規制改革についての見解

5 金融・証券・保険

【分野別総論】

○問題意識

 我が国では、その金融・資本市場が国際競争力を備えた市場となって再生することを目指し、フリー・フェア・グローバルの原則の下、国民により良い資産運用と資金調達の道を提供できるような大幅な制度の改革を実現する日本版「金融ビッグバン」が実施されている。大胆な規制の撤廃・緩和を始めとする金融市場の改革を通じて、市場を活性化させ、利用者の利便性を向上させるこの「金融ビッグバン」の趣旨に照らすと、いまだパラダイムの転換が図られていない規制について、また、急速な金融環境の変化に対し見直しが必要な規制について、引き続き規制改革を強力に推進していくことが重要である。

○検討状況

 これまでの行政改革委員会及び当委員会の活動を振り返ると、規制緩和・規制改革の観点から、日本の金融ビッグバンの流れを促進することを目的に、規制の見直しが必要な事項を多数にわたり積極的に取り上げてきた。また、金融システム改革は、金融仲介業者及び金融市場の在り方を根本的に変える大きな改革であったため、時間の制約等のためその際の議論のテーマにできなかった課題や、金融ビッグバンに伴いパラダイムの転換が行われたにもかかわらず規制が見直されていない課題についても、規制緩和・規制改革の観点から必要と判断される事項については、積極的に取り上げて議論を重ねてきた。
 また、行政改革委員会及び当委員会を通じて、金融・証券・保険分野については、@金融仲介業者の競争促進・機能強化、A金融・証券市場等の活性化、B顧客の利便性の向上(サービス提供自由化、価格自由化)などの観点から、規制緩和・規制改革に関するテーマについて幅広く提言を行ってきた。
 具体的には、行政改革委員会の意見では、株式売買委託手数料の自由化、証券業の免許制から登録制への移行、外国為替管理制度の抜本的見直し、証券投資信託に係る規制緩和、損害保険料率の自由化などを提言したが、それらは日本版金融ビッグバンを目指したいわゆる金融システム改革法等によって実現し、資産運用手段の多様化、資産流動化の促進、株式売買委託手数料の自由化等が進み、金融仲介業者が魅力あるサービスを提供できるとともに、利用者も資金の調達・運用における選択の多様化が図られてきている。
 また、当委員会の第1次見解及び第2次見解では、CPのペーパーレス化、保険商品の認可制の届出制への移行、銀行等による保険募集の取扱い、他業禁止に係る規制の見直し、金融会社の株式保有規制の見直しなどを提言したが、それらは関係省庁における検討が実施され又は実施される予定となっており、今後、これらの速やかな実現が期待される。
 今年度においては、このような金融・証券・保険分野における規制改革の流れを踏まえ、引き続きこれまでの視点にのっとり、いまだパラダイムの転換が図られていない事項や、規制の在り方についての検討が十分に行われてこなかった事項について問題点を抽出し精力的に検討を行ってきた。その結果、今年度の各論を総括すると、次のとおりである。
 まず、その役割を終えていると考えられる長短分離制度の在り方・銀行社債の発行制度の見直しや、金融市場における参入促進の観点から信託会社の在り方などについて、検討を開始することを求めている。
 次に、債権流動化の促進や国際的整合性などの観点から、「法例」の特別規定の導入の検討を開始することとともに、特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の借主範囲の拡大や債権回収会社(サービサー)の取扱債権の範囲の見直しについて、措置を講ずることを求めている。
 また、分社化、アウトソーシングなど金融仲介業者の経営効率を高める観点から、昨年度からの継続案件である他業禁止に係る規制の見直しや信託銀行への投資一任業務の解禁などについて、検討を行うことを求めている。
 さらに、信用金庫等協同組織金融機関の機能強化については、協同組織金融機関の意義や在り方を検討することなどを求めている。
 加えて、保険会社の機能強化や競争促進の観点から、特別勘定の見直しや銀行等における保険募集の取扱いなどについて、検討又は措置を求めている。
 最後に、IT化推進関連事項として、保険募集に係る社員の雇用形態の見直しや有価証券届出書の記載事項の見直しなどについて、検討又は措置を求めている。
 こうした金融ビッグバンの理念に即した金融分野の規制緩和の流れは、基本的に維持される必要があり、政府自らが常に実情に即し不断の見直しを行うことが期待されている。規制緩和推進3か年計画の最終年度に当たり、当委員会としては、3年間の活動の中で、時間的制約もあり取り上げることができなかった又は取り上げたが指摘内容が不十分であったと考えられる次の事項について、政府における検討又は措置を期待したい。
 まず、事前規制の廃止である。これまで、厚生年金基金の5:3:3:2運用規制など行政による事前の外形的な規制は、事業者の活動を過度に制約し効率的な経営を損なっており、これらを廃止することに努めてきたが、既に規制緩和推進3か年計画(再改定)に掲載されている金融会社の株式保有規制、共済組合の運用規制などこうした事前規制がいまだ残っており、早急な見直しが必要である。
 次に、横断的規制の導入である。金融・証券・保険分野における横断的法制については、「金融商品の販売等に関する法律」の成立により、その一歩が刻まれた。また、「資産の流動化に関する法律」や「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正などにより、不動産をその対象とするなど、顧客から見た金融商品の範囲が拡大された。こうした横断的な規制の整備を更に進めるとともに、金融商品の範囲を拡大しそれについても必要な横断的な規制を適用するなど、省庁の垣根を超えた政府全体としての取り組みが必要である。

