子どもの未来と世界について考える懇談会

(第4回)議事録

内閣外政審議室

子どもの未来と世界について考える懇談会(第4回)議事次第
日 時  平成10年7月27日(月) 15:00 〜16:30
 
場 所  内閣総理大臣官邸 大食堂
議事次第
1.開 会
2.意見発表
3.内閣総理大臣挨拶
4.意見交換
5.閉 会

【本間座長】 それでは、定刻になりました。本日出席御予定の委員の皆様お揃いになりましたので、ただいまから子どもの未来と世界について考える懇談会、第4回目の会合を開催いたします。各委員の皆様お暑い中、御多用中、御都合を差し繰って御出席賜りましてありがとうございます。

 本日は、橋本総理大臣が午後4時にこちらにお見えくださると伺っておりますので、よろしくお願いいたします。

 最初に、委員の皆様に御相談し、御了承を得たいことがあります。第1点は最終的にこの懇談会の提言を取りまとめたいと思っておりますが、その提言取りまとめのためのワーキンググループを設置したいという御相談であります。せっかく多種多彩な経験と見識をお持ちの委員に多数お集まりいただいておりますので、その懇談会での御発言を中心に、皆様のお考えを提言として取りまとめたい。それで、その素案を検討するためにワーキンググループをつくってはどうかと思います。これにつきましては、座長代理の二瓶先生とも御相談いたしまして、河合委員、里中委員、二瓶委員、そして私の4名とさせていただきたいと思っております。よろしゅうございますでしょうか。それでは今お名前を挙げた方々には御内諾を得たことにしまして進めてさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それから、第2点でございます。それは今、申しました提言、これからこういうふうなことをしてみたらどうかという案を書いてお出しいただきたいということであります。これまでの懇談会の議論を踏まえまして、子どもたちが豊かな心で国際社会に通用する日本人になって国際交流を実践していく。そのために何が必要か。また、国際交流の新しい在り方とか環境づくりということについて、それぞれのお考えがあるかと思います。一応、用紙をお手元に差し上げているかと思いますけれども、形式、枚数は言いませんので御自由に、1行でもよろしいし、大論文は大変ですが、御自由な長さで御自由にお書きいただいて結構なんですが、書面でいただきたいということでございます。

 これも大変恐縮なんですが、8月21日金曜日までにちょうだいしたい。

 これを基にしまして、ワーキンググループで提言の言わば骨子案といいますか、原案をつくりまして、それを皆様にごらんいただくための素案とし、懇談会において皆様と御一緒に提言を取りまとめたいというふうな手順でございます。

 以上のような手順で進むことについて御賛同を得られますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)
【本間座長】 恐縮でございますが、これまたこのとおりでよろしいということでございましたら、そうさせていただきます。ありがとうございました。

 そうしますと、ワーキンググループをいつ始めるかということで、今日始めたいと思っておりますので、本日の委員会終了後、ワーキンググループの第1回会合を続けて開きたいと思いますので、先ほどお名前を挙げさせていただいた委員の方々はよろしくお願いします。

 第3点は、海外視察調査のための用意を事務的にしているということでございますので、8月ないし9月に懇談会を代表いたしまして、大変僣越でございますが、私と座長代理の二瓶先生とで、私がアメリカに行き、二瓶先生がヨーロッパのしかるべきところと、最終的にまだ固まっていない部分がございますが、視察調査を予定しております。ねらいとしては子ども関係の文化施設の視察、関係者との面談、懇談を計画しておりまして、事務的な相談を進めているところでございますが、後日、その結果につきまして報告をさせていただきます。

 以上、3点でございます。

 それでは、本日の懇談に入りたいと存じます。今回は、事務局の方から前もって御案内申し上げたと思いますが、3人の委員に意見発表をお願いしております。まず里中委員に「漫画文化と国際交流」、それからニコル委員には「生活の原点と感謝」、感謝というのはありがとうという感謝です。松井委員には「自然科学者が見た『子どもの未来と世界』」というテーマでそれぞれ、これだけのテーマで言いにくいんですが10分程度でお話しいただき、その後、議論に入りたいということでございます。

 お手元に論点整理というメモがお配りしてあるかと思います。これは、これまでの審議の中でいただいた御意見を論点ごとに事務局の方で整理したものであります。既に論点を絞ってお話しくださったものを更に絞ってしまったという恨みがあるかもしれませんが、御参考にしていただければということでございます。

 それでは、まず最初に里中委員からお願いいたします。資料をいただいているのでしたか。

【里中委員】 皆様の机の上に、ドラえもんと書いてあるのとセーラームーンというのがございます。10分しか時間がありませんので、よく分からないところはこれを持ち帰っていただいて、後で何となくこういう話だったのかなということを確認していただければよろしいと思います。では、すぐ始めます。

 大変乱暴な言い方ですが今、世界の子どもたちをつなぐ一つの要素として日本の漫画というものがあります。漫画、この場合アニメーションも含めて言わせていただきますけれども、日本発の漫画、そしてアニメーションが世界の子どもたちの共通体験になりつつあります。

 本日は、参考までに今、世界で大変人気のあります代表的な作品を2つ紹介させていただきたくて持ってまいりましたが、その1つがドラえもんです。まずドラえもんと、そしてセーラームーン。ドラえもんがどちらかというと男の子向け、美少女戦士セーラームーンというのは女の子向けとして日本の雑誌の中で最初に発表されたものですが、現実にはこれは男の子、女の子関係なく共通のヒーロー、ヒロインとして存在しております。

 ここに至るまでに、大変大ざっぱにお話ししますと、日本の漫画というものは日本人が意識して世界に広めたのではなくて、自然発生的に世界に定着したという珍しい文化だと私たちは思っています。御存じのように、アジア各国では著作権を無視とまでは言いませんが、余り著作権というものの存在を知らない国が昔は多かったものですから、最初は海賊版で日本の漫画が広まっていきました。日本に近い地域から先に広まったように思います。何せ海賊版ですので、出だしがあやふやで申し訳ないのですけれども、ざっと25年ぐらい前から読まれ始めたように認識しております。日本で人気のある漫画作品が知らない間に、まず近いところと申しましたのは韓国、香港、台湾辺りです。その辺りで、現地の言葉に翻訳されて、そして画面の中に登場してくる日本的要素、つまり着物を着ていたり、日本語の看板があったりという部分は即座に書き直されまして、日本で発売されて2週間くらいで向こうの店頭に並ぶという感じでした。それがスピードアップされまして、今では日本で売り出されたら次の日ぐらいには並ぶものもあるみたいで、すばらしいパワーだなと思って感心しております。

 そういう海賊版で読まれ始めまして、最初はアジアの子どもたちも日本のものだと知らずに読んでいた訳です。それで、あっという間にインドネシア、マレーシア辺りまで広まりまして、日本での作者あるいは出版社は何も知らないうちに日本人の書いた作品がアジアの子どもたちの心をとらえていたという結果になりました。

 そして、やがて本当にこれもまた乱暴な数字で申し訳ないのですが、今から15年ぐらい前からぼちぼちと向こうの出版社ですね。もともと海賊版でもうけた出版社がきちんと日本と契約して出版しようという動きが定着してまいりまして、今ではかなりの作品がきちんとした契約の上に各国で発売されております。

 ただ、それでもアジア地域におきましては、当然まだ海賊版の方が実は多いような有様で、現地のAという出版社と契約しますと、どうもAという出版社が裏でB、C、Dに流すようなシステムが出来ているようで、最初に香港辺りからと申しましたが、結局東南アジア一帯に日本の漫画が広まった裏には、出版界を一手に握っている華僑の経済力というのがあります。

 ただ、日本人にとっては全く知らぬことでありまして、何の意識もせずに勝手に日本国内で書いていたものが世界に自然発生的に広まったという、日本発の文化としては史上初めてではないかなと私たちは思っています。

