規制改革についての見解

15 公的資格制度

【分野別総論】

○問題意識及び検討の経緯

 公的資格制度は、国民の権利と安全や衛生の確保、取引の適正化等のために設けられてきたものであり、国民生活にとって一定の役割を果たしてきている。しかし、一方では、公的資格制度のうちの業務独占資格(参考1参照。)は、個人の特定の市場への参入を規制する等の側面を有していることにより、また、必置資格等(参考2参照。)はコストの増大や事業者の自由な活動を抑制する等の側面を有していることにより、国民生活に不利益を与える場合もある。
 このような問題意識の下、当委員会は平成10年度に業務独占資格を対象として関係省庁、資格者、利用者等に対してヒアリング調査、アンケート調査等を行い、その結果に基づき、規制緩和についての第1次見解(平成10年12月15日)において、見直しの基準・視点を示して関係省庁がこれに基づき業務独占資格を見直すことを提言した。また、平成11年度は、規制改革に関する第2次見解(平成11年12月14日)において、上記の基準・視点に基づき自ら調査した結果等を踏まえ、個別の業務独占資格について具体的な見直し事項を提言した。また、必置資格等については、業務独占資格と同様に見直しの基準・視点を示して関係省庁が見直すことを提言した。政府はこれらの提言を規制緩和推進3か年計画(改定・再改定)に盛り込み、閣議決定した(参考3参照。)。これにより関係省庁は公的資格制度を見直すこととされ、業務独占資格では試験制度を中心に改善が進んでおり、また、必置資格等については、今回の提言により、資格者を置くべき事業場等の単位の見直し及び外部委託の許容を中心に改善が進むものと期待している。

(今後の課題)
 しかし、各見直しの基準・視点に基づき当委員会が提言した事項を関係省庁が実施するためには、ある程度の期間を必要とする資格もあり、また、当委員会の関係省庁からのヒアリング結果だけでは、当該資格による効果が不明確なものや資格の存在自体に明確な論拠を見いだせない資格もあり、当委員会が提言した他の事項の措置状況、国民のニーズ、社会経済状況の変化等を踏まえて、近い将来改めて検討することが必要である状況が見られた。なお、関係省庁は、資格制度の見直しに当たり、諸外国における類似の行政目的を達成するための制度及び当該資格の設置効果について十分に把握・分析しておくことが必要であると考える。
 また、資格制度は、経済社会の複雑化・高度化等により創設されるものであるが、一度創設されると多くの利害関係が形成されるため、創設の背景となっていた経済社会事情が変化しても廃止されず、増加の一途をたどっている。資格者の業務の有用性は一概に否定されるべきものではないが、資格制度は、行政事務の増大、民間活力の阻害、国民負担の増等の問題点をも有している。さらに、当該資格者の業務の改善・進歩等を目的として資格者の団体が設立されるが、本来の設立目的を離れ、当該資格者の既得権益を擁護し独占的利益を維持するために新規参入者を排除したり、資格者間の競争を制限するなど排他的に機能し、かえって国民の利益を損なっている状況もみられた。
 したがって、資格制度については、近い将来改めて検討することが必要であり、その際には濫設防止又は廃止の観点をも含めることが必要であると考える。また、その際、総務庁の「規制行政に関する調査結果に基づく勧告―資格制度等―」(平成12年9月)において、資格審査事務の在り方見直し・適正化、資格要件・資格審査方法等の見直し・適正化、民間技能審査事業認定制度の在り方見直し・認定事業の適正化などが指摘されていることから、同勧告の指摘及びこれに基づく改善状況をも踏まえ検討する必要があると考える。

[業務独占資格の問題意識等]

(問題意識)
 公的資格制度は、国民の権利と安全や衛生の確保、取引の適正化、資格者のモラル向上等のため、厳格な法的規律に服する資格者が存在し安心できるサービスを国民に提供することがその目的であるが、他方では、公的資格制度のうち業務独占資格は、企業の市場参入規制に相当する個人の特定の市場への参入規制の側面を持つ。業務の独占、合格者数の制限、受験資格要件などの規制が維持されることにより、新規参入が抑制されたり、競争が制限されればその弊害は大きい。また、業務の独占には供給責任を果たす義務が伴う。資格者の数が不足している資格については、資格者数を増大させるとともに、業務独占の範囲を見直して当該資格の隣接資格者にも業務を認めていくことが必要である。
 このような認識の下、当委員会は、平成10年以来関係省庁に対し、国民生活の利便性の向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、業務独占資格について、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の資格制度の在り方の見直しを求めると同時に、当委員会自身も関係省庁と並行して見直しを行ってきた。

(これまでの取組とその成果)

○検討経緯
 行政改革委員会は、第1次意見(平成7年12月)以来弁護士の大幅増員を提言し、最終意見(平成9年12月)において、行政書士の業務独占の在り方、受験資格要件の廃止及び報酬規定を会則記載事項としないことを提言した。このような提言は、資格制度による業務独占は、参入規制的要素を色濃く持ち、当該資格者による特殊なムラ社会が形成されがちであって、そうした市場においては一般に競争が排除され、サービスの質が低下し、価格が高止まりしがちであるとの問題意識に基づくものである。また、行政改革委員会は、最終意見において、同様の問題意識は資格制度全体に適用されるべきものであるとした。

○平成10年度
 当委員会は、平成10年度、上記の最終意見を踏まえ、公的資格制度の横断的な見直しに資するため、すべての業務独占資格の法令上の規定状況及び現状について横断的かつ全般的に調査を行い、その結果等を踏まえ、第1次見解において、業務独占範囲の見直し・相互乗り入れ、合否判定基準の公表、資格取得の容易化等の業務独占資格についての16項目の見直しの基準・視点を提示した。政府は、この提言を規制緩和推進3か年計画(改定)に盛り込み、平成11年3月30日に閣議決定した。これにより、関係省庁は、国民生活の利便性向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、所管する業務独占資格について、廃止又は必置資格若しくは名称独占等資格への移行を含め、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の資格制度の在り方を見直し、その結果に基づき規制緩和推進3か年計画の計画期間内に所要の措置を講ずることとされた。

○平成11年度
 当委員会は、平成11年度、業務独占資格のうち、国民からの意見・要望が多く国民の関心が高いと考えられる事務系資格10資格(不動産鑑定士、公認会計士、弁護士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士)等を中心に上記の16項目の見直しの基準・視点に基づき調査・検討を行い、その結果に基づき、第2次見解において個々の資格について具体的な提言を行った。第2次見解では、司法書士、弁理士、税理士に対して現在は弁護士の独占とされている訴訟代理等を認めることなど業務独占範囲の見直しを始めとして、資格横断的に、関連類似資格等の試験・講習科目の共通化・免除若しくは履修科目の免除、合否判定基準の公表、試験問題の公表・持ち帰りなど具体的な提言を行うとともに、新たな見直しの基準・視点として、一部の業務独占資格について法人制度の検討及び資格者数の増大の2項目を提言した。さらに、見直し推進のための横断的な仕組みとして、規制緩和推進3か年計画の再改定後速やかに各省庁が見直しの基準・視点に基づく検討状況を中間的に公表するよう提言した。政府は、この当委員会の提言を規制緩和推進3か年計画(再改定)に盛り込み、平成12年3月31日閣議決定した。

○これまでの成果
 関係省庁における見直しの中間公表は、平成12年5月16日までに行われた。関係省庁においては、ほとんどの業務独占資格について同時点までに見直し作業に着手しており、中には、第2次見解を踏まえ平成11年度中に見直しに着手したものもある。個別の見直しの基準・視点別に見ると、合否判定基準の公表、試験問題の公表・持ち帰りという試験の透明性の確保方策については相当の改善が図られており、業務独占範囲の一部縮小、報酬規定の会則記載事項からの削除等おおむね当委員会の提言に沿った見直しが行われている資格もある。
 なお、この間、当委員会は、法務分野、医療・福祉分野等の各分野別に個別の資格についても提言し、提言事項は規制緩和推進3か年計画に盛り込まれ、関係省庁において所要の措置及び検討が進められている。
 最近における主な規制改革措置は、次のとおりである。
 平成10年4月法曹人口の大幅増員等のため、裁判所法及び司法試験法の改正(合格者1,000人程度及び司法修習期間を2年から1年6月とする新たな修習制度は平成11年実施)
 平成11年4月理学療法士及び作業療法士の養成課程について、既に履修したと認められる科目を免除する指定科目制度等の導入(臨床検査技師について平成12年4月実施)
 平成11年7月行政書士試験の受験資格要件の廃止、報酬規定の会則記載事項からの削除(第145回国会で行政書士法改正)
 平成12年3月弁護士の広告規制が原則禁止から原則自由に緩和
 平成12年4月弁理士の業務範囲の見直し、試験制度の改革、法人制度の創設、報酬規定の会則記載事項からの削除等(第147回国会で弁理士法改正)

(今年度のテーマ設定)
 平成12年度は、特に、事務系10資格の強制入会制の見直し及び報酬規定の在り方の見直しについて重点的に取り組み、また、強制入会制の見直しに密接に関連する問題として、公正取引委員会による資格者団体に対する競争政策の積極化及び資格者団体におけるチェック機能の強化についても精力的に取り組んできており、これらについて、下記の業務独占資格各論のとおり具体的な提言を行うこととした。

[必置資格等の問題意識等]

(問題意識)
 公的資格制度のうち業務独占資格と並ぶ大きな類型として必置資格がある。必置資格等は、災害の防止や作業の円滑な実施等を通じ、労働者や国民一般の生命・財産・安全の確保、生活環境の保全等の社会的利益の実現を目的とする一方、コストの増大や事業者の自由な活動の抑制等により、国民生活に不利益を与える側面をも併せ持っている。必置資格等は、専門性・技術性の高い分野・業務について、特定の公的資格を有する者等の配置を義務付けることにより事業者の事業活動等に制限を加えるものであり、技術進歩や社会経済情勢の変化の速度が飛躍的に増大している今日においては、その制度内容を定期的に見直す必要が一段と高まっている。
 各省庁においては、必置資格等のもたらす社会的利益等のメリットと経済的コスト等のデメリットの比較衡量を含めた合理的かつ総合的観点から、個々の制度の在り方及び規制内容について、早急に見直しを行うべきである。

(これまでの取組とその成果)
 当委員会は、平成11年度、すべての必置資格の法令上の規定状況及び現状について横断的かつ全般的に調査を行い、その結果を踏まえ、第2次見解において、代替手法の導入、兼務・統括の許容、外部委託の許容等の必置資格等についての15項目の見直しの基準・視点を提示した。
 政府は、この提言を規制緩和推進3か年計画(再改定)に盛り込み、平成12年3月31日閣議決定した。これにより、関係省庁は、必置資格等のもたらす社会的利益等のメリットと経済的コスト等のデメリットの比較衡量を含めた合理的かつ総合的観点から、個々の制度の在り方及び細部の規制内容について順次見直しを行い、その結果に基づき遅くとも平成13年度(2001年度)中に所要の措置を講ずることとされた。

(今年度のテーマ設定)
 平成12年度は、事業者に対して実施したアンケート調査、これまでの個別規制緩和要望等から、制度の概要及び細部の規制の合理性等について確認する必要があると判断した必置資格等について調査・検討を行うとともに、関係省庁、事業者、有識者等に対するヒアリングを行った。この結果、これまでの15項目の見直しの基準・視点以外にも新たに検討を要する共通的事項を把握したが、これらの新たな検討事項を含め、見直しの基準・視点に基づき各制度について更に精査してきており、個別の資格について、下記のとおり具体的な提言を行うこととした。
 なお、昨年、規制改革に関する第2次見解において、業務独占資格について、関係省庁における見直し作業がなお途上であることから、関係省庁に対して見直しの基準・視点に基づく検討状況を中間公表することを求めたが、必置資格等についても同様の状況にあるため、業務独占資格にならい、関係省庁は中間公表を行うべきである。

