政府は、従来、規制緩和の推進に当たって、「経済的規制については、原則自由、規制は例外的な場合のみとし、かつ、社会的規制については、本来の政策目的に沿った必要最小限のものとする」との基本的考え方を維持してきた。そして、経済的規制の代表例と言われるいわゆる需給調整規制については、臨時行政改革推進審議会(第3次行革審)の「国際化対応・国民生活重視の行政改革に関する第3次答申」(平成4年6月19日)において、「競争的産業における需給調整の視点からの参入・設備規制については、原則として、10年以内のできるだけ早い時期に廃止の方向で検討する」こととされた。この答申の趣旨については、その後の累次の閣議決定においても確認されてきたところであり、本年3月31日に閣議決定された規制緩和推進3か年計画においても、「需給調整規制については、撤廃の方向で見直す」こととされている。
既に政府は、電気通信、運輸の各分野における需給調整規制の廃止を行い又は廃止の方針を明らかにし、また、本年、大規模小売店舗の営業届出制度についても廃止のための法改正がなされた(平成12年に施行予定)。さらに、金融分野においても、いわゆるビッグ・バンの進捗によって、業種間の相互参入の促進など競争促進の方向に向けた取組が進められている。
しかし、こうした動きとは別に、残された問題として、昨年12月12日の行政改革委員会最終意見においては、1) 銀行の営業免許、2) 酒類の製造免許、3) 公衆浴場の営業許可、4) 国内産糖製造事業者の指定製造施設の設置承認、5) 酪農事業施設の設置承認、6) 中央卸売市場における卸売業者の許可、7) 前払式割賦販売業の許可、前払式特定取引業の許可、割賦購入あっせん業者の登録、8) 小売市場開設許可、9) 航空機の製造又は修理の事業認可、10) 石油精製業の許可の10の規制が需給調整規制と考えられるととともに、11) 証券金融会社の営業免許、12) 市町村以外の水道事業経営の認可、13) 工業用水道事業の許可、14) 電気事業の許可、15) 一般ガス事業の許可、16) 簡易ガス事業の許可、17) 熱供給事業の許可の7の規制が、需給調整以外の目的に条項が使われていると認められるが、当該条項を基として需給調整が行われる懸念があると考えられるとして、それぞれの項目について問題意識が指摘された。
このうち、証券金融会社の営業免許については、本年6月に成立した金融107号)において、証券取引法(昭和23年法律第25号)第156条の4の規定が改正され、「有価証券市場の状況等に照らし」との語句が削除された(平成10年12月1日施行)ところであり、これを評価する。
また、石油精製業の免許については、本年6月8日に取りまとめられた石油審議会石油部会基本政策小委員会の報告書において、石油業法に基づく事業許可、設備許可等の需給調整規制は内外の市場の結び付きが強まる中で、その存在意義を失っているとした上で、事業者のより自由かつ迅速な意思決定を可能とするよう、これら平時の事業活動における需給調整規制の廃止が提言された。今後、この提言に沿って、速やかに所要の措置を講ずるべきである。
このほかの項目に関しても、累次の閣議決定及び規制緩和推進3か年計画に沿って所要の措置が講じられることを強く求める。具体的には、当面、以下の措置を講ずるべきである。
(1)銀行の営業免許
銀行法(昭和54年法律第59号)第4条第2項第3号は「申請者による銀行の業務の開始が、当該銀行の業務が営まれる地域における資金の需給状況、銀行その他の金融機関の営業状況その他経済金融の状況に照らして、金融秩序を乱す恐れがない等適当なものであること」を免許の要件としている。これは、免許申請者の状況とは別に、周囲の市場状況を判断して免許の可否を判断する需給調整条項と見られる。
したがって、当面、この条項を基にして新規の参入に対する需給調整規制を行うべきではなく、また、銀行法の見直しを行うに当たり、この条項を見直して需給に係る規定を廃止すべきである。
(2)酒類の製造免許
酒税法(昭和28年法律第6号)第10条第11号は「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要がある」ときに免許を与えないことができることとされ、また、同法第11条は「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要がある」ときに、製造量・範囲に条件を附することができることとされている。これらの規定は、酒税の保全のために、酒類の製造業における需給調整を行う条項である。
運用面で実際に当該需給調整が行われているのは、需要が低迷し、また、中小企業の多い酒類の製造業であり、結果として中小企業保護となっているおそれがあると考えられる。
酒税は財政上重要な地位を占め、かつ、高率な負担を求めていることにかんがみ、酒税の保全の観点から、その納税義務者たる酒類製造者について需給調整も必要との考え方があるが、一般に需給調整規制は行政の裁量を広く認めるため弊害が多く、既存企業保護を介する手法が目的に対して合理的・効率的かという点には大いに疑問がある。また、産業としての酒類製造業を考えるとき、このままではいたずらに衰退の道を歩むのみという危惧がある。酒税の保全のためにも、産業としての酒類製造業の健全な発展のためにも、新規参入を促し、産業全体としての活性化を図る方が適切であるとも考えられる。
