規制改革についての見解

3 競争政策等

【分野別総論】

○問題意識

 日本経済の活性化、豊かな社会の実現のためには、これまでの経済社会構造を見直し、自由かつ公正な市場における競争を維持、促進することで、効率性の高い経済社会を構築していく必要がある。そのためには、消費者の選択の自由や事業者の創意工夫を妨げる規制の撤廃や緩和を進めることが重要であるが、それとともに、自由かつ公正な競争が行われるよう、市場経済の基本的なルールを整備し、それを的確かつ厳正で透明性を確保した形で運用することによって、競争政策を徹底することが求められる。
 また、経済活動の国際化、情報化、技術革新が一段と進む中で、市場経済の基本的なルールである競争政策についてはこのような社会の変化に適合するものでなければならない。

○検討状況

 これまで競争政策等分野では、現行の「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号)(以下「独占禁止法」という。)の規定や運用について、現在の経済社会情勢を踏まえて検討が必要と思われる点、そして、公正取引委員会が積極的に競争政策を実施するに当たり検討すべき点、さらには競争基盤としてのその他の制度の整備等について検討を行ってきた。行政改革委員会及び当委員会がこれまで取り組んできた代表的なテーマは、大きく次の3つに分類される。
 第1に、市場経済の基本となる自己責任原則に基づいたルールを確立するという観点から、「民事的救済制度の検討」及び「消費者契約法の動向」を取り上げ、いずれも制度の検討に当たっては規制改革の観点から有効かつ整合的な制度として検討すべきことを提言した。民事的救済制度については、本年5月に独占禁止法違反行為に対する差止請求制度の導入及び違反行為に係る損害賠償制度の拡充に関する法改正が行われ(平成13年7月までに施行)、消費者契約法については、本年4月成立に至った(平成13年4月施行)。
 また、ルールを確立する上では、制度の整備とともに運用における透明性の確保と明確化を図ることも重要であり、「警告及び注意の在り方」を取り上げ、公正取引委員会が独占禁止法違反のおそれがあると認めた場合に行う注意について公表の充実を求めた。さらに、公正取引委員会が不公正な取引方法として指定している不当廉売に関する運用については、廉売により他の事業者の事業活動を困難にさせることで支配的地位を確保し、その後に独占的な市場が形成されるなど消費者にとって好ましくない影響を与えることが認められる市場で行われる廉売行為に限定することとすべき旨を提言した。
 第2に、競争制限的な制度を見直すという観点から、行政改革委員会以来一貫して様々な独占禁止法の適用除外制度について見直しを行い、また、景品に関する規制の緩和について指摘を行ってきた。これまで取り上げてきたものとしては、「再販売価格維持制度指定品目(化粧品、医薬品)の早期廃止」「著作物の再販売価格維持制度の見直し」「独占禁止法適用除外カルテル等制度の見直し」「独占禁止法第21条及び第24条の見直し」及び「特定業種の景品制限告示の見直し」などがある。
 化粧品及び一般医薬品の再販売価格維持制度品目指定については、メーカー等が再販売価格維持行為を行っても一定の条件の下で独占禁止法が適用されず、再販行為が認められることとされていたものを早期に廃止すべきという意見を行政改革委員会が示し、平成9年4月、化粧品及び一般医薬品に対する再販指定は取り消された。
