規制改革委員会

−速報のため事後修正の可能性あり−

第12回規制改革委員会議事概要

(公開討論(その3)「優れた医療を提供する者が報われる医療システムの在り方について」
----患者の立場に立った競争政策とは----)



1 日時 平成12年10月20日(金)13時〜16時

2 場所 総理府講堂

3 出席者

(委員会)鈴木良男委員長代理、河北博文、野口敞也(進行役)、八代尚宏の各委員、川渕孝一参与
(日本医師会)櫻井秀也 常任理事
西島英利 常任理事
(四病院団体協議会)中山耕作 日本病院会会長
西澤寛俊 全日本病院協会副会長
(有識者)森功 医真会八尾総合病院院長
瀬戸山元一 高知県・高知市病院組合理事
辻本好子 ささえあい医療人権センター・コムル代表
徳永幸彦 松下電器健康保険組合顧問
(厚生省)辻哲夫 大臣官房審議官
中村秀一 大臣官房政策課長
角田隆 健康政策局総務課長
尾嵜新平 保険局医療課長

4 議事次第
(1)開会
(2)基調コメント
(3)意見陳述
(4)自由討論
(5)総括
(6)閉会

5 議事概要

【鈴木委員長代理】規制改革委員会では、その前身である行政改革委員会規制緩和小委員会の時代から、経済各分野の諸規制について、規制を緩和し事業者の競争を促進することにより、如何に消費者利益を増大させるかという観点から議論をし、様々な提言をしてきた。昨年度より当委員会は、「規制緩和委員会」から「規制改革委員会」と名称を改め、規制の緩和・撤廃のみならず、事前監視型、即ち参入制限的な行政から事後チェック型行政への転換に伴う新たなルールの創設、規制改革の推進に併せた競争政策の積極的展開等、幅広く議論しているところである。一般に、規制には経済的規制と社会的規制の二種類が存在するといわれるが、実は、多くの規制がこの経済的規制と社会的規制の両側面を併せ持っている。それ故、社会的規制に名を借りた経済的規制と言われるものが多数存在する。そういった規制の社会的側面、つまりは消費者保護を図りつつ、経済的規制の側面をどのように緩和・撤廃していくのか。そして新たな競争促進的な公正なルールをどのように仕組んでいくのか。そういった問題を当委員会で議論している。

 さて、本日の公開討論は、医療分野の競争政策をとりあげているが、医療をとりまく状況を考えてみると、患者の求める医療と医療の実態とのギャップの大きさが、まず認識される。その一例としては、最近ニュースに事欠かないが、医療事故の多発がある。医療の質の基本的な部分である安全というものが、今までなおざりにされてきたのではないか。また、医療の科学的根拠が曖昧であったり、インフォームド・コンセントが不十分であったり、さらに、広告規制により患者が医療機関を選ぶのに十分な情報が提供されていない等々、我が国の医療は多くの問題を抱えている。こうしてみると、医療分野における規制というものが、本当に医療の質を担保してきたのか、患者の保護のために有効に機能してきたのかという疑問が出てくる。

 また、医療分野の規制は一般に社会的規制と言われるが、その経済的規制の側面、即ち参入規制については、これは誰のためのものかという疑問もある。他方、医療の特殊な点として、公的医療保険システムの問題があり、これについても、近年、医療費が増大しているが財源には限りがある。この問題をどうしていくのか。いかに効率的な医療を実現していくか。焦眉の急という状況にある。

 これらの点を考えると、医療システムのかなり根本的なところから議論していく必要が出てくると思われる。そこで、今回は、「質の向上と効率化」ということをキーワードに新たな医療システムの在り方というテーマを取り上げた。経済各分野で進行している改革、即ち、良いサービスが消費者に選ばれるようにするという当たり前のことを、どのように医療分野に応用していくか、患者の利益を増大するような競争促進的な医療システムとはどのようなものか、そのためには、どのような規制改革が必要かということをご議論いただきたい。本委員会は、今年7月に今年度の論点公開を行ったが、今回の公開討論においては、論点公開でとりあげた事項の他、従前当委員会が取り上げてきた事項や関連する事項も加え、体系的なご議論をお願いしたいと考えている。

 よりよい医療システムを如何に実現していくか、国民全ての関心事である。本日の討論がその建設的な一歩となることが期待される。参加者の皆様におかれては、忌憚のないご意見を賜りますようお願いして開会の挨拶に代えさせていただく。

ー 参加者紹介 ー

【野口委員】今回の公開討論では、論点公開で取り上げテーマに限らず、これまで議論されていたテーマについても併せて議論していきたい。あらかじめ、「公開討論の視点」(資料1)を参加者にお配りしている。この視点を中心に河北委員から基調コメントをいただきたい。

【河北委員】公開討論の参考となるコメントをしたい。資料1を御覧いただきたい。「優れた医療を提供する者が報われる医療システムのあり方について ―患者の立場に立った競争政策とは― 」が今回の公開討論の議題である。まず、医療分野における競争促進の在り方、競争をどうとらえるかである。例えば、病床規制、機能分担、開設主体規制という問題である。

 2番目が、患者(利用者)による選択を支えるシステムの在り方である。ここでも、利用者と書いているが、消費者と利用者の違いも考えていきたい。その@が、情報の非対称性を解消するシステムは、如何にあるべきかということであり、そのAが、医療の質を支えるシステムは、如何にあるべきか、EBM(evidence based medicine)、即ち科学的根拠に基づいて診療が行われているかどうかということ、医療の質のチェック、評価ということ、それから、安全対策というような問題もある。

 3番目が、医療費体系・価格決定メカニズムの在り方である。日本の医療費というのは大きな問題をこれからも抱えていくと思われるが、そのあり方をどうするのかということで、ここでは、混合診療、価格決定メカニズムの再点検、保険者機能の再構築という点である。この分野だけではないが、保険者機能、保険者が利用者をどう代弁していくかが問われている。

 4番目のITに関しては、それぞれの分野でも共通することなので、それぞれの分野も含めて御検討いただきたい。

 もう1枚、私の方からお示しした「平成12年度規制改革委員会公開討論(医療)」のペーパーを御覧いただきたい。規制改革委員会の目的は、活力ある経済社会を作るということである。医療をどうとらえているかということであるが、経済活動しての評価をすると、規模、医療費の枠を含めて、例えば日本のGDP約500兆円の中で、医療というのは30数兆円になっており、これはおそらく4番目ぐらいの規模の分野になっているのではないかと思われる。これが将来的にどう動いていくのか、経済規模、それから医療分野で約300万人の雇用が確保されているが、諸外国の制度から比べるとはるかに少ないという現状にある。こういった雇用面から経済活動としての医療をどう考えるかという問題がある。

 また、安心の確保という問題がある。セーフティネットという言葉を含めて、社会保障として医療を考えなければならないので、いかに安心という角度から経済社会を支えるかということを考えなければならない。本日の討論であるが、優れた医療をどう利用者が選んでいくか、いったい優れた医療とは何かということも、やはり議論しなければならないものである。社会が変われば、要求される医療、期待される医療の内容というのも変わってくるわけである。

 もう一つは、合理性という問題である。効率性を含んで合理性とは、理にかなっているということであり、競争政策の中でも合理性が無視されることではないと思っているので、優れた医療と合理性をどう両立させていくかということであろうと思っている。利害関係者とは、患者と、医療を提供する者だけではなく、そこには当然、保険者が入り、或いは納税者、次の世代の人達、行政、政治というのも絡んでくる。多岐にわたる利害関係者の立場をどう捉えていくのかということである。ただ、今日の議論のポイントである「医療というのは患者の立場をできるだけ中心に考えていかなければならない」ということについては、どなたも反論できるものではないだろう。

 その次に、我々の本論であるが、医療における競争の好ましい姿ということである。決して無理な競争を強いるということではない。昔、ケ小平が、市場経済と計画経済をいかに両立させていくことが大切であるということを言っていた。ただただ、市場経済を一方的に走らせることではないだろうと私も思っている。これまでの我が国の医療というのは、政策誘導が中心であり、価格が決定され、法的規制もかなり強かったが、これからは自主自律というものをその中にどう組み込んでいくのかということが問題である。当然、国民皆保険とフリーアクセスという国際的に見ても非常に大切なポイントとして我が国が確保してきた部分を、我々は、今後、競争の中でどう守っていくのかということも含めての話である。

 次の「良いものを良い、悪いものを悪い」とすることは、当然のことであるが、いままで、医療分野では欠けていた。みんな同じであるとされていた。私は自分自身の定義では、「公平」という言葉は全て一律に同じであるはずだ、違いがないということを前提とした言葉であると捉えている。一方、「公正」という言葉は、違いがあることを前提として、その違いを明確にする、即ち、適正に評価をして、その結果に対して適切に対応するということを意味していると考えている。今後、医療は、「公平」から「公正」へ動いていくことが大切であると考えている。評価をするところには、情報が発生する。情報が発生すると同時に、その次の標準化ということをどうするかということが問題となる。本当に良いものと悪いものだけを区別すれば良いかということではなくて、医療というのは安心を確保するという意味で、ある程度の標準化というものが必要であろうと考えている。標準化、さらにそれを踏まえて評価、情報、選択肢をどう組み合わせるかということが大切であろうと思う。

 その次に、医療の質というものであるが、何がいったい質の高い医療であるかというときに、患者、利用者の側からみると、満足度が大切であると思う。ところが、医療というものは専門性があるということが言われており、将来的にも、そうであろうと思われる。その満足度と専門性をどう組み合わせていくかということが大切であると思う。

 本日、討論の対象となるのは、体制の整備、即ちいろいろな法律も含めて体制をどう考えるのか、それから、診療そのもの、科学的根拠に基づいた診療そのものをこれから我々はどう展開していくのか、それがどう評価されるのか、また、経済的裏付けがどうなされるのか、もう一つは、そういう診療をどう伝えるのかということである。私は、医療の選択は2段階あるだろうと思っている。一つは、医師を選ぶ、医療機関を選ぶという選択、第2段階の選択というのは、自分自身の診療の方法を選択していくという選択である。そういう意味で診療情報、あるいは医療機関の情報というものは非常に大切であると思うが、どこまでそれを利用して選択するのか、開示されるのかということ、さらに、医療の評価という情報をどうするかということが問題となる。

 最後に、需要と供給と価格の問題である。経済社会では、需要と供給のバランスにより価格というものが選ばれてくるものであるが、医療の価格というのは殆ど全てが公定価格であり、その中に大きな問題がある。私は以前厚生省の審議会に出ていたときに、この医療費を特に専門に扱って来られた先生が言われたのは、診療報酬体系というのは、医師の行う医療行為に対する費用弁済であるということである。例えば、建物の減価償却費、あるいは金利負担というのは、医療行為ではない。そういうものをこれからどう評価していくのか、いわゆるドクター・フィーとホスピタル・フィーをどう分けていくのか、それからもう一つは、エクスペンスとは異なるコスト、原価というものをどう捉えていくのかが問題となる。原価は、一つ一つの医療行為あるいはそれぞれの医療機関によって全然違うわけであるが、いろいろな診療の過程の標準化が適正原価という議論に反映されなければならない。

