規制改革についての見解

4 法務

【分野別総論】

○問題意識

 企業が経済活動をするに当たり、企業の関係者間の私法的な権利義務関係を定めたものが商法である。商法は昭和25年に大改正されて以来、昭和49年の監査制度の強化、昭和56年の株主総会の活性化等、平成2年の最低資本金制度の導入等、最近では平成6年の自己株式取得規制の緩和、平成9年のストック・オプション制度の導入やいわゆる株式消却特例法の制定など、その時々の需要に応える形で法改正が行われてきた。
 バブル経済の崩壊後は、主として企業リストラクチャリングのための法制整備が政策的課題となったこともあり、平成7年以降、会社の組織再編に関する商法改正が重点的テーマとなった。平成9年には合併法制の見直しが行われ、平成11年には株式交換・株式移転制度が創設された。そして今年の5月には会社分割制度を導入する法改正が成立し、これにより、会社の組織再編に関する一連の商法改正は一応完了した。
 しかしながら、企業を取り巻く今日の経済環境は、経済のグローバル化やIT革命の進展、産業構造の転換、資本市場の拡大など変革の大きなうねりの中にある。このような企業を取り巻く経済環境の急激な変化に的確かつ迅速に対応するためには、基本法である商法について組織再編以外の分野についても見直しを行うことが不可欠である。特に、連結決算、執行役員や社外取締役の導入といった国際的な時流に対し、日本の商法が対応できていないとの指摘がある。
 先進諸外国においても会社法の改正や改正の検討が頻繁になされているが、最近の特徴は二点ある。第1に、会社法の役割についての認識の変化である。会社法の性格は、関係者間の権利義務関係を規定する私法的な役割にあるが、現在では、欧州を中心に、会社法の在り方は国の経済政策の重要な制度的インフラとして議論されるようになってきている。
 第2に、IT革命とそれを主たる背景にした国境を超えた大企業間の競争の激化及び各国資本市場の規模の拡大という環境の変化が重要である。伝統的な会社法は、これらの状況を十分念頭に置いていないことから、会社の活動を事前に規制する面が多数残っている。現状のままIT革命や資本市場の拡大に対応した会社法改正を行わないと、会社の活動に支障が生じるのみならず、国の経済にとってもマイナスになるおそれがあると考えられる。企業活動を支えるインフラとしての商法は、諸外国の動向を参考にしつつ、産業の国際競争力向上のために、機動的にその改正や整備を検討することが必要である。

○検討状況

 当委員会では、昨年度初めて企業法制に関する内容の提言を行った。具体的には、ストック・オプション制度につき、使い勝手の向上という観点から制度の改善を取り上げた。その結果、自己株式方式と新株引受権方式の併用については既に法改正が行われ併用が認められることとなった。また、株主総会制度を中心に、コーポレート・ガバナンスに関する制度の改善についても議論を始めた。企業法制以外では、高度情報通信社会における事業活動基盤整備及び電子商取引等の発展という観点から、昨年度は、電子商取引等の基盤づくりの推進について提言を行った。
 このような流れを踏まえ、今年度の法務分野においては、ベンチャー企業の出現や会社形態・経営手法の多様化、企業活動のグローバル化などに対応し、企業経営の機動性を確保できるよう、激変する経済環境の実態に即した商法の改善に重点を置き、提言を行っている。具体的には、エクイティ・ファイナンス手段の多様化、検査役調査制度の改善、コーポレート・ガバナンスに関する制度の改善、ストック・オプション制度の改善、商法に関する電子化の推進、商法開示と証券取引法開示の調整、自己株式の失効及び処分の時期である。
 本年9月、法制審議会商法部会は、商法の大幅な見直しを行い、平成14年通常国会への法案提出を目途に検討を行うとの方針を決定した。しかしながら、国内外の経済環境は急激に変化していることを考えると、緊急課題については立法を前倒しすることが望ましい。
 なお、商法の抜本改正並びにその後の改正にあたっては、その基本的な理念としては、諸外国で共通の認識になりつつある「競争力を高める会社法、IT革命に対応した会社法、資本市場の拡大に対応した会社法」を目指す観点からの検討がなされるよう強く期待する。改正の方向性としては、今日のIT環境と発達した資本市場環境の中における株主の基本的な権利は何であるべきかを十分整理し、それをきちんと法制上確保した上で、会社の活動を事前に制約するような規制を撤廃することが重要である。

