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首相官邸 Prime Minister of Japan and His Cabinet
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平成25年4月3日第47回 国家公務員合同初任研修開講式 安倍内閣総理大臣訓示

 本日、国家公務員合同初任研修の開講にあたり、国家公務員としての歩みを踏み出す皆さんに、一言申し上げます。

 日本は、今、復興の遅れに加え、経済、外交、教育など、様々な面で、国家的な危機に直面しています。こうした危機に立ち向かうのは、並大抵の仕事ではありません。

 しかし、そのような厳しい任務が待っていることを承知の上で、むしろ、国家国民のために尽くすとの強い使命感と覚悟を持って、この世界に飛び込んでくれた皆さんに、まず、心より歓迎の意を表したいと思います。

 危機の時代にあって、皆さんに求められることとは、何か?

 それは、「政策のプロ」となることです。

 「うわべの議論」や、「従来のやり方」ではない、「次元を超えた」発想がなければ、現下の国家的な危機は、乗り越えられません。

 さらに、世界に目を転じれば、大競争の時代に突入しています。人材や企業の方が、国を選ぶ時代です。世界と渡り合っていくために、皆さんに求められる「専門性」や「手腕」は、生半可なものではありません。

 政策の企画立案を担う皆さんが、その政策分野の「スペシャリスト」でなければ、国益を守ることはできないのです。

 昔、ある古池に、一羽のアヒルが住んでいました。

 このアヒルは、「自分は、飛ぶことも、泳ぐことも、歩くことも、歌うこともできる。世の中に鳥獣は多いが、自分ほど多芸のものはいない。」と、いつも周囲に自慢していたそうです。

 ある日、池にやってきた馬に、いつものように自慢したところ、馬は、「なるほど、あなたは多芸だが、泳ぎは鵜のように上手ではない。飛ぶといってもカモやカモメには及ばない。歩く姿は醜く、鳴く声はほかの鳥より聞き苦しい。」と応えました。

 アヒルは、この言葉に大いに恥じ入って、こそこそとその場から逃げていった。そんな昔話があります。

 日本には、ややもすると、何でもできる「ジェネラリスト」がよいと考える傾向があります。うわべを取り繕うことが得意な、単に「器用」な人間を、「優秀」だと考えがちです。

 しかし、「中途半端な芸がたくさんあるよりも、一芸に秀でている方がよい。」という、この「アヒルの戒め」を、皆さんには、胸に刻んでほしいと思います。

 それぞれの政策分野で、誰にも負けない「プロの行政官」を目指し、「自分はアヒルになってはいないか?」と常に自問しながら、厳しく「研鑽」を積み重ねてほしいと思います。

 そして、皆さんの力を、国家的な危機を突破するために、遺憾なく発揮してほしいと願います。

 さて、幕末の時代も、日本は、国家的な危機に直面していました。欧米列強の圧力が高まる中で、徳川幕府が滅び、明治新政府の努力によって、何とか危機を乗り越えることができました。

 「徳川幕府は、なぜ滅んだのか」かつて幕府の役人でもあった福地源一郎は、維新の後、その真相を書き残そうと努力しました。その著書「幕府衰亡論」の中で、福地は、小栗上野介の次の言葉を引用しています。

 「一言を以て 国を亡ぼすべきもの ありや、
 『どうかなろう』と云う一言、これなり。
  幕府が滅亡したるは この一言なり」

 国家の一大事に直面しながらも、「どうにかなるだろう」という根拠のない期待を持ち続け、決断できず、行動を起こせなかった、当時の徳川幕府の状況が、ありのままに描かれています。

 課題の先送り。そして、責任の回避。「自分がやらなくても、どうにかなる」という気持ちを戒める、この言葉は、150年を経た現代の私たちにも、大きな警鐘を鳴らしています。

 目の前にある課題に対して、「どうにかなる」と他人任せにするのではなく、皆さんが、自らの力で、「どうにかする」という意志を持って、能動的に、あらゆる事にあたってほしいと願います。

 昭和のプロ野球を代表する名選手であった長嶋茂雄さんは、サードが守備位置でしたが、時には、ショートはおろか、セカンドの守備範囲にまで、果敢にボールを拾いに行った、とも語り継がれています。

 「これは、他人の仕事だ」と、自らの「守備範囲」を小さく定義して、目の前の課題から逃げるのではなく、むしろ「自分の仕事」として、積極的に取り組んでください。

 課題を発見すれば、他省庁の仕事のように思えることでも、その省庁にも協力を得るよう努めながら、主体的に取り組む。それこそが、「縦割りの打破」です。

 政治家との関係も同様です。「決めるのは政治家だ」とか「政治家に言われたことだけをやっていればよい」など、「政治主導」という言葉を隠れ蓑にして、自らの「守備範囲」を小さくしてはいけません。

 政治家も、皆さんたち公務員も、国家国民のために尽くす、という点では、同じです。皆さんの先輩たちも、私たち政治家と共に、天下国家を論じ、行動し、困難な課題に結果を出してきました。

 皆さんにも、その使命感と、行政のプロとしての誇りを胸に、すべては国家国民のため、自らの判断で、政策立案にあたっては積極的に提案し、現場にあっては果敢に行動してもらいたい、と思います。

 果敢に行動すれば、時には、失敗することもあるでしょう。

 しかし、失敗は、何事かにチャレンジした人にしか、訪れません。成功か失敗かという「結果」は、タイミングや運にも左右されるものです。むしろ、私は、「結果」自体よりも、チャレンジしようとする「精神」こそが、評価されるべきであると考えます。

 「何もしない」人は、「失敗」することもないでしょう。しかし、誰もチャレンジしない国には、将来の発展などあり得ません。皆さんには、失敗を恐れず、何事にもチャレンジする精神を持ち続けてほしいと願います。

 自らの信ずる政策であれば、一度や二度の失敗にへこたれることなく、実現に向けて、あくなき挑戦を続けてほしいと思います。

 「自ら反みて縮くんば、千万人と雖も吾往かん」

 この孟子の言葉を胸に、私は、これまで、常に、国家国民のためであれば、批判を恐れずに行動する、「闘う政治家」でありたいと考え、実践してきました。

 皆さんにも、国家国民のためであれば、どんなに厳しい壁にぶちあたっても、信念を貫いて行動する、「闘う公務員」になってほしいと、強く望みます。

 そうした「強さ」に加えて、最後に、これから「国民全体の奉仕者」となる皆さんには、もう一つ、忘れないでほしいものがあります。

 それは、周囲への「感謝」の気持ちです。

 皆さんが今ここにいるのは、御家族や学校の先生、地域の皆さんなど、多くの人たちの「支え」があってのことです。

 そして、皆さんは、これからの仕事においても、多くの人と交わり、助けられることになるでしょう。

 とりわけ、公務員の仕事は、最終的には、一人ひとりの国民とつながっています。自分一人がどんなに頑張っても、仕事は完結しません。多くの人たちの理解や協力がなければ、大事を成し遂げることはできないのです。

 常に周囲への感謝の気持ちを持ちながら、仕事にあたる。その先に、真に国民目線での仕事があり、国家国民のために尽くす公務員の姿があると、私は信じています。

 これからの日本は、皆さんの双肩にかかっています。

 皆さんには、その自信と誇りを胸に、存分に力を発揮してほしいと、心から祈念して、私の訓示といたします。


平成25年4月3日
内閣総理大臣
安倍 晋三

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