規制改革についての見解

6 運輸

【分野別総論】

○問題意識

 運輸分野においては、事業への参入を促進するとともに、事業者が自由に運賃・料金を設定できるようにすることにより、事業者間の競争を促進し、消費者によりよいサービスが提供される環境を作るという観点から、需給調整規制の廃止、運賃・料金規制の緩和が重要である。また、事業規制以外の、運転免許、自動車検査など直接国民に影響のある規制については、国民・事業者の負担を軽減する観点から、できる限り手続を簡素化していくことが重要である。

○検討状況

 需給調整規制の廃止については、行政改革委員会当時から、主要なテーマとしてとらえられてきたが、平成8年12月に運輸省が原則廃止の方針を表明し、その後、国内航空、鉄道、旅客船、貸切バス、乗合バス、タクシー、港湾運送(主要9港)の各事業について、需給調整規制が廃止され、これまでの免許制から、安全性等のチェックを要件とする許可制に緩和された。運賃・料金規制については、認可制から、届出制や上限価格制などに改正され、事業者による自由な設定が可能となってきている。(乗合バス及びタクシーについては、関連法が平成13年度内に施行される予定。)
 需給調整規制の廃止、運賃・料金規制の緩和に関連して、当委員会のこれまで2回の見解において、トラック事業の運賃・料金規制の緩和、倉庫業の参入規制及び料金規制の見直し、貨物運送取扱事業の運賃・料金規制の見直しについて取り上げ、それぞれ最小限の規制にするよう求めてきた。また、事業参入を容易にし、事業者間の競争環境を整えるという観点から、内航海運暫定措置事業の進捗状況、混雑空港の発着枠の配分方法等について指摘してきた。
 これらの事業規制に加えて、主に国民・事業者の負担を軽減するとの観点から、自動車登録手続の見直し、自動車検査証の有効期間の延長、運転免許証の有効期間の延長等について取り上げた。
 今年度は、需給調整規制の廃止、運賃・料金規制の緩和関連事項として、タクシー事業については、緊急調整措置等の在り方、トラック事業、貨物運送取扱事業については、引き続き運賃・料金規制の緩和等を取り上げている。また、国民・事業者負担の軽減の観点からは、旅行契約における書面交付義務の見直し、自動車の型式指定審査の見直しを取り上げた。さらに、船員職業紹介事業等の規制緩和を取り上げている。
 今後は、これまでに実施してきた需給調整規制の廃止、運賃・料金規制の緩和の実施状況・効果を踏まえつつ、残存する需給調整規制の廃止とともに、運賃・料金規制については、利用者の自己責任原則の進展等の社会状況に応じて、事後届出制や自由化の方向で検討がなされることが必要である。この関係で特に指摘したいのは、これらの規制を緩和するに当たっては、経済の実態、競争条件の整備に伴い、常に厳しい規制から緩やかな規制へと移行するよう心がけるべきであるということである。この趣旨は、累次の規制緩和推進3か年計画でも閣議決定されているところである。運輸分野ではほぼ免許制は廃止されたとはいうものの、許可制、認可制はなお各分野で残存している。今後の規制緩和の推進に当たっては、上述した視点を重視すべきである。
 また、物流効率化の観点から、車両諸元や車両通行に関する規制、トラック事業の規制等について、改めて見直すことが必要であると考える。届出等の手続については、その電子化、ワンストップサービス化等により、できる限り簡素化し、国民・事業者の負担を軽減することが必要である。世界主要各国と比較して高い水準となっている空港着陸料については、その在り方を検討することが必要であると考える。
 当委員会では、これまで経済的規制に主眼をおいて検討してきたが、今後は安全・環境規制についても、必要な安全・環境レベルを保つために効果的な規制になっているか、事業者等に過大な負担を負わせることになっていないか等の観点から、見直していくことが必要であると考える。

【各論】

(1)船員職業紹介事業等の規制緩和

 政府以外の者は、原則として、船員職業紹介事業を行ってはならないが、船舶所有者を代表する団体、船員を代表とする団体等で、無料かつ営利目的でなく行う場合は、運輸大臣の許可を受けて、行うことができることとされている。また、原則として、船員労務供給事業を行い、又はその船員労務供給事業を行う者から供給される人を船員として労務に従事させてはならないが、労働組合は、運輸大臣の許可を受けたときは、無料の船員労務供給事業を行うことができることとされている。
 これらの規制については、過去に手配師が横行し、強制労働、中間搾取といった弊害が生じていた状況があったことから設定されたものであるが、一定の要件を満たす者が許可を受けて有料職業紹介事業や有料労務供給事業を行うこととすれば、そのような弊害は排除できると考える。また、民間が行えることは民間が行うこととすべきこと、一般の職業紹介事業、労働者派遣事業の規制緩和が進んでいることからも、原則禁止を転換す一定の要件を満たす者(船舶所有者を代表する団体、船員を代表する団体、労働組合等に限らず)が許可を受けて、有料でこれらの事業を行うことを認めるべきであると考える。
 これらの規制の緩和については、現在、運輸省の「船員職業紹介等研究会」において、学識経験者、労使の代表をメンバーとして検討が行われている。が、陸上のように多様な職種を選択することが困難という船員労働の状況を勘案しつつも、上記の考え方を踏まえ、原則禁止を転換する一定の要件を満たす者が許可を受けて有料でこれらの事業を行うことを認める方向で、できる限り早期に結論を得るべきである。