【各論】

(1)エクイティ・ファイナンス手段の多様化

 社債については規制緩和が進み、市場が整備されつつあるが、株式については優先株制度が平成2年改正で改善されたものの、使い勝手の面でなお改善を要すると考えられる点がある。ベンチャ−企業や持株会社化等によるグループ経営を志向する企業が増加している環境の中で、企業がさらなる成長を遂げていくためには、法的インフラとしての商法を、自由化及び多様化という形で規模が拡大しつつある資本市場の動向に適合させ、市場の発展を促す方向で整備・拡充することが不可欠である。今後は、エクイティ・ファイナンス手段の多様化という観点から、資金調達手段を拡充することが重要であると考えられる。

(1−1)無議決権優先株の発行枠拡大及び優先株発行手続の簡素化等
 無議決権優先株の発行限度株式数については、平成2年の法改正により発行済株式総数の4分の1から拡大され、現在その3分の1となっている。産業活力再生特別措置法では、債務の株式化の為の環境整備の一環として、発行限度枠を商法上の3分の1から2分の1へ拡大する措置が講じられている。MBO(Management Buyout)等の実施に伴う場合など、無議決権優先株発行による資金調達ニーズが強くなりつつあることから、商法における発行限度枠の拡大に対する要望が高まっている。
 優先株発行手続の簡素化等の制度の整備に関しては、まず、株式の消却原資を配当可能利益額の範囲内とする制約がある。平成10年の消却特例法改正により、公開会社について、法定準備金(資本準備金と利益準備金の合計)が資本金の4分の1を超える場合、超えた額の範囲内で資本準備金を原資とする株式の買入消却が時限的に認められている。これを恒久化し、商法本体に取り込むことにつき、要望が強い。また、転換株式については、株主側からの転換のみが認められており、会社側からの転換権を認めてほしいという要望がある。
 これらの要望を踏まえ、資金調達手段の多様化の観点から、無議決権優先株の発行枠拡大や優先株の発行手続の簡素化等といった点について、制度を整備すべきである。

(1−2)トラッキング・ストックの導入
 トラッキング・ストックとは、経営権や組織形態を分けずに特定部門又は特定の子会社の業績を基礎に市場から資金調達を行う種類株式である。現在の商法では、定款への記載方法やディスクロージャーの在り方等について必ずしも明確になっていない点がある。
 一方、持株会社化の進行や、多角的な事業展開を行う企業においては、事業ごとに成長性が大きく異なってきているといった環境変化を背景に、トラッキング・ストックに対するニーズが急速に高まっている。したがって、株式による資金調達手段の多様化を図る観点から、トラッキング・ストックについて、制度の整備を行うべきである。

(1−3)1株当たり純資産額規制の廃止及び株式分割時における株式発行授権枠の拡大
 商法上、1株当たりの純資産額は、5万円を下回ってはならないこととされている。そのため、情報通信関連等の高株価企業や成長途上のベンチャー企業が株式分割を行うことに支障があり、流動性の阻害要因になっている。しかしながら、株式分割によって株数が増え1株当たりの純資産額が減ったとしても、資本基盤が弱くなるわけではないので、今日では1株当たりの純資産額を5万円以上とする規制は、合理的とは言えなくなってきている。
 また、会社が発行する株式の総数は、発行済株式総数の4倍を超えて増加することができない。現在の授権資本制度の下では、新規発行株式数が発行済株式数の4倍を超える時は、株主総会を開いて定款変更をする必要がある。しかし、株式分割の場合は、発行済株式総数の4倍を超える株式の発行を認めたとしても既存株主の権利を侵害するものではない。
 したがって、株式分割の自由度を高め流動性を確保する観点から、1株当たりの純資産額の規制を廃止するとともに、株式分割時における株式発行授権枠を拡大すべきである。なお、出資単位の細分化の防止は、法律で規制せず、個々の企業が株主管理コストの負担との兼ね合いで行えばよいこととすべきである。

