独立行政法人会計基準研究会

独立行政法人会計基準研究会

第十回議事録

1 日時:平成11年12月16日(木)14:00〜16:00
 
2 場所:中央合同庁舎第4号館4階共用特別第2会議室
 
3 出席者:研究会メンバー5名他
 
4 議題:
(1)退職手当に係る引当金等について
(2)各省庁からの質問等に関する論点について
(3)キャッシュ・フロー計算書(仮称)の論点について

5会議経過

(1)座長の開会宣言の後、事務局から退職手当に係る引当金について資料1に沿って説明があり、議論が行われた。

 まず、資料中の1(4)の「根拠規定を置く」の意味について質問があり、事務局から、引当金処理が会計情報操作に利用されることを防止するため、それぞれの独立行政法人に特有の引当金を設ける場合には、主務省令で少なくともそのような引当金を置く旨を明定することが必要で、その認識方法についても可能であれば明示することが望ましいと考えているとの説明があった。関連して、そもそも独立行政法人における引当金について何らかの定義を設けることが必要ではないか、また定義するにしても退職給付のように企業会計原則の例外となるものがあるのにうまく定義できるのか、との質問があり、事務局から、独立行政法人会計基準においても企業会計原則注解18をベースに何らかの引当金の定義を設けることになろう、退職手当に係る引当金については確かに企業会計原則と異なる認識方法をとることになるが、それが直ちに注解18にいう引当金の定義から外れることにはならないのではないか、との説明があった。さらに、一般企業とは制度が異なる退職手当に係る引当金を損益計算書に計上すること自体について十分な検討が必要だとの意見と、内容としてはよく整理されているので論理的な裏付けをもう少し検討して欲しい、退職給付引当金についても減価償却と同じように損益計算に行くものと行かないものを分けるルールと理論を示せば不安は払拭されるのではないか、という意見があった。また、現行の企業会計原則注解18そのものが損益計算を中心としていた時代の記述なので、資産や負債も同様に重視する現代の企業会計原則の姿からみると若干の問題がある、新退職給付会計についても注解18からは説明し得ない部分があるという意見もあった。

 続いて、新退職給付会計は民間企業の長期的な活動を想定したものであり、15年間で会計基準変更差異を償却することとされているなど、3〜5年の中期計画で動く独立行政法人は根本的な性格が異なる、また、退職給付のみ金利によって現在価値を計算するというのも独立行政法人の世界では異質である、職員の勤続期間の通算も民間企業とは異なるので、これらを考えるなら新退職給付会計を独立行政法人に直接適用するのには無理がある、加えて、資料の案のように中期計画想定外の負担分を別途計算するようなことは独立行政法人の処理能力では不可能と思われるので、なるべく簡明な方法によるべきではないかとの意見があった。これに関連して、退職給付をどうするかはともかくとして、一般的には公的機関であってもコスト計算に金利情報を加味することは重要であるとの指摘があり、事務局から、今回の基準においても金利情報を無視しているわけではなく、例えば行政コスト計算の中では資本コストとして金利要素が必要になるものと考えているとの説明があった。

 さらに、民間企業が退職給付引当金を積むのは退職給付に給与の後払いという性格があるからであり、今回のように職員が法人外に異動したら法人に費用負担がなくなるというような場合には、当該退職給付債務が当期に発生していると言えるか疑問である、また、資料の2(4)イ)後段のような方法は理論的には優れているが実務が極めて煩雑でまず実行不可能だろう、ディスクローズの優先順位を考えるなら、退職給付のように支払能力に最終的な国のバックアップのあるものについて多大なコストを費やしてまで表示する優先度は低く、行政コスト計算の中で大づかみの負債規模が開示できれば足りるのではないか、資料の2(4)エ)の「望ましい」という記述には疑問がある、との意見があった。

(2)次に、各省庁からの質問について、事務局から資料2に沿って説明があり、議論が行われた。

 セグメント情報の開示範囲や区分経理との関係に関する質問に対しては、一般企業ではセグメント情報で何を開示するかは経営者に委ねられており、経営者自らがアナリストなどのニーズを考慮して判断することになるが、売上や利益といったフローの情報を開示することから始めれば十分であるとの意見があった。また、区分経理は行政上の必要性から来ているが、セグメント情報はアカウンタビリティーの要請から来ているものである、例えば病院などは個々の病院ごとの情報が必要かもしれず、どのような場合にセグメント情報を開示すべきかアカウンタビリティーと手間との兼ね合いでガイドラインも必要ではないか、との意見があった。また、セグメント情報の開示は法人内部の予算配分の問題にもリンクするものでもあるので、どの程度まで踏み込んで開示すべきかは非常に重要な問題であるとの指摘があった。