 著作物の再販売価格維持制度の見直しについては、行政改革委員会及び当委員会として、国民の議論を深め、その理解を踏まえて速やかに適切な措置を講ずるべき旨提言してきているが、現在なお制度が維持されている。
 独占禁止法適用除外カルテル等制度については、不況カルテル制度や合理化カルテル制度の廃止など、独占禁止法適用除外カルテル等制度の見直しについて累次指摘を行った結果、平成11年7月、不況カルテル制度・合理化カルテル制度等及び適用除外法は廃止され、個別法に基づく適用除外制度についても適用除外の範囲の限定等が実施された。また、独占禁止法第21条及び第24条の問題は、電気事業、ガス事業など自然独占事業に固有な行為に対する適用除外、一定の組合の行為に対する適用除外の見直しの問題であるが、当委員会の指摘を踏まえ、本年5月、自然独占事業に固有な行為に対する適用除外を廃止する独占禁止法改正が行われた(平成12年6月施行)。
 特定業種の景品制限告示の見直しについては、行政改革委員会が、業種別に景品を制限している全29業種の業種別告示について見直しをすべき旨の指摘を行い、平成8年以降、24業種の告示が廃止され、5業種(新聞、雑誌、家庭電気製品、不動産、医療用医薬品及び衛生検査所)についても規制が緩和された。
 第3に、産業及び企業の国際競争や構造改革に対応するために制度を見直すという観点から、これも行政改革委員会以来、「持株会社規制及び大規模会社の株式保有総額制限の見直し」及び「合併、営業譲渡等の届出制度の見直し」について取り上げてきた。さらに、この関連で金融分野においても、「金融会社の株式保有規制の見直し」について提言を行った。持株会社規制については、平成9年12月、一定の条件における持株会社が解禁され、同時に「大規模会社の株式保有総額制限」についても制限の対象となる株式の範囲を縮減した。合併、営業譲渡等の届出制度の見直しについては、平成11年1月、合併や営業譲受後の総資産が100億円を超えない場合および10億円超の会社の合併でない場合に届出は不要となった。
 このような過去の検討を踏まえて、今年度は新規テーマとして、「カルテル・談合に対する執行の強化」「景品類に関する規制の在り方」「下請取引における受発注の電子化」「入札談合に関与した発注者側に対する措置」及び「規制産業における競争政策の在り方」の5テーマを取り上げるとともに、引き続き注視していくテーマとして、「一般集中規制(持株会社規制、大規模会社の株式保有総額制限、金融会社の株式保有規制)の見直し」「著作物の再販売価格維持制度の見直し」「民事的救済制度の実施状況」及び「独占禁止法違反に係る注意の運用状況」の4テーマを取り上げている。
 各々のテーマについての見解は各論において後述するが、競争政策の推進を図る上で、ここで以下のことを述べておきたい。
 即ち、政府は、平成12年7月、規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ第3回共同現状報告において、平成13年の中央省庁再編によって、総務省の下に公正取引委員会が置かれた後も、政策に関する公正取引委員会の独立性が現行どおり確保されること等を確認している。当委員会としても、競争政策を推進する上で、同報告による確認事項が実行されることが重要と考え、報告内容に沿った運用がなされることを期待する。