したがって、これら酒類の需給状況の好転が認められる場合には、速やかに当該品目についての需給調整規制を廃止の方向で見直すべきである。なお、それまでの間に、中小企業者の合理化を進め、需給調整なくして酒税の保全が図られるような業界の構造の構築を目指すべきである。
また、上記以外の酒類について、今後、新たに需給調整を行うことは、厳に慎むべきである。
(3)公衆浴場の営業許可
公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第2条は「都道府県知事は(中略)その設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは、(中略)許可を与えないことができる」こととし(同条第2項)、この「設置の場所の配置の基準については、都道府県が条例で、これを定める」こととされている(同条第3項)。これを受け、各都道府県の条例において、一般公衆浴場(物価統制令で価格規制を受ける公衆浴場)の配置につき、既存の一般公衆浴場からの距離規制が行われている。こうした規制は、乱立による過当競争を防止し、また地域的偏在を防止することで、公衆衛生の維持向上を図るための措置であるとされるが、一定地域における新規参入を、需給バランスを理由に規制するという意味で、需給調整規制と考えられる。しかしながら、一方では、この配置規制については、一般公衆浴場が現状の配置規制の下でも減少し続け、乱立という事態が想定しにくくなっていることから、有効性が薄れていると考えられる。また、一般公衆浴場以外の公衆浴場も増加している。
いずれにせよ、これら規制の内容は、都道府県の判断により条例で設けられている基準によるものである。ただし、公衆浴場法に基づく条例である以上、条例による規制は法目的を達成するため必要最小限たるべきであり、一般公衆浴場以外のものを条例における距離制限の対象としないこと、また一般公衆浴場について距離規制を行う場合にあっても当該距離は必要最小限のものであるべきことに留意すべきと考える。
(4)市町村以外の水道事業経営の認可
水道法(昭和32年法律第177号)第8条第1項第1号は「一般の需要に適合すること」という認可基準を定め、水道事業に参入する事業者に不特定多数の住民の生活用水の需要にかなうよう供給を行うことを求め、供給者を選べない需要家の保護を図っている。
原料水の地域依存性及び有限性、導管ネットワークの有する自然独占性と、水道需要が一般には飛躍的に伸びないことから、水道事業には地域独占が必然とされる。そのため、同法第8条第1項第4号で水道事業の地域独占を定めているが、規制緩和の議論の中で、エネルギー関係の地域独占、自然独占についても見直しが行われており、水道事業に関しても、技術革新などにより代替する供給構造が具体化する可能性は将来的には否定できない。
したがって、将来的に技術革新などにより地域独占を必然とする条件が失われ、直接競争が導入される場合には、これらの規定について抜本的な見直しを行うべきである。
(5)国内産糖製造事業者の指定製造施設の設置承認
甘味資源特別措置法(昭和39年法律第41号)第13条第2項第1号は、国内産糖製造事業者の指定製造施設の設置について、原料処理能力が「著しく過大にならない」ことを承認の要件としている。これは、「生産振興地域」(沖縄県、鹿児島県南西諸島、北海道)において甘味資源作物(さとうきび、てん菜)の生産量の見通しに対して製糖施設の原料処理能力が過剰になることによって、地域内の国内産糖製造事業の健全な発展が阻害されることを回避し、地域内における甘味資源作物の生産の振興と農業経営の改善を図るための過剰設備防止条項である。
「甘味資源特別措置法」は、甘味資源作物の生産振興と砂糖製造事業の健全な発展を図るための措置を一体的に講ずることにより、一般会計からの交付金及び輸入糖からの調整金をもって国内産糖及び甘味資源作物の価格支持を行う「砂糖の価格安定等に関する法律」(昭和40年法律第109号)と相まって地域の農業生産を含む砂糖関連産業の発展を図るものとされている。
現存する価格支持制度については、多くの議論がなされている。この過剰設備防止規制は、国内産糖及び甘味資源作物の価格支持という施策体系全体のうちに位置づけられているものであることから、それのみを取り出して議論を行うことは、必ずしも適切ではないと考えられるが、今後、農業政策の見直しの中で甘味資源作物及び国内産糖企業の在り方について検討が行われるに当たり、当該規定について検討すべきである。
(6)酪農事業施設の設置承認
酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律(昭和29年法律第182号)第10条第2項第3号は、酪農事業施設の設置に関して「当該集約酪農地域の全部又は一部につき(中略)著しく過剰にならない」ことを要件としている。これは、過剰設備防止条項であり、現状の製造施設の過剰状況を考慮すると、この条項によって新たな製造施設の設置が制限される可能性がある。
従前、その要件は、いわゆる「9・9通達」(注)により定められていたが、同通達は昨年廃止され、新規参入の抑制は行われないこととされた。当面、通達廃止後の制度の運用状況を注視する必要があると考える。
また、生乳流通の広域化の進展等の状況変化を踏まえ、酪農事業施設の設置承認を含めた制度の見直しを行うに当たり、当該規定を見直すべきである。
(注)「9・9通達」:「乳業施設の新増設について」(昭和58年9月9日付け農林水産省経済局長、構造改善局長、畜産局長連名通達)
(7)中央卸売市場における卸売業者の許可
卸売市場法(昭和46年法律第35号)第17条第2項第2号は、「当該中央卸売市場の卸売業者の間において過度の競争が行なわれ、その結果当該中央卸売市場における卸売の業務の適正かつ健全な運営が阻害されるおそれがあると認められるとき」は許可しないことができるとしている。
これは、中央卸売市場における卸売業者が、市場機能の基幹的な担い手として生産者から集荷した物品を仲卸業者及び売買参加者に販売を行う機能を持ち、取引の相手方が多数で特に集荷については県境を越え全国的に分布していることから、一旦財務上の事故が起こるとその影響が広範囲にわたるため、その健全な経営と財務の維持を図ること及び収容能力に一定の限界がある施設における競争制限を目的とした需給調整条項であると考えられる。しかし、目的とされる経営の健全性と財務の維持については、別途他の条項によっても担保されている。
一方、現在、卸売市場間での競争や他の流通チャンネルとの競争が激化しており、一の市場内において卸売業者の参入を制限することに大きな意味はない。
こうした状況を踏まえて、卸売業者を取り巻くこうした環境の変化に対応した制度の見直しを行う中で、この条項を見直して需給調整規制を廃止すべきである。
(8)前払式割賦販売業の許可、前払式特定取引業の許可、割賦購入あっせん業者の登録
割賦販売(昭和36年法律第159号)法第15条第3項は、前払式割賦販売業の許可、前払式特定取引業の許可、割賦購入あっせん業者の登録の3つの制度について、当該申請者の「事業活動が、中小商業者の(中略)事業活動に影響を及ぼし、その利益を著しく害するおそれがあると認めるときは、同条の許可をしないことができる」としており、中小商業者の健全性を担保するために、競争を制限するという手法を採っている。
前払式割賦販売業の許可及び前払式特定取引業の許可は、事業者の財政状態の健全性を確保することにより、割賦販売等に係る取引を公正にし、その健全な発達を図ることにより、消費者を保護することを目的としている。また、割賦購入あっせん業者の登録は、あっせん事業者の健全性を確保することにより、直接消費者に商品を提供する販売事業者を保護し、結果として消費者の保護を図る制度であるとされる。
しかし、こうした規制は、競争を制限することによって効率的でサービス等の向上が見込める新規参入を阻害し、結果的に既存事業者を保護してサービス提供者を制限する形で、実質的に需給調整が行われる可能性がある。
したがって、当面、この条項を基にして新規の参入に対する需給調整規制を行うべきでなく、また次期法改正の機会に、当該規定は廃止すべきである。
(注)本年成立した大規模小売店舗立地法附則により、第一種大規模小売店舗(3000u(東京23区、政令指定都市においては6000u)以上の小売店舗)の小売業者の許可申請、登録申請については、上記の需給調整規制の対象から外された(平成12年から施行予定)。
(9)小売市場開設許可
小売市場開設許可制度は、ディベロッパーが投機目的で小売市場を濫設し、高賃料で小売商から不当に利益を搾取していたことを踏まえ、投機目的での小売市場開設によって小売商が不当に害されることを防止するためディベロッパー行為を規制の対象としたもので、小売商の事業参入・設備規制には当たらないとされている。また、近年では、地方の不当な独自規制を抑止するためにも、法律による規制が必要と主張されている。
しかし、小売商業調整特別措置法(昭和34年法律第155号)第5条第1号には、許可除外要件として、「周辺の小売市場内の小売商との競争」又は「周辺の小売商との競争」が「過度に行われることとなりそのため中小小売商の経営が著しく不安定となるおそれがあること」としている。これは、小売商業者の配置を調整することにより競争制限を行う規制である。
本法が制定された昭和30年代半ばと現在の小売商をめぐる環境は全く異なっていることから、小売市場の現況、当該規制の果たす効果等について現在行われている調査の結果などを踏まえ、ディベロッパー等の不当な搾取から小売商を保護するという制度の妥当性について再検討し、当該規定を廃止する方向で措置すべきである。
なお、上記規定が廃止されるまでの間においても、当該規定を需給調整的に用いてはならない。
(10)工業用水道事業の許可
