(1)市街地における未利用・低利用の土地の有効利用促進方策
ア 都市内の建築規制については、土地の有効・高度利用の推進を図るため創設された街並み誘導型地区計画、高層住居誘導地区、機能更新型高度利用地区等の制度が積極的に地方公共団体に活用されるよう、より一層の周知徹底を図るとともに、これらの制度の活用状況を的確に把握し、必要な情報提供に努めるなど制度の運用に関し地方公共団体の活動を支援すべきである。
イ 都心部の高度利用を促進するためには、都心部における関連基盤施設の整備、それに伴う沿道整備と並行して容積率を大幅に緩和することが必要である。こうした観点から、本年4月10日、東京23区について、国及び東京都の協力の下、「都市構造再編プログラム」が策定されたが、今後、このプログラムに基づき街路事業等が積極的に推進され、あわせて沿道の高度利用のための容積率等の緩和が促進されるべきである。また、大阪市を始めとする政令市等の大都市においてもプログラムの策定を推進すべきである。
さらに、低・未利用地の有効利用等を進めることが必要な都心部や臨海部地域等大規模な土地利用転換を図る必要がある地域について、都市基盤施設整備・面的整備・拠点施設整備と土地利用規制に関する大幅な緩和の活用とを総合的・集中的に実施する手法について検討すべきである。
ウ 今後、都心部等の都市内の土地の高度利用を促進していくに当たっては、敷地の集約化・共有化の促進、土地の整形化と一定規模以上の敷地の高度利用が重要である。こうした観点から、敷地の集約化を誘導するような規制緩和(広い街区単位の再開発において容積率の特例措置の適用等)の役割は重要であり、これにより、都心部における住宅の中高層化を早期に実現していくことが重要である。
本年の都市再開発法改正により創設された認定再開発事業制度は、手続簡素化の観点から都市計画手続を不要とした簡便な手続による再開発事業制度であるが、その積極的活用を促進するため、制度の周知徹底を図るとともに、支援措置の情報提供に努めるべきである。あわせて、制度面からの活用促進方策として、更なる支援措置の充実についても検討すべきである。
また、市街地再開発事業の迅速化を図るためには、市街地再開発組合の設立認可、権利変換計画に関する手続の迅速化を図る必要があることから、行政指導等に関する行政手続法(平成5年法律第88号)の趣旨の徹底、組合の設立認可に関する運用改善、権利変換計画に関する運用改善につき地方公共団体により一層の周知徹底を図るべきである。
さらに、市街地再開発事業の一層の促進を図るため、特に現下の経済情勢にあって事業推進の隘路となっている問題を解決する観点から、規制緩和等を図るべきである。
エ 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域においては、建築物に附属する工作物・建築物としての駐車場は原則として600u以下のものに限られているため、規模の大きな開発においては十分な収容能力のある駐車場を付置するため平面駐車場を確保せざるを得ない場合も生じている。
設計の自由度・事業効率性を高め、駐車場付置率を向上させるため、計画的な大規模な開発については上限面積の緩和などを図るべきである。
オ 建築物の機械室等の床面積の割合が著しく大きな場合には、容積率は緩和されることとされているが、共同住宅の建設にインセンティブを与えるとの観点からも、その運用の考え方を明確にすべきである。
カ 公有地の拡大の推進に関する法律(昭和47年法律第66号。以下「公拡法」という。)における届出対象の緩和については、本年9月1日の国土利用計画法改正の施行に合わせて、既に公拡法施行令(昭和47年政令第284号)の一部改正が行われ、一定面積以上の土地取引の届出の面積要件を市街化区域については2,000uから5,000uに、その他都市計画区域については5,000uから10,000uにそれぞれ規制緩和されて、土地取引に係る届出義務が合理化され、届出件数の大幅な削減が図られたところである。
今後は、規制緩和措置後の運用実態・規制緩和の効果を引き続き注視していくとともに、その状況を踏まえつつ、手続の簡素化・迅速化に努めるべきである。
(2)PFI構想の具体化
公共施設等(道路・鉄道・港湾・空港・河川・公園・水道・下水道・工業用水等、庁舎・宿舎等、公営住宅・教育文化施設・産業廃棄物処理施設・医療施設・社会福祉施設・更生保護施設・駐車場・地下街等、情報通信施設・熱供給施設・新エネルギー施設・リサイクル施設・観光施設・研究施設等)の整備及び管理に関しては、国及び地方公共団体と民間事業者との適切な役割分担並びに財政資金の効率的使用の観点を踏まえつつ、当該事業により生じる収益等をもってこれに要する費用を支弁することが可能である等の理由により民間事業者に行わせることが適切なものについては、できる限りその実施を民間事業者に委ねるとの基本理念の下、そのための条件整備を図るべきである。
また、現在、国会で「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の整備等の促進に関する法律案」が審議中であり、その動きを十分に踏まえることが必要である。一方、各事業ごとに民間事業者の参加意向、制度内容も異なることから、民間事業者の意向も踏まえ、各々の事業に適した官民の役割分担・責任分担の在り方、公共施設等の設置・管理に関する法律その他関係法について、個別具体的に検討を行い、その結果として、国民に対して、低廉かつ良好なサービスが提供されることが重要であると考える。さらに、民間事業者に対する情報提供も重要であると考える。
本年7月に(社)経済団体連合会が行った「PFIに関するアンケート調査」によれば、相当数の民間事業者が、PFI事業に対して具体的な事業について検討を行っている。こうした検討が進められ、対象となる事業の内容、当該事業における官民の役割分担・責任分担の内容等が具体化するのに合わせ、当委員会では具体のニーズを踏まえた形で必要な規制緩和措置の検討を更に進める。
なお、現在、PFIを活用した公共施設等の整備を具体的に検討している地方公共団体も一部には見られるところであり、従来の行政財産の保全の観点のみならず、こうした要請にも留意しつつ、今後、行政財産の管理及び処分の在り方についても、検討をする必要があると考える。
(3)今回の建築基準法改正の実施状況(※)
本年6月の建築基準法改正により、住宅居室の日照規制の廃止、採光規制について規制内容の見直し等の改正がなされるとともに、一定の要件を満たす民間機関が建築計画の確認、検査等を行うことを認める制度が創設された。このうち、日照規制の廃止については既に本年6月12日に施行されているが、採光規制については法公布後2年以内、建築確認・検査関係については法公布後1年以内にそれぞれ施行予定であり、現在、政府において、政令改正等必要な作業が行われていることから、引き続き注視する。
今後とも、建築基準法改正による規制緩和の効果をできる限り早期に具体化していくとの観点から、規制緩和推進推進3か年計画の計画事項を引き続き着実に、かつ可能なものについては時期の前倒しを図りつつ、実施していくべきである。また、特に、民間機関が建築計画の確認、検査等を行うことを認める制度については、複数の機関の参入が現実的に認められるよう、また、実質的に参入を阻害するような過重な要件が定められることがないようにすべきである。
(4)水道の水質検査の委託先の公益法人以外への拡大(※)
水道事業者が行う定期及び臨時の水質検査を地方公共団体以外の者に委託する場合は、厚生大臣が指定する者(水質検査を適正に行うことのできる諸条件を備えた公益法人)に委託しなければならない。
水道事業者が水質検査を委託する機関に係る厚生大臣の指定基準については、本年3月の生活環境審議会における結論を踏まえ、本年11月30日、公益法人以外の者でも水道の水質検査の委託機関となることができることを内容とする厚生省告示が公布された。
(5)高速道路空間等を活用した民間事業機会の創出(※)
本年6月に高速自動車国道法(昭和32年法律第79号)が改正され、高速道路空間等を活用した民間事業機会を創出し、高速道路の機能の増進と利便の向上を図るため、既存のインターチェンジの利用可能地に民間企業が利便増進施設を設置することが可能とされた。また、一般道路等に車両が出入りできる構造のものも含め、民間企業が設置する高速自動車国道活用施設の通路等の高速自動車国道への連結が可能とされた(本年9月2日施行)。
これらの措置を評価するとともに、今後、この制度の積極的な活用が図られることを期待する。
(6)ガス導管、地中電線類の埋設深さの見直し(※)
ガス導管、地中電線類の道路の埋設深さの見直しについては、建設省において平成8年4月から埋設物件を浅層化した場合の基本的な安全性について確認するため、車両による繰り返し載荷試験等を実施され、専門家による検討がなされてきたが、本年11月27日、技術的な検討結果が取りまとめられた。
今後、できる限り速やかに、所要の措置を講ずるべきである。
(7)大都市部における大学等の立地規制の見直し(※)
工業(場)等制限法(注)については、規制緩和を実施するための抜本的な見直しを図るため、現在、国土審議会において検討が進められている。首都圏については、本年8月20日の国土審議会首都圏整備特別委員会において首都圏基本計画の調査検討報告書が報告され、その中で、1) 工業系の土地利用を目的とした地域における大規模遊休地の発生への対応並びに既存産業集積の再活性化及びその活用による新規産業の創出育成の視点に立って制度の抜本的な見直し、2) 今後の高等教育機関の在り方を踏まえた緩和、市街地環境の整備・改善や防災性の向上、環境共存型社会の構築に向けての緩和についての検討が指摘された。
近畿圏については、本年8月31日の国土審議会近畿圏整備特別委員会において、計画部会で中小製造業者の集積地域の再活性化、都市環境改善、将来の高等教育機関の在り方等の論点を踏まえ工場等制限制度の抜本的見直しに向けて検討を行っている旨報告し、引き続き検討を進めることとされた。
更に検討を進め、本年度中に規制緩和推進3か年計画に沿った結論を得て、速やかに規制緩和措置を実施すべきである。
(注)首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律(昭和34年法律第17号)及び近畿圏の既成都市区域における工場等の制限に関する法律(昭和39年法律第144号)
(1) NTTの在り方
我が国の電気通信市場における公正有効競争の促進を図るとともに、情報通信のグローバル化に積極的に対応するため、日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律(平成9年法律第98号)により、日本電信電話株式会社(NTT)は再編成され、国際通信業務への進出が実現されることになった。
再編成により、NTTは平成11年12月20日までに、持株会社の下に東西地域会社と長距離会社に分割されることになった。持株会社は、地域会社の株式の総数を保有し、株主権を行使することにより、地域会社の提供する電気通信役務の安定的な提供の確保を図るとともに、基盤となる電気通信技術に関する研究を推進することとされ、地域会社(東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社)は、地域電気通信事業を経営し、あまねく日本全国における電話の確保に寄与する特殊会社とされている。長距離会社は、民間会社とし、新たに国際通信にも進出し得るものとされた。なお、長距離会社の株式は、当分の間、持株会社が総数を保有するものとされている。持株会社及び地域会社については、基本的には現行のNTTに準ずる特殊会社規制を行うが、地域会社の役員選任・解任、利益処分については非規制とされ、持株会社及び地域会社の附帯業務についても非規制(現行は届出制)とする規制緩和が行われる。
ア 東西地域会社間における実質的な競争の促進
NTTの経営形態の再編成に当たっては、長距離、地域の双方を含む電気通信分野全体について、公正かつ有効な競争を促進していくことが極めて重要である。NTT再編で、地域会社を東西に分割する目的は、第一に、分割当初から両社間で少なくとも間接競争が行われ、将来的には両社がお互いの業務区域に相互参入しあうことにより、地域通信市場における独占状態を解消することにある。同時に、究極的な目的として、独占状態の解消の度合いに応じて現在NTTだけに適用されている規制(非対称規制)を撤廃し、将来的にはNTTを完全民営化することにより自由な経営を保障することにある。
しかし、依然としてNTTによる独占状況が続いている地域通信分野においては、特殊会社である再編後の東西の両地域会社が、持株会社の下で一体的に経営される懸念を拭いきることができない。
したがって、NTTの東西地域会社間における競争の促進状況について、十分注視し、必要に応じ人的を始めとするファイアウォールの設置その他の手段により実質的な競争を実現するための有効な措置を講じていくべきである。このため、当委員会としては、NTT再編成後の状況について、引き続き厳しく監視していく。
イ NTTの各東西地域会社とNTTドコモの間で競争の促進
CATV、地域系NCC(地域系新電電)の普及率は現段階において依然として低い一方で、携帯電話の加入者は4000万を超えるなど急激に伸びている。地域網における直接競争を図るためには、NTT東西地域会社間相互だけでなく、NTTドコモ(NTT移動体通信網株式会社)とNTT東西地域会社との間の競争の促進を図る必要がある。
したがって、NTTの保有に係るNTTドコモの株式は、東西地域会社ではなくNTT持株会社が保有することとすべきである。また、今後、NTTドコモに対するNTT持株会社の出資比率を、NTTドコモとNTT東西地域会社との間で競争が促進する程度まで更に低下させるべきである。
さらに、NCCとの公正有効な競争を促進していく観点から、他社との接続の円滑化を図る必要が生じた場合には、NTTの固定電話を指定電気通信設備として指定したのと同様の考えで、その接続の在り方を早急に検討すべきである。
ウ ユニバーサル・サービスの在り方
現在、NTTは、現行の日本電信電話株式会社法(昭和59年法律第85号)第2条における「会社は(中略)国民生活に不可欠な電話の役務を適切な条件で公平に提供することにより、当該役務のあまねく日本全国における安定的な供給の確保に寄与すること」との規定により、ユニバーサル・サービスの責務を負っている。今後、競争が進展する中でユニバーサル・サービスをいかに確保するかという観点から、地域通信市場の競争の進展状況を踏まえ、事業者間の競争に影響を与えず、透明な手続、基準により管理・運営される制度の在り方を検討する必要性がある。
このユニバーサル・サービスの問題については、地域通信市場における公正有効な競争が実現されていく状況を見つつ、その責務の維持の可否を含めた在り方の検討を行うべきであり、当委員会としてもその検討について注視していく。
エ 光ファイバの敷設主体、スケジュール等の問題
光ファイバ網は我が国の経済活動に不可欠になることが予想され、経済の持続的発展と国民生活の質の向上及び地域間の情報格差の是正に大きく資するものであり、早期に全国的整備を図ることが重要である。
また、地域通信網においては、NTTが独占的状況にあり、将来における公正な競争環境を整備する観点から、光ファイバの敷設主体の多様化を図るべきである。
(2)「マスメディア集中排除原則」の今日的な在り方
いわゆるマスメディア集中排除原則は、「放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにする」(放送法(昭和25年法律第132号)第2条の2第2項第1号)ための基準として定められている。これは一の者が複数の放送事業者を支配することを原則として制限しており、「支配」とは、次のいずれかの場合をいう。
1) 10分の1を超える議決権の保有(放送対象地域が重複する場合)
2) 5分の1以上の議決権の保有(放送対象地域が重複しない場合)
3) 3分の1以上の議決権の保有(CS放送及びBSデジタル放送の場合)
4) 5分の1を超える役員の兼務(監査役等を除く)
5) 代表役員又は常勤役員の兼務(監査役等を除く)
衛星デジタル放送については、CSデジタル放送について平成8年2月及び平成10年3月にマスメディア集中排除原則の見直しを行い、委託放送業務のみを行う者の場合4中継器相当分までの保有を認めることとされた。それとともに、CSデジタル放送については平成10年3月、BSデジタル放送については平成10年6月、それぞれ出資比率に係る支配の基準を3分の1とする見直しが行われた。
放送メディアはデジタル化を契機に変革期を迎えており、今後の動向を注視しながら、必要に応じマスメディア集中排除原則の更なる見直しを検討する必要がある。
特に、地上デジタル放送については、2000年(平成12年)以降開始される予定であるが、視聴者がデジタル技術を活かした多彩なサービスを享受できるようにするとともに、デジタル音声放送の普及を図る観点から、地上デジタル放送のメディア特性、放送メディア間の整合性を十分勘案しつつ、地上デジタル放送に係るマスメディア集中排除原則の運用の在り方について検討すべきである。
(3)行政の情報化の推進(各種申請の電子化、オンライン化、ネットワーク化)(※)
インターネットの急速な普及、電子商取引の実用化の動きなど、情報化の進展をめぐる動きは急速であり、また、情報通信技術を活用した行政サービスの向上への要請は一層強くなっている。とりわけ、書類の電子データによる保存、申告・申請手続の電子化、ペーパーレス化については、国民負担の軽減、事務処理の効率化の観点から、その積極的な推進が求められている。
これらに対する政府の対応としては、「行政情報化推進基本計画」に基づき平成7年度から行政の情報化が総合的・計画的に推進されてきており、その後の諸情勢の大きな変化を踏まえ、平成9年12月20日に、10年度を初年度とする新たな計画として改定されている。この改定計画に基づき、各種行政手続の電子化に関し、次の事項を実施することとされている。
1) 申請・届出手続に係る国民負担を軽減するため、行政機関に対する国民等からの各種手続について、原則として平成10年度末までに可能なものから早期に電子化(フロッピイ・ディスク等による申請、オンライン申請)する。電子化に当たっては、申請地制限の緩和、アクセス・ポイントの拡大などの利便性の向上を図る。また、電子文書の原本性、申請者の認証、手数料の納付方法等の課題の解決を要する手続については、早期に課題解決を図りオンライン化を実施する。
2) 各家庭や企業のパソコン又は身近な場所で各種の行政サービスを受けることができるようにする「ワンストップ・サービス」を制度的・技術的課題の解決を図りつつ段階的に実施する。
3) 電子商取引の実現の動き等国内外の情報化の進展に対応した調達手続、歳入・歳出に係る手続の電子化を行うなど、民間部門と整合性の取れた情報化を推進する。
また、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(平成7年2月21日高度情報通信社会推進本部決定。平成10年11月9日新たな基本方針として改定)において、情報通信の高度化のための諸制度の見直しとして進められている申告・申請の電子化、ペーパーレス化、書類の電子データによる保存についても、引き続き推進することとされている。