【各論】

(1)長短分離制度の在り方と銀行社債の発行制度の見直し

 長期信用銀行制度は、昭和27年、長期金融の円滑化を図るため、長期信用銀行法(昭和27年法律第187号)により導入された。戦後の設備投資資金不足の中にあって安定的な資金供給を進める観点から、長期信用銀行は、預金の受入れに代えて長期信用銀行法に基づく債券(金融債)の発行により長期の資金調達を行い、長期資金を供給することとされてきた。しかしながら、普通銀行の長期貸出が増加したこと、普通社債の発行が認められたこと等を受け、長短分離制度は事実上撤廃されている。
 現在、金融再編が進んできている一方で、破綻した長期信用銀行については公的資金注入がされ、新たな長期信用銀行として生まれ変わってきている状況をみると、長期信用銀行は現存してはいるが、長短分離制度が事実上撤廃されたことから、長短分離制度の将来について検討する必要がある。
 また、昨年10月より銀行の社債発行が認められたが、長期信用銀行が発行できる金融債に比べると、普通銀行の社債発行については、売出発行(一定期間を定めてその範囲内に顧客に対し個別的に社債を売り出す方法)が認められず、証券取引法上のディスクロージャーが求められている。他方、金融債については、売出発行が可能なほか、金融再生委員会への届出により発行が可能となっているなど、両者の間にアンバランスが生じている。
 こうしたアンバランスを解消するためには、諸外国における銀行社債の取扱いについてディスクロージャーが異なる例等を踏まえ、銀行等が資金調達を機動的に行うことができるよう、銀行社債と金融債のディスクロージャー制度や発行形態について見直すことが必要である。なお、発行形態の問題を検討する際には、社債について規定する商法と密接に関連することに留意する必要がある。
 以上のことから、長短分離制度の将来について、また、銀行社債と金融債との間の発行制度のイコールフッティングを図ることについて、平成13年度より検討を開始すべきである。

