規制改革委員会

ITに関する規制改革について
〜「電子商取引の促進のための規制改革等諸制度の総点検」を中心として〜




問題意識

規制改革委員会のこれまでの検討経緯
 近時、情報通信技術、いわゆるITの急速な進展を背景に、世界的な規模で経済社会の仕組みの構造変革が進んでいる。規制改革委員会においては、今年度、ITが社会・経済の様々な側面に及ぼす影響の大きさに鑑み、ITに関する臨時の作業部会であるタスクフォースを設け、分野横断的にどのようなテーマ・論点があげられるかについて検討し、@情報通信インフラの整備に関する規制改革、Aコンテンツの拡大に関する規制改革、B主体の育成に関する規制改革、といった3つの視点から整理を行った。その結果は、当委員会が本年7月に公表した「規制改革に関する論点公開」の中に盛り込んでいる。

IT戦略会議と規制改革委員会の連携
 去る7月には、IT戦略会議が発足し、我が国でもIT革命推進へ向けての取組が本格化してきた。IT戦略会議に宮内委員長が参加して議論に加わるとともに、第1回IT戦略会議において「電子商取引の促進のための規制改革等諸制度の総点検(以下「総点検」という。)」を行うことになり、内閣官房を中心として、規制改革委員会と連携し、関係省庁による総点検作業を行うこととなった。

こうした流れを踏まえ、今回の総点検を整理するとともに、当委員会としてITをめぐる課題に取り組む基本的な考え方を、年内を目途に取りまとめることとしている当委員会の見解に向け、この機会に取りまとめておくこととしたい。

個別項目

 まず、今回行った総点検について整理する。
IT化の推進にあたり、コンテンツの拡大が重要であるという点については、既に論点公開において明らかにしたとおりである。インターネット上の取引を前提としていない各種法制度の見直しは、コンテンツの拡大に関する規制改革の重要な一要素であり、今回、民間における取引等において行政上の義務付けがある制度について行った総点検はその見直しに大きく資するものである。
 今回の総点検においては、書面交付・提出、署名又は記名押印、対面行為、書類保存・備置、事業所や責任者等の必置等の類型に基づき調査を行った。その中で、書面交付・提出については、民間同士の書面交付を義務付けている法律を一括して改正するための法律案に向けて作業しているところ(現在38本の法律について法改正に向けて検討中;参考参照)、そうした動きは電子商取引の促進、ひいてはIT化の推進に向け歓迎すべき動きであり、政府の迅速な対応を評価している。
 一方、政省令や通達等といった法律以外によって書面交付・提出を制度的又は実質的に義務づけている制度については、まだ着手されていないが、改正法施行までの間に、その見直しを行うべきである。
 さらに、規制改革委員会としては、いわゆる電子商取引に限らず、情報の電子化・流通、電子化の国民生活への結びつきを視野に入れて、論点公開で取り上げた項目を中心に今後検討を進めていくこととしている。また、今回の総点検の概要を広く示し、意見・要望を聞いた上で、個別具体的な論点があるかどうかについて検討を深めてまいりたい。

 総点検の現状等を踏まえ、規制改革委員会として、以下の2点を指摘しておきたい。

@省庁横断的に取り組むべき課題
 今回の総点検の中では、書面の原本性の確保又は真正性の確保(変更の不可性又は改ざんのおそれのないこと)、契約等の成立時期の問題(発信主義か到達主義か)、セキュリティ、個人情報保護に関すること等を指摘して電子化の支障があるとしているものが見られた。これらの中には省庁横断的に取り組むべき課題であって、個別の制度を所管する省庁においては必ずしも解決しにくいものがあることから、これらの課題について、克服すべき技術的課題又は整備すべき新たなルール等があるかどうかを、政府として早急に整理するべきであると考える。なお、国民の実際の需要等を十分に汲み取らず、行政側が電子化のニーズを一方的に判断しないことや、電子化への対応の個人差も考慮して書面交付・提出に加えて電子的手段という選択肢を増やすということに留意して進めるべきである。

A電子化の推進に対応した商法上の課題の検討
 今回の総点検の中で、商法関連事項であることを理由として電子化への支障があると報告しているものがあり、その関連性についてはなお検討すべき点があるものの、商法の見直しを早急に進めることが、IT化の進展に資することとなると考えられる。また、当委員会でこれまで議論し、論点公開において取り上げた電子化の推進に対応した商法の見直しも早急に着手すべき課題である。
 これらの商法の見直しについては、法制審議会商法部会において、民事基本法である会社法制を新しい世紀に対応したものとするための大幅な見直し作業の重要な内容として検討されており、当委員会としては、上記の問題意識にかんがみ、積極的な検討を期待する。

まとめ

IT革命の推進に向けて、国際競争力の向上、国民の便益の向上、経済の活性化といった点を視野に入れて検討していくことが重要である。これは規制改革にも共通する視点である。
 IT化が実現すれば日本の成長率が高まり、低成長に伴って生じる企業倒産や失業問題等が解消するため、大きな政治的抵抗を受ける構造改革・規制改革の必要性は薄れるなど、IT化と規制改革とを代替的にとらえる向きがある。しかし、経済・社会環境の大きな変化の中で、過去の制度慣行を温存したままでは、IT化を通じた経済の活性化を図ること自体が困難である。これはIT化に先行している米国は、IT化と同時に環境変化に対応して各種の制度改革に取り組み、多くの雇用機会を創出していることにも裏付けられている。
 むしろ、IT化を契機として、従来から当委員会が取り組んできた様々な分野の規制改革に切り込んでいくことによってはじめてIT革命が意味あるものになる。従来からある規制の問題に手をつけずに、IT化の問題だけをとらえて進めていくことは、ますます問題を深刻なものにしていくという懸念を持っている。また、単に現在ある手段を電子的手段に置き換えることだけではなく、IT化や社会経済情勢の変化に対応し得るように現在のシステムそのものを変えていくように規制改革を進めていくことがIT革命につながると考える。世界的なIT革命が進展する中で、日本がそうした変化に対応するためには、従来にも増して、規制改革のスピードアップが必要となってきている。
 本年10月13日に行うITに関する公開討論においては、そうした観点に立って議論を行う予定である。

(別紙)総点検についての整理、考え方

@電子的手段を認めることについて支障のないもの
 できるだけ早く制度の見直しに着手すべき

A電子的手段を認めることについて支障があるかどうかについて「要検討」又は「検討中」のもの
 検討内容及び検討スケジュールを明確にし、制度見直しの可否について早急に検討を進めるべき

B電子的手段を認めることについて支障があるもの
 上述した省庁横断的課題の整理により進展が期待される。特に、書面の原本性の確保又は真正性の確保の問題については、「電子署名及び認証業務に関する法律」の来年度よりの施行により、基本的に解決がなされると認識しており、それに伴う進展が期待される。
 一方、各制度固有の事由により支障があるとしているものについては、支障の内容についての各省庁の考え方が妥当なものかどうか検証する必要がある。