「21世紀日本の構想」懇談会
第3回「21世紀日本の構想」懇談会
議事概要
- 1.日時 平成11年10月19日(火) 18:30−20:30
2.場所 内閣総理大臣官邸大食堂
3.出席者
- (メンバー50音順、敬称略)
浅海保、天野曄、五百旗頭真、翁百合、河合隼雄、川勝平太、小林陽太郎、佐々木毅、船橋洋一、星野昌子、山崎正和、山本正
(政府)
小渕内閣総理大臣、額賀内閣官房副長官、松谷内閣官房副長官、古川内閣官房副長官
- 4.議題等
- (1)海外意見交換報告
- (2)分科会における検討状況等について
5.会議の模様
(1)議題に先立ち、河合座長から、概要以下の挨拶があった。
- これまで各分科会において精力的に討論を行っていただいているが、ユニークな発想の意見も多く感銘を受けている。今後、ピッチを上げて、報告書に取りまとめていきたい。
- また、総理のご配慮で、懇談会・分科会のメンバーが海外に赴き、意見交換をさせていただいたが、海外の日本に対する期待・関心が高かったことが大変印象深く、参考となることが多くあった。
(2)次に、海外意見交換について、参加メンバーから概要下記の報告があった。
- 懇談会の代表メンバーと第1分科会のメンバーで、10月3日から14日まで、シンガポール、ワシントン、ソウル、 北京の4ヶ所において、政府要人および識者と意見交換を行った。その目的は、当懇談会の主要論点を説明してコメントや助言を得ることと、先方が描いている21世紀の構想を聞かせてもらい、参考とするためである。欧州でも、11月に同様の意見交換の機会をもつことを計画している。
- シンガポールでは、リー・クワンユー上級相、ゴー・チョクトン首相、テオ・チーヒーン教育相と個別に懇談したほか、東南アジア各地のシンクタンク、大学などから識者にお集まりいただいてワークショップをもった。
- ワシントンでは、大統領府や政府、議員の有力政策スタッフ、シンクタンク・大学・財団などの政策研究者、ジャーナリストなどにお集まりいただき、国際関係と国内変化の二つのテーマに分けてワークショップをもった。
- ソウルでは、金鍾泌国務総理との懇談、大統領の諮問委員会である政策企画委員会の金泰東委員長や新千年紀準備委員会の李御寧委員長との会談のほか、経済・政治の専門家との意見交換、国際関係専門家とのワークショップを行った。
- 北京では、鄭必堅・中央党校副校長との懇談のほか、政府の政策スタッフとの意見交換や、中国社会科学院・中国現代国際関係研究所・中国戦略研究基金会・北京大学・清華大学・改革開放論壇などの研究者と経済・国際情勢・日中関係・安全保障などに関してワークショップを重ねた。
- 今回の意見交換で得られた主要なコメントや助言は次の通りであった。
- 【全体的なコメント】
- 〇「懇談会」の報告書の内容を注視している。日本が今後どういう方向に向かおうとしているのかは、海外にとっても重要な関心事である。日本は、90年代の経済停滞を克服し、再び先端を切り開く国になると確信している。グローバリゼーションのプラス面、マイナス面をどのように選別し、どのように乗り切り、自らを再活性化し、アジアのためにもフロンティアを切り開くか、それは単に日本の課題だけでなく、アジア、世界にとっても大いに啓示を与えることになるだろう。
- 〇小渕首相が「懇談会」の内容を議論する過程でメンバーを海外に派遣し、外国の識者と意見交換し、外の視点を考慮に入れるよう指示されたことを高く評価する。こうした長期的な国家構想の検討にまで国際的、多角的、協調的な観点から光を当てようとのやり方そのものに新しい日本を感じる。最終報告書を全文英語で発表するとのことだが、こうした姿勢を歓迎する。国際社会の中の信頼醸成措置を高めるには「内容」もさることながら、説明責任と透明性を骨格とした「プロセス」そのものが重要である。それだけに、こうした姿勢は日本に対する世界の信頼醸成を高める上でも寄与するだろう。
- 【内容全般に関するコメント】
- 〇これからの100年間は、これまでの1000年間よりもはるかに大きな変化を見るだろう。そうした世界を動かすスピードの革命的な変化や歴史的なパースペクティブを視野に入れて、青写真を描いてほしい。
- 〇この種の国家構想の提示においては、根底にアップビートの調子が流れていることが必要だ。国民に前向きに取り組もうとのやる気を起こさせることが大切だ。
- 〇問題意識はよく分かる。方向性もくっきり出ている。また、分析も確かなものを感じる。しかし、提言をもう少し具体的に示して欲しい。
- 〇欧米に対する「キャッチ・アップ」に代わる次の日本のキャッチ・フレーズは何か。
- 〇日本のこれまでの各種の青写真では、目に見える(タンジブル)目標を掲げることが多かった。しかし、これからの日本にとって重要なことは目に見えない(インタンジブル)な目標だと思う。つまりアイデアだ。それを期待している。
- 〇日本を変革したいという気持ちはよく伝わるが、一体、なぜ、そうまでして、ここまで根本的な変化を求めようとするのか。そこの説明が足りない。こうやって変革したとして、一体日本は世界に対して何をするのか。
- 〇これだけの改革をどうやって行うのか。その筋道はどうなのか。その変化を成し遂げるのに必要な政策決定方式の変化やインスティテューション(機構)の改編はどうするつもりか。日本は変化に対して頑強に抵抗する社会だと見られているので、変化のプロセスを相当説得的に示さないことには、外国からは理解されにくだろう。かつての前川レポートと同じように見られてしまう危険がある。
