第2章 行政分野別各論(各論その1)

1 競争政策等

(1)競争政策における透明性の確保

(1-1)合併等の事前届出に係る事前相談の在り方

 会社の合併及び営業譲受け等のうち一定以上の規模のものについては、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)により、公正取引委員会への届出が義務付けられている。実務的には、正式の届出前に合併を計画している企業から公正取引委員会に事前相談が行われることがある。

 この合併・営業譲受け等の届出制度については、規制緩和推進3か年計画(平成10年3月31日閣議決定)において「合併・営業譲受け等の届出制度・・・について、制度の趣旨・目的、企業の負担軽減、国際的整合性の確保等の観点から、裾切り要件の導入、引上げ等を行う」こととされ、独占禁止法第15条及び第16条の改正が行われ(本年1月施行)、合併・営業譲受け等の届出制度について一定の裾切り要件が導入された。

 合併及び営業譲受け等の事前届出制度に係る事前相談は、法令に基づく制度ではなく事業者の要望により任意で行われるものであり、事業者は事前相談の結果に納得できない場合には、当初の計画を届け出て、正式な手続による判断を求めることができる。事前相談の透明性を確保するため、公正取引委員会は、主要な事例については、事業者の秘密に関する部分を除き、その概要を公表している。また、公正取引委員会は、事前相談において、競争を制限するおそれがあると考えられる場合には、問題点を指摘しているが、その具体的な解決方法はあくまでも相談者の自主的な判断によるものであるとしている。

 事前相談は、実際に合併・営業譲受け等を行おうとする会社にとって、独占禁止法違反を理由として届出後に措置を受けるリスクを回避するという観点からは有益であるが、事前相談という非公式の場で公正取引委員会によって、正式の審査を経ることなく合併の当否が実質的に決定されてしまうこととなれば問題である。また、公正取引委員会から相談者に問題点の指摘が行われた場合に、相談者が自由かつ公正な競争を促進するという観点から必要とされること以上の内容の措置を講じてしまう結果となることを防ぐ方策を採ることが必要である。

 このため、合併等の事前届出に係る事前相談について、透明性の向上を通じて内容の適正を確保する観点から、以下の方策を採るべきである。 1)事前相談においては、あくまで最終的な判断は、届出を受けて審査した上で行うことを明確に企業に伝える。 2)相談者の質問については引き続き書面で回答を行うことを励行する。 3)問題点の指摘を行う場合には、相談者が必要とされる措置を適切に講じることができるよう、問題点とその考え方について具体的で適切な説明を行う。 4)事前相談の事例の公表を充実する。

(1-2)警告及び注意の在り方

 ア 警告及び注意における透明性の向上

 公正取引委員会は、独占禁止法に違反する疑いがある場合で法的措置である「勧告」に足る証拠が得られなかった場合に「警告」を行い、違反につながるおそれのある行為が見られた場合に「注意」を行っている。このうち警告についてはそれが行われる都度、個別の関係人の概要、被疑事実の概要、排除措置等について公表しているが、注意については、違反の未然防止の観点から行われる指摘という性格上、個別の内容公表にはなじまないとの考えから、年次報告において業種・行為類型別の分類を概括して示すにとどまっている。

 このため、現在都度行われている警告の内容公表については引き続きこれを励行するとともに、注意についての公表内容については、更に具体性を高めるべきである。また、注意については、適切な運用が行われることを促進するために、どのような点が違反につながるおそれがあるのかの判断根拠をできる限り具体化、明確化して公表するべきである。そのように判断についての考え方を公表し具体性を高めることで、違反の未然防止を図るという注意の役割をより適切に果たすことが可能になると考える。

 イ 不当廉売に関する注意の在り方

 独占禁止法上、「事業者は不公正な取引方法を用いてはならない」(同法第19条)とされるとともに、「不公正な取引方法とは『不当な対価をもって取引すること』等一定の要件に該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう」(同法第2条第9項)とされている。これを受けて、不公正な取引方法の一般指定(昭和57年公正取引委員会告示第15号)では、「正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る価格その他不当に低い価格で継続して販売し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」を不当廉売として規定している。