【各論】

(1)カルテル・談合に対する執行の強化

 カルテル・談合に対する罰則については、独占禁止法において、事業者が他の事業者と共同して対価を決定するなど、競争を実質的に制限する不当な取引制限を行うことで、商品や役務の対価に影響を与える行為をした場合、公正取引委員会が行為の実行期間における商品又は役務の売上額の100分の6(小売業については100分の2、卸売業については100分の1)を乗じた額の課徴金を納付することを命じなければならないとされている。そして、同法において、私的独占・不当な取引制限の禁止・事業者団体による競争の実質的制限の禁止違反については、事業者と事業者団体は1億円以下の罰金、個人は500万円以下の罰金あるいは3年以下の懲役が科されるとされている。
 カルテル・談合に対する執行の強化に関して、公正取引委員会は、平成2年6月に「独占禁止法違反に対する刑事告発に関する方針」を公表し、価格カルテル、入札談合等の違反行為の中でも、国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案に対しては、積極的に刑事処分を求めて告発を行うことを示した。
 しかしながら、悪質な価格カルテル、入札談合等の中には、刑事処分を科すまでには及ばない場合が考えられ、その場合に、現行の課徴金制度があくまでも不当利得の徴収であって、制裁的な措置を行えないということが、公正取引委員会の審査活動の実効性を高める上で制約になるのではという懸念がある。
 一方で、米国では、摘発効果の向上を図るために、司法省の反トラスト局が会社の刑の免責措置方針を公表することで、情報提供を呼びかけ、協力者に対しては、まず、一定の条件を満たせば、訴追しないという合意書を締結した上で、捜査を進め、首謀者を摘発し、最終的に協力者がすべての条件を満たせば、訴追は行わないという合意を有効なものとしている。同様の免責措置方針は、EU、英国、ドイツ、韓国等においても採用されている。
 市場経済による公正かつ自由な競争を維持、促進する上では、カルテルや談合の抑止を図る方策や公正取引委員会の審査活動の実効性を高める方策を検討することは重要な課題である。上記の懸念や他国において効果を上げている運用を参考に、カルテルに対する現行の課徴金制度について、悪質な違反行為の摘発を効果的に行い、カルテルや談合の抑止を図るために、恣意性を排除し、かつ透明性の維持と向上を確保した上で、調査に積極的に協力し、かつ違法性の低い事業者に対する課徴金の減額措置の必要性や有効な調査、検査の在り方などを含めて、公正取引委員会の審査活動の実効性を高める方策について検討すべきである。

(2)景品類に関する規制の在り方

 景品類とは、顧客を誘引するための手段として、ある取引に付随して提供される経済上の利益を指し、公正取引委員会は、不当な顧客の誘引を防止するために必要がある場合、景品類の価額などを制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
 景品類の価額は、くじなどの方法を用いて懸賞により提供する景品類の場合は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(最高額10万円)を超えてはならないとしている。また、一般消費者に対して懸賞によらないで提供する景品類の価額は、景品類の提供に係る取引の価額の10分の1の金額(最小額100円)の範囲を超えてはならないとし、購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合や購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の取引の価額を100円としている。ただし、景品類提供の対象となる商品などの通常行われる取引の価額が100円を超えると認められる場合は、その最低の価額を取引の価額としている。
 また、景品類に該当しないもので、一般消費者に対して、広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合は、1000万円を超える額の経済上の利益について、不公正な取引方法に該当するとしている。
 商品の購入は本来、商品についての情報が十分に提供された上で消費者が自己責任で購入の意思決定をするものであり、過剰な景品によって不当に顧客を誘引することを防止する、という観点からの規制がどの程度まで必要か検討していくことが重要である。
 当面の課題としては、特に、インターネットを利用して、ホームページ上で商品の販売を行うなど、新しい取引形態である電子商取引が急速に普及しつつあることから、このような新しい形態の商取引に対応して、現行の景品類に関する規制について早急に検討を行い、ホームページ上で景品類を提供する際の景品規制に関する運用基準など、電子商取引における景品類の規制についての運用基準を明確化すべきである。

(3)下請取引における受発注の電子化

 親事業者と下請事業者の間で行われる取引については、下請代金支払遅延等防止法に規定があり、その第2条では、親事業者は、下請事業者に対し製造委託又は修理委託をした場合は、下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならないとしている。同法では、親事業者・下請事業者とは、以下のいずれかに該当するものとしている。