さらに、規制緩和推進3か年計画においては、多岐にわたる行政分野に係る102項目に関して、各種申請手続の電子化、書類の電子データによる保存を取り上げ、具体化を進めている。
申告・申請手続の電子化、ペーパーレス化、書類の電子データによる保存については、行政手続に要する国民負担の軽減、事務処理の効率化の観点から、上記に掲げた諸施策を今後も更に積極的に推進すべきである。
特に、今後、ワンストップ・サービスの実施に向けて、各種行政手続について、早急にインターネット・ホームページを活用し申請等様式を提供するとともに、手続自体のオンライン化を一層推進すべきである。また、各省庁、地方公共団体等公的部門を通ずる総合的、横断的なネットワークの構築を進め、手続の一体的、効率的な処理を推進すべきである。
(1)自動車運転免許証の有効期間の延長(※)
自動車運転免許証の有効期間は、通常は3年であるが、更新日に70歳未満の優良運転者については5年(70歳の者については4年、71歳以上の者については3年)とされている。これに関し、規制緩和推進3か年計画では、自動車運転免許証の有効期間の延長及び更新手続の一層の簡素化について、交通安全の確保に配慮しつつ、平成12年5月末に方向を明確化することとされ、現在、警察庁において調査・検討が行われている。
運転免許の区分及び運転免許証の更新制度は国によって様々であり、免許証の有効期間を我が国より短く設定している国がある一方で、免許の種類によっては一定年齢まで更新なしで有効という制度を採っている国も存在する。警察庁においては、この一定年齢まで更新なしで有効という制度も、有効期間の延長についての調査・検討の中で、十分審議すべきである。
これらの検討は規制緩和推進3か年計画に則り、平成12年5月末までに方向を明確化すべきであるが、更新手続の簡素化方策のうち早期に実施が可能なものについては、できるだけ速やかに所要の措置を講ずるべきである。
(2)自動車検査証の有効期間の延長(※)
自動車検査証の有効期間は、トラック、バス、タクシーについては1年、定員10人以下の自家用乗用自動車については2年(ただし、新規検査の場合は3年)となっている。これに関しては、規制緩和推進3か年計画に基づき、延長の車種、期間等について、運輸技術審議会で審議の上、10年度に具体的な結論を得て、所要の措置を講じることとされている。
運輸省は平成10年6月、運輸技術審議会に対し、「安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方について」諮問し、その中で自動車検査証の有効期間の延長についても審議され、平成10年12月10日、車両総重量8トン未満のトラック及び乗用車のレンタカーについては初回のみ現行の1年を2年に延長する旨の答申が出されたところである。
本答申を受け、速やかにその実施に必要な措置を採るべきである。現時点における自動車検査証の有効期間の延長としてはやむを得ないものと考えるが、今後とも、点検・整備に対する自己管理責任の醸成を図りつつ、自動車技術の進歩等に応じて、自動車検査証の有効期間について見直すべきである。
(3)トラック事業規制の緩和(運賃・料金規制など)
トラック事業の運賃・料金は、現在、事前届出制となっており、運輸大臣は一定の場合に変更命令を発することができる。これに関し、規制緩和推進3か年計画では、平成10年度内に原価計算書の添付を不要とする範囲を上下20%に拡大するとともに、より自由な運賃・料金規制にする方向で検討することとされている。
どのようなサービスをどのような運賃・料金で提供するかは、事業者の経営戦略の中核をなす事項であり、政府の規制は極力排除すべきである。また、利用者は、提供されるサービスとその料金水準を勘案した上で、自己責任で事業者を選択すべきである。
したがって、上記の考え方を踏まえて、原価計算書の添付の廃止、事後届出制その他のより自由な運賃・料金規制にする方向で検討し、平成11年度内にその検討結果を得るべきである。
(4)倉庫業の参入規制及び料金規制の見直し
倉庫業への参入は許可制であり、主たる許可基準は構造・設備が一定の基準に適合していることである。また、料金については、事前届出制であり、一定の場合には運輸大臣は変更命令を発することができる。
倉庫の保管の安全については、倉庫業者の経営の根幹にかかわることであり、事業者自らが確保すべきものである。また、利用者は、自己責任により、倉庫を選択すべきである。
したがって、参入の許可制については、政府の規制を最小限にする方向で検討し、できるだけ速やかに結論を得るべきである。
また、料金設定は倉庫業者の経営戦略の中核をなす事項であり、政府の規制は極力排除すべきである。利用者は、提供されるサービスとその料金水準を勘案した上で、自己責任で事業者を選択すべきである。
したがって、原価計算書の添付の廃止、事後届出制その他のより自由な料金規制にする方向で検討し、できるだけ速やかに結論を得るべきである。
(5)高速度混合交通における最高速度規制の整合化
高速道路における最高速度は、現在、普通自動車、大型自動車(バス等)については100km/h、軽自動車、大型自動車(トラック等)、自動二輪車については80km/hとなっている。
最高速度はそれぞれの自動車の走行特性を勘案して定められているところであるが、速度の異なる自動車が混合して走行することは、速度が同じ自動車が走行することと比較して、危険度が高い。したがって、最高速度を上げることと最高速度を整合化することとの安全確保上のバランスを見極めた上で措置することが必要である。
警察庁においては、現在、軽自動車と自動二輪車について、最高速度を100km/hとするか否かについて調査・検討しているが、平成11年度中を目途に検討を終え、特段の問題がなければ、速やかに所要の措置を講ずるべきである。
(6)自動車登録関連手続の見直し
ア 自動車登録
道路運送車両法(昭和26年法律第185号)により、自動車は登録を受けたものでなければ運行の用に供してはならず、また、自動車には自動車登録番号標(ナンバープレート)を取り付けた上、封印の取付けを受けなければならないこととされている。
封印制度は、ナンバープレートの付替え等を防止し、自動車とナンバープレートの一体性を担保することによる環境・安全基準適合の担保や犯罪捜査への活用が目的とされており、一体性を確実に担保するため、封印は国の委託を受けた者から取付けを受けなければならないこととされている。しかし、封印の委託はその業務範囲を限定して行われているため、登録手続が煩雑になっているところがある。
したがって、登録手続を簡素化・迅速化し国民負担を軽減する観点から、業務の範囲を限定して委託している封印の取付け業務の委託範囲の拡大等について、関係者の意見を踏まえつつ検討し、できるだけ速やかにその結論を得るべきである。
また、例えば、ディーラーと陸運支局(自動車検査登録事務所)との間の登録申請書の電子化を行うなど、登録手続の簡素化、負担軽減のための方策を検討すべきである。
イ 保管場所証明
自動車の登録に当たっては、保管場所証明書の提出が求められている。保管場所証明書は、申請に基づき所轄の警察署長から交付を受けることとされており、申請から交付までに3日程度掛かっている。また、保管場所証明書の申請・受領は、所轄の警察署に出向いて行わなければならず、郵送による申請・受領は認められていない。
国民負担を軽減する観点から、郵送による証明書の申請や受領も認めること等を検討すべきである。また、例えば、自動車の買換え時において従前の保管場所標章番号の申告があった場合等には保管場所証明の申請書の添付書類を削減するなど、申請に係る手続を簡素化すべきである。
(1)電力供給システムの見直しと競争の促進
電力は、国民生活や産業活動に不可欠な財であるが、自然独占性を有する財であるとされ、その安定供給を確保するため、戦後長期にわたり9電力会社(昭和47年以降は10電力会社)による地域独占とされてきた。この結果、我が国の電力供給は確かに諸外国に比して高い供給安定性を実現してきたが、その一方で、電力コストが割高であるとの指摘も絶えなかった。
こうした中で、平成7年の電気事業法(昭和40年法律第170号)の改正は、それにより導入された入札制度が一定の効果を挙げているなど、高コスト構造是正のために、電気事業に競争原理を導入しようとした試みとして評価できる。しかしながら、その内容は漸進的なものであり、当初、既存電力会社と顧客を奪い合うことが期待された特定電気事業については、今日にいたるまで2件の事例を見るにとどまっているなど、十分な成果を挙げていない。当委員会としては、昨年の行政改革委員会最終意見が指摘したように、21世紀を見据えた抜本的な構造改革を進めるべきとの認識の下、電気事業についても、競争的な産業体制への移行を目指すための取組を大胆に進めるべきと考える。
昨年以来の通商産業省における検討は、こうした問題意識に立脚し、平成7年の電気事業法改正で芽生えた競争の芽を更に伸ばすべくなされているものとして評価できる。具体的には、卸発電市場については、原則としてすべての火力電源を対象とした火力電源開発分野における全面的な競争入札制度を特段の状況の変化がない限り平成11年度から新たに導入することが決まっているが、電力供給システムについても、本年5月には、当面進めるべき自由化の方針が取りまとめられ、これまで事実上10電力会社が独占してきた電力小売事業について、部分的にではあるが自由化を進めていくことが明らかにされた。
このような動きは、電気事業の効率化を、厳正な料金査定や行政指導といった方法によって達成しようとするのではなく、競争を導入することによって、すなわち市場の力で達成させようというものであり、電力小売事業について自由化を進めるという検討の方向性自体については評価する。
電力供給システムの見直しに係る具体的な論点についての当委員会の意見は以下のとおりである。
ア 参入規制
電力供給システムの見直しに当たっては、まず、現在の参入規制を可能な限り幅広く見直し、自由化対象需要家に対する供給については、事業者の参入規制を廃止し、かつ、既存事業者については自由化部分と非自由化部分との区分経理を義務付けることが必要である。
これらの点について、通商産業省では、自由化対象需要家については原則として特別高圧需要家(電気の使用規模2千kW以上で、2万V特別高圧系統以上で受電する需要家)とすること、自由化部分については原則として規制なし(供給義務なし、料金規制なし)とすること、及び、自由化部分と非自由化部分との内部補助防止のため、規制部門の料金チェックと実績値を元にした部門別の収支(区分経理)確認を行うことを骨格とする制度設計を行うことを既に明らかにしている。
これらは、新規参入者にとって参入するに値する魅力のある電力小売市場を開放するとともに、既存電力会社との間で有効かつ公正な競争を確保するために必要な事項であり、今後、通商産業省において、既に示された方針に基づき、早急に関係法制度の改正を行うべきである。
イ 託送制度
託送制度の整備は、電力小売市場の部分自由化に際して、送電設備について既存電力会社が設備を独占している現状においては、事実上、新規参入者の参入に当たって必要不可欠な条件となるものである。このため、一般電気事業者による託送の受入れが必要である。また、託送料金については、すべての送電線利用者にとって公平なものであり、かつ、その算定根拠が明示されることが重要である。
これらの点については、通商産業省において、託送条件については、一般電気事業者が自ら明らかにすることとし、その中で、1) 託送コストの公正回収原則と、2) 事業者間の公平の原則に基づくこととすることを既に明らかにしている。
当委員会としては、こうした方向性をおおむね妥当なものと考えるが、今後、更なる託送ルールの具体化がなされるべきと考える。特に、託送条件が、新規参入者同士はもとより、既存電力会社と新規参入者の間でも同一の条件となるよう、電力会社が振替供給約款として定める託送応諾条件が当該電力会社自らに対しても実質的に適用されるものとなることが重要である。このため、今後の制度設計に当たっては、この点について配慮すべきである。
ウ 新規参入者に対する扱い及び自由化の範囲の拡大等に関する今後の検討
以上のほか、新規参入者の電力小売市場への参入を容易にし、かつ、新規参入者と既存電力会社との間の実質的な有効競争条件を確保するとの観点から、新規参入者については設備規制を課さないこと、既存電力会社に対して最終的な供給責任を課すこと、一般電気事業者相互の競争についてもこれを促進するための措置を採るべきである。
これらの点については、通商産業省は、新規参入者の供給責任は需要家がチェックし参入規制は行わないこと、供給者との間の交渉が整わない需要家に対しては、区域の電力会社が行政に届け出た料金(最終保障約款)により供給義務をもって対応すること、供給区域外の電力会社も新規参入事業者として供給可能とすることを明らかにしており、また、電力各社も、定期検査及び事故時のバックアップ料金についてのメニューを自主的に公表することとしている。このほか、非自由化部分の料金についても、現行の総括原価制度を維持しつつ、料金改定手続の簡素化等により事業者の効率化意欲を高めることを骨格とする制度改正に着手することとしている。
一方、当委員会としては、規制緩和を進める観点からは、中長期的に、今回の検討において自由化の対象とならなかった部分についても、将来においてこれを自由化するとの方向性を明確にし、具体的なステップを含んだプログラムを明らかにすべきと考える。これについては、通商産業省は、制度開始後おおむね3年後に、今回の自由化について客観的に検証した上で、部分自由化の範囲拡大、全面自由化及びプール市場の創設について検討するというスケジュールを明示している。
したがって、通商産業省においては、電力産業の効率化や対需要家サービス向上を推進していくために、規制緩和という観点に加えて、公益的課題との両立を前提に、電力供給システムに最大限の競争を導入していくことが必要であるとの観点を十分に踏まえつつ、自由化の範囲の拡大等についての上記の検討を行うべきである。
(2)ガス事業における競争の更なる導入
ガス事業においては、平成7年のガス事業法(昭和29年法律第51号)の改正により、電力に先駆けていち早く大口供給の自由化を行うなど、これまでも積極的に規制緩和に取り組んできた。しかしながら、我が国のガス料金は、依然諸外国に比して割高との指摘があるほか、国内においてもガス会社相互の間に大きな価格差が存在する等、なお一層高コスト構造是正のための取組を進める必要がある。その際の視点としては、電力と同じように、規制緩和を進めることにより、競争をより広い範囲に導入し、市場の力によって事業者の自主的な効率化を求めていくことを基軸とすべきである。
ア 大口供給の範囲の拡大・託送の活性化
行政改革委員会は、昨年12月の最終意見で、大口ガス供給の自由化について、「一層の緩和が行われないと期待される成果は得られない」ものの事例の一つとして指摘し、「参入の可能性を拡大する方向で」見直しを行うべきとした。通商産業省においても、こうした指摘を踏まえ、検討を行ってきたが、本年9月の取りまとめでは、本件について、「今後、大口供給規制の緩和について検討を深めるべき」とするにとどまっており、大口供給の範囲の拡大については明確な方向性を打ち出すに至っていない。
当委員会としては、既に先の論点公開において指摘したように、大口供給の範囲については、需要家側の選択機会の拡大やガス事業者側の経営効率化促進等の観点から、これを大幅に拡大すべきと考える。実際に、大口供給の自由化については、既に制度導入から約3年を経ており、実例も相当程度出ている状況にあることから、今後更に大口ガス供給市場を活性化していくためには、制度導入当初の基準である年間使用量200万m3以上という基準について大幅な引下げを図り、これにより自由化の対象となる市場の拡大を図るべきである。その際、社会的な情報開示へのニーズが高まってきている中で、需要家ニーズの観点、他のエネルギー源との公平な競争環境の整備の観点を踏まえ、大口供給に係る情報開示についても、その内容や在り方について検討を深めるべきである。
また、大口ガス供給市場の拡大に関連して、公正な競争条件の確保及び競争促進の観点から、大口ガス供給事業者が、既存ガス事業者のガス導管の活用をより容易に行うことができるようにすることが必要である。この点については、既にガス託送要領を作成・公表している大手3社にあっては託送契約の成立可能性を高めるべく基本的情報の開示を更に進める一方で、大口供給を行っているその他の社においても、ガス託送要領の作成・公表に積極的に努めるなど、託送契約の成立可能性を高める措置を講ずるべきである。
イ 一般ガス事業以外のガス体エネルギー
ガス体エネルギー全体について効率化を求めていくに当たっては、一般ガス事業だけでなく、簡易ガス事業や、LPガス販売事業についても規制緩和を進め、相互の競争を促進していくことが必要である。
このうち、簡易ガス事業は、主として家庭用ガス需要を対象として、団地等のある程度まとまった供給地点群に対し、ガスボンベにより発生させたガスを導管により供給する事業として昭和45年に創設されたものである。簡易ガス事業については、この業態が本来持つ機動性・需要即応性を活かし、特に都市周辺部において、一般ガス事業者の競争者としての機能を更に強化していくことにより、一般ガス事業及び簡易ガス事業の双方について効率化への取組を一層強化させることが重要である。このためには、特に、一般ガス事業の供給区域内において新たに簡易ガス事業を行おうとする場合において、過剰投資の排除等の観点から現在行われている地方ガス事業調整協議会での調整について、需要家選択を最優先するとの観点から、廃止を含めて簡素化に向けての見直しを行うべきである。
また、LPガス販売事業についても、簡易ガス事業と同様、特に都市周辺部において一般ガス事業や簡易ガス事業の競争者としての機能を更に強化していくことにより、ガス体エネルギー全体としての効率化が一層進展するよう措置していくことが必要であり、こうした観点から、特に、平成8年の関連法改正によって可能となった家庭用向けのバルク供給を活用した物流面での効率化が一層進展するよう、関係する保安規制について、保安の確保を前提に、見直しを行い、合理化を図るべきである。
(1)CP(コマーシャル・ペーパー)のペーパーレス化
CP(コマーシャル・ペーパー)とは、企業が短期資金調達のためオープン市場で発行する無担保の証券であり、日本においては昭和62年にCP市場が創設された。その法的性格は、手形法(昭和7年法律第20号)上の「約束手形」とされ、また、証券取引法(昭和23年法律第25号)上の「有価証券」とされている。
CPの流通については、投資家間等での権利移転に物理的な券面の交付が必要であるため、デリバリーの時間、手間やリスクが発生し、効率的な決済が阻害されているとの指摘がある。また、CPの発行に際しても、物理的に約束手形の券面を作成する必要があるため、発行企業は発行の都度その作成事務を行うことになり、円滑な短期の資金調達にとっては使い勝手が悪いとの指摘がある。
