【分野別総論】
昭和40年代の公害問題を契機に議論されるようになった環境問題への対処は、従来の公害対策に見られるようなエンド・オブ・パイプ(出口規制)型の規制手法の導入に始まった。しかしながら、今日の環境問題は、より広範囲になり、予見困難性、不確実性の度合いが高まっており、それに対処するための環境関連規制も近年ますますその数を増やすとともに複雑多様化してきている。
環境問題解決の究極目標は、人間と地球の相対的関係において自然科学的に健全な地球の在り方と生命倫理に基づいた人間の生き方を両立させることにより、人類の持続的発展を可能にする活力ある経済社会を構築することにあると考える。この目標の達成には、人間の倫理観の変革や個々人の環境についての意識を環境教育を通じて高めるなど、必ずしも狭義の規制改革という観点からのみでは実現し得ないものもある。しかしながら、現在の複雑多様な環境に関する法律及び規制体系を見直し、環境に配慮した理想的な社会、しかも活力のある経済社会を作り出すために社会の仕組みを再構築することは、この究極目標の達成に大きく寄与するものである。
今年度、当委員会は、改めて包括的な取組を行うため臨時の作業部会として、タスクフォースを設置し、環境問題の特色から議論し、求められる政策に沿って具体的な課題の発掘を行った。その議論の中では、先の環境教育の在り方のように規制の問題として直接取り扱うことは難しいような課題も提示された。しかし、具体的なテーマ・論点の掘り起こしの議論を通じて浮かび上がってきたのは、単に現行の各種規制制度の合理化にとどまらず、有限な資源の下で地球環境への負荷を極力減らし、かつ持続的な発展を可能とするための新たなルールづくりに取り組む必要があるという、正に「規制改革」の視点であった。
以下の総論においては、タスクフォースにて議論された環境分野における規制改革の考え方を概括する。
○環境分野における規制改革
環境問題への対処について、規制改革という観点から検討するに当たり、次のような4つの目標を念頭に置くこととする。
○規制改革のために重視する手法
以上の目標を達成するために、環境関連の規制改革を進めていくに当たり、次のような手法を重視したい。
【各論】
(1)市街地の土壌汚染の処理に関する法制化の検討
これまで、我が国においては、農用地における重金属等による汚染、特定の工場等の有害物質による地下水汚染及びダイオキシン類による土壌汚染については、汚染を認定する基準や原状回復のルールに関する法整備が進められてきており、具体的に処理の対策が進められているが、市街地の土壌汚染に関しては、問題がそれほど顕在化していなかったこともあり、処理や原状回復のルールを定めた法制度は未整備である。
しかしながら、近年市街地においても多くの土壌汚染の報告がなされており、しかもその数は年々増大している。したがって、報告はないものの、汚染が潜在している市街地は相当数に上る可能性がある。
一般的に市街地の土壌汚染に関する基準を定めたものは、「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成3年8月23日環境庁告示第46号)があり、ここでは24の有害物質について溶出量の上限目標値が定められている。つまり、土壌中の有害物質を水に溶出させた場合、その水を飲用等に供しても、人の健康に影響を与えない数値として定められている。この数字は、土壌の汚染状態の有無を判断する基準であり、また、汚染土壌に係る改善対策を講ずる際の目標となる基準であるが、法的にはこの基準にまでの処理を義務付けるような強制力はない。
現在、市街地の土壌汚染に関する対策については、「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」を通じた指導により成果を上げてきているが、強制力のある明確なルールがないことにより、さまざまな問題が生じている。例えば、どの程度汚染が進んでいれば処理の必要があるのか、あるいは処理するとしてもどこまですべきかを示す法的に強制力を持った基準がないため、汚染の実態が明らかにされず汚染状態が放置されたり、土地所有者によりまちまちな処理が行われたりしている事例もある。また、土壌汚染は汚染原因者の特定が困難な場合があり、その際の処理にかかる費用負担の仕組みがないことから、汚染状態の放置、土地取引の際のトラブルにつながっている。さらに、情報開示に関するルールがないことから、所有地の汚染を発見し、任意で自治体へ報告をした企業がマスコミから指弾されることになるなど、結果として著しく不利を被る等の問題が生じている。