工業用水道事業法(昭和33年法律第84号)は、工業用水の安定的かつ継続的な供給を確保するため、事業の開始前に、事業計画、施設等が一定要件を満たしているかを確認する許可制を設け、許可の要件として「その工業用水道事業の開始が工業における一般の需要に適合すること」としている(第5条第1号)。
この規定は、工業用水道事業が自然独占性を有する産業であることを反映したものであるとされる。したがって、将来的に技術革新等により直接競争が導入される場合には、これらの規定について抜本的な見直しを行うべきである。
(11)航空機の製造又は修理の事業許可
航空機製造事業法(昭和27年法律第237号)第2条の5第1項第2号は、航空機及び航空機用機器中の特定機器の製造又は修理に係る許可の要件として、「その許可をすることによつて当該航空機又は特定機器の製造又は修理の能力が著しく過大にならないこと」と規定し、この過剰能力防止条項という形の需給調整によって、生産の基盤となる技術と製造能力を維持しようとしている。この条項は、新規の参入を調整して、既存事業者の維持を図ることにもつながる。
我が国航空機産業は、需要の大部分を占める防衛調達に関しては予算の制約から調達機種・機数が限定されていることに加え、武器輸出三原則により海外市場への輸出が禁じられており、自由競争を通じて需要が開拓・拡充されるという通常の産業の形態とは異なっていると主張される。しかしながら、航空機製造又は修理に関して、すべてを需給調整規制の中に置くことは合理的とは言えないと考える。
したがって、当該事業調整規制に関しては、我が国の防衛を支える防衛産業を含む航空機産業の在り方を含めた総合的な議論の中で検討すべきであり、その際、当該事業調整条項についても廃止を含め見直し・検討を行うべきである。少なくとも、特定機器の範囲については、これを速やかに見直し、その範囲を縮小すべきである。
また、当該条項を厳格に解し、現在の国内航空機産業の状況にかんがみて、当該事業調整により新規参入を阻止すべきでない。
(12)電気事業の許可
電気事業法(昭和39年法律第170号)第5条第1号は、「その電気事業の開始が一般の需要(中略)又は供給地点における需要に適合すること」を電気事業の許可要件としているが、これは、実質的な地域独占事業に対して需要家を保護するために、需要家のニーズに適合する供給であることを求める規定である。
この規定は、電気事業が自然独占性を有する産業であることを反映したものである。現在、規制緩和推進3か年計画に基づき、電気事業に競争を導入するため、新たな電力供給システム全般の抜本的見直しが検討されている。これらの検討結果を踏まえて、当該規定について抜本的な見直しを行うべきである。
(13)一般ガス事業の許可
ガス事業法(昭和29年法律第51号)第5条第1号は、「その一般ガス事業の開始が一般の需要に適合すること」を一般ガス事業の許可要件としており、これは、実質的な地域独占事業に対して需要家を保護するために、需要家のニーズに適合する供給であることを求める規定である。
この規定は、一般ガス事業者が自然独占性を有する産業であることを反映したものである。現在、規制緩和推進3か年計画に基づき、一般ガス事業に競争を導入する方策が実行に移されており、更なる競争促進の方策が検討されている。これらの検討結果を踏まえ、当面所要の措置を講じるとともに、将来的に直接競争の導入が拡大される場合には、当該規定について抜本的な見直しを行うべきである。
(14)簡易ガス事業の許可
ガス事業法第37条の4第1項第1号は、「その簡易ガス事業の開始が一般の需要に適合すること」を簡易ガス事業の許可要件としており、同条項は、実質的な地域独占事業に対して需要家を保護するために、需要家のニーズに適合する供給であることを求める規定である。
この規定は、簡易ガス事業者が自然独占性を有する産業であることを反映したものである。したがって、将来的に直接競争が導入される場合には、当該規定について抜本的な見直しを行うべきである。
(15)熱供給事業の許可
熱供給事業法(昭和47年法律第88号)第5条第1号は、「その熱供給事業の開始が一般の需要に適合すること」を熱供給事業者の許可要件としており、同条項は、実質的な地域独占事業に対して需要家を保護するために、需要家のニーズに適合する供給であることを求める規定である。
この規定は、熱供給事業者が自然独占性を有する産業であることを反映したものである。したがって、将来的に直接競争が導入される場合には、これらの規定について抜本的な見直しを行うべきである。
(1)基本的な考え方
公的資格制度は、社会経済の複雑化・高度化に伴い、各種の専門的知識、技能・技術の保有者に対する社会的需要が高まったことを背景に設けられてきた。国民の権利と安全や衛生の確保、取引の適正化、資格者の資質やモラルの向上等のため、厳格な法的規律に服する資格者が存在し国民に安心できるサービスを提供することがその目的であるが、他方では、資格制度は、企業の市場参入規制に相当する個人の特定の市場への参入規制の側面を持つものである。業務の独占、合格者数の制限、受験資格要件などの規制が維持され、新規参入者が抑制されたり、資格者以外の者が市場から排除されることにより、当該業務サービスに係る競争が排除されることになるのであれば、その弊害は大きい。