したがって、CPが日本の短期金融市場において重要な役割を果たし、企業の円滑な資金調達に一層資するよう、関係する省庁は、券面を必要としないCPの発行、移転、償還等の在り方について、「CPのペーパーレス化」を実現するための立法措置を含め、関係者の参加を得つつ、早期に検討を開始すべきである。
(2)店頭登録市場の活性化方策
株式店頭市場は、証券取引所に未上場の中堅・中小企業の資金調達の場であり、証券取引法上の認可を受けた自主規制機関である日本証券業協会が運営している。
近年、株式店頭市場の低迷が続いているが、これは、日本経済及び株式市場全体が低迷していること、市場に供給される株式数が少ないこと、相対的に流動性の低い流通市場を投資家が嫌う傾向があることのほかに、本格的なマーケット・メーカー制度(注)が導入されていないことの影響があるとの指摘がなされている。
しかし、ベンチャー企業など21世紀を担う成長企業に対する円滑な資金供給のため、株式店頭市場は極めて重要である。このため、市場の流動性を高めて株式店頭市場を活性化する観点から、同市場に本格的なマーケット・メーカー制度を導入すべきである。あわせて、貸株制度の整備等、株式店頭市場に係るインフラ整備を行うべきである。
これらの点に関しては、去る12月1日、日本証券業協会の規則改正により措置されたところであり、これにより株式店頭市場の活性化が実現することが期待される。ただし、マーケット・メーカー制度については、マーケット・メークの対象銘柄が限定的となっている等、段階的な導入となっていることから、上記措置を早い段階で見直し、引き続き改善を進めていくべきである。また、株式店頭市場の活性化の観点から、いわゆる「公開前規制」の見直しも早期に検討を開始すべきである。
なお、株式店頭市場を活性化させるためには、証券業協会の業務をより効率的かつ適切に運営し、また、様々な意見を弾力的に取り入れていくとの観点も必要であると考えられる。日本証券業協会においては、証券業界以外の市場参加者、有識者等の意見を株式店頭市場の運営に適切に反映させるための具体的措置について、早期に検討すべきである。
(注)証券会社が、自己の勘定に基づき常時売り買い気配を提示し、投資家等の相手方と相対で交渉し売買を成立させる(マーケット・メーク)による取引制度をマーケット・メーカー制度と言う。
(3)私募債市場における適格機関投資家の範囲の拡大
証券取引法上では、「募集」を「多数(50名以上)の者を相手方として新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘を行うこと」と定義した上で、募集に該当しないもの(私募)の一つとして、適格機関投資家のみを相手として勧誘を行う場合で、有価証券がこれらの者以外の者に譲渡されるおそれが少ないものを規定している。適格機関投資家とは、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として大蔵省令で定める者」と定義されており(同法第2条第3項第1号)、現行の省令では金融機関を業態ごと(銀行、証券会社、保険会社等)に列挙している。
このように、現在、一般事業法人が適格機関投資家として認められていないため、これらの者の私募債市場への参入は極めて限定的となっている。しかし、一般事業法人の中には「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」としての能力を有するものもあり、適格機関投資家の範囲をこれらの者に拡大することにより、私募債の購入層が厚みを増し、私募債市場のみならず社債市場全体の拡大に資することも期待できると考えられる。また、個々の企業の特性・事情に合った社債商品の設計も可能となろう。このような私募債市場の拡大の結果、企業はより低コストで資金調達ができるようになると考えられる。
したがって、適格機関投資家の範囲を「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者」と認められるような一般事業法人にまで拡大することにつき、その拡大範囲について本年度中に結論を出し、早期に実施すべきである。
(4)社債発行登録制度の適用の拡大
国内で株式や債券を募集する際には、証券取引法の規定により原則として有価証券届出書の提出が義務付けられているが、一定の条件を満たす企業については、発行登録制度を利用したディスクロージャーが認められている。これは、発行登録書を提出することにより、登録後1年又は2年にわたり、有価証券届出書を提出することなく、追加的な書類を提出するだけで募集を行うことができるものである。この制度を利用できる企業は、有価証券報告書を1年間継続して提出しており、かつその企業情報が「既に公衆に広範に提供されているもの」として一定の要件を満たす者となっている。また、現行では、この「既に公衆に広範に提供されているもの」の要件は、株式を証券取引所に上場又は店頭株式市場に登録している企業であること等となっている。
しかし、未上場、未登録の企業であっても、有価証券報告書を毎年継続して提出したり、経営情報を積極的に開示するなどしている企業の中には、「既に公衆に広範に提供されているもの」の条件を満たす者もあると考えられるにもかかわらず、現行では、このような企業は発行登録制度を利用できず、機動的な資金調達が行えない状況にある。
企業の市場からの機動的な資金調達に資するため、このような企業に対しても発行登録制度の適用を拡大する方向で検討を行い、早期に実施すべきである。
(5)厚生年金基金及び国民年金基金の自家運用に係る資金規模規制の撤廃及び運用対象資産の在り方
厚生年金基金及び国民年金基金については、現在、その資産規模が500億円以上のものについてのみ自家運用が認められている。また、自家運用の運用対象は、債券、預金等の元本保証資産に限定されている。
しかし、資産規模規制については、資産規模にかかわらず運用体制が整備されている基金が出てきていることを踏まえれば、このような基金の自己責任原則に基づく効率的な運用を妨げるおそれがある。
したがって、資産規模規制は、早期に撤廃すべきである。
また、運用対象規制については、運用対象のリスクに応じた運用管理体制が整備されている基金に対しては、基金のポートフォリオ全体での効率的かつ安全な資産運用を妨げるおそれがある。
したがって、運用対象規制については、資金の性格を踏まえつつ、債券、預金等以外の資産についても運用対象とすべきである。
(6)保険商品の認可制の届出制への移行
保険商品については、原則認可制、一部届出制となっている。届出制は、契約者の保護に欠けるおそれが少ないものについて適用されており、その範囲は順次拡大されてきている。また、規制緩和推進3か年計画において、「企業向け保険については原則届出制への移行について、また、家計向け保険についても、契約者保護に十分留意しつつ、原則届出制への移行について検討を行う」とされたところである。
しかし、金融分野における約款の内容の規制は、商品性の規制にほかならず、保険について言えば、保険契約者の保護は、商品内容の規制ではなく、業者にその説明義務を課すなどの他の方法で行われるべきものである。
したがって、届出制の対象となる保険商品の範囲を大幅に拡大すべきである。すなわち、情報力・交渉力が比較的高いと考えられる、企業や年金基金等に対する保険については、早期の届出制への移行に向けて、また、家計向け保険については、契約者保護の枠組みの整備状況を勘案しつつ、原則届出制への移行について、検討を進めるべきである。また、将来的には、一層の自由化を図っていくことが必要であると考える。
なお、契約者の様々なニーズの出現に対応する観点から、認可及び届出については、行政手続法の規定に沿った運用を厳格に行い、審査期間の一層の短縮に努めるべきである。
(7)銀行等による保険商品の販売
保険募集を行う者は、生命保険募集人、損害保険代理店等に限定されており、銀行等は保険商品の販売(保険募集)ができない。また、規制緩和推進3か年計画において、「銀行等による保険商品の販売について、弊害防止措置等を講じた上で、住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険について2001年を目処に認めることが適当であるとの保険審議会報告を踏まえ、所要の措置を講ずる」等とされたところである。
しかし、銀行等による保険商品の販売が早期にかつ幅広く認められないと、販売チャネルの多様化、効率化や、契約者のワンストップ・ショッピングのニーズにも対応できない。
したがって、弊害防止措置等を講じた上で、住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険については、遅くとも2001年までには、銀行等による販売を認めるべきである。また、それ以外の保険商品についても早期に銀行等による販売の対象とすること、並びに住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険については、銀行等の販売はその銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことを検討すべきである。
(8)銀行・証券・信託の業態別子会社の業務範囲に係る残余の制限の撤廃(※)
銀行・証券会社及び信託銀行は、子会社を通じて銀行・証券・信託業務に相互に参入できるが、これらの業態別子会社の業務範囲については、証券子会社においては株式の流通・発行業務を、信託子会社においては年金信託・合同運用指定金銭信託を扱ってはならないとの制限が残っている。金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成10年法律第107号。以下「金融システム改革法」という。)により、これらの残余の制限については、平成11年10月1日から平成12年3月31日までの範囲内において政令で定める日に撤廃することとされたことを評価する。
これらの残余の制限を撤廃することにより、これらの業態相互の幅広い参入の一層の促進を通じ、利用者が金融市場において様々な質の高いサービスを受けられるようになると期待される。
したがって、銀行・証券・信託の業態別子会社の業務範囲に係るこれらの残余の制限の撤廃を、上記の予定にしたがってできるだけ早期に実施すべきである。
(9)証券会社の免許制の原則登録制への移行(※)
証券業は、証券取引法及び外国証券業者に関する法律(昭和46年法律第5号)に基づき、従前、免許制とされていたが、金融システム改革法が本年12月1日に施行されたことにより、原則登録制となったことを評価する。
これにより、証券業への幅広い参入が可能となり、利用者がそのニーズにしたがって様々な証券会社の提供する多様なサービスの選択ができるようになると期待される。
(10)証券投資信託委託会社の免許制の認可制への移行(※)
証券投資信託委託業は、証券投資信託法(昭和26年法律第198号)に基づき、従前、免許制とされていたが、金融システム改革法が本年12月1日に施行されたことにより、認可制となったことを評価する。
これにより、証券投資信託委託業への参入が拡大され、利用者がそのニーズにしたがってより多様な商品の選択ができるようになると期待される。
(11)会社型投信の導入及び私募投信の導入(※)
我が国では、会社組織を利用した投資信託(いわゆる会社型投信)のための制度が整備されていなかったが、金融システム改革法が本年12月1日に施行されたことにより、証券投資法人(注)の制度が導入されたことを評価する。
会社型投信の導入により、投資信託商品の多様化、商品設計の自由化が可能となり、個人投資家等が多様化するニーズに応じたより有利な資産運用ができるようになると期待される。
証券投資信託法においては、私募投信(その受益権を特定又は少数の者に取得させることを目的とした投資信託)が定義上認められていなかったが、金融システム改革法が本年12月1日に施行されたことにより、私募投信が証券投資信託として位置付けられたことを評価する。
私募投信の導入により、投資信託商品の多様化、商品設計の自由化が可能となり、個人投資家等が多様化するニーズに応じたより有利な資産運用ができるようになると期待される。
(注)投資家から出資の形で集められた資金をもってファンドを組成し、これを運用会社を通じて主として有価証券に対する投資として運用することにより、その収益を投資家に分配することを目的とする法人。
(12)貸株市場の整備のための取引ルールの明確化(※)
貸株制度(株式を保有していない場合でも、株式を借りることにより取引を行うことができる仕組み)については、個人投資家を主たる対象とした信用取引の運営を念頭に置いた、証券金融会社による貸借取引を中心として行われていたが、日本証券業協会の理事会決議により、本年12月1日から一般的な貸株市場の整備のための取引ルールが明確化されたことを評価する。
これにより、長期的な株券の貸手である機関投資家等の貸株市場への本格的参入が可能となり、機関投資家等の保有株式運用のニーズに対応するとともに、株式店頭市場におけるマーケット・メーカー制度の実効性確保にも資することが期待される。
(1)農産物検査の在り方
米穀の生産者は、その生産した米穀を、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号。以下「食糧法」という。)の計画出荷米(注)として売り渡す場合等には、その売渡しのとき等に国の検査を受けなければならないこととされている。
農産物検査については、行政改革会議最終報告において、「積極的に民営化、民間移譲を検討する必要がある」とされたため、食糧庁は、民営化の検討に当たっては、1) 検査の公正・公平性の確保、2) 消費者利益の擁護、3) 採算性等の視点を踏まえて検討を行っているが、民営化の方向性・内容によっては、規制緩和が行われない可能性があり、農産物検査の実施業務の民営化検討会(食糧庁長官の検討会)の中間取りまとめ(平成10年6月29日)についても、そのような懸念を抱かざるを得ない内容となっている。
当委員会は、中間取りまとめが課題とした事項のうち、特に、検査の公正性の確保(資格制度の必要性の有無等)、自主流通米の受検義務(同義務の継続の可否)、検査手数料の扱い(民営化後の在り方)について検討し、民営化の方向は、極力、産地や流通業者による品質保証、市場原理の導入という観点から行われるよう、現在の規制の見直しを食糧庁に求めてきた。
これに対し、食糧庁からは、米は、流通段階では産地・品種(銘柄)、産年等が外見から判断できない中で、産地での検査を経て大量・広域的に流通し規格取引が行われているが、こうした取引は検査に対する信頼から成立していること、消費者が米を選択する際の基準となっている精米表示は検査の結果が基礎となっており、民営化に際しても消費者利益を従来どおり確保する必要があることから、産地や流通業者による品質保証によりこれらが担保できるかとの懸念が示された。
当委員会は、農産物検査を民営化するのであれば、食糧法施行時からの流通事情の変化等も踏まえ、1) 検査に対する信頼性の確保の観点や流通の円滑化のための規制は必要最小限のものとし、2) 産地や流通業者が自らの商品の品質に責任を持つという視点を踏まえ、市場原理を活用して民営化することが必要であると考える。
したがって、農産物検査の民営化の在り方に対する当委員会の指摘を踏まえつつ、市場原理を活用した関係者のコンセンサスが得られるような新制度の在り方を検討すべきである。
(注)計画出荷米:自主流通米及び政府米として、第1種登録出荷取扱業者(農業協同組合等)又は政府に売渡し等を行う米穀
(2)麦の価格政策等に係る規制緩和(※)
国内産麦については、昭和27年以降、制度的には、自由な民間流通を前提とし、生産者の申込みに応じて無制限買入れを行う間接統制の下にあるものの、売買逆ざやの存在のため、昭和32年以降、商品化される麦の大宗が政府を経由して流通しており、実態上全量政府買入れに近いものになっている。また、食糧法の制定等により、米の流通には相当市場原理が導入されたが、麦の分野についてはほとんど制度的には変更がなく、生産・流通・加工の各面で問題を抱えるに至っている。
このため、農林水産省の取りまとめた「新たな麦政策大綱」(平成10年5月29日農林水産省省議決定)においては、麦作農家及び麦関連産業の将来展望を切り拓いていくため、民間流通への移行を始め、国内産麦、外国産麦、麦加工産業、飼料用麦の各方面にわたる施策の見直し方向が盛り込まれ、施策の転換プログラムを踏まえて、3〜5年を掛けて十分実態に即した新たな麦政策の達成を図ることとされた。新たな麦政策の実施によって、麦政策に係るトータル・コストの低減による消費者利益の向上が見込まれるところであり、その施策の展開方向については評価することができる。
特に、国内産麦については、同大綱に基づき、その民間流通の仕組みを構築するため、生産者、実需者、行政による「民間流通検討会」(食糧庁長官の懇談会)が平成10年6月29日に設置され、生産者と実需者の情報交換の在り方、契約栽培の在り方、価格形成の在り方等についての検討が進められているところであり、本年12月には検討結果の取りまとめが行われる予定である。
麦政策については、「新たな麦政策大綱」に示された施策の転換プログラムを踏まえた施策の見直しを引き続き実施し、特に、国内産麦については、民間流通検討会の取りまとめの方向に沿った施策を着実に実施すべきである。
(3)株式会社の農地所有による農業経営への参入(※)
農業生産法人制度は、法人が農地を取得して農業を営む場合に、農業者を主体とした農業目的の法人(農事組合法人、合名会社、合資会社又は有限会社)に限り、農業経営目的の農地の取得を認めるもので、株式会社については一律に農地の取得が禁止されてきた。
平成10年9月17日に取りまとめられた食料・農業・農村基本問題調査会(内閣総理大臣の諮問機関)の答申においては、「投機的な農地の取得や地域社会のつながりを乱す懸念が少ないと考えられる形態、すなわち、地縁的な関係をベースにし、耕作者が主体である農業生産法人の一形態としてであって、かつ、これらの懸念を払拭するに足る実効性のある措置を講じることができるのであれば、株式会社が土地利用型農業の経営形態の一つとなる途を開くこととすることが考えられる」との提言がなされており、農林水産省は、この提言の方向に沿って、農地法の改正等必要な施策を展開するため準備を進めている。
経営形態としての株式会社は、資金調達、人材の確保、技術・経営ノウハウの充実、経営に伴うリスク分散等様々な利点を有しており、投機的な農地取得の防止措置等が講じられれば、日本農業の体質強化・活性化を図る上で極めて有効であると考えられる。今回、一定の条件付きとはいえ、株式会社が従来の農業生産法人に出資する際の規制が緩和され、さらに現在の農業生産法人が法人形態を株式会社に変更する場合、畜産・施設園芸部門において現に農業経営を行っている株式会社が経営の発展のために農地を取得する場合等について、株式会社に農地の取得を認める方向に施策の転換がなされたことは、農政上画期的なことであり、評価できる。