我が国では、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)の強化により土壌から地下水への浸透汚染については、一応の対策はうたれてきた。これにより、地下水の飲用に伴う健康被害の発生は未然に防止されてきたが、土壌中の有害物質の人体への直接暴露による影響については、いまだ研究途上であり、直接暴露による人体への影響評価が困難な状況になっている。企業サイドから見ても、最近ではISO14000シリーズの認証をとるために自主的に土地調査を行う企業も増えてきており、土壌汚染の処理等に関する明確なルール作りのニーズは増大している。したがって、市街地の土壌汚染に関する対策について、すみやかに法制化を含め実効ある制度について検討すべきである。また検討に当たっては、以下のような点に留意すべきである。
(2)循環型社会形成推進のための諸制度の改善
循環型社会の実現のためには、できる限り3R(リデュース、リユース、リサイクル)を進めることが必要である。今まさに循環型社会への入口と言える時期にあたり、本年相次いでリサイクル関連特別法が成立するなど、廃棄物処理・リサイクル体制の整備が行なわれているところである。今後とも、リサイクルの名を借りた不法投棄や廃棄物の不適正処理等、公衆衛生の向上及び生活環境の保全に支障をもたらす事態を防止するという認識に立ちつつ、スムーズな3Rの推進など、循環型社会の構築に向けて引き続き必要な施策を迅速に推進すべきである。
(2−1)廃棄物の定義及び区分の見直し
廃棄物の定義については、「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要となった物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであって、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではないこと」とされてきており、これに該当すれば、リユース、リサイクルを行う場合であっても生活環境の保全の観点から、廃棄物処理業や施設設置許可の取得が必要となっている。廃棄物の定義については、「占有者の意思」という主観的な要素もあるため、外部からは分かりにくいといった指摘や、リサイクル名目で不適正処理が行われている事例があることなどから、その明確化を含め在り方について検討すべきであるという指摘があるところである。このため、本年7月に、廃棄物に該当するか否かについて、「その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価格の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきもの」とし、勘案事情のうち占有者の意思については、客観的要素からみて社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、総合的に判断するものとする従前の解釈が一部明確化されたところである。さらに「社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思」を判断する要素として、「他人に有償で売却するものであって、これらの目的のために速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されているか否かということ」などが示されたが、使用済みタイヤを例示とする解釈にとどまっている。一方で、廃棄物の定義については、我が国とは法体系が異なるため単純な比較はできないが、ドイツの循環経済法のように、占有者の意思に重点が置かれた旧来の廃棄物の定義を拡大するような動きもある。
