3 金融・証券・保険

(1)「他業禁止」に係る規制の見直し

 銀行及び保険会社の「他業禁止」に係る規制については、本業以外の業務を営むことによる異種のリスクの混入を阻止すること、銀行業務又は保険業務に専念することにより効率性を発揮すること、利益相反取引を防止することなどにその趣旨があるとされている。こうした趣旨を踏まえて、金融システム改革法(金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成10年法律第107号)をいう。以下同じ。)においては、資産運用手段の充実、企業の資金調達の円滑化・多様化、多様なサービスの提供などとともに、本体業務の範囲及び子会社・関連会社等の業務範囲が整理された。

 免許制の下において銀行等の業務範囲に一定の制限が課されることについては理解できるが、「他業禁止」に係る規制については、金融・情報通信技術の発展や金融業界の再編の流れに対応できないものとなっていないかという見地からの検討が必要であり、そうした見地から見直しを行うべきである。

(1-1)銀行及び保険会社本体の業務範囲の見直し

 1)銀行及び保険会社の資産運用・ファイナンスに関する助言
 2)銀行のパソコンソフトの顧客向け販売
 3)銀行の利用回線のリセール

 これらの業務については、銀行及び保険会社の経営を不安定にするものとはいえず、銀行業務又は保険業務と極めて密接な関係を有し、経営効率を高めるための業務であれば、銀行又は保険会社本体が行うことには支障がないと考えられる。

 したがって、銀行業務又は保険業務と密接な関係を有し、経営効率を高めると思われる業務を、銀行又は保険会社本体で行うことについて、利用者保護の観点を含め検討を開始し、平成13年度末までに、銀行及び保険会社本体の業務範囲についての考え方を整理し、結論を得るべきである。

(1-2)子会社に対する規制の見直し

 ア 従属業務と金融関連業務の兼営

 銀行及び保険会社は、従属業務(銀行又は保険会社の営む業務に従属する業務)を営む会社と金融関連業務(銀行業又は保険業に付随し若しくは関連する業務)を営む会社を子会社とすることができるが、現在は、各業法上それぞれの子会社を別にしなければならないとされている。

 銀行及び保険会社の分社化経営においては、子会社の機能を業務の近接性に応じて自由に再編し、グループとしての経営効率の向上を図っていくことを可能とすることが、顧客サービスの改善にもつながる。この観点から、子会社が効率的な経営を行うことができるかが、グループ経営の大きな課題とされている。

 したがって、子会社の効率的な経営を可能とする観点から、グループ全体でのリスク管理という点に十分留意しつつ検討を始め、平成13年度末までに、銀行及び保険会社の子会社が従属業務と金融関連業務を兼営することについて結論を得るべきである。

 イ 従属子会社の収入依存度規制の緩和

 従属業務を営む銀行又は保険会社の子会社は、主として親銀行、親保険会社又はそれらの子会社の営む業務のためにその業務を営んでいる会社と位置付けられており、各法令において、親銀行又は親保険会社やそれらの子会社からの収入依存度(親銀行等のために業務を行うことによって得られる営業収入を当該業務に係る営業収入の総額で除した比率)について、原則として90%以上とすべきとされている。

 他方、競争政策上の観点から、公正取引委員会の独占禁止法第11条ガイドラインにおいては、金融業が認可を受けて5%を超えて株式を保有できる従属業務子会社の要件として、収入依存度が原則として50%以上であることとされている。

 銀行法又は保険業法の他業制限の規定を根拠に、一般事業に起因する異種のリスクが親銀行又は親保険会社に波及すること等を防止するといった観点で独占禁止法ガイドラインと異なる収入依存度規制がかけられている趣旨と見受けられるが、そのような厳格な規制は子会社の経営効率を損なう可能性があると考えられ、したがって、平成13年度末までに、子会社経営の効率化の観点から、収入依存度規制を緩和することについて結論を得るべきである。