今後は、食料・農業・農村基本問題調査会の答申の指摘に沿って、一定範囲の株式会社について農地の取得による農業経営が可能となるよう、早急に必要な法改正を行うとともに、その際、株式会社が農業生産法人に資本参加し、又は農地を取得して農業経営を行う際に課せられる要件が必要以上に制限的なものとならないようにすべきである。
(1)廃棄物処理、リサイクルの推進
廃棄物処理業を行う者は、一般廃棄物については市町村長の許可、産業廃棄物については都道府県知事の許可を得なければならない。また、廃棄物処理施設を設置する者は、都道府県知事の許可を得なければならない。ただし、一定の廃棄物の再生利用について厚生大臣の認定を受けた者は、これらの許可を受けないで、廃棄物処理業及び処理施設の設置を行うことができる(再生利用認定制度)。
再生利用認定制度は平成9年12月に創設されたが、現在その対象となる廃棄物は廃ゴムタイヤ及び汚泥に限定されており、実際の認定もこれまで3件にとどまっている。
したがって、リサイクル及び技術開発の推進並びに事業者の負担軽減のため、対象となる廃棄物の範囲を拡大するとともに、認定基準を満たす者については積極的に認定すべきである。当面は、廃プラスチック等、事業者からの要望が出されているものに関し、再生利用認定制度の対象物とするか否かについて検討し、速やかに結論を出すべきである。また、対象者の認定基準の明確化を図るべきである。
また、廃棄物の減量、リサイクルの推進のためには、経済社会の様々な分野において、再生されたもの(再生物)が積極的に利用されることが重要であり、製品製造の原材料としての再生物の利用促進、公共工事等の官公需における再生物の利用促進等について、積極的な政策を打ち出すことが必要である。
(2)保安四法関係の規制の見直し
石油コンビナートについては、消防法(昭和23年法律第186号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)、石油コンビナート等災害防止法(昭和50年法律第84号)が適用されており、各法の規制目的を達成するため必要な基準が設定され、それぞれの検査等が行われている。
これらの規制については、例えば、
1) 消防法については、一定の要件を満たす危険物の製造・貯蔵施設等の変更工事に伴う完成検査前検査及び完成検査に関し、自主的な検査を適切に行うことができると認められる者に消防署等による検査に代えて、自主検査を認める制度について、産業界関係者の意見を踏まえつつ、安全性を損なわないことを前提として検討中であり、本年度中に実施予定である
2) 労働安全衛生法については、設備を停止して行う性能検査の周期について、ボイラー及び圧力容器安全規則等において管理等が良好で延長を行い得る安全要件等の合理的基準を定め、この基準に適合すると認められるボイラー等の検査周期を4年程度に延長することを目途に現在検討が進められ、来年度から2か年の試行後、平成13年度から実施予定である
3) 高圧ガス保安法については、高圧ガス安全弁に係る保安検査周期について、更に延長(4年以上)すべく現在技術的検討が進められ、来年度上期に実施予定である
など規制緩和が進められており、こうした対応を評価する。同時に、引き続き規制緩和推進3か年計画の計画事項を着実に実施していく必要がある。
今後、石油コンビナートに係る部分について、近年の技術の進歩等を踏まえ、安全性を損なわないことを前提として、検査周期の延長、検査主体の相互乗り入れの促進、検査方法の改良等保安四法の更なる合理化、整合化を図る余地はないかを検討し、検査等に伴う負担の軽減を図ることが必要であると考える。具体的には、関係各省の実務者が、有識者、関係業界団体の代表等とともにこうした点について検討する委員会を設置し、2年間を目途に検討を行い、結論を得て、関係省庁において速やかに所要の措置を講ずるとともに、それ以前に結論を得たものについても関係省庁においてその都度措置すべきである。
本年10月末までに内外から1,500件を超える規制緩和に関する意見・要望が出されているが、そのうちの相当数のものが、1) 基準の見直し・緩和、2) 基準の国際整合化、3) 基準の性能規定化、4) 重複検査等の排除、5) 申請及び検査手続の簡素化を求めるものなど基準・規格及び検査・検定(輸入関連を含む。)に関する個別の意見・要望であった。これらの意見・要望については、今後各省庁において積極的な検討を行い、規制緩和推進3か年計画の改定に可能な限り盛り込むべきである。当委員会としても、これら意見・要望を受けて各省庁が平成11年1月に公表することとしている中間公表の内容を注視していく。
上記の基準・規格及び検査・検定の各分野については、実際の行政運営がどのように行われているかを踏まえた検討が重要であることから、規制緩和推進3か年計画に従い、政府部内の評価・監視機能である行政監察においても、積極的な取組を行うことを強く期待する。
あわせてJIS規格、JAS規格を始めとする規制緩和推進3か年計画の掲載事項についても、同計画に従い現在実行中の措置を確実に実施していくべきである。とりわけ国民の負担軽減につながる措置や国際規格との整合化等に係る事項については、できる限り前倒しに実施することを期待する。
労働市場は、社会経済活動の基礎となる人材を供給する重要な役割を果たしており、労働力の需給調整機能の強化は重要な課題であるが、これまで様々な形で規制されてきた。雇用・労働分野の規制には、大きく言って、賃金、労働時間などを規定する労働基準法(昭和22年法律第49号)と、職業紹介、労働者派遣などを規定する職業安定法(昭和22年法律第141号)の二つの法体系にかかわるものがある。
労働基準法については、1) 高度の専門知識、技術等を有する労働者の労働契約期間の上限を1年から3年に延長すること、2) 企業の本社等の中枢部門で企画、立案等の業務に従事するホワイト・カラーについて裁量労働制を適用することなどを内容とする改正法案が成立し、本年9月30日に公布されたところであり、その施行に向けて規制緩和の具体化を図るための関係省令等の整備が必要となっている。
職業安定法においては、職業紹介が政府の役割として位置づけられており、公共職業安定所がその任に当たっている。一方、民間の事業者による参入は原則として禁止され、国の行う業務を補完するものとして、許可など厳しい規制の下で一部例外的に事業を認められるという法体系になっている。また、昭和61年に創設された労働者派遣事業制度についても、労働者が雇用される企業と派遣されて実際に働く企業が異なるという特殊な雇用形態であることなどから、派遣の対象となる業務、派遣期間などが規制されている。
しかし、社会経済のグローバル化、産業・就業構造の変化、近い将来の労働力供給の減少などに伴い、雇用の流動化、雇用形態や就業意識の多様化が進む中で、これまでの規制を維持したままでは、社会経済の変化に対応できなくなってきており、労働者がその能力を十分に発揮し、民間の創造性、柔軟性を大幅に活用し得る雇用システムへの転換が求められている。これからは、労働者保護の観点を踏まえつつ、個別労働紛争の円滑な処理方策など事後チェック型行政への転換を図り、新たな雇用機会の創出に向けた労働市場の自由化・弾力化を高めるための規制緩和が急務となっている。
このような観点から、以下、当面取り組むべき課題について述べる。
(1)労働基準関係規制の見直し
労働契約期間、労働時間等に係る規制については、規制緩和推進3か年計画に基づき、労働基準法改正法案が第142回通常国会に提出され、平成10年9月25日に成立し、9月30日に公布された。同計画に関する改正内容は、
1) 新商品、新技術の開発等に必要な高度の専門的知識、技術等を有する労働者を新たに確保する場合や60歳以上の労働者について、労働契約期間の上限を現行の1年から3年に延長したこと、
2) 企業の本社等の中枢部門で企画、立案、調査及び分析の業務を自らの裁量をもって遂行するホワイト・カラーについて、労使委員会の決議に基づくことを条件として、労働時間管理を本人の自主性にゆだねることで労働者の意欲を高め、自律的で創造的な働き方を可能とする裁量労働制を適用できることとすること、
3) 年間を通じて週平均40時間を実現する1年単位の変形労働時間制の要件の弾力化
などであり、上記1) 及び3) については平成11年4月1日から、また、2) については平成12年4月1日から施行される。これらのうち、例えば、裁量労働制の適用対象業務については、現在、新商品・新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計など11業務に限定されているが、改正法においては、その内容について労働大臣が指針を定め公表することとされているなど、具体的な内容が今後策定される省令や大臣告示にゆだねられているものも多い。
したがって、労働者の雇用形態や就業意識の多様化に対応した労働環境の整備を図るため、改正労働基準法に係る関係省令等について、法改正の趣旨を踏まえ、法施行に向け速やかに法令上の措置を実施すべきである。
(2)有料職業紹介事業の規制の見直し
ア 取扱職業の範囲の拡大
有料職業紹介事業の取扱職業は、労働者保護の観点から、従前、美術家、医師、薬剤師等29の職業に限定されていた。これについては、労働省令の改正により平成9年4月からネガティブ・リスト化による範囲の拡大が行われ、
1) 事務的職業及び販売の職業(卒業後1年を経過していない者に限る)、
2) サービスの職業、
3) 保安の職業、
4) 農林漁業の職業、
5) 運輸・通信の職業、
6) 技能工、採掘・製造・建設及び労務の職業
を除き取り扱うことができる(従来の29職業は引き続き取扱職業とする)ことになった。この改正により、労働省では全労働者の約60%がその対象となったとしているが、今後、就業人口の増加が見込まれるサービス業、運輸・通信業や新規学卒者が除かれているなど必ずしも十分な内容となっていない。また、今後、雇用流動化の進展や労働者の高齢化が進む中で、人材サービス業へのニーズは一層高まることが予測される。このため、規制緩和推進3か年計画に基づき、現在、取扱職業の更なる拡大について具体化のための検討が行われている。
また、平成9年6月の国際労働機関(ILO)総会において、民間の有料職業紹介事業に関する規制の根拠の一つであったILO第96号条約が改正され、労働市場における民間の職業紹介事業の役割を認めたILO第181号条約(民間職業事業所に関する条約)が採択され、今後、国内法を整備した上で批准されることになっている。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、有料職業紹介事業の取扱職業の更なる拡大について、ネガティブ・リスト化の施行状況、ILO第181号条約等を踏まえ、結論を得て所要の法改正とともに同条約の批准を行い、その実施を図るべきである。
イ 許可の有効期間の延長
有料職業紹介事業の許可の有効期間は、職業安定法の規定により1年とされ、有効期間の満了後引き続き事業を行おうとする者は、許可の有効期間の更新を受けなければならないこととされているが、この規制の根拠であったILO第96号条約は昨年改正され、毎年の更新手続を必要とする理由は特に見当たらないこととなった。このため、事業者負担の軽減、手続の簡素化を図る観点から、許可等の有効期間の延長については、規制緩和推進3か年計画に基づき、現在、検討が進められている。
したがって、手続を簡素化し事業者負担の軽減を図るため、有料職業紹介事業の許可及び更新許可に係る有効期間について、ILO第181号条約等を踏まえ、結論を得て所要の法改正とともに同条約の批准を行い、その延長を図るべきである。
ウ 許可要件の見直し
有料職業紹介事業を行おうとする者は、職業安定法に基づく労働大臣の許可を受けなければならず、その具体的な許可要件は職業安定局長通達により定められている。そして同通達には、
1) 有料職業紹介事業と労働者派遣事業の兼業は一定の条件下で認められているが、求職者を職業紹介する手段として労働者派遣をするものでないことなど、双方の連携に基づく派遣から常用への転換を困難にする規定、
2) 有料職業紹介事業と無料職業紹介事業との兼業の禁止規定、
3) この他、労働者保護を担保する観点から必ずしも適切でないと考えられる詳細な規定が設けられている。こうした申請者への規制は、参入規制的な色彩を伴う厳しいものとなっており、正規社員でない者の就業機会の拡大や正規社員としての就業を妨げているとの指摘もある。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、有料職業紹介事業の許可要件について、ILO第181号条約等を踏まえ、当該通達を見直し要件を緩和すべきである。
エ 許可制度の在り方の見直し
昭和22年に制定された職業安定法では、「何人も、有料の職業紹介を行ってはならない。但し、美術、音楽、演芸その他特別の技術を必要とする職業に従事する者の職業をあっ旋することを目的とする職業紹介事業について、労働大臣の許可を得て行う場合は、この限りでない」と定められ、有料職業紹介事業を行うことは原則禁止とされ、労働大臣の許可を前提として「特別の技術を必要とする職業」につき例外的に事業を認めるという法体系になっている。
このような原則禁止の規定を前提とする限り、原則自由化に向けた取扱職業の大幅な拡大は困難であり、特別の技術を必要とする職業に該当しない職業については取扱いの対象とならないネガティブ・リストに含めざるを得ず、雇用の多様化に則した真に実効性のある見直しには限界がある。また、民間の職業紹介事業を認め、公共機関と民間事業者があいまって職業紹介など労働市場の機能を高めることを定めたILO第181号条約の批准が不可能になるおそれもある。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、有料職業紹介事業の許可制度について、ILO第181号条約等を踏まえ、その在り方を見直し、所要の法改正とともに同条約の批准を行い、具体化を図るべきである。
オ 手数料に係る規制の見直し
有料職業紹介事業を行う者は、職業安定法により、労働大臣が定める手数料のほか、いかなる名義でも実費その他の手数料又は報酬を受けてはならないとされている。具体的には、
1) 求人者の雇用条件と求職者の希望の照合など職業紹介の基本的サービスに係るもので求人者等から徴収する第一種紹介手数料については、紹介した者に就職後6か月間に支払われた賃金額の10.5%が上限となり、
2) 求人者に対する相談、助言、求職開拓などのサービスに係るもので求人者等から徴収する第二種紹介手数料については、額の制限はないが労働大臣の承認を要するとされ、
3) 求人・求職の申込みを受理した場合に求人者又は求職者から徴収する受付手数料は670円が上限と定められている。
しかし、第一種及び第二種の紹介手数料については、求人企業等から徴収するもので、通常の商行為における契約と何ら変わるものではなく、市場原理を通じた労働力の需給調整機能の強化、ビジネス・チャンスの拡大を図るためにも一層の規制の見直しが必要である。また、求職者から徴収が認められるのは、670円の受付手数料に限られ、結果として求職者が受けるサービスの水準を制限するとの指摘もあり、他方、求職の申込みを受理する時点以前のサービスについては規制の対象外となっていることにも留意する必要がある。なお、ILO第181号条約ではその第7条において、原則として労働者からいかなる手数料も徴収してはならない旨が規定されている。
したがって、市場原理を通じた労働力の需給調整機能の強化等を図るため、有料職業紹介事業の手数料に係る規制について、ILO第181号条約等を踏まえ、その在り方を見直し、所要の法改正とともに同条約の批准を行い、具体化を図るべきである。
カ 雇用助成金の支給要件
労働者の雇用を促進するため、雇用対策法(昭和41年法律第132号)及び雇用保険法(昭和49年116号)の規定に基づいて高齢者、身体障害者などの就職困難者を雇用した事業主に対して支払賃金の一部を支給する特定求職者雇用開発助成金のほか、地域雇用開発助成金(雇用保険法第112条)、農山村雇用開発助成金(同法第114条の2)などの助成金については、現在、省令等で「公共職業安定所の紹介により」労働者を雇用した事業主に支給対象が限定されている。この要件については、就職困難の度合いが高い者、すなわち就職するためには公共職業安定所における職業指導、個別求人開拓、職場環境の改善等に係る事業主指導、職業紹介、就職後の指導等一連の措置を必要とする者について、これらの措置の一環として助成金を支給することにより、その就職を可能なものとする政策判断に基づいて設けられているものであると説明されている。しかしながら、労働市場の実態からすれば、公共職業安定所の紹介により就職する就職困難者の中でもその困難度には差があるものと考えられ、また、就職困難者のすべてを公共職業安定所が取り扱っているとは限らないとぁw)?,u毆)い辰震簑蠹世・△襦?:・鹿仂w)w)斜徐ぢ したがって、特定求職者雇用開発助成金など公共職業安定所の紹介を支給要件としている助成金について、上記の問題点を踏まえ、これら助成金制度に係る財源問題や政策効果との関係等の観点も考慮しつつ、その支給要件の在り方の検討を進めるべきである。
(3)無料職業紹介事業の規制の見直し
無料職業紹介事業に対する規制は、労働者保護の観点から行われているとされているが、職業紹介は政府の役割であり、無料職業紹介事業は公共職業安定所の補完的機能を有するものという考え方がその前提となっている。しかし、多様な質を持った労働者の職業紹介は、多面的に行われることが望ましい状況となっており、無料職業紹介事業を公共職業安定所の補完的な機能に限定する政策は、もはや妥当ではない。
ア 許可の有効期間の延長
無料職業紹介事業の許可の有効期間は、職業安定法の規定により3年とされ、有効期間の満了後引き続き事業を行おうとする者は、許可の有効期間の更新を受けなければならないとされているが、3年ごとに更新手続を行う必要性は認められない。このため、許可の有効期間の延長について、規制緩和推進3か年計画に基づき、現在、検討が行われている。
したがって、手続を簡素化し事業者負担の軽減を図るため、無料職業紹介事業の許可及び更新許可に係る有効期間について、結論を得て法改正を行い、その延長を図るべきである。
イ 許可要件の見直し
労働大臣は、職業安定法に基づき、無料職業紹介事業の許可を行う場合は、その者が職業紹介事業を行うに当り取り扱うべき職種の範囲その他取扱いの範囲を定めることができるとされている。これを受け、職業安定局長通達により、事業を行う公益法人等の存立目的、形態、規約等から必要かつ適当であると認められる職業に従事する者又は一定の範囲の職業紹介を行うものであることが要件として定められ、また、許可の対象となり得る事業主体は、
1) 公共的団体(国及び地方公共団体を除く)、
2) 公益的法人、
3) 労働組合法に基づく労働組合又は労働組合に準ずるもの、
4) 学校教育法に基づく各種学校、
5) 営利法人(長期、継続的に大量の離職者が発生する見込みがあり、無料職業紹介事業を行うことが必要と認められるもの)