 以上のようなことを踏まえて、今日、いろいろな方から御意見をいただき、後ほど自由討議をしたいというふうに考えている。

【野口委員】非常にたくさんの論点があるが、これから参加者の方々からそれぞれ御意見をいただきたい。それでは、日本医師会からお願いします。

【日本医師会 西島常任理事】私共、平成10年11月17日に、この委員会の公開討論において、規制緩和に関する意見を述べている。その中で、企業による病院経営、病床規制というものに対して意見を述べており、それについては、委員の皆様方には御承知していただいているであろうと考えている。その後、どのような議論になっていったかということについて、後ほど教えていただきたい。聞かせていただいた後、医師会に帰り、さらに検討していきたいと考えている。本日、河北委員の方からいろいろなコメントをいただいた。それに対する回答になるかどうか分からないが、私共の考えを少し述べてみたい。

 資料2である。先程から競争の原理ということがよく言われているが、競争と患者の選択権ということで図を示している。本当に医療の中に競争がないのかということであるが、競争のない社会には倒産ということがあり得ないはずであるが、現に、医療機関、特に病院の倒産が増加していることからも分かるように、医療にも競争はある。倒産の原因をみてみると、放漫経営が全体の40数パーセントを占めているが、競争があるから、放漫経営すると倒産するわけであり、まさしく競争の世界の中に医療機関がいるということが証明できると考えている。

 もう一つ言いたいのは、医療及び医業というのが直接人の生命の保全並びに健康の回復及び維持を目的とするという理念があるということである。このような医療には、昨今問題となっている緊急医療とかへき地医療とか、いわゆる不採算部門も存在するわけであるが、医療はニーズがある限り放置できないという立場に立たされている。これが俗に言う「実利型市場」と「理念型市場」の大きな違いであろうと考えている。医学、医療、医業という形の中で、医学には、医学生もいるし、研究者もいる。医療は、医術を以って社会に適用するもので、医師がいる。それが組織化されると医業という形になる。この全てに医の倫理がかかっているということである。それは、先程申し上げたような理念に基づいて、医療を利用者、患者に提供するという考えである。

 外国と日本の大きな違いは、日本では、フリーアクセスが保証されているということである。患者の選択権、セカンドオピニオンがしっかり担保されているわけであり、こういう形の中で、自分に合わないと思えばどこの医療機関にかかっても良いわけであり、そういう意味では、患者に選んでいただける医療機関・医師でないと患者が来ない、患者が来ないと収入に響くことになり、これが従来の措置であった福祉との大きな違いであると思う。そういう意味で、競争の原理はしっかり働いていると私共は考えている。

 それから次のページであるが、開設主体の自由化が与える影響ということであり、営利法人の参入は、必ず医療費を高騰させるということを説明した図である。左側の下の方に、非営利と言われている医療法人の医業収入の内訳が示されている。医業収入から医業原価、人件費、その他の管理費を引いて利益が出てくるわけであるが、それは再生産費用として使うことができるわけである。しかし、もしこれが営利法人ということになると、右側の会計構造にあるように確実に配当原資を確保しなければならないということになり、医療費は高騰すると私共は考えている。営利企業の本質は、株主等の出資者から、資本を最も合理的に運用し出資者に利益をもたらすように負託されているというところにあるので、不採算部門に参入するということは、出資者に対する背信行為にもなり得るわけである。当然、企業にも社会的責任があるということがよく言われるが、あくまで二次的なものであり、企業倫理というものはあくまでも経済的活動上にあるものであり、直接、人の生命・健康に携わる医師・医療の倫理とは本質的に異なるものである。こういうことも是非、理解の一つに加えていただきたい。

 3番目であるが、最近、情報公開ということが言われており、先程、河北委員からも、良いものは良い、悪いものは悪いとする評価情報を選択するというようなことが言われているわけであるが、一般的に情報の非対称性ということでよく引用されるのは、欠陥中古自動車の問題である。欠陥を隠して販売するということで、販売元は、超過利得が発生し、それを繰り返していくと、最終的には欠陥車だらけの市場になってくるということである。その他の例としては、不動産、証券がある。

 医療の場合は、専門家と非専門家の間に知識の格差がそもそもあり、知識の格差、情報の非対称は埋められるものではないと考えている。当然、インフォームド・コンセントその他の手法により、患者に理解してもらうための情報提供を行っていかなければならないということは間違いのないことである。しかし、その情報を理解し、判断するための知識が必要となってきており、それをどういうふうに教育していくのかというのが非常に重要なことである。例えば、いつその病気になるか分からない病気に関する知識を患者達が持つことが、果たして合理的か否かということを考えるわけである。糖尿病の患者であれば、その知識を得るために必死になって勉強するが、それに加えて私共が持っている知識を提供し、そこで一緒になって病気を克服していくということは当然必要なことであろうと考えている。しかし、例えば、6年間の医学教育、それ以降の専門教育等を含めた知識の格差はいつまで経っても埋まらないであろう。私共は、医師と患者は、人間としては対等であると考えているが、専門家である医師と患者の間には自ずから格差があることは仕方がないことであると考えている。そういう意味での相互理解は必要である。

 日本医師会としては、「かかりつけ医」を持っていただきたいということについて、皆さんに理解をいただいているところである。それは何かというと、この情報の格差を埋める役目を果たすのは、「かかりつけ医」であるということである。是非、利用者は、「かかりつけ医」を利用していただきたいと考えている。

 次のページであるが、医療の質とは何かということである。ここにも、非常に難しい問題がある。医療の質というのは、アウトカム、成果をどう評価するのかということであると思うが、これが非常に難しい部分である。この部分で、世界的にも適切な評価方法というものはなかなか見つけられていない状況にある。当然、医療技術の水準は医療の質を上げるために次々開発されてくるものであり、その提供、さらにその技術が本当に役立つものなのかという評価も見ていかなければならない問題である。そして、その成果が出れば、その普遍化は可能である。

 しかし、医療の質の評価には2つあり、医療技術の水準と、それからもう一つ大事なことは、患者の期待感である。この期待感というのは、患者が病気になるとその病気を克服したいと思うわけであるが、それが期待どおりになれば、患者にとって質が良いということになる。しかし、その期待に応えられなかった場合、期待が外れた場合には、質が悪いという評価がそこで行われることになる。これは、医療技術の質と全く違う質の評価となる。

 そういう意味で、患者の期待感と医療技術の水準、特に医療技術の水準に関しては、EBM等を含めた開発をしていかなければならないと日本医師会として考えている。医療ガイドライン・センターにおいて、日本医師会、日本医学会、様々な臨床に携わる研究者、臨床家を含めた中で、ガイドラインを作成していきたいと考えている。

 次のページは、保険外負担に対する考え方である。優れた医療を提供するものが報われる医療システムの中には、実は、混合診療という考え方があるのだろうと思う。従前の混合診療の議論においては、「保険給付+横出し」という形の混合診療の考え方が中心であったが、最近の議論は、「保険給付と自己負担+上乗せ価格」という考え方ではないかと思っている。保険外負担には、容認された保険外負担としての特定療養費制度というのがあるが、私共は、混合診療は絶対拒否という立場をとっているので、当然、そういう中での仕組みとしては、「現金給付+保険外負担」という形になる。では、これを拡大していくのかということについては、拡大することにより、自費の拡大が起こり、当然、家計の圧迫、平等の破壊を招き、国民皆保険体制の基本理念が崩壊するおそれがあると考えている。私共は、特定療養費制度はその都度見直す必要があると考えているが、その無制限の拡大については拒否をする。

 もう一つは、不合理な保険外負担としての上乗せ価格を容認するかということである。私共は、必要な医療は保険給付化していくべきだと考えている。なぜかというと、国民誰でも等しく平等な医療が受けられるということを保障するのが、世界に冠たる日本の医療保険制度であるからである。負担の公平と平等の理念というのを持っているわけであり、それが崩壊していいのか、本当にそれを国民が望むのかということを考える必要がある。もし、上乗せ価格でやるということであれば、経済的弱者が必要な医療を受けられないということになるので、等しく平等な医療が受けられることを保障するということを崩壊させていくことになる。私共はこれに対して反対である。

 次のページは医療安全推進者の養成についてであるが、安心の確保という流れの中で、様々なあってはならない医療事故が増えてきている。それをできるだけ少なくするということである。事故というのは、もちろんあってはならないのであるが、100パーセント取り除くことはできないと私共は考えている。しかし、100パーセント近くの水準まで取り除いていかなければならないということで、私共は、既に養成講座を立ち上げようとしており、来年1月から、医療安全推進者の養成講座を開講する予定である。そして、それぞれの病院がしっかりと事故を起こさないという認識を持っていただくという形の中で今後啓発活動を行っていきたいと考えている。

 医療費の部分であるが、医療費は、高騰していく中で様々な議論が出てきているわけである。利用者にとってみれば、自分の病気が治るのであれば、どこまでも医療費を使っていくことになる。しかし、「もうここまで」ということになれば、そこで止まることになるが、そこに、技術進歩が起きてくると、当然、さらに費用をかければ効果が上がるということになり、その意味での医療費の増大は避けられないと私共は思っている。資料の表であるが、アメリカ型の医療というのは、限りなく医療費が増加していくものであり、当然、自由診療等もある。しかし、日本型というのは、公定価格でかなり安く抑えられる中で医療費が設定されている。日本はGDPが世界で4位であるにもかかわらず、医療に掛かる費用は、世界で21位となっており、日本型の保険制度が医療費の増大を止めているということが言えるのではないかと考える。HMOについては、日本に導入しようという考えもあるが、HMOについてアメリカでかなり裁判が起きていることは紛れもない事実である。

 最後のページは、保険者機能の問題である。場合によっては、保険者が医療機関を指定してということであるが、格付けの問題をどうするのか。これも非常に評価システムが難しいところであり、一番問題なのは、指定をすることによって患者のフリーアクセスがなくなってくるということである。その前に、保険者が、それぞれの財務情報の整備を行うべきであると私共は主張している。現状は、ここに書いてあるように、様々な問題があり、財務諸表の整備が全くできていないというような、考えられないことが起きている。また、財務データの公開も、組合健保に至っては公開までに2年かかるし、国保に至っては、不親切な記載、記載ミスがあり、とてもこれでは、本当にその保険者が健全な財政状況にあるのかどうか評価ができない状況にある。保険者機能をどうやって適正に評価するかということも重要なポイントであると考えている。やはり、正確かつタイムリーな公開が保険者に求められているのではないかと考えている。

 今日の河北委員のコメントに、私共として答えられたかどうか分からないが、一応、ここで私共の意見を述べさせていただいた。

【野口委員】有難うございました。それでは、四病協さんお願いします。

【四病協 中山日病会長】四病院団体協議会として話をということであるが、まだ四病協として議論が詰めきれていないので、日本病院会の意見ということになるが、日本病院協会の意見も色々であり、私個人の意見としてお話させていただく。

 優れた医療を提供した者が報われる医療システムの在り方という非常に難しい題であり、本当の優れた医療とは何かということになるが、それは、医療の原点に立ち戻ってみると、利用者の満足度、信頼関係の構築、病床における病状の説明と慰めに要した時間と回数、心の通った医療であり、医療の本質と使命は報酬によって報われるものではない。利用者の人権の尊厳、プライバシーの確保も大事な問題である。