【各論】

15-1業務独占資格

1 検討の経緯及び取組方針

(検討の経緯及び取組方針)
 分野別総論で述べたとおり、当委員会は規制緩和についての第1次見解において公的資格制度を見直すに当たっての見直しの基準・視点を提示し、関係省庁に見直しを求めたが、資格制度の持つ重要性にかんがみ、政府による横断的な業務独占資格の見直し作業を促進するという観点から、当委員会においても、関係省庁における見直し作業と並行して、自ら業務独占資格についての調査審議を進め、その結果に基づき、規制改革についての第2次見解において個別の資格について具体的な提言を行った。
 平成12年度は、第2次見解で提言し規制緩和推進3か年計画(再改定)に盛り込まれた個別事項のフォローアップを行うとともに、以下に記述するとおり、業務独占資格のうち、当委員会に対する国民からの意見・要望が多く国民の関心が高いと考えられる事務系の10資格(不動産鑑定士、公認会計士、弁護士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士の10資格。以下「事務系10資格」という。)の強制入会制の在り方及び報酬規定の在り方の見直しについて重点的に取り組んできた。また、これに関連して、強制入会制の見直しに密接に関連する問題として、資格者団体に対する公正取引委員会の競争政策の積極化及び資格者団体におけるチェック機能の強化についても検討を行った。

(今後の課題)
 これまでの取組により、業務独占資格制度全体として見た場合、試験制度を中心に一定の改善が図られてきたが、各見直しの基準・視点に基づく個々の提言事項を実施するためにはある程度の期間を必要とするため、現時点では具体的な結論予定時期、措置予定時期が明らかでない資格もあり、また、改善措置の効果が定着するまでには一定の期間を要する資格もあり、その措置状況をも踏まえて検討すべき事項もある。したがって、業務独占資格制度の見直しについては、今回の見直し結果に基づく改善措置の今後の進捗状況等を踏まえ、将来、改めて取り組むことが必要であると考える。なお、関係省庁は、資格制度の見直しに当たり、諸外国における類似の行政目的を達成するための制度及び当該資格の設置効果について十分に把握・分析しておくことが必要であると考える。

2 既往見解事項のフォローアップ

 当委員会が第1次見解及び第2次見解で提言した事項であって、規制緩和推進3か年計画(改定・再改定)に盛り込まれた事項(同計画の別紙1及び別紙4(分野別措置事項))については、これが確実に実施されるよう、その検討状況及び措置状況を注視していく。なお、同計画の別紙4では具体的な結論(予定)時期及び措置(予定)時期が明示されていないものが多いが、資格制度の見直しが同計画に基づく政府の責務となっていることから、関係省庁は結論(予定)時期及び措置(予定)時期を明示し、迅速かつ着実に所要の措置を講ずるべきである。

3 今年度の検討結果

 平成12年度は、「登録・入会制度の在り方」(見直しの基準・視点L)及び「報酬規定の在り方」(見直しの基準・視点M)について検討した。その結果は、下記のとおりである。

【登録・入会制度の在り方検討】見直しの基準・視点L
 公正有効な競争の確保の観点から、登録・入会制度の在り方について検討する。

(1)強制入会制の在り方

(強制入会制の実態及び特色)
 事務系10資格のうち、公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士の8資格では、法律により、資格者団体の設立が義務付けられるとともに、資格者団体に入会しなければ当該資格者の業務を行うことができない強制入会制が採られている。不動産鑑定士については、法律上団体の設立及び入会を強制する規定はなく、実際にも民法第34条の規定に基づく任意入会制の社団法人が設立されている。公証人は、省令(公証人法施行規則)により、団体の設立は任意であるが設立された場合は強制入会とされており、実際にも団体が設立されて強制入会制が行われている(参考4参照。)。
 強制入会制の主な特色は、@)資格試験に合格して業務遂行能力があるとされた者であっても、資格者団体に入会しない者は業務を行うことができない、A)資格者団体が新規加入者の登録審査及び登録を行う、B)資格者団体が自ら会則を制定し、主務大臣がこれを認可し(弁護士については、所管省庁がないため、弁護士会は日本弁護士連合会の承認を受けて、日本弁護士連合会は自ら会則を定めることとされている。)、会員には会則を遵守する義務が課せられる、C)資格者団体は役員の選出を行う、D)役員の職務は資格者の品位の保持と資質の向上及び報酬の決定(報酬規定の作成)である、E)資格者団体は会則に違反した者に対する一定範囲の懲戒権を持つ、F)資格者団体は非資格者の取り締まりを行う、という点にある。これらの特色は、内外の競争を制限し、手工業者の経済的利益を守るための組織であった中世ヨーロッパの都市におけるギルドと酷似しており、当委員会は、資格試験によって認定された能力と個人の意思とにかかわらず資格者団体に入会しなければ資格者としての業務を行い得ないという点で、強制入会制は一種のギルドであり、法定されたボイコットに他ならないと考える。このような強制入会制の下では、競争制限的行為が行われ、価格が高騰したり、サービスの質が低下するとの指摘がある。

(強制入会制の弊害)
 当委員会では、このような性格を持つ資格者団体への強制入会制の問題について、資格者団体及び関係省庁からヒアリングを行い、また、資格者団体から提出を受けた会則等を分析するなど検討してきた。資格者団体及び関係省庁は、強制入会制を採る主な理由として、資格者の品位の保持、資質の維持・向上、非資格者の取り締まり等を挙げている。しかし、@)当委員会が関係省庁、資格者団体等からヒアリングした結果では、品位の保持や資質の維持・向上のための研修の実施状況・受講状況は概ね低調である、A)非資格者の取り締まりは資格者団体の本来的な業務ではない、B)任意入会制に移行しても資格者団体の活動が資格者にとって有意義なものであれば、入会者数の減少を防ぐことは可能であり、実際に任意入会制を採る不動産鑑定士では、任意入会制による支障はなく、強制入会制を採る必要はないとしていることなどから、資格者団体への強制入会制を存続させることについての十分な論拠を見い出すことはできなかった。たとえば、個人の商店主や事業者が、関係する業界団体に加入しなければ営業ができないとしたならば、誰もが強く疑問に思うであろう。
 また、当委員会の調査結果では、強制設立の各資格者団体では会則等(主務大臣の認可を必要とする会則及び各団体が自主的に制定している各種の規程、規則、細則、示達、業務必携、心得、資格者手帳、ハンドブック等の会員の行動を規定するもの一切をいう。)で報酬の減額制限、競業防止、過度の広告規制等の競争制限的とみられる規定を設けていた。このようなことから、当委員会は、資格者団体及び関係省庁が主張する「資格者の品位の保持と資質の維持・向上」という強制入会制のメリットよりも、現在では、下記(2)−アで記述する「資格者団体による競争制限的行為」という強制入会制の弊害の方が大きいのではないかとの問題意識を持たざるを得なかった。
 このようなことから、当委員会は、強制入会制は本来廃止するべきであると考える。
 一方、資格者団体及び関係省庁では、強制設立の資格者団体については強制入会制による弊害があることを認めているが、これを排除し、資格者団体及び資格者の自助努力を通じて資格者の品位の向上と資質の維持・向上並びに関係行政の改善・向上に努めることにより、国民の利益の増進が図られると主張しており、また、後述(2)−イで当委員会が提言している資格者団体におけるチェック機能の強化方策についてほとんどの団体が前向きな姿勢を示していることから、強制入会制の在り方については、当面資格者団体における競争制限的行為の排除の状況、チェック機能の強化方策の進捗状況、本来の品位保持と資質の向上に関する業務の実施状況等を注視することとし、その状況を踏まえて改めて検討することが適当であると考える。

(2)強制入会制に関連する諸問題
 当委員会が資格者団体の強制入会制について調査・審議を進めてきたところ、資格者団体によって競争制限的行為が行われているとの指摘があったため、当委員会が強制設立の各資格者団体の会則等を調査したところ、実際に多数の競争制限的とみられる規定が認められた。このため、強制入会制に密接に関連する競争政策上の問題として、下記のとおり、@)公正取引委員会による資格者団体の実態把握、A)資格者団体の活動と独占禁止法との関係に関する基本的な考え方の明示と公表・周知、B)資格者団体における独占禁止法違反行為の未然防止のための自主的活動に対する公正取引委員会の支援の必要性が認められた。
 また、資格者団体は一定範囲の懲戒権を持つ自主統制的な団体であるとされているが、その公益性・公共性の大きさにかんがみ、資格者団体におけるチェック機能を強化する必要性も認められた。

ア 資格者団体に対する公正取引委員会の競争政策の積極化
 (ア)資格者団体の実態把握

(実態調査の実施状況等)
 各資格者団体は、上記(1)のような強制入会制の下で、法令により直接又は法令上の品位保持規定等を根拠として会則等により、報酬、業務の委嘱、広告などの資格者の行動について各種の自主規制を行っている。
 公正取引委員会は、事業者団体における競争制限的な行為の防止を図るとともに、その適正な活動に資する目的で、平成7年に「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(以下「事業者団体ガイドライン」という。)を策定・公表し、その中で、資格者も業として経済活動を行う場合には事業者に該当し、その結合体は事業者としての利益を増進することを主たる目的とするものであれば、事業者団体に該当することを明らかにしている。
 このようなことから、公正取引委員会は、最近では日本土地家屋調査士会連合会、徳島県公共嘱託登記土地家屋調査士協会及び埼玉県行政書士会に対し、独占禁止法に違反するおそれがあるとして警告を行い、是正措置を講じてきている。
 また、平成10年9月に一部の司法書士及び行政書士の広告規制及び報酬規制について実態調査を行い、競争制限的行為の是正を指摘しているが、他の資格については調査を行っていない。公正取引委員会では、この2資格を取り上げた理由として、@)全国的に幅広く存在し、国民生活と密着した事業活動が行われていること、A)事業活動の内容が、不動産の登記や自動車登録の申請等、一般消費者が日常生活を営む上で利用する機会が多いと考えられること、B)資格者団体への入会が法律によって義務付けられるとともに、当該資格者団体による広範な自主規制権の下で事業活動が行われていること、C)上記のような状況がある一方、事業活動の実態を明らかにし、競争政策上の観点から検討を行うことは、消費者利益の保護を図る上で有意であることを挙げている。しかし、上記の4条件は前述の10資格のうち資格者団体の設立が任意である不動産鑑定士及び公証人を除く8資格すべてに該当し、これらの8資格の社会的影響は実態調査を行った2資格と同等であり、また、資格者数ではこれらの2資格を大幅に上回るものもある。公正取引委員会では、2資格以外の資格について調査を行っていない理由として、@)2資格についての上記調査の公表後、他の専門職種からも調査内容の照会を受けるなどしていること、A)所管省庁において取組が進められていること、B)規制緩和の進む分野における取引慣行等調査課題が山積していることを上げている。

(実態把握の必要)
 しかし、当委員会に対して、資格者から、資格者団体による競争制限的行為が行われているとの指摘が多々あったことから、当委員会が上記8資格の中央レベルの団体及び任意に抽出した地域レベルの団体の会則等を調査したところ、公正取引委員会が先の指摘により既に改善措置が講じられているとしている資格を含めて、すべての資格者団体において、「品位の保持に関する規則」、「不正競業の防止に関する規則」等に競争制限的とみられる規定が多数みられた。競争制限的とみられる規定の内容の例としては、@)広告の媒体や記載事項を制限するなど過度の広告規制(看板への職名・氏名・事務所名・電話番号以外の文字の記載禁止、案内板の数の2か所以上の禁止など)、A)報酬の減額禁止、報酬の減額幅の制限、適正な報酬の受領義務付けなどの報酬規制、B)同業者による業務の侵害禁止、業務の受任に際しての委嘱者及び前任者との意見調整の義務付けなどの競業制限が挙げられる。
 したがって、公正取引委員会は、既に実態調査を実施した2資格を含めて、現在法律で強制入会制を採っているすべての資格を対象として、資格者団体が行っている自主規制の実態を把握し、その結果に基づき所要の改善措置を講ずるべきである。