(2)検査役調査制度の改善

 検査役調査制度は、現物出資、財産引受及び事後設立に際し、目的たる財産が過大評価されると会社の資本充実を害し、他の株主の権利が希釈化されることから、裁判所の選任した検査役による調査が必要とされているものである。
 平成2年の商法改正において、現物出資又は財産引受の目的物の価格が少額である場合、不当評価のおそれがない場合及び専門家による証明書がある場合は、検査役の調査を要しないこととされた。また、産業活力再生特別措置法では、認定企業は裁判所の選任する検査役の調査を弁護士、公認会計士、監査法人等の調査に代えることが可能とされている。
 検査役調査制度においては、検査役の選任や調査に掛かる時間・費用が、企業にとって過大な負担となっている場合があるとの指摘が一部にあり、この負担が目的となる財産対比で過大になるような場合には、制度の本来の目的である債権者保護を阻害しかねないとも考えられる。
 したがって、検査役調査制度について、制度の目的を維持しつつ、その手続をより合理化することができないか等を検討し、改善すべきである。

(3)コーポレート・ガバナンスに関する制度の改善

 企業は、通常、株主を始めとする様々なステークホルダーの期待にこたえ、利潤の獲得を目指しているが、その基本理念は効率性と健全性である。すなわち、企業の利潤獲得は効率的に行われる必要があるが、そのプロセスは健全性(外から見える形での公正性)が確保されていなければならない。コーポレート・ガバナンスの在り方は、国により企業により異なり得るものであるものの、その在り方を考える際には、効率性と健全性の双方を調和させるシステムは何かについて、検討を深めることが重要である。

(3−1)取締役会及び監査役会の在り方及び株主代表訴訟制度の改善
 現在の商法では、取締役会は会社の業務の執行を決定し取締役の職務執行を監督することとされているが、従来の実務では後者の監督機能が果たされているかは疑問がある。また、徐々に企業への導入が進みつつある執行役員については、取締役会の監督機能を発揮させるための自助努力と評価できる側面も有しているが、現行商法には何ら規定がないため、その権限・責任が明確であるとは言えない。さらに、取締役の職務執行の監査については、監査役が行うこととされ、例えば、監査役制度に代えて、社外取締役に監査権限を与えることにより、監査機能を発揮させるといった選択肢をとることもできない。株主代表訴訟に関しては、6か月以上株式を保有していれば、取締役の責任を追及する株主代表訴訟の提起を請求することができるとされている。
 企業間の国際的な競争が激化し、また、外国人株主の増加など企業の経営や組織が様変わりしている中で、商法で定められている企業の統治システム(コーポレート・ガバナンス)をグローバル・スタンダードに近づけるとともに、より自由度の高いものにすべきとの指摘が多くなされている。企業が激変する今日の経営環境に対応していくためには、業務執行者である代表取締役が監督にあたるべき取締役会の構成員から必ず選出されなければならないという制度を見直す必要がある。また、取締役会の主要な構成員となった社外取締役に監査権限を与える制度と監査役制度との選択を認める制度(選択制)の採用、規模・公開性の考慮、ガイドラインの活用、取締役会におけるテレビ会議の認容、といったより弾力性のある法体系が必要になってきている。なお、透明性の確保とディスクロージャーはコーポレート・ガバナンスの基本である。見直しにあたっては、取締役・監査役の人事について、プロセスを株主にディスクローズする等、透明性を確保することが重要である。
 さらに、完全子会社については、たとえ大規模なものであっても株主は親会社だけであるのに、株主総会の招集通知や開催方法のように、商法上、多数の株主の存在を前提とした規定が存在するため、これを守ろうとする企業にとって、余分な手間やコストが掛かっているとの指摘がある。
 これらを踏まえ、コーポレート・ガバナンスの実効性をより高める観点から、業務執行機関と監督機関の分離、選択制の採用、取締役・監査役・執行役員の権限の明確化、完全子会社における法制の簡素化、株主代表訴訟制度の改善等につき検討するとともに、商法の強行法規性の緩和を図るという方向で、機関の在り方の見直しを行うべきである。