また、現行の一般廃棄物、産業廃棄物の区分については、日常生活から排出される廃棄物及び事業活動から生じる廃棄物で環境影響が少なく市町村の能力で処理できるものについては市町村が処理にあたることとし、事業活動から生じる廃棄物でその発生量や有害性の観点から環境汚染の原因となるものは事業者自らが処理しなければならないとする処理責任の所在から区分されているところであり、それぞれ別々の業の資格が必要となっている。これについては、同じ性状の廃棄物であっても一括処理を行うためには手続が煩瑣であるといった指摘がされている。
廃棄物の定義及び区分については、平成11年に開催された生活環境審議会廃棄物処理部会や、先の通常国会における改正廃棄物処理法の審議における附帯決議において、処理責任との関係、適正かつ効率的な処理の推進、排出抑制やリサイクル推進などの観点から、その在り方について検討することが必要であるとの指摘がされていることから、平成13年度前半には検討を開始し、処理責任の在り方等について関係者の合意形成を図りつつ、必要な措置を講ずるべきである。
(2−2)個別リサイクル法の対象となる品目に対する廃棄物処理法の施設許可の検討
廃棄物処理法の特別法である容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号)(以下「容器包装リサイクル法」という。)や特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号)等の個別リサイクル法においては、リサイクル推進の観点から廃棄物処理法における収集・運搬や処理業の許可に関しては、廃棄物処理法の適用が除外され、許可を受けないで行うことができることとなっている。一方、施設設置の許可については、いずれも廃棄物処理法の規制がかかり、都道府県知事の許可が必要であるとされている。
個別リサイクル法に規定された品目は、その組織的・全国的なリサイクルの推進が必要であり、またそれが可能である品目であると判断されたものである。個別リサイクル法については、廃棄物としての適正処理を確保しつつ最大限リサイクルを推進するために、厚生省と主務官庁が共管となっており、事業者の義務やその品目の取扱い基準についてそれぞれの法の中で細かく規定している。また、当該品目は再生利用される段階においては、例えば容器包装については、法に定められた分別適合基準を満たす等、必要な管理、処理を経て再生施設に運ばれており、通常の廃棄物とは異なった性格を持つものになっている。さらに、再生施設での処理についても品目ごとにそれぞれ特徴を持った処理が必要であり、通常の廃棄物処理施設のように単なる減容焼却等が行われているわけではない。
廃棄物の不適正処理を防止するための廃棄物処理施設に係る規制措置の例外を設けることについては、たとえ個別リサイクル法の対象となる品目の処理施設であっても、廃棄物がいったん不適正処理され、あるいは環境汚染が生じた場合には、原状回復が困難であり、膨大な社会コストと生活環境保全上の支障を生ずるという性格のものであることから、特に施設の設置に係る許可制度の規制緩和については、不適正処理や生活環境保全上の支障が生じた場合の原状回復措置等の責任の在り方とともに厳格かつ慎重な検討が必要である。しかしながら、個別リサイクル法の対象となる品目の処理施設の中では通常の製品加工工場と類似した操業形態をとるものもあり、こうした個別品目の処理施設の設置に係る許可要件については、個々の処理方法や施設の特徴を考慮する必要があるため、その処理方法や施設の特徴を精査し、生活環境保全上の影響について調査検討した上で、類型化が可能であるかどうかと併せて、廃棄物処理法上の施設設置許可要件が適正であるか否かを検討し、その結果を明らかにすべきである。
(2−3)再生利用認定制度の対象範囲の拡充(認定品目指定基準の明確化)
再生利用認定制度とは平成9年に新設された制度であり、廃棄物のリサイクルを推進するため一定の要件に該当する再生利用に限って厚生大臣が認定を行い、認定を受けた者については処理業及び施設設置の許可を不要とする規制緩和措置である。本制度の対象となる再生利用は、廃棄物処理法規則第6条の2に基づき告示されたものに限ることになっている。現状告示により指定されている対象品目は、自動車用廃ゴムタイヤ、廃プラスチック類、汚泥(汚泥は産業廃棄物に限る)の3種類であり、それぞれ用途についても、廃ゴムタイヤはセメント材料用、廃プラスチック類は製鉄所の溶鉱炉にてコークスに代わる還元剤として使用する場合、また汚泥は高規格堤防用に限定されており、極めて厳格な運用がなされている。