 (イ)資格者団体の活動と独占禁止法との関係の明確化と公表・周知
 事業者団体ガイドラインでは、資格者も事業者であり、資格者団体も事業者団体であるとしているが、上記のとおり、実際には資格者団体による競争制限的行為は多々行われているところであり、資格者団体にとって事業者団体ガイドラインは有効に機能しているとは言いがたい。その理由の一つとしては、例えば、@)価格制限的行為については、事業者団体が商品又は役務の価格を決定すること等は事業者団体ガイドラインでは禁止されているが、他方で、資格者団体(行政書士と弁理士を除く。)には法律により報酬を会則に記載することが義務付けられており、会員には会則遵守義務が課せられていること、A)事業者団体ガイドラインでは、表示・広告の内容、媒体、回数を制限する等の消費者の正しい商品選択に資する情報の提供に制限を加えるような自主規制を行うことは違反となるおそれがあるとしているが、他方で、各資格者の関係法令には競争制限的に機能する品位保持規定があることなどのため、法律により自主統制権を与えられている資格者及び資格者団体にとって、自主規制と独占禁止法との関係が分かりにくいものとなっていることなどが挙げられる。なお、関係省庁及び資格者団体の中には、会則等の改正のために公正取引委員会にどのような内容であれば独占禁止法上問題がないか問い合わせしているものもあるが、同委員会からは明確な回答が迅速に示されていないとの指摘もある。
 したがって、公正取引委員会は、@)サービス貿易の自由化の中で資格者団体にも競争の活性化が求められていること、A)強制入会制を採る資格者団体においては脱退の自由がある事業者団体よりも一層競争の活性化が求められていること、B)強制入会という制度的・構造的な要因により資格者団体において競争制限的とみられる行為が繰り返されていると認められること等から、個別の競争制限的行為を排除するだけに止まらず、競争政策の所管省庁としてこれを事前に予防する観点から、上記(ア)で指摘した実態把握の結果及び資格者団体の特性をも踏まえ、資格者団体の活動と独占禁止法との関係を明確化し、公表・周知するべきである。
 また、今後参考となる相談事例が生じた場合には、可能な限りこれを明らかにすることにより、資格者団体における独占禁止法違反行為の未然防止に努めるべきである。

 (ウ)資格者団体の自主的取組に対する公正取引委員会の支援
 近年、競争政策の活性化や企業におけるモラルの高まり等を背景に、独占禁止法上違反となる事項を具体的に挙げて独占禁止法上の遵守事項をマニュアル化した独占禁止法コンプライアンスプログラム(遵守規定)を作成する企業が増加してきている。
 上記(ア)の公正取引委員会の実態調査以降も、資格者団体が会則等において競争制限的とみられる規定を設けている上記(イ)以外の理由としては、国民の権利利益の保護に密接に関係し品位保持義務が課される資格者には、高度の専門性と倫理観が求められていることから、競争はふさわしくないという意識があることが挙げられる。このような資格者からの意見は当委員会に多々寄せられており、また、それが根強いことは、資格者団体からの当委員会のヒアリングにおいて、当委員会が強制入会制及び報酬規定について資格者団体と一般の事業者団体とを比較しようとしたことに対して、不快感を示した団体があることからも明らかである。しかし、海外からも資格者に係る競争の促進が求められている中で、資格者団体は、業務独占という特権制度の下で自主統制権を与えられた団体として、自ら競争制限的行為を防止する責務があり、公正取引委員会は、このような民間の自主的な取組を支援すべき責務がある。これについて、本年(平成12年)の論点公開後、当委員会が各資格者団体からヒアリングしたところでは、多くの資格者団体が、国民の利益の観点から資格者の競争を活性化するため、競争制限的な規定を廃止し、民間企業の例にならって独占禁止法コンプライアンスプログラムを作成することに前向きの姿勢を見せており、そのための公正取引委員会の支援を求めていた。資格者団体において独占禁止法コンプライアンスプログラムを作成することは独占禁止法違反行為を将来にわたって防止するという観点からも極めて重要である。
 したがって、公正取引委員会は、資格者団体に対して独占禁止法コンプライアンスプログラムを作成するよう慫慂するとともに、必要な支援措置を講ずるべきである。

イ 資格者団体におけるチェック機能の強化

 (ア)業務及び財務等に関する資料の一般への公開
(情報公開の動き)
 近年、行政機関及び企業における情報公開の動きが急速に進展してきているが、資格者団体を含む各種の法人についての情報公開の動きは次のとおりとなっている。@)株式会社については、出資者及び債権者の保護の観点から、既に商法及び証券取引法により財務諸表等の作成・公開が義務付けられている、A)特殊法人については、業務内容及び財政基盤の両面にわたって公共性があることから、行政改革プログラム(平成8年12月25日閣議決定)などの累次の閣議決定や特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律(平成9年法律第103号)などにより、その推進が統一的かつ制度的に図られている、B)認可法人については、その活動が特殊法人や公益法人と同様に公共的・公益的性格を有していることから、総務庁の「認可法人に関する調査の結果に基づく勧告」(平成11年3月5日)により、財務内容等に関する書類の作成・公開が求められている、C)民法第34条の規定に基づき設立される公益法人については、積極的に不特定多数の利益を実現することを目的とする非営利の法人であるが相応の社会的責任を有していること並びにその設立目的の達成及び健全な事業活動を継続するため、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年9月20日閣議決定、平成9年12月16日一部改正)により、主たる事務所への備え付けによる一般への閲覧により、一定の業務及び財務等に関する資料を公開することとされている。
 一方、資格者団体における業務及び財務等に関する資料の一般への公開の状況を見ると、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会及び全国社会保険労務士会連合会は、認可法人として上記勧告の対象となっており、社団法人である日本不動産鑑定協会は上記閣議決定の対象となっているが、その他の資格者団体は公開することとされていない。

(資格者団体の責務と情報公開の必要)
 現在、業務及び財務等に関する資料を公開することとされていない6団体の法的性格を見ると、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、弁理士会及び日本行政書士会連合会は、それぞれの資格の根拠法に基づき設立される特別の法人であり、日本公証人連合会が権利能力なき社団であるが、いずれの資格者団体も、それぞれの資格者の使命と職責を全うしそれぞれの資格者の義務の遵守と業務の改善進歩に資するため、会員に対する指導、連絡、監督等に関する事務を行うことを目的として設立されている。これらの団体は、業務独占という特権の下で、業を行うためには資格者団体に入会しなければならない強制入会制を採っており、関係行政に関する建議及び諮問に対する答申が法令上明記されているなど、その使命と公益性及び関係行政に与える影響力は、既に業務及び財務等に関する資料を公開することとされている法人と同等以上のものがある。そのような中で、資格者団体においては、上記ア−(ア)に記述したような国民(利用者)の利益を損なうような競争制限的とみられる行為があり、資格者団体がその業務及び財務に関する資料を公開することは、会員及び国民(利用者)に対する透明性の確保並びに国民(利用者)の負担となる報酬の適正性を確保する観点からも極めて重要である。
 したがって、現在、業務及び財務等に関する情報を公開していない弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公証人、弁理士及び行政書士についても、既に公開している団体に準じ、これを公開するべきである。なお、資格者団体の中には事業を行っていないとするものもあるが、資格者団体の活動は、上記のとおり極めて大きな公共性及び公益性を有していることにかんがみ、事務の改善及び統一並びに指導及び連絡に関する事務等も公開の対象に含めるべきものであり、公開する資料の内容及び方法は、最低限、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」のレベルによるべきである。

 (イ)資格者団体の役員等への資格者以外の者の任用
(外部役員任用の動き)
 民間企業では、企業の意思決定主体や経営者を監視するコーポレート・ガバナンス(企業統治)の考え方が近年急速に普及してきており、平成5年には改正商法が施行されて社外監査役制度が導入されたほか、社外取締役を置く企業が増加してきている。我が国では、日本コーポレート・ガヴァナンス・フォーラムが、平成10年5月「コーポレート・ガヴァナンス原則」を取りまとめ、企業と直接利害関係のない社外取締役を選任することや社外監査役を登用することなどを提言している。なお、これに関し、OECDの「規制改革に関する報告書」(1997年5月)では、消費者の要求を満たす質と量を確保するための規制は、競争制限的になり、料金を高止まりにすることから、そうした規制は、職業団体自らではなく他の者によって実施されることが望ましく、消費者の利益を代表する者(保険会社、消費者代表、競争と消費者の利益を代表する官庁の職員等)を団体の構成員とすべきであるとしている。資格者団体の中では、日本土地家屋調査士会連合会が既に資格者以外の者を役員(以下「外部役員」という。)に任用しており、全国社会保険労務士会連合会が会則において外部役員を任用できることとなっている。

(外部役員任用の必要)
 資格者団体は資格者の自主統制的団体であるとされており、また、資格者団体の運営に関して人事及び資金面で国の支援を受けている資格者団体はないことから、資格者団体において外部役員を任用する必要はないのではないかとの意見がある。しかし、強制入会制の下で業務独占という特権を与えられた者の行動は、利用者である国民及び関係行政にも大きな影響を与える一方で、競争制限的とみられる行為が行われていることは前述ア−(ア)で指摘したとおりである。また、資格者団体の中には、その運営等に関し、有識者の意見を聴取するモニタリングシステムを設けているとして部外役員の任用は必要ないとしているものがある。しかし、モニターには議決権がなく、また、資格者団体の運営全般に係わっているものではないことから、モニタリングシステムを持つ資格者団体においても競争制限的とみられる行為が行われており、同システムは有効に機能しているとは言いがたいものとなっている。このように競争制限的とみられる行為が行われている理由は、資格者の意思にかかわらず脱退の自由のない強制入会制を採る資格者団体において、利害を同じくする資格者だけによって意思決定が行われているという資格者団体の閉鎖性にも起因すると見られる。このため、類似の事例の再発を防ぐには、単に個別の競争制限的な事例を排除するだけではなく、将来にわたってこのような事例が起こらないよう、資格者団体の意思決定過程に資格者以外の者を参画させるシステムを構築することが不可欠である。
 したがって、強制入会制を採る各資格者団体は、資格者団体の使命と公共性・公益性の大きさにかんがみ、また、民間企業におけるコーポレート・ガバナンスの動向を踏まえ、資格者団体における適正なガバナンスを確保するため、資格者以外の者が資格者団体の意思決定過程に参画できるよう外部役員を任用するべきである。これについて、多くの団体では当委員会の提言を真摯に受け止め、前向きに検討を行っていると承知している。なお、外部役員の意見が十分に資格者団体の運営に反映されるよう将来的には外部役員の数は一定割合以上とするべきであると考える。当委員会が外部役員として所管省庁出身者を想定していないことはもとよりである。
 なお、今回具体的な検討に至らなかったが、資格者団体の中央会の中には、その会員が資格者ではなく各単位会であり、単位会の代表が全国団体の会務執行者となりながら、総会において議決権を行使する仕組みを採っているものもあり、資格者団体の適正なガバナンスの観点から疑問のあるものも見られた。

 (ウ)資格者に対する懲戒処分の公表
 不動産鑑定士、公認会計士、税理士、弁理士及び社会保険労務士については、所管大臣は、法律により、懲戒処分を行ったときはその旨を官報等に公表することとされている。弁護士については、会則により機関雑誌に公表することとされており、また、会則に定めはないが業務停止以上の懲戒処分についてはマスコミに公表している。一方、司法書士及び土地家屋調査士については、法令上、懲戒処分の公表に関する規定がなく、それぞれの団体に公表基準の作成と公表が委ねられているが、現在、懲戒処分の対象となった者の氏名等は公表することとされていない。行政書士については、一部の都道府県及び行政書士会が、それぞれの判断により氏名を含めて懲戒処分の内容を公表している。公証人については、そもそも懲戒処分を公表するシステムが構築されていない。
 懲戒処分の公表は、公表措置を通じて資格者による不祥事事案の再発を抑止するとともに、資格者の提供するサービスの利用者である国民に注意を喚起することによって不測の損害を被ることを防止する観点からも重要である。したがって、現在法令上懲戒処分を公表することとされていない司法書士、土地家屋調査士、公証人及び行政書士についても、当該資格者の氏名を含めて懲戒処分の内容について公表するシステムを構築するべきである。なお、その際、国の公文書その他公示事項を登載し周知させるための機関紙である官報に掲載するのはもちろんのこと、インターネットに掲載するなど国民が容易に知りうる媒体をも用いるべきであると考える。また、現在、会則上機関雑誌のみに懲戒処分を公表することとされている弁護士についても不動産鑑定士、公認会計士、税理士、弁理士及び社会保険労務士にならい、官報にも公表することとした上で、その他の媒体にも公表するべきである。