公的資格制度は、法令にその根拠を有するもので、通常、「業務独占資格」、「必置資格」、「名称独占等資格」の3種類(注)に分類され、その数は計200を超える。このうち業務独占資格とは、その資格を持った者でなければ一定の業務活動に従事できないとするものであり、規制制度としての性格が典型的に表れているものであると考えられる。
(注)通常、必置資格とは、一定の事業場において、当該資格者を管理監督者等として配置することが義務付けられているものをいい、名称独占等資格とは、当該資格者でなければ一定の名称を用いることができないというものであり、当該資格者が専門的知識・技能を有する旨を公に証明する効果を持つものをいう。
当委員会では、今年度は、公的資格制度のうち、業務独占資格(平成10年4月1日現在98資格)を中心に、各省庁に対して調査票の作成を依頼するなどにより、資格制度の法令上の規定状況及び現状について横断的かつ全般的に調査してきた。調査の結果、現時点では合理性について疑問があると考えられる規制が見受けられた。
したがって、各省庁においては、国民生活の利便性の向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、廃止又は必置資格若しくは名称独占等資格への移行を含め、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の資格制度の在り方を見直すべきである。具体的には、規制緩和推進3か年計画の期間中に、本見解で指摘した点を含めて検討を行い、その結果に基づき所要の措置を講ずるべきである。
資格制度も一般の公的規制と同様、社会経済情勢の変化に対応して絶えず見直す必要があり、各省庁における見直し作業と並行して、当委員会においても、必置資格及び名称独占等資格をも含め、引き続き個別の資格について見直し作業を進めていくこととする。その一環として、規制緩和推進3か年計画改定後のしかるべき時期に、各省庁における見直しの状況につきヒアリング等を行う考えである。
当委員会としては、この見直しに当たっては、以下に示す基準・視点に基づいて行うべきであると考える。
(2)見直しの基準・視点
1) 業務範囲が余りに細分化されている資格については、業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れを検討する。
また、業務独占資格者の業務のうち隣接職種の資格者にも取り扱わせることが適当なものについては、資格制度の垣根を低くするため、他の職種の参入を認めることを検討する。
2) 以下の資格については、廃止を含めその在り方を検討する。
3) 法律上資格試験を行うこととされている資格については、試験を実施する。
4) 明確で合理的な理由のない受験資格要件については、その廃止を検討する。
5) 受験前の実務経験、試験合格後の修習・講習等の義務付けについては、合理的な理由なくして参入規制として機能しないようその在り方を見直す。
6) 身体的障害等を理由とする絶対的欠格事由については、その合理性について検討する。
7) 受験資格及び資格取得に係る特例措置の認定基準については、明文化・公表を進める。
8) 合格人数制限を行っているものについては、参入規制とならないよう、これを見直す。
9) 関連・類似資格等については、統合又は試験・講習科目の共通化・免除若しくは履修科目の免除を進めることについて検討する。
10) 合否判定基準を公表する。
11) 例えば以下の方法を採用することにより、資格取得の容易化を検討する。
12) 受験料の積算根拠を精査する。
13) 公正有効な競争の確保等の観点から、登録・入会制度の在り方について検討する。
14) 公正有効な競争の確保や合理性の観点から、報酬規定の在り方を見直す。
15) 公正有効な競争の確保や合理性の観点から、広告規制の在り方を見直す。
16) 有効期間・定期講習の義務付けの合理性について検討する。
(3)見直しの基準・視点についての考え方
1) 業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れ
当委員会において業務独占の実態を把握するため、当該資格者による他資格者の業務の実施についての法令上の可否を調査したところ、弁護士が弁理士、税理士、司法書士、行政書士及び社会保険労務士の業務を、弁理士、公認会計士及び税理士が行政書士の業務を、並びに公認会計士が税理士の業務を行うことができる程度で、全体的に極めて限定されている実態にあり、また、資格相互間で参入を認めているものは見られなかった。
各資格の業務範囲を余りに細分化し、資格と資格との間の垣根を余りに高く設定することは、業務サービスを受ける国民に不便を強いることになるとともに、それぞれの資格を取得しようとする者にとっても自分の参入したい業務領域への参入の障壁が高くなることを意味する。