 もう一点は、医療はサービス業と言われるが、普通の企業感覚とは違うところがあるということ。倫理性がより問われるし、職員の養成、教育にしても、他社との競争、収益増に的を絞っているのではない。マーケティングは売れるものを作ることだが、医療においてはそれだけで良いのかが問われる。日医の西島先生からお話があった、増大する医療費への対応をどう考えるかについてであるが、医学の進歩と高齢化、国民の希望の多様化によって、医療費は増大の一途を辿っているが、国民皆保険制度の維持が原則にあり、我々もそれを支持する。また、医療費の対GDP比はOECD諸国の中で21番目であり、国際的視野での検討が必要ではないか。また、予防医学の推進も大事な問題で、予防医学の進展で医療費が安くなる可能性がある。もし間接税を増大するのならば、社会保障目的税の形にしていただきたい。これは、公助、互助、自助のうち、互助にあたると思うが、あとは民間保険とか日医の言う自立投資、これは2015年の話ではあるが、でいかに補助していく形になるかである。組合保険の問題は、健康保険はいろいろ種類あるが、一本化できないか。是非、互助の精神に立って一本化して欲しい。組合保険の財政のディスクロージャーは大切である。組合保険によっては付加給付があるが、政管健保はどうか。保険による差別化が進んでいる。

 資料3であるが、医療分野の競争促進の在り方については、情報の提供、情報の共有なくしては消費者の選択機能は十分に働かない。厚生省の施策として、地域における医療のネット作り、病々・病診連携の強化がなされており、今回の診療報酬改定でも紹介率を入院基本料の算定根拠に入れている。

 競争促進の趣旨については、ごもっともと思うが、現在でも病院間ではかなり競争は働いている。企業間の競争のように他社を蹴落しても自社の顧客を増やしたり収益増のみを図るのではなく、節度ある競争、顧客の満足度の向上、信頼関係の構築、質の向上への努力は当然のこと、早く、安く、安全に直すことが目的である。

 病床規制については、逆に結核病床、精神病床等は病床規制に縛られ撤退が困難となっており、実状に合わせて都道府県に任せるべきである。

 医療機関の機能分担については、各医療機関の専門性の向上は促進されるべきであるが、それを利用者の選択に任せるには、情報(提供)の徹底がなければ困難である。

 開設主体について、営利法人の参入は、病院は公共資本という概念から外れる。既設の営利企業が経営する病院は、施療的な考え方に適格したもので、自己の企業のイメージアップ、自己の職員の営利福祉のためで、80数病院あるが、本来は営利を目的としてはいなかったはず。日本の病院は少しでも得た利益を国民に還元し、施設の改善、質の向上、利用者へのサービスのための再生産に充ててきた現実がある。営利企業の本来の目的は株主に奉仕することで、不幸にして疾病に掛かり、病院、診療所に掛かった者から得た利益を株の投資に充てて配当を行う目的となる。配当に充てられるのは税金と保険料である。人道上如何なものか。大資本、外国資本の導入は医療そのものに歪を生じ、不当な競争となる可能性がある。現在、介護保険に営利企業が参入しているが、投資効率の悪さから撤退するものも出てきている。今後国民の審判を仰ぐべきである。

 混合診療の問題については、混合診療の定義が一定していないが、利用者による選択診療で保険外負担のものと理解している。療養環境の改善等、アメニティに関するものは、今でもかなり自己負担がある。室料差額、食費、予約診療等、種々の条件が許可されている。もう一つは高度先進医療であり、ホスピタル・フィー以外の技術に関しては自己負担である。これまで、腹腔鏡下の胆嚢摘出や術前のエイズ検査等を行った際の負担について、自己負担か混合診療かといった問題があった。高度先進医療や良い薬ができた場合、速やかに高度先進医療に取り入れて保険適用としてほしい。できるだけタイムラグをなくしてほしい。選択制のあるもの、例えば、遺伝子診断・治療、臓器移植その他の新しい医療のなかでも患者の選択によってやるかどうかが決まるものについて、保険診療外に自己負担をとるとことを考えなければならない時代になるのではないか。

 機能評価によって、ランク付けをする意見もある。感染症、リスク・マネージメント、専門医の数、アウトカムの成績等を用い、日本医療機能評価機構にようなものがクリ二カル・インディケーターを作りそれによって審査したものに限りランク付けをすることが可能ではないかという意見もある。1点単価を9円から12円の選択制にする。自信のあるところは12円にするが10円以上は自己負担とする方法とか、機能評価によって決めるべきとの話もある。同じ手術でも、経験豊富な専門医と研修医が同一料金なのはおかしいという意見もある。ドクターの選択制・指名料については、患者が病院を選択すると同時に、ドクターも選択もするというもの。ドクター・フィーとホスピタル・フィーを分けるのならば、ドクター・フィーにそれを取り入れることも患者の自由選択に任せることの利点ではないか。また、医療の標準化は、情報の公開と同時に速やかにやってほしい。

 低所得者に対する配慮を十分にしてほしい。所得の差によって医療内容に差をつけるのは如何なものか。例えば、新幹線のグリーン席、指定席、自由席でアメニティは違うが、到着時間は同じである。のぞみについては、日帰り手術ということではないか。河北先生は公正と公平は違うと言われたが、終局的に国民皆保険の崩壊につながらなければいいが。崩壊させないために上乗せを考えるのも一つの方法だが、それが反って崩壊につながるとも考えられる。国民の冷静な議論と納得と同意を必要とする。

 良い職員を集め、設備を完備して医療内容の良いものを提供し、少しでも他の病院より利用者の満足度を上げるというところが、節度と倫理性のある競争ではないかと思う。

 それでは、全日本病院協会副会長の西澤先生に追加と私への反論をお願いしたい。

【四病協 西澤全日病副会長】四病協として意見がまとまっていないので、中山先生と同じ点、違う点がある。営利法人の参入は頭からダメというのはどうか。医療の質の向上と効率性の促進がされて患者の利益になるのであれば反対はできない。しかし現状において、営利法人が参入すれば質の向上と効率化が促進され患者のためになるかというと、そう思えない。現状では反対の立場をとらざるを得ない。理由の一つは、国民皆保険である。これは公的保険・公定価格であり、人員、施設基準等が定まっている。その中に営利法人が入るのが馴染むのかという議論が必要である。株主に対する責任と患者、国民の利益が相反することがないのかという議論が必要である。今まで営利法人の参入が規制されてきたのは、患者の保護、医療の質を守る観点からではないのか。そこをもう一度明確に議論する必要がある。

 営利法人参入の議論の前に、現状で公正な競争、効率性の追求がなされていない最大の原因は、個人の意見だが、国公立病院の問題であると思う。国公立病院と私立病院とでは補助金等々の差があり、公平な競争ができていない。効率性でも阻害されている。この問題の整理を営利法人の参入の前に行って欲しい。

 保険者機能の強化については、医療側を選択すること等が言われるが、今の保険者が機能を果たしているかどうかを質、効率性の両面から見直すことが保険者機能の強化ではないか。医療機関側に競争をと言うが、はたして今、保険者間に競争があるのかということ。被保険者は保険者を選択できないということ。入れる保険は決まっており、どこかの保険組合がいいからと言ってそちらの保険には入れない。そちらの観点からも保険者機能について考えてみるべきではないか。

【野口委員】どうも有難うございました。それでは、有識者の方々からご意見をお願いしたい。今日は大変「先生」が多いので、「さん」付けで呼ばせていただくことをご理解賜りたい。それでは、森さんよろしくお願いします。

【森氏】私共は、大阪の近郊都市である八尾市で医療を提供している。私共には、こうあるべしというフレームワークを考えることより、今何が出来るか、どういう医療を提供するかということが最大の問題であるが、資料4では、私自身が職員に対して医療の質とはこういうものであろうと示すものを最初に挙げている。資料4の訂正であるが、最初の数式については、積分式記号は全体に掛かり、分母の「評価」は「経費」の間違いである。しかし、こういうものを私共の施設の中において職員が日常的に保証することにより初めて、良い医療を住民に提供できることを客観的に証明できると思う。良い医療とは、情報公開である。バイアスのかからない公開制度と診療行程全般にわたる解説責任、特に、医師のみでなく全ての医療者が患者に全ての課程を十二分に説明し、納得、理解を得ることの二つが大前提となる。これに対して色々な種類のバイアスを掛ける可能性があるが、バイアスを掛ける段階で医療の質は落ちていくだろう。こういう前提で、今日はお話する。

 資料4追加分についてであるが、1995年から、医師が犯した医療過誤に対する調査として医療事故調査会を始めたが、この作業が5年半になり、9月末で400件の医学的判定を終えた。そのデータによると、74%が医学的過誤であることが専門家によって判定され、過誤の判定の65%は死亡している。原因は多彩であるが、圧倒的に多いのが、医師の技術、知識の未熟性、独善性によるものであり、救急診療を含めて全ての領域にわたるものである。

 同時に病院でエラー管理を始めた。4つのステップで立ち上げ、今年4月から最終段階に入り、監査機構を設けた。その調査によると、過去17ヶ月で未遂事故500件、既遂事故1200件、計1700件余りであり、これを誤解を恐れずに1998年の全国の総ベッド数に当てはめると、年間に未遂事故が日本で100万件、既遂事故260万件が最低でもあると推測できる。このような状況で、どうすれば自らの現場でもエラーをコントロールできるかという、エラー低減策としてシステムを作っているが、未だ成果は上がっていない。現在、情報収集の段階である。日常的には検出機能を加えて作業しているので患者に被害がでるようなことは起きていないが、未遂・既遂事故は月間130件程で報告が出ている。一方、米国科学アカデミーの医学研究所が報告した推測数によれば、医療過誤によって年間4.4万から9.8万人が死亡しているとされている。これも誤解を恐れずに日本に適用すると、最低でも2万から4.6万人の国民は医療過誤で亡くなっている可能性がある。医療事故調査会の400件の鑑定例と他の例から日本の方が多いという危惧もある。胃ガンの死亡数や不慮の事故による死亡数と比較しても圧倒的に多く、深刻である。

 対処として、国家レベルで医療現場のエラーを起こす土壌に対して本質的に取り組むかどうかだ。国家レベルでの信任制度・教育制度の根本的見直し、医師免許の更新制、専門医制度の確立、それらの保険による評価などの大きな問題があるが、それらをやらなければ、エラーを生み出す土壌を変えることはできない。それをやっていただきたい。現場は待てないので、我々は、医療組織・施設レベルとして、アクレディテーションを内部的にやる。内部において医師の評価、他の医療者の評価を自ら行う自己申告制度を含めて、評価方式を変え、それを日常の医療現場の行動に活かす方策を考えている。資料に挙げた各項目について、できるだけ現場で解決策を講じ、いずれ行われるであろう国家レベルでの改善に即応できるよう準備しておこうというのが現時点である。おそらく1年後には医療現場におけるエラー発生状況の推移についてある程度報告ができかもしれないが、なにぶん監査機構ができて6ヶ月で、目下のところ情報収集中であり、情報が増えているという段階である。