 (エ) 国民一般からの懲戒処分の請求
 事務系10資格のうち、不動産鑑定士、公認会計士、弁護士、公証人、税理士及び弁理士の6資格では、それぞれの資格者について懲戒処分に該当する事実があると認めたときは、何人であっても所管の大臣に懲戒処分を請求できることが法律上明記されている(弁護士については、その弁護士の所属弁護士会に請求。公証人については法務局長又は地方法務局長に異議申出。)。これは、所管省庁等が懲戒権を行使する前提として、資格者の職務に関する行為を詳細に知り得ることが困難であること、資格者が行う行為について業務の依頼者はもちろん社会一般から疑問を持たれることは適当ではないため、国民一般から懲戒の請求ができることとして、懲戒権の発動が適切かつ活発化されることを期待したためであるとされており、この考えは、上記の6資格以外の資格についても適用されるべきものである。
 したがって、残る司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士及び行政書士についても、資格者に対する国民一般からの懲戒処分の請求を認めるべきである。

 (オ)弁護士の懲戒制度の見直し
 強制入会制に関連して資格者団体のチェック機能の強化方策について調査審議してきたところ、これに関連して弁護士の懲戒制度について、より透明性、迅速性及び実効性を高める観点から、抜本的にその在り方を見直す必要が認められた。
 具体的には、当委員会が弁護士の懲戒問題について、日本弁護士連合会からのヒアリング調査及び自ら調査した結果、弁護士の懲戒制度の運用については、

  1.  懲戒処分は基本的に各弁護士会によって行われているが、類似しているとみられる事案であっても弁護士会によって処分内容に軽重があると認められること、
  2.  依頼者の財産を横領した事案であっても戒告処分、報酬を得る目的で法律事件の周旋を業とする非弁護士から600人以上の多重債務者の周旋を受けた事案であっても業務停止2か月、和解金を着服しその返還訴訟において法廷で虚偽の主張した事案であっても業務停止1年6か月など処分内容が軽すぎるのではないかと思われる事案が多数あること、
  3.  多重懲戒弁護士(重ねて懲戒処分を受ける弁護士)が平成元年から平成12年11月までの間で56人認められ、中には4回も懲戒処分を受けている者もいること、
  4.  平成11年度に懲戒処分が行われた53件について、懲戒請求があってから実際に懲戒処分が行われるまでの所要期間をみると、最短で266日、最長で2,100日(5.8年)、平均で約788日(約2.2年)を要しており、中には1,000日以上を要しているものも10件あるなど、その事務処理に長期間を要していること
 等から必ずしも有効に機能していない。
 この原因としては、
  1.  懲戒処分の程度について共通的かつ客観的な処分基準がないこと、
  2.  迅速でかつ懲戒処分を請求した者の立場に立った真摯な真相究明を行うためには、専従の担当者が必要であるが、現行の懲戒手続は、弁護士会の会員弁護士が本業の傍らボランティアで行っており、綱紀委員会、懲戒委員会の全体委員会の開催が月1〜2回程度と少ないこと、
  3.  綱紀委員会及び懲戒委員会の委員構成が弁護士中心で国民一般の意思を反映するものとなっていないこと、また、綱紀委員会の弁護士以外の委員(参与委員)には評決権がないこと、
  4.  弁護士会に強制調査権がなく、また、弁護士に調査に対する協力義務がないこと、
 などが考えられる。
 したがって、国民の信頼を確保するため弁護士の懲戒制度が有効に機能するよう、当面の措置として、早急に透明化、迅速化、実効化のための所要の措置を講ずるべきである。
 なお、当面の措置の例としては、次の事項が考えられる。

【当面の措置の例】

(委員構成等)

  1. 綱紀委員会・懲戒委員会の委員構成の見直し
    (会員、学識経験者以外の者の参加、外部委員の過半数化等)
  2. 外部委員に対する評決権の付与
  3. 懲戒制度への市民参加の実施
    (手続面)
  4. 綱紀委員会・懲戒委員会の公開等透明性の確保
  5. 懲戒処分の標準処理期間の設定
  6. 懲戒処分内容を不服とする懲戒請求者に対する司法審査請求権の付与
  7. 綱紀委員会の調査の対象となった弁護士に対する調査協力義務の明確化
  8. 弁護士会に対する会員への強制調査権限の付与
  9. 懲戒処分の客観的な判断基準の作成
    (懲戒処分の公表)
  10. 懲戒処分の官報、ホームページなどへの公表
 ところで、我が国の弁護士制度については、弁護士会及び日本弁護士連合会への強制加入制の下で、登録審査及び懲戒処分を弁護士会自らが行っていることから、世界に例を見ない完全自治であるとされている。この点を諸外国と比較すると、フランスで我が国と類似した制度が採られているほかは、一定の自主統制権は持っているものの、登録審査及び懲戒処分の両方又はどちらかについて、裁判所又は州政府等の統制の下に置かれるのが一般的である。我が国の弁護士の懲戒制度は、我が国における弁護士自治の歴史的経緯及び弁護士の懲戒委員会への外部委員の関与等の懲戒制度の改正経緯を考慮しても、弁護士会及び日本弁護士連合会が登録審査権と懲戒権を独占しているという世界でも稀な制度となっており、そのために懲戒制度が有効に機能していないとの指摘もある。弁護士の強制入会制を維持する理由の一つに弁護士自身が懲戒権を持っていることが挙げられる。しかし、公平性・透明性の観点から、完全中立な第三者が客観性を持って懲戒を行うことができるよう、懲戒権は懲戒を受ける者からできる限り離れたところに置くべきであるのがその本質である。現行弁護士法は弁護士会に懲戒権を与えてはいるが、それは本質的な問題ではなく、そのことをもって懲戒権と弁護士自治とは必然的に一体のものであるとして考えるべきではない。
 したがって、弁護士の懲戒制度については、当面、上記の運用改善のための措置を早急に講ずるべきであるが、それらの措置を講じた後も懲戒制度が有効に機能していないと認められる場合には、弁護士の担う公益性・公共性の大きさにかんがみ、国民の意見が反映されるよう弾劾構造化を含め、弁護士の懲戒制度の在り方そのものを抜本的に見直す必要があると考える。

【報酬規定の在り方見直し】見直しの基準・視点M
 公正有効な競争の確保や合理性の観点から、報酬規定の在り方を見直す。

(1)報酬規定を取り上げた経緯
 行政改革委員会は、その最終意見(平成9年12月)の総論において、「規制緩和の意図するところは、国民の自由な活動の基盤を整え、『民でできるものは民に任せる』ことにあり、これは、国民生活や経済活動について、行政が一律かつ事前に、参入を規制したり、価格・数量や供給の方法などを管理し決定するのではなく、国民の自由な選択を第一に尊重し、それに合致したものが評価されるという考え方に変更しようとするものである」としている。こうした考え方は、製造業や流通業に限らず、資格者が提供するサービスにも当てはまるものであり、資格者が受ける報酬も、市場における競争、需要と供給とのバランス及び資格者の合理化努力の結果により決定されるべきものである。
 こうした観点に立ち、行政改革委員会は、上記の最終意見において、行政書士の受ける報酬について、行政書士会及び日本行政書士会連合会会則の記載事項としないことを提言した。また、当委員会は、第2次見解において、他の資格についても報酬規定の在り方の見直しを行うべきことを提言した。こうした提言を受けて、行政書士及び弁理士については、既に関係法律が改正され、報酬規定を会則記載事項としないこととされた(第145回国会において地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律により行政書士法改正(平成11年7月成立)、第147回国会において弁理士法改正(平成12年4月成立))。

(2)基本的な考え方
 このような経緯を踏まえ、当委員会は、平成12年7月26日の規制改革に関する論点公開や関係省庁及び各資格者団体からのヒアリングの場において、@)報酬規定が利用者の利便のために設けられているとしても、また、資格者団体が報酬基準を明示することが独占禁止法上直ちに問題とならない場合であっても、資格者団体が個々の資格者の原価計算の要素を考慮せずに一律に基準額を示すことは適切ではなく、資格者団体が基準額を示すことに代えて各資格者が独自の報酬額を算定できるよう、報酬についての基本的な考え方や原価計算の方法を示すことにとどめるべきである、A)各資格者が独自に適切な報酬額を算定し事務所に掲示し、依頼者に詳細に説明すれば、利用者の報酬についての不安を解消することは可能であり、さらに、各資格者の報酬額を広告記載事項として認めることにより、利用者にとって資格者についての情報が不足しているという情報の非対象性を解消でき、利用者は資格者に業務を依頼する前に、あらかじめおおよその報酬額を知り、同業他者と比較することが可能となり、また、合理化により低廉な報酬で優れたサービスを提供できる資格者は、その業務を拡大することも可能となるのではないか、B)報酬基準は、最高価格を抑制する上限規制的に機能する場合がある一方で、基準額より下がらないという最低価格を定める機能をも有しており、報酬基準が報酬の値崩れに対する防波堤になっているとの指摘もあり、さらに、報酬基準自体は目安であるとしても、当事者による報酬額の交渉はそこを出発点とするため、結果として資格者間でほぼ横並びの報酬になり、廉価なサービスを提供するための真の努力が行われているとは言えない等の理由を挙げて報酬規定を会則記載事項としないことを提言した。
 ちなみに、公正取引委員会の事業者団体ガイドラインによれば、市場における競争を実質的に制限するまでに至らない場合であっても、資格者団体以外の一般の事業者団体が標準価格、目標価格等価格設定の基準となるものを決定することは独占禁止法違反となるとされている。また、米国では、かつては我が国と同様に弁護士の報酬規定が定められ、弁護士に強制されていたが、1975年、連邦最高裁判所は、これをシャーマン法違反であると判示し、現在では、弁護士については、報酬の合理性を決定する要因(要する時間と労力、要求される熟練度、類似の業務についてのその地域の報酬等)のみが明示されている。
 なお、弁護士の報酬規定については、あくまでも目安であるとされているが、@)弁護士が報酬全額を免除することができるのは、依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるときに限られる、A)依頼者が経済的資力に乏しいとき又は特別の事情があるとき以外は、民事事件の場合で、着手金及び報酬金の増減の範囲を基準額の30パーセント以内としたり、着手金の最低額を10万円としているなど、問題がある。
 したがって、公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士及び社会保険労務士の6資格についても報酬規定を会則記載事項から削除するべきである。なお、これについて、報酬規定廃止後の代替措置の在り方を含めて具体的な検討を行っている資格もあると承知している。

15−2必置資格等

1問題意識

(1)制度の概要
 必置資格とは、通常、公的資格制度のうち業務独占資格に該当する資格以外のもので、一定の事業場等においてその資格を有する者のうちから管理監督者等を選任することが義務付けられているものをいう。また、例えば、それ自体が独立した必置資格と位置付けられないもの等であっても、同様に事業場等に一定の者を管理監督者等として配置することが義務付けられている必置規制もある。(以下、必置資格及び必置規制を指して「必置資格等」という。)
 なお、必置資格の一覧は、<参考2>を参照されたい。

(2)見直しの必要性
 必置資格等は、施設や設備等について形成・設置・使用・廃棄等を行う、あるいは事業を営む場合において、災害防止、環境保全、消費者保護、生産・消費の合理化といった様々な政策目的を達成するため、資格者を置くべきとされる事業場の単位(必置単位)及び置くべきとされる人数(必置人数)並びに業務範囲等について定める重要な規制手法となっているが、この結果、事業者には多種多様な必置資格等が課せられている。
 例えば、当委員会が調査した、燃料、電力、水等の消費量からみて中規模程度のある生産工場(人員40名弱)においては、以下のような資格者の選任(専任)が必要となっている。

 表:従業員40名弱のある中規模生産工場で必要な資格(業務独占資格を含む)
 放射線取扱主任者(一般)
 放射線取扱主任者(ECD)
 産業廃棄物中間施設技術管理者
 産業廃棄物処理施設技術管理者
 毒物劇物取扱責任者
 エネルギー管理者(熱)
 エネルギー管理者(電気)
 電気主任技術者
 ボイラー・タービン主任技術者
 公害防止管理者(大気)
 公害防止管理者(水)
 公害防止主任管理者
 高圧ガス製造保安責任者(丙種化学)
 高圧ガス製造保安責任者(特別丙種化学)
 冷凍機械主任者
 無線従事者
 乾燥設備作業主任者
 はい作業主任者
 特定化学物質等作業主任者
 酸素欠乏危険作業主任者
 安全管理者
 危険物取扱者
 玉掛技能者<業務独占資格>
 ボイラー技士<業務独占資格>
 移動式クレーン運転士<業務独占資格>
 フォークリフト運転技能者<業務独占資格>