に限定されているなど、事業主体や取扱いの範囲が過度に制限されたものとなっている。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、無料職業紹介事業の許可要件について、当該法令及び通達を見直し要件を緩和すべきである。
ウ 許可制度の在り方の見直し
無料職業紹介事業を行おうとする者は、職業安定法に基づく労働大臣の許可を受けなければならず、学校等が行う無料職業紹介事業についても同法に基づく労働大臣への届出が必要とされているが、手数料の徴収を伴わない無料職業紹介事業については、労働者保護の観点から見ても有料職業紹介事業に比べて弊害を生ずる可能性が少ないと考えられる。また、許可事業所数は514事業所(平成10年3月末現在)と少なく、その大多数は公益法人が当該法人の事業目的に直接かかわる範囲において無料職業紹介事業を行っている実態にある。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、無料職業紹介事業の許可制度について、ILO第181号条約等を踏まえ、その在り方を見直し、所要の法改正を行い、具体化を図るべきである。
(4)労働者募集に関する規制の見直し
ア 通勤圏外の直接募集に係る届出制
通常通勤することができる地域(募集事業所の所在する都道府県区域)以外を募集地域として労働者を雇用しようとする者が、文書による募集以外の方法で自ら労働者の募集を行い、又はその被用者をして労働者の募集を行わせようとする時は、職業安定法の規定により労働大臣への届出が必要とされているが、このような規制は、社会経済活動の広域化、情報通信手段の発達等に伴い、実態にそぐわないものとなっている。このため通勤圏外の直接募集に係る届出制については、現在、規制緩和推進3か年計画に基づき検討が進められている。
したがって、社会経済の実態に即して手続を簡素化し事業者負担の軽減等を図るため、通勤圏外の直接募集に係る届出制について、その在り方を見直し所要の法改正を行うべきである。
イ 委託募集に係る許可制度
労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集を行わせようとするときは、職業安定法の規定により労働大臣の許可を受けなければならないとされている。また、職業安定局長通達により、委託募集は、中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)、中小企業等協同組合法昭和24年法律第181号)、農業協同組合法(昭和22年法律第132号)などの法律に基づき設立された団体に所属する中小企業の事業主が、その所属する団体を通じて労働者の募集を行う場合に限り許可すると定められ、許可の対象がこれら特定の団体に限定されている。この結果、現在、委託募集の許可を受ける者は、新聞販売店がその協同組合を通じて従業員を募集する場合等に限られるなど、規制が実態にそぐわないものとなっている。このため、委託募集に係る許可制については、現在、規制緩和推進3か年計画に基づき検討が進められている。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、委託募集の許可制について、その在り方を見直し所要の法改正を行うべきである。
ウ 委託募集の報奨金に係る規制
被用者以外の者をして労働者の募集を行わせようとする者が、その被用者以外の者に報奨金を与えようとするときは、職業安定法の規定により労働大臣の許可を受けなければならず、また、同法施行規則により、報奨金の額は応募して就職した者一人につき、月3千円を超えてはならないとされている。少なくとも平成5年度以降でみる限り委託募集の報奨金に係る許可の実績は無く、月3千円という報奨金の上限は同法が制定された昭和22年以来一度も改定されていないなど、社会の実勢から乖離し形骸化している。
したがって、労働市場の需給調整機能を高めるため、委託募集の報奨金に係る規制について、委託募集の許可制と併せてその在り方を見直し、所要の法改正を行うべきである。
エ 新規高卒者を対象とした文書募集等に係る規制
新聞、雑誌など文書による労働者の募集は、職業安定法により自由に行うことができるとされているが、新規の高等学校卒業者を対象とする文書募集については、新規高卒者は職業選択能力が十分でなく職業指導が必要なこと及び新規高卒者の就職又は進学といった生徒の進路選択が学校の進路指導の一環として行われている中で就職活動が学校の指導を離れて行われることにより学校教育が阻害されるのを防止する教育面からの必要があることを理由として、職業安定局長通達により卒業年の1月末日まで行ってはならないこととされている。
また、学校教育の充実を図り、職業紹介を円滑に実施する観点から、卒業年の2月以降に文書募集を行う場合においても、
1) 公共職業安定所の求人受付を行ったものであること、
2) 高校生からの応募の受付は主として学校を通じて行うこと
が前提とされている。さらに、多くの場合、新規高卒者については、より多くの生徒に就職応募の機会を与えるため、各高校の判断で学校推薦が1人につき1社に限定して行われており、大学生などと異なる慣行が定着している。
したがって、新規高卒者の職業選択の幅を拡大するため、新規高卒者を対象とした文書募集の規制の在り方について、学校教育に与える影響などを踏まえつつ、その見直しを検討すべきである。
(5)労働者派遣事業規制の見直し
ア 適用対象業務の範囲
労働者派遣事業の適用対象業務は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)の規定により、現在、専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務を中心に26業務に限って認められている。適用対象業務の範囲については、規制緩和推進3か年計画に基づき、本年10月6日に労働者派遣法改正法案が国会に提出され、これから審議される状況にある。改正法案では、労働者派遣事業を行うことができる業務の範囲を、ネガティブ・リスト化により拡大することとしており、
1) 港湾運送業務、
2) 建設業務、
3) 警備業務、
4) 中央職業安定審議会の意見を聴いた上で政令で定める業務、及び
5) 附則で規定されている製造業務のうち労働省令で定めるもの
を除き適用対象業務になることとしている。これらのうち上記4) 及び5) については、これから所要の手続を経て政省令により具体的に定められるものであり、その内容が広い範囲に及べば、ネガティブ・リスト化が形骸化し、適用対象業務の実質的な拡大とならない可能性が懸念される。
したがって、労働市場を通じた労働力の需給調整機能を強化し、多様な就業機会の選択の幅の拡大を図るため、労働者派遣事業の適用対象業務の範囲について、改正法案の成立を受けて、ネガティブ・リストを客観的、合理的な内容に限定した政省令の策定を行い、実効性のある拡大措置を講ずるべきである。
イ 派遣期間の在り方
労働者派遣の期間は、労働者派遣法の規定により、現在、建築物清掃、建築設備の運転・点検・整備など一部の業務を除き、常用雇用の代替を防止する観点から、1年に制限(行政指導により2回の期間更新が認められている)されている。一方、本年10月6日に国会へ提出された労働者派遣法改正法案においては、常用雇用の代替防止の観点から、新たに適用対象とする業務については、派遣先が同一の業務について労働者派遣の役務を受け入れる期間の上限を法律で1年に制限しており、その制限を超える場合は派遣先に雇用の努力義務を課し、これに従わない場合は派遣先を勧告・公表の対象とすることとしている。しかし、派遣期間についてのこのような規制は、逆に派遣労働者の雇用期間を短縮化させ、その雇用の不安定化につながるおそれもある。
このような観点から、労働者派遣事業の派遣期間の在り方については、改正法案成立後、労働者派遣事業の進展の実態等を踏まえ、必要な検討を行うことが適当であると考える。
ウ 許可制度の在り方
労働者派遣事業の派遣労働者が常用雇用労働者のみである特定労働者派遣事業を行う場合は、労働者派遣法の規定により労働大臣への届出が必要であり、他方、特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業で、派遣労働を希望する労働者を登録しておき、派遣を行う際にその登録者の中から条件に合致する労働者を雇い入れた上で派遣する登録型の一般労働者派遣事業を行う場合は、同法の規定により事業所ごとに労働大臣の許可を受けなければならない。本年10月6日に国会へ提出された労働者派遣法改正法案においては、一般労働者派遣事業の許可基準の見直し、変更手続の簡素化等が行われている。
しかし、雇用の流動化、雇用形態の多様化など社会経済情勢の変化を背景として、個々の派遣労働者が複数の事業所に登録することで就業機会を拡大することができる一般労働者派遣事業への参入規制としても機能する許可制度の在り方については、改正法案成立後、労働者派遣事業の進展の実態等を踏まえ、必要な検討を行うことが適当であると考える。
日本の高齢化が急速に進む中で、医療・福祉サービスへの社会的ニーズは今後一層高まることが予想されるが、一方で財政面からは医療費の抑制が大きな課題となっている。現行の医療保険の出来高払の診療報酬体系の下では、医療サービスに対する過剰需要が発生しているため、これを供給面の総量規制によって抑制する政策が行われている。この結果、医療サービスには、部分的に過剰と不足とが共存するという状況が生じている。こうした医療分野における需給の不均衡を解消し、医療サービスの効率的な配分を進めるためには、競争条件を改善する供給面の改革と、過剰需要を抑制するための保険者機能の強化等の需要面の改革を併わせて行う必要がある。また、福祉の分野でも、介護保険制度の施行を間近に控え、これまでの措置制度から個人のサービス選択を重視する方向への改革が進められているものの、まだ多くの問題が残されている。
医療・福祉サービスは、これまで、人の生命、健康に直接かかわるものであり、また、その内容の専門性から消費者としての患者と医療を提供する医師・医療機関との間に情報の格差があり、患者の自由な選択になじまない分野とされてきた。医療サービスの評価については、専門性が高く、個々の患者の状態や病態等が異なることから、その客観的な評価に一定の困難が伴うものの、適切な第三者評価方式や、客観性・公平性に留意した患者への情報提供を一層推進することを通じて、事業者間の競争によって医療・福祉サービスの質的向上を図り、利用者本位の体制に置き換えることが必要となる。
医療・福祉分野の改革は、他の市場サービスと同様に、情報公開と事業者間の競争促進を通じて、できるだけ少ない費用で消費者である患者の満足を最大限に高めるという意味での「効率化」を目指していくべきである。医療については、患者の生命・身体に直接かかわるものであり、また、情報の非対称性が存在すること等の理由により一定の規制が必要であるが、今後は、情報公開等による消費者保護に重点を置くことが重要である。
(1)企業による病院経営についての検討と関連問題
ア 企業による病院経営
現行の医療法では、営利を目的に病院、診療所を開設する者に対しては、都道府県知事等はその開設を許可しないことができるとされており、この背景としては、医療においては、一般の商品やサービスと異なり、患者自らが必要な医療サービスを事前に判断し選択できないことなどにより、市場原理が必ずしも有効に機能しない場合があることや、医療サービスを提供する医師にいわゆる応召義務があること等があげられる。
しかし、医療機関の評価は、現実の医療行為に基づいて行われる必要がある。また、医療費の抑制は、保険者機能の強化等、医療保険改革と併せて行うことが原則である。参入規制等の供給面の手段だけで医療費の抑制を図ることでは、地域において十分な競争メカニズムが働かず、結果として劣悪なサービスの医療機関が淘汰されないことが、医療サービスの質的低下や消費者利益を損なう基本的な要因となる。企業やNPO等の多様な医療サービス供給主体が、医療市場に参入できることが、結果的に医療法人のコスト・パフォーマンスの改善や患者へのサービス改善につながるものと考える。
これまで公的主体が担ってきた高齢者介護等の福祉サービスについては、介護保険制度の施行を控え企業の参入を前提とした仕組みが出来つつあり、従来から医療法人等の民間がサービスの提供主体となってきた医療の分野においても、株式会社を始めとした様々な企業による病院経営を認めるべきであると考えるが、一方で、営利企業による病院経営については、
1) 医療市場の特性から営利企業の在り方とはなじまないこと、
2) 営利企業の参入は、供給者誘発需要等を通じて、医療費の増加を招くおそれが高いこと、
3) 営利企業の参入が認められている米国でも、そのコスト・パフォーマンスは非営利団体と比べて必ずしも優れているとは言えず、その利点が明らかでないこと
などの理由により、営利企業の参入が医療のコスト・パフォーマンスの向上につながるかどうかは必ずしも明らかでなく、医療提供体制や医療保険制度等も含め、総合的な観点から慎重に検討することが必要との意見もある。
厚生省においては、この問題について、現在、医療審議会の医業経営と患者サービス向上に関する小委員会において病院の経営主体の問題として検討中であるが、現在検討が進められている医療保険制度や医療提供体制の抜本的な見直しの状況を踏まえつつ、引き続き検討を進めるべきである。
実際、企業による病院経営を認めないことが、個々の地域における医療サービスの継続性を困難にしている面がある。医療機関の経営が難しいところに営利企業が参入してくることは考えにくいとの意見もあるが、個人経営の病院が廃業する場合の受皿として、不特定多数から資金を調達できる近代的な経営形態である株式会社による病院経営を禁止することは、むしろ地域の医療サービスの安定的な供給を妨げる可能性もある。
イ 医療法人の理事長要件
医療法人の理事長は、都道府県知事の認可を受けた場合を除き、医師又は歯科医師である理事のうちから選出することとされている。このため、事業の継承が容易ではなく、医療法人のほとんどを占める持分の定めのある社団の場合、出資者の死亡・引退や病院設備のための資金調達の困難さ等が高まっているのではないかとの指摘がある。これに対しては、特に現実に多くの医療法人の承継が困難になっているとの状況は見られないとの見方もあるが、今後、医療法人の経営者の高齢化とともに、この問題が顕在化する可能性もある。なお、平成9年の医療法(昭和23年法律第205号)の改正において、経営の安定性や法人運営の永続性の確保が図られるよう、地域における医療の安定的な提供体制を整備することを目的として、一定の要件を満たし公的な運営が確保されている医療法人を特別医療法人と位置づけたところである。
医療法人の理事長要件については、平成10年6月の厚生省通知により、過去5年間にわたって、医療機関としての経営が安定的に行われ、かつ、法人としての運営も適正に行われている既存の医療法人、地域医療支援病院、へき地医療機関等地域医療の確保において重要な役割を担っている医療機関を経営している医療法人等については、前記の都道府県知事の認可が行われるものであることとされ、病院経営と医療管理の分業に向け一定の改善がなされたことは評価する。今後とも、その運用状況を踏まえながら、適宜見直しを検討すべきである。
ウ 医療法人の資金調達の多様化
医療法人制度の下においては、医療法人の非営利性を担保するために剰余金の配当が禁止されている。一方、株式会社においては、株式の発行は銀行借入や社債発行と同様に資金調達の一手段として位置づけられている。医療法人の資金調達の手段は、金融機関からの借入等に依存しており、赤字経営でも支払が免除されない点で、医療機関の経営にとってより厳しい面もある。今後、医療分野における非営利性の趣旨も考慮しつつ、医療機関の健全な経営に資する観点から、資金調達手段の多様化を検討すべきである。
(2)病床規制の見直し
都道府県が定める現行の医療計画においては、地域の実情に応じた適切な病床数を定めている。これは、国民の医療ニーズ等に応じて整備されるべき必要病床数を基準にして、病床の増加を抑制する一方、病床不足地域における病床の整備を促進することにより病床の適正配置を図ることを目的とするとともに、出来高払制の診療報酬体系の下での「供給が需要を生む」医療の特殊性にかんがみ、医療費の抑制を図ることをねらいとしている。さらに、健康保険法において、この実効性を高めるために、医療法に基づく勧告(注)に従わない場合には、都道府県知事は新たな病床の全部又は一部について保険医療機関の指定を行わないことができることとされている。しかし、現行の必要病床数が最適であるという保証はなく、政府があらかじめ定めた医療サービス需要に基づき、医療機関の新規参入を抑制する需給調整政策は、実質的に既存の医療機関を保護する役割を果たしているとの指摘もある。病床規制という機械的な形で、市場競争を通じた淘汰メカニズムが働かなければ、サービスの質の高い病院に患者が集中するにもかかわらず、その供給が増やせない結果、混雑の高まりと消費者の選択肢が狭まる結果が生じる。病床規制について、少なくともそのより弾力的な運用が必要である。
病床規制については、地域間格差の是正に関し、
1) 急性期病床・慢性期病床の区分と、それぞれのニーズを踏まえた適正な必要病床数の算定、
2) 必要病床数の枠内での新陳代謝
の2つの視点から検討することが適当である。
前者のそれぞれのニーズを踏まえた適正な必要病床数の算定については、必要病床数の算定の基礎となる入院や診療を受ける比率(入院受療率)の都道府県値において最も低い県の2倍を超える県があるほか、算定に用いるブロック別入院率についても、各ブロックで明らかな差があり、現行の必要病床数の算定方式は、その算定方法自体が適正な病床配置を妨げている面がある。
このため、医療資源の効率的活用、入院医療への国民のアクセスの平等化等の観点から、実態に合わなくなった算定方式を見直し、全国統一的観点から必要病床数の再設定を行うべきである。
また、前者の急性期病床・慢性期病床の区分及び後者の必要病床数の枠内での新陳代謝については、患者が必要な医療を受けるための急性期病床と、高齢者介護サービスの機能に近い慢性期病床とを区別し、社会的入院の解消を図る必要がある。現行の医療法上、医療計画は少なくとも5年ごとに再検討を加え、必要があるときは変更するものとされているが、病床規制については、現在、行政改革委員会の指摘も踏まえ、病床を急性期病床と慢性期病床に区分し、11年度に結論を得る方向で医療審議会において検討が進められている。今後、既存の病床のうち有効に使用されていない部分について、当該医療機関の病床数を適正な数に削減し、新規参入者等他の病院の病床数の増加につなげるような客観的な制度的仕組みを設けるべきである。
(注)医療法上の勧告:都道府県が定める医療計画においては、医療圏(医療計画の単位となる区域)及び必要病床数(全国を355に区分し、主として一般病床の整備を図るべき地域単位として区分された地域、すなわち2次医療圏ごとの医療供給上必要とされる病床数)が定められているが、都道府県知事は、2次医療圏の病床数が当該医療圏の医療計画で定められている必要病床数を超えている等の場合、病院を開設しようとする者等に対し、病院の開設又は病床数の増加に関して勧告することができる。