このようなことから、弁護士については平成8年3月の改定後の規制緩和推進計画において、法曹人口の大幅増員の状況等を見つつ隣接職種との役割分担の在り方について検討するとされており、また、行政書士については規制緩和推進3か年計画に基づき既に業務独占の在り方についての検討が開始されている。
したがって、各種の資格について業務の実施状況、当該資格業務の実施に必要とされる資格要件、資格区分の合理性等を調査し、その結果を踏まえて、業務範囲が余りに細分化され資格と資格の間の垣根が高すぎると思われるものについては、その垣根を低くし資格相互の間での参入を容易とする方向で業務範囲の見直し、相互乗り入れなどについて検討すべきである。
2) 廃止を含めその在り方を検討すべき資格
専門性の観点から、資格者以外でも実施可能な専門性の低い資格並びに試験合格、講習修了等の特段の要件を必要とせず、単に登録のみで取得できるとされる資格及び試験合格率又は講習修了率が極めて高く、余りに容易に取得できる資格については、社会経済情勢の変化や資格制度の目的を踏まえつつ、廃止を含めその在り方を検討すべきである。
社会的使命が終了したか又は社会的ニーズと乖離していることにより、年間の資格取得希望者が少ない資格については、廃止を含めその在り方を検討すべきである。
資格取得の要件が試験合格を原則としているにもかかわらず、資格取得者のほとんどが試験合格以外の特例による取得者である資格については、廃止を含めその在り方を検討すべきである。
類似資格が民間資格である資格については、廃止を含めその在り方を検
討すべきである。
3) 資格試験の実施
法律上資格試験が行われることとされていながら、実際にはこれが行われておらず、特例による資格取得者がほとんどを占めている資格については、公平性・透明性を確保する観点から、資格試験を実施すべきである。
4) 明確で合理的な理由のない受験資格要件の廃止
職種内容と直接関係のない学歴等の受験資格要件については、明確で合理的な理由のない限り廃止すべきである。この点に関し、司法書士試験等において受験資格要件が設けられていないこと及び規制緩和推進3か年計画において、行政書士試験の受験資格要件を廃止するとされたことを評価する。
5) 受験前の実務経験、試験合格後の講習等の在り方の見直し
試験を受ける前の実務経験や合格後の修習・講習等の義務付けについては、合理的な理由なくしてこれらの要件が別の職業を持つ人にとって参入規制として機能することのないよう、その在り方を見直すべきである。
6) 身体的障害等を理由とする絶対的欠格事由の見直し
資格取得に関する障害者に係る欠格条項については、政府において見直し作業が進められているが、身体的障害又は性別を絶対的欠格事由として資格を取得することができないとしている資格については、その合理性について検討すべきである。
7) 受験資格及び資格取得に係る特例認定基準の明文化・公表
公務員を含む関連・類似職種の経験者等に対する受験資格及び資格取得に係る特例規定については、電気工事士資格のように省令及び大臣告示によって認定基準を明文化し、公表するなどにより透明性・公平性を高めるべきである。
8) 合格者数制限の見直し
資格取得のための試験は、資格試験としての位置付けの明確化を図るべきである。合格率・合格者数が毎年ほぼ一定とされ、合格者数を制限をしていると見られる資格試験については、資格制度が実質的な参入規制になることのないよう、合格者数を制限すべきではない。
9) 関連・類似資格等の統合、試験・講習科目の共通化・免除、履修科目の免除
互いに関連・類似する資格、極度に細分化された資格等は、本来統合すべきであり、少なくとも、既に公認会計士試験と不動産鑑定士試験との間で講じられているように、試験・講習科目の共通化やその全部又は一部についての受験を免除するべきである。
この点に関し、規制緩和推進3か年計画において、理学療法士及び作業療法士の養成課程について、既に履修したと認められる科目を免除する指定科目制の導入等を図る方向で検討することとされたこと等を評価する。
10) 合否判定基準の公表
合否判定基準は、すべての資格試験において「一定水準以上」であるとされている。しかし、受験者が偏った受験勉強をするおそれがあることを理由として、合否判定基準を公表しているものは少ない。この中で、税理士試験は、政令により合否判定基準を公表しており、公平性・透明性の観点から、他の資格試験についても合否判定基準を公表すべきである。
11) 資格取得の容易化
試験科目が複数である資格試験の中には、一度で複数の科目に合格しなければならないものがある一方で、税理士試験のように、1科目ずつの合格科目の積み上げによる合格方式を採用しているものや、建築士(1級)試験のように、合格した科目が一部ある場合には、再受験において当該合格科目の受験を一定年限免除しているものも見られる。また、試験問題を公表したり、その持ち帰りを認めているものもある。当該市場への参入者を増加させ、競争を活発化させる観点から、例えば、合格科目の積み上げによる合格方式の採用、再受験における既合格科目の免除制度の採用及び試験問題の公表・持ち帰りなどにより、資格取得の容易化について検討すべきである。