(2)信託会社の在り方

 信託会社は、信託業法(大正11年法律第65号)に基づき、金融再生委員会の免許を受けて信託業を営む株式会社である(同法第1条、第2条)が、信託業法は大正11年の施行以来、信託会社の在り方について見直しがなされておらず、信託会社の免許基準や行為規制などが定められていない。このため、現在、信託会社の免許申請があったとしても、直ちに免許しうる状態になく、ここ40年程の間、免許が出された例がなく、現在、信託会社は1社も存在しない。
 他方、信託業に関する競争促進という観点からは、平成5年以降着実に規制緩和(信託銀行子会社設立、地域金融機関の信託業務併営)が進んできており、さらに、銀行等本体による信託業務の全面的兼営について検討が行われているところである。
 また、金融のイノベーションの進展により、信託の機能は資産流動化など市場型間接金融のビークルとして注目が集まっており、今後、幅広くニーズが出てくることが予想されることなどから、信託会社の行為規制などを含む規制体系の在り方についての検討が必要である。
 したがって、信託会社の参入基準や行為規制など幅広い観点から、これまでの規制緩和策の実施状況を踏まえ、信託会社の在り方について平成13年度より検討を開始すべきである。

(3)債権流動化、証券決済等の基盤整備のための諸制度の見直し

 債権流動化については、「資産の流動化に関する法律」や「投資信託及び投資法人に関する法律」の改正などにより、その環境整備が一段と進められてきており、企業が多様な手段で保有する資産を効率的に流動化することが可能となってきている。
 また、証券決済については、当委員会が第一次見解で指摘したCPのペーパーレス化を始め、株式、社債等各有価証券について決済の迅速化の早期実現を図るとともに、統一的なシステムでの決済を可能とするための法的整備を行うこととしており、この面の環境整備が着実に進められている。
 しかしながら、国際的なルールとの整合性などの観点から、見直しが必要な規制が残っており、こうした規制が見直されないと、債権流動化や証券決済の環境整備に不備が残ると考える。

(3-1)債権流動化の基盤整備のための法例第12条の特別規定の導入
 法例(明治31年法律第10号)第12条において、債権譲渡の第三者に対する効力は債務者の住所地法によるとされているが、債権流動化により譲渡される債権の債務者の中に海外居住者が含まれる場合に、第三者に対する効力が債務者の住所地法に基づくこととなると、それぞれの国の法令に従った処置をしなければならず、そのような場合の流動化は実務上極めて困難である。
 したがって、国際的な統一ルールとして譲渡人住所地法による考えが定着しつつあることにもかんがみ、債権流動化の基盤整備を進める観点から、国際的な動向を踏まえつつ、法例第12条の特別規定を設けることについて検討を開始すべきである。

(3-2)証券決済の基盤整備のための国際私法上の手当て
 法例においては、担保等に利用される証券に関する権利を物権として法律構成すれば、準拠法は目的物の所在地法によるとされ(第10条)、債権として法律構成すれば、債務者の所在地法によるとされている(第12条)が、証券が海外のカストディアン(証券を保管する業者)等に帳簿上で管理され、券面は海外の集中決済機構の金庫に保管されている場合又は券面が存在しない場合においては、集中決済機構においては証券の末端の権利者を特定できないことから、帳簿上で管理しているカストディアンの所在地の法律によることで対応する必要がある。欧米に比べ、日本では法的な手当てが進んでおらず、日本市場の使い勝手が悪くなっている。
 したがって、証券担保等の準拠法は、証券が物権的性格であろうと、債権的性格であろうと、投資家の権利が確認できる帳簿を有するカストディアン等の所在地の法によるとするなど、法例の特別規定を設けることについて、国際的動向を踏まえて早急に検討を開始すべきである。

(3-3)特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の借主範囲の拡大
 特定融資枠契約に関する法律(平成11年法律第4号)は、特定融資枠契約の手数料について利息制限法及び出資法の「みなし利息」の規定を不適用としているため、借主が銀行等に対し交渉力を有する必要があること等から、その第2条において、借主の範囲を商法特例法の大会社(資本金5億円又は負債200億円以上)に限定している。
 しかしながら、特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の借主の範囲を商法特例法の大会社に限定する必然性に乏しい。
 したがって、資金の貸手や借手の利便性を向上させる観点から、平成13年度末までに、この借主の範囲を拡大する方向で検討し、所要の措置を講ずるべきである。なお、その検討の際には、資産流動化の基盤整備を進める観点から、SPC(特定目的会社)を対象に含めることとすべきである。