(3)専門医資格、医療機能評価の結果など広告規制の見直し
現行の医療法では、「患者の誤認」を招かないため、病院等は、文書その他いかなる方法によるを問わず、医師又は歯科医師である旨、診療科名、病院、診療所の名称等定められた事項以外は広告してはならず、広告する場合においても、その内容が虚偽・誇大であったり、又はその方法若しくは内容が厚生省令で定める基準に違反したりしてはならないとされている。しかし、治療の結果にかかわるような、患者にとって関心の高い医療情報については、客観性・正確性を確保しつつ、提供していく必要があり、患者が医療機関を選択するに当たっての判断材料を増やすことにより、病院間の健全な競争を促進していくことが望ましい。社会保険や公費で負担されている医療サービスの内容については、支出の妥当性を示すためにも、情報公開が重要である。また、情報公開は、悪質な経営を行う医療機関について、その経営主体の差を問わず、事後的にチェックするための前提ともなる。
病院の広告規制については、平成4年及び平成9年の医療法の改正並びに平成10年の厚生省告示の改正により、広告できる事項が拡大されたが、現在認められている範囲の事項では、利用者が医療機関を選択するに当たっての判断材料としてはまだ十分でない面もある。特に、患者が病院を選択するに当たって必要とする情報は、病院の規模や施設等の内容もさることながら、医師の経歴、得意とする診療、医療スタッフの充実度、病院の治療成績、手術件数等であると考えられる。しかしながら、これらの事項については、医療の特性から客観的に評価することが困難であり、その広告を自由にすることが必ずしも患者の利益につながらないとの意見もある。こうした点も踏まえ、客観性・正確性の確保に留意しつつ、患者の病院選択にとって真に必要な項目は何かとの観点から、引き続き広告事項の拡大について検討すべきである。
また、(財)日本医療機能評価機構においては、平成8年度から病院の評価事業を行っているが、その評価項目は「診療の質の確保」「看護の適切な提供」等、主として医療サービスの構造に係る事項であって、疾患ごとの手術件数・内容、患者の平均入院期間といった医療の結果等については評価の対象となっていない。このため、患者が医療機関の選択に当たって重要な判断基準となる評価項目の選定、評価基準、評価方法の設定等について検討し、これらの項目についても将来的に医療機能評価機関による評価の対象とするとともに、客観性・正確性を確保しつつ可能な範囲で評価に関する情報が開示されるよう、医療情報の標準化・データベース化、関係者のコンセンサス形成等条件整備を進めるべきである。
なお、関係学会及び医療審議会において、医師の専門分野を明示できるよう専門医資格の設定及び効率的な医療サービスの提供を図るための第三者機関による医療機能評価の結果の広告事項化が検討されているが、関係者の精力的な検討により、可能な限り速やかに成案を得ることが期待される。
(4)特定療養費制度の見直し
医療保険制度上は、対象となる医療サービスの内容が定められており、それを超えるサービスを受けようとする場合、通常なら医療保険の対象となる部分についても保険給付が受けられなくなるのが原則となっている(混合診療の禁止)。このような画一的・定型的な仕組みでは、患者が多少余分の支払をしても多様又は特別な医療サービスを受けたい場合であっても、一部でも自由診療で医療サービスを受けた場合には、医療費全額が自己負担となることになる。かつての医療資源が限られていたような時代や、感染症が中心であった時代に比べ、現代においては、医療技術の高度化、医療に対する国民のニーズの多様化が進んでおり、個々の患者の事情を無視して一律平等の原則を適用することは妥当ではない。このため、医療サービスの基本的な部分は医療保険で特定療養費として給付し、それを超える追加的なサービス部分の支払は患者の同意の下に医療機関が別途特別な料金を患者から徴収できる特定療養費制度が昭和59年に導入された。
特定療養費制度は、現在、高度先進医療と選定療養(厚生大臣の定める療養)という2類型が認められているが、医療へのアクセスの確保や患者への情報提供等の観点からの一定の制約が設けられている。しかし、今後、医療に対する国民のニーズの多様化に的確に対応する観点が必要であり、患者のアメニティに係る医療の周辺部分に係るサービスについては、患者へ十分な説明を行うという前提の下に原則として病院による自由なサービス提供を認めることも含め、検討を行うべきである。
また、保険収載されていない療法・技術について、例えば、外国で一定程度実施されている実績があること、患者に対するインフォームド・コンセントの徹底等の一定の要件の下に、保険診療に上乗せした形態での医療サービスの提供が高度先進医療として認められている。高度先進医療については、平成10年7月1日現在で、特定承認医療機関数が83機関、厚生大臣から承認された技術数が53種類となっているが、これらの医療機関数が過少となっていないか、技術の承認要件が適切かについて検討すべきである。
(5)在宅医療に係る規制・手続の見直し
在宅医療の中心をなすのは、老人訪問看護制度及び訪問看護制度である。老人訪問看護制度は、老人保健法(昭和57年法律第80号)に基づき、在宅の寝たきりの老人等に対して老人訪問看護ステーションから看護婦等を訪問させて看護サービスを提供し、老人訪問看護ステーションに老人訪問看護療養費を支給するものであり、訪問看護制度は、在宅医療を推進する一つの方法として、健康保険法(大正11年法律第70号)に基づき、在宅療養を行っている難病患者、重度障害者、末期がん患者等の療養者に対して訪問看護ステーションから訪問看護を行い、訪問看護ステーションに訪問看護療養費を支給するものである。
現行の制度の下では、訪問看護において使用される器材や衛生材料についての診療報酬点数は主治医の行う医療行為に含めて評価されているため、訪問看護は医師の指示に従って行われているが、訪問看護婦が必要に迫られて膀胱留置カテーテル等の特定保険医療材料や滅菌ガーゼ等の衛生材料を自ら調達し、患者に提供する場合に、実態上、患者の自己負担が生じる場合がある。このため、速やかにその実態を調査した上で、例えば、訪問看護の中で使用される特定の衛生材料について、患者の自己負担が生じることなく必要十分な量が提供されるよう、費用の請求の仕組みの見直し等の改善措置を早急に検討すべきである。
また、医師から老人訪問看護ステーションに対して交付される指示書の有効期間については、平成10年4月の診療報酬改定において1か月から2か月に延長された。今後、高齢化が進み、老人訪問看護を受ける老人数が増大すると考えられるが、このような患者の中には、比較的長期にわたって症状が安定し、前回の医師の指示書の範囲内の処置をすることで十分対応できる者も多いと考えられる。このような場合については、形式的に一律に指示書の有効期間を定めるのではなく、一定の範囲内(例えば3か月以内)で医師の指示書の有効期間を弾力化するなど、老人訪問看護事業がより円滑に実施されるよう、実態を踏まえつつ検討すべきである。
(6)指定訪問看護事業への民間企業の参入(※)
営利法人が訪問看護を行うことについては、法律上は禁止されていないが、老人保健法に規定する指定老人訪問看護事業者、健康保険法に規定する指定訪問看護事業者となるには、都道府県知事の指定が必要とされている。企業の指定訪問看護事業への参入については、規制緩和推進3か年計画において、審議会への諮問等所要の手続を経て平成10年度内に実現することとされているが、参入要件の設定に当たっては、民間企業に対してのみ特別の参入条件等が設けられたり、地元の事業者が優先されることがないようにすべきである。
(7)保険者によるレセプト審査の許容など保険者機能の強化
昭和23年の厚生省通ちょうにおいては、健康保険組合が、保険医である者と特別な契約を結び、又は嘱託とし、その医師に対する診療報酬を、審査支払機関を通じることなく、直接に支払うことは、保険医制度の健全な運営を阻害するものであるとされている。診療報酬の審査・支払は、健康保険法及び国民健康保険法上、保険者の本来的な役割の一つである。しかしながら、実際には、上記行政指導により、保険者は社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会(審査支払業務を専門的に行う審査支払機関)に審査支払を委託するのが通常となっている。
具体的には、保険者は、社会保険診療報酬支払基金等にレセプトの第1次審査を委託し、自らはレセプトの2次チェック(縦覧点検)を行い、社会保険診療報酬支払基金等の審査に疑義がある場合には再審査請求を行っている。これは、個々の保険者がレセプト(診療報酬明細書)の審査支払を行う場合、
1) 保険者自らが必要な医師を確保し、適切な期間内(現行約40日)に診療内容の適正な審査支払ができる体制を整えなければならないこと、
2) 医療機関は保険者ごとに請求先を変え、保険者は医療機関ごとに支払先を変える必要があり、事務が煩雑になること
等がその理由とされている。
しかしながら、保険者の財政の悪化が進む中で、医療費の適正化が重要な課題となっており、保険者自らがレセプトの審査を行うことは、保険者の財政管理に資するだけでなく、審査事務への競争原理の導入、不適切な診療の抑制等様々な面で利点がある。
この点に関しては、年間7億件(国保分も含めると11億件)を超える診療報酬の審査支払を円滑に実施できる効率的な体制を確保できるかという問題があり、厚生省においては、審査支払機関の機能の強化の観点から、平成10年度には社会保険診療報酬支払基金の重点審査対象レセプトの拡大や審査期限の延長等の措置を講じたところである。この措置については一定の評価はできるものの、行政指導により、健康保険組合がその組合員に係るレセプトの第1次審査及び管理を行うことを一律に認めないことは適当でないと考える。
したがって、例えば、社会保険診療報酬支払基金等への委託を行わずに、その意思、能力等に応じ、保険者自らがレセプトの第1次審査を行うといった点も含め、関係者の意向も踏まえ、保険者機能の強化の在り方について検討すべきである。
また、現在の制度でも、保険者の管掌する被保険者等のみに保険給付を行う医療機関として都道府県知事の指定した保険医療機関以外の病院等を保険者が指定することや、保険者と医療機関が診療報酬点数表の範囲内で特別の契約を結ぶことは認められているが、極めて限られた例にすぎない。保険者は、レセプトの審査・支払を通じて、医療機関における診療行為に関する情報や組合員の健康状態等を把握、管理し得る立場にあり、保険者の有する医療機関に関する情報を十分に活用することができれば、医療資源の有効活用の観点からも望ましいと考えられる。このため、現在の仕組みの基本は維持しつつも、例えば、保険者が被保険者に対して保険医療機関に関する情報を積極的に提供し、被保険者が医療機関を選択しやすくするような仕組み等の導入を検討すべきである。
(8)カルテの電子化及びレセプトの電算処理システムの推進(※)
カルテの電子化については、その安全性の確保及び診療情報の標準化について厚生省内で検討が進められている。前者については、平成10年度に考え方を取りまとめる予定であり、後者については、病名の標準化のほか、医薬品等のコード等の標準化の作業を続ける予定となっている。
レセプト電算処理システムについては、平成3年10月診療分から千葉県、東京都、兵庫県及び広島県の医療機関においてパイロット・スタディとして磁気媒体による請求を開始しており(兵庫県においては平成9年10月診療分から全県で実施)、平成10年9月現在で188医療機関が参加している。従来、審査支払機関においては磁気媒体に収録したレセプトを中央の電算処理センターで集中的に処理してきたが、平成10年度には、各都道府県ごとに磁気媒体に収録したレセプトを処理できるよう、受入体制の整備・拡充を図りつつあり、また、平成10年9月からは国立大蔵病院が新たに参加し、大病院クラスでもシステムへの参加が可能になったことから、引き続き参加医療機関の拡大が見込まれている。
カルテの電子化及びレセプト電算処理システムについては、医療における情報整備、レセプト請求・審査・支払手続の軽減、事務処理の迅速化等の観点からも重要であり、引き続き推進していくべきである。
(9)薬剤の宅配禁止の見直し(※)
薬剤師法(昭和35年法律第146号)第23条により、薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならないとされており、また第25条の2により、薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならないこととされている。
ファクシミリで電送された処方内容に基づいて行う薬剤の調製等は、患者等が持参する処方せんの受領、確認により、さかのぼって調剤とみなされる。これを踏まえ、規制緩和推進計画の再改定(平成9年3月28日閣議決定)では、「患者が薬局へファクシミリにより処方せんを送り、薬局が調剤を行い、患家に薬剤を持参し、患家において処方せんを受け取ることを可能とする」とされたが、いまだ実現するに至っていない。この規制緩和を最も必要としているのは寝たきり等の患者であるが、厚生省においては、この規制緩和の実現に向けて、患者の利便性の向上の観点から、処方せんとの引換えを条件に、患者(患家)が薬剤師又は薬剤師の管理下にある者の配達により薬剤を受け取ることを早急に可能とすべきである。
(10)高齢者介護に関する社会福祉事業及び児童の保育に係る福祉サービスへの民間企業の参入
ア 高齢者介護に関する社会福祉事業
高齢者介護に関する社会福祉事業の代表的施設・事業は、特別養護老人ホーム、老人ホームヘルプ・サービス事業、老人デイ・サービス事業、老人短期入所事業であるが、特別養護老人ホームの設置主体は地方公共団体又は社会福祉法人に、老人ホームヘルプ・サービス事業、老人デイ・サービス事業及び老人短期入所事業(以下「老人ホームヘルプ・サービス事業等」という。)の実施主体は市町村に、それぞれ限定されている。なお、老人ホームヘルプ・サービス事業等については、平成10年2月までに厚生省通知の一部改正により、市町村はその事業の運営の一部を地方公共団体、社会福祉法人、医療法人、農業協同組合、農業協同組合連合会及び一定の要件を満たす民間事業者等に委託することができることとされた。
高齢者介護の分野については、平成12年4月以降介護保険法(平成9年法律第123号)が施行され、大幅な規制緩和が行われることとなる。老人デイ・サービス事業などの在宅サービスについては、民間企業も市町村からの委託を受けることなく自ら介護保険のサービス事業者となることができるため、その積極的な参入が期待できる。また、特別養護老人ホームについては、措置から契約への移行により、供給が十分に確保されれば、利用者がサービスを選択する仕組みとなるため、競争原理に基づきサービスの向上と拡充が図られるものと考えられる。
ただし、特別養護老人ホームは、介護の必要な高齢者が生活の拠点を移して入所する施設であるため、在宅サービスとは異なり、入所者が生活拠点を失うことがないよう、事業の継続性・安定性の確保に最大限配慮する必要がある。このため、民間企業の参入については、他の事業活動が特養事業に直接影響を及ぼさない仕組みの検討と併せ、社会福祉法人制度の見直しや介護保険施行による規制緩和の効果等を踏まえつつ、今後更に検討し、結論を得るべきである。
イ 児童の保育に係る福祉サービス
また、保育所については、私人の行う保育所の設置経営は原則社会福祉法人、社会福祉法人とすることが著しく困難な場合には財団法人とされており、それ以外の私人の設置する保育所については、社会福祉法人とするように指導されている。なお、措置制度の下では、一応利用者の希望を採ってはいたものの、保育所の最終的な選定は市町村の裁量に委ねられていたが、児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正(平成10年4月施行)により、保護者が保育所を選択して利用できる仕組みに改められるなどの改善が図られている。
今後は、社会福祉基礎構造改革の検討状況を踏まえながら、一層の女性の社会進出等が進む中で、都市部を中心とした待機児の解消を図る観点から、認可保育所の設置主体について、民間事業者の参入を認めることについて検討を行い、早急に結論を得るべきである。
ウ 社会福祉法人の設立、運営の要件
さらに、上記施設の民間における設置主体として認められている社会福祉法人についても、その設立、運営に当たっては、
1) 資産要件(施設経営を行う法人については原則として当該施設の用に供する土地、建物を自己所有していることとされており、都市部等土地の取得が極めて困難な地域においても不動産の全部について国又は地方公共団体以外の者から貸与を受けることは認められないこと、施設経営を行わない法人については原則として1億円以上の資産を有すること)、
2) 事業要件(公益事業については社会福祉と全く関係のないものを行うことは認められないこと、収益事業はその収益を法人が行う社会福祉事業の財源に充てるために行うものに限られること等)
等の規制が課されており、社会福祉法人の迅速な設立、多角的、効率的な経営等を阻害していると考えられる。
したがって、少子化・高齢化が進む中で、社会福祉法人の経営の効率化及び多様な利用者のニーズへの対応を促進する観点から、非営利性、公共性といったその基本的性格に配慮しつつも、社会福祉法人に係る規制の見直しを進めるべきである。
(11)保育所の設置、運営、利用に係る制度の見直し
ア 保育所の設置、運営
保育所では、調理室を設け、調理員を置くことが義務付けられている。この調理関係の規制については、平成10年の児童福祉施設最低基準の見直しにおいて、
1) 保育所内の調理室を使用すること、栄養士による配慮が払われていること等の要件を満たしていれば調理の業務委託を行うことができ、
2) 調理業務の全部を委託する施設にあっては調理員を置かないことができること
とされており、当該措置については一定の評価ができるものと考える。しかしながら、保育所が創意工夫を発揮しやすい環境を一層整備する観点から、調理、保存技術等の進歩を考慮しつつ、今回の見直しの実施状況等も踏まえながら、引き続き、調理室の必置規制について緩和を検討すべきである。
また、夜間保育所については、先般の労働基準法の改正により女性労働者に対する深夜業の規制が平成11年4月から解消されることにより、一層のニーズの拡大が見込まれるが、全国でわずか41か所にとどまっている。このため、例えば、原則30名以上とされている入所定員に関する規制や昼間の保育所と夜間保育所が併設されている場合の調理員の配置について規制の緩和を検討するなど、一層の夜間保育所の設置の促進に向けた対策を講ずるべきである。
イ 保育所の利用等
平成9年の児童福祉法の改正により、保育所に関する情報に基づき、保護者が希望する保育所を選択して利用できる仕組みに改められるとともに、
保育所も、保護者の依頼を受けて、申込書の提出を代行できることとされた。しかしながら、改正後においても、市町村が申込書の審査をした上で保育所への入所決定を行っており、その手続を速やかに行っていないために、保育の実施の決定の時期が遅くなるとの指摘がある。