(3−2)株主総会制度の改善(※)
 現在の商法では、株主総会の特別決議は、発行済株式総数の過半数にあたる株主の出席が求められ、必要多数として出席株主の議決権の3分の2以上が求められている。また、株主名簿の閉鎖期間及び基準日の設定は、決算期から3か月以内と定められているとともに、株主提案権行使期間は、総会の会日の6週間前までとなっている。株主総会の決議事項については、商法で定められた取締役・監査役の報酬の決定、計算書類の報告・承認(利益処分等)、又は定款に定められた事項等を決議することとされている。
 株主総会制度の在り方は、コーポレート・ガバナンスの在り方に関する重要な問題であり、企業法制の基本問題の一つである。したがって、取締役会及び監査役会の在り方・株主代表訴訟制度等の他の関連する制度、株主の権利の確保といった点に留意する必要がある。その上で、株式会社の経営の効率化を図り、その業務執行の適正を確保することにより、株主の権利を実現するという観点から、株主総会については、株主総会特別決議の定足数の見直し、株主名簿の閉鎖期間及び基準日の期間の制限の廃止又は緩和、株主提案権行使期限の繰上げ、株主総会の決議事項の軽減、会社の情報の適正な開示の在り方について、これらが相互に密接に関連するものであることに留意しつつ、検討し、改善すべきである。

(4)ストック・オプション制度の改善(※)

 ストック・オプション(自社株購入権)制度とは、企業が取締役や従業員に対し、あらかじめ定められた価格(譲渡価格)で自社株を購入する権利(オプション)を与える制度である。平成9年5月の商法改正により自己株式方式が解禁され、平成9年10月からは新株引受権方式も認められ、平成12年5月には自己株式方式と新株引受権方式の併用も認められた。
 新事業創出促進法においては、新事業分野開拓のための計画の認定を受けた企業に対し、付与限度枠の拡大(10分の1を3分の1まで)や付与対象者の拡大(取締役、使用人に加え、技術者、大学教授、弁護士等社外の支援者まで)が認められている。また、産業活力再生特別措置法においては、事業再構築のための計画の認定を受けた企業に対し、付与限度枠の拡大(4分の1まで)や付与対象者の拡大(子会社の取締役及び使用人にまで)が認められている。
 ストック・オプション制度については、企業の組織形態が多様化、流動化し、迅速な経営が不可欠となる中で、公正かつ円滑な運用を実現する観点から、経済界より強い見直し要望がある。一方で、自己株式方式には自己株式保有に伴う弊害、新株引受権方式には既存株主の保護の観点を合わせて検討すべきという指摘もある。
 したがって、これらを踏まえ、付与対象者の拡大、新株引受権方式の株主総会普通決議事項への移行、株式買取請求等により取得した自己株式や権利未行使株式の利用、株主総会決議事項の簡素化、付与限度枠の拡大といった点について、制度を改善すべきである。

(5)商法に関する電子化の推進

 IT革命は、これまでの生活や経済活動の方式を大きく変えつつある。このことは、当然ながら会社の活動にも大きな影響を及ぼすこととなる。このようなIT革命を背景に、国境を越える企業の競争が激化するとともに、各国の資本市場の規模が拡大している。しかしながら、商法はこれらの状況を念頭に置いていないため、企業の活動の足かせになる場合が少なくない。したがって、商法をIT革命に対応する形で改正を行うことが必要である。

(5−1)商業帳簿等の電子化
 商法上、商業帳簿及び営業に関する重要書類は10年間、総会議事録等は本店において10年間(支店においてはその謄本を5年間)、監査報告書等は本店において5年間(支店においてはその謄本を3年間)、原本で保存することが義務付けられている。また、定款・株主名簿等は常時備え置き、閲覧・謄写に応じなければならないこととされている。
 現在、商業帳簿や計算書類は電子データによる作成・保存が認められているが、監査報告書、株主総会議事録、取締役会決議議事録については認められていない。システム化による業務効率向上を図る観点から、電子署名、電子認証、電子的閲覧等の仕組みが整備されている場合には、電子データによる作成・保存を認めるべきである。定款等についても、同様の観点から、電子署名、電子認証、電子的閲覧等の仕組みが整備されている場合には、書面での作成及び備え置きは不要とすべきである。

