AIの取扱いについても、まもなく新たなガイドラインを公表することを予定しています。

 AIという新たな技術による懸念に対し、リスクを抑制するような技術を生み出していく努力も重要です。例えば、AIによる不適切な出力を抑制するようなアプリの開発は、大学やスタートアップにも取り組んでいただきたいテーマです。

 過去のインターネットの歴史を振り返っても、有害コンテンツのフィルタリング、ウイルス除去ソフトウェアなどの技術が登場し、安全な利用をサポートしてきました。
こうした安全を支える技術が、AIの分野でも開発され、AI提供者、利用者の双方で、導入されていく、こうしたことも期待しています。

 本日は、私の考える、生成AIに関する当面の政府方針、開発力の強化、リスクへの対応と、大学やスタートアップなどに期待することを中心に、お話しさせていただきましたが、今回のシンポジウムは、この後、日本のAIの第一人者と言える方々による議論が続くと聞いております。後に歴史を振り返ったとき、本日のシンポジウムが生成AIにとって一つの転機になったと評価されるような、歴史的なシンポジウムになることを心から期待しております。あわせてお集まりの皆さんの活躍、これを祈念申し上げて、私の御挨拶とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。」

 (注)「開発力」と発言しましたが、正しくは「開発者」です。

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