(3-4)債権回収会社(サービサー)の取扱債権の範囲の見直し
 債権回収会社は、委託を受けて又は譲り受けて管理及び回収を行うことのできる債権について、債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号)第2条により、金融機関等の有する貸付債権、リース・クレジット債権、金融機関等の系列貸金業者の有する一定の貸付債権などに限定されている。
 しかしながら、債権回収会社の取扱債権が限定されていることは、利用者にとっても不便であるとともに、不良債権の処理を促進し金融再生を進める上で足かせになっている。
 したがって、債権回収会社のユーザーの利便性を高め、また、債権回収会社の機能を強化し金融再生を図る観点から、平成13年度末までに、債権回収会社の取扱債権の範囲について、制限の撤廃をも含めて見直しを行い、所要の措置を講ずるべきである。

(4)金融機関の大口信用供与規制など資産運用規制の見直し

 金融機関等の資産運用規制については、事前規制型行政から事後チェック型行政への転換に伴い、自由な経営判断を阻害しうる規制については見直すことが重要である。

(4-1)金融機関の大口信用供与規制の見直し
 金融機関の大口信用供与規制は、特定債務者に対する信用リスクを排除し銀行の健全性を確保するために設けられた規制であり、同一人に対する信用供与額は、原則として自己資本の40%とされている(銀行法(昭和56年法律第59号)第13条等)。
 今般の時価評価の導入に伴い、こうした大口信用供与規制が市場の動向に直接左右されることとなり、規制の目的がゆがめられる可能性があることを論点公開で指摘したが、これについて時価評価の影響を受けない形での措置が講じられたことを評価する。

(4-2)保険会社の資産別運用比率規制の廃止
 保険会社は、保険業法(平成7年法律第105号)第97条の2第1項により、資産毎に運用額を制限されており、具体的には保険業法施行規則により、国内株式が100分の30、不動産が100分の20、外貨建資産が100分の30、債券・貸付金・貸付有価証券が100分の10、その他資産が100分の3をそれぞれ総資産の額に乗じた額を超えて運用してはならないとされている。
 保険会社における運用手法の多様化、効率化などの観点から、こうした運用比率を行政当局が事前に定める必要性は無くなってきており、また、保険会社におけるリスク管理が進展している中で、ポートフォリオ全体でのリスク管理が重要であって、事前の運用比率規制は、今日では時代にそぐわないものとなっている。
 したがって、保険会社の資産別運用比率規制については、ソルベンシーマージン比率の適正化などポートフォリオ全体のリスク管理を踏まえた代替する監督手法の構築を図り、平成13年度末までに廃止を視野に入れて見直すべきである。

(5)分社化、アウトソーシングなど経営効率を高める観点からの諸規制の見直し

 金融仲介業者においては、再編、業務提携、分社化や業務のアウトソーシング等を通じた経営の効率化が進んできているが、分社化や業務のアウトソーシングなど経営効率を高める動きを阻害する規制が依然として残っており、それを見直すことが重要である。

(5-1)保険業法における業務の代理、事務の代行の見直し
 保険会社は、保険業法第98条に基づき、他の保険会社(外国保険業者を含む。)の保険業に係る代理又は事務の代行を行うことができる。具体的に行うことができる「業務の代理」又は「事務の代行」は、保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号)第51条により、保険の引受けその他の業務に係る書類等の作成・接受等、保険料の収納事務・保険金等の支払事務、保険事故その他の保険契約に係る事項の調査、保険募集を行う者の教育・管理等とされている。
 競争力強化の観点からの金融再編等に伴い、グループ経営を効率化していくために、保険会社が行う業務の一部を他社に委託できるようにすべきであることを論点公開で指摘したが、既に必要な措置が講じられており、これを評価する。