【野口委員】続いて、瀬戸山さんにITを中心にお話をお願いします。

【瀬戸山氏】昨年8月に島根県立中央病院で病院全体を電子化する情報システムを稼動した。その経験も踏まえてIT分野の話をする。自己責任を基本とした規制緩和と法的整備の見直しが必要だが、特にIT利用の選択・促進ができるような政策的なインセンティブが必要と考える。また、将来は、25%以上が高齢者になる。それに対するIT整備がどうあるべきかということも観点に入れる必要があろう。資料5を説明する。

 一番目は、法規制についての問題である。患者自ら医療機関を選べるようにするための情報については、上から押し付ける情報提供でなく、患者・地域住民からの声を反映した情報提供に切り替えることが大事。第三者による医療評価機能については、内容を開示すべき。情報提供は部分的に情報を出すものだが、情報開示は全て出すものである。現在行われている情報開示は、情報開示になっておらず、情報提供にすぎない。また、情報を全て出す際の問題であるが、医療情報の監査を何らかの形で行う必要がある。さらに、受診者へ医療情報を出す際の医療機関への規制緩和が必要。また、現在の医療評価評価機能は、希望する医療機関のみの受審であるが、何らかの形で(全ての)医療機関の評価をすべきである。

 二番目は、ネットワークに関する問題である。昨年四月に診療録等の電子媒体での保存が認められたが、これはイントラネットの世界の話で、ネットワーク化が進んでいない。施設間のネットワーク化が重要であり、その整備が必要である。遠隔地で保存した情報を使う場合、広域災害時には地上回線が使えないことも想定して対応策を考えておくべきである。また、情報を利用する際の運用方法、装置等に関する法的整備と併せ、利用しやすい方法、利便性、コスト等の調整も必要である。

 三番目は、診療報酬点数についての問題である。現在、情報化について診療報酬制度で必ずしも対価として評価していない。ITを促進する方向で動くのならば、診療報酬制度においても高い評価をすべきであろう。また、電子カルテという言葉が通っているが、医療の質の向上と病院の効率化運営のためには、単に紙カルテの電子機能化ではなく、病院全体の運用システム・業務システムが情報化されるべき。そのためには、現在の診療報酬体系があまりにも複雑すぎる。如何に単純化して情報化に即するような方向が考えられるかという点。医療監査についてもネット監査が標準化されるべきであろう。また、現在、行政、保険所への報告書、各種診断書等の書式がバラバラであるが、これらを標準化・統一化することで電子機能化を図ることが是非とも必要と考える。さらに、現在、レセプトが診療科単位で審査されているが、1患者1レセプトという方向付けが必要だろう。

 四番目には、診療録等の電子媒体保存についての問題である。薬局とのネットワークにおける処方箋の電子機能化とエックス線照射録の電子機能化の2点が問題として残っている。

 五番目は、個人情報保護の法整備の問題である。個人情報保護の法整備に際しては、診療サービスの提供阻害や患者さんの受益障害にならないように考えて欲しい。二番目には、プライバシーの保護は当然であるが、病院運営や科学技術進歩のため情報を二次利用する方法を考えていただきたい。どの時点で患者からインフォームド・コンセント、承諾をとるかということとも絡む。三番目には、現在、個人情報に関する法整備が安全保護措置、衛生法規としての規制と考えられているが、患者にとっての良質な診療のためには、今後、同じ目的での法規制を掛けていくのではなく、(診療録等の電子媒体保存に関する)運用管理規定の延長線で考えるべきであろう。さらに、個人情報の利用停止が個人から求められた場合、どのように解釈するか。個人から情報の利用停止を求められた場合、診療拒否につながる場合もあり得る。最後に、個人情報に伴う権利・利益の保護については、公的部門と民間部門を分けて考えられているが、事業主体に関わらない保護が必要と考える。

【野口委員】それでは、患者の立場から辻本さんお願いします。

【辻本氏】我々は10年前から、「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者自立支援を目指した市民グループを続けてきた。市民の側、医療を利用する立場から提言する。

 この10年、患者の意識も変わってきた。権利意識、コスト意識が向上するとともに、患者の世代交代が進み、患者ニーズの大きな世代間格差が生じ始めている。患者主体の医療を構築する最も大切な点は、情報開示と開示した情報内容を確認するコミュニケーション、患者個々人が情報を有効利用できるようにする自立支援が、今後の医療にとって大切となる。三つの提言をしたい。

 一つは、保険者でも行政でもない第三者機能の社会的認知。二つ目は、患者の自立支援のインフラ整備。三つ目は、医療が消費から投資へ移行する中で、患者の権利要求を担保するコスト議論の社会化。リスクマネージメントにしても、カルテ開示にしても、セカンドオピニオンにしても、ヒト・モノ・カネが必要になる。そこをどう患者も負担するか。その意識改革としてコスト議論の社会化である。

 また、9月に開催したフォーラムの資料を付けている。差額ベッドの曖昧さの克服を目的にしたフォーラムを開催した。保険外負担で明らかに混合診療になっている差額ベッドの問題については、基準が見えない中で患者が曖昧な立場におかれている悲しい実態がある。

 患者の基本的ニーズは、安全で安心と納得が得られること。それら担保のためには、確かな技術と個別性が尊重された医療が提供されなければならない。患者を取巻く環境が変わり、意識改革、主体的な医療参加、限界や不確実性を引き受ける成熟度が求められるようになった。情報を開示されコミュニケーションの中で熟知・納得できる状況で自信と自己決定能力を引き出されるような支援システムが必要であると実感している。情報提供とコミュニケーションをキーワードにしたとき、患者の自立の支援に何が必要か、それは、本日のテーマでもある患者に選ばれる病院、患者の声に耳を傾けたサービスシステムの提供ということにも通じると思う。

 まず、第一点として、第三者機能の社会的認知については、賢い患者になりましょうというというキーワードの中で、罹患した現実を受け止め、どういう医療を受けたいかということの意識化、その思いを言語化して医療者に伝え相談の一方の当事者になり得る主体性、共に信頼性を構築していくためのコミュニケーション能力を患者も身につけようという活動を展開しているが、そのなかで、一人で悩まない、誰かに相談することの重要性を学んだ。自己決定能力を高めるということを第三者機能が果たす上で最も重要なことは、「教えない・判断しない」という姿勢である。そして、病院が改善に役立てるため、そこに届いた患者の声を病院に伝えるホットライン機能が必要である。

 第二点は、患者の自立支援に関する病院におけるインフラ整備である。これには三点ある。まず、病院に何でも相談できる窓口の設置の提案である。我々の活動で、患者の声がなぜ病院に届かないかと感じる。匿名の電話相談だから本音が言えるというのが現実。情報ナビゲータとでもいうか、カルテ・レセプト等患者が手に入れたものの中身をどう理解すればよいかということも相談できる萬相談窓口の設置を提案する。二つ目は、情報コーナーの設置。患者が自分の病気を学びたいという意欲が高まってきている。米国では、リソースセンターと銘打っているそうだが、ペイシャンツ・ライブラリーを目指し、まずは、情報コーナーの設置からインフラ整備を始めていただきたい。三つ目は、チーム医療の再構築。院内スタッフの専門性の活性化と夫々の専門性の役割が患者にわかり易く提示されること。我々に届くような質問を院内で対応するチーム医療の意識をスタッフ夫々が再認識していただくことである。

 第三点は、消費から投資へというコスト議論の社会化である。カルテ開示にしろ、リスクマネージメントにしろ、患者が今最も求めているセカンドオピニオンにしろ、コストが掛かる。安全、安心、納得の医療構築、環境整備のために自分たちも何を考えなければいけないのか、患者もコストをどう引き受けていくかという議論に入っていくことが、成熟の道を辿るヒントになろう。患者教育、主体的参加意識の啓発を含め、コスト議論の社会化を活性化すべきことを提案する。その他、広告規制、診療報酬の問題についても、我々の活動を通した意見を資料に挙げている。

 六年間、差額ベッドの問題を扱ってきて、患者側と対峙するもう一方の相手として行政があった。行政側の意識改革を何よりも強く求めたい。医療をとりまく疑問がどの視点で語られているのか。例えばカルテや看護記録が開示されたとき、その情報の書き手である医療者の力量と人間性と立場と視点が自ずと患者にさらされるように、この問題は、夫々がどのような立場・視点でものを言っているのかがさらけ出される。今回は、敢えて行政側の意識改革という点を付け加えさせていただく。

【野口委員】有難うございました。それでは、保険者の立場から徳永さんお願いします。

【徳永氏】私の考える規制改革の理念の第一は、21世紀に向けての規制の見直しと安全性確保のルールをどう考えていくかということで、3つの視点を提示したい。まず第1は医療、医薬、医療機器の進歩に合わせてルールをどう見直すのか、第2は高齢者社会に向けて治療と予防健康管理をどう位置付けるか、第3は都市と農村、山村、自然環境との調和、森林と水の確保を如何に考えていくかである。公平、公正、透明の3原則が重要である。透明とは手続きが明瞭であることと思う。第2には、グローバルスタンダードにせよ、ITにせよ、日本の風土・文化の中にきちんと位置付けがなされているかということである。

 松下電器健康保険組合において病院経営を担当してきた体験として個人的な考えを述べたい。

 資料7をご覧いただきたい。医療福祉分野の競争条件については、市場原理だけではなく一定のルールが必要である。地域性に根ざすガイドラインが必要であり、地域に権限を委譲すべきものは委譲するべきである。地域医療支援病院が現状に合っていない。地域にあった形で規制を見直すべきである。例えばかかりつけ医からの紹介率80%を満たすのは約20個所しかない。紹介率80%というのは殆ど不可能であり、実態に合った見直しをすべきである。病院経営の参入障壁は小さいほうが良いが、事故・違法行為については、徹底して罰則を科すべきである。医師・医学生の研修の中に保険制度のカリキュラムを入れたらどうか。民間(営利企業)の参入についてであるが、山村、離島などの無医村等において、民間の優れた経営手法を導入した病院を作るというのも一考であろう。その場合でも当然、生命の倫理は前提となる。

 医療機能評価については、松下記念病院も日本医療機能評価機構による評価を受けた。医療とは医師、薬剤師、看護婦、臨床検査技師等のチームで行う必要があり、目線を合わすことである。また、医師は他からの評価を嫌う傾向がある。これを克服し医療の近代化を進めるために院長判断で医療機能評価を受けることとした。日本医療機能評価の評価をより充実させるためにはISO 9000の考え方も導入すべきではないか。ISOは、治療行為の標準化を考える際に参考になるはずである。国立病院、特定機能病院等は率先して医療機能評価を受け、最低限の安心の基準を国民に提供し、安心して治療が受けられる環境を提供すべきである。

 DRGについては、日本型のDRGを構築すべきである。是非、標準化が必要である。医療費体系については、中医協での議論を期待している。最近の審議会の結論には両論併記が多いが、答えは一つにして少数意見を付す等、自信を持ってまとめてほしい。混合診療については中医協で議論すべきであるが、先端医療等、公的医療保険だけではカバーしきれない部分について論議すべき時に来ているのではないか。医薬分業については、健保連の国民意識調査の中でも35%の人が不便だといっているが、流れはこの方向で良いと思う。(医薬分業に際して薬局側も)かかりつけ薬局としての機能の充実強化など検討すべきである。松下記念病院も来年から医薬分業を進める予定にしている。保険者機能については後で議論があると思う。