 現在、公正取引委員会が行う注意の対象となった案件のうち最も多いのは不当廉売の案件であり、平成10年度における不当廉売に関する注意の件数は計599件に達している。

 しかしながら、多くの競争者が存在し、支配的地位を占める事業者が認められないような一部の小売市場において行われる不当廉売に関する注意については、むしろ注意を行うことで公正な競争が阻害され、消費者にとって好ましくない影響を及ぼすおそれがあると考えられる。したがって、不公正な取引方法の一般指定における不当廉売規定の運用については、他の事業者の事業活動を困難にさせることで支配的地位を確保し、その後に独占的な市場が形成される等、消費者にとって好ましくない影響を与えることが認められる市場で行われる廉売行為に限定することとすべきである。

(2)独占禁止法第21条及び第24条の見直し

 独占禁止法第21条は、「鉄道事業、電気事業、瓦斯事業その他その性質上当然に独占となる事業を営む者の行う生産、販売又は供給に関する行為であつてその事業に固有のもの」については、同法の規定を「適用しない」としている。

 また、独占禁止法第24条は、以下に掲げる「要件を備え、且つ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為」には、同法の規定を「適用しない。但し、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りではない。」とし、次の要件を掲げている。
 1)小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること
 2)任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること
 3)各組合員が平等の議決権を有すること
 4)組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること

 規制緩和推進3か年計画(改定)(平成11年3月30日閣議決定)では、このうちまず、自然独占に固有な行為(独占禁止法第21条)については、「規定の削除に関し引き続き必要な検討を行い、平成11年末までに結論を得る」とするとともに、一定の組合の行為(独占禁止法第24条)については、「適用除外の範囲の限定・明確化を図るため、ただし書規定の整備について引き続き検討を行い、平成11年末までに結論を得る」こととされ、現在、公正取引委員会が関係省庁との協議を行っている。

 独占禁止法の適用除外を必要最小限とすることは、自由・公正な競争の促進を通じて、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会の実現を目指す規制改革にとって重要である。独占禁止法第21条の自然独占に固有な行為の規定については、近年の関係各分野における改革の進展及び社会経済の変化や技術進歩等に伴って既に適用除外規定を置く特段の事情はなくなっており、むしろ積極的に競争政策の適用を図るべきである。また同法第24条の一定の組合の行為についての規定については、要件の厳格化が必要である。

 以上を踏まえ、規制改革委員会としては、規制緩和3か年計画に記載されたとおりの内容の結論が平成11年末までに得られるよう、この問題についての公正取引委員会の取組状況を引き続き注視していく。

(3)著作物の再販売価格維持制度の見直しの検討状況等(※)

 ある商品のメーカー等が、取引先である卸売業者や小売業者に対して、卸売価格や小売価格を指示してこれを維持させる行為は、一般に「再販売価格維持行為」(以下「再販行為」という。)と呼ばれており、独占禁止法により「不公正な取引方法」として禁止されている。ただし、著作物については、発行者等が再販行為を行っても一定の条件の下で独占禁止法が適用されず、再販行為が認められることとされている。現在は、公正取引委員会の運用解釈により、再販行為が認められる「著作物」は、書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CDに限定されている。

 これに関し、規制緩和推進3か年計画(改定)においては、「著作物(書籍・雑誌、新聞、レコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)の再販売価格維持制度については、独占禁止法上原則禁止されている再販行為に関する適用除外制度であることから、制度を維持すべき相当の特別な理由が必要であり、今後、行政改革委員会最終意見の指摘する論点に係る議論を深めつつ、適切な措置を講ずるものとする。当面、現行の再販制度の下で見られる各種の流通・取引慣行上の弊害について、消費者利益確保の観点から、迅速かつ的確にその是正を図ることとする。」とされたところである。