- 〇日本は戦後、廃墟の中からすばらしい経済、社会、文化を築き上げてきた。そこから生み出された多くの優れたものを世界は共有したいと願っている。にもかかわらず、日本は十分に信頼されていないし、理解されていないと感じる。その原因の一つは日本人のグローバル・リテラシー(世界識字標準)が十分でないためだと思う。これは同じアジア人の一人として大変残念である。例えば、日本は英語を第二の言語とすることはできないのか。
- 〇こうした新たな国家目標を国家計画のような形で打ち出すことへは国民の反発もありえようから、国民の間に議論を巻き起こすため、との姿勢が大事だ。
- 【個別問題に対するコメント】
- 〇21世紀は中国が経済、軍事両面で世界的なパワーとなるだろう。そうした世界史的な大変革期に日本はどう国力を建て直し、どのような役割を世界、アジアで果たそうとするのか。ビッグ・ピクチャーの中での国益定義をしてほしい。
- 〇米国防長官の諮問機関「21世紀米国家安全保障委員会」がこのほど発表した「新世界がやってくる 21世紀の米国安全保障」報告書では、2025年のグローバルGDPの中での日本の比率は現在のほぼ半分の4.5%に低下し、逆に中国は同14%へと上昇すると予測している。日本衰退のパーセプションが世界中に急速に広まっている。これを逆転させる構想を示して欲しい。
- 〇日本はグローバル・パワーであることを止めるのか。外交・安全保障だけでなく、国際経済・通商や国際通貨面での役割を知りたい。国連、G7を将来どうするのか、その中での日本の国益はどう定義するのか、どのような役割を取るつもりか。
- 〇1980年代後半から世界経済を激変させている「自由貿易協定・地域・圏」をアジア地域でも推進すべきだ。日本はそれを引っ張って欲しい。日本・アセアン自由貿易協定を結ぼうではないか。
- 〇世界の外交において官民ともに政策討議に加わるトラック・ツゥー方式が冷戦後、激増してきたが、この中で日本は立ち遅れ始めたと感じる。日本にはそうした政策討議を英語で行える研究者が他と比べてはるかに少ない。また、政府から独立して政策研究を行うシンクタンクやそれを支援する資金力と専門分野のバックアップ体制を持った財団が少ない。このままでは、アジアの声はオーストラリア、韓国、シンガポールなどに代表されてしまう。シンクタンクや財団の思い切った強化策を打ち出すべきだ。世界の有力財団のネットワークと共同作業が世界の世論形成に多大な影響を与えることになるだろう。日本もぜひ、こうした共同作業面で積極的な役割を果たして欲しい。
- 〇移民政策はどうするつもりか。世界中の優れた人材をいつ、どこからでも、来てもらえるような移民政策をつくらないと、グローバリゼーションの時代に遅れを取るが、一方で、文化的に馴染む社会の人々を優先させたいとも思っている。この点は各国共通に模索しているところなので、日本の考えと政策方向をぜひ知りたい。
- 〇米国の強さは、世界中から才能を吸引するだけの魅力を持っていることだ。ジョセフ・ナイのいうソフト・パワーの強さだと思う。「人が国家を選ぶ」人材の世界化の時代に、日本はどのような人材育成策を打ち出すのか、各分野での世界に冠たるセンター・オブ・エクセレンスをどうやってつくるのか。
- 〇米国では高校卒の就業者でも生涯6、7回、職を変わるようになってきた。大卒はもっと多いし、これからますます多くなるだろう。Perm Temp(Permanent Temporary)、つまり、“常にしばらく就職”などという言葉まで生まれている。米国はいずれ“全国民フリー・エージェント化”していくだろう。こうした動きはいずれ他の先進諸国にも広がっていくと思う。このような労働市場の巨大な変化を日本はどう乗り切っていこうとしているのか。
- 〇歴史問題を日本自らの手で、解決することをぜひ、お願いする。過去をお詫びし続けていく外交はもう必要ない。日本自らがこの問題にケリをつけるべきだ。どういうやり方でやるのか、それは日本の国民が自らに課して考えることで、他国から注文をつけるべき事柄ではない。今後、アジアは日本をこれまで以上に必要とする。日本と外交、経済、その他で共同作業を行い、関係を深めたいのに、この問題が壁になって十分に地域協力できないのはアジアにとっても損失だ。アジア経済危機の際にももっと共同作業が出来たはずだし、平和維持活動ももっと共にできるはずだ。このままでは下手すると日本とアジアは共倒れになってしまう。
同時に、歴史問題の解決のためには近隣諸国との実務的な協調、共同作業が必要だ。それをしていく中で、未来志向の営為の中でこの問題をともに乗り越えていくことができると思う。自由貿易協定などもそうした一環として位置づけることもできると思う。
(3)次に、各分科会の検討状況についてメンバーからそれぞれ報告があり、意見交換が行われた。
河合座長より、今後の報告書の作成について以下のようなコメントがあった。
- 報告書は国民的な議論を喚起するための素材を提供するものとして位置づける。国が報告書の形で結論を示すのではなく、これを契機にさらに議論が高まっていくようなものとする。
- 日本が直面しているジレンマを明確に描き、問題点を端的に指摘する。
- 解答や方向性の描けないものは、その実態を率直に記述する。
- 理念だけでなく、中長期的な政策提言も盛り込む。
(4)最後に、11月中旬に、総理が若者を官邸に招いて対話集会を行う予定であることがメンバーに報告された。
(文責:「21世紀日本の構想」懇談会担当室。なお、速報のため事後修正の可能性があります。)