 ウ 子会社等の業務範囲の拡大

 銀行及び保険会社の子会社の業務範囲については、他業禁止の観点から、法令上に個別に列記されている。この中で、例えば、リース業務を営む子会社については、原則としていわゆるファイナンス・リース業務に限定されている。金融システム改革法の施行前においては、銀行の子会社にリース業務は認められておらず、銀行のいわゆる5%関連会社にのみ銀行業務の周辺業務として認められていた経緯があるが、金融監督庁の事務ガイドラインにおいて「5%関連会社が現に行っている業務についてのみの特例措置として、当分の間認める」との取扱いの下、いわゆるファイナンス・リースに限定されず、リース会社としてリース全般の業務を行うことができることとなっている。

 ファイナンス・リースも含むリース業務については、業法上でその定義が不明確であるため、一般的な定義にかかわらず、実務上は、当該業務の実体を踏まえた上で、設備資金の貸付けと同一の経済的効果を有するかどうかという観点から、子会社が行い得る金融関連業務に該当するかどうか判断されているとのことであるが、「他業禁止」の今日的意義の検討を踏まえた上で、子会社の経営効率の改善という観点から、平成13年度末までに、銀行等の子会社に対していわゆるファイナンス・リース以外のリース業務を認めることについて結論を得るべきである。

 エ 業務範囲規制の適用対象範囲の見直し

 現在、保険会社の子会社等は業務範囲が規制されているが、その規制の適用対象範囲は、金融監督庁の事務ガイドラインにおいて、「保険会社の子会社(保険業法第2条第13項に規定する子会社(同項の規定により子会社とみなされる会社を含む。)をいう。)、子法人等(保険業法施行令第2条の2第2項に規定する子法人等(子会社を除く。)をいう。)及び関連法人等(同条第3項に規定する関連法人等をいう。)」とされている。

 なお、ここで、関連法人等とは、保険会社が出資、取締役その他これに準ずる役職への当該保険会社の役員若しくは使用人である者若しくはこれらであった者の就任、融資、債務の保証若しくは担保の提供等を通じて、財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる法人等をいうとされている。

 しかしながら、保険会社が実質的に支配している子会社や子法人等に業務範囲規制を適用することは、他業禁止の趣旨から理解し得るとしても、保険会社との間に直接の支配・従属関係のない関連法人等にまで同じ規制を課すことは過重なものとなっており、同法人等の経営に必要以上の制約を及ぼし、その効率性を損なう可能性がないではない。

 したがって、平成13年度末までに、保険会社の子会社等の業務範囲規制の適用対象は、保険業法上の子会社と子法人等に限定することについて結論を得るべきである。

(1-3)銀行等による保険商品の販売とその範囲拡大

 保険募集を行う者は、保険業法上、現在は、生命保険募集人、損害保険代理店等に限定されており、銀行等は保険商品の販売(保険募集)ができない。

 また、規制緩和推進3か年計画(改定)では、「銀行等による保険商品の販売について、弊害防止措置等を講じた上で、住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険については、平成13年までには銀行等による販売を認めるとともに、それ以外の保険商品についても、早期に銀行等による販売の対象とすることを検討する。住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険については、銀行等の販売はその銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことを検討する。」とされたところである。

 銀行等による保険商品の販売が早期にかつ幅広く認められないと、販売チャネルの多様化・効率化や、契約者のワンストップ・ショッピングのニーズにも対応できないと考える。

 したがって、上記の2品目については、弊害防止措置等を講じた上で、遅くとも平成13年までには、銀行等による販売を認めるべきである。また、それ以外の保険商品についても銀行等による販売対象とすること及び銀行等の販売する保険商品はその銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことについて引き続き検討を行い、平成12年度中に結論を得るべきである。

(1-4)ノンバンク等異業種のCD・ATMからの銀行預金引き出し

 ノンバンク等異業種のCD・ATM(現金自動支払機又は現金自動預払機)のうち、銀行が占有管理していないものについては、銀行の支店その他の営業所に該当しないことから、銀行預金を引き出すのに利用することができない。