 アニメーションの方は、最初ラテン系の諸国から広まっていきまして、アニメーションというのは海賊版というのがなかなかつくれないものですから、イタリア、スペイン、メキシコ辺りのテレビ局で放送されるようになりますと、あっと言う間にヨーロッパじゅうに広まりまして、アニメーションを通じて日本の漫画作品に親しんでいったということです。

 それで、今日持ってきましたものでドラえもん海外版契約一覧というのが一番上のページにありますが、ここにも書かれてありますように、出版社あるいは藤子プロにおきましても、海賊版の出版については正確な把握が出来ていないということで、これは正確に分かっている正式契約の年月日です。ですから、これよりはるか以前からドラえもんはアジア、そして世界に広まっていったということですね。

 中にいろいろ書いてありますが、1つ面白いエピソードを紹介させていただきたいと思いまして、ページ数が打っていないんですけれども、ベトナムのドラえもん基金というのがあります。やはりベトナムで海賊版でドラえもんが大変よく売れまして、ベトナムの経済事情にするとすごいお金だと思うんですけれども、日本円にして印税相当額が2,000 万円と、これは海賊版が余りに売れて、その後になりまして支払いたいと向こうが申し出てきた数字です。

 ところが、外貨準備が不足しておりますので、それが支払えないということもあり、また、作者であります藤子F不二雄先生の方でもそのお金は要らないということで、このお金を基にして現地の子どもたちのために役立ててくれということでドラえもん基金というものをつくりました。後の方には、それらのニュースを紹介するコピーが入っています。

 そして、ドラえもん関係の最後の方のコピーは、香港とか台湾の子どもたちがドラえもんに対して年賀状を送ってくる訳です。それを何枚か紹介させていただきました。本当に日本のものですが、子どもたちにとっては国境は関係なく、日本の子どもが喜ぶところは世界じゅうの子どもも喜びますし、日本の子どもが格好いいと思うものは世界じゅうの子どもも格好いいと思う。同じ感性を持っているということを漫画によって確認出来る訳なんです。

 次に、美少女戦士セーラームーンという作品であります。これは、作品が割と歴史が浅いものですからかなり正確に数字は把握されていますが、こちらはメディアミックスという感じで漫画、アニメーション、グッズ関係、いろいろな形で大々的に販売されております。世界でも出版物だけではなくてアニメーション、その他で子どもたちに親しまれていますが、一番最初に海賊版が世界に出回ったときと違いまして、最近の顕著な例としまして、このコピーの後ろの方に、ちょっと見慣れない方には見苦しいかもしれませんが、こういう漫画のページをコピーさせていただきました。ここに、日本語で効果音ですね。雰囲気を表す音とか笑い声とか擬音が書いてある訳ですけれども、こういうものも以前はすべて現地の言葉に訳されて印刷されていたんです。

 ところが、今こういう文字はすべて日本語のままで発売されております。だから、参考までに後で時間があればお回ししようと思って、いろいろな国のいろいろな形で紹介されている雑誌を持ってきたんですけれども、どこの国の子が見てもせりふ以外の文字は今、日本語で入ってきている訳です。漫画の読まれ方としまして、みんなのヒーロー、みんなのヒロイン、つまり感情移入が出来て日本の子どもと同じように同じ感動とか同じ感想を持つという、その確認だけではなくて、それを通して日本人の物の考え方とか日本人の暮らし、あるいは日本という国に対するあこがれをかき立てる要素になっております。

 かつて、私たち戦後世代がアメリカ映画を見て、アメリカ人の物の考え方とか暮らしにあこがれたのと同じ現象が漫画を通じて世界の子どもたち、そして若者に広まっている訳なんです。

 今日取り上げましたドラえもんとセーラームーンにつきましては、世代を超えて幼児から、日本でいいますと中学生ぐらいまでをカバーしておりますが、これ以上の年代になりますと大人向けの漫画が今、多く読まれています。最初、日本人はいい年をしてどうして漫画を読むのだと、よくばかにされる要素になったんですけれども、中身を見ていただきますとこれは一つの表現形式であって、内容次第で日本人というのは漫画であろうが、小説であろうが、映画であろうが読むのだということを最近分かっていただきまして、世界の若者たちの中では今、日本に行って漫画家になろうということが一つの夢になっています。それは、ブロードウェイの舞台で成功したい、あるいはメジャーリーグで活躍したいというのと同じようなニュアンスで受け止められています。その裏には、日本がいまだに経済的に豊かであるということがあって、日本でヒット作を1つ書けば世界に通用する億万長者になれるという夢もあります。

 ですから、表面上、例えば韓国などは日本語文化は輸入禁止なんですけれども、実は政府がお金を出して日本語の漫画の本をそのまま買っておりますし、韓国人、台湾人、香港並びに中国、並びにという言い方は今は変なんですが、若者たちが修行をかねて日本にどんどん来ているという状況です。

 ですから、漫画の世界ではアジアは一体になっておりまして、アジア全体の子どもたちを漫画で勇気づけて、共通のヒーローで私たちの物の考え方の共通点を一緒に探していこうという動きになっております。

 長くなって申し訳ありませんでした。ざっとそういうことで、こういうビジュアルなものから入ってきますと大変分かりやすいですから、それを通じて日本人の悪いところも出てしまう訳で、どうして日本人はこんな考え方をするんですかと言われるときもありますけれども、いいことも悪いことも引っくるめて我が国の民族性を知っていただく。しかも、楽しく、知らず知らずのうちに分かってもらえるいい材料になっていると思っております。 一応これをお回ししますので、後で時間がありましたら読んでみてください。これはセーラームーンばかりですが、雑誌という形になっているものもあれば単行本もあります。各国語のを取り混ぜてきましたので、余った時間はないと思いますけれども、よろしかったらごらんになってください。

【本間座長】 どうもありがとうございました。大変面白いお話を10分で切らなくてはならなくて申し訳ないと思います。

 それでは、先ほどの順番で、次はニコルさん。

【ニコル委員】 10分というのはつらいですね。

【本間座長】10分は十分ではないんですけれども。

【ニコル委員】 私は17歳からイヌイットという少数民族と一緒に暮らし、もう今年で58歳ですけれども、彼らとのつながりはずっと深く持っています。

 それから、ほかの少数民族と暮らしています。ピグミー族から、それから北アメリカのインディアンとかですね。それで、教育とはどういうものか。それは、生き残るためのことを子どもたちに教えることだと思います。それが少数民族でしたら自分の家族、自分の民、もうちょっと日本みたいになりますと国までですよね。これは、生き残るためです。 では、その原点は何ですか。私はいろいろと見て、どうして3年前に日本一の少ない民族になったか。つまり、私はウェルズ系日本人ですから、日本は治安があるんです。いい社会をつくるためにはどうしても治安が必要です。私は36年前に日本に来て、すごく感動しました。割と港の近くの夜の道でも危険じゃなかった。だから、世界一治安がいい国だと思っていました。治安というものは、当然町の中だけではなくて山の中、私はエチオピアに2年いて国立公園をつくるために山賊と戦ったりいろいろしました。戦争は知らないけれども、戦場は知っています。日本は、山の中も治安がいい国だと思います。

 もう一つは、健康。いい社会には治安、もう一つは健康。でも、健康というものは人間だけではなくて、当然すべてのものの健康が必要ですね。いい社会の三角の中では、もう一つ美というものがどうしてもなくてはいけないです。美意識は、大体自分の環境から生まれてきます。私は、最初に日本にあこがれたのは14歳、柔道をやったり、今もまだ空手をやっていますけれども、日本の文化ほど自然を大事にした文化はないと思ったんです。日本の文化で治安がいい、健康がいい、美意識がある。すべて自然です。自然をずっと大事にしました。

