「21世紀日本の構想」懇談会
「21世紀日本の構想」懇談会
第4分科会「美しい国土と安全な社会」第5回会合 議事概要
- 1.日時: 1999年8月5日(木) 15:00〜18:00
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- 2.場所: 総理府 特別会議室
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- 3.出席者
(分科会メンバー、敬称略)
- 川勝平太分科会座長、浅海保、天野曄、伊東豊雄、植田和弘、如月小春、浜美枝、本間正明、松井孝典
- (懇談会メンバー、敬称略)
- 河合隼雄懇談会座長、五百旗頭真、山本正
4.会議の模様
(1)植田和弘、本間正明、浅海保各氏から問題提起が行われ、それをもとに討議が行われた。
(2)植田和弘氏からは、ルーラルアメニティと地域経済について、概要以下のようなプレゼンテーションが行われた。
- エコロジー、アメニティというものには価格がつけられないが、これらは価値物であるという認識を持ち、自然との付き合いかたを変えることが必要である。
- 20世紀は都市化が進んだが、昔のまま残っている自然や人間が作り上げてきた農村景観などは、ルーラルアメニティをシステムとして上手に活用しなければ、保全できない。
- ルーラルアメニティは、@公共財的な要素をもつ、A分割できない、B地域固有性をもつ、Cその地域での産品の消費は、その地域をイメージさせる、などの性格をもっている。これまでの地域開発は、こうした性格を活用するのではなく、工場誘致型の画一的なものであった。
- バブル経済の崩壊、グローバル化の進展により、企業を誘致するより、地域の持っているものを再発見する、いわば「地域の宝さがし」による内発的発展の重要性が再認識されてきている。
- 地域産業間、公と民、都市と農村などの連携により、相互に「活かしあう関係」を構築し、地域固有財を活かした地域の開発を進めることが必要である。
植田氏のプレゼンテーションに対して、以下のような議論があった。
- 貨幣価値に換算できない価値を認識することは、「富」の再定義を行うことといえる。地域には、正にそうした価値のある「宝」が多くある。
- 日本人は、本来は狭い空間の中で上手にものを利用することに長けていたが、近代化の過程でそれを見失ってしまった。
- 地域は自立することが必要であるが、相互依存が進展している状況では、自立は孤立ではなく、自立を支援する横のネットワークが重要である。
- 地域の「宝」をどのように定量化していくのかが問題である。
- 新農業基本法では「農村」という文化的要素を盛り込んでおり、この考え方を国民一人一人がよく認識することが必要である。
- 日本では古来からそれぞれの土地に「魂」があったが、近代化はその「魂」を殺した。地域の宝を認識するためには、数量化することも重要だが、数量化すると均一化してしまう恐れも認識しなければならない。
- 地域の独自性を発揮した開発には、先見性に富む発想とそれを支える人が重要である。
- 地域の発展には経済発展に解消し得ない、文化的な発展もある。
(3)次に、本間正明氏より、概要以下のようなプレゼンテーションが行われた。
- わが国の戦後の成長は、円安による好調な外需、アジアの経済成長の遅れなどの外生的な要因に支えられたものであり、この結果、経済的安全性を重視した、外から得られたものを国民に分配する「分配経済国家」となった。
- 「分配経済国家」では、富を中央に集積し、「あまねく公平」に富を分配する中央集権型システムが合理的であった。社会資本整備は地域に対する所得保障となり、これが没個性的な地域開発、過大な地方に比べて脆弱な都市といった問題を生じさせている。
- 国民の側においては、「公共性を実現するのは政府の役割である」といった無関心な態度が広がり、政府の側では、利益誘導、縦割り行政、貧しさを強調し国に依存する地方などの問題が重なり、システム全体にモラルハザードが発生している。
- これまでの日本型のシステムを変更し、多様化する価値観を調整するガバナンス、意思決定システムを再構築することが必要である。垂直型、閉鎖型、相対型、一元的なシステムから、水平型、解放型、一般型、多元的なものに変革し、行政の情報の非対称性を解消して双方向性のコミュニケーションを確保していくことが必要である。