 しかしながら、CD・ATMの相互接続の状況を見ると、銀行間の相互接続に加え、郵便局のCD・ATMからも預金引出しができるようになってきている。さらに、銀行等の再編・提携が進む中、今後、証券会社や保険会社との相互接続についても要望が強まるものと思われる。

 銀行の店舗やCD・ATMを行政が事前に規制するという発想から転換し、利用者の利便を更に高める観点から、異業種のCD・ATMからも銀行預金が引き出すことができるよう検討を始め、平成13年度末までに結論を得るべきである。

(2)イノベーションに伴う新たな金融商品・サービスの提供等の促進

 金融・経済の国際化の進展や金融・情報通信技術の発展は、金融システムのイノベーションを促し、多様で魅力的な商品・サービスの提供を可能としてきている。こうした流れの中にあって、21世紀を展望した金融サービスの在り方などが議論されている。新しい金融の流れを支え、金融イノベーションを促進するためには、金融仲介者の創意工夫が発揮される枠組みを提供する必要がある。他方、利用者保護を図りつつ、自己責任原則を徹底できる状況を更に醸成していくことも必要である。

 したがって、今後の金融のルールについては、利用者保護と金融仲介者の創意工夫とのバランスの取れた規制等のルールを形成し、新たな金融商品・サービスの提供等の促進が図られることが重要である。

(2-1)有価証券募集に際しての目論見書交付の簡素化

 証券取引法上、有価証券の募集又は売出し等に際しては、投資家保護の観点から、投資家に対して、あらかじめ又は同時に目論見書を交付することが義務付けられている。目論見書とは、有価証券の募集又は売出し等のためにその相手方に提供する当該有価証券の発行者の事業等に関する説明を記載した文書をいい、有価証券の募集又は売出しに際して、一般投資家が得ることのできる直接的な開示情報である。

 また、投資判断をするに当たり、有価証券届出書を見ることはむしろ少ないことから、目論見書が投資に際しての判断材料としての重要な機能を果たしている。加えて、一般投資家は、募集又は売出しに際し、通常、発行会社、引受人、証券会社等から投資の勧誘を受け又は一定の期限が来れば失権する等により短期間内での投資判断を行うこととなるのが通常である。このような状況の中で自己責任において的確な判断をするためには、有価証券届出書による間接的な開示情報では不十分であることから、投資家に対し直接的な情報開示が必要との観点から設けられた制度である。

 現在進行中の日本版ビッグバンを混乱無く、かつ、確実に実現していくためには、より一層適正かつ十分な情報が投資家に開示されていなければ実現されず、これ無くしてはかえって市場拡大の阻害の要因になりかねないものと考える。

 しかしながら、目論見書の交付がこれらの要請を受け、必要以上のコストや時間が掛かることとなれば、かえって投資家及び発行者にとり効率的な資金配分が損なわれる場合もあると考えられる。投資家保護を図りつつ、より効率的な取引を可能とすることは、投資家にとっても金融イノベーションの成果を享受することにも資するものである。

 この問題に関しては、現在、有価証券報告書等の開示書類の電子化について検討が進められているところであるが、これと併せて、十分な投資家保護を維持しつつも、平成13年度末までに、投資家自らが選択した場合にはより簡素な目論見書交付も可能とするなどの目論見書交付の簡素・合理化の措置を行うべきである。

(2-2)認可投資顧問業者による合同運用の解禁

 認可投資顧問業者は、相対契約を締結した顧客のために忠実に投資顧問業を行う必要があり、個々の顧客との間で忠実義務を果たすために、各顧客の契約資産について個別に運用判断をしている。金融システム改革法の施行後は、投資顧問業者が投資信託委託業を兼業することが認められたことにより、投資信託委託業者として私募投資信託を設定することによって、複数の顧客資産を合同運用することは可能となったものの、個々の顧客に対する忠実義務を全うさせる観点から、投資顧問業者としての合同運用は認められていない。