(5−2)株主総会の招集通知の電子化
 株主総会の招集通知については、すべての株主に対し書面で送付しなければならないため、企業に大きなコスト負担を強いている。また、収集通知の添付書類の中には、監査役の署名押印に加えて、公認会計士や監査法人の代表者の署名押印等が必要となるものもある。しかしながら、実際に株主に送付する際には、原本を送付するのではなく、コピーを送付することになる。したがって、株主に対しては、現在の招集通知・添付書類の内容をそのまま電子化したもので通知してもよいと考えられる。
 したがって、インターネットや電子メール経由による招集通知を希望する株主に対しては、企業のコスト軽減、環境への配慮の観点から、インターネットや電子メール経由での通知を認めるべきである。

(5−3)株主総会における議決権行使の電子化
 書面による株主総会の議決権行使は、議案に対する賛否を書面に記入して前日までに会社宛へ郵送することになっている。このため、遠隔地や海外の株主にとって議決権を行使するのが事実上困難になっている。インターネットや電子メールでの議決権行使を阻害している要因は、議決権行使書面の書面要件のほか、議決権行使書面に株主が押印する欄を設けなければならないという規定である。押印欄を設ける目的が株主の本人確認であることを考えると、電子署名を利用した本人確認でも問題はないと考えられる。
 したがって、株主総会参加のための時間・距離・コストの制約を取り除き、より多くの株主との意思疎通を図り、同時に定足数の確保を図る観点から、株主が希望する場合には、議決権行使書面の電子化を認めるとともに、議決権行使書面に押印する欄を設けなければならないとする参考書類規則第8条について、議決権行使書面の電子化に対応した整備をすべきである。

(5−4)電子媒体による株式会社の公告の実現
 商法においては、会社の公告は官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲げて行わなければならないこととされている。多くの企業は、定款で公告の媒体として日刊新聞紙を使用することとしており、コストが掛かっている。したがって、企業のコスト削減の観点、インターネットのメディアとしての普及具合等を総合的に勘案した上で、電子媒体による公告を会社の公告として認めることについて検討すべきである。

(5−5)登記のオンラインによる一括申請及び登記事項のコンピュータ化
 会社の登記については、本店所在地と支店所在地双方の登記所で登記が必要である。このため、企業が積極的にリストラクチャリングを進めるのに伴い、支店の統廃合が頻繁に行われているが、二重に手間が掛かっている。企業の負担を軽減する観点から、本店及び支店の登記を一括してオンラインにより申請することができるようにすべきである。
 登記事項の閲覧については、今年9月に、利用者は指定法人と契約すれば、コンピュータ化されている登記情報をパソコン画面上で見ることができるようになったものの、すべての登記所における商業登記情報のコンピュータ化が、完全に終了したわけではない。利用者の利便性向上の観点から、登記情報のコンピュータ化を早めるべきである。

(6)商法開示と証券取引法開示の調整

 商法開示に関し、商法の計算書類等は、個別企業の財務諸表によることとされている。一方、公開会社における証券取引法上の開示については、連結財務諸表が財政状態、経営成績の把握において中心的地位を占め、グループ連結での開示が求められている。このため、企業にとっては、商法上と証券取引法上の二種類の財務諸表を作成しなければならず、手間が掛かっている。また、企業の会計基準が連結主義に移行する中、商法は個別企業の開示になっており、経営の実態を反映していないということもできる。
 したがって、企業情報の開示のあり方について、証券取引法に基づく財務諸表(個別企業の財務諸表)を商法上の計算書類とすることの可否等をも含め、商法開示と証券取引法開示との調整について検討し、改善すべきである。

(7)自己株式の失効及び処分の時期

 会社が自己株式や親会社の株式を取得した場合には、資本の充実や株主平等の原則等の観点から、遅滞なく失効又は相当な時期に処分をしなければならないこととされている。持株会社化やM&Aの増加に伴い、TOB、合併、株式交換・株式移転、会社分割等の組織再編に際し、企業が副次的に自己株式や親会社の株式を保有する機会が増えている。経済界では、実務上、自己株式を会計年度内に処分することとして運用を行っており、処分時期の規制を撤廃することについて要望があった。
 しかしながら、相当な時期は同一会計年度内でなければならないという規制は存在しない。相当な時期の判断は、取締役の善管注意義務に委ねられており、会計年度を越えて、自己株式や親会社の株式を保有することの可否については、所管省庁からのヒアリングにおいて解釈問題であるとの指摘があり、その際の議論を通じて、当委員会として可能であるとの結論に達したものである。