 40名足らずの工場でこれだけの資格者を常に維持・確保することは事業者及び従業員にとって大きな負担であり、柔軟な人事異動を困難にしてしまうことは明白である。
 また、国際的競争力を確保するため同一コンビナート内で同一事業を供出・統合して新会社を設立するにあたり、設置単位に関する制約から必置資格者の配置を合理化することが困難となり合併効果を低減するとの意見も寄せられている。
 これらの要望・意見に対して実態を精査しその結果を踏まえ規制の改善・合理化を適宜迅速に進めていかなければ、そのコスト負担は事業者から商品・サービスの価格を通して最終的には規制の受益者である国民に回ってくることになる。
 また、専任等の規制がファシリティ・マネジメント等の新しいビジネスモデルが誕生し育つ環境の障害になっている状況もある。
 さらに、経済のグローバル化が一層進展し事業環境を考慮して事業者が国を選択する現状を考慮すれば、我が国企業に過剰なコスト負担を招来し国際競争力向上にマイナスの影響を及ぼすことから、国にとっても海外からの投資や国内の雇用機会の喪失・税の減収等などの損失をもたらすことになる。
 このような背景から、事業者等各界からの改善・合理化要望には依然として根強いものがある。
 必置資格等による効果は一概に否定しないが、必置資格等は他の資格制度と同様いったん創設されると創設当時の背景や環境が変化しても廃止はほとんど行われず、増加の一途をたどっている。現在、当委員会では必置資格として119を把握している。
 また、安全や環境等に対する社会通念の変化や技術の高度化・複雑化等へ的確に対応できるよう、規制の政策目的や要求事項について最終的な受益者でありかつコストの負担者である国民の視点及び規制の国際的整合性の視点から改善・合理化を進めていくことが強く期待されている。
 このようなことから、当委員会は、必置資格等の新設について厳格な審査を行い全体としてその増加を抑制するとともに、既存資格について廃止を含めた在り方の抜本的検討、類似資格の統合・相互乗り入れ、兼務・外部委託の許容、資格取得要件の緩和等について、厳しく見直しを行う必要があると考える。

(3)外形基準に代わるマネジメントシステムの考え方
 必置資格等は、災害防止、環境保全といった多様な政策目的を事業者が達成することを担保するための「外形基準」の一つとして、実務経験年数、試験合格、講習修了等、一定の条件を満たす者の選任を事業者に義務付けるものである。
 しかし、一般に、一定の外形基準を一律にすべての事業者に適用することは個々の事業者の特性に合わせた対応を困難にし、事業者が自主性を発揮する機会を制限し、技術進歩・経済社会状況の変化に即した改善やより効果的な目的の達成を阻害する等の問題がある。
 したがって、規制の創設と運用にあたっては、事業者等の主体的な取組・自主性の尊重と必要最低限の規制とを適切に組み合わせることについて常に配慮することが、社会経済システムを効率的かつ合理的に運営していくために不可欠である。
 近年、このような要請を背景に、品質確保、環境保全、労働安全衛生といった必置資格等が目指す政策目的を達成するための手法として、プロセス概念に基づいたマネジメントシステムの考え方が国際的な動向として重視され、我が国を始めとして多くの国に広まってきている。
 このうち、例えばISO9000sや14000sの国際規格に基づき基準への適合性を認証する制度では、考え方の大きな特徴として以下の3点が挙げられる。

  1. 「何をなすべきか」という要求事項がプロセスモデルによって記述され事業の特性を問わず一般的・普遍的レベルで明示されており、この要求事項を「どのように満たすか」については各々の供給する製品やサービス等の特性に応じ事業者が個別・具体的にマニュアル等に展開する。
  2. 事業者が国際規格に適合した適正なマネジメントシステムを確立していることについての認証・審査登録と定期的なフォローは、各国ごとに唯一存在する認定機関が認定・登録した第三者機関である審査登録機関が実施する。
  3. 拠り所となる国際規格は、技術専門委員会(TC)等の国際機関によって必要に応じあるいは定期的に見直され改善が図られている。
 このようなマネジメントシステムの考え方及び運用における定期的なフォローアップ制度を我が国における必置資格等の個々の制度内容や運用に照らしてみると、必置資格等の一部には以下のような問題点が見受けられる。これらの諸点は問題点であると同時に必置資格等の見直しの方向性を示すものと認められる。
  1. 事業者側からみて同一あるいは類似の政策目的を達成するために、所管省庁や法律の違いにより複数の必置資格制度や基準認証制度の網が重複してかけられ、政策目的達成のための合理的な整合性が必ずしも取られていない。
  2. 規制内容の決定プロセスへの事業者の参加が不十分であり、また、決定された内容についても例えば試験の難易度、出題範囲等について事業者に対し必ずしも明確に開示されていない。
  3. 規制内容は、人々の態度、能力、行動、働く場としての組織の効率というよりも客観的に容易に適合性を評価できる外形基準(実務経験年数、試験合格等)となっており、政策目的の達成度を見るパフォーマンスの評価ではなく要求事項への適合性を意味するコンフォーマンスの評価となっている。
  4. 外形基準への適合についても人員不足等を背景に行政による厳正なチェックや罰則の適用が行われていない例がある。
  5. 必置資格等を事業者に課すことの有効性について個々の事業者の特性に応じた検証が十分に行われていない例がある。
  6. この結果、必置資格等は政策目的を達成する事業者の自主的な取組とは必ずしも合致しない、外部から強制され仕方無しに形式的に遵守しなければならない単なる細密な規則の問題として認識されている場合がある。
 ISO等の国際規格に基づくマネジメントシステムも完全無欠ではなく今後も改良向上していくべきものであるが、上記のような必置資格等に関する問題点の多くについて、解決・改善の糸口を与えるものであると認識している。
 マネジメントシステムの確立という手法が国際標準化しつつあり、我が国でも自主的にあるいは必要に迫られて多数の事業者がこのようなシステムを確立しているという事実は、必置資格等を取り巻く大きな状況変化の一つである。
 したがって、こうした状況変化を踏まえ、マネジメントシステムを確立している事業者に対しては必置資格等の必置義務の免除・緩和等の措置を早急に検討し、重複した負担を事業者に負わせることのないよう措置を講ずる必要がある。

(4)国民への説明責任
 社会的利益を目的とした必置資格等の見直しにおいては、仮にその規制を緩和・撤廃した場合それによって社会的弊害が生じないことが証明されなければ規制緩和に応じられない、という議論がときに展開される。
 しかし、現実には、経済・社会的な活動によって生じるあらゆるリスクをゼロにすることは不可能であり、すべての規制はその必要性についてメリット・デメリットの量的比較を含めた検証が求められることはこれまでも繰り返し指摘されてきた。(例えば「行政関与の在り方に関する基準」(平成8年12月16日行政改革委員会意見及び「行政改革プログラム」(平成8年12月25日閣議決定)
 特に、必置資格等は、所管省庁も事業者も、資格者等の配置を義務付けていれば、あるいは義務付けられた資格者等を単に置いておけば、各々の責任を全うしているかのような錯覚に陥り、かえって所管省庁と事業者の責任分担と不断の見直しの必要性をあいまいにする危険性を有している。
 したがって、個々の必置資格等の見直しに当たっては、仮にその制度がない場合と比べたコスト(機会費用)を重視し、目的の達成に向け真に実効性と効率性を有した制度となっているか、国際的な動向、政策目的を達成するプロセスを重視した省庁横断的なルールに基づき、できる限り明確かつ定量的な根拠を示して最終的受益者である国民に対し説明する責務を所管省庁は負うと当委員会では考える。

2検討の経緯

(1)平成11年度
 当委員会はすべての必置資格の法令上の規定状況及び現状について横断的かつ全般的に調査を行い、その結果を踏まえ第2次見解において、代替手法の導入、兼務・統括の許容、外部委託の許容等、必置資格等について15項目の見直しの基準・視点を提示した。
 政府はこの見解を規制緩和推進3か年計画(再改定)に盛り込み平成12年3月31日閣議決定した。これにより、関係省庁は、必置資格等のもたらす社会的利益等のメリットと経済的コスト等のデメリットとの比較衡量を含めた合理的かつ総合的観点から個々の制度の在り方及び細部の規制内容について平成12年度から順次見直しを行い、その結果に基づき遅くとも平成13年度(2001年度)中に所要の措置を講ずることとされた。

(2)平成12年度
 各省庁における見直し作業を支援すべく、当委員会おいても、事業者に対して実施したアンケート調査や個別の規制緩和要望等から、制度の概要及び細部の規制の合理性等について確認する必要があると判断した必置資格等について調査・検討を行うとともに、関係省庁、事業者、有識者等に対するヒアリングを行った。
 この結果、平成12年7月に当委員会が策定した「規制改革に関する論点公開」では、第2次見解で提示した15項目の見直しの基準・視点に加え新たに4項目の見直しの基準・視点を提示するとともに、当委員会が把握した個々の制度について50余の個別論点を例示的に公表した。
 さらに、当委員会では、上に述べた「規制改革に関する論点公開」の公表以降も引き続き必置資格等について審議を進めてきたが、その結果、必要な改善措置等について、差し当たり現時点までに当委員会として得られた結論は、下記5に掲げるとおりである。

3各省庁における検討状況の中間公表
 現在、各省庁において、閣議決定に基づき、それぞれが所管する必置資格等についての見直しが行われているが、その作業はなお途上にある。関係省庁が見直しを行いその結果に基づいて遅くとも平成13年度中に所要の措置を講ずるという政府自らが決定した計画を達成するためには、見直し推進のための関係省庁横断的な仕組みの工夫が必要である。
 このため、今年度、基準認証制度及び業務独占資格について見直し状況の中間公表を各省庁が行ったことにならい、各省庁は、新たな規制改革推進3か年計画の策定後速やかに、必置資格等の見直しの基準・視点に基づく検討状況を中間的に公表するべきである。
 その際、制度の性質上明らかに当該見直しの基準・視点に該当しない場合を除いて、基準・視点に沿った見直し・改善が困難であるとして現行の制度・運用を維持する方向で検討中である項目については、その必要性、根拠等を明確にして公表するべきである。
 また、この見直し状況の中間的公表に当たっては、当委員会が本見解中で追加している見直しの基準・視点についても、併せて見直しの状況又は見直しに当たっての考え方を公表するべきである。

4見直しの基準・視点
 1に述べた問題意識を踏まえ、個々の必置資格等の制度の在り方及び細部の規制内容について関係省庁は引き続き見直しを行うことが重要である。
 その際、関係省庁は、既に閣議決定された15項目の見直しの基準・視点のうちG及びJについて、下線部の考え方を追加して見直しを行うとともに、新たな見直しの基準・視点として、OからRに提示する4項目の基準・視点を含めて引き続き検討を行い、その結果に基づき平成13年度中に所要の措置を講ずるべきである。

<<既に閣議決定された15項目の見直しの基準・視点>>

(1)必置の必要性の見直し

【廃止を含め在り方検討】(見直しの基準・視点@)
 形骸化・形式化しているなど制度を存続させることについて合理性に疑問があるものは廃止を含めその在り方を抜本的に見直す。

【代替手法の導入】(見直しの基準・視点A)
 代替手法の導入によってより効果的・効率的に政策目標を達成し得る場合は、代替手法の導入と併せて必置資格等を撤廃・緩和する。

(2)必置の態様の見直し

【必置単位、必置人数、資格者の業務範囲の見直し】(見直しの基準・視点B)
 資格者を置くべきとされる事業場等の単位(必置単位)及び置くべきとされる人数(必置人数)並びに資格者の業務範囲について、技術の進歩等の状況変化を踏まえ、数値基準や定義が長期間改定されていないもの等の見直しを行う。

【余りにも細分化された資格の統合・拡大】(見直しの基準・視点C)
 必置単位や資格者の業務範囲等が余りにも細分化されているものは、これらの単位・範囲の統合、拡大等を積極的に図る。

【兼務・統括の許容】(見直しの基準・視点D)
 制度の目的とのバランスを損なわない範囲で、資格者が複数の必置単位を兼務又は統括し得る制度を積極的かつ横断的に導入する。また、既に兼務又は統括が可能となっている資格についても、その条件の一層の緩和を検討する。