 しかしながら、認可投資顧問業者が、投資家の判断を踏まえて、合同運用することができるようにすれば、より効率的な資産運用が可能となるほか、新たな金融商品の開発にも資する。

 したがって、投資家保護に十分留意しつつ、認可投資顧問業者が顧客資産を合同運用できることとすることについて、平成12年度中に結論を得るべきである。

(2-3)個別株オプション取引における反対売買との相殺

 個別株オプション取引において顧客が権利行使を行うと、オプションの対象となっている株券の売買が成立し、所定の決済日に証券会社との間で株券と代金の受渡しを行うこととなるが、当該顧客が同一株券の反対売買を同じ日に決済するとしても、それぞれ別の取引として決済する仕組みとなっているため、それを相殺することができず、それぞれの取引について株券と代金を受け渡す必要がある。

 このような現状は、投資家の利便性が低く、受渡しのリスクを伴っていることから、投資家の利便性を高めると同時に、取引の安全性を高める観点から、平成12年度中に、相殺を可能とするよう必要な措置を講ずるべきである。

(2-4)保険商品の届出対象商品の拡大

 規制緩和推進3か年計画(改定)においては、「届出制の対象となる保険商品の範囲を大幅に拡大することとし、情報力・交渉力が比較的高いと考えられる、企業や年金基金等に対する保険については、早期の届出制への移行に向けて、また、家計向け保険については、契約者保護の枠組みの整備状況を勘案しつつ、原則届出制への移行について、検討を進める」こととされている。

 本年8月の保険業法施行規則の一部改正により、企業向け保険の原則届出化など届出対象商品の拡大が行われたことは評価できる。

 規制緩和推進3か年計画の趣旨に沿い、今後とも、企業や年金基金等に対する保険については早期の届出制への移行に向けて、また、家計向け保険についても原則届出制への移行について、引き続き検討を進め、平成13年度中に結論を得るべきである。

(2-5)リスク細分型自動車保険の地域区分の撤廃

 リスク細分型自動車保険については、現在は、保険業法施行規則により、保険契約者の保護等の観点から、全国を7地域に区分し、それぞれの地域の保険リスクに応じた料率を算定することとなっている。

 この点を含めリスク細分型自動車保険については、規制緩和推進3か年計画(改定)において、同保険の取扱いに関する「ガイドラインの廃止について、同保険の販売による自動車事故の被害者救済に与える影響を踏まえた実質的な基準を引き続き検討する」こととされている。

 保険契約者の保護という観点からは、現行の地域区分の必要性に合理的な理由は認められず、したがって、今後、ガイドライン廃止に係る検討の中で、上記の影響を勘案しつつ、速やかにリスク細分型自動車保険の地域区分を撤廃することについて結論を得るべきである。

(3)事前規制型行政から事後チェック型行政への速やかな転換

 金融システム改革法の制定より、資産運用手段の充実、企業の資金調達の円滑化・多様化、多様なサービスの提供などが可能となったが、その趣旨を踏まえ、今後は監督行政の在り方についても、パラダイムの転換が求められている。つまり、従来は事前指導的な行政により競争を制限するような手法が採られていたが、金融機関などが自由な経営戦略や自由な商品開発により公平な土壌において競争することが可能となるよう、行政の在り方を事前規制型から事後チェック型に転換していくことが規制改革の基本である。

 しかしながら、行政の運用姿勢及び規制全体を俯瞰すると、こうした転換が遅れている部分又は取り残された部分が散見されるのが現状であり、引き続き関係者の改善努力が求められるとともに、監督行政の在り方についてパラダイムの転換を促進する観点からの見直しが必要である。

(3-1)保険商品の事前届出制の見直し

 規制緩和推進3か年計画(改定)では、「届出制の対象となる保険商品の範囲を大幅に拡大することとし、情報力・交渉力が比較的高いと考えられる、企業や年金基金等に対する保険については、早期の届出制への移行に向けて、また、家計向け保険については、契約者保護の枠組みの整備状況を勘案しつつ、原則届出制への移行について、検討を進める」こととされている。