(5-2)他業禁止に係る規制の見直し(※)
 銀行・保険会社は、本業以外の業務を営むことによる異種のリスクの混入を阻止すること、銀行業務又は保険業務に専念することにより効率性を発揮すること、利益相反取引を防止することなどの観点から、「他業禁止」の規制が課されている。こうした考え方の下、金融システム改革法(平成10年法律第107号)の施行後も、本体業務の範囲、子会社等の業務範囲が整理され、子会社等に関連する規制として、従属業務と金融関連業務の併営禁止、従属子会社の収入依存度規制、子会社の業務範囲規制などが存在する。
 規制緩和推進3か年計画(再改定)で取り上げた「銀行・保険会社本体の業務範囲の見直し」、「従属業務と金融関連業務の兼営」、「従属子会社の収入依存度規制の緩和」、「子会社等の業務範囲の拡大」及び「業務範囲規制の適用対象範囲の見直し」が、現在、金融審議会において検討されていることについて評価しており、引き続きこれを注視する。また、上記項目以外についても、当委員会に対し他業禁止に係る幅広い要望が関係業界などから出されており、それらの要望も検討課題として拾い上げ、顧客利便や経営効率を高める観点から適切と考えられるものについては、広く認めていくべきである。

(5-3)信託銀行への投資一任業務の解禁
 投資一任契約に係る業務(投資一任業務:顧客から、有価証券投資に係る投資判断の全部又は一部を一任され、顧客のために(顧客に代わって)投資を行う業務)を営もうとする場合、投資顧問業(顧客に対し有価証券投資に係る投資判断等について助言を行う業務)について金融再生委員会の登録を受けたのち、認可を受けなければならない。この認可を受けた投資顧問業者(認可投資顧問業者)は、投資顧問業、投資一任契約に係る業務、証券投資信託委託業及び証券業のほか、他の業務を営むことができない(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和61年法律第74号)第31条)という兼業制限が課されており、上記以外の業務を営んでいる信託銀行は、投資一任契約に係る業務の認可を受けることができない。
 年金基金等の資産運用において、信託銀行を活用する場合には、信託契約により「運用」と「管理」を合わせて請け負う形態が取られている。その際、資産運用の高度化や退職給付会計の導入などを背景に、年金基金等から「運用」と「管理」の機能分離を要請されており、信託銀行においては、資産「管理」を専門とする信託銀行を設立するなど対応を進めてきているが、「管理」業務を分離し、資産管理専門の信託銀行に移管した場合に、「運用」業務だけを信託銀行自らが行おうとした場合には、投資一任契約に係る業務に該当するため、信託銀行が運用業務だけを行うことができない。
 しかしながら、管理業務を分離し外部に移管した場合に、運用業務ができないこととなることは、顧客利便を損なうものであり、「運用」と「管理」が分離された形態においても、信託銀行が運用業務を行えるよう措置を講ずる必要がある。
 したがって、平成13年度末までに、信託銀行への投資一任契約に係る業務の解禁について検討を進め、結論を得るべきである。

(5−4)外国証券会社の取引に係る規制の見直し
 日本の外国証券会社が、海外にある親企業等からの委託注文を受けて証券取引を行う場合、日本の外国証券会社からみると海外にある親企業等からの委託注文が「顧客」からの注文に該当するため、証券取引法第42条第1項第5号の「証券会社又はその役員若しくは使用人は、有価証券の売買若しくはその受託等、有価証券指数等先物取引若しくは有価証券オプション取引の受託又は有価証券店頭デリバティブ取引にあっては、顧客の個別の同意を得ないで、売買の別、銘柄、数又は価格について定めることができることを内容とする契約を締結する行為をしてはならない」という規定(取引一任勘定取引の禁止)が適用されてしまうこととなる。なお、この規定は、取引一任勘定取引が損失補てん等の温床となる可能性があることから禁止することとしたものであるため、一定の取引について適用除外措置がある。
 しかしながら、企業グループとして帳簿を1つとして管理している場合等については、実質的には同一人の行動ととれるため、立法趣旨に抵触する可能性は低いと考えられる。
 したがって、外国証券会社の親企業等からの注文に係る取引一任勘定取引の禁止の適用除外の範囲の在り方について、立法趣旨を踏まえつつ検討を行い、平成13年度末までに結論を得るべきである。