 ITに関しては、松下電器健康保険組合も、眼科診療、画像保管・配信の遠隔診療、オーダリング、糖尿病ケアデータサービス等々について、取り組んでいる。その経験を通じての医療分野におけるIT化のための規制改革要望であるが、疾病分類をICD 10へ統一、厚生省・自治体・社会保険事務所等のネット化といったインフラ整備、被保険者証のカード化を進めて欲しい。また、ITを前提とする業務の見直しとして、レセプトの保存期間の短縮や電子媒体での保存の許可を要請したい。遠隔医療については、一層の助成が必要と考える。先ほど述べた都市と農村・山村との関係だが、遠隔医療により、山村に住みながら先端の医療を受けられ、森林や山を守る人が21世紀には必要ではないかと思う。鹿児島出身の実感としてそう考えている。

 最後になるが、予防医療について診療報酬体系に組み込むことを、是非、検討してもらいたい。

【野口委員】有難うございました。それでは、最後に厚生省からお願いします。

【厚生省 辻審議官】まず第一点として、医療分野における競争促進の在り方についてであるが、基本的な考え方として、日本における医療制度は、国民皆保険、つまり公的保険制度によって賄っており、患者負担を政策的に低くすることで医療へのアクセスを非常によくしているということがある。また、医療にはもともと情報の非対称性という性格もあり、完全な選択、価格を通した完全な市場競争というものは難しい。こうした枠組みの下、一点目として医療に関する情報提供の推進は非常に重要であると認識しており、それに向けて課題を着実に解決していきたい。二点目としては、医療を医療機関の自由な競争にゆだねた場合、結果として適切な医療資源の配分ができるかという問題もある。現実に病床数については相当な地域間格差がある。従って計画的に適正に医療資源を配分していく必要がある。病床数と入院医療費との間には高い相関が見られることから、公的保険制度の観点からも病床数をコントロールすることが必要であると考える。医療計画は以上の背景のもとに位置付けられている。

 医療計画については合理的な規制となるよう、また合理的な競争が起こるよう、第4次医療法改正においては、例えば、病床数の増加等を受けた後正当な理由がないのに6月以上業務を開始しない時は当該許可を取り消すことができる他、開設許可を受けた病院等の休止については原則として1年以内とし、休止した後正当な理由がないのに1年以上業務を再開しないときは当該開設許可の取消等が出来るなどの措置を加えた。また病床区分については、「療養病床」「一般病床」という区分を導入し、急性・慢性という概念に合う機能分化を進めるようにしている。しかしながら、医療機関がどのような方向を求めるかについては医療機関自らが決定することとしている。こうした枠組みの政策を推進することで、結果として新規参入がしやすくなり、医療機関の機能分化が進展し、専門性が向上するという方向を目指している。

 開設主体規制についてであるが、営利企業の参入については、情報の非対称性のある中で、政策的に低い患者負担の下でアクセスがよく、また、一部を除き出来高払いを原則とする医療保険制度の下では、(医療の提供が)収益性の高い部分に集中し、コストのかかる患者が敬遠されるおそれがあり、地域医療が非常に大きな影響を受ける、或いは医療費の高騰を招きかねないことから、極めて慎重に検討すべきである。

 二番目の、患者による選択を支えるシステムの在り方、情報の非対称性を解消するシステムについてであるが、基本的に医療に関する情報提供を推進するという方向性については、委員会の認識と全く一致している。医療サービスの質の評価については、現在、第三者機関である財団法人日本医療機能評価機構において実施されており、安全対策の評価についてもより充実するよう依頼しているところ。さらに今回の医療法改正案では同機構の認定を受けた旨を広告できるようにすることとしており、これにより受審が促進されることを強く期待している。

 情報公開・広告規制の在り方についてであるが、広告については、利用者保護の観点から原則禁止、一定の場合解除となっている。しかし、厚生省としては、前述の観点から、むしろ情報開示を進めるべきと考え、審議会でご審議いただき、その方向を出していただいた。具体的には、医療機関や医療従事者についての事実や客観的な情報などの検証が可能な事項について、幅広く情報提供することが望ましいという観点から、今回医療法改正案において、診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報を提供できる旨を広告できる事項として追加した。また、その他の広告できる事項(省令によるもの)として、医師の略歴、共同利用できる医療機器等を法施行時に追加することとしており、これらの取組により、情報提供は相当進展するものと考えている。

 セカンドオピニオンについては、広まっていくことを期待するが、前提として、十分な説明を行った上での医師と患者の信頼関係に基づくものであり、制度化という位置付けではないと考える。

 医療の質を支えるシステムについてであるが、EBMについては、基本的に医療を制限するものではなく、医療の質を向上させるものと理解しており、これを推進していきたい。具体的には、できるだけEBMが簡便に実施できるよう、科学的根拠に基づくガイドラインの作成支援、諸外国のガイドラインも併せて普及できるよう検討、EBM推進に必要な人材としてのリサーチ・ライブラリアンの養成、医療従事者の研修体制の整備など幅広く検討し、是非とも推進していきたい。

 医療の質の監視について、現在の監視制度は、全国最低限の基準の遵守を監督するものであり、医療の質を高める手段ではない。従って第三者評価制度、つまり現行の日本医療機能評価機構の制度を大いに普及することで質の向上を図るとともに、医療従事者の質の向上のため、今回の法案に入れさせていただいたが、医師等の臨床研修の必修化、医療現場におけるEBMの推進、治療計画のより合理的な推進など、幅広い観点から進めていくべきと考える。

 安全対策については、昨今、医療事故が多発しており、厚生大臣が関係団体に緊急にお集まりいただき、強く安全管理の要請を行う等、重大な問題と認識して取り組んでいる。安全対策の基本的考えは、医療機関の職員が患者の生命を預かっているという意識を基本に据えて医療に従事するとともに、各医療機関において、個々の職員が誤りを犯しても事故に発展させないような組織的な取組が必要であり、また医薬品・医療用具の仕様等、モノに由来するものは、そのモノが事故を引き起しにくいものになるよう対策を進めることが重要である。そうした観点から、院内のインフラとしては、事故防止マニュアルの作成及び周知徹底、特定機能病院においては、高度な医療を行うことから事故が多いため、その安全管理体制の法的整備等を進めるとともに、社会的インフラとしては、ヒヤリ・ハット事例と言われる事故の芽になるものを徹底的に調査し対応システムを検討する医療安全対策検討会議を設置し、モノ由来の事故を防止するための製品のあり方を含めた検討を進めていくこととしている。

 医療費体系・価格決定メカニズムの在り方についてであるが、第1点目の、患者の多様なニーズへの対応については、公的医療保険制度においては、制度上の一部負担・標準負担以外に、医療機関が行った診療について自由な料金を取ること、いわゆる混合医療を禁止している。ただし、特定療養費制度を昭和59年に導入し、一部を制度的に解消している。高度先進医療については、普及性、費用対効果等を検討する必要があり、個別承認を以って保険診療の経費を認める一方、一部患者負担を認めている。一方、選定療養については、アメニティー部分といわれる外形的に見てサービスの質が分かる8分野において、概念として混合医療を認めている。遺伝子治療等、現在保険適用となっていない先駆的医療技術についてどう対応するか議論が必要であるが、医療の本質的な部分について患者からの費用徴収を自由化することについては、医療の標準化、医療に係る情報提供等の環境整備がおこなわれているか等について十分な国民的議論が行われなければ、結果として、現状では不当な患者負担の増大を招く危険性が高いことから慎重に検討すべき。今述べた2つの考え方から特定療養費制度が開かれているので、これをどのように積極的に活用するかということは考えられる。日本医師会の「2015年医療のグランドデザイン」にある「自立投資」という概念については、様々な検討すべき点があるが、医療ニーズの多様化に対応する手法として研究していきたい。

 診療報酬決定のメカニズムについては、関係団体の推薦により任命される診療側、支払い側の代表、ならびに国会の同意を得て任命される公益委員の三者で構成される中医協への諮問・答申を経て、厚生大臣が全国一律に定めることとなっている。これは、全ての国民にとって公平、平等な診療の確保、情報の非対称性に伴う不適切な価格設定の防止、強制的に徴収した医療保険財源を国民的合意の下適切に配分するという観点によるもの。保険者団体と診療側団体が直接協議により診療報酬を決定する仕組みについては、制度の適切な運営を図る観点から現実的には困難。

 医療機関や保険者の選択を可能とするシステムの構築についてであるが、現行の医療保険制度は個人のリスクに関係なく、一定の負担で必要な医療を受けることができることを特徴とするもので、医療機関へのフリーアクセスを確保している。保険者による医療機関の選択や被保険者が保険者を選択することには、種々の問題がある。保険者が医療機関を選択する仕組みを構築すると、保険者が一部の医療機関とのみ契約を結び、全国に居住する被保険者やその家族が保険診療を受けることができなくなり、フリーアクセスの保障、公平な医療の保障に反しないかという問題がある。他方、被保険者が保険者を選ぶということについては、公的医療保険制度は、保険料をリスクに応じて決める私保険のような考えは採られていない。その中で、被保険者が保険者を選び、それを保険者は拒否できないとなると、賃金の低い人、年齢の高い人が集中した保険者の財政は、成り立たなくなる。従って、被保険者が保険者を選択するドイツの仕組みと同様に、年齢・賃金の違いについて保険者間の財政調整の仕組みが必要になる。その問題点を克服するためには、国民的な合意が必要であり、現時点では慎重な検討が必要と考える。

 最後に、医療分野におけるITの促進について説明する。医療分野においてもIT化の視点に立った施策については、大いに推進したい。基本的には、基盤整備としてシステムの標準化、個人情報保護の仕組み、研究開発体制について現在進めている。代表例である遠隔医療については、厚生省として全国的に様々な実証的な取組を進めている。ITを活用した病院同士、病院と診療所の連携も必要であり、そのためのカルテの電子化、コードの標準化等の環境整備を進めている。医療保険の被保険者証のカード化については、一人一枚化の方向で検討を進めている。カードは保険者の裁量により高機能化ができることとなる。レセプト電算処理システムは、平成10年度に審査支払機関の機器整備を行い、全国どこでも磁気レセプトの受け取り・処理を可能とした。近年、大病院の参加も進んでいる。今後、調剤レセプトに係るシステムの構築とともに周知広報に努めることとしている。

【野口委員】それでは、これから自由討論として、各論点について議論したい。最初に、医療分野における競争促進の在り方というテーマについて、もう少し議論を深めていきたいと考える。最初に、川渕参与より質問という形で発言していただきたい。