- 情報化、高齢化、グローバル化などの外的条件の変化に対応し、公会計やコストベネフィット分析などの数量化による意思決定の妥当性の評価、高齢化による世代間のニーズの分離の調整、個性により内に価値を見出した成長などが求められている。
- 決め手となるのは「人財」であり、地域を担う人のコミットが重要である。集権と分権を使い分け、水平型ネットワーク社会を構築し、事前の安全に偏重せず、事後の安全をどのように保つかを考えていくことが必要である。
本間氏のプレゼンテーションに対して、以下のような議論があった。
- 公共性にコミットする人材作りが重要であるが、日本人を変えるのは極めて難しい。
- 日本人は外からの衝撃がないと変われないといわれるが、今は内から変わっていくことが求められている。
- 戦後、日本人は、絶対安全でないとすべて政府の責任にしてしまうようになってしまった。日本人は、歴史的にも地震、大水などにタフであったはずであり、もう一度危険を真正面から見つめるタフさが求められている。
- 日本人は戦後になって組織の中に入って安全を求めたが、財政の状況やグローバル化の流れを考えると、自前で、効率的に、オリジナリティーをもって対応することが求められている。
- 自然、人間が作り出した二次的な自然、都市それぞれに独自の価値があり、そうした「公共的なもの」を担う人が重要である。
- 国が一律にグランドデザインを描くのは平板であり、多様な美しさ実現し、その集積としての国土を考えるべきである。
(4)次に、浅海氏より、概要以下のようなプレゼンテーションが行われた。
- 21世紀においては、これまでにない、以下のような新たなリスクが発生してきている。
@科学技術の進展などにより、「もの」と「人」との新たな関係が開放されることに 伴うリスク
A他人に対する無関心など、「人」と「人」との関係におけるリスク
B多様なものを社会に取り込み活力を維持していくことに伴うリスク
- このうち、「人」と「人」との関係を開放する情報化のリスクを考えると、21世紀は治安と安全保障が融合する時代といえる。
- 情報化には、2000年問題、ハッカーや不正アクセス、プライバシーの侵害、ネットワークを利用した恐喝、サイバーテロリズム、さらには情報戦争までのリスクを伴っている。米国では情報戦こそが将来の戦争の勝敗を決するとして、情報戦を中心にすえたRMA(軍事革命)の研究が加速されている。
- これらのリスクは、@リスクを避けるために情報化をしないという選択はとれないこと、A変化のスピードが極めて早いので対応が間に合わないこと、Bネットワーク化の中で国家としてどのような役割を果たせるかという問題を発生させること、C国の問題であった安全保障が一般国民の問題になってきたこと、といったこれまでにない問題点を有している。
- こうした状況に対処するためには、以下の点が重要である。
@まず、完全な安全はないという認識をもつこと。その上で、自分の情報をどのよう にコントロールし、また様々な情報にさらされる中で自分を見失わない強い個人を 築くこと。
A相対的な存在となっている国家の存在をもう一度問い直し、国としても必要な対処 をすること。
B常に将来を考え、戦略的な思考をとること。米国にとっては冷戦は「終わった」も のではなく、「終わらせた」ものであり、わが国も主体的な思考が求められている。
浅海氏のプレゼンテーションに対して、以下のような議論があった。
- インターネットはシステムとしては中央集権型になっており、米国を経由するようになっている。だからといってこれに参加しないわけにはいかない。
- グローバル化の中でいかに固有の価値を見直すかが問われている。
- 流されてきた情報にどのように対処するかが重要であり、情報のメリットと社会的な安全を具体的にどのようにバランスさせるかが重要である。
- 情報は国際公共財であり、国家間でそのルールをつくることが重要である。
- 強い個人が重要といわれるが、日本人は本当に強い個人になれるのだろうか。むしろ弱い個人を前提として社会のシステムを構築すべきではないか。
5.本日の議論を含めたこれまでの議論を踏まえ、合宿において第4分科会から全体会合 に報告する主要論点をまとめることとなった。
(文責:「21世紀日本の構想」懇談会担当室。なお、速報のため事後修正の可能性があります。)