このため、速やかに保育の可否を審査・決定するよう市町村を指導するなど、速やかな入所決定が行われるような仕組みを早急に検討し、改善措置を講ずるべきである。
また、現行では、地方公共団体や社会福祉法人等が設置する認可保育所に対しては、保育の質を確保するなどの観点から各種の規制(入所応諾義務、施設最低基準の遵守、市町村が保育料を設定、公的に支弁される運営費の使途制限等)が課されている反面、それ以外の認可外保育施設との間で公的助成の面で著しい格差がある。長期的には、多様な事業者間の対等な競争の促進等を通じ、保育所の利用者の選択を広げる観点から、保育所に対する補助ではなく利用者への直接補助方式の導入ができないか、その可否について検討すべきである。
(1)産学連携の促進
ア 国立大学教官の民間企業の社外役員兼業について
国家公務員が民間企業の役員を兼業することについては、憲法第15条で「公務員は、全体の奉仕者」であるとされていることを受け、国家公務員法(昭和22年法律第120号)第103条により原則禁止とされており、この適用除外を受けるためには、人事院規則に基づき、人事院の承認を得る必要があるとされている。この人事院規則に基づく許可は、現実にはほとんどなされてきておらず、国立大学教官の民間企業の役員兼業は皆無である。
しかし、今後、国際化、情報化を始めとする内外環境の変化や社会の急速な高齢化、環境制約の高まり等に適切に対応し、日本が活力ある社会であり続けるためには、技術革新を通じて経済・産業の活性化を図ることが欠かせない。国公私立大学研究者の研究活動と産業界の経済活動とを結びつける産学連携の一層の推進がその重要な鍵となる。本年8月に施行された「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号。以下「大学等技術移転促進法」という。)が、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進を図ることを通じて「我が国産業構造の転換の円滑化、国民経済の健全な発達及び学術の進展に寄与する」ことを目的としていることは、こうした考え方に基づいている。
大学における理工系・技術系の研究は、量的にもまた質的にも圧倒的に国立大学の比重が高いのが日本の現実である。これを踏まえれば、国立大学の教官等が産業界と協働して、大学における研究成果を産業界に移転し、その事業化・実用化を通じ、国民経済の健全な発展のために貢献することを可能とする仕組みを拡充することが必要である。また、大学の側から見れば、大学における研究成果を社会に普及するとともに、産業界のニーズ等を学術研究にもフィードバックすることは、経済社会の実態に触れることを通じ、大学における研究及び大学自体の活性化につながる。さらに、この観点からは、伝統的な理工系・技術系の分野にとらわれず、大学における研究の学際化、複合化等に対応できるよう幅広い分野について同様に考えることが必要である。
したがって、今後、文部省及び人事院が中心となり、産業界や関係省庁、学識経験者等の意見も踏まえつつ、国立大学教官の民間企業役員兼業について、できるだけ早急に結論を得るべく本年度中に検討に着手すべきである。また、大学等技術移転促進法に基づく承認を受けた技術移転機関(TLO)の役員との兼業については、TLOが法律の枠組みに基づき大学で開発された技術の移転に当たる機関であることにかんがみ、実需に応じ、一定の条件の下でこれを可能とする措置について、本年度中に本格的検討に着手し、可及的速やかに所要の措置を講ずるべきである。
「全体に奉仕」するという公務員のミッションも、それぞれの職の特質と時代の要請に応じてその在り方を見直していくことが必要である。さらにこの問題は、国立大学の教官が、自らの研究活動の延長の中で、また、大学における研究成果を産業界に移転していくための有効な方策として、教官自らが企業の役員を兼業する必要があるということであって、この点において行政官と国立大学教官とを一律に扱うことに必ずしも合理性があるとは言えないのではないか。
イ 国立大学と企業との共同研究等の研究成果の帰属及びその普及・活用について
現在、国立大学と企業との共同研究の結果生じた特許を受ける権利は、通常、国と企業との共有とされている。これは、昭和52年の学術審議会答申を受けた昭和53年の文部省学術国際局長・会計課長通知に「応用開発を目的とする特定の研究課題の下に行われた研究であって、国から特別の経費を受け、又は特別の研究目的のために設置された特殊な研究設備を使用して行った研究」の結果生じた特許を受ける権利は国に帰属するという記述があり、国立大学と企業との共同研究はこれに該当すると解釈されているからである。この場合、国立大学は、研究者、研究施設・設備等を提供し、企業と実質的に対等の立場になっていること、組織としての国立大学が特定の研究課題を提示していること、また、企業からの資金であっても一旦それが国庫に納入され国庫から支出される仕組みとなっていること等がその理由とされている。
しかしながら、大学における研究成果は社会に普及・活用されることが何より重要であるにもかかわらず、国有特許の活用は必ずしも十分には進んでいない。研究成果の普及・活用が進むことは、教官個人や大学に研究ニーズがフィード・バックされ、新しい研究及び研究成果を生み出すことにつながるものと考えられる。このためには、国が特許を受ける権利を有する研究成果の特許化とその実施化を一層推進する必要がある。
したがって、大学における研究成果の普及・活用を促進するため、当面、以下の措置を講ずるべきである。
特許権の申請が先願主義に基づくものであることにかんがみ、権利者が速やかに特許申請に着手できるよう、昭和53年の通知における特許を受ける権利のルールをできる限り一義的に明確なものとするとともに、国が特許を受ける権利を承継するかどうかを判断する各大学の発明委員会に係る運営の改善について、年度内を目途に各国立大学等に通知すべきである。
また、国有特許の実施化を促進するため、大学等技術移転促進法によって認定される技術移転事業者の活用が図られるよう、年度内を目途に所要の措置を講ずるべきである。
(2)大学教員の任期制
大学の教員等の任期に関する法律(平成9年法律第82号)により、教員の流動性向上による教育研究の活性化と多様な経験を通じた若手教員の育成のため、各大学の判断により、任期を定めた任用を行うことが可能となった。
同法第1条では、「大学等において多様な知識又は経験を有する教員等相互の学問的交流が不断に行われる状況を創出することが大学等における教育研究の活性化にとって重要である」としているが、施行後1年あまり経過した段階で、任期に関する規則を制定したのは19大学等にとどまっている。
今後、同法の趣旨にかんがみ、各大学の判断による任期制の導入が一層図られるようにするため、任期制の導入状況を把握し、大学及び社会一般に対して積極的に情報提供していくべきである。
(3)大学設置・運営の自由化・弾力化
ア 国立大学の人事・予算・会計・定員・組織の見直し
国立大学は国によって設置運営されるため、人事、予算、会計、組織編制等の面で、現在、多くの法令上の制限が課されている。例えば、教員人事の面については国家公務員としての制約があり、会計の面については国の財政処理に関する諸制度からの制約がある。
しかし、学問研究の高度化・複雑化や社会の急速な変化、大学と大学外の機関との連携の緊密化等の状況の中で、国立大学が教育研究の柔軟かつ機動的な運営を行うためには、国家公務員の人事制度や国の財政処理に関する基本原則を踏まえつつも、制度の思い切った見直しが求められる。このことは、我が国の大学が国際的な競争力を確保する上でも是非とも改善が望まれる課題である。
このため、それぞれの国立大学が自らが定めた教育研究目標を、自らの主体的で積極的な取組によって実現できるようにとの観点から、教育研究活動をより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱いなど、人事、会計、財務、組織編制等に係る規制の弾力化について、文部省は、これらの事項に関する一般的な制度を所管している関係官庁とともに速やかに検討を行い、時代の変化に合わせた事務手続の簡素合理化も含め、所要の措置を講ずるべきである。
イ 公私立大学の設置等認可制の見直し
現在、公私立大学の新設、学部・学科の設置、収容定員の変更については、文部大臣の認可を受けることとなっている。また、文部省は、認可に当たって、新しい大学、学部・学科等の新設については抑制的に対応するとの基本方針を採っている。
大学、学部・学科等の新設については、大学の自由な創意により行われ、大学の判断と自己責任を基本とし、国の関与は最小限のものとしていくべきである。これによって大学の教育研究活動の自由度が高まり、大学教育改革に向けてのインセンティブを与え、特色ある大学の一層の発展をもたらすと考える。このような観点から、認可に当たっては、過度な抑制によって大学の自由な教育研究活動が妨げられることのないようにすることが必要である。
また、全体としては抑制的に対応しつつも、実際の認可に当たっては、「平成12年度以降の大学設置に関する審査の取扱方針」(大学設置・学校法人審議会大学設置分科会決定)の中で、特定の分野での人材育成に係るものについては抑制的な対応の例外として扱うという運用がなされている。しかし、どのような分野で人材育成のニーズがあるかということは、広く社会からおのずから醸成されてくるものであり、これを各大学が迅速かつ的確にとらえ、それらを反映した人材育成を自ら主体的に行っていく必要がある。将来の社会を担うべき人材を育成し供給することは近時の大学に大きく期待されているところであり、どのような分野の人材を育成するかは正に大学の個性が発揮される場面であるから、大学の自主的・自律的な発展という観点から、これについては大学の判断を尊重すべきと考える。
さらに、定員についても、各大学が申請を行い、文部省が学科単位で定員の認可を行っており、私学助成の算定に当たって定員を用いている。各学部・学科の定員設定に関しては、大学が主体的な立場で社会的ニーズを判断し需要に応じて各学部・学科の定員設定を行うことができるようにする必要がある。また、入学定員の小規模な大学の定員超過率については、転学部・転学科、安易な進級、卒業の抑制に伴う留年の取扱いという観点から、弾力的に行えるよう見直しが行われたところではあるが、さらに各大学が自主性を生かして主体的に厳格な成績評価を実施することにより、大学としての特色を出せるようにすることが望ましいものであり、より一層の弾力化が求められる。
以上述べたように、大学の設置等認可に当たっては、各大学の創意工夫をいかすという観点から、どのような教育分野の学部・学科を設置するかなどについて、可能な限り各大学の自主的・自律的な判断が尊重されることが重要である。
したがって、18歳人口の減少期において高等教育の質の維持・向上を図りつつ、競争的環境の中で社会の変化に的確に対応できる創意と意欲ある大学が発展していくことができるように、現行の大学の設置等認可の審査の弾力化、手続の簡素化等を図るべきである。
具体的には、以下の点について改善を検討する必要がある。
1) 大学の設置等認可の際の定員超過率の取扱いの弾力化について
厳格な成績評価の実施の結果による留年生の増加が、大学等の設置認可の際の取扱いで不利になることがないように、大学の設置等認可における定員超過率の算定については、現行の収容定員に対する在学者の割合ではなく、入学定員に対する入学者の割合で算定すること
2) 収容定員の変更及び学部の学科の設置審査の弾力化について
社会等のニーズに迅速に対応できるよう、同一設置者内の大学・短期大学全体の定員の増加を伴わない範囲の収容定員の変更及び学部の学科の設置審査について、教育課程の審査を省略するなど大幅に審査を弾力化し、各大学が自らの判断と責任により、教育研究組織をより柔軟に設計できるようにすること
3) 教員審査の省略について
大学の教育研究水準の維持向上を図りつつ、大学改革を進め、社会の変化に機動的に対応していくため、教員の資格審査の対象を専任教員のみとし、兼担、兼任教員の採用を各大学の自主的判断・責任で行えるようにすること
4) 申請書類の見直し等について
申請書類の見直しを行い簡素化するとともに、電子化を行い申請者の負担軽減を図ること
5) 大学の設置等認可の審査体制について
今後の社会の変化を見通した大学の新しい試みにより一層適切に対応していく観点から、大学設置・学校法人審議会の委員について大学関係者以外からの積極的登用を図ること
なお、大学の立地については、工業(場)等制限法による規制があり、この制度の枠組みの在り方及び手法の妥当性等について抜本的な見直しを図るため現在国土審議会で検討が行われているところであるが、今後の高等教育機関の在り方を踏まえた緩和について検討を進めるべきである。
(注)工業(場)等制限法による大学等の立地規制に関しては、住宅・土地、公共工事分野に掲載。
(4)大学情報の公開及び運営の責任体制の確立と経営の効率化
ア 大学情報の公開と大学の評価
大学が社会からの要請に応えるためには、一層自律的・主体的な大学運営を可能とすることが必要であり、そのために大学の設置・運営の自由化・弾力化を図るべきであるが、教育研究情報や、財務状況などが十分に公開されていないのでは、大学サービスの需要者たる立場からは、非常に不透明で、リスクの高い選択を強いられることとなる。現在のところ、大学情報の公開についての統一的なルールは定められておらず、各大学の自主的な公開に任されているため、大学によっては情報公開が不十分なところも見られるのが実情である。また、どのような情報をどのような方法で公表していくことが効果的か等についての研究が、今後望まれるところである。
大学情報の積極的な提供については、大学審議会答申において、大学がその教育研究目標・計画、大学への入学や学習機会に関する情報等を広く国民に対して情報提供することとし、それを「制度上位置付ける」必要があるとするとともに、大学の財務状況に関する情報についても「公表を促進すること」とされている。
今後、教育サービスの需要者及び一般の国民が適切な情報を容易に入手できるよう、各大学が、教育研究等に関する情報の積極的な公開を進めることを、法令により制度上明確に位置付けるべきである。また、財務状況に関する情報も教育研究等に関する情報と等しく重要であることにかんがみ、各種会議の場における働きかけや私学関係団体に対する呼び掛けなどにより、併せて公表を促進していくべきである。
このような教育研究等及び財務状況に関する積極的な情報公開の進展があってこそ、大学評価の充実が可能となる。
大学の評価は、大学における教育研究の質を向上させていく上で非常に重要な要素である。これまでも大学の自己点検・評価が徐々に浸透してきている。また、大学審議会答申で、「多元的な評価を行い、大学の個性を伸ばし、教育内容の内容・方法の改善につなげるシステムを確立する必要がある」としている。
これに関して、大学審議会答申では、大学共同利用機関と同様の位置付けを有する第三者評価機関の設置が提言されている。大学の評価は、行政から距離を保った第三者としての客観的な立場から、社会の多元的な観点を反映しつつ行われることが肝要である。大学の評価は、この第三者評価機関とともに、多様な主体による多元的な評価を促進する観点が重要である。
したがって、民間の評価機関による国公私立大学の評価を促進する観点からも、大学の情報公開を一層促進するべきである。このためにも、国立大学の情報公開を率先して進めていくべきである。また、私立大学については、情報の公開の状況について調査を実施し、国民に公表するべきである。
イ 学校法人の収益事業
学校法人の収益事業については、私立学校法(昭和24年法律第270号)に基づく文部省告示(昭和25年)によって、学校法人が行うことのできない事業についての考え方を示すとともに、行うことのできる事業種類を列挙するという形で定められている。この告示は、昭和25年の制定以来、改正されておらず、列挙されている事業の種類も必ずしも今日の産業構造に応じたものとなっていない。
学校法人の収益事業は、学校法人がそれぞれの建学の趣旨に照らし、自らの学校の教育の質を高めていこうとする上でも重要であり、学校法人が自主的に判断し、機動的かつ弾力的に収益事業に取り組めるようにすることが必要である。特に、今後18歳人口の減少が見込まれる中で、学校法人がその経済基盤を確保していく上で、収益事業などによる収入源の多様化はより一層重要な意味を持ってくるものである。
このため、学校法人の行い得る収益事業の種類についての告示を、現在の産業構造に合った内容にするなど、基準がより明確になるように、平成11年度中に見直すべきである。
(5)大学入学資格検定制度の見直し
ア 受検科目免除の拡大
現在、大学入学資格検定試験については、受検資格者の学習成果を適切に評価する観点から、一定の学修を経た者について、大検の一部受検科目免除が行われている。
しかし、現在認められているのは42件の資格試験に過ぎず、社会的に行われている資格試験のごく一部にとどまっている。
今後、教育における多様性を一層許容していく観点から、受検科目免除の範囲の拡大を一層進めるべきである。特に、民間における資格試験実施団体との相談を積極的に進めるなどして、受検科目免除となる「知識及び技能に関する審査」の範囲のより一層の拡大を図るべきである。
イ 受検機会の拡大
大検は、制度上は年1回以上実施されることとなっているが、現在のところ、年1回の実施にとどまっている。
しかし、必要な1科目でも不合格となった者は、また翌年まで受検の機会が与えられないのでは、大学進学を志す者にとって大きな負担であり、将来の道を閉ざすことにもなりかねないことから、例えば問題作成方法の工夫等により、現在年間1回実施されている試験を複数回実施するなどの方途も含め、受検者の受検しやすさを確保し、受検機会を拡大していく方策を検討し、実施に移していくことが必要である。
このような観点から、当面、検定実施後の試験問題の公表について、平成11年度から実施すべきである。また、大検の一部の科目に合格している者が、所定の技能審査(英検準2級など)等の合格をもって大検全体の合格を申請する場合、現在は申請を行える期間が年間の一定期間(10月1日から3月31日)に限定されている。この通年処理化について速やかに検討に着手するなど、受検機会の拡大に向けた制度の改善に順次取り組むべきである。
(6)社会のニーズに応ずる大学院教育の促進と大学院の制度的位置付けの明確化
ア 高度専門職業人養成のための大学院の設置
社会の各分野における構造変化の進行に伴い、ますます高度な専門的知識・能力を持つ者が広く求められている。
しかし、現在の大学院は、研究者養成が中心となっており、職業と密接に結びついたシステム、教育内容とはなっていない。
このような状況に対応し、文部省において、大学院修士課程におけるこれまでの高度専門職業人の養成を更に進め、特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院の設置を促すため、関係法令の見直しを行うべきである。また、職業を持つ社会人の多様な再学習ニーズに応えるため、修士課程1年制コースや長期在学コースを設けるなど、柔軟な対応が可能となる仕組みとするよう、関係法令の改正に速やかに着手すべきである。