【川渕参与】医療分野における競争促進の在り方として、医療提供体制の参入の問題を取り上げている。徳永さんより「今の医療法は一体どうなのか」という発言があった。地域医療支援病院は、97年の第3次医療法改正から出来たが、直近で27病院しかその承認を受けておらず、そのうち25は医師会病院である。医療法は医療の憲法とも言われ、例えば、医師の数、看護婦の数を決めてきた。今国会にも第4次医療法改正案が提出されているが、これまでの改正がうまくいったのか、政策評価としてどう考えているのか。医療法は最低のルールを確保するものとの説明が辻審議官よりあったが、医師の充足率をみても、一番遵守している近畿でも80.9%で、北海道・東北に至っては39.5%しかない。北海道・東北では努力していないかと言えば、そうではなくなかなか来ないということである。したがって、全国画一の医療法は問題があり、むしろ徳永さんの言うように自治体の裁量権に委ねるべき部分もあるのではないか。人の数とか構造基準という有る無し基準ではなく、死亡率とか再入院率とか院内感染率などの医療機関のアウトカム・結果で勝負した方が、経営の効率化に資するのではないか。厚生省に聞きたい。

【厚生省 角田課長】政策評価は確かに大事だと思うが、医療法はそもそも衛生規制であり最低基準を決めるものである。それはどこに住んでいても必要な医師・看護婦がいるということは、守るべきものであると考えている。(医療機関の)結果評価については、行政が取り組むことには疑問がある。

【川渕参与】全国画一の患者平等原則を担保したいとの話であるが、医師の数にバラツキがあるという現状は、フリーアクセスと言いながら不平等ではないか。また、特定機能病院は残念ながら(横浜市大が患者取り違え事故を理由に特定機能病院の指定を返上したため)82から81になったが、横浜市大はいつ復帰するのか、どういう形で復帰するのかというルールを医療法で明らかにしていくべきではないか。

【厚生省 角田課長】北海道の遵守率が低い現実はあるが、あくまで最低の基準であるのだから北海道の医療水準が低いという現状を我々は認められない。医療法は、全てが自治事務になっており、都道府県が地域の事情に応じて適切に運用していくものとなっている。それでも、厚生省としては、ある地域は医療水準が低くてもよいとは言えない。実は、健康保険法が2年前に改正された際、遵守率の低いところは保険指定の更新をしないが、僻地は別という議論をした時に、むしろ僻地などにも医師等が行くような政策を推進するように言われた経緯がある。国としてやるべきことは、あまねく地域に必要な医療従事者が行くような施策を進めることと認識している。次に、特定機能病院については、横浜市立大学の申請が出ているので、それを医療審議会施設機能部会で審査しているところである。合意が得られれば、それを踏まえて厚生大臣が承認することとなる。

【河北委員】厚生省に開設主体について聞きたい。非営利組織の定義は何か。また、それが配当をする、しないの違いであれば、配当と銀行に対する借入れ金利と何が違うのか。一方、病院団体の方に伺いたいのは、現在は開設主体が複雑怪奇で多種あるが、これを統一すべきなのか。そのためには、会計基準・会計内容の公表の必要性についてはどうか。

【八代委員】医師会の資料の2ページに開設主体の自由化に与える影響という図表があるが、営利法人の方が配当金の分だけコストがかかるために医療費が高騰するという論理となっている。これが正しければ、あらゆる製品・サービスの提供に関して非営利法人の方が効率的であって、株式会社が淘汰されることになる。しかし現実になぜそうではないかと言えば、その他の販売管理費や再生産費用などが経営者の能力によって合理化されるからである。医療について専門家かもしれないが、経営者としては素人の医師が、プロの経営者と同じように効率的に病院を管理できるという前提でこの図が作られている。また、株式会社には配当責任があるというが、医療法人を作るのには資本が必要であって、それを銀行から借りている。銀行から借りれば利子を付けて返す必要がある。いわば配当は資本を調達するコストである点では銀行借入れと同じで、直接金融と間接金融の差でしかない。この図表において、なぜ配当だけが再生産費用とは別に出て、銀行借入れはなぜ計上されていないのか。

 更に、日本の医療法人はそもそも非営利法人なのか。米国の非営利病院には明確な定義があって、例えば、経費の2割は患者の支援のために使わなければならないとなっている。日本の非営利法人は、非営利と称しているだけであって、実態は個人企業であり、税務署もそう認めている。医療法人は、学校法人や社会福祉法人とは異なり、病院の資産は個人に帰属するからであり、正にこれが企業の定義である。これが禁止されている社会福祉法人で始めて非営利法人といえる。

 加えて、営利法人の参入を認めると既存の非営利法人が営利法人化するという指摘も、随分自信のない考え方である。患者は本当に非営利で同じサービスであれば医療法人を選択するはずである。だから、なぜ株式会社を恐れるのか。患者に任せればいいのではないか。もし医療の世界は特殊であって医の倫理が大事というのであれば、株式会社であっても実際に治療に当たるのは医師である。医師の医の倫理が経営者によって左右されるほどいい加減なものなのか。大事なことは競争であって、株式会社の経営主体の参入規制をすることによって患者が選べないという状況が問題である。要するに、患者に選ばせて医療法人が堂々と競争に勝てば良いのであり、良いサービスを提供すれば当然勝てるわけである。また、医療法人の経営者の高齢化が問題であり、後継者がいなければ倒産や廃業によって地域医療に穴があく可能性がある。そのためにも、多様な経営主体が医療を担うことが重要である。要するに株式会社と医療法人のどちらが良いか悪いかは分からないわけであって、対等の場で競争して、事後的にきちっとした規制をかけて患者にとってマイナスにならない状況にするという考え方がなぜいけないのかもう一度説明いただきたい。

【野口委員】まずは、厚生省から、続いて医師会からお願いする。

【厚生省 角田課長】配当と銀行借入れのどこが違うかというと、株主は代表者を選べる権利があるので、経営権があるという前提となっている。銀行借入れはそうではない。そこが全く違う。次に、非営利をどう考えるかと言えば、医療法上は、病院は営利を目的とするものには許可しないという規定と、配当の禁止だけが規定されている。非営利とはこういうものとはっきりしたものはないが、明らかなのは株式会社による経営は営利ということである。

【日本医師会 櫻井常任理事】まず一番疑問なのは、平成10年にこの委員会において日本医師会としてこの問題を説明させられた経緯があり、また同じ問題について意見を述べる必要があるのか。もし、規制緩和委員会から規制改革委員会に変わったから聞きたいということであれば、その背景を教えていただいてからにしたい。前から同じことをやっており、これを繰り返す必要はない。

【野口委員】この問題は、規制改革小委員会時代から6年間やっている。本日は、この問題について時間をかけるつもりはない。この問題を議論するとそれだけで終わってしまう。この辺にしておきたい。なお、これだけはということがあればご発言いただきたい。一方、厚生省に確認させていただくが、地域医療計画において、誰が医師の数を確保する責任があるのか。或いは、地域医療計画は、責任も拘束性もないのか。何のためにやっているのか。厚生省の考え方を示してほしい。

【厚生省 角田課長】医療法上、医師の数、看護婦の数を確保するのは病院の責任である。一方、医療提供体制の整備という観点から医療計画がある。医療計画の内容が変化してきており、医療関係者の確保に関する事項も必ず記載して、地域全体で考えていこうということになっている。

【瀬戸山氏】回答はいらないが、意見だけ述べる。特定機能病院については、一方的に大学病院だけ与えられて他の病院には与えられない。これは非対称的で認められない。次に、臨床研修病院に対する対価・評価がされているのか。3つ目に、地域医療支援病院については条件提示がいろいろあるが、それはどのような場で議論されて設定されたのか。こうした問題についても、検討が必要である。回答はいらない。

【日本医師会 西島常任理事】地域医療支援病院は、紹介率が80%となっているが、私共としては、100%にすべきと考える。なぜかといえば、これは機能分化の話であるからである。患者にとって分かりにくいという中で、今回、一般病床と療養病床という機能分化ができたが、地域医療支援病院も一つの機能分化である。地域医療支援病院がまた外来の機能をもってやっていくのであれば、非常に分かりにくい話であり、むしろ地域住民に対して理解をしていただくための啓発活動をしていく必要がある。また、地域の医療機関の医師に対しても理解を求め、紹介をしていただくため、啓発活動をしていかなければならないと考えている。私共としては、機能分化をする形の中で、是非、紹介率を上げる努力をしていただきたいと考えている。

【河北委員】機能分化に関連して、個人や家庭が、かかりつけ医を持つことは大賛成である。統計では、病院の数は、最近、減り続けていて、病院にかかる外来患者数は、去年一服したが、増え続けている。一方、診療所の数は増え続けているが、診療所にかかる外来患者数は減り続けている。一体、選択はどこを向いているのかということと、機能分化を政策誘導で行うこととの整合性をどう考えるのか。先程、医療に関する選択は2段階あると述べたが、日本医師会の説明では、プロとしての専門性を考えると、将来とも情報の非対象性は残るとおっしゃられたが、そのとおりだと思う。ただし、それは診療の方法を考えるという第2段階の選択においてであって、最初の医師や医療機関を選ぶという選択の情報ではないと思う。情報を徹底的に広げるために、是非、広告の捉え方と広報の捉え方を分けるべきである。専門家に伺えば、広報と広告とは明らかに違う。医療のように理念を浸透させていくためには、また、倫理を強調するのであれば、広報こそが重要である。その中には、必要な情報が全て含まれる。インターネットで様々な情報発信ができるようになった今こそ、広報機能をもっと充実させるべきである。医療関係者の方々、如何か。

【日本医師会 櫻井常任理事】ごもっともである。医師の選択という場合、医師個人の情報についてどのような情報が必要なのか。具体的に挙げて欲しい。私に言わせれば、医師を選ぶのは情報ではなく、実際にその人に接触してみることである。人間対人間の関係と考えている。私は、かかりつけ医を見つけるまで、いろんな医師に接してウマが合う医師を探してくださいと言っている。ウマが合うかどうかの情報はあり得ないので、接触してみるしかない。次の二段階目の医療に関する情報については、知識の差という情報の格差が消せないので、掛かりつけ医が埋めればよいというのが我々の考えである。医師の出身大学の名前が必要との意見もあるがそれでいいのか。〔チラシを提示して〕こういうことは言いたくないが、ここにバイアグラの専門医こと東京大学医学部卒の大先生が「バイアグラを購入するにはこうすればよい」というタクシーで配られていた広告がある。今では、厚生省から指導を受けないように作り直して、本の広告になっている。「バイアグラを購入できるという新しい本が絶賛発売中、著者は東大医学部卒・・」となっている。その下に何故か診療所の名前が書いてある。こういうことが行われること自体、国民に対して間違った医療を提供することに通じる。また、インターネットは野放しのひどい状態になっている。規制がないから、嘘有り、何でも有り。そこでめちゃくちゃなことが行われて国民が迷惑している。

【河北委員】それは、私が言っている広報ではなく広告である。医師の人柄も重要だが、それ以外にも情報の種類がなければならない。一つには、米国医師会(AMA)が行っている「AMAP」が参考になろう。

【野口委員】医療の広告は原則NOということで制限されている。(今回の医療法改正等において)それを「緩和」していこうという方向があるが、中身については、私としてはあまり評価できない。今日の議論では、広告の是非というより、むしろ患者が医療を選択するために医療提供者側が情報を「開示」しなければならない、義務として行わなければならないという意見が出ている。この点について森さんお願いしたい。

