6 運 輸

(1)自動車損害賠償責任保険の政府再保険

 自動車は、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責」という。)の契約が締結されているものでなければ運行の用に供してはならず、保険会社は、正当な理由がある場合を除き、自賠責の契約の締結を拒絶してはならないこととされている。そして、政府は、保険会社が自賠責の事業によって負う保険責任を再保険することとされ、その再保険金額は、責任保険の保険金額の100分の60とされている。現在、自賠責の在り方については、平成11年9月にまとめられた「今後の自賠責保険のあり方について」(運輸大臣懇談会報告書)を踏まえ、現在自動車損害賠償責任保険審議会で審議されており、その中で政府再保険の在り方についても議論されている。

 政府再保険制度の見直しについては、運輸大臣懇談会報告書では、1)被害者保護対策が充実されること、2)政府保障事業が維持されること、3)政府再保険の運用益を活用した交通安全対策、交通事故被害者救済対策に係る政策支出については、内容を吟味の上、事業内容、財源問題について開かれた議論を行い、必要とされた事業については継続すること、4)自動車ユーザーなどにメリットがあること、5)制度改正に伴うコストが合理的な範囲であること、の点について、議論され、検証・確認された段階で、結論を得ることが適当である、とされている。

 自賠責の政府再保険については、制度創設時と異なり、現在では保険会社に十分な担保力があるため、リスクヘッジの観点からは必要ないと考えられる。また、これを廃止することは運輸省及び保険会社双方の事務の簡素化にも資する。その一方で、被害者保護の観点から、現在政府再保険制度を通じて行われている保険金支払いの適正化のための保険会社の監督や運用益を利用した交通安全対策、交通事故被害者救済対策のための事業は重要な問題であるが、それらを行う方法は政府再保険制度以外にもあり得ると考えられる。

 したがって、自賠責の政府再保険の廃止については、以上を踏まえ、速やかに、上記の点について必要な方策を検討した上で、具体的結論を得るべきである。

 なお、自賠責は、強制保険であり、かつ保険会社に引受義務があることから、現在政府再保険部分以外の部分は保険会社の共同プール制で運営されており、かつ保険料率は各社共通となっているが、将来的には、強制保険、引受義務を維持しつつ、保険会社間の競争を促進する方策について検討すべきであると考える。

(2)貨物運送取扱事業の運賃・料金規制の見直し

 貨物運送取扱事業の運賃・料金は、現在、事前届出制であり、一定の場合には運輸大臣は変更命令を発することができることとされている。

 運賃・料金の設定は、貨物運送取扱事業者の経営戦略の中核をなす事項であり、政府の規制は極力排除すべきである。また、利用者は、提供されるサービスとその料金水準を勘案した上で、自己責任で事業者を選択すべきである。

 したがって、貨物運送取扱事業の運賃・料金の事前届出制については、原価計算書の添付の廃止、事後届出制その他のより自由な運賃・料金規制にする方向で検討し、必要な措置を講ずるべきである。

(3)内航海運暫定措置事業の進捗状況(※)

 内航海運業における船腹調整事業については、規制緩和推進3か年計画に則り、できるだけ短い一定期間を限って転廃業者の引当資格に対して日本内航海運組合総連合会が交付金を交付する等の内航海運暫定措置事業(以下「暫定事業」という。)を導入することにより従前の船腹調整事業を解消することとされ、平成10年5月に暫定事業がスタートしたところである。暫-定事業は収支相償った時に終了することになっており、交付金の単価は当面5年間毎年度漸減し、5年後(平成15年度)に改めて見直すこととされている。また、納付金の単価はこれに一定額を上乗せした額であるが、3年後(平成13年度)に暫定事業の収支状況を勘案して見直すこととされている。

 暫定事業が長期にわたって実施されると、新造船建造のためには納付金を納付しなければならないことから、内航海運業への参入が抑えられることになり、その間サービスや料金の競争が生じにくい状態が続くことになる。納付金の単価を低くし、納付期間を短くするためには、交付金の単価を低く抑え、交付期間をできるだけ短くする必要があると考える。

 したがって、以上を踏まえ、暫定事業については、平成15年度の交付金の単価見直しの際に、内航海運業への参入障壁を小さくしていく観点から、事業収支を勘案しつつ、できる限り単価を低く抑える方向で検討すべきである。

(4)強制水先の範囲の見直し

 一定の大きさ以上の船舶の船長は、特に交通の難所とされる港域又は水域(東京湾等全国10か所)において、その船舶を運航するときは、水先人を乗り込ませなければならないこととされている。

 これに関し、規制緩和推進3か年計画に基づき、これまでに神戸港及び横浜港・川崎港について、強制水先の対象船舶の範囲がより狭く限定されたところである。

 強制水先の対象船舶の範囲については、船舶交通の円滑化等の観点から真に必要な範囲に限るべきである。このため、引き続き、港湾の輻輳状況や埠頭の整備等による状況の変化の見られる港域又は水域から、強制水先の対象船舶の範囲について順次見直しを行い、必要な措置を講ずるべきである。

(5)混雑空港の発着枠の配分方法、発着枠の増加

 航空運送事業については、平成12年2月から改正航空法が施行され、航空路線については、原則として航空会社が自由に選択し、参入できることとなる。ただし、羽田空港、伊丹空港等発着枠の制限がある混雑空港を使用して国内定期航空運送事業を経営しようとする航空運送事業者は、当該空港ごとに、運輸大臣の許可を受けなければならない。その際、混雑空港の発着枠を各航空会社にどのように配分するかが、航空運送事業者の競争条件の整備の観点から重要な課題である。