 しかし、今、変わりつつあります。この場所でこういうことを言うのはちょっと不公平ですけれども、私は18年黒姫という小さな町に住んでいます。人口1万2,000 人。これは長野県の中で、人が住んでいるのは700 メーターから800 メーターぐらいです。水源地です。オリンピックが始まってから産業廃棄物、医療廃棄物の不法投棄が今40か所あります。そして、地元の人たちがそれを役所にアピールすると無視される。そして、どうしても私みたいなうるさい者が押しますと、そこの責任者が役所と一緒に出ます。だから、健康が荒らされているじゃないですか。医療廃棄物ですよ。どういうものか想像出来ますか。産業廃棄物の中では、我々は調べていますけれども、当然ダイオキシン、当然環境ホルモン、カドミウム、水銀などなどを水源地に流しています。役人が黙っています。

 私は、何となく裏切られているような気がしてしようがないんです。私が初めて日本に来て道場に入って先生に言われたんです。武士道の教えの中で、言葉は単純にしましたけれども、3歳の魂。子どもの魂を3つまでにつくるために、勿論、治安、健康、美しいもの、美しさの中に人間、自分以外の生き物がなくてはいけないんですよ。美しい花や蝶々か何かないとだめです。

 3つ魂、6つ言葉、言葉は大事にしないといけない。つまり、あいさつが出来る。それも、あいさつが出来る、あいさつするべき社会だったら治安のいい社会でしょう。あのおじさんはおじさんだ、怖いものではなくてただのおじさん。「おじさん、おはようございます」と言えない社会になりつつあるんです。

 それから、12手紙が書ける。「おばさん、お土産ありがとう」とか何か書ける。

 そして、15ことわり、それを教えられたんです。

 3歳魂、6つ言葉、12手紙、15ことわり、それが出来ますかと。私は5年続けてレンジャー学校で、若者に自然を教えようとしています。この5年の間で私が感じていることは、学生たちは元気がない。そして、30分以上集中出来る人が減りました。私は、いつも水をバケツいっぱい持っています。君、おれの授業で寝たら掛けるぞと、そうしますので私がいれば学生は緊張感があります。

 もう一つは、この間言いましたけれども、若い男なのに腕立て伏せが出来ない人がたくさんいる。こんなに体育の先生が多くて、どうして体が弱っているんですか。これは健康です、治安です、美意識です。水が汚されているんです。弱くなっています。

 それから、質問出来なくなっている、質問をしない。あいさつもしない。これが18歳の男の子たちです。だから、我々はこれからどうすればいいか。役人は、本当に誇りを持って安月給で国を守る人々のはずです。皆さん、そうでしょう。厚生省がそういう産業廃棄物、ごみ問題に面と向かって闘えない社会はどういう社会ですか。水が汚されています。これから水俣よりもひどい状態になるに違いないんです。私が武士道とか、そういうことを言うと、何であいつは古いんだ、新右翼じゃないかと、そのとおりかもしれません。愛国主義者の何が悪いんですか。私はこれから本当に日本の自然を守らなければ、そして自然の傷口を治さなければ子どもたちに未来はないと思います。

 それからもう一つ、私はさっき北極のことを言いました。来年4月1日からカナダで大きな自治州が出来ます。これはアラスカやテキサスよりずっと大きいです。イヌイットの自治州です、ヌナブット、新しい国になるんです。彼らは、日本との交流をすごく望んでいます。いやな戦争の経験はないです。彼らは、あなた方と同じ顔です。

 しかし、現状で若いお母さんに医者が母乳を子どもにあげないでと言っているんです。それほど北極の湖、海が汚されている。全部南からです。だから、交流がどうしても必要です。

 私は、日本のこれからの国の目的を考えてほしいです。明治時代だったら強い国をつくらなければならなかったんです。でないと、ひょっとしたら植民地にされる。強い国になりました。強い国を保つためには資源が必要です。それで、第二次世界大戦までいきました。その後は、日本は復活しましたけれども、いろいろな少数民族のところに行きますと、例えば西海岸のインディアンたち、セムシャン、ハイダ、そういう人たちは日本嫌いです。 なぜか。日本が我々の森を切ると言っているんです。それはナンセンスですよ。それは、カナダがそういう森を売ってしまうから日本が買います。しかし、そういうことも意識してほしい。少数民族だけではないんですけれども、いろいろな国の自然との交流をしてほしい。日本が一番自慢が出来ることは日本の自然だと思います。日本の自然が日本の文化をつくりました。治安、健康、美、その道に戻ってほしいです。

 済みません、うるさい赤鬼でした。10分ちょっとですね。

【本間座長】 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、松井孝典先生お願いいたします。

【松井委員】 お手元に多分レジュメが回っていると思うんですが、私は自然科学という分野の研究をしておりますので、その自然科学者から見た子どもの未来と世界、ちょっとテーマがよく分からなかったものですから、子どもの未来と世界というのを私がどう思うかということで今日お話ししたいと思います。

 最初の3つは現状認識なんです。要するに、私が現在という時代をどう見ているか。だから、子どもの未来というのがどうなるのかというのは現状認識をきちんとしないと分からないと思うので、その現状認識について考えていることを書いています。

 1つは、現代という時代は、実は地球の歴史というような軸スケールで見ても非常に特筆すべき時代を画するような時代でございまして、どういう時代かというと、地球システムの構成要素として人間圏という一つの物質圏が誕生している。これは、実は人類が狩猟採取という生き方から農耕牧畜という生き方に転換したときに出来た物質圏なんですが、そういう時代であるというふうにとらえられています。それで、人間圏が拡大することによって今、地球システムの物質とかエネルギーの流れに乱れが起きている。これが、環境問題とか、資源エネルギー問題とか、人口問題とか、食糧問題と言われている問題であろう。

 だから、これから我々が考えなければいけないのは、実は地球システムと調和的な人間圏というのはどういうものなのか。その内部構造論というか、政治とか経済とか社会というものをどうつくっていくのかというのが今、我々が迫られている問題であろう。

 それで、文明というのは人間圏という一つの物質圏が地球システムの中に生まれて、その人間圏というものの内部システムみたいなものを文明と呼ぶのでしょうけれども、今までに文明というのは実は2段階あったと思うんです。1つは農業文明と言われるもの、1つは工業文明と言われるものだろうと思いますが、農業文明というのを地球システムというスケールから見るとどういうことが言えるか。実は、地球システムの構成要素の間のものとかエネルギーの流れ、その流れに依存して生きるという生き方です。

 それに対して工業文明というのは、地球システムの人間圏以外のいろいろな構成要素がある訳ですが、その中に蓄えられているものを利用する。蓄えられているという意味でストックとすると、ストックに依存する文明が工業文明。当然、人間というのは欲望がある訳ですから、その欲望を抑えられなければ必要なだけのストックをほかの物質圏から取ってくるということをする訳でして、それが現在の人間圏がこれだけ大きくなった一つの理由でもあるし、その大きさが地球システムの中である種、制約条件を受けているという理由でもあろう。

 文明の未来というのは、結局、農業文明のような地球システムのフローに依存する文明なのか。それとも、ストックに依存する文明なのかという言い方が出来るかと思うんですが、そのフローに依存するというのは、今はやりの言葉で言えば生態系というか、地球の循環に基づくような生き方をする。地球システムのものとか、エネルギーの流れの方に依存してどう生きるか。

 それからもう一つは、今までの文明をそのまま更に発展させていき、要するに地球という星のいろいろなストックを利用し尽くしたとすれば、それを太陽系まで広げ、更には銀河系まで広げるというのが工業文明というか、ストックに依存する文明の未来であろうかと思います。だから、過去に理想郷を求めるのか、未来に理想郷を求めるのかという意味でアルカディアかユートピアかという言い方をしているんですが、我々は今その選択を迫られている。それが、私が現代という時代をとらえている現状認識です。