【森氏】一例を申し上げると、私は、地区医師会の選挙において、かかりつけ医を医師会として定義することを提案したことがある。総合家庭医と定義するならば、どのような学問的な研修をして下さいと医師会で決めませんか、それからその方達が専門医の標準的な診療支援・コンサルテーションを受けた上で、日常的な診療をしてください、という取組みをしませんかと提案した。患者に選べといっても、医師の人間性や優しさなど医学以外の判定基準が多いと言われる。もうそんな時代ではなく、米国のように、総合家庭医なら総合家庭医の研修のカリキュラムをしっかり決めてやりましょうと。10年間医療現場を離れていて次の日に医師を始めた人も、ずっと研修してきた人も、全く同じ医師免許で以って、いつでも医師の立場を保証される。そうではなく、医師免許の更新制が必要である。米国は2年に一辺である。しかもその内容がとても厳しい。

 それを全くやらない日本で、信任制度がない日本で、機能分化ということは、要は「患者を病院から診療所に渡しなさい」、「病院は入院診療だけをやりなさい」という形式的な議論だけになってしまう。だから、やるのであれば、質を伴って、患者が評価できることを客観的に示して、評価してくださいということを保証することが、少なくとも我々専門職としての立場であろう。日本においていかなる信任制度を作れるか。河北委員の言われたAMAP(American Medical Accreditation Program)は、米国の自己申告よる信任制度であるが、これを日本で作るかどうかが医師会に問われている。しかし、日本医師会から提案もなく、厚生省も考えていない。ならば、我々がこれをゲリラ的に地区医師会に提案せざるを得ないが、医師会では認められない。しかし、21世紀を迎えるに当たって、そういうことを実態として保証することをしない限り、形式的・表面的な議論に流れる。結局は、利益誘導と採られても仕方ないものにしかならない。

 我々が克服できることは、現場でやる。しかし、国として、職能団体としてやれることを真剣に考え、具体的な提案をしていただきたい。それが21世紀の医療についての本来あるべき討論と思う。

【辻本氏】最近、患者が話すのは、開業医・クリニックの割高感であり、どんどん病院に戻っている。クリニックに行って高いお金を払っても、十分満足した医療を受けられない、少しくらい長い時間待っても安いから病院に戻るという実態が声として届いている。一方、40代の若い開業医の方々は、サービスも考えているようで、開業医の中身の質が変わってきている、ニ分化しているなと感じている。先ほど行政の意識改革を申し上げたが、それ以上に申し上げたいのは、医師会の体質の改善である。古い時代にはピリオドを打って、新しい時代を展開していただきたい。

【瀬戸山氏】広報や広告の機能を問うときに、一度、患者さんが何を考え、情報として何を知りたいのか、国として国民に広く問うべきではないか。医療機関側からの論議は全部捨て、国民に、かかりやすい医療とは何か、自分たちは何を知りたいのか、を広く問うて、それを機能として出すべきである。これが原点であると考えるが、如何か。

【野口委員】私も参加している医療審議会でも議論しているが、そういう視点からの議論には全然なっていないということだけを申し上げる。何が出せるのかという議論しかやっていない。学歴はそもそも出してはいけないという議論すらある。どのような先生か知ることすら制限されている。そのようなレベルの議論しかなされていない。

【厚生省 角田課長】厚生省は非常に消極的で医療審議会でも殆ど議論していないというような今の発言について少々申し上げたい。医療審議会における議論では、客観的な事実や検証可能な情報については幅広く出し、医療内容については慎重に検討するということで詰めていた。厚生省の出した最初のたたき台では、規制緩和委員会で言われていたこと等を含めて正直に出していた。しかも、規制緩和委員会や医療審の中の患者の立場に立った代表者の意見も踏まえて今回の提案になっていることは、ご理解いただきたい。

【野口委員】客観的に検証できる事実ということで判断すればいいのではないか。そういう枠を打ち出しながら、具体的な事項でこれもいけない、あれもいけないという議論になってしまった。厚生省が打ち出した方向でそのままやってみればいいのではないか。

【日本医師会 櫻井常任理事】客観的事実であっても、それを公開することによって国民に誤解を与えるようなものを公開することは反対である。今の日本の社会において、国民が間違ってもそれは国民の責任だと言い切ってよいと皆さんが認めるのであればそれでもよい。インターネットは実験中であるが、騙されて文句を言っている人が多い。インターネットは騙すのは自由の世界であり、それを国民が覚えて、間違ったら自分の責任だと国民が分かればやってもいい。それまでは、我々としては、客観的事実であっても慎重にありたい。例えば、学歴を公開してそれで何を判断するのか聞きたい。

【川渕参与】広告規制の是非の議論であるが、インターネットでなし崩し的に広告・広報・開示が進んできている。辻本さんに聞きたいのだが、そういうのを見て、判断して、電話相談をする人がいますか。

【辻本氏】30代、40代の人たちが私共に電話相談をしてくる時には、既にそのような情報を入手している。Cochrane LibraryやMerck Manualの原文を読んでいるとか、米国国立癌研究所の種類別癌のデータを持っている等、情報は多く持っているが、どうすればよいかを自分では判断できず、誰かと相談しながら決めたいとしている。こうした受診行動の世代間の違いを踏まえて考えなければならない。

【川渕参与】なぜこれを聞いたかと言えば、情報の非対象性は絶対無くならないと言うのか、無くなるようにする制度はあるのかというのが2番目のテーマだからである。今のお話のように、たくさんの情報が得られたとしても、一人では判断できないとすると、それを判断するための別の組織が必要か。

【辻本氏】「判断しない、指導しない」と先程申したが、お年寄りも含めて、患者の心の奥には自分がどうしたかという希望がある。看護婦さんなどもよく言うのだが、「自己決定能力のない患者」と思い込んで対峙するから、それが引き出せないのである。お年寄りだろうと、30代だろうと自分がどういう医療を受けたいのか、いのちの主人公、からだの責任者として自分の問題として見据えていく生きる力が基本的には誰にも備っていると信じたい。

【森氏】私のところでは、外来患者には診療手帳を、入院患者には自己管理カルテを渡して、自分の疑問、家族の疑問を書いていただいて、看護婦がそれを見て、医師や各担当者に伝えて患者に対応している。患者さんは、確かに素人で殆ど医学的なことはご存知ないが、何が知りたいかということを日常的に書いてもらうという作業をしないと、個々のケースについて直接日常的に情報交換をするということを始めないと、信頼関係に基づいた情報の共有化はできない。対立関係に入ったら、全てのコピーをお渡しになればよい。情報を隠す或いは開示しないからこそ不信感を招く。情報は常に開示されるべきであり、そういうことを広報しておけばよい。それが広告にも繋がっていくだろう。日常的には、診療手帳・自己管理カルテで、殆どの意思疎通、医学的情報交換が可能である。勿論、米国の治療方針等いろんな情報がいろんな機会に出せる。要は、そうしたツールを持つのかということを患者さんにお任せすることである。我々が押し付けるのではなく、患者さんの気持ちに日常的に答えるという作業を医療機関において行うということから、情報の問題、広告の問題が解決していくだろう。

【四病協 西澤全日病副会長】情報の開示については、医師は自分たちが専門職という自負の下で、患者のことを第一に考え、これを与えた方が良いのか、与えない方が良いのかを考えてきた。ところが世の中が変化しており、逆に医師がその変化に付いてこられなかったのかと反省している。今まで情報開示をしてこなかったことが我々に対する不信を招いていたのであれば、我々は今後、情報を開示する方向で行かなければならない。ただし、受ける側が判断できない情報を与えてならないということであって、どういう情報を開示すればいいかを提供側として考えていかなければならない。医療の質を表す指標の開発なども考えていきたい。

 片方で言いたいのは、情報を開示していきたいと思うが、利用者が情報を得て理解して選択することとなれば、利用者の責任が生じるということである。情報を与えてもらい、患者が選択したはずなのに、どうしてくれるのかでは済まない。国民が選択するから責任は持つと言ってくれれば、我々は選択に値する材料を提供していきたいと考える。

【辻本氏】今、情報を「与える」という言葉を使われたが、(問題なのは)その姿勢である。与えるのではない。患者の知りたいということにどう答えるのかということである。医療者側は、高みから患者に与えるという、その意識から変えてもらいたい。

【瀬戸山氏】情報開示のガイドラインが出た。開示といっているが、実は部分的な提供である。そうではなく、開示をやることを前提として、その中で対象者とかいろいろな問題をどうするかということ。開示をしていないから、医療の不信がある。不信があるので開示しろと言われているのである。このことを医療側は真摯に捉えるべきである。

【日本医師会 西島常任理事】医師会の坪井会長は、提供という言葉を使うな、開示という言葉を使えと言っている。基本的に100%開示であると言っている。そのための環境作りをしている。その環境はどうかと言えば、とても開示できるような環境ではないということで、厚生省と一緒になって、カルテの書き方の講習会、カルテの標準化などを進めている。と同時に、やはり開示できない部分があることは世界共通である。例えば、ある癌センターで、患者から癌かどうか是非教えてほしいと言われ、「あと3ヶ月」と言ったところ、その翌日自殺した。こういう難しい問題がたくさんある。開示して本人の責任で自殺したから良いのではないかということについては、私は医師にはそこまで責任を負う義務があるのと思う。そう意味において心身に影響を与える一部分については、除外がある。しかし、日本医師会としては、基本的に100%開示であり、そのための環境作りをしている。坪井会長の強い方針である。

【野口委員】いろいろ議論があるが、この問題はこの辺りにしておく。第3番目のテーマである医療費体系・価格決定メカニズムの問題に移りたい。

【瀬戸山氏】その前に、2番目のテーマの後半部分である、医療の質を支えるシステムについての議論が必要ではないか。

【野口委員】では、瀬戸山さん問題を提議して下さい。

【瀬戸山氏】医療事故が問われて、良い意味で開示が進んだと思うが、実は、「リスク・マネージメント」という言葉が医療界には無かった。その中で、患者のセーフティ・マネージメントが重要であると思うが、そこが問われていない。ただ「事故があった、ヒヤリ・ハットだ、インシデント・レポートだ」ばかりで、今、医療機関では「医療事故が起こったらどうしよう」ということだけにとらわれていて、本来の医療が失われてしまうようなきらいがある。これは非常によくない。私は18年間病院長として医療事故を経験していないが、20を超える専門職の専門性を発揮できる環境を作ってきたことに自負がある。医師が全てであるのではなく、各専門職の専門性をちゃんと認めているかどうかである。専門性が発揮できる環境が作られれば、皆が専門であるから自信を持って、誇りをもって仕事をすることが前提となると思う。そういう環境がセーフティ・マネージメントとして作られることと同時に、人間のすることだから万が一のこともあり、そこでマネージメントをどうするかという問題を考えるということであると思う。

【森氏】瀬戸山先生は、事故を経験していないと言われたが、あり得ないと思う。聞こえてこなかっただけと思う。私の伺ったところ、いかなる病院でも大体1年間で千件の報告が集まる。問題は、こうしたエラーに真っ向から取り組んでいく姿勢が、国レベルにも、職能団体にもなく、現場にだけあることである。土壌に対して改善策が講じられなければ、不十分な人達を使うことになるので、いつまでたっても防護策が完璧に取れない。