【外部委託の許容】(見直しの基準・視点E)
 制度の目的とのバランスを損なわない範囲で、資格者を選任する代わりに資格者の果たすべき業務を外部に委託することを積極的に認める。特に、商法上の親会社と子会社との間や、一括して様々な管理業務を受託している管理会社等に在籍する有資格者については、必置規制を満たすものとして扱うよう横断的に制度を見直す。なお、委託先について公益法人要件等を課している場合には、合理性、公平性、公正有効な競争の確保等の観点から、民間企業等への外部委託も許容するように見直しを行う。

【必置資格等の性格や位置付けの明確化】(見直しの基準・視点F)
 必置資格等の性格や位置付けが必ずしも明確でない結果、政策目標の効果的・効率的な実現が困難となっている場合には、資格者等の職務が効果的に遂行され得るよう、当該資格の在り方について見直しを行う。

(3)資格取得制度の見直し

【実務経験要件の見直し】(見直しの基準・視点G)
 資格の取得に際し一定の実務経験要件を課しているもの(受験・受講資格要件を含む。)については、それが合理的かどうか見直しを行うとともに、余りにも長期の実務経験要件を課しているものについては、その期間短縮を図る。その際、例えば、当該実務に限定しない関連職務の経験年数等の加味あるいは試験・講習との組合せ等により、能力・資質等の確認を行うことも検討する。
 また、受験資格、受講資格として一定の実務経験を課しているものについては、合理的なもの以外はその要件を撤廃し、代わりに資格取得要件として受験・受講の前後を問わず一定の実務経験を求めることで、必要な能力・資質の確認を適正に行いつつ、資格取得希望者の受験・受講の機会を広げることを検討するべきである。

【学歴要件の見直し】(見直しの基準・視点H)
 必置資格等の業務内容と直接関係のない学歴等の資格取得要件(受験・受講資格要件を含む。)は、明確で合理的な理由のない限り廃止する。

【試験・講習の実施】(見直しの基準・視点I)
 資格取得の要件として試験の合格や講習の受講が規定されているにもかかわらず、かかる試験又は講習が毎年実施されていないものは、試験・講習の実施頻度の増加を図る。

【試験・講習の改善等、資格取得要件の改善】(見直しの基準・視点J)
 試験・講習について合否判定基準の公表、科目別合格制の導入、試験問題の公表・持ち帰りの推進、講習時間・期間の短縮、通信教育の導入、受験料・講習料の積算根拠の精査を行うなどにより、資格取得の要件等について、その目的・効果を確保しつつ、受験者・受講者等にとって透明性が確保されるとともにより利便性が高く負担の少ない制度となるよう改善を図る。
 また、資格を取得しようとする者の利便性を高めるため、各省庁のホームページに、所管の資格制度についての概要、資格取得方法、試験・講習の実施機関を掲載するべきである。

【関連・類似資格の統合、乗り入れ】(見直しの基準・視点K)
 関連又は同種類似の資格等については、資格の統合や業務の相互又は一方的乗り入れを積極的に推進することを検討するとともに、求められる能力・資質の確認を適正に行いつつ、合理的な範囲内で試験・講習科目の共通化・免除、履修科目の免除等を進める。

【受験資格及び資格取得に係る特例認定基準の明文化・公表】(見直しの基準・視点L)
 受験資格及び資格取得に係る特例措置の基準について、明文化・公表を進める。また、合理的でないと考えられる特例措置については、是正を含めその在り方を見直す。

【障害を理由とする欠格事由の見直し】(見直しの基準・視点M)
 障害を理由とする欠格事由については、政府の障害者施策推進本部決定に沿って所要の措置を講ずる。

【資格の有効期間又は定期講習の義務付けの見直し】(見直しの基準・視点N)
 資格の有効期間又は定期講習の義務付けについて、資格者等に過度の負担を与えているなど合理性がないと判断される場合は、制度の廃止や他の手段への変更、講習期間・費用の軽減などを含め、その在り方を見直す。

<<新たな見直しの基準・視点>>

【試験・講習機関の在り方−@】(見直しの基準・視点O)
 指定機関制度等によって資格に係る試験・講習の事務を民間団体等に委託する場合は、委託の基準と手順の明文化・公表を行う。

【試験・講習機関の在り方−A】(見直しの基準・視点P)
 業務の独占に伴う弊害の除去と民間資源の活用によって受講者の利便性の向上を図る観点から、講習事務については公益法人に限定しない複数の民間団体への委託が可能な制度とするよう検討を行う。

【規制の国際的整合化の視点】(見直しの基準・視点Q)
 規制の国際的整合化の観点から、所管省庁においては、個々の必置資格等について諸外国の類似の制度内容を調査するとともに、所管制度の不断の見直しにおける重要な参考とすべきである。また、外国制度との相互乗り入れなど、経済の国際化に即して必要な措置を講ずるべきである。

【専任規定の見直し】(見直しの基準・視点R)
 資格者として選任された者が他の業務を行うことを禁止・制限する専任規定については、当該資格者の業務内容・業務時間等にかんがみ真に必要である場合を除き、その在り方を見直すべきである。

5個別制度の改善措置等について現時点までに得られた結論
 既に述べたように、当委員会では、各省庁における見直し作業と並行して必置資格等の見直しについて調査・審議を進めてきた。その結果、個別制度の改善措置等について、差し当たり現時点までに当委員会として得られた結論は、以下に掲げるとおりである。
 これらについては、政府において確実に実施することが必要である。

(1)建築物環境衛生管理技術者

(1−1)兼務の許容
 延べ面積が3000u以上の興行場、百貨店、事務所等の特定建築物の所有者等は、当該建築物の維持管理が環境衛生上適正に行われるように監督させるため、建築物環境衛生管理技術者免状を有する者のうちから建築物環境衛生管理技術者を選任しなければならない。
 この際、現状では、一人の資格者が複数の特定建築物の管理技術者になることは、資格者の確保が困難な場合でかつ一定の条件を満たす場合にのみ認める、という運用が一部でなされている。
 しかし、複数の特定建築物の兼務が許容されるか否かは、資格者の確保の困難性ではなく職務遂行の困難性によって判断されるべきである。
 したがって、職務の遂行に支障がない範囲で兼務が認められることを明確にするとともに、兼務が認められる条件について具体的な判断基準を示すべきである。

(2)管理理容師・管理美容師

(2−1)講習科目の見直し
 管理理容師資格取得講習では、「経営管理」「財務管理」「労務管理」「接客技術」「理容技術」「情報収集と管理」など、管理理容師制度の目的である「理容所の衛生的管理」とは直接的な関連が必ずしも高くない科目が必修となっている。
 他方、本講習の受講者は、理容師になる際にこれらの科目も既に履修(例えば、「経営管理」「労務管理」「接客法」などで計60時間が必修、「理容実習」は800時間が必修)しており、更に、理容師として3年以上の実務経験を有している。
 したがって、資格取得講習の科目等について見直しを行い、その結果に基づき、講習時間、講習日数の短縮等、所要の措置を講ずるべきである。
 (管理理容師と同様の制度である管理美容師についても同様)

(3)食品衛生管理者

(3−1)代替手法の導入
 製造又は加工の課程において特に衛生上の考慮を必要とするものとして政令で定める食品又は添加物の製造業者及び加工業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならない。
 この際、ISO9000シリーズによる品質保証の審査登録を受けている施設については、衛生管理を含めた組織としての品質管理体制が整っていると考えられることから、このような施設について、食品衛生法に基づく衛生管理の水準を維持しつつ食品衛生管理者の必置義務を免除又は緩和する余地がないか、ISO9000シリーズと食品衛生管理に関するコーデックス等における国際的議論の推移や、民間認証を受けた施設の衛生管理の実態等を踏まえ、検討を行うべきである。

(3−2)受講要件の緩和
 食品衛生管理者資格を取得する講習会は、受講資格として、対象となる製造又は加工の施設で衛生管理の業務に3年以上従事した経験を求めている。講習の受講に際し内容を理解し修得できるレベルを受講者に求めるため実務経験を課すことには一定の合理性があるが、講習の受講要件と資格取得要件は必ずしも同一である必要はない。
 また、本講習会は、講習が実施されている「添加物」と「食肉製品」でも3〜4年に1度の開催頻度であり、受講機会の拡大を求める意見が寄せられている。
 したがって、能力・資質の確認を行いつつ資格取得希望者の受講機会を拡大する観点から、受講は実務経験2年以上で可能とし講習修了後に実務経験3年を超えることによって資格を取得できることが明確となるよう所要の措置を講ずるべきである。

(3−3)講習科目の見直し
 食品衛生管理者を置かなくてはならない製造施設の中で、添加物はその多くが化学合成品(例えば安息香酸、過酸化水素など)であり、その規格や製造工程、製造管理にかんがみて、大学等で化学に関する課程を修めて卒業した者が資格取得講習会を受講して資格を取得する場合は講習科目の免除・簡素化等を行うことについて、検討すべきである。

(3−4)資格取得要件の更なる明確化
 大学又は専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学の課程を修めて卒業した者は、特に試験や講習を受けずとも食品衛生管理者になることができることとされている。(食品衛生法第19条の17第4項)
 しかし、近年、大学では卒業単位の弾力化が進められ、同じ○○学部卒業、と言っても、履修している科目内容は個人によってますます多様化していく状況にある。
 他方、上記(3−3)のように、大学で化学課程を修めて卒業した者は、現状では、30日間・201時間の講習を受講し、かつ3年間の実務経験を有しないと食品衛生管理者になることができず、事業者の間に負担軽減を求める声があるが、大学で化学の他に食品衛生や公衆衛生等の課程を履修していれば、資格取得講習会の科目や日数をその分削減できるものと考えられる。
 これらのことを踏まえ、食品衛生管理者の資格取得要件について、求められる知識内容を適正に担保するとともに、資格取得希望者の予見可能性を高める観点から、大学又は専門学校における履修科目条件をより詳細に明確化することについて検討すべきである。

(3−5)資格取得講習会の開催
 食品衛生管理者の資格は、@医師、歯科医師、薬剤師又は獣医師A大学又は専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学又は農芸化学の課程を修めて卒業した者B厚生大臣の指定した食品衛生管理者の養成施設において所定の課程を修了した者C対象となる製造又は加工施設で衛生管理の業務に3年以上従事し、かつ、厚生大臣の指定した講習会の課程を修了した者、とされている。
 このうち、上記Cの資格取得講習会は、「添加物」と「食肉製品」については3年から4年に1度の頻度で開催されているが、「魚肉ハム・ソーセージ」、「食用油脂」、「マーガリン・ショートニング」については、昭和48年を最後に開催されていない。
 したがって、これらの食品を対象とする講習会について、最近の需要実態調査を基に、必要に応じ講習会を開催することを検討すべきである。

(4)給水装置工事主任技術者と管工事施工管理技士

(4−1)資格の相互乗り入れの推進
 給水装置工事を施工する指定給水装置工事事業者は、水道法に基づき、給水装置工事主任技術者免状を受けている者の中から、事業所ごとに給水装置工事主任技術者を選任しなければならない。
 他方、管工事を行う建設業者は、建設業法に基づき、管工事施工管理技士等の中から、営業所ごとに「専任の技術者」を、工事現場ごとに「主任技術者」(一定の場合は、「監理技術者」)を置かなければならない。
 水道分野に関係する工事において、管工事施工管理技士が、給水装置工事主任技術者に代わり、給水装置工事を施工できるようにとの要望はあるが、給水装置工事主任技術者は、平成9年度に制度化されてから間がないこと、管工事施工管理技士の認定試験においては、衛生面に関する知識が必須とされていないことから、このような乗り入れの可否については、制度の実施状況を把握するなどした上で、改めて検討すべきものと考えられる。
 しかしながら、この2つの資格には求められる技術・能力等に重複する点もあることから、当面、両方の資格を必要とする事業者の負担を軽減する措置を検討するべきである。
 具体的には、給水装置工事主任技術者について、水道分野に関する管工事を施工する際に建設業法上必要な「主任技術者」として認める方向で検討を行うべきである。
 また、給水装置工事主任技術者の取得を希望する管工事施工管理技士に対しては、現状でも給水装置工事主任技術者試験科目の一部免除が行われているが、水道水の安全性を確保するための水準を維持しつつ、更に合理的な負担軽減を図ることについて、関係者の意見を十分踏まえた上で、検討するべきである。