 事務局から、開示すべき情報の範囲やセグメントの区切り方に関して引き続き議論を求めたところ、各法人の規模が様々であるので、企業会計のように一律に何%以上占めるものを一つのセグメントとすると却って無意味な情報になりかねない、開示すべき情報に関しては、セグメント情報の開示の局面ではフローの情報が中心でストックは却ってわかりにくいが、区分経理ではストック、フローともに開示が必要で貸借対照表や損益計算書も別々に作成するのではないか、との意見があった。次いで、企業でも最初は大括りのセグメントからスタートして徐々に区分を増やして対応しているので、独立行政法人も当初はセグメント数が限られてもやむを得ないのではないかとの意見があった。続いて、セグメントの区切り方について、自己収入のある業務とない業務がある場合には管理会計上からも区切って整理する必要があるのではないかとの指摘があった。また、従前の複数の組織を統合するような法人については旧組織ごとの情報提供が必要だろう、一般的にも、定量的というよりむしろ定性的に、部署が独立していたり予算の使用権限が分けられている場合にはセグメントを区切るべきである、提供すべき情報としては、収入、損益とトータルの資産規模が望ましく、利益については共通費や金利を差し引く前の情報だけでもいろいろな分析が可能になる、との指摘があった。

 さらに、開示のセグメントと管理のセグメントは別に考えるべきで、開示しないにせよ管理会計上では細かいセグメント情報が必要なのではないかとの意見や、財務情報としての開示と開示請求に基づく開示とを分け、財務情報として開示するのは一覧性を重視して大まかなもので良いのではないかという意見と、そうはいっても最低限開示すべきものについて何らかの基準が必要なのではないかとの指摘があった。

 繰延資産に関する質問に対しては、企業の世界では、上場会社は証券取引法のルールに基づき健全決算のため研究開発費を一括費用処理しているが、非上場の商法法人では一定期間に繰り延べたりする処理が行われている、独立行政法人は所要の収入が認められるような構造であるので繰延資産は認めないべきであり、運営費交付金が特に繰り延べを想定して交付されているようなケースはともかく、原則としては発生した費用は一括して経費処理すべきだろう、との意見があった。また、運営費交付金に頼るような独立行政法人の場合には、収益を獲得するためのものという費用本来の性格がそもそも弱いので、次期以降の収益に対応させるべき費用である繰延資産の概念も不要だと考えられる、自己収入がある場合には繰り延べもあり得るが、その場合に上場会社のようにするか商法の処理方法によるかは議論する必要がある、との意見があった。さらに、あえて言えば債券発行経費を繰延資産にする可能性が考えられるが、費用負担の面から考えるとやはり繰り延べる必要はなく、結局のところ繰延資産はないのではないか、との意見があった。

 運営費交付金の収益化に関する質問に対しては、当期の業績が正確に測定できるよう繰延の範囲を決めることになろうが、具体的な進行基準については、多種多様な業務があるので各省でその業務に最も見合ったルールを作ってもらうしかないとの意見があった。

 各省庁からのオブザーバー出席者からの意見として、統合法人であっても類似業務を融合させて再編成するケースもあるので、セグメントを新業務分類ごとにするケースも認められるのではないかという意見と、退職給付については移行前の勤務分に係る退職給付も労使交渉で決まることになるのかとの質問があった。これに対して事務局から、国家公務員退職手当法が適用される法人については、退職時の給与が労使交渉で決まるので、それが結果的に退職給付に反映されることになるとの説明があった。

(3)続いて、事務局から資料3に沿ってキャッシュ・フロー計算書(仮称)の論点について説明があり、議論が行われた。

 まず、直接法か間接法かの選択に関して、連結決算を基本とする民間企業の世界ではもはや間接法しか考えられない状態である、独立行政法人の場合は国庫からまとまった資金が一度に入るので直接法に利点があることもわかるが、間接法の簡便性も捨て難いので、両者をミックスするような手法が考えられないか、他方、利息等の処理の選択に関しては資料の案どおり業務活動で統一してよいだろう、との意見があった。

 次に、独立行政法人が子会社を持つことはないのかとの質問があり、事務局から、独立行政法人が子会社に出資する際には法律にその旨の規定を置くことになっているが、今回法案化した法人でこのような規定を置いたものはないので子会社は持てない、仮に今後の法改正等で子会社を持つようになれば当然に連結決算の対象になるだろう、との説明があった。続いて、複式簿記の導入後も直接法で行く方が簡便なのかはやや疑問がある、また、運営費交付金収入は財務活動ではなく業務活動に分類すべきではないかとも思うが、自己収入や運営費交付金の会計処理、殊にこれらの資金で償却資産を購入した場合の処理と密接に絡むので、これらと一緒に判断する必要があるとの意見があった。

(4)最後に、次回会合を平成12年1月24日(月)午前9時30分から2時間程度の予定で開催することを決め、散会した。

以上
(文責中央省庁等改革推進本部事務局)
−速報のため事後修正の可能性あり−