12) 受験料の積算根拠の精査
受験料は、都道府県ごとの指定試験機関等が実施している資格試験を除いて、ほとんど政令によってその額が規定されているが、国が直接資格試験を実施しているものに比べ民間団体への委託により実施しているものの方が高額となっている。国民負担軽減の観点から、国が直接実施しているものを含め、受験料の積算根拠を精査すべきである。
13) 登録・入会制度の在り方検討
当該資格者の品位と適正かつ公正な業務執行を確保するとともに、無資格者の取締りに資するとの理由で、行政庁又は当該資格者団体への登録を義務付けたり、当該資格者団体への入会制度を設けている資格については、合理性、関係者の負担軽減、行政事務の簡素合理化及び公正有効な競争の観点から、登録・入会制度の在り方について検討すべきである。
14) 報酬規定の在り方見直し
規制緩和推進3か年計画において、行政書士会会則及び日本行政書士会連合会会則に行政書士の受ける報酬について、記載しないこととするための所要の措置を講ずるとされたことを評価する。
これに倣い、主務大臣の認可事項である当該資格者団体の会則で報酬規定を設けている資格については、公正有効な競争の確保や合理性の観点から、廃止を含め報酬規定の在り方を見直すべきである。
15) 広告規制の在り方見直し
法令又は当該資格者団体の会則で広告規制を行っている資格については、報酬規定と同様に、公正有効な競争の確保や合理性の観点から、廃止を含め広告規制の在り方を見直すべきである。
16) 有効期間・定期講習の合理性の検討
身体的適性と専門能力の確認等のため有効期間を設けている資格及び有効期間はないものの、定期的に講習の受講を義務付けている資格については、それらの合理性について検討すべきである。
基準・規格及び検査・検定(以下「基準認証等」という。)は、製品の製造や設備・施設の構造・設置について、生命、身体及び財産の保護や、災害防止、生産・消費の合理化・効率化といった様々な政策目的を達成するために、鉱工業製品等の物資や施設・設備が満たすべき基準と、当該基準に適合することを確認する方法や手続を法令等に規定する制度である。
基準認証等は、それぞれの制度が本来目的としている様々な政策目的を達成するための手段として重要な役割を果たす一方、経済活動のグローバル化が進んだ現在においては、同時に、企業活動や消費活動に対しても、コストの上昇や選択範囲の限定等、大きな影響を与えることとなる。このため、基準認証等の制定・運用に当たっては、国民の生命、身体、財産の保護等に支障が生じないことを前提として、こうした諸活動への影響が可能な限り小さくなるよう配慮することが重要である。
基準認証等については、本年3月に閣議決定された規制緩和推進3か年計画において、1) 自己確認、第三者認証への移行等による政府の直接的な規制の最小限化、2) 認証・検査業務への競争原理の導入、3) 適切な場合における性能規定化、4) 国際相互承認の推進等の4つの視点を基本とした見直しを行うこととされている。政府においては、この見直しを行うに当たり、特に以下の点に留意しつつ、現在の規制緩和推進3か年計画の最終年度である平成12年度末までにすべての基準認証等についての見直しを完了することを目標とすべきである。
(1)国が関与する基準認証等の範囲の見直し
基準認証等が目的としている政策目的は、安全の確保や取引の効率化等様々であるが、これらの政策目的には、事故又は災害発生時の社会・経済的影響等から国が関与しなければ達成できないものがある一方、技術の進展等に伴い、必ずしも国による基準認証等によらなくとも、市場における信用獲得など、事業者による自主的な取組によって達成できるものもある。
したがって、これら基準認証等については、真に国が関与した仕組みとして維持する必要があるかどうかについてそれぞれ改めて検証を行い、行政の関与を必要最小限とする方向で抜本的な見直しを行うべきである。
(2)自己確認・自主保安を基本とした制度への移行
ア 自己確認・自主保安、第三者認証
上記の見直しを経た上でなおかつ国が関与した制度を維持する必要がある場合においても、国は基準を設定し、市場において基準の遵守状況の監視を行う等必要最小限の関与を行うにとどめ、行政効率化の推進や、企業が負担するコストを低減するとの観点から、適切なセーフティ・ネットを整備した上で、自己確認・自主保安とすることについて検討を行うべきである。次に、自己確認・自主保安のみにゆだねることが必ずしも適当でない場合であっても、直ちに国又は国の業務を代行する指定検査機関等による検査を義務付けることとするのではなく、自己確認・自主保安を基本としつつ、国際ルールを踏まえ、公正・中立な第三者による検査等を義務付ける仕組み(第三者認証)とすることができないかどうかについて十分な検討を行うことが必要である。