イ 大学院研究科の法的位置付け
現在、大学は学部を基礎として設置されており、大学院研究科の法的位置付けは必ずしも明確となっていない。
しかし、社会のニーズに応じた人材育成を行う機関として大学院を機能させるため、大学院の自主的・自律的な運営が可能となるような仕組みを整備することが必要であり、大学院の制度的な位置づけを明確化する必要がある。
このため、文部省において速やかに検討に着手し、法律事項に及ぶ場合は次期通常国会を目標にして、法律改正を行うべきである。
(7)単位互換及び大学以外の教育施設における学修の単位認定制度の拡大等(単位累積加算制度を含む)
ア 単位互換及び大学以外の教育施設における学修の単位認定制度
現在、単位互換及び大学以外の教育施設における学修の単位認定については、30単位が上限とされており、また、学外単位認定については認められる範囲が制限されている。
しかし、学生の選択の幅を広げ、国内及び海外の大学間のより一層の連携・交流を可能とする観点からは、これらの単位認定の上限や範囲について一層の拡大を図る必要がある。
このため、単位互換及び学外単位認定の単位数の上限を大幅に拡大するとともに、大学以外の教育施設における学修について、自大学の単位として認定できる範囲をより拡大することとし、平成10年度中に大学設置基準を改正すべきである。また、単位認定できる範囲についても、各大学の主体性が生かされるよう、拡大、弾力化の方向で見直しを行うべきである。
イ 単位累積加算制度について
現在、大学卒業の資格を得るためには、特定の大学に在学し、一定の単位を修得することが必要となっている。
しかし、生涯学習体系への移行、多様な高等教育機関の発達等の観点から、いわゆる単位累積加算制度(複数の高等教育機関で随時修得した単位を累積して加算し、一定の要件を満たした場合、大学卒業の資格を認定し、学士の学位を授与する制度)を設けることを検討すべきである。
規制緩和推進3か年計画において、「学位授与機構による単位累積加算制度について、その実施に向けて学位授与にふさわしい履修の体系性の確保等に関し、学位授与機構において速やかに本格的に検討する」こととしていることに沿い、今後、学位授与機構における調査研究の成果を踏まえ、大学審議会において検討を行うべきである。
ウ 4年未満の在学で学部を卒業できる措置の導入
現在、学校教育法(昭和22年法律第26号)において、「大学の修業年限は、4年とする」ことが定められている。大学院への進学という点では、学部に3年以上在学し優れた成績を修めたと大学院が認めた者については、3年間の学部教育でも大学院に進学する道が開かれたが、この場合、学部教育の全課程を修了するものではないため、学部卒業とはならず学士号を取得できない。
しかし、早期卒業の希望を持ち、厳格な成績評価の下で通常の学生よりも多くの授業科目を優れた成績で修得できる者については、その能力・適性に応じた教育を行い、優れた才能を一層伸長できるようにすることが必要であることから、修了年限4年の原則は維持しつつも、3年以上4年未満の在学で学部を卒業できる措置が大学の自律的な判断により可能となる仕組みについて速やかに検討を行い、必要な制度改正を行うべきである。
(8)大学における秋季入学の拡大等
大学における秋季入学については、現状では進んでいない。これについては、我が国において企業の採用が一般的に4月に行われることや、実際の導入に当たってはセメスター制などカリキュラム上の配慮が必要であるという事情もあるが、現行の学校教育法施行規則上「特別の必要があり、かつ、教育上支障がないとき」という限定がなされていることも一つの要因であると考えられる。
しかし、日本が国際社会の一員として一層の発展を遂げていくため、学年歴の異なる諸外国への留学及び我が国への留学生受入れを促進する必要があるとともに、大学入学機会の複数回化の観点からも、大学における秋季入学の一層の推進を図る必要がある。
このため、秋季入学が一層普及するよう、文部省において、平成10年度中に当該規定を改正するとともに、大学及び社会一般に対して、積極的に情報提供すべきである。また、当該規定の改正を踏まえ、各大学が秋季入学を積極的に行うことができるよう、各種の促進、弾力化のための措置を検討すべきである。
なお、秋季入学を実質的に推進していく観点からは、秋季入学者が大学を卒業する時点が他の学生と異なる場合を考慮し、企業がその採用活動において配慮することが期待される。
(9)大学の校地面積基準の見直し
大学設置基準において、大学における校地面積は校舎面積の3倍とすることが定められている。この3倍基準は、規制緩和推進3か年計画で「平成9年12月の大学審議会答申を踏まえ、現行の6倍基準を3倍基準に緩和する」としていることを受けて、大学設置基準を改正し、平成10年4月より施行したものである。
大学の校地面積基準については、大学における教育研究の質的充実に向けた取組を円滑ならしめるような在り方が重要であり、大学がより一層自律的・主体的に多様な教育研究活動を展開できるようにとの観点から、3倍基準の実施状況についてフォローアップが行われなくてはならないと考える。
また、「大学設置審査内規」(大学設置・学校法人審議会大学設置分科会決定)において、校地の基準面積の2分の1以上は自己所有であることが必要とされている。この点については、私立学校法の規定に照らし、本来学校法人はすべての土地を自己所有するべきところを、学校法人の経済的負担の軽減を図る観点から、特に2分の1の範囲で借地を認めるべく緩和したものであるとされている。しかし、経済社会情勢の変化に応じて資産管理の面においても柔軟な学校経営を行えるようにとの観点から、基準の在り方について見直す必要がある。
したがって、大学の校地面積の3倍基準の実施状況についてフォローアップを行うべきである。また、校地の基準面積の2分の1以上は自己所有とする現行基準についても、安定的・継続的な教育研究活動が実施できる財政的基盤を有しているものについては、弾力的な対応を検討すべきである。
(1)独占禁止法に係る課題について検討・見直し
ア いわゆる民民規制に関する取組
民間事業者又は事業者団体による事業活動の規制(いわゆる「民民規制」)に関し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法等公正かつ自由な競争を阻害・制限する行為を禁止している。また、規制緩和推進3か年計画においては、いわゆる民民規制の問題について、「公正取引委員会は、独占禁止法違反行為に対し同法に基づき厳正に対処するほか、その実態を調査し、競争制限的な民間慣行についてその是正を図る。また、その背後に競争制限的な行政指導が存在する場合には、公正取引委員会は、関係省庁に対しその早急な見直しを求めるなど所要の調整を行う」とされたところである。
公正取引委員会は、独占禁止法違反行為に対しては、民民規制の問題にも重点を置きつつ、厳正に対処してきている。また、同委員会は、競争政策の観点から、
1) 薬局・薬店に対する広告規制・出店規制等、
2) 公益法人等の自主基準・認証及び
3) 専門職業(司法書士・行政書士)の広告・報酬規制等
について実態調査を実施し、独占禁止法上問題となるおそれのある行為及びその背後に存在していた行政指導について、業界団体及び関係行政機関に対して、適切な改善措置を採ることを要請した。これを受けて、関係団体・機関では、改善へ向けた取組・検討を行っている。
いわゆる民民規制については、規制緩和・撤廃後の市場の公正な競争秩序を確保し、規制緩和等の効果を徹底するために、積極的に是正を図っていくことが重要である。このため、公正取引委員会においては、独占禁止法違反行為に対して引き続き厳正に対処するとともに、実態調査の結果に基づくものその他競争制限的な民間慣行の是正に一層注力していくこととすべきである。同時に、その他の各省庁においても、行政改革委員会最終意見の指摘を踏まえて、競争制限的な行政指導の早急な見直し等に取り組んでいくべきである。
なお、民民規制について、関係民間事業者の側も、独占禁止法違反の疑いがあると考えられる場合は、独占禁止法の手続規定に基づいてその事実を公正取引委員会に対し報告し、また、民民規制に関して競争制限的な行政指導が行われた場合には、行政手続法の規定に基づいて、当該省庁に対し当該行政指導に従わない旨の意思表明を行ったり、当該行政指導に係る書面の交付を求めるなど、公正な競争秩序を確保するために、既存の法律を積極的に活用すべきである。
イ 独禁法適用除外カルテル等制度の見直し
独占禁止法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律(昭和22年法律第138号。以下「適用除外法」という。)、及びその他の個別法には、独占禁止法の適用を除外する規定が置かれている。また、規制緩和推進3か年計画においては、独占禁止法適用除外カルテル等制度について、適用除外となる行為及び団体の全範囲について見直しを行った結果に基づいて、
1) 独占禁止法に基づく適用除外制度については不況カルテル制度・合理化カルテル制度等を廃止する、
2) 適用除外法に基づく適用除外制度については協同組織の団体に係るものを独占禁止法第24条の規定によることとし、その他のものは原則廃止し、適用除外法そのものを廃止する、
3) 個別法に基づく適用除外制度については、適用除外の範囲の限定及び手続規定を整備する、
4) これらのうち立法措置を必要とするものについては、平成11年の通常国会に改正法案を提出するなど所要の措置を行うものとする
とされたところであり、現在、改正法案の提出等に向けて準備が進められている。また、同計画により、期限を定めて引き続き検討することとされた自然独占に固有な行為(独占禁止法第21条)など計3項目については、現在、公正取引委員会及び関係省庁において、結論を得るべく検討が進められている。
独占禁止法適用除外制度を必要最小限とすることは、公正かつ自由な競争の促進に資し、規制緩和とともに、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会の実現にとって重要であり、公正取引委員会及び関係省庁は、同計画に盛り込まれた措置内容の着実かつ完全な実施を図るべきである。なお、個別法における独禁法適用除外カルテル等制度についても、今後の状況の変化を踏まえつつ、廃止を含めその在り方を検討すべきである。
ウ 著作物の再販売価格維持制度
ある商品のメーカー等が、取引先である卸売業者や小売業者に対して、卸売価格や小売価格を指示してこれを維持させる行為は一般に「再販売価格維持行為」(以下「再販行為」という。)と呼ばれており、独占禁止法により、「不公正な取引方法」として禁止されている。ただし、著作物については、発行者等が再販行為を行っても一定の条件の下で独占禁止法が適用されず、再販行為が認められることとされている。(公正取引委員会の運用解釈により、再販行為が認められる「著作物」は、書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CDに限定されている。)
これに関し、規制緩和推進3か年計画においては、「著作物(書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)の再販売価格維持制度については、独占禁止法上原則禁止されている再販行為に関する適用除外制度であることから、制度を維持すべき相当の特別な理由が必要であり、今後、行政改革委員会最終意見の指摘する論点に係る議論を深めつつ、適切な措置を講ずるものとする。当面、現行の再販制度の下で見られる各種の流通・取引慣行上の弊害について、消費者利益確保の観点から、迅速かつ的確にその是正を図ることとする」とされたところである。
公正取引委員会としては、著作物再販制度自体の存廃について引き続き検討し、平成13年春を目途に結論を得ることとしている。なお、本年12月、同委員会が時限再販・部分再販等再販制度運用の弾力化など関係業界における弊害是正等の状況の実態を取りまとめ、公表したところである。
再販行為は、流通段階における価格競争を直接制限するなど、市場における公正かつ自由な競争の維持・促進を阻害し、消費者利益を損なうものとして、経済活動の基本ルールである独占禁止法上原則禁止とされていることから、著作物の再販売価格維持制度を維持するにはそのための相当の特別の理由が必要である。この点に関し、行政改革委員会最終意見は、「現行再販制度を維持すべき『相当の特別な理由』があるとする十分な論拠は見出せないとの認識が、国民に十分に浸透されていくことを期待するとともに、著作物の再販制度について、国民の議論を深め、その理解を踏まえて速やかに適切な措置を講じるべきである」との見解を示しているが、当委員会としても、同様の観点から公正取引委員会における検討状況を注視するとともに、当面、弊害是正の状況を注視する。
エ 大規模会社の株式保有総額制限の見直し
独占禁止法では、事業支配力の過度の集中防止を目的として、金融業以外の事業を営む株式会社で、資本の額が350億円以上又は純資産の額が1,400億円以上の会社は、自己の資本金又は純資産のいずれか多い額を超えて、国内の会社の株式を取得し又は所有することを原則として禁止している。また、規制緩和推進3か年計画において、「禁止される持株会社の範囲、大規模会社の株式保有総額制限の対象となる株式の範囲等について、平成9年の改正独占禁止法附則の見直し規定を踏まえ、必要な検討を行う」とされたところである。
しかし、大規模会社の株式保有総額制限については、資本金又は純資産額の規模により企業の株式保有を外形的に規制するものであることから、今日の日本経済の規模に照らした場合に、企業の事業活動に対する過重な制限となるおそれがある。
一方、平成9年の改正独占禁止法附則の規定によれば、この制限の対象となる株式の範囲については平成14年に見直しを行うものとされている。
したがって、大規模会社の株式保有総額制限については、平成14年の見直しに当たって、産業及び企業の国際競争や構造改革が激しく行われていることを勘案し、適用除外株式の範囲及び裾切要件について大幅な拡大及び引上げを行うべきである。
オ 民事的救済制度の検討
規制緩和推進3か年計画では、「公正でかつ内外に開かれた市場の実現を妨げる行為により不利益を被った者が自らのイニシアティブと責任においてその救済を図るための民事的救済制度の整備についての検討を行い、結論を得る」とされた。
現在、公正取引委員会は、「独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度に関する研究会」を開催して差止制度の導入について検討しており、現在、中間的報告書を取りまとめているところである。同報告書の取りまとめ後に損害賠償請求制度の活性化の方策について検討を行った上で最終的な結論を得ることとしている。また、通産省「企業法制研究会」においては、平成10年6月に報告書「不公正な競争行為に対する民事的救済制度の在り方について」を取りまとめ、不公正な競争行為に対する差止制度導入の必要性について提言した。
民事的救済制度については、規制緩和推進のための基盤的条件の整備の観点から、有効かつ整合的な制度となるよう検討を進め、結論を得るべきである。
(2)消費者契約法(仮称)の動向注視
国民生活審議会消費者政策部会においては、平成10年1月、消費者と事業者の間で締結される契約(消費者契約)のすべてを対象とし、消費者契約の締結過程及び内容の適正化を図ることを目的とする消費者契約法(仮称)について、以下のような内容の中間報告を取りまとめた。
(契約締結過程)
1) 事業者が、消費者の判断に必要な重要事項について、情報を提供しなかった場合、または不実のことを告げた場合であって、そうでなければ消費者が契約締結の意思決定を行わなかった場合には、消費者は当該契約を取り消すことができる。
2) 事業者が、消費者に対して威迫(必ずしも強迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為)・困惑(困り戸惑わせるような行為)行為を行った場合であって、当該行為がなかったならば消費者が契約締結の意思決定を行わなかった場合には、消費者は当該契約を取り消すことができる。
(契約の内容面)
3) 信義誠実の要請に反して、消費者に不当に不利益な契約条項を不当条項とし、不当条項は、効力を生じないこととする。
同部会においては、その後中間報告に対する関係各界の意見のヒアリングを実施し、それを踏まえ、引き続き民事ルールの内容と、その実効性を確保するための方策について審議を行っている。
規制緩和など経済構造改革の進展に伴い、政策運営の基本原則を事前規制から市場ルールの整備へと転換する必要がある中で、ルールの制定に当たっては、消費者・事業者双方の自己責任に基づいた経済活動を促す公正なルールであるとの観点が重要であり、今後とも国民生活審議会における審議及び法案策定作業等を注視していく。
〇法曹人口の大幅増員と関連問題
司法試験に合格し、司法修習を終えないと、原則として法曹(裁判官、検察官、弁護士)資格を得ることができない。司法試験合格者は司法試験考査委員の合議によって定められており、合格者は最近の数年間は700名程度とされてきた。しかしながら、規制緩和が進む中で自己責任の原則が一層強く求められており、その際の社会的インフラとしての司法の機能強化が重要になる。現在の日本の司法機能を更に充実するには、欧米諸国と比較しても極端に少ない法曹人口を大幅に増員することが不可欠である。
規制緩和推進3か年計画に基づき、司法試験合格者を1,000人程度へ増加するための所要の法案が既に第142回国会で成立し、本年度812名、来年度からは1,000名程度への増員を行うこととなっているが、法曹養成制度等改革協議会の多数意見に示された中期的課題である1,500名程度への増員については、検討項目である修習の内容や方法、受入れ態勢の問題の調査・検討を行い、早急に結論を出すべきである。
また、法曹三者の協議の在り方については、過去の国会の附帯決議により、三者の合意を得るよう努めることとされているが、法曹人口の大幅増員に関連する問題についての検討は国民的見地に立って行われる必要がある。したがって、司法機能の速やかな強化を求める国民各層からの意見を踏まえ、中立的な立場で行う新たな検討の場を設けることも含めて、この問題について適切かつ迅速に検討を進め、早急に結論を出すべきである。
さらに、国際化、技術化が高度に進む最近の企業の経営環境の下で一定の法務業務に従事する場合、司法修習に十分に代替する実務経験と認めることが可能な場合がある。したがって、司法試験に合格後、民間における一定の実務経験等を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件等を含めた制度的な検討を行うべきである。
なお、司法試験合格後、司法修習を経ない者に対する法曹資格の付与に関しては、現在、裁判所事務官、法務事務官、法制局参事官等、官の部門における実務経験が司法修習に代わるものとして認められている。