 こうした観点を踏まえ、企業分野の保険に係る事前届出制の在り方については、行政当局による商品内容のチェック基準をできる限り明確にする取扱いとし、行政当局に裁量の余地をできる限り残さないものとするなど、保険契約者の保護の観点を踏まえつつ、引き続き見直しを行い、平成12年度中に結論を得るべきである。

(3-2)金融会社の株式保有規制の見直し

 独占禁止法では、金融業を営む会社は、国内会社の発行済株式総数の5%(保険会社の場合は同10%)を超えて株式の保有をすることが禁止されている。これは、金融会社が事業会社の株式を保有した場合、それが比較的低い持株比率であっても、資金供給による影響力と相まって、事業会社に対する支配力が容易に形成されることにより、金融会社が多数の事業会社を支配下において企業グループを形成し、金融会社の事業支配力の集中化が進むおそれがあること等が背景とされている。さらに、近時、大手金融会社間の大型再編等が進んでいることからも、金融会社の事業支配力の集中を未然に防止することが引き続き必要との見方もある。他方、行政の在り方を事前規制型から事後チェック型に転換していくことが規制改革の基本であり、金融会社の株式保有規制については、金融会社の株式保有を事前に外形的に規制するものであることから、日本の金融会社間の競争が激しくなってきている中において、金融会社の企業活動に対する過重な制約となるおそれがある。

 したがって、金融会社の株式保有制限については、金融会社間の競争が激しくなってきていることや金融再編が進んできていること等の金融機関を取り巻く環境の変化の推移を踏まえ、現行の規制が現時点でも適切なものとなっているかという観点から、見直すべきである。

(3-3)法令解釈等への対応

 金融監督庁は、事務ガイドラインにおいて、法令解釈等の照会に際し、所定の場合には、書面による照会を求め、書面による回答を行う旨を規定している。

 これは行政の透明性を高める観点から評価できるものであるが、実際の運用を見ると、金融監督庁が発足し間も無いことから必ずしも態勢が十分でなかったこと等もあって、対応が不十分であった場合も否定できないと認められる。

 今後においては、行政の透明性や国民の利便に資する観点から、事務ガイドラインに沿った対応を徹底すべきであると考える。

(3-4)証券外務員登録における営業所名記載の廃止

 証券会社及び銀行は、証券外務員を金融再生委員会(実際の事務は財務局に委任されている。)に登録するに当たり、現在、その氏名・住所、業務履歴等のほか、所属する営業所の名称を記載することとなっている。

 所属営業所を記載する理由としては、証券外務員の監督上必要であることが挙げられているが、証券会社等の人事異動に伴い、大量の変更申請書を提出するなど事務負担が膨大となっている。なお、証券外務員の登録原簿に営業所の名称の記載がなくとも、証券外務員の監督上必要な場合には、営業所に問い合わせることで対応することも可能であり、これを廃止しても問題は少ないと思われる。

 したがって、事前監督行政からの転換という観点から、平成13年度末までに、証券外務員登録における営業所名記載を廃止することについて結論を得るべきである。

(3-5)社内預金の下限利率規制の見直し

 社内預金制度は、労使が協力し自覚をもって自主的な運用を図ることが基本とされているが、その金利については、預金の両当事者が使用従属関係にあることも考慮し、労働基準法に基づき、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して定める下限金利を下回ってはならないこととされている。また、その下限利率については、現在は、毎年1月に見直しを行うこととされている。

 しかしながら、法令で下限金利は市中金利の実勢に則して定めるとされているにもかかわらず、市中金利の変化に対応した金利設定を妨げていると認められることから、下限利率を毎年1回見直すという方法を改める必要があると考える。

 したがって、社内預金金利の下限利率を年1回改定するという方法から、例えば、下限利率の改定期間の短縮又は下限利率と市中金利との乖離幅が一定を超えた時点を改定時期とする方法などにより、市中金利の動きをより反映した時期に下限利率を見直すことができるよう、平成12年度中にその改定方法を見直すべきである。