再生利用認定制度については、規制緩和推進3か年計画(再改定)において、「生活環境の保全に留意しつつ、再生利用認定制度の対象となる廃棄物の範囲を拡大するとともに、認定基準を満たす者については積極的に認定する。」とされているにもかかわらず、現状、同制度の範囲・認定対象の拡大が積極的には行なわれていない。一方、再生利用認定制度の拡大を望む事業者側からも、新たな認定要望品目に関する必要な情報が認定主体である厚生省に詳細まで伝わっていない。この原因としては、再生利用認定制度の対象品目とされるために必要な要件や認定基準が明確でないことが考えられる。再生利用認定制度の認定品目追加の場合は、まず厚生大臣による新たな対象品目の指定がなされ、その後に指定品目のリサイクルを行いたいと考える事業者が認定事業者の申請を行うという制度になっているが、既に認定品目となっている自動車用廃ゴムタイヤ、廃プラスチック類、汚泥についても、例えば、建設汚泥について言えば、公共工事用ということなら他にも多くの用途があるにもかかわらず、何故用途を高規格堤防に限定するのかなど、3品目が指定された背景やそれぞれ再生利用の用途を限定している理由などは必ずしも明確に説明されてはいない。そのため、再生利用認定制度の拡大を望む事業者側にとっては、自ら希望する品目が、再生利用認定制度の対象として検討の俎上に乗るものであるかさえ予見不能となっている。
同制度は、リサイクルと称して不法投棄や不適正処理が行われるのを防止するために、事業者の認定に当たっては、認定基準を明確にした上でこれを厳格かつ慎重に運用することは当然であるが、一方で循環型社会への移行に欠かせないリユース、リサイクルを円滑に推進するために極めて有用な制度であり、できる限り有効に機能するように運用する必要がある。したがって、再生利用認定品目の追加を希望する事業者が厚生省に積極的な働きかけが可能なように、過去の認定の例を体系的に整理し、再生利用認定制度の対象品目として追加されるために満たすべき要件について明確な指針を出すべきである。
(2−4)ペットボトルを中心とした容器包装廃棄物のリサイクル率向上のための総合的施策の検討
容器包装廃棄物の再商品化を促進することを目的に平成7年に成立した容器包装リサイクル法は、その施行から既に3年が経過した。しかも本年4月に完全施行となり、対象品目及び事業者が拡大されたことから、今後の容器包装廃棄物のリサイクルの確実な向上のためには、その施行状況について検討を行なうとともに改善すべき点は積極的に改めていくことが必要である。
先行施行対象となった容器包装廃棄物の中で特に近年消費量が拡大しているのはペットボトルである。ペットボトルの回収率は、容器包装リサイクル法の施行以来高まっており、統計上把握されていない事業系からの回収・リサイクル量を除いた場合、平成11年度で23%となっている。一方、他の容器素材であるアルミ缶やスチール缶のリサイクル率は、業界発表値によれば70%を超えており、定義が異なるため単純な比較はできないが、ペットボトルの回収率はまだ低い数字である。しかも、ペットボトルは軽くて丈夫であり、その利便性の高さから消費者に好まれる素材であるため生産量が大幅に拡大しており、リサイクル率は上がってもリサイクルされずに廃棄される数量が増加しているという問題が起こっている。また、平成11年度は再商品化施設の能力が収集量の拡大に追いつかず、分別収集しても一部再商品化されず翌年に繰り越されるか、あるいは焼却処分されるといった事態も生じたものと思われる。さらに、ペットボトルは主に繊維として再商品化されているが、繊維としての需要は現在年間3万トン、その他の需要は1万トン程度と言われており、再生樹脂の品質やコストの問題から、従来からの手法によっては今後の大幅な需要拡大は見込めないため、再商品化可能量の拡大を図るためには新たな再商品化手法や新規用途の開発及び拡大等が求められる。こうした問題を抱えているペットボトルについて今後リサイクル率を上げていくためには、発生抑制、再商品化施設の整備、再商品化需要の拡大という3つの角度からの適切な施策が講じられていく必要がある。