  1. 資本の額又は出資の総額が3億円を超える事業者が、個人又は資本の額若しくは出資の総額が3億円以下の事業者に対し製造委託又は修理委託をする場合に、委託者を親事業者、受託者を下請事業者という。
  2. 資本の額又は出資の総額が1000万円を超え3億円以下の事業者が、個人又は資本の額若しくは出資の総額が1000万円以下の事業者に対し製造委託又は修理委託をする場合に、委託者を親事業者、受託者を下請事業者という。  下請代金支払遅延等防止法は、親事業者が下請事業者に対して、優越的な立場を形成し、その立場を利用することで不公正な取引方法を行うことを防止するための規制である。したがって、その主旨に沿った有効な規制を行うためには、どのような取引方法が不公正な取引方法に該当するかについて、親事業者及び下請事業者に十分に認識される必要がある。
     しかしながら、事業者側からの下請代金支払遅延等防止法に関する要望を見ると、親事業者が製造・修理委託の通知を磁気記録媒体で行う場合に、どのような取引方法が下請代金支払遅延等防止法において問題となるのかについて、必ずしも事業者にとって明確になっておらず、下請代金支払遅延等防止法違反になるのではないかという不安から、円滑な取引が妨げられる懸念がある。
     したがって、下請代金支払遅延等防止法は親事業者が磁気記録媒体等の交付等を行うことそのものを妨げるものではなく、その際に不公正な取引方法が行われることを防止するものであり、下請事業者に十分な説明を行うなど公正な手続きを行った上で、磁気記録媒体等の交付を受領する体制の整った下請事業者とのみ電子受発注を行うことを妨げるものでないことを明確にすべきである。

    (4)入札談合に関与した発注者側に対する措置

     入札談合に関与した発注者側に対する措置については、刑法では、偽計又は威力を用いて公の競売又は入札の公正を害すべき行為をした者、公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で談合した者については、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処するとされている。独占禁止法上の刑事事件においては、発注担当職員が事業者による入札談合を容易にした場合には、当該職員も共犯として告発・起訴される。また、会計検査院法等においては、国の会計事務を処理する職員に対して職務上の犯罪が認められるときは、検察庁に通告する義務等が定められている。
     入札談合の防止を徹底するためには、官公庁等発注者側の取組が極めて重要であり、公正取引委員会は、入札談合に関する調査の結果、発注制度・運用等における公正かつ自由な競争を阻害する問題点があれば、発注者に対し、その改善措置を講じることを要請し、改善結果の報告等を求めており、最近の例では、平成12年5月、北海道上川支庁発注の農業土木工事入札談合について、北海道に対して要請を行った。また、発注官庁等から公正取引委員会への情報提供や、調達担当職員による関連情報の収集を円滑化することを目的として、発注官庁等との間で、公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議や調達担当者を対象とした研修会を実施している。このほか、発注官庁等から、談合情報対応マニュアルの作成や発注制度・運用の在り方について相談を受けたときは、助言等の支援を積極的に行っている。
     このような取組にも関わらず、公共入札に関わる談合事件が起こり、事件の中には、入札制度を運用する上で、談合が行なわれやすい仕組みがあるものや、発注者側の行為が談合の誘因となっているものもあると思われる。そのような状況にかんがみると、現行制度の中で行う発注者側に対する取組が、違法行為の排除及び再発防止を図る上で十分な機能を果たしているとは言い難い面がある。
     公共入札に関わる談合を排除し、再発防止を図るためには、まずは、適切な情報開示を行うことで入札過程の透明化を進めることが重要であるが、あわせて、談合に関与した発注者側に対する措置を十分に整備することも必要である。したがって、入札談合に関与した発注者側に対する措置について、公正かつ自由な競争を促進する観点から、独占禁止法違反行為の排除及び再発防止を図るために、新しい制度の導入を含めた法整備について検討すべきである。