 そういう中で子どもの未来と世界というテーマを考えますと、結局、教育の内容ということになる訳ですか、教育というのは結局、知識というものを整理して教える。その知識というのは何なのかといいますと、実は過去40年飛躍的にその知識というのは増加したんです。それはどうしてかというと、我々がいろいろな道具を手にして自然というものが何なのかということを非常に深く理解するようになった。その深く理解した結果が何なのかといいますと、実は宇宙はビッグバンという事件によって誕生したと考えられていますが、そのビッグバン以来の宇宙とか地球とか生命とか人類の歴史、その歴史的な産物が現在の人間であるとか自然になっている訳で、それを理解するということは結局、歴史を解読するということになる。だから、知識というのはビッグバン以来のそういう歴史を解読したものなんです。それが過去40年間飛躍的に増加しましたから、知識を教えるというときに今までそれ以前の教育と同じように教育を考えていると、この知識は天文学的な数字ぐらいに広がった訳です。

 私などもそうですけれども、例えば明日までにある量のことを理解しなければいけないと言われて、その量が余りに膨大だと、普通は物を読んでいても何をしても頭の中に入らない。要するに、頭の中が真っ白になるような状態になるんです。これは何かというと、人間の脳の処理能力みたいなものは当然限りがある訳ですから、その情報処理能力とマッチした情報があれば、それは理解することが可能なんですが、それ以上のものがあると、脳というのは自分の脳を守るために多分もう働かないようにする。それを脳のオーバーフローと言います。

 それで、実は私は現在の教育現場で起こっていることというのは、基本的にはそういうことではないかと。要するに、余りにも知識が膨大な量になって、それを決まった期間の間に教えなければいけない訳ですから、当然、膨大な量を詰め込み的に教えていかざるを得ない。そうすると、脳というものがもう働かなくなってオーバーフローしてしまうというのが現在の教育現場で起こっていることではないか。

 もう一つ、教育で重要なのは、知識のほかに知恵という部分だろうと思います。いかに知識を使うのかということだろうと思うんですが、それは結局、科学というものをきちんと理解してもらう。科学というのは方法論な訳です。我々が分かるということは何なのかということをちゃんとルールを定めて定義しているようなものでして、そのルールに従ってある現象を解明出来たときにそれが分かると思っている訳です。

 だから、知恵というのは分かるというのは何なのかという部分をきちんと教えなければいけないんですが、知識にしても知恵にしても今の教育、小、中、高、私はいろいろな場面でそういう教科書にしても内容にしても見る機会があるのですが、余りにもそういう意味の整理が出来ていない。要するに、人類の歴史から考えると、過去40年というのは本当に異常な時代でして、私は自然科学者ですから非常にいい時代だと思っていますが、こんなに物が分かってきた時代はなかった訳です。それをきちんとまた整理して伝えるべきことは伝えるべきこと、伝えなくてもいいことは伝えないことというような整理がきちんと出来ていないままに、とにかく膨大な量の知識が教育という名の下に詰め込まれていて、しかもその方法論もきちんと教えられていないというのが、現状の子どもたちの教育現場で起こっていることだろうと思います。

 ですから、これをもう一回きちんと抜本的に変えていかないといけないだろう。そのときに、やはり現代という時代は国際交流その他、みんな引っくるめてグローバリゼーションという言葉でよく言われますが、私はグローバリゼーションというのはグローバル・スタンダードということだろうと思っているんです。だから、教育のグローバル・スタンダードとは何なのかということを考えなければいけないだろう。どう考えても、人類にとって共通の知識というのはやはり歴史なんです。この歴史というものをきちんともう一度教える。グローバル・スタンダードがあるとすれば歴史しかないのではないか。

 歴史と言っても、通常は人間の歴史を称して歴史と言っているんですが、そうではなくて今、言いましたように、過去40年明らかにしたのは実は自然科学そのものが歴史そのものだということが分かってきた訳ですから、歴史というものをもう少し拡張してきちんと整理して教えていかなければいけない。

 そのときに、やはり日本という国、国家というものがある訳ですね。国家というユニットにおける教育というのは何なのかということをやはり考えないといけない訳でして、21世紀にどういう人間圏になろうとも、私は国家とか地域というものの枠が外れて本当に個人から成るような人間圏なんていうのが出来るとは思えないんです。

 それは理由がありまして、実は今までの歴史を見ると、今までの歴史というのは分化してくる。ディファレンシエーションというような意味の分化ですが、宇宙も地球も生命も分化してきている訳でして、人間圏だけ個人個人がみんなユニットになるような社会になっていくというのはそれとは逆で、実は均質化という方向なんです。宇宙も地球も生命も均質な状態から異質なものに分かれてくる分化という状態に移ってきたのが歴史の発展性だとすると、国家というユニットは恐らく21世紀になっても厳然として存在するだろうし、こういうものを維持していかないと人間圏の安定性というのは保てないだろう。国家というユニットにおける教育というものを、もう一回きちんと考えなければいけないのではないか。

 1つは人間圏の分化ということの意味ですし、もう一つは実は情報化社会と言われているもので、情報というのは何なのかということを考え直さないといけないのではないかというふうに思います。

【本間座長】 どうもありがとうございました。

 3人の委員の皆様には10分間という大変短い時間で発表をしていただきまして、誠に恐縮でございます。

 それでは、今の御発表に即して御質問とか御意見をそれぞれまた御自由にお願いしたいと思います。今3人の方々からの御発表がありましたので、それに即した御質問、コメントがありましたらそれを伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

【ニコル委員】 さっき松井先生の言葉で歴史と自然科学は非常に大事でありますけれども、私は15歳のときにコンナロレンスに会いましたが、同じことを言っていたんです。そのとおりだと思います。

【本間座長】 昔、H.G.ウェルズの歴史の本で、宇宙の初めから人間社会が出来てずっと書いてある本がたしかあったと思うんですが、いわゆる歴史学者が、これはけしからぬ、こういうふうに歴史を取り扱ってはいけない。歴史というのは人間社会が始まったところからなのであると。今、松井先生がおっしゃったことの全く逆というか、それが歴史だと我々は考えてきた。

 だけれども、実はH.G.ウェルズの方が正しいのであって、ウェルズの宇宙の始まりというのは今の宇宙の始まりよりはもっともっと手前だったかもしれませんけれども、結局そうなってしまったんです。

【松井委員】 宇宙を見ると、現在というのは見えないんですよね。すべて過去なんです。だから、端的に今、我々が見ているのはそういう歴史的な産物なんだと。

【本間座長】 天文学で自転とか公転とか規則性を我々は小学校、中学校で教え込まれてくるのに、実は松井さんの話にあったように壮大なる時間軸のお話を聞かされているんですよね。

【松井委員】 物理学というのは、そういう歴史の中で起こったいろいろな事件とか現象がある訳ですね。その因果関係を法則としてまとめている訳です。その法則を持っていないと、自然という古文書は膨大ですから行間を読むようなことが出来なくなってしまう訳です。何ページ目に何が書いてあるか実際は分からない訳ですね。それで、断片的な知識をつなげるためには、その行間を読むことをしなければいけない。それが物理学という、知っていることだけから類推して、こういう因果関係があるだろうということを理解していく。そういうところをきちんと教えないと、なかなか理科というと非常に難しいということで今、大変な理科離れが起こっているんです。これは、私はある種非常に危険なことだと思います。

 というのは、結局科学というのは何なのか。科学というのは、自然科学というところが非常に大きい訳です。その方法論的な意味でいきますと、社会科学、人文科学はまだ科学の方法論をきちんと理解してやっているとは思えないところもあるんですが、自然科学というのは方法論が非常にきちんとしているので、その方法論が何なのかというところを教えなければいけないのですが、ここが今の教育では全く抜け落ちている。

【本間座長】 知識しか教えないんですね。

【松井委員】 だから今、私が言っていることは分かるというのは何なのかと。我々が今どこまで分かっているのかということが分からないと、なかなか未来と言っても考えることが出来ないのではないか。