(5)廃棄物処理施設技術管理者

(5−1)代替手法の導入
 廃棄物処理施設技術管理者は、一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設の維持管理に関する技術上の業務を担当し、技術上の違反が行われないように維持管理する事務に従事する他の職員を監督する者であることから、技術士、理工系の学士等又はこれと同等以上の知識及び技術を有する者であることが求められている。
 一方、近年、環境マネジメントシステムの認証制度が我が国でも浸透しつつあることから、本技術管理者制度の趣旨にかんがみ、例えばISO14001による環境システムの審査登録を受けている事業所における管理責任者が、上記の「同等以上の知識及び技術を有する者」であると認められるか否かについて、検討を行うべきである。

(5−2)外部委託の許容
 廃棄物処理施設技術管理者は、各施設の設置者の指揮・監督の下に適正かつ適法に稼働させることが求められるとして、設置者と直接的な雇用関係にある者から選任することとする運用が一部でなされているが、設置者との責任関係を明確にした上で、設置者と直接的な雇用関係にないが正当な資格を有する者からも選任することが可能となるよう所要の措置を講ずるべきである。

(6)特別管理産業廃棄物管理責任者

(6−1)代替手法の導入
 特別管理産業廃棄物管理責任者は事業場ごとに特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせる者であることから、資格要件として、厚生大臣の認定する講習を受けた者又はこれと同等以上の知識及び技術を有する者であることが求められている。
 一方、近年、環境マネジメントシステムの認証制度が我が国でも浸透しつつあることから、本管理責任者制度の趣旨にかんがみ、例えばISO14001による環境システムの審査登録を受けている事業所における管理責任者が、上記の「同等以上の知識及び技術を有する者」であると認められるか否かについて、検討を行うべきである。

(6−2)外部委託の許容
 特別管理産業廃棄物管理責任者は、資格者を置くべき事業場の事業者と直接的な雇用関係にある者から選任することとする運用がなされているが、設置者との責任関係を明確にした上で、設置者と直接的な雇用関係にないが正当な資格を有する者からも選任することが可能となるよう検討を行い、その結果に基づき所要の措置を講ずるべきである。

(7)医療用具販売(賃貸)管理者

(7−1)制度の在り方の検討
 薬事法第39条の規定に基づく医療用具の販売業又は賃貸業の届出を行った者は、営業所ごとに、医療用具販売(賃貸)管理者を置かなければならない。
 本制度の目的は、

  1. 医療用具の品質を確保すること
  2. 医療用具の品質等に関する苦情処理及び回収処理を適切に行うこと
  3. 医療提供施設の建物又は設備に据え付ける医療用具の設置に係る管理を行うこと
 等、医療用具販売(賃貸)業者としての義務を事業者が確実に履行することを担保するためである。
 しかしながら、このような事項は事業者として当然のことであり、資格者が営業所ごとに常駐していなくとも能力的・技術的には十分実施し得る内容である。
 一方、販売業者の中には小規模事業者が多く、また、なすべきことの基本的認識に欠ける業者もあり、その結果多くの不適切な流通実態が見られたが、最低限の知識・経験を有する者を配置する本制度の創設によって一定の改善が得られているとの意見もある。
 当委員会は本制度の効果を全て否定するものではないが、業界の実態にかんがみて、なすべきことの基本的認識を事業者に付与する必要があるのであれば、まずは事業の責任者、さらには営業所の責任者に対して意識付けを行うべきと考える。なぜなら、組織のトップに基本的な認識が欠けていれば、資格者の配置を単に義務付けてもその資格者は内部の意思決定に影響を及ぼすことができず、結局、形式的に選任されているだけという事態に陥る危険性があるからである。
 また、医療用具の販売業者については、事前チェックとして営業所の構造設備の概要等を含む届出の義務、事後チェックとして厚生大臣・都道府県知事による立入検査の制度等があるが、業界の実態が医療用具の安全性確保の観点から不十分と認められるのであれば、むしろこれらの措置の強化・拡充について検討すべきであると考える。例えば立入検査は、違反のあった施設に対する事後的な実施が主体となっているが、抜き打ち検査を含め、より違反防止効果の高い実施方法について検討し、行政資源の不足等により立入検査の実施に限界があれば、民間資源活用の観点からISO9000シリーズ等のマネジメントシステムを事業者が確立することへのインセンティブを導入することが考えられる。
 さらに、重大な違反に対する罰則の強化も検討することも考えられる。
 医療用具は人の生命に関連する商品であり、その製造(輸入)から販売、使用に至るまで、一貫した安全性の確保体制を確立することが必要である。
 したがって、これらのことを踏まえ、医療用具販売(賃貸)管理者について制度の実施状況の把握及び実効性についての検証に努めた上で、医療用具の製造(輸入)から使用に至る一貫した安全確保体制の確立を図るための措置の検討に合わせ、その在り方を検討すべきである。

(8)浄化槽管理士(名称独占等資格)と浄化槽設備士

(8−1)講習科目の共通化・相互免除
 浄化槽に関しては、業として浄化槽の保守点検を行う者は浄化槽管理士の資格を取得すること、浄化槽の工事を行う者は工事現場及び営業所ごとに浄化槽設備士を配置することが義務付けられている。
 この2つの資格の講習科目には、浄化槽概論、法規等、共通するものもあることから、講習科目の共通化・相互免除について検討を行うべきである。

(9)浄化槽技術管理者

(9−1)講習委託の指定要件の明確化
 浄化槽技術管理者の資格取得講習について、講習の委託を行う法人の指定基準を明文化・公表するよう検討を行うべきである。

(10)浄化槽検査員

(10−1)講習委託の指定要件の明確化
 浄化槽検査員の資格取得講習について、講習の委託を行う法人の指定基準を明文化・公表するよう検討を行うべきである。

(11)エネルギー管理士

(11−1)制度の在り方の見直し
 特定事業者は、エネルギー管理指定工場ごとに、政令で定める基準に従って、エネルギー管理士免状の交付を受けている者のうちからエネルギー管理者を選任しなければならないこととされている。
 この制度については、臨調第5次答申(昭和58年3月)において「エネルギーの効率的使用は我が国の脆弱なエネルギー構造にかんがみ着実に推進されるべき重要な国民経済的課題であるが、これは各企業にとっての重大な関心事項でもあるので、将来、制度及びその趣旨が定着したと認められるようになった段階で、現在の必置規制の在り方を含め制度の見直しを行う」とされ、規制緩和推進要綱(昭和63年12月閣議決定)において「臨調第5次答申を踏まえ、制度の在り方を検討する」とされている。
 一方で、近年は環境問題・省エネルギーは我が国にとっての最重要課題となっており、特に、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」に掲げる目標を達成するため地球温暖化対策推進大綱(平成10年6月19日地球温暖化対策推進本部決定)が定められ、その中で工場・事業場におけるより一層のエネルギー使用合理化が不可欠であるとされている。このような状況の下で一部には、総量削減の観点から画一的な数値基準を導入し規制を強化すべきとの議論が存在しているが、これを採用した場合、実情に応じたフレキシブルなエネルギー管理が困難になる可能性が大きい。そこで企業の自主的なエネルギー管理を促す観点から、エネルギー管理者制度を評価する意見がある。他方エネルギー管理者を選任しさえすれば実効があがるというものではなく、企業の自主的な取り組みで対応可能ではないかという意見もある。
 京都議定書の目標達成等、現在の我が国のエネルギーをめぐる諸情勢を踏まえて、エネルギー管理を促進するためにどのような制度が最も適切であるのかを検討し、当該検討の中で、エネルギー管理者の必置規制の在り方についても再検討するべきである。

(11−2)必置単位の見直し
 エネルギー管理者は、原油換算燃料等使用量、電気の使用量の区分に応じ、熱管理指定工場は1〜4人、電気管理指定工場は1〜3人選任しなければならないこととされている。しかしながら、1人が管理するのに適当な設備規模については、昭和54年の制度発足時から現在までの間の産業技術の進展等による状況の変化も考えられることから、実態調査を行い、当該設備規模の在り方の検討を行うべきである。

(12)公害防止管理者、公害防止主任管理者

(12−1)制度の在り方の見直し
 特定事業者は、特定工場において、使用燃料又は原材料検査、ばい煙の量の測定の実施等の業務を管理する者(公害防止管理者)を選任しなければならず、また、特定工場にばい煙発生施設及び汚水等排出施設が設置されている工場であって一定規模以上の場合には、公害防止統括者(特定工場に係る公害防止に関する業務を統括管理する者)を補佐し、公害防止管理者を指揮する者(公害防止主任管理者)を選任しなければならないこととされている。この制度は公害が激甚であった頃に創設されたものであるが、現在は環境問題は企業の最重要課題となっており、各企業の環境配慮等が進んでいる。また、資格者を置けばそれでよしという考え方ではなく、組織として機能するかという観点から規制する方が効果的であり、企業自身の公害防止組織体制が整備され、組織体制整備による公害防止対策が十分効果をあげている場合には、必置義務を免除することも考えられる。
 したがって、環境・公害問題の状況や各企業の公害防止体制の実態など、環境・公害問題をめぐる諸情勢を踏まえて、公害防止対策のためにどのような制度が最も適切であるのかを検討し、当該検討の中で、公害防止管理者、公害防止主任管理者の必置規制の在り方についても再検討するべきである。

(12−2)代替手法の導入
 公害防止主任管理者の資格を得るためには、試験合格によるほか、大気と水質の両方の公害防止管理者資格を有する者は公害防止主任管理者の有資格者になり得るという制度がある。
 したがって、大気と水質につきそれぞれの資格を有する者を共に任命し、両者が緊密に連携しつつ効果的な公害防止対策が実施できるような組織体制ができているような場合には、主任管理者の必置を免除することについて検討すべきである。

(12−3)試験科目の共通化・免除
 大気と水質の両方の公害防止管理者資格を有する者は公害防止主任管理者の有資格者になり得るという制度があることから、公害防止管理者と公害防止主任管理者の試験科目について共通化や免除等の余地があると考えられる。
 したがって、この点について検討すべきである。

(13)ボイラー・タービン主任技術者

(13−1)実務経験要件の見直し
 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、省令で定めるところにより、主任技術者免状を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならないこととされている。ボイラー・タービン主任技術者免状は試験によるのではなく、一定の実務経験を持つ者が申請すれば交付される。実務経験が必要であることは当然であるが、一定の実務経験を求めるだけでは、能力を真に持っているか否かは不明である。
 したがって、必要な実務経験年数を一律に定めるのではなく、安全確保に関するマネジメントシステムの社会への浸透等の状況変化を踏まえ、弾力的な運用ができないか検討すべきである。

(14)高圧ガス製造保安責任者

(14−1)兼務の許容
 一定の基準に該当する高圧ガス製造者は、施設の区分ごとに、高圧ガス製造保安責任者免状の交付を受けている者であって省令で定める高圧ガスの製造に関する経験を有する者のうちから、高圧ガス製造保安係員を選任しなければならないこととされている。この際、同一の計器室で管理されている等、一体として管理されている設備については、別区分であっても一つの施設の区分と見なして選任できる措置が講じられている。しかし、一般高圧ガス保安規則適用の設備と液化石油ガス保安規則適用の設備の両方がある場合については、それぞれに保安係員を選任しなければならない。
 したがって、このような場合であっても同一の計器室で管理されている等一体として管理されている設備については、一つの施設の区分と見なして一人の保安係員を選任すれば足りるかどうかについて検討すべきである。

(14−2)外部委託の許容の明確化
 高圧ガス保安法に定める一定の基準に該当するものは、事業所ごとに、高圧ガス製造保安責任者免状の交付を受けている者であって省令で定める実務経験を有する者のうちから、保安係員等を選任しなければならない。この際、事業者は、ビル管理会社に施設の運転管理を業務委託し、ビル管理会社所属の有資格者を保安係員に選任していることがあるが、都道府県又は担当者によっては委託先に所属する有資格者の選任を認めていないとの指摘がある。
 したがって、法令上定める保安係員等の職務を十分に果たすことができる有資格者であれば、委託先等に所属する者であっても保安係員等に選任できる旨を明確化すべきである。

(15)電気主任技術者

(15−1)外部委託先の拡大
 電気主任技術者の果たすべき業務を外部委託できる相手方は、現状では、指定法人(各地の電気保安協会)及び主任技術者免状の交付を受けている者(個人)となっているが、主任技術者免状の交付を受けている者を有する法人が受託し、実際の業務は当該免状の交付を受けている者が行うという形をとることも可能であると考える。
 したがって、保安の確保を前提に、一定の要件を満たす法人が一定の条件の下で委託を受けることを可能とする方向で検討すべきである。