    (5)規制産業における競争政策の在り方

     電気事業、ガス事業、電気通信事業、運輸事業などのうち、従来、新規事業者の参入が制限されていた産業については、規制を緩和、撤廃することにより参入の自由が図られてきているが、今後は、公正な競争を促進するための制度設計が重要である。
     独占禁止法では、公正取引委員会の所掌事務について、私的独占の規制に関すること、不当な取引制限の規制に関すること、不公正な取引方法の規制に関すること、独占的状態に係る規制に関すること等の規定があるが、上記の規制産業における競争的仕組みの導入等に当たって、公正取引委員会が所掌事務を遂行する上で政策提言等を行う必要があれば、公正取引委員会は今後も競争促進の観点からこれらの産業における競争の状況を調査し、改善の余地がある場合には積極的に政策提言等を行っていくべきである。
     また、上記の規制産業については、競争を促進する観点から、事業所管省庁と公正取引委員会が、ガイドラインの策定を含めて、競争に関わる制度の新設、見直しについて必要な連携を行う仕組みについて検討すべきである。
     例えば、事業所管省庁と公正取引委員会が必要に応じて共同でガイドラインを作成し、作成されたガイドラインが適切に運用されるべく監視するなど、さらに競争を促進する仕組みの検討等が考えられる。実際、電気事業及びガス事業においては、競争政策の観点から、所管省庁と公正取引委員会とが共同で競争環境の整備に資するガイドラインの策定等を行った。
     また、競争に関わる制度の新設や見直しの検討に際しては、競争導入が行われて間もない産業分野から非対称規制が既に法律上導入されている分野等まで状況が様々であり、かかる競争の実態等を十分に踏まえる必要がある。
     なお、平成13年の中央省庁再編によって、総務省の下に公正取引委員会が置かれた後も、政策に関する公正取引委員会の独立性が現行どおり確保されることについては、総論で述べたように、既に政府において確認されていることであるが、特に規制産業における競争的仕組みの導入等に当たり公正取引委員会が役割を担うに際しては、公正取引委員会の独立性が現行どおり確保されることが重要であり、その観点からも上記の確認事項に沿った運用がなされることを期待する。

    (6)一般集中規制(持株会社規制、大規模会社の株式保有総額制限、金融会社の株式保有規制)の見直し(※)

     持株会社規制について、独占禁止法では、事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の設立を禁止している。公正取引委員会は、その運用において、持株会社として禁止される類型を定義し、持株会社グループの総資産の合計額が15兆円を超える場合、株式所有により事業活動を支配している会社の事業規模が5以上の事業分野にわたって著しく大きい場合などを禁止される持株会社の類型としている。
     また、大規模会社の株式保有総額制限について、同法では、金融業以外の事業を営む株式会社であって、資本の額が350億円以上又は純資産の額が1400億円以上である会社が株式を取得する場合には、その取得価額の合計額が自己の資本の額又は純資産の額のいずれか多い額を超えて取得してはならないとし、金融会社の株式保有規制については、金融業を営む会社は、国内会社の発行済株式総数の5%(保険会社の場合は同10%)を超えて株式の保有をしてはならないとしている。
     上記のような禁止される持株会社の範囲、大規模会社の株式保有総額の制限の対象となる株式の範囲等については、平成9年の独占禁止法改正時に、5年を経過した時点における検討及び必要な場合に所要の措置を講ずる規定がある。
     株式保有によって事業支配力が過度に集中し、公正な競争が阻害されることは回避すべき重要な事態であり、そのような弊害を防止する規制の必要性は否定されるものではないが、上記の現行の持株会社規制、大規模会社の株式保有総額制限、金融会社の株式保有規制は、一定規模の株式保有について外形的に事業者を規制するものであることから、事業支配力の過度集中を防止するために必要な範囲以上に事業活動を制約する懸念がある。
     企業再編が急速に進んでいる昨今の経済変化を踏まえれば、企業組織形態の選択に当たっては、企業にできるだけ多くの選択肢を与えるためにも、現行の持株会社規制、大規模会社の株式保有総額制限、金融会社の株式保有規制については、一定規模の株式保有に関する外形的な規制形式を可能な限り廃止することとして、事業支配力の過度集中の弊害を除去するための実効的な規制を導入する必要性の可否を検討し、平成13年度中に結論を得て、平成14年度中に所要の措置を講ずるべきである。

    (7)著作物の再販売価格維持制度の見直し(※)