(6)協同組織金融機関(信用金庫等)に係る規制緩和

 協同組織金融機関については、自己資本充実のための資本手段の多様化などについて法的措置がなされてきているが、金融システム改革の中で、協同組織金融機関の在り方そのものについて十分な議論が行われなかったと考えられる。このため、協同組織金融機関をめぐる規制には、パラダイムの転換が行われていないものが依然として残っている。また、協同組織であることから各種政策支援措置が講じられているが、こうした協同組織性が強調され過ぎ、競争促進の観点からは過剰な規制が残っている面も見られる。
 したがって、協同組織金融機関の意義や在り方について、今日的な観点から早急に検討が行われるべきであり、こうした議論を踏まえて、次のような具体的な論点が整理されるべきである((6−3)のなお書を除く。)。

(6−1)信用金庫等の債券発行
 銀行等は、平成11年10月1日より、普通社債の発行が解禁されたが、信用金庫法(昭和26年法律第238号)上、信用金庫の債券発行についての規定がなく、社債は発行できないこととされている。
 信用金庫等協同組織金融機関は、他の金融機関とは異なり、協同組織性を維持する必要は認められるものの、厳しい競争下において協同組織性を超えて資金調達手段の多様化を図ることは、必ずしもそうした協同組織性を阻害するものとは考えがたい。
 したがって、資金調達手段の多様化を図ることにより経営基盤を強め経営効率を高める観点から、信用金庫等協同組織金融機関の債券発行が適切に実施できるよう必要な法的措置を講ずることについて、検討すべきである。

(6−2)信用金庫の卒業生金融制度の見直し
 信用金庫は、信用金庫法第53条に基づき、会員に対する資金の貸付及び会員のためにする手形の割引に係る業務の遂行を妨げない限度において、地方公共団体、金融機関その他会員以外の者に対して資金の貸付け(手形の割引を含む。)をすることができるとされており、信用金庫法施行令(昭和43年政令第142号)第8条により、金融再生委員会の定める期間会員であった事業者で、個人にあっては常時使用する従業員数が300人を超える場合、又は法人にあっては常時使用する従業員が300人を超えかつ資本の額又は出資の額が9億円を超える場合となったことにより脱会したものに対し、金融再生委員会の定める期間内に行う資金の貸付けを行うことができるとされている。具体的には、信用金庫の会員であった期間が3年以上5年未満の場合は脱退の時から5年、5年以上の場合は脱退の時から10年の間、資金の貸付けを行うことができることとされている(昭和43年大蔵省告示第71号)。
 企業規模の拡大に伴い会員資格を失う「卒業生」については、信用金庫が一定の範囲で引き続き貸付けを行うことが認められているが、一定期間経過後にその打切りを強制することは、利便性の観点から問題である。
 したがって、信用金庫の協同組織性を損なわない範囲で認められている員外貸出しの枠内で、卒業生に対する貸出しを恒久的に認めることを検討すべきである。

(6−3)信用金庫の会員資格の見直し及び明確化
 信用金庫の会員資格は、信用金庫法第10条により、@その信用金庫の地区内に住所又は居所を有する者、Aその信用金庫の地区内に事業所を有する者、Bその信用金庫の地区内において勤労に従事する者で定款で定めるものとされている。ただし、@Aに掲げる者に該当する個人にあっては、その常時使用する従業員の数が300人を超える事業者を除くものとし、@Aに該当する法人にあっては、その常時使用する従業員の数が300人を超え、かつ、その資本の額又は出資の額が9億円を超える事業者を除くものとされている。
 中小企業基本法改正(平成11年12月3日施行)により、例えば製造業等においては、中小企業者の資本金基準が1億円から3億円に、卸売業では3千万円から1億円に、小売・サービス業では1千万円から5千万円にそれぞれ引き上げられた。同時に中小企業金融公庫の貸付対象が拡大された。
 こうした状況下において、信用金庫が地域経済において引き続きその役割を発揮するために、会員資格の資本金基準を引き上げることについて検討すべきである。
 なお、「勤労に従事する者」には法人の役員は含まれないとする解釈により、例えば、地区内の法人に勤務し、地区外に住所又は居所を有する従業員が役員に昇格すると会員資格を失うこととなる。こうした不合理を解消するため、平成14年度末までに所要の措置を講ずるべきである。