 ア 混雑空港の発着枠の配分方法

 混雑空港の発着枠の配分については、新規参入の航空会社への優先配分、ミニマムのネットワークの維持・形成など利用者利便の向上に配慮した航空輸送サービスに対応する路線への配分を行った上で、既存航空会社への配分を行うという方針で行われる方向である。このうち、既存航空会社への配分については評価方式を優先的に採用するが、具体的な配分については、発着枠の必要性が具体化した段階で、有識者からなる検討組織により公開の場でその方式を検討して行うこととなっている。(平成12年の羽田空港の発着枠の増加に伴う配分については、現在混雑飛行場スロット配分方式懇談会の場で検討されており、来年2月〜3月までに結論を得ることとなっている。)

 発着枠の配分は、各航空会社にとって経営上の重要な要素であり、一定以上の予測可能性があるとともに、公正な競争を可能とするよう、客観性と透明性をもった方法で行うべきである。

 その意味で、評価項目や数値化手法を含む評価方式をできるだけ明確かつ具体的に設定するべきである。また、その評価方式はみだりに変更すべきではなく、評価方式の変更を航空政策の観点から行う場合であっても、真にやむを得ない場合に厳に限定するとともに、その理由について合理的かつ明確な説明が行われなければならない。

 現在検討中の羽田空港の発着枠の増加に伴う配分については、今後の配分方式の重要な参考となると考えられることから、上記の考え方に従って行うべきである。また、今後の発着枠の回収に伴う再配分についても、上記と同じ考え方に立って行うこととすべきである。

 イ 発着枠の増加

 航空運送事業者に自由に競争させるためには、発着枠に制約のある混雑空港を無くすことが必要であるが、それが困難な場合においては、発着枠をできるだけ増加させるよう工夫を行う必要がある。

 これについて、運輸省の空港処理容量検討委員会における検討の結果、来年から羽田空港の発着枠が拡大されることになったことは評価される。今後とも、安全・環境上の配慮を行いつつ、発着枠をできるだけ増加させるよう工夫を行うべきである。

(6)自動二輪車等に係る規制の見直し

 ア 高速道路における最高速度に係る規制

 高速道路走行における最高速度規制は、現在、普通自動車、大型自動車(バス等)については100km/h、軽自動車、大型自動車(トラック等)、自動二輪車については80km/hとなっている。

 最高速度はそれぞれの自動車の走行特性を勘案して定められているところであるが、速度の異なる自動車が混合して走行することは、速度が同じ自動車が走行することと比較して、危険度が高い。したがって、最高速度を上げることと最高速度を整合化することとの安全確保上のバランスを見極めた上で措置することが必要である。

 警察庁においては、現在、軽自動車と自動二輪車について、最高速度を100km/hとするか否かについて調査・検討しているが、平成11年度中を目途に検討を終え、特段の問題がなければ、速やかに所要の措置を講ずるべきである。

 イ 高速道路における自動二輪車の二人乗りに関する規制

 高速自動車国道及び自動車専用道路においては、自動二輪車(側車付きのものを除く)の二人乗りは禁止されている。その理由は、1)バランスが取りにくく継続して高速走行を行う場合には危険性が高いこと、2)日本の高速自動車国道等は、欧米に比べカーブが多く見通しも利きにくく、車線や路肩の幅が狭いことなどとされている。

 交通安全の確保は国民の重要な利益である。一方、高速道路における自動二輪車の走行については、1)韓国を除く主要国では二人乗りが認められており国際的に例外的な規制であること、2)二人乗りを認めることは国民の利便性を高める側面があると考えられること、3)高速道路は高速走行で危険性が高い一方で対面通行がないことや信号がないことから一般道と比較して安全である側面もあること、4)二人乗りが禁止されてから30年以上経ち交通状況も変化していること等、二人乗りを認める余地があるとも考えられる。

 したがって、警察庁において、二人乗りを認めることの可否について真摯に調査・検討し、できるだけ早期に結論を得るべきである。

(7)車両通行に係る規制の見直し

 ア 特殊車両通行許可手続の見直し

 道路法第47条に基づく車両制限令により車両の幅、重量、高さ、長さ等の最高限度が定められているが、これらの限度を超える場合であっても、やむを得ない場合には、道路管理者の許可(特殊車両通行許可)を得て道路を通行することができることとされている。許可申請の附属書類は、一部フレキシブルディスクで提出することも既に認められており、また、更新又は変更の許可申請の際の附属書類は、内容に変更のない場合、前回許可時に申請者に返却された副本を再提出すれば足りることとなっていることから、新規に作成する必要はない。さらに、経路図についてもコンピューター端末による自動作成やフレキシブルディスクによる提出を可能とする等のためのシステムを開発中である。

 特殊車両通行許可手続については、更に申請者の負担軽減を図るため、経路図の提出部数の削減、包括申請における車両区分の見直し、審査期間の短縮等について検討すべきである。また、現在開発中のシステムについては、申請者の負担及び審査期間を可能な限り縮減することに資するものとし、できるだけ早く供用開始すべきである。

 イ 車両の軸重制限の見直し

 車両の軸重は道路に与える影響を勘案して、現在10トン以下とされている。一方で、車両の振動に伴う積荷破損を防止する観点からエアサスペンションを採用している車両の普及が図られつつあるが、このエアサスペンションについては、軸重が道路に与える影響を軽減する可能性があると言われている。

 したがって、このようなエアサスペンション装備の車両の道路構造物に与える影響について、自動車業界等との協力の下に技術的検討を速やかに開始し、その結果を踏まえて、エアサスペンション装備の車両の軸重制限を緩和できないか検討すべきである。

(なお、上記のうち(7)に係る2項目については、本見解の「13 基準認証等に関する意見・要望等への対応」の前文を参照のこと。)


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