 バリアーを張り巡らして事故が起きても被害が及ばないところで止めるということが最低限我々に出来ることである。初めから予防することは不可能である。エラー低減策として情報を収集して問題点を抽出しバックグラウンドで分類し東大の先生の考えた発想手順で対応策を考える。そういうシステムでやっているが、それでも事故は起こす。しかし、その情報を的確に掴んで多くのバリアを張り巡らせて、患者に被害を及ぼさない、最終的には患者がプロテクトするところまでもっていかないとエラー低減は出来ない。

 ところが今、日本で一番破廉恥なことは、警察の動員を求めていることである。国立大学附属病院長会議の中間報告でも厚生省の指針にも書いている。「警察に届けなさい」。米国では、新しい法律を作って、訴訟から守る代りに生死に関わる事態や重度傷害になった症例について報告義務を課している。ここのいきさつは11月に和訳が出るので見て欲しい。米国厚生省内にできた研究機関に膨大な予算措置を講じている。初年度3千5百万ドル、来年からは1億ドル。それだけの予算措置を講じて、情報収集して分析することを全職能団体も一緒になって行っている。その規模と日本の規模を比べると、医療現場でのエラー管理は殆ど効を成さないだろう。日本ではまだまだ医療事故は続くであろう。

【瀬戸山氏】ご指摘の点は全く否定しない。ただ、セーフティマネージメントとは何か。例えば、医師が書くカルテが、看護婦以下全ての職員が読めますかということ。読めないのが現状である。処方箋さえ読めない。こういう状況で正しい医療ができますかということ。その問題がまず原点としてある。バリアーとしてある。或いは、病院の各部署で同じ業務をするならば、原則的に標準化されていますかということ。医師の自由裁量に任されて診療科単位に部位別に全く違う操作がなされていることがある。それがあることは例外であって、常套手段であってはならない。こういう問題を捉えることが、セーフティマネージメントではないか。それが作られる中で、森先生から指摘のあったことが必要になると思う。

【辻本氏】中座をお願いしているので、最後の意見を述べたい。私どもの電話相談にエラーに関する多くの情報が入っている。客観的にみて、情報と情報、人と人、仕事と仕事のつなぎ目で事故が起きている。つまり、院内のコミュニケーションが非常に悪い。また誠意ある対応が速やかに行われていない。それを改善するために、何か事故が生じたときに、24時間以内に院内の各スタッフがどういう行動をすべきかという情報フローを作っていただくことと、最終決裁権が誰にあるかということを院内は勿論、患者にも提示できるような体制を作っていただきたい。

 先ほど、専任のリスクマネージャーを設置すればコストが掛かるのだということを指摘した。一方、権利を主張するなら義務もという指摘もあった。そういうことを成熟させていくためにも、ここで提案させていただく。

【野口委員】医療過誤については、どのようなシステムを作ればいいのかということで、米国の例も挙げてご提案があった。委員会として、今年の論点に掲げたが、今後さらに議論していきたい。この議論を含め、次の議論に河北委員に誘導してもらいたい。

【河北委員】まず、森さんから言われたことだが、医師法第21条をどう解釈するか。「死体の検案と死亡診断」をどう考えるかが重要なポイントであろう。もう一つは、医療機器や医療材料に関するPL法の適用の問題。患者と使用者との間に専門家が入るということでPL法の適用除外になっているケースが多い。これをきちっとすると、コストがかかり、コストの上乗せになる。医療機器や医療材料を誰が使っても事故が起きないようにするにはコストがかかる。コストとエクスペンスは違うと先程説明した。コスト自体も業務の標準化が行われなければ、適正なコストが反映されない。そういうことを価格決定メカニズムの中に反映できるのか。今までの医療行為に対する費用弁済だけではない議論、つまり診療報酬体系から医療費体系の議論へと変えていかなければいけないと考えるが、皆さんはこれをどう考えているか。

【野口委員】診療報酬体系をむしろ医療費体系で考えることについては、昨年、問題提議をしたが、もう少し具体的に説明して欲しい。

【河北委員】現在の診療報酬体系では、1点10円であり、点数を配分していく。点数の配分は、将来の診療の方向性をそこで誘導できることにある。しかし、なぜ1点10円を壊さないのか。中山先生から提案があったように、例えば、自分の病院は1点12円であると価格交渉していく方向がいいのかどうか。

【厚生省 尾嵜課長】混合診療については、結論的には、慎重に検討する必要があると考えている。一方、1点単価の自由度を高めるという議論は、確かに医療福祉審議会の中でも発言が出たが、結局、今日の議論にあるように、それを選択する患者が的確に判断できるかということになる。そのための情報とタイアップした形で整理しない限り、単に医療側にとっての自由度を増す議論をしても意味がないのではないか。規制改革委員会の委員の方々がなぜそれをやることにこだわるのか私自身は首を傾げる。それともう1つは、それをやることによって本当に患者のためになるようにするには、何をどうすればよいか、患者・国民が情報を理解し判断できるようにするためには、どのような体制を構築するかという具体的な提案が私には見えてこない。

【河北委員】それはおっしゃるとおり。価格の自由化に伴い医療の質が向上できるか、もし質が向上したと称したとき、それを明確に第三者的な評価の対象とし評価がきちっとできるか、その結果が開示されるかということが重要である。また、医療はいわゆる非営利であるというのなら、非営利組織こそ経営内容まで開示すべきである。そこまで踏み込んだ情報の提供がなされ質の向上につながるということであれば、価格の自由化がある程度あっても良いのではないかと考える。

【四病協 中山日病会長】資料3に書いているが、診療報酬改定で紹介率算定基準の不統一という問題がある。特に、一般病院では夜間の救急医療をやればやるほど、紹介率は下がる。一生懸命努力した者が報われないという結果になる。それと逆紹介を認めていながら、紹介率の中に算定されていない。これらについて改善が必要である。

【野口委員】診療報酬の問題全体を議論することは本日予定していない。また別の場で議論していただきたい。当委員会の今年の論点としては、混合診療の問題、1点単価の問題などを提起している。残された時間が少ないので、最後のテーマである保険者機能の強化について具体的にどういうものが必要なのか。保険者、病院、医師のそれぞれの立場からのご意見をいただきたい。まず、保険者の立場からどうぞ。

【徳永氏】保険者機能の強化については、2つの側面がある。1つは、今まで何らかの規制、指導等があり、公平という観点から、独自の自立性が発揮し難かった点がある。2つには、情報公開がされていなかった。十分保険者の方にフィードバックされていなかった。最近は、少しずつ両方が緩和され改善されてきた。保険者機能としては、自立の中で適正な保険者集団であるよう内部的な努力が必要である。それがある程度パワーをもった段階で、医療機関との関係において、対等な力で、できるだけ医療の質の向上とか評価とか選択とかという所にまでいけないかと考えている。次に、患者の立場、被保険者の立場に立って、色々な形のサービスが出来ないかと考えている。もう1点は、支払基金におけるレセプトの一次チェックの在り方、或いは情報の開示等について検討していただきたい。

【野口委員】厚生省に確認するが、保険者によるレセプトの一次チェックができず、支払基金がやるとする法的根拠は何か。

【厚生省 辻審議官】法律上は、支払基金に委託することができるとされている。しかし、現実問題としては、多くの医療機関、多くの保険者、多くの被保険者の間で医療費の決済を一挙にやって、現実に皆保険が動くようにするためには、被用者保険については支払基金、国保については国保連合会で一括してやらざるを得ない。従って、委託する中で、第一次審査が支払基金及び国保連合会で行われている。

【野口委員】法律はないが、行政指導によって行われているということか。

【厚生省 辻審議官】現実にそうでなければ業務が動かないということである。それを前提にして運用を行っている。

【川渕参与】徳永さんに伺いたい。最近、大蔵省が国のバランスシートを作って債務超過が776兆円と公表され、驚いたが、なぜ保険者のバランスシートの公表はないのか、また、できるのか。

【徳永氏】今までは厚生省の行政指導に基づき運営されている。今後、規制緩和・規制改革の中で、保険者としての財務状況の公開について検討してもよいのではと考える。

【厚生省 角田課長】医療法上は、医療法人は債権者に対して一定程度の財務を公開することとなっている。

【野口委員】必ずしも医療サービスの提供側だけではなく、保険者側にも情報の公開を迫れることもあるということ、また患者サイドでやらなければならないこと、今日はいろいろ問題提起があった。時間になったので、最後にこれだけは言いたいということがあればどうぞ。

【四病協 中山日病会長】保険者機能の強化に関して、将来、様々な情報が収集されて、そのあかつきに保険者と病院との間の契約関係は成り立つ可能性はあるのか。保険者として、病院の色分けを行い、特定の病院と契約していくという形が将来あり得るか。

【徳永氏】将来の方向としてはあり得る。そういう流れで、フリーアクセスとの調和をどうするかという問題がある。

【四病協 中山日病会長】フリーアクセスの問題がある。米国のように広くゲートキーパーを置けるようにするのか。

【日本医師会 櫻井常任理事】全体の問題として、国民経済とのバランスで確かに30兆円という国民医療費が大きい額であることは河北委員のご指摘のとおりではあるが、世界規模に比べるとそれほど大きくない。昭和36年から実施してきたフリーアクセスを基盤とする国民皆保険制度の成果が、少なくとも世界一の長寿国を作り、新生児が世界一死なない国になったという事実として出ている。これが医療だけでできたとは言わないが、少なくとも日本の医療制度が非常に貢献してきた。簡単に言えば、非常に安い費用で非常に大きな成果をあげてきたことは事実と思う。勿論、色々な歪が出てきたことも率直に認めなければならず、それを直すことにやぶさかではない。しかし、基本としては、今まで築き上げてきた世界一すばらしい医療制度を壊すのではなく、むしろ伸ばす方向で改革をして欲しい。米国は昭和30年頃には、日本より平均寿命が長かったが、いまでは日本より5年も遅れている。そこに参考にすべきものはあっても、真似るべきものはないと思う。

【瀬戸山氏】どういう規制緩和をするにしても、法を整理するにしても、医療は国民から非常に期待されている。これを絶対に裏切らないような、国民・患者・住民から求められる改革を是非ともお願いしたい。

【野口委員】本日のまとめをやるよう事務局から言われているが、とてもまとめられない。医療は命と健康に関わる問題であり、我々は単に規制を緩和せよと言っているわけではない。国民のできるだけ幅広い方々に参加していただき、大きな議論として、医療はどうあるべきかということを今後とも探っていきたい。最後に、鈴木委員長代理から閉会の挨拶をさせていただきたい。

【鈴木委員長代理】本日は、大変長時間にわたり活発な討議をいただきありがとうございました。また熱心にご静聴いただいた参加者の方々にもお礼を申し上げる。医療システムの現状と課題、今後の在るべき方向についての本日の議論は、ここで結論を出すものではないが、本日の討議を踏まえて、12月の中旬を予定している見解の提出に向けて参考にさせていただきたい。本日は、活発な議論、熱心な傍聴をありがとうございました。厚く御礼申し上げる。

以 上
(文責 規制改革委員会事務室)