 これを受けて公正取引委員会においては、著作物の再販売価格維持制度の存廃について引き続き検討を行い、平成13年春を目途に結論を得ることとしている。

 なお、この問題に関連して最近採られた措置としては次のようなものがある。

 まず、著作物の再販売価格維持制度の見直しに伴い、問題点が指摘されていた「新聞業における特定の不公正な取引方法」(昭和39年公正取引委員会告示第14号)について、公正取引委員会は本年7月、以下の内容の改正を行った。
 1)「学校教育教材用であること、大量一括購読者向けであることその他正当かつ合理的な理由をもってする」新聞の異なる定価の設定又は定価の割引については、不公正な取引方法に該当しないことを明確化する。
 2)新聞特殊指定の対象となる販売業者は、「新聞を戸別配達の方法により販売することを業とする者」とする。
 3)発行業者が販売業者に指示して注文部数自体を増やすようにさせる行為についても、不公正な取引方法として規制されることを明確化する。
 4)新聞特殊指定の対象となる「日刊新聞」の範囲を限定・明確化する。

 また、公正取引委員会は、本年9月、事業者間の公正な競争の確保に資するとの考えから、「出版物小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」の一部変更を行った。

 再販行為は、流通段階における価格競争を直接制限するなど、市場における公正かつ自由な競争の維持・促進を阻害し、消費者利益を損なうものとして、経済活動の基本ルールである独占禁止法上原則禁止とされているものであり、著作物の再販売価格維持制度を維持するにはそのための相当の特別の理由が必要である。この点に関し、行政改革委員会最終意見は、「現行再販制度を維持すべき『相当の特別な理由』があるとする十分な論拠は見出せないとの認識が、国民に十分に浸透されていくことを期待するとともに、著作物の再販制度について、国民の議論を深め、その理解を踏まえて速やかに適切な措置を講じるべきである」との見解を示しているが、当委員会としても、引き続き同様の観点から、公正取引委員会における検討状況を注視するとともに、当面、弊害是正の状況を注視していく。

(4)民事的救済制度の検討状況(※)

 規制緩和推進3か年計画(改定)では、「民事的救済制度については、規制改革推進のための基盤的条件の整備の観点から、有効かつ整合的な制度となるよう、平成11年度中に結論を得ることを目指して検討を進める」こととされた。

 通商産業省は、平成10年6月、企業法制研究会において報告書「不公正な競争行為に対する民事的救済制度のあり方」を取りまとめ、不公正な競争行為に対する差止請求制度導入の必要性について提言した。

 公正取引委員会は、独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度に関する研究会を開催して、1)独占禁止法違反行為に対する私人による差止訴訟制度の導入、2)独占禁止法違反行為に係る損害賠償訴訟制度の充実について検討を行い、平成10年12月に中間的な報告書を取りまとめた後、本年10月に最終的な検討結果に関しての報告書を公表した。

 民事的救済制度については、規制改革を推進するための基盤的条件を整備する観点から、有効かつ整合的な制度となるよう検討を進め、結論を得るべきであり、規制改革委員会としても引き続き検討状況を注視していく。

(5)消費者契約法(仮称)の動向

 消費者契約法(仮称)に関して、規制緩和推進3か年計画(改定)では、「規制改革の一環として、消費者・事業者双方の自己責任に基づいた経済活動を促す公正なルールを確立するという観点から、消費者と事業者の間で締結される契約に広く適用される民事ルールの検討を推進する」こととされた。

 国民生活審議会消費者政策部会は、平成11年1月、「消費者と事業者の間で締結される契約を幅広く対象として、その適正化を図るため、具体的な民事ルールを規定する消費者契約法(仮称)をできる限り速やかに制定すべきである」との報告を取りまとめた。同部会ではその後、その下に検討委員会を設けて関係各界から意見を聴取するなど、取引の実情やトラブルの実態を踏まえた審議を行い、立法に当たっての基本的な考え方の取りまとめを行っている。

 規制改革などの経済構造改革の進展に伴い、政策運営の基本原則を事前規制から市場ルールの整備へと転換する必要がある中で、消費者契約法(仮称)については、消費者、事業者双方の自己責任に基づいた経済活動を促す公正なルールであることが必要であり、消費者と事業者の間の紛争の円滑かつ迅速な解決に資するためにも、消費者契約法(仮称)の各規定については、要件が明確で予見可能性の高いものとすべきである。規制改革委員会としても、国民生活審議会における審議及び法案策定作業を引き続き注視していく。


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