ALPS処理水の海洋放出についての会見

更新日:令和5年8月21日 総理の演説・記者会見など

【岸田総理冒頭発言】
 まず、私の方から、冒頭発言をさせていただきます。本日、坂本全漁連(全国漁業協同組合連合会)会長を始め、漁連の皆様方とお目にかかり、率直な意見交換をさせていただきました。本日のやりとりを踏まえ、明日朝、関係閣僚会議を開催し、政府全体で、安全性の確保や風評対策の取組状況について改めて確認し、東京電力によるALPS(多核種除去設備)処理水の放出の具体的な日程を決定することといたします。そして、この機会を捉えて、今回のALPS処理水の海洋放出に関しまして、必要性と経緯について一言申し上げます。
 2011年の東京電力福島第一原発の事故の後、政府はずっと、「福島の復興なくして日本の再生なし」を旗印に掲げ、被災地の復興を最優先課題として取り組んでまいりました。福島の生活と生業(なりわい)を取り戻し、復興を遂げていくために絶対に先送りできない課題が、福島第一(原発)の事故炉の着実な廃炉です。世界にも例のない事故炉の廃炉を数十年かけて手順を追って着実に実施していく。リスクを最小にするため、安全性を極限まで追求した慎重な廃棄物処理を行っていく。デブリの取り出しと保管のため、様々な技術開発、そのための教育訓練、そうした息の長い廃炉プロセスの前提となる不可欠のステップが、今回のALPS処理水の海洋放出です。
 なぜ、ALPS処理水の放出が廃炉のために不可欠なのか。まず、福島第一事故炉のプールには、今なお、1,000体の使用済み核燃料があります。これらを事故炉の建屋から安全なところに移さなければなりません。そのためのスペースをどこに造るのか。また、事故炉で溶けてしまった燃料棒の残骸、いわゆるデブリを取り出し、保管するためのスペースをどこに造るのか。さらには、デブリ取り出しのためにも、様々な技術開発と新たな機器の操作のための教育訓練スペースが必要ともなります。現在でも、毎日、事故炉に流れ込む100トンの地下水や雨水、過去12年間、この水を処理し、タンクに貯(た)め、今や1,000基以上のタンクが林立しています。福島第一(原発)の廃炉プロセスを更に着実に進めるために、必要なスペースを造る余地がなくなっています。こうした状況を打開するため、廃炉の前提となるALPS処理水の処分を避けて通ることはできません。
 6年以上にわたる専門家による真摯な検討を踏まえて、2021年4月に安全性の確保と風評対策の徹底を前提に、2年程度後をめどに海洋放出するとの基本方針を決定いたしました。そして本年1月には、放出時期について、春から夏頃を見込むという方針をお示しいたしました。7月にはIAEA(国際原子力機関)の包括報告書が公表され、私自身、グロッシー事務局長から報告書を直接受け取り、科学的根拠に基づく内容を説明いただきました。IAEAは、放出中、放出後についても継続的にレビューを実施する予定で、日本政府としてもしっかりと対応してまいります。
 また、昨日、私自身が福島第一原発を訪問し、安全性確保に万全を期す取組状況について、この目で確かめ、直接報告を受けるとともに、私から東京電力の経営陣に対し、責任と覚悟を持って長期にわたり万全の対応を採るよう指示をいたしました。基本方針の決定以降、政府を挙げて国内外において、丁寧に説明・発信を行ってまいりました。日本やIAEAの取組に対し、国際社会の理解も進んでいると認識しています。それとともに、風評対策と、そして生業継続対策について、しっかりと講じてまいります。
 本日、全漁連の代表の皆様と直接お会いし、安全と安心の両面から風評対策と生業継続について、政府の姿勢と対応について、御指摘・御要望を頂戴するとともに、理解は進んでいる、こうした声も頂きました。重く受け止め、引き続き、漁業者との意思疎通を継続的に行っていくことが何よりも重要であり、関係者でフォローアップする場を設け、政府を挙げて寄り添った対応を行ってまいります。冒頭申し上げたとおり、明日、朝、関係閣僚会議を開催し、政府全体で安全性の確保と風評対策の取組状況及び今後の取組について確認し、東京電力によるALPS処理水の放出の具体的な日程を決定することといたします。冒頭、私から以上です。

(今後必要な政府の取組及び漁業者へのフォローアップ体制発足の見通しについて)

 まず、本日の全漁連の皆様との会談におきまして、全漁連の坂本会長からは、安全性への理解は深まった。また科学的な安全性のみならず、社会的な安心を確保し、漁業者が、子供、孫まで安心して漁業を継続できるよう、漁業者に寄り添い、今後数十年の長期にわたろうとも、国の全責任において、必要な対策を講じ続けることを求める。さらには、廃炉と生業継続は漁業者の思いであり、政府の漁業者の生業継続に寄り添った政府の姿勢と安全性を含めた対応について、我々の理解は進んでいると考えている。こういった声を頂きました。さらに、福島県漁連からは、廃炉が安全に完遂し、その時点で福島の漁業の生業の継続が確認されて理解は完了する。漁業者と国、東電は、復興と廃炉という共通目標に向けて、現時点において、同じ方向を向いて進んでいる。さらには、約束は現時点で果たされていないが、破られたとは考えていない。こうした声を頂きました。こういった声を受けた上で、政府としては廃炉の完遂と漁業の生業の継続が実現できるよう、責任を持って安全性確保、風評対策、生業継続支援に政府を挙げて努力を続けていかなければならない、このように考え、取組を引き続き進めていきたいと考えています。
 そして、御質問のフォローアップ体制についてですが、本日、これまで説明してきた政府の取組について、フォローアップの体制を作ってもらいたいという御要望を全漁連の皆様方から頂きました。その要望をしっかり受け止めて、具体的にどのようなフォローアップ体制を作るのか、それについて、私が前面に立って体制を構築していきたいと考えております。

(ALPS処理水の放出時期について)

 その点については、先ほど申し上げたように、明日会議を開いて、そこで政府としての様々な取組、これを確認した上で具体的な日程を決定すると申し上げております。明日、そういった会議を開いて決定すると申し上げている中で、今、何か日程について、具体的に申し上げること、これは控えなければならないと思っています。明日、会議において、政府の取組を確認することと合わせて、具体的な日程、確定したいと考えています。

(放出時期として9月以降も選択肢に含まれるかについて)

 現在、様々な調整を行っておりますし、そして、明日会議において、具体的な日程を決定したいと思っております。

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