EUの包装廃棄物指令(1992年採択)には、リサイクル率の目標として施行後10年以内に60%という数字が掲げられている。容器包装リサイクル法には目標リサイクル率が明示されていないが、我が国においても、容器包装廃棄物について法制化した以上、早期にリサイクル率を向上させる努力を行うことが必要である。しかしながら、平成11年度のペットボトルのリサイクル率は23%とガラスびんに比べて大きく下回っており、紙製・プラスチック製容器包装ではほとんどゼロに近い。しかも、本年4月に容器包装リサイクル法が完全施行され、対象品目が拡大したにもかかわらず、紙製・プラスチック製容器包装の分別収集の実施については模様眺めの市町村が多く、これに係る早期のリサイクル率向上にはより一層の努力が求められる。
容器包装廃棄物のリサイクル率については、市町村による回収率及び特定事業者による再商品化率から算出される。このうち特定事業者による再商品化については、容器包装リサイクル法に基づき市町村による分別収集見込量に対応した再商品化可能量の確保に向けて再商品化計画が策定されているところであり、再商品化能力拡大のための設備整備のための構想段階から実際の事業開始までに必要なリードタイムがある中で、分別収集された容器包装廃棄物を円滑にリサイクルできるような努力がなされているところである。また、再商品化能力拡大のための設備整備のための構想段階から実際の事業開始までに必要なリードタイム、分別が比較的容易な金属缶やかつて経済的に回収されていたため回収の社会システムができあがっていたガラスびんとの相違をどこまで見込むのか等を考慮に入れ、市町村及び事業系からの回収量の正確な把握を図ることも必要である。これらを踏まえ、事業者の自主的な努力目標としてのリサイクル率とその達成時期を設定することが求められる。
一方、これまでの容器包装リサイクル法の実施に伴って生じた問題点を分析し、分別収集された容器包装廃棄物の円滑なリサイクルを達成するために必要な施策を検討し、早急に実施に移すべきである。その際、以下のような対策も改善案の一つとして考慮に入れて検討されるべきである。
(2−5)リサイクルのための共同事業の推進と競争政策の在り方
廃棄物のリサイクルを推進するために、既に事業者が様々な取組を行っているが、それらの取組の中には、効率を求めて複数の事業者が共同で行う取組も含まれている。例えば、複数のメーカーが共同で廃棄物のリサイクル施設を設置する場合や、複数の販売業者が廃品の引取費用を取り決める場合がある。
このような取組は、循環型社会の形成を推進する観点からは積極的に促進すべきものであるが、一方で、取組の態様によっては、取組主体の本来の事業である製品・役務の製造・販売に係る競争や、リサイクル事業分野における競争を阻害する場合も考えられ、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)において問題となる可能性もある。
公正取引委員会は、例えば、メーカーによるリサイクルシステム構築のための共同取組については、基本的にはメーカー本来の事業にとって付随的な事業であり、製品市場それ自体における競争に及ぼす影響は間接的なものにとどまること等から、独占禁止法上も問題が少ないものと考えられるとしているが、具体的な判断に際しては、@共同化の必要性、Aリサイクルシステムへの参加者の数、B関連市場における市場シェア、Cリサイクルシステムの性格、D対象範囲、などを総合的に考慮しつつ、メーカー間の製品市場における競争や廃棄物処理市場等における競争に及ぼされる影響の大きさをみて判断することになるとしている。
本年、循環型社会形成推進基本法や各種リサイクル法が相次いで成立するなど、今後更に事業者のリサイクルのための取組は加速されると思われる。例えば、リサイクルしやすい部品の規格の統一化及び共通化、廃品引取費用の共同での有料化、廃品の回収に係るデポジット制度の共同導入、リサイクルの達成目標の共同設定、マニフェスト(廃棄物処理が適切に行われたことを確認するための管理票)の様式の統一などが行われることが考えられる。