(16)認定保安検査実施者の管理部門長

(16−1)実務経験要件の見直し
 高圧ガス保安法認定検査制度における認定保安検査実施者の管理部門長は、管理部門における経験年数が15年以上の者であることが認定基準上求められているが、余りに長期の実務経験を課すことは企業内人事の硬直化を招くおそれがあるため、その期間短縮を図るべきであるとの指摘がある。
 したがって、規制緩和推進3か年計画(再改定)に基づき行われている認定保安検査実施者の認定基準についての検討の中で、上記の点についても検討すべきである。

(17)ガス消費機器設置工事監督者

(17−1)講習の指定基準
 特定工事の事業を行う者は、特定工事を施工するときは、特定工事がガス事業法又は液化石油ガス法の規定に適合することを確保するため、ガス消費機器設置工事監督者の資格を有する者に実地に監督させ、又はその資格を有する特定工事事業者が自ら実地に監督しなければならないこととされている。この資格を得るためには、通商産業大臣又はその指定するものが行う講習の課程を修了することが必要であるが、その指定のための具体的基準を定めるべきである。

(18)原子炉運転責任者

(18−1)講習の指定基準
 原子炉の運転に必要な構成人員のうち運転責任者は、通商産業大臣が指定する者の認定を受けた者とすることとされており、現在社団法人火力原子力発電技術協会が指定されているが、本制度の在り方について検討すべきである。

(19)整備管理者

(19−1)必置単位の見直し
 以下の1.から2.のいずれかに該当する者は、自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理させるため、整備管理者を選任しなければならない。

  1. 乗車定員11人以上の自動車の使用者
  2. 乗車定員10人以下の自動車を5両以上使用する自動車運送事業者
  3. 乗車定員10人以下で車両総重量8トン以上の自家用自動車を5両以上使用する者
  4. その他の自動車を10両以上使用する者
 しかしながら、自動車の点検、整備、車庫の管理は、本来、それぞれの使用者が自己の責任において行うべきものであり、特定の資格者の選任を現行の必置単位で義務付ける必要性については疑問が残る。
 一方、ここ数十年の間に、自動車の性能は飛躍的に向上し、また、自動車保有率の上昇、使用形態の多様化、自動車排出ガスによる大気汚染の問題など、自動車の点検整備を取り巻く情勢は大きく変化しているが、整備管理者を選任すべき事業者等の範囲(=必置単位)は、昭和38年以来、37年間変更されていない。
 したがって、整備管理者制度の運用実態、制度の費用対効果、先進主要国における類似制度等について調査を行い、その結果を参考にしつつ、必置単位を変更することについて検討すべきである。

(20)貨物船への配乗義務

(20−1)告示航路の見直し アフリカ西海岸にある港、ペルシャ湾に面する港、カラチ港のいずれかを起点・終点又は寄港地とする航路(告示航路)については、貨物船であっても、医師を配乗するか、又は医師の配乗に代えて通常の衛生管理者に加えて「衛生管理者再講習受講者」である衛生管理者を配乗することが義務付けられている。
 この告示航路は昭和39年、労使を交えた船員中央労働委員会での議論を経て決定されて以来変更されていないが、その後、寄港地の医療設備の向上、航路付近の契約病院の増加、無線医療通信の発達などにより、船舶の医療体制は格段に向上していると言われている。また、欧州主要海運国など大半の国ではこのような規制はなされていない。運輸省は、現在の告示航路を今後も継続すべきかどうかは労使の意見も踏まえ検討の必要がある、としている。
 したがって、告示航路における近年の疾病発生状況等根拠データを明らかにしたうえで、見直しの必要性について検討すべきである。

(21)三級海技士(電子通信)(業務独占資格)

(21−1)規制の国際的整合化
 国際航路における無線通信は、100年以上使用されたモールス信号から、衛星通信を中心とした無線制度(GMDSS)へ完全に移行したが、このGMDSSは操作が容易なため、これまで船舶の無線通信を担当していた専任の通信士に代わり、航海士や機関士が兼任通信士として操作することが可能となった。航海士や機関士がこのGMDSSの兼任通信士となるための資格要件は、船舶乗組員の訓練や資格に関する基準を定めた国際条約であるSTCW条約に規定されているが、日本籍船においては、これに対応する形で、三級海技士(電子通信)免状を保有することが必要となっている。
 三級海技士(電子通信)を取得するためには、第三級海上無線通信士を取得し、かつ、有効な船舶局無線従事者証明を所持し、さらに6か月の乗船履歴を満たした上で、同海技士国家試験(五級海技士(航海)又はこれより上級の海技従事者である場合には身体検査のみ)に合格することが求められるが、かかる6か月の乗船履歴は日本独自の規制であり緩和・撤廃すべき、との意見がある。
 当該乗船履歴はSTCW条約における「実際的証明から得られた証拠」を根拠としているが、同条約ではその具体的内容については要求されておらず、「実際的証明から得られた根拠」を何に求めるかは国によって異なっている。
 したがって、規制の国際的整合化の視点から、諸外国の実態を精査した上で日本独自の過剰な規制があると認められる場合には、所要の措置を講ずるべきである。

(22)無線従事者

(22−1)試験科目の見直し
 第一級海上特殊無線技士及び第三級海上無線通信士の試験で電気通信術(和文)を実施しているが、和文通話表を用いた通信の使用実態、現状における必要性を調査の上、電気通信術(和文)の試験の廃止の可否を検討し、その結果に基づき所要の措置を講ずるべきである。

(22−2)外国資格の許容
 第一級海上特殊無線技士及び第三級海上無線通信士に相当する外国の資格を有する外国人が国内法規の知識を習得させることを目的とした養成課程を受講することにより容易にそれぞれの資格を取得できるよう検討し、その結果に基づき所要の措置を講ずるべきである。

(23)ボイラー技士(業務独占資格)

(23−1)資格取得要件の改善
 ボイラー技士免許はボイラーの取扱いの業務等において必要な資格であり、特級、一級、二級がある。そして、直接上位の資格を受けることも可能であるが、二級から一級、一級から特級の試験を受けるためには、受験資格として実務経験年数が必要であることから、上位の資格の取得に長期間かかり、そのために能力のある者が資格を取得することを妨げているのではないかという指摘がある。
 また、ボイラー設備についても、安全性や性能が向上するとともに、監視・制御システムは進歩を続けている現状にある。
 このため、特級及び一級ボイラー技士について、求められる技能・知識水準を確保しつつ、より資格を取得しやすい受験時期、受験要件について検討すべきである。

(24)ボイラー取扱作業主任者

(24−1)兼務の許容
 ボイラー取扱作業主任者の選任に当たっては、作業主任者として職務を行うことができるボイラーの区分についてはそのボイラーの伝熱面積の合計により、求められる資格者が規定されている。
 しかしながら、資格者がボイラー取扱作業主任者の職務を果たすことができる範囲については、ボイラーの種類、制御装置の状況等によっては、技術の進歩を踏まえ、単純に伝熱面積を合計するのではなく、作業資格者の職務の負担を考慮しつつ見直しが可能ではないかという指摘がある。
 このため、ボイラー取扱作業主任者の選任について、近年の技術の進歩を踏まえ、ボイラーの安全管理水準に低下をもたらさない範囲内において、その取り扱えるボイラーの基数等について見直せる余地がないか検討すべきである。

(25)乾燥設備作業主任者

(25−1)選任の在り方
 乾燥設備作業主任者については、被乾燥物が危険物か否かを考慮しつつも、乾燥設備の能力の大きさにより、その選任の要不要が定められている。
 しかしながら、乾燥設備についても技術革新が進み設備が多様化するとともに、安全に作業を行うための工夫もなされつつある。
 このため、乾燥設備に関する技術革新の進展を踏まえ、作業主任者の選任等の在り方について検討すべきである。

(26)宅地建物取引主任者

(26−1)定期講習の内容の見直し等
 宅地建物取引主任者資格試験に合格し一定の実務経験又は実務講習を経た者は、試験を行った都道府県知事の登録を受け、宅地建物取引主任者証(以下「取引主任者証」)の交付を受けることができることとなっている。取引主任者証の有効期間は5年となっており、更新に当たっては新たな取引主任者証の交付を申請することとなっている。また、取引主任者証の交付の際には、講習受講の義務付けがなされている。本資格は、資格者も多く、実際に業務に従事している者が受講しなくてはならないことから、事業者・受講者の負担も小さくない。一方、消費者トラブル防止のため取引主任者の資質の維持・向上を図ることが求められている。したがって、インターネット等による講習などによる受講者の負担の軽減方策等講習内容の見直しに向けた検討を行うべきである。

(27)危険物取扱者

(27−1)実務経験要件の見直し
 甲種危険物取扱者の試験は、大学等で化学に関する学科又は課程を修めた者等のほかは「乙種危険物取扱者免状を取得してから2年以上」という実務経験を積まないと受験することができない。
 この規定は一定の知識を持ちつつ一定の実務経験を積んだ者に受験資格を与える制度であると解されるが、資格者が一定の能力を有することを担保するための条件としての「資格取得要件」と試験の「受験要件」とは必ずしも同一である必要はない。
 したがって、甲種危険物取扱者の受験資格から実務経験要件を撤廃し、試験に合格し、かつ試験合格の前後を問わず2年間の危険物取扱の実務経験を有する者に資格を付与することによって、求められる能力の確認を行いつつ資格取得希望者にとって受験の機会が広がる制度とすることを検討すべきである。

(27−2)定期義務講習の実施方法の見直し
 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、都道府県知事(自治大臣が指定する市町村長その他の機関を含む。)が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習(保安講習)を3年ごとに受けなければならない。
 保安講習の目的は、危険物取扱に関する法規改正状況の周知徹底、最近の事故例の伝達、危険物取扱に関する基本的知識の再確認等によって、一人一人の危険物取扱者の知識や安全意識を高めることである。
 一方、保安講習は全国で毎年17万人以上が受講しており、大規模な化学工場では一つの工場から毎年百人以上が受講している。講習の多くは平日の昼間に開催されているため、受講者は業務を休み、その間、代わりの者が作業を行わねばならないなど、事業者・受講者側の負担は小さくないとの意見もある。
 上記のような保安講習の目的は否定されるものではないが、インターネットや衛星放送など多様な情報提供手段が発達している今日において、目的達成の手段として現行の講習制度が効果及び費用の観点からベストであり改善の余地がないかについては慎重な検討を要すると当委員会では認識している。
 したがって、例えば、受講周期の延長、無事故無違反など優良事業者に対するメリット制の導入、事業者への出張講習の実施、企業内研修の活用、インターネット、衛星放送、通信教育等講習以外の手段の活用、あるいは受講者に対するアンケート調査の実施とその結果のフィードバックによる講習内容の見直しなど、目的を達成しつつ社会的費用のより少ない制度や、更に実効性の高い制度とする方策がないかについて検討していくべきである。
 中でも、事業者への講師の派遣による出張講習は、個々の事業者の実態に合わせた講義や質疑応答を行うことにより講習の実効性を高めつつ事業者側の負担軽減を図ることが期待できるため、その実現について早急に検討を行うべきである。

(28)防火管理者

(28−1)外部委託の許容
 学校、病院、工場、事業場、百貨店その他多数の者が出入りし、勤務し、又は居住する防火対象物で法律の定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定めなければならない。
 この際、マンション等の共同住宅においては一定条件の下で防火管理者を管理会社の従業員の中から選任することが認められているが、防火管理者の業務には他の職員に対する指示、監督等が含まれており防火管理者にはこれらの防火管理上必要な業務を適切に遂行できる権限を有する地位にあることが必要であることから、一般的には防火管理者の業務のすべてを外部委託することはできないこととされている。
 しかしながら、近年、事業活動の様々な分野でアウトソーシングや分社化が進んでおり、防火を含めた建物管理の専門的ノウハウを持つ会社が増加していることから、共同住宅以外の防火対象物についても、このような管理会社の従業員の中から防火管理者を選任するほうが業務の適切な実行の観点から効果的な場合もあるとも考えられる。
 したがって、消防機関や実際に防火管理者を選任している者の意見を聴取するなど防火・防災業務の実情を勘案しつつ、防火対象物の安全性を損なわないことを前提として、防火管理者の業務の外部委託を認めることについて検討を行うべきである。