     ある商品のメーカー等が、取引先である卸売業者や小売業者に対して、卸売価格や小売価格を指示してこれを維持させる行為は、一般に「再販売価格維持行為」(以下「再販行為」という。)と呼ばれており、独占禁止法により「不公正な取引方法」として禁止されている。ただし、著作物については、発行者等が再販行為を行っても一定の条件の下で独占禁止法が適用されず、再販行為が認められることとされている。現在は、公正取引委員会の運用解釈により、再販行為が認められる「著作物」は、書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CDに限定されている。
     規制緩和推進3か年計画(再改定)においては、「著作物(書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)の再販売価格維持制度については、独占禁止法上原則禁止されている再販行為に関する適用除外制度であることから、制度を維持すべき相当の特別な理由が必要であり、今後、行政改革委員会最終意見の指摘する論点に係る議論を深めつつ、適切な措置を講ずるものとする。」とされており、これを受けて公正取引委員会では、著作物の再販売価格維持制度について引き続き検討を行い、平成13年春を目途に結論を得ることとしている。
     公正取引委員会が平成13年春に得るとしている結論においては、閣議決定を踏まえて、より競争的な流通の実施に向けて適切な措置が講ぜられることが示されることを期待する。
     なお、当委員会は本年、ITに関する規制改革を重点課題として検討を進めてきたところ、インターネットを利用する電子商取引などの新しい媒体を通じた著作物の流通形態が広まりつつあると認識した。公正取引委員会は、このような流通形態の広がりを視野に入れて結論を出すことを期待する。

    (8)民事的救済制度の実施状況(※)

     民事的救済制度については、規制緩和推進3か年計画(再改定)で、「規制緩和推進のための基盤的条件の整備の観点から、有効かつ整合的な制度となるよう結論を得て、私人により独占禁止法違反行為(不公正な取引方法に係るもの)に対する差止請求を行うことができる制度を新設する等のための所要の法的措置を講ずる。」こととされた。
     本年5月、民事的救済制度の整備に係る独占禁止法改正が行われ、平成13年1月6日から6か月以内の政令で定める日から改正法が施行される。改正法では、独占禁止法違反行為に対する差止請求制度の導入及び損害賠償制度の整備が行われた。
     民事的救済制度の整備は、公正取引委員会に加え、競争政策の執行を広く私人及び司法制度にも委ねることにより、競争の維持、促進を図るという観点から重要な課題である。したがって、公正取引委員会は、法改正により導入された差止請求制度及び整備された損害賠償制度が、競争の維持、促進を図るという観点から有効に機能しているかについて、制度の実施状況を注視すべきである。
     また、現行の制度では、私人による差止め請求を行える独占禁止法違反行為が不公正な取引方法に限定されているが、上記した民事的救済制度の整備の観点からは、不当な取引制限、私的独占についても、その対象とすることが必要と考える。他方、不当な取引制限や私的独占であっても、その手段が不公正な取引方法と認められる場合には、現行制度においても差止め請求の対象となり得る。したがって、制度の実施状況を注視しつつ、事例の蓄積を待って必要性が認められる場合には、私人による差止め請求ができる独占禁止法違反行為として、私的独占及び不当な取引制限を対象とすることを含めて、民事的救済制度を更に充実した制度とするための検討に着手すべきである。

    (9)独占禁止法違反に係る注意の運用状況(※)

     公正取引委員会は、独占禁止法に違反する疑いがある場合で勧告に足る証拠が得られなかった場合に警告を行い、違反につながるおそれのある行為が見られた場合に注意を行っている。警告についてはその都度、個別の関係人の概要、被疑事実の概要、排除措置等について公表し、注意については個別の内容公表は行っていないが、年次報告において業種・行為類型別分類を明示している。
     規制緩和推進3か年計画(再改定)では、「現在、発出の都度行われている警告の内容公表について、引き続きこれを励行するとともに、注意についての公表内容について、更に具体性を高める。また、注意については、適切な運用が行われることを促進するために、その適用基準について、必要に応じて適切な範囲で明らかとする。」とされた。公正取引委員会は、閣議決定された措置が引き続き励行されるよう積極的に取り組むべきである。