このような状況において、公正な競争の確保を図りつつ廃棄物のリサイクルを積極的に推進するためには、廃棄物のリサイクルを推進する事業者に対して、公正な競争の確保を図る上で必要な範囲以上にその活動を制限することが無いように、具体的にどのような共同取組が独占禁止法上において問題になるかに関して明確なガイドラインを作成すべきである。
(2−6)使用済み自動車のリサイクル推進のための施策
使用済み自動車のリサイクル推進については、本年7月の論点公開において当委員会としての課題認識を整理して示したところであるが、その後、関係省庁において本件に関し総合的な施策の検討を開始したところであり、当委員会としてはその進捗を注視していく。
(3)廃棄物の適正処理のための制度改革
(3−1)医療機関から排出される廃棄物の適正処理のための制度改善
医療機関から排出される廃棄物には、人への感染を引き起こす可能性のあるものや注射針等の鋭利なものが含まれており、その取扱いには特別な配慮が必要である。厚生省では昭和63年に「医療廃棄物処理対策検討会」を設け、平成元年に「医療廃棄物処理ガイドライン」を作成し、医療機関等から排出される感染性廃棄物の適正な処理を図るための具体的な施策を推進してきている。平成3年には廃棄物処理法を改正し、感染性廃棄物を特別管理廃棄物として区別し、取扱いについて規制を設けるともに、「感染性廃棄物処理マニュアル」を作成し適正処理のガイドラインを示している。
現行の廃棄物処理法の区分によれば、医療機関から排出される廃棄物としては、一般廃棄物、産業廃棄物、特別管理一般廃棄物(感染性を有する一般廃棄物等)及び特別管理産業廃棄物(感染性を有する産業廃棄物等)の4種類があり、その処理については、それぞれの処理資格を有する事業者又は市町村に委託する必要がある。一般廃棄物、産業廃棄物の区分は処理責任と結びついた概念であり、一般廃棄物は市町村、産業廃棄物は排出者である医療機関が処理責任を負うこととなるが、感染性一般廃棄物は、市町村による処理がなされない場合もある。ただし、感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物は、一体的に感染性産業廃棄物の許可業者などに委託することができることになっている。このように医療機関から排出される廃棄物は、4種類の分別が必要であることに加え、それぞれ処理委託可能な業者が異なる場合がある。また処理責任の徹底状況が自治体により異なっていることから、医療機関にとっては極めて複雑な体系になっている。
このような体系であることから、医療機関から排出される廃棄物処理の現場では、廃棄物がどの分類に属するのかという点をめぐって混乱が生じている。例えば、医療機関から排出される紙おむつについては、素材がポリマーであることから一般廃棄物と産業廃棄物のどちらに分類されるのかの判断が難しく、感染性廃棄物に分類されるか否かについても、定義上は明確にされてはいるものの、定義に従った判断の結果が確実なものであるという外部への証明が難しく、現場では混乱が起こっている。また、市町村及び委託処理事業者と排出者の間で感染性廃棄物についての判断が異なる場合があり、排出事業者が感染性廃棄物ではないと判断して排出した一般廃棄物を市町村が処理しないという問題も起こっている。
感染性廃棄物の定義については、「感染性廃棄物処理マニュアル」に記載されており、その中では、血液、体液、病理廃棄物、病原微生物に関連した試験等で使用した物などを列挙して感染性廃棄物の範囲を明確にした上で、そのうち、注射針、メス等の鋭利な物以外で血液等が付着した物及び一定の感染性疾患にり患した患者から発生した汚染物については、専門知識を有する者(医師、歯科医師等)によって感染の危険がほとんどないと判断されたときには、例外的に感染性廃棄物とする必要はないとされている。しかしながら、実態として、専門知識を有する医師等が感染性廃棄物とする必要はないと判断しても、実際に取り扱う処理事業者や市町村職員が一般廃棄物としての取扱いを拒否する場合がある。この原因としては、感染性ではないとする判断が専門知識を有する者に委ねられており客観性を欠くこと、処理業者等の外部に対し感染性でないことを証明する方法が確立していないことなどが考えられるが、そもそも多忙な医療現場での即断を医師等に委ねること自体が実用性という面で問題を抱えていると思われる。