(6−4)信用金庫の業務方法書の見直し
 信用金庫は、金融再生委員会の免許を受ける際に、業務方法書(その記載事項は、預金、為替取引その他の業務の種類並びに預金利子及び貸付利子の計算その他の業務の方法とされている。)を提出しなければならず(信用金庫法第29条)、また、それを変更するときは、金融再生委員会の認可を受けなければならない(同法第31条)とされている。
 事前規制型行政の手段として活用されてきた業務方法書は、金融自由化の流れの中で、銀行等においては用いられていない。
 したがって、こうした流れの中で、信用金庫における業務方法書の在り方について検討すべきである。

(6−5)信用金庫連合会の債務保証等に係る取引先の制限緩和
 信用金庫連合会は、信用金庫法第54条により、会員に対する資金の貸付けのほか、金融再生委員会の認可を受けて、会員以外の者に対する資金の貸付けを行うことができる。また、信用金庫連合会は、会員のためにする債務の保証及び手形の引受け並びに会員に対する有価証券の貸付けを行うことができるが、会員以外の者のためにする債務の保証及び手形の引受け並びに会員以外の者に対する有価証券の貸付けは一定の場合を除きできない。
 しかしながら、信用金庫連合会が行う資金の貸付けと、債務の保証、手形の引受け、有価証券の貸付けとは、信用供与手段としてその経済効果は同じであることから、会員以外の者のためにする債務の保証及び手形の引受け並びに会員以外の者に対する有価証券の貸付けを禁止する必要はないと考える。
 したがって、会員以外の者に対する資金の貸付けと同様、金融再生委員会の認可を受けた場合には、会員以外の者のためにする債務保証及び手形の引受け並びに会員以外の者に対する有価証券の貸付けを行うことを認めることを検討すべきである。

(7)保険会社の機能強化と競争促進

(7−1)保険会社の特別勘定の見直し
 保険会社は、財産の価額により保険金その他の給付金の金額が変動する保険契約(個人変額保険等)、適格退職年金契約又は厚生年金基金契約であって財産の価額により責任準備金の金額が変動する保険契約(適格企業年金保険等)、国民年金法により締結された保険契約であって財産の価額により責任準備金の金額が変動するもの(変額年金福祉事業団保険等)について、当該保険契約に係る責任準備金の金額に対応する財産をその他の財産と区別して整理するため、特別の勘定を設けることができる(保険業法第118条)が、保険会社の破綻時に一般勘定と特別勘定は区別無く取り扱われる。
 日産生命の破綻以降、生命保険会社の破綻時における特別勘定の取扱いについては、顧客がリスクを負っているため破綻の原因とは無関係であるにもかかわらず、特別勘定の資産の全額が保護されないことは問題があるという声が顧客から上がってきている。
 したがって、保険会社の破綻時において、特別勘定の資産が顧客のために保全されるよう、一般勘定と特別勘定のリスク遮断をより厳格化する等の措置について検討すべきである。
 なお、その検討に際しては、特別勘定で経理される財産を一般勘定へ振り替える場合、現金でなく現物資産のままできるようにすること、特別勘定へ直接保険料を投入できるようにすることについても併せて検討すべきである。

(7−2)保険商品の原則届出制への移行(※)
 保険商品の原則届出制への移行については、規制緩和推進3か年計画(再改定)に基づき検討されている。
 当委員会としては、その取り組みは依然不十分であると考えており、平成13年度中に、企業や年金基金に対する保険に加えて、家計向け保険についても、早期の原則届出制への移行に向けて、検討し結論を得るべきである。また、企業分野の保険商品に係る事前届出制の在り方については、第2次見解の趣旨を踏まえ、平成13年度中に必要な措置を講ずるべきである。さらに、審査期間の一層の短縮について、引き続き努力すべきである。