この際、一律にすべての事業者に対して自己確認・自主保安や第三者認証とすることが不適当な場合にあっては、優良な実績を有する事業者に対して選択的に自己確認・自主保安や第三者認証を認める等のメリットシステムの導入を積極的に検討すべきである。また、自己確認・自主保安を基本とする場合においては、消費者等の市場に参加する各プレーヤーへの十分な情報提供が前提となることから、行政庁における情報公開はもとより、事業者側においても情報提供を促進する等の取組を行うことが必要である。
イ 国又は国の代行機関(指定検査機関等)
以上の検討によってもなお自己確認・自主保安を基本とした仕組みとすることが適当でない基準認証等については、将来における自己確認・自主保安への移行を検討しつつ、当面、国が直接実施することとしたり、指定検査機関等の代行機関を設けることとすることもやむを得ないが、この場合においても、可能な限りその業務について民間機関の活用を図るとともに、検査確認等の事務を行う主体についても、原則として公益法人以外の民間法人にも開放する等の見直しを行うべきである。
(3)基準の国際整合化・性能規定化、重複検査の排除等
基準の内容については、その基準により達成しようとする特定の政策目的に基づくことは当然であるが、当該政策目的の達成だけを考慮して我が国独自の基準を設定した場合には、国際的活動を行う事業者にとって余分な負担を課したり、消費者の海外製品選択の余地を狭める等の弊害をもたらすこともあると考えられる。このため、基準の設定に当たっては、それぞれの基準が達成しようとする政策目的という観点からだけでなく、国際整合性を確保することによってこうした事業者や消費者の負担を軽減するという観点からも検討していくことが必要である。具体的には、ISO等の国際規格が既に存在するものについては、その妥当性を検証した上で、当該国際規格との整合化を図るほか、国際規格の存在しないものについて、我が国の規格を国際規格として採用するよう働きかけることや、国際的な相互承認を推進すること等が必要である。また、基準の内容が、技術革新に対して柔軟に対応できるものとなるよう、現在、仕様規定となっている基準については原則としてこれをすべて性能規定化するよう検討を行うべきである。
この他にも、検査の実施に当たり、複数の基準に係る検査が行われる場合には、類似の検査事項については重複検査を排する等、事業者の負担軽減のための措置を講じていくことが必要である。
政府においては、上記の点に留意して、規制緩和推進3か年計画に基づく基準認証等の見直しを進めるべきである。当委員会としては、当該見直しの進捗状況及び今後の検討予定について、平成11年3月末までに当委員会に対して報告するよう求める。
国民・事業者が様々な事業等を開始又は展開する際には、行政庁の許認可等を必要とする場合が少なくないが、これらの許認可等の審査に要する期間を、規制緩和推進3か年計画に沿って、思い切って迅速化しようという「許認可等の審査・処理期間の半減・短期化」に関する政府の取組については、国民の負担を極力少なくするとの観点から極めて重要なものであり、現在の極めて厳しい経済の状況に対する方策としてもゆるがせにできない事項である。
本年9月に公表された見直し結果においては、国が直接審査・処理することとされている許認可等で標準処理期間が設定されている3,602種類のうち580種類(16%)について審査・処理期間の半減化、これを含め、1,380種類(38%)について短期化することとされた。
この見直し結果については、これを評価する。なお、同見直し結果のなかで、半減・短期化のために必要な措置については、原則本年度内に行うこととされているが、その措置を可能な限り速やかに完了し、実効を挙げていくべきである。
また、今後とも、行政手続の簡素化、電子化、ペーパーレス化、ネットワーク化や、許認可等の審査基準の見直し等を通じて、引き続き審査・処理期間の短期化に取り組んでいくべきである。
行政機関が規制の設定又は改廃を行うに当たり、広く国民・事業者に対し案等を公表し、それに対して提出された意見・情報を考慮して意思決定を行うことは、その策定過程の公正の確保と透明性の向上等を図る上で重要である。規制緩和推進3か年計画には、当委員会の審議も踏まえ、この趣旨が盛り込まれている。
政府においては、規制緩和推進3か年計画に基づき、「規制の設定又は改廃に係る意見照会手続(仮称)案」を取りまとめ、当委員会の審議を経て、本年11月5日に公表し、12月10日まで同手続案についての意見・情報を国民等から募った。
政府案に対しては、上記期間中に約40件の意見・情報が国民等から提出されたとのことだが、できる限り早期に、それらの意見・情報についての政府の対応や考え方をまとめて、当委員会に報告することを求める。その上で、できれば新年度からの施行を確実なものとすることとし、少しでも早く新たな手続ルールを閣議決定するよう求める。なお、「意見照会手続」という名称については、仮称であり、当委員会としても、より適切な名称がないか検討していくこととする。
また、決定後は、政府において同手続に従い適切に規制の設定又は改廃が行われるとともに、その実施状況をフォローアップし、必要な場合には、見直しを行っていくべきである。