【本間座長】 分かるというのは何かというよりは、覚えたかということを教えているんですね。残念ながら、覚えたかというのを試すのがテストなんです。

 私ばかりしゃべって申し訳ないですが、松井さんがおっしゃった中で、子どものときに小学校何年生だったか、作文を書かされて、読んだ本について感想を書いたんです。それは『脅威の科学』という本で、地球もいつかは冷えて最後は言わば石になってしまうんだというようなことが書いてあった。私はそれが非常にショックでして、最後は冷えて石になって終わりだというのだったら、人間がいろいろなことをやったって意味がないじゃないかと。だから、例えば私が勉強しなくたって同じことじゃないかみたいなことを書いて、先生に作文の時間に私の作文だけを取り上げて1時間説教をされたことがありました。これは先生も正しいんだけれども、しかしマクロに言えば私も正しいのであると。

 それは撤回しますが、河合先生いかがですか。今の科学は方法論であると、河合先生の方法論は……。

【河合委員】 非常によく分かるお話です。

 ただ、私の考えている分かるというのは、もう一つの分かるがあって、納得がいくというものがあるんです。それはちょっと違う。しかし、それも松井さんが言われているとおりで、その方法論を明らかにして言わないといけないというのが私の考え方で、それを何とか頑張っているんですが、自然科学ほど明確に言えない。ただし、松井さんが言われているような自然科学的な分かるではない、もう一つの分かるがあるんじゃないかという考え方に私は立っているんです。

 それもしかし、そこを非常に明確に言っていかないと、非常にばかげたことを言う人がたくさん出てくる。にせ宗教などを考えればすぐ分かると思うんですが、宗教の教祖は全部分かっている訳ですから、ああいう分かり方は困る。かといって、このいわゆる科学的方法論と違う分かり方というのを明確にしないと松井さん言われたとおりで、人文科学とか社会科学と言いながら、本当は何をしているのかはっきり分からないという問題が起きているように思います。これを子どものときの教育で、そういうふうなことをどう教えていくかということはもっと真剣に考えていいと私は思っています。

 それから、松井さんの話の最後のところがちょっと私は分からなかったんですが、すごくディファレンシエートしていく。だから国家が必要というところがちょっとジャンンプしたみたいに思うんです。

 それから、インターネットなどを言うとむしろ国家は壊れていくんじゃないかという気もするんですが、その辺をもうちょっと言っていただきたいと思います。

【松井委員】 ちょっと時間がなかったのではしょったのですが、宇宙とか地球とか生命の歴史を見ますと、最初は状態が均質なんです。例えば、ビッグバンのときというのはすべてに区別がない状態で、根源的な粒子まで分解されている。その状態から、実は宇宙が冷えることによって次々と構造が生まれてくる訳です。構造が生まれてくるというのは、実は情報が生まれてくるということなんです。なぜそういうことが起こるのかというと、それは単純に宇宙が膨張して冷えるから。

 地球も全く同じで、最初は全く均質な状態でした。これはなぜかというと、火の玉状態で生まれるものですから区別がないんです。これが冷えてくるので大気とか海とか地殻とかと分かれてきます。

 あるいは、生命も最初に生まれた生命は1つのはずなんです。これが、地球環境というものが実は冷えることによっていろいろ分かれてくる訳です。環境の分化に応じて生命がその多様性を獲得してくるという訳でして、すべて分化していく訳です。

 人間圏における分化というのは何なのかということを考えるときに、実は人間圏が冷えるというのは何なのかということを考えなければいけないのですが、これは多少難しくなるので分かりやすく言いますと、人間圏においては情報というものが拡散していくか、それとも拡散しないであるユニットの中に蓄えられているかというのが、宇宙における冷えるとか冷えないということに関係しているのではないか。要するに、人間圏を構成している一番最初のユニットは個々の人ですから、その人たちにすべての情報が行き渡って差がない。情報として差がない状態というのは均質な状態ではないか。これは、人間圏という構造にとってはある種非常に不安定な、要するに個人個人が例えば欲望というものを持っている訳で、勝手に動いてばらばらになって制御出来ないような状態でして、それは地球システムの中で安定した人間圏というものを考えるときには不安定な状態なんです。

 それよりはあるユニット、それが国家なのか、地域なのか、どういうものがベストなのかというのは実はまだ答えはないんですが、ある種のユニットというか、構造があるということが人間圏みたいなものを考えると安定な状態なんです。

 それと、実は情報とその熱みたいなものというのはエントロピーというような概念を通じて結びつくんですが、その辺までいきますととても10分では話が終わらないものですから省略させていただいたんですが、言いたいことは、要するに一人一人がみんなばらばらの状態で人間圏というものはつくれない、維持出来ないということなんです。ある種の情報を共有するようなものとしてあるユニットが必要なのではないか。

【本間座長】 ちょっとそこでその御議論をとめていただいて、宮地さんいかがでしょうか。ニコルさんがおっしゃった健康ということで何かお話がありますか。

【宮地委員】 里中さんの方に質問があるんですけれども、その前に私はこういう懇談会の席は初めてなので分からないことが幾つかあって、この提言というのを最終的に出す場合にはだれに向かってそれを提言するのかというのをちょっと教えていただいてからの方が……。

【本間座長】 直接には総理です。

【宮地委員】 では、基本的に政策をつくっていく方々に。

【本間座長】 施策に参考にしてほしいということで。

【宮地委員】 分かりました。どうしてそういうことをお聞きしたかというと、里中さんのお話はすごく面白かったんですけれども、海賊版になるのと、それから正規にするのとありますよね。それで、海賊版というのは確かに知的所有権の問題で物すごく問題はあると思うんですけれども、現実に文化というものが広がっていくときというのは海賊版の時期が一番エネルギーがあるのではないかという気がするんです。そういうことを考えていくと、例えば里中さんたちがされている活動の中で著作権ということをどういうふうに考えられているのか。ドラえもん基金のことを言われていて、それは一つのすごくいい案だなと思うんですけれども、ちょっとその辺をお聞きしたいなというふうに思いました。

 1つは、私自身がかかわっているボランティアなどでも、ボランティアをやり出す最初の時期、例えば阪神の震災があったときにたくさん来ているときというのはゲリラ状態でみんな訳の分からないところでやっている訳です。そのときは、そのボランティア全体をもしも統括する人がいたら、効率的にはなったかもしれないけれども、エネルギーというか、それぞれ個人のボランティアの意識というのは発揮されなかっただろうと思うので、例えば政策とかでボランティア活動をサポートしてくださいというときに、半分はすごく大事だけれども半分は危険だなという感じがするんです。

 だから、漫画という媒体を海外に広めていく場合に、例えば政策としてどういうことをしてほしいとか、その辺というのはどういうふうにお考えですか。

【里中委員】 最初の著作権のことですが、著作権については私たちも真剣に考えなければいけないんですけれども、実際は余りうるさく言っていないんです。

 なぜかといいますと、著作権を侵している人たちが悪気がある場合とない場合があって、悪気がない場合というのは自然発生的に紹介したいからコピーをしてしまったと。それと、知らずに侵している権利というのは知ってもらえばいいことであって、まず責めるというよりはぼちぼち知っていただくという感じでアプローチしているんです。それで、最初がアジア圏でしたのでやはりいろいろな方がいらっしゃって、本当にただ紹介したい方と、もう一つは早いうちから自分で押さえておこうという考えの会社もある訳なんです。

 ですから、対応の仕方は、私たちはやはり日本人のいい意味でいいかげんなところを有効に活用しまして、これをきっかけにお互いに分かり合おうと言うときれいごとみたいなんですけれども、著作権の方も分かるだろう相手にはちゃんと言っていく。分からない人には、こういうことがあるんですよと言って教えていく。そういう感じでやっています。 ただ、私たちは漫画家ですので、出版社は出版社でまた別の考えがあります。