(2)貨物運送取扱事業の参入及び運賃・料金規制の見直し

 貨物運送取扱事業への参入は、利用運送事業においては許可制であり、運送取次事業においては登録制である。また、運賃・料金は、事前届出制であり、一定の場合には運輸大臣は変更命令を発することができることとされている。
 利用運送の利用者は、自ら信頼できる利用運送事業者を選択するのであり、事業遂行能力は政府ではなく、市場が判断すべきである。
 したがって、実運送を自ら行わない第一種利用運送事業及び運送取次事業の参入規制については、許可制の登録制への緩和等政府の規制を最小限にする方向で検討し、できるだけ速やかに結論を得るべきである。
 運賃・料金の設定は、事業者の経営戦略の中核をなす事項であり、政府の規制は極力排除すべきである。また、利用者は、提供されるサービスとその料金水準を勘案した上で、自己責任で事業者を選択すべきである。
 したがって、貨物運送取扱事業の運賃・料金については、条件整備を図った上で事後届出制とする方向で検討すべきである。

(3)トラック事業の運賃・料金規制の見直し(※)

 トラック事業の運賃・料金は、事前届出制であり、一定の場合には運輸大臣は変更命令を発することができることとされている。
 どのようなサービスをどのような運賃・料金で提供するかは、事業者の経営戦略の中核をなす事項であり、政府の規制は極力排除すべきである。また、利用者は、提供されるサービスとその料金水準を勘案した上で、自己責任で事業者を選択すべきである。
 したがって、トラック事業の運賃・料金については、条件整備を図った上で事後届出制とする方向で検討すべきである。

(4)タクシー事業の緊急調整措置等の在り方(※)

(4−1)緊急調整措置の在り方
 タクシー事業への参入については、現在、免許制であるが、平成13年度内に施行予定の道路運送法の改正により、需給調整規制を廃止し、許可制に移行することとなっている。ただし、特定の地域において著しく供給過剰となり、供給輸送力が更に増加することにより、輸送の安全及び旅客の利便の確保が困難となるおそれがあると認めるときは、当該地域を緊急調整地域として指定し、供給の増加を規制することができることとなっている(緊急調整措置)。しかしながら、同措置については、運用によっては実質的に需給調整規制と同様の結果を生ずる可能性がある。
 したがって、発動の検討に使用する指標や手続上の考え方を事前に公表すること、運輸審議会への諮問等を通じ行政の恣意的な裁量を排すること、発動した場合、その理由や根拠データについて説明責任を果たすこと等により、判断の透明性を確保し、需給調整規制の廃止が形骸化しないようにすべきである。

(4−2)運賃・料金規制の在り方
 タクシー事業の運賃・料金規制については、現在、認可制である。平成13年度内に施行予定の道路運送法の改正後も認可制は維持されるが、認可要件の改正により、上限価格制が導入されることとなっている。認可制を維持する目的は、消費者の側から選択しやすいよう料金体系に一定の規則性を維持する必要があるが(追い抜き運賃の防止)、事業者数が数万に上ることから、法技術として認可というチェック手法によるものであり、行政による裁量はきわめて限定されると説明されている。しかし、上限価格制としながら認可制をとった場合、個別の運賃設定に対して行政が介入し、上限価格制の意義を失わせるおそれがある。
 したがって、認可制度の運用に当たっては、いやしくも上限価格制の意義を失わせるような基準を設定することがあってはならない。

(5)旅行契約における書面交付義務の見直し

 旅行業務に関し旅行者と契約を締結しようとするときは、その取引の条件について旅行者に説明し、旅行者が提供を受けることができる旅行に関するサービスの内容等を記載した書面を交付しなければならないこととされている。
 この書面交付義務については、経済のIT化が進展する中で、電子商取引の阻害要因になっているとの指摘から見直しが行われ、従来の手続に加え、送付される側の同意を条件に、電子メール等の電子的手段によっても行えることとする法律が本年11月に成立し、公布された。本法律は公布の日から5か月を超えない範囲内で政令で定める日から施行されることとなっている。
 したがって、今後必要な政省令の規定を整備し、できるだけ速やかに施行すべきである。

(6)自動車の型式指定審査の見直し

 自動車が保安基準に適合し、かつ、均一性を有するものであると認められる場合には、自動車は型式指定を受けることができることとされており、その申請から型式指定までの標準処理期間は2か月となっている。近年、製品の開発が著しく短くなってきていることから、自動車の装置についての型式指定制度、外国との相互承認制度等の活用ができる場合には、外国における取扱いとの整合化を図りつつ、省略できる審査の内容に応じて、可能な限り短い期間で処理すべきである。また、申請内容の変更の柔軟な取扱い、審査に提示する自動車台数の削減についても、同様に併せて検討し、できるだけ申請者の負担を軽減すべきである。
 型式指定を受けた後、自動車の構造、装置及び性能等について変更した場合には、変更の承認を受けた場合に限り、当該変更に係る自動車の完成検査終了証を発行することができることとされているが、現在は変更の範囲が明確にされていない部分がある。
 したがって、外国における取扱いを参考にしつつ、変更の範囲を明確にするとともに、変更の承認を受けなくても完成検査終了証を発行できる範囲をできるだけ広くするよう検討し、申請者の負担を軽減すべきである。