ドイツにおいては、医療機関から排出される廃棄物全てが、感染性・毒性などの危険度や、道徳的観点によってAからEまで詳しくランク付けされており、他の廃棄物と一緒に処理できるものとできないものが明確に区分されている。感染性に関しては、病原体の危険度によって取扱い方法を区分するとともに、一部の病原体による感染を除き蒸気による熱消毒やマイクロ波による消毒処理を行うことで他の廃棄物と一緒に処理が出来るものとしており、医療機関及び処理業者の間では特に大きな混乱は生じていない。我が国においても、感染性廃棄物の処理においては、蒸気による熱消毒やマイクロ波による消毒処理が行われる場合もあるが、この場合には感染性廃棄物の処理方法、感染性がなくなることの確認方法が確立されており、その確認結果を市町村に証明する方法が確立できれば、一つの客観的な基準になり得ると考える。
また、感染性廃棄物については、現在非感染性廃棄物とされるものであっても、坑悪性腫瘍剤等の薬剤やDNA廃棄物、また注射針等の鋭利なもののように、取扱いに特別な配慮が必要となり得る廃棄物があるため、今後、それらの規制の必要性について必要に応じて十分に検討する必要がある。
したがって、有識者や医療機関代表者等関係者の意見を聴き、感染性廃棄物の非感染性化の認定についての客観的な基準を策定するなど、感染性廃棄物の定義を客観的に判断できるものにすることについて検討するとともに、医療機関から排出される廃棄物の分類についても廃棄物全体の定義見直しの際に検討を行うべきである。また特別な配慮を必要とする廃棄物の取扱いについても、必要に応じて十分に検討すべきである。
(3−2)廃棄物処理業者に関する情報の一層の開示
本年の廃棄物処理法改正により、マニフェスト制度、措置命令の強化など、廃棄物排出事業者の責任が強化された。廃棄物の適正処理を推進するために確実に適正処理を行い得る処理業者を選択することも排出者の責任であるという点がさらに明確化されたことになる。このため、排出事業者が優良な処理業者を選択することができるような情報基盤整備のために、厚生省は、(財)産業廃棄物適正処理推進センターを通じてインターネットを使用した処理業者に関する情報提供を開始した。また、同時に処理業者についての格付けを民間企業等が行うことが可能なように、格付け手法についての調査研究を行う予定である。
インターネットを使用して提供される予定となっている情報の内容は、都道府県知事等から許可を受けた内容(名称、住所、業の種類、許可年月日、取り扱う産業廃棄物の種類等)と各業者から収集した付加情報(資本金、役員、売上高、処理実績、処理料金、電子マニフェストの加入の有無等)である。この処理業者の情報をインターネットを使用して提供するという仕組みは、排出業者が極めて簡便に利用できることから、すぐれたシステムであると評価する。
しかしながら、ここで開示が予定されている情報だけでは、排出事業者が選択した処理業者が責任を持って適正処理を行う優良業者であるかを判断できるだけの材料は提供されているとは言えない。むしろ、今回開示予定の情報の中で排出事業者にとって最も有益なものは、処理業者の任意提供である処理料金である。この開示はダンピング合戦を招き、かえって適正処理が確保できなくなる危険性を有している側面もあるが、今日の制度改正における排出事業者の自己責任で最終処分まで含めて管理を行うことと併せると、今のところ妥当なものと考えられる。排出事業者が優良処理業者を選択する際に重要な情報は、どの業者がコストをかけても適正処理を遂行する事業者であるかということであり、その情報と併せて処理料金を開示することにより、排出事業者側にも適正処理にはそれだけのコストがかかり、処理料金だけが選択の決め手ではないと認識させることになる。
したがって、優良事業者選択のために必要な処理業者の過去の不法投棄等に伴う処分歴、また都道府県により行われている立入調査の結果についての情報も同時に開示すべきである。処分歴や立入検査結果等は、私人である処理業者の個人情報に当たり、開示には慎重を期すべきではあるが、開示することが公共の利益になるものとして前向きに検討する必要がある。そのため、これらの情報を開示するためにクリアすべき点を整理し、関係部門とその実施に向けて必要な協議を開始すべきである。