 ただ、日本の場合、出版社もそんなにうるさくは言わないんです。そのうちにという感じなんです。だから、著作権のことはいいかげんと言えばいいかげんなんですが、アジア各国で育ってきた若手の漫画家たちにとって著作権というのはちゃんと覚えておいてもらいたいんです。なぜならば、彼らの権利だからそれはやはりしっかりと覚えておいてほしいということでよく話し合います。そこまで来て初めて、自分たちがかつて見ていたのはそういうものだったのかと言って、まず恥ずかしいと言われる場合が多いんですよ。

 でも、そうではありませんと。知らないでやってしまうのは恥ずかしいことではないというふうに言っています。だから、今のところうまく著作権を知るということは素直に発展していっているんじゃないかと思います。

【本間座長】 間もなく総理がお見えになると思いますが、松居さんの方で漫画、アニメーションもありますが、雑誌、書物のことがございますね。途中でお話を切ってしまうかもしれなくて大変失礼ですが、何かコメントがありましたら。

【松居委員】 著作権と出版権というのは、やはりルールは必要なんです。

 ただ、ルールが1つではなくて非常にフレキシブルにそこで一つ一つ判断していくということは必要だと思います。例えばアメリカとやる場合、あるいは発展途上国とやる場合、私どももしょっちゅうやりますけれども一つ一つ判断をしていきます。ルールは1つきちんとあって、そのルールをどう当てはめていくかということは相手の方とよく話し合ってお互いに納得して決めていく。それがありませんと、出版のシステムというのは世界的に全部崩れてしまう訳です。しかも、資本主義ですから、資本主義のシステムもおかしくなってしまいますから、一応ルールだけははっきりさせて、その上で考えましょうというふうに考えております。

 1つ里中さんに御質問があるんですが、このリストですとドラえもんは中国で出ていますけれども、セーラームーンが中国で出ていませんね。これは何かあるのですか。

【里中委員】 こんな場でお話ししていいのかどうか分かりませんが、中国はどうしても政府のチェックが入る訳です。それで、一度いいと言ったものがだめになったり、今セーラームーンの話でしたが、ドラえもんがある日突然、教育的によろしくないということで禁止されてしまったんです。

 それは、どうしてとだれでも思うんです。ドラえもんがふしだらだと言われたんです。どうしてふしだらなんでしょうと言ったら、いたいけな少女がキスをするシーンがある。それは、親しみを込めるためにほっぺにチュッとするんですけれども、それがふしだらだと。これは言いがかりであって、実は裏がありまして、自国の漫画家を育てたいから日本の漫画家ばかりが目立つのはよろしくないと考えるお役人がいらしたと私たちは理解しております。

【本間座長】 セーラームーンというのはヨーロッパ、フランスでは随分好評ですね。

【里中委員】 はい。ヨーロッパ、アメリカでは最初アニメーションから入りましたので盛んなんですが、かなり女の子の太ももとか見えますので。

【本間座長】 あれは左から見る、右から見るとかというので問題があるということはなかったんですか。

【里中委員】 初期のころは日本の漫画は逆版といいますか、左右反転で印刷されていたんです。そうすると、みんな左利きで書くんです。だから面白いエピソードがありまして、海賊版を読んで育った子どもたちが漫画家になったら登場人物がやたら左利きが多いというのがあったんですけれども、最近は日本の出版物はこちらから開けると。右開き、左開きがアルファベットの国とは反対だということで、元の形で見せた方がいいんじゃないかというのが広まってきまして、構図とかやはり変わってくるんですよね、雰囲気、作者の意図とかですが、視線の流れが大体めくる方向に向くようになっているものですから、それが左右反転にしますと変わってします。あとは左利き、右利きだけではなくていろいろなところで自然描写が違ってくる訳なんです。

 ですから、日本発信の作品はアルファベットの国であってもめくり方は日本と同じ。ただ、中のせりふだけはその国の言葉にという形が本来の正しい伝え方だろうということで、結構ヨーロッパ、アメリカでも最近は変則的な開き方の出版物が増えてきています。

【本間座長】 漫画を読み慣れている人とそうでない人では、読むスピードがまるっきり違いますね。

【里中委員】 そうですね。

【本間座長】 ですから、プロの読み手というのはあるんですね。

【里中委員】 子どもたちにとっては訳もないことなんですけれども、慣れていないと最初はちょっと戸惑うようですが、やはり若い世代から発展していきますので、その子たちがそのまま大人になっても漫画から離れずに親しんでいるものですから。

 それで、日本と同じ現象で面白いなと思うのは、今お話のセーラームーンにしましても、かなり実は危ない要素もありまして、女の子があんなにあらわな格好をしたりというところがある訳です。それは日本のお母さんもどきどきするし、どこの国のお母さんもどきどきする。セーラームーンに限らず性描写、暴力描写が出てきますと、日本のPTAとか教育者もやはりこれはよろしくないと言う。

 それで、日本がよろしくないと言うのはアジア各国、ヨーロッパ、勿論中国もそうですが、特に宗教的なことが絡んできますと、宗教的タブーに触れるような表現というのはかなり抑えてくれと言われます。だから、その部分は書き直したりする場合があるのですけれども、子どもたちの反応はやはり日本の子と一緒なんです。隠れて見たりとか、親が言うことは分かるが、それとこれとは別だと認識している訳です。

 そして、日本でもセーラームーンに関しましては、いい年をした男の子、こういう言い方をしてはいけないのかもしれませんが、24〜25歳の男の子がセーラームーンの格好をして喜ぶというようなおたくごっこみたいなものがあるんです。それで、フランスでもアメリカでもそういう男の子がいる訳です。そのコスチュームを着てうっとりする。だから、どうしてこういう裏文化まで発展の仕方が一緒なのかなととても不思議なんですけれども、ここは私の範疇ではなくて、むしろ心理学とか精神医療の領域かもしれません。

【本間座長】 さっきの松井さんのお話では、それは交流なのか、均質化なのか、逆流しているということになるのか、どうなんですかね、難しいですね。親と子の間には漫画文化に関して日本の中で断絶があって、同じ世代の子どもたちというのはグローバルに共通性が培われるという現象が進んでいる。

【里中委員】 そうですね。だから、勝手に想像しているんですけれども、来世紀もしばらく過ぎますと、やはり同じ漫画で育った子どもたちが全然日本人とは限らない訳です。それで、昔こういう漫画があったね、自分も見ていたという話から入るというのが、音楽体験と同じように一つの要素を占めていくのではないかなと思っています。

 すみません、もう一つの質問は何でしたか。

【宮地委員】 公的なサポートに対してどういうふうに考えられているか。

【里中委員】 公的なサポートというのは、日本の場合はほとんど漫画に関してはないんです。ないのがいいと開き直って考えております。自分たちで出来ることは自分たちでやる。そして、本当に歴史の浅い分野ですので、むしろ公的なところから阻害されて育ってきた文化ですので、そのくやしさとか、理解されていないということがエネルギーになってきたような気がして、またそういうものを懐かしがっていると今や時代遅れかもしれませんけれども、出来ることはやってしまおうということですので、余り期待していないというのが現状です。

【本間座長】 途中になったら恐縮ですが、今の段階で城島さん何かありますか。ちょうどニコルさんと松井さんの真ん中に座っていらっしゃって、片方で日本の自然にあこがれて来たら自然が今、破壊されつつある。それから、フローからストックへの文明の構造の転換というのは、つまり農業から工業文化への転換である。工業というのは、人間圏が非人間圏から物を取り出して使い込む、それが廃棄物までつながってしまう訳ですね。青年海外協力隊などのお仕事の一部はどちらのベクトルかは分かりませんが、そういう問題について現地の方々と一緒に仕事をしていくという部分が少なくともあるのではないかという気がするんですけれども。

