各分科会の報告と総理のスピーチの両方を踏まえまして、私が考える重要な論点を挙げてみます。ただし、ここで述べます重要論点というのは、最終報告の柱として決めたというわけではありませんで、これまでの論議から浮かんできたポイントを一応整理してみたというレベルのものです。これらを最終報告にどのように反映させていくかは、秋から再開する懇談会で更に検討していきたいと思っています。
まず、全ての分科会の重要論点として共通していたことに、今という時代に対する認識が非常に厳しいことが挙げられます。日本が今までやってきた方法は、ある面では非常な成功を導いてきたけれども、その方法をこれからも続けることはできない、ここで歴史的な、抜本的な変革が必要であるという認識です。
そのためには、日本基準からも脱却しなくてはならない。これまでの日本は外から来たものを上手に使って変革してきたが、これからは、むしろ内発的に変革を行っていかねばならない。その変革は大変なことであって、その難しさ、重要性は、皆さん共通に表現されていると思います。
それを前提に、では、どういうことが求めれているかということですが、共通して指摘されていることは、やはり「個の確立」ということです。個人が個を確立して、その確立した個をネットワークの中に入れていかねばならない。そういうネットワークをつくっていく個というものは、自立、自助、自己責任、使命感というものをしっかり持って、参画していく、コミットしていく、そういうことのできる個であって、そうした個を確立するということであります。こうしたことは、今までの日本の文化の中ではなかったことではないかと私は思います。
そういうふうに確立した個が、単なる個人として生きるのではなくて、他と関連していくわけですから、そこで共通して出てきましたのが「新しいガバナンスの創出」です。ガバナンスという言葉を日本語にしたいというので随分話し合いました。今のところまだカタカナのままですが、「分散協調」とか、あるいは「参加型共治」という言葉が使われている分科会もあります。1つの中心が全部を支配するというのではなくて、分散されながらもお互いが協調し、それぞれが参加していく。その時に、共に治めると言いますか、参加型共治というふうなことをやらねばならない。勿論、それをするものは個であります。個が公の仕事にコミットしていくガバナンスというものをどうつくり上げていくか、これが第2点目であります。
第3点目は、人づくりの問題です。「先駆性」を活かしていくような人の輩出と、そういう人々を尊重する気風が大事である。そして、その前提には、「やり直しがきく社会の確立」が大事である。今までの日本では、一度失敗するとなかなか元へ帰ってこられない。そうすると、どうしても失敗を恐れるので、皆と同じことをするという風潮が強かった。それを、失敗を恐れずに先駆的に行く、そして、やり直しもきく、という社会に変えていくのだということです。そして、アイデアを非常に大切にして、先駆的なアイデアを持った人を皆で尊重していこうということです。
ただ、ここで留意しなければいけないのは、そこから失敗して落ちていく人もあるという意味で、セーフティーネットも必要だということです。しかし、また、セーフティー・ネットばかり言うと、死に物狂いでやらない傾向も生じる。セーフティー・ネットはないのだと思うくらいに、コミットメントというものも必要となる。結局、個と公ということのバランスも同じだと思いますが、一見矛盾するようなものをどのようにバランスさせていくかが課題としてあります。
第4番目は、「新しい価値の創造」ということで、簡単にはお金に換算できないような価値、つまり、文化的な活動や、新しい豊かさ、潤いというものです。今までは余りは顧られなかったものの中に、新しい価値を見出していこうということです。
これらの要件の中で一番大切なものは、「個の確立」と、「公の創出」ということだと思います。今までの日本人は官と私の対立軸を考え、官だけが公を担うように思い込んできましたが、個を確立して、個も公を創出するということが決定的に重要だと考えます。
今述べましたようなことは、総理がスピーチで、「責任ある先覚者」とか「かかわり合いの問い直し」などと言われ、変革の実現には、「共に担っていく熱意」や「コミットメントの重要性」を言われたことと通じるものであると思います。
こういうことにコミットしていかねばならない国民の一人として、私自身、自分の意識を改革していかなくてはならないと強く思います。どのような制度をつくるかということも非常に大事ですが、日本人として、今までの生き方を改革してつくり直す、発想を転換するという相当な決意が要るのではないかと感じます。
近年の日本は不況もあったりして大変ですが、ここで、もう一度、みんなが本気で改革に取り組んで頑張れば、日本に底力はあるし、21世紀にはまた大きい可能性が開けてくると思っています。