(4)機関投資家の資産運用等に係る規制の緩和

 機関投資家の資産運用及び資金調達手段の多様化を図ることは、経済全体の資金配分の効率化に資するものである。こうした観点から、以下の措置が早急に講じられることが重要である。

(4-1)厚生年金基金の特定金銭信託における証券現物を用いた資産の移管の解禁及び自家運用に係る運用対象資産の拡大(※)

 厚生年金基金については、現在、その資産規模が500億円以上であって、一定の要件を満たすものとして厚生大臣の認定を受けたものについてのみ自家運用が認められている。また、自家運用の運用対象は、債券、預金等の元本保証資産に限定されている。

 しかし、厚生年金基金の特定金銭信託契約における金銭信託の制限があり、運用先を変更する場合に証券現物を用いた資産の移管ができない。このため、こうした規制は、早期に撤廃すべきである。

 また、運用対象規制については、運用対象のリスクに応じた運用管理体制が整備されている基金に対しては、基金のポートフォリオ全体での効率的かつ安全な資産運用を妨げるおそれがある。したがって、運用対象規制についても、資金の性格を踏まえつつ、債券、預金等以外の資産についても運用対象とすべきである。

 これらについて必要な措置を含んだ法案が国会に提出されているが、その速やかな成立を期待したい。

(4-2)保険会社の外貨調達原則自由化

 金融監督庁の事務ガイドラインにおいて、保険会社の健全性に関し報告を求める場合及び業務改善を求める場合の監督上の着眼点として、保険会社の外貨調達について、1)保有する外貨建資産のヘッジを目的としたものであるか、2)円に転換されているかの2点が挙げられている。

 保険会社に係る外貨調達に関する規制は、順次緩和されてきたものの、保険会社に対する監督がソルベンシーマージン規制を中心とするようになった現在、保険会社自らの判断に任せても問題は無いのみならず、むしろ保険会社の保有資産全体での効率的運用を妨げるおそれもあることから、外貨調達に関する規制を廃止すべきである。

(5)店頭登録市場の活性化方策(※)

 店頭登録市場は、証券取引所に上場されていない株式の売買のための市場として、証券取引法上の認可を受けた自主規制機関である日本証券業協会が運営しており、中堅・中小企業の資金調達の場となっている。

 ベンチャー企業など21世紀を担う成長企業に対する円滑な資金供給のため、店頭登録市場は極めて重要である。したがって、市場の流動性を高めて店頭登録市場を活性化する観点から、引き続き市場改革に努めるべきである。

 この点に関して、昨年12月1日、日本証券業協会の規則改正により試験的な措置としてマーケットメーカー制度(注)が導入されたところであり、これにより店頭登録市場の活性化が期待される。また、現在、マーケットメーカー制度の円滑かつ広範な実施の観点から、日本証券業協会においては、マーケットメイク銘柄売買執行システムの開発を進めており、これを評価する。

 また、いわゆる「公開前規制」の見直しについては、店頭登録市場の活性化の観点から、本年7月1日の日本証券業協会の規則改正により措置されたところであり、これを評価する。

 これらの措置を含め、引き続き店頭登録市場の活性化のための改革努力が行われることを期待する。

 なお、この問題に関連して、店頭登録市場における登録基準の弾力的見直し、店頭登録企業の四半期ごとのディスクロージャー制度の導入、また、取引所市場における新興企業を対象とした新市場の創設など、市場間の競争により、中小・ベンチャー企業や次の世代を担う新規産業に対する円滑な資金供給を可能とする改革が急速に進みつつあることを、当委員会としても評価する。

(注) 証券会社が、自己の勘定に基づき常時売り気配・買い気配を提示し、投資家等の相手方と相対で交渉し売買を成立させる(マーケットメイクによる)取引制度をマーケットメーカー制度という。


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