【城島委員】 そうですね、私たちの活動の中で、工業的ないろいろな職種を持って活動していくんですけれども、実際のところまだ途上国と言われる国では、日本のそれこそ昔の技術ですね。例えば、ネパールから研修生が来て日本の民族資料館を見ると今、自分たちが使っていますというようなことがあって、そんなことがあるんだと逆に日本人がびっくりするというようなことがあるということは聞いたことがあります。

 ただ、途上国の皆さんもやはり日本のそういうすごく近代的なものに対してのあこがれも強いということはあると思います。

(橋本総理大臣入室)

【本間座長】 御案内申し上げましたように、本日は橋本総理大臣がお見えになりました。それで、時間がありませんので、私の方から出来るだけ短い時間でこれまでの審議状況について御説明させていただきまして、その後、引き続き委員の方のディスカッションに移りますが、その前に橋本総理からこの機会にごあいさつというのか、橋本総理からお言葉をちょうだいしようと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 この「子どもの未来と世界について考える懇談会」は、最初に総理がお見えくださいましてお話をいただきました。それで、私の記憶では、子どもとは何だろうということで、ある意味で私も子どもですと総理がおっしゃられたかと思いましたが、その後、意見の発表を何回かいろいろな委員の方々から重ねました。

 例えば、子どもの豊かな心を養い、国際性を培うための環境づくりはいかにあるべきか、これは二瓶委員です。

 それから、小栗委員から民間・地方等の子どもの国際交流の推進。

 それから、李委員から異文化の交流、ホーム・ビジット・プログラムを進めているというお話。

 それから、松居委員から子どもの本の国際交流、書物を通じて、絵本を通じての国際交流。本日、今、発表が終わってその後のディスカッションをしておりましたが、里中委員から漫画文化と国際交流。これはドラえもんとセーラームーンで、総理はどちらか御愛読かどうか分かりませんが、漫画文化が世界に広がっている。これが国際交流だと。

【橋本総理大臣】 ドラえもんは大好きですが、セーラームーンはちょっと苦手です。

【本間座長】 そうですか。

 それから、ニコル委員から14歳のときに日本の自然の美しさにあこがれてきた。その日本の自然の美しさが今、破壊されようとしているということについての心配、それから憤慨と、日本の自然の美しさを取り戻したいというような意味において、これからの子どもの環境の問題についてのお話がありました。

 それから、天文学の松井委員の方から自然科学者が見た子どもの未来と世界。要するに、我々の知識というのは歴史性を持ったもの、宇宙の始まり、ビッグバンから今日に至るまで歴史としてとらえていくと、その中のある段階で人間圏というものが出来たんだと。人間が生活する一つの領域、人間圏。その人間圏の中の文明の構造が農業文明から工業文明へと転換してきて、その中で自然科学が発達をしてきた。

 教育はどうあるべきか。これは総理も関心の深いところでありますが、教育というのは知識ではなくて科学というのは方法論なのだから、分かるということを子どもが覚えていく。分かるとは何であるかということが知恵なのであって、その結果として知識が生まれてくるというような御説明がありました。

 それから、これは大議論に発展する前に今ちょっととめてあるところですが、いろいろな意味で均質的なものが宇宙の発展の中で分化されていく。分けていろいろな多様性に広がっていく。生命などもそうだと思いますが、その分化していく中で人間の社会というものも、やはりこれからインターネットも発達してグローバル化する。グローバル・スタンダードが必要になる。その中で、しかし、やはり国家というものが必要単位であり続けるだろうというようなお話が出掛かったところであります。

 その辺まで、これは多種多彩な経験の持ち主の委員の集まりでありますので話が非常に広がっておりまして、それこそ分化しているのでありますが、論点整理しますと、子どもの国際性というものをいかにして培うか。それから異なった文化、異文化というものに触れ、異文化への関心を持つことに当たって過程が大事だろう。

 それから、日本人と国際性と、方々で議論されているところでありますが、取り入れて外国文化を自分のものにするということはあるけれども、その場合、結局、今度は日本文化というのは何なのかということ自身がよく分からなくなっているところもあるし、それから積極的に接触する異文化と、接してその意味を尋ねるということの重要性というのは何なのかということを子どものときから考えてほしい。それで、書物、漫画も出ましたが、そういうものを通じての国際交流をいかに進めるかとか、民間による国際交流の活動、いろいろ御報告がありましたが、更に発展させるにはと。

 そして、先ほども出ましたインターネットその他の情報化時代における国際交流、これをいろいろな場所、学校、地域、家庭においてどう促進していくかというような議論がさまざまな形で行われてきたと思います。

 ちょっと不十分でありますけれども、大変豊かな議論をしてまいったと思いますので、総理から更に御感想なり、我々への御注文なりをいただければと思います。

【橋本総理大臣】 今までさまざまな角度から御議論を出していただき、それを発展させていただいたことにお礼を申し上げます。

 私は、今回、総理を辞任をいたしますけれども、引き続きここで議論をしていただく内容というものは非常に大切な課題でございますし、どうぞ自由闊達な議論を続けていただきたい。そして、それが今後の行政に生かされることを心から願う。

 それからまた、立場は変わりましてもこうした問題に関心を私自身も持ち続けていきたいと考えております。どうぞ有益な提言を次の内閣にも送っていただきたいというお願いを申し上げて、あとは議論の方に入れてください。

【本間座長】 ありがとうございます。恐縮でございます。総理が一番時間のことに気を遣ってくださいまして、なるべく充実した議論を続けるようにという大変ありがたいお心遣いですので、それでは御免こうむりまして先ほどの議論を続けてまいりたいと思います。 二瓶さんから、先ほどの御説明、御発表に直に触れなくても結構ですが、総理もおられますし、全般的なことの中から一言、二言おっしゃっていただいても結構でございます。その後、アントンさんお願いします。

【二瓶委員】 まず最初に、今日発表された方の御報告の中でちょっと御質問したいことを幾つか整理させていただきます。

 まず里中さんで、これは非常に素朴な疑問なんですけれども今、漫画というのは本の形を取りますね。これは先ほどの著作権の問題とも絡むのでなかなかこれを違う形、マルチメディアに乗せるというのは非常に難しいことなのかもしれません。

 けれども、もし里中さんがおっしゃったように、漫画というのが子どもの世界でいわゆる国境を越えた感情を生み出すために非常に重要なものであるとすれば、むしろ積極的にもっといろいろな方法を通じて、漫画が現在伝えているようなメッセージを伝えるようなことは可能性として考えられないだろうかということなんですけれども、これはどうでしょうか。

【里中委員】 それは十分みんなで検討しておりまして、マルチメディアという言葉が世に出始めたころから、これは当然かかわりがあると。それで、いずれはインターネット上での雑誌販売、変な言い方ですけれども、それが1つ考えられます。新作はマルチメディアで発表する。ですから、自動翻訳で世界同時発売ということが可能になる訳です。

 それのみならず私が期待しているのは、1つの作品に世界各国から子どもたちだけではなく大人もなんですけれども、手を加えて一つの理想像をつくり上げるということが出来ると思うんです。今、少しずつやっておりますのは、子どもたちに道具としてパソコンを持たせて、つまり絵筆とかペンとか鉛筆と同じようにパソコンも怖がらないで持ちなさいということで、いきなり絵を描かせますと大体2日あると音の入った動画をつくるようになるんです。今の子どもたちはすごいですね。怖いとか難しいものだという先入観がないから自由自在に使う訳です。そこで自分のキャラクターをつくる。つまり、絵が下手でも漫画はそれなりに書ける訳なんです。それで、最初から音もあって、色も付いていて動くということを前提につくった漫画と、紙の上に鉛筆でまず書いてペンで仕上げていくという発想の漫画とは根底から何か変わるものがあるかもしれない。それを楽しみにして、子どもたちに教える場では実際に紙に書くだけではなくて、今はコンピューターを使って書くということも教えていますし、やがてはそこが発表の場になる。