(7−3)銀行等による保険募集の取扱い(※)
 規制緩和推進3か年計画(再改定)では、「住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険については、弊害防止措置を講じた上で、遅くとも平成13年までに銀行等による販売を認める。」、「上記以外の保険商品についても銀行等による販売対象とすること及び銀行等の販売する保険商品はその銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことについて引き続き検討を行い、平成12年度中に結論を得る。」とされている。
 銀行等による保険商品の販売が早期にかつ幅広く認められないと、販売チャネルの多様化・効率化や、契約者のワンストップ・ショッピングのニーズにも対応できないと考える。
 また、最近の状況として、銀行の圧力販売を懸念する声がある一方で、損害保険商品や第3分野商品(生命保険と損害保険の中間の傷害・疾病・介護保険)については全面的に銀行等による販売を認めるべきであるという声が保険業界の中にも出てきている。既に、銀行や保険会社において投資信託の販売が認められていることや「金融商品の販売等に関する法律」の制定などトラブル防止のための環境整備が図られていることなどから、銀行等が幅広い保険商品を取り扱う環境は整ってきている。
 したがって、金融ビッグバンの総仕上げとも言える保険分野の競争を一層促進する観点から、本年度中に得るとされている結論を踏まえそれを早期に実施に移すとともに、銀行等が原則として全ての保険商品を取り扱えることなどについて引き続き検討を行い、平成13年度中に結論を得るべきである。

(8)IT化推進に伴う規制緩和

(8−1)インターネット等での取引に係る社員の雇用形態の見直し
 証券取引法第64条により、顧客との証券取引契約を扱う者は外務員として登録を受けなければならず、また、証券外務員は証券会社の役員又は使用人に限られている。また、使用人は、金融庁ガイドラインにおいて、「証券会社と雇用契約のある者」とされていたことから、派遣社員等が証券外務員となることはできなかったが、平成12年8月24日の同ガイドラインの改正により使用人の定義の変更を行い、派遣社員等が証券外務員として登録することが可能となったことは評価する。
 同様の規制が保険業法にあり、保険業法第275条では、損害保険会社の役員若しくは使用人又は損害保険代理店の役員若しくは使用人が保険募集を行うことができ、同法第302条により損害保険代理店の役員又は使用人の氏名・住所を金融再生委員会に届け出ることとされている。金融庁ガイドラインにおいて、法第302条にいう保険募集に従事する役員又は使用人とは、「代理店の事務所に勤務(使用人にあっては代理店と雇用関係(期間雇用を含む。)がある者に限る。)する者」とされていることから、派遣社員等が含まれていない。
 したがって、保険募集においても、派遣社員等が活用できるよう、金融庁のガイドラインを平成13年中に見直すべきである。

(8−2)有価証券届出書等の記載事項の見直し
 企業内容等の開示に関する省令第8条に基づく有価証券届出書の様式においては、その株式公開情報として株主の上位100名程度の氏名や住所等を記載することとなっている。ただし、所有株式が1000株以下である者については、所有株式数ごとに人数のみを記載してもよいこととなっている。
 ベンチャー企業等においても、株式を公開する場合に、公衆縦覧の対象となる有価証券届出書及び目論見書に株主の上位100名の氏名や住所を記載することが要求されているが、株式公開・上場時における株主状況の多様性等を勘案し、有価証券届出書等における公開時の株主状況記載基準の在り方について検討すべきである。

(8−3)インターネットによる保険販売に係る事業方法書の認可基準の明確化
 インターネットによる保険販売を行う場合、事業方法書にインターネットで行うなどの販売方法を明記し、金融再生委員会の認可を受けなければならない。現在、その認可基準が示されていないことから、個別商品ごとに事業方法書の記載内容の検討を行っており、これではIT化の推進を阻害するおそれがある。
 したがって、平成13年中に、インターネットによる販売方法に係る認可基準を明確化すべきである。