 かつて新聞しかなかったころは新聞が発表の場であった。ところが、雑誌が出来た。今はテレビというものがある。その都度その都度、形を変えて表現してきた訳ですが、これからはやはりインターネットを使ってマルチメディアで発表ということは大いにあると思いますし今、既にインターネット連載という形を持っている人もいます。

 その場合、問題は1ページを1画面で見せるか、1コマを1画面で見せるか。1ページの中にいろいろなシーンが入っていますね。そのシーンを抜き出して、コマの大きさによってその秒数を変える。見せる長さを変えるか、あるいは1ページ単位で見せてしまうか、これは送り手側の好みによって変わっています。

 また、CD−ROMの場合は、時間も見る側が自由に設定出来ますので、それを考えた組み方、最初はCD−ROMもただそのページをCD−ROMに落とし込むだけだったんですけれども、今は音が入ったり、これまで現実の漫画ではなかったコマとコマとの間の絵を勝手にコンピューターで書いたりして、いろいろなことを今、実験的にやっています。 ただ、発想としてマルチメディア時代に何かが変わるということを実は期待しているんです。その発表の仕方だけではなくて、最初からこれは世界同時発売で、あるいは世界じゅうのどこでどの人が見るかもしれない。あるいは自分の知らない読者、自分の知らないとき、知らない時間にだれかが見るということと、発売日が決まっていてこういう形で日本語で出されていてという発想とでは全然違うかもしれない。そう思っていますので。

【本間座長】 ちょっと時間がなくなってきましたので、アントン委員に何か今のお話でも、あるいは子どもの未来のためにこういうことをしてやりたいとか、してあげるべきだということがありましたら。

【アントン委員】 ニコルさんにちょっと質問があるんです。

 さっき自分がうるさいやつだとおっしゃったんですが、国籍は日本人ですけれども外見は外国人だと皆さん考えているかもしれませんが、ニコルさんは日本の国の自然を守りたいとおっしゃっていますが、外国人に聞いてくれるというか、理解出来ると思いますか。別に問題は……。

【ニコル委員】 出来ると思います。私は日本の自然を守りたいことは事実です。

 でも、日本全体を守りたくても一人の力では出来ないです。しかし、私の山々にそういう廃棄物が不法投棄、捨てられるとその汚された水が海まで流れていくでしょう。だから、日本の自然はすべての自然とつながっているに違いないです。かえって外人の方が分かってくれる方が多いです。

 ただ、うるさいやつだと村八分されているんです。九分ぐらいかなと。

【本間座長】 まだ一縷の望みがありますね。

【ニコル委員】 一縷の望みがあるかなと。それで、私はアントンさんと同じように、複雑な上手な日本語は使えないんです。思っていることをそのまま言わないとだめなんです。だから、うるさいやつだとみんな逃げるんです。

【アントン委員】 頑張ってください。

【橋本総理大臣】 それは、あなたが強過ぎるんですよ。

【本間座長】 むしろ、直接的なメッセージの方が強いんですよね。

 まだ、ほかにこの際ということで、先ほど河合先生は質問だけなさったけれども、河合先生からの何か……。

【河合委員】 ニコルさんの言われたことに私は賛成でして、結局日本の子どものことを思うと、大人が子どもに何かしてやるなんて考えなくても、面白いところがあればちゃんと遊ぶし、漫画もあれば読むしとやるんだけれども、そういう試練の場が物すごく少なくなったんです。勝手に遊んで、ちょっと親から見えないところで遊ぶから子どもは育つのに、親から見えない面白いところというのは余りにもなくなったんです。この問題を私は非常に真剣に考えてほしいというふうに思います。

 今、世田谷区で何公園か名前は忘れましたが、私は中教審にいたときに話を聞いたんですけれども、子どもが非常に自由に遊べるところをつくっておられるんです。あれは感心しました。まして、指導員というのは、要するに指導をしないということを大事にしているんです。下手な指導員というのは、すぐ子どもに指導するんです。そうではなくて、出来るだけ子どもが好きなように遊べる場を提供する。そして、絶対的な危険だけを守るのが指導員であって、こうして遊びなさいというようなことは絶対に言わない。

 ところが、そういう場が余りにも少ないんです。これを何かもうちょっと復活する方法というのは考えられないかしらというふうに私は思います。

【橋本総理大臣】 その昔、京都府にどうにも使いようのないひどい斜面がありまして、相当な面積でありました。そこで、ガラスのかけらとか、触るとかぶれるウルシのたぐいとか、そういうものだけは全部除いて、そこに保育所と幼稚園のお子さんを交代に連れて行って、人工の園具は全くなしでそこで1日遊びなさいというのをやった時期があります。 面白いから私は二度ほど見に行ったんです。そうすると、町の真ん中の子はそういうところに放り出されると全く遊び方を知らない訳です。そのうちに餓鬼大将が傾斜面を駆け上がって、駆け下って、そのついでにほかの子を突き飛ばす。そうすると、突き飛ばされた子どもは悔しいから追っ掛けていくうちに鬼ごっこが始まりました。そうすると、そのうちに要領が悪くてつかまりそうな子が必死に木に登ってしまう。そうすると、木登りが始まるんです。これは面白いな、続けないかなと。

 東京でもほかの地域でもまだそういう場所がありましたから、やらないかと言って勧めたら教育委員会が、もし事故があったときのことを心配してだめでした。

【ニコル委員 】 若いレンジャーに教えようとしたら、その壁に本当にいつもぶつかる。林業のそういうことを教えるためにどうして鉈(なた)が必要だとか、どうして斧が必要だとか、何だかんだと本当にうるさい。

【橋本総理大臣】 私はボーイスカウトでナイフで物を削ることを教えて親に怒られましたから。

【本間座長】 ボーイスカウトは本当に困っているんですね。いろいろな今までやれたことがやれなくなった。

【橋本総理大臣】 まずナイフを教えて怒られ、たき火を教えて怒られ、今はもう引いていますからぼやいてもいいでしょうけれども、郷里で2度怒られました。

 ごめんなさい、4時半から閣議なので、これで失礼します。

【本間座長】 わざわざ御出席賜りまして、ありがとうございました。

(橋本総理大臣退室)

【本間座長】 本日は総理にわざわざ御出席いただきまして皆様のお話を、恐らく次の会議は大変重要であることは承知しておりますが、もう少しおいでになりたかったのではないかと思います。

 私どもの方も定刻が近づいてまいりましたので、はなはだ残念でございますが、出来れば皆様から夏休み前、ワーキンググループ出発に当たりまして一人一言ずつちょうだいしたいと思っておりましたけれども、既に4時半になりますので、これは最初にお願いしましたように、恐縮ですが、これを是非やった方がいいということを紙に書いて、お寄せいただきたいと思います。

 本日の議事は、これにて終了ということにいたしまして、事務局から何か御連絡がありましたらお願いいたします。

【登外政審議室長】 先ほど座長からお願いがございましたように、8月21日を一応期限ということで提言の案をお出しいただきまして、ワーキンググループでございますけれども、今日の第1回の会合を開いて打合せをやっていただきますが、8月21日に出していただく提言を踏まえて、その後一度再度ワーキンググループの会合を開いていただいて、それを踏まえて9月下旬ごろに、ここの委員会の本会合を設定していただければというふうに思っております。具体的な日時につきましては、改めて事務局の方から御案内させていただきますので、よろしくお願いします。

【本間座長】 本日は3人の委員の方々、大変刺激的な興味深い御発表をいただきまして、前のときの委員の方々もそうでありましたが、貴重なお話を伺うことが出来まして感謝申し上げます。

 それでは、以上をもちまして本日の懇談会を終了いたします。皆様どうもありがとうございました。