7 流 通

(1)消費者の利便性の重視と流通業の新たな形態を踏まえた規制の見直し

(1-1)薬局以外の一般小売店における医薬品販売範囲の見直し等

 ア 医薬品の範囲の見直し

 医薬品は、医療の様々な場面において使用されているが、その迅速かつ安定的な供給は、安全性の上に立ってなされなければならない。このため、医薬品の中には、副作用等の危険性が相対的に少ないものもあるが、これらの医薬品を含めすべての医薬品について、薬事法(昭和35年法律第145号)及びそれに基づく法令等により、販売に関して厳しい制限が課されている。例えば、医薬品の中には、要指示医薬品のように作用の強い医薬品であり、医師の指示の下に使用しないと危険なものもある一方、例えば大衆薬の中には、指名買いなど薬剤師の服薬指導等を仰ぐことなく購入されている場合や、その薬効についても有効性や安全性が確認され作用の厳しいものではないことから常備薬として自らの判断が必要なときに使用されている場合もある。医薬品の販売規制は、人命に関わる社会的規制であるが、自己に必要な医薬品を選択するという消費者の利便を必要以上に奪う結果とならないようにすべきである。

 このような観点を踏まえ、行政改革委員会の規制緩和の推進に関する意見(第2次)(平成8年12月16日)において、医薬品のカテゴリーの見直しの検討が盛り込まれ、これを受けて、規制緩和推進計画(再改定)(平成9年3月28日閣議決定)において、「医薬品のうち人体に対する作用が比較的緩和で、販売業者による情報提供の努力義務を課すまでもないものについて、一般小売店においても販売できるよう、医薬品のカテゴリーを見直す」とされた。厚生省は、中央薬事審議会に医薬品販売規制特別部会を設置し、検討を進めた結果、本年3月31日に、ビタミン含有保健剤、健胃清涼剤、外皮消毒剤等15の製品群について医薬品のカテゴリーから医薬部外品のカテゴリーへ移行する措置を講じ、薬局以外の一般小売店における販売を可能としたところであり、評価する。

 他方、この15製品群以外の医薬品については、他の医薬品との併用、体調等により副作用が発生するおそれがあり、一定の知識経験を有する者による情報提供が不可欠であるとして、今回の対象からは除外された。

 これに関して、医学的薬学的観点から、今回以上の見直しは適当ではないとの意見もあるが、1)今回見直しの対象外となった大衆薬の中にも、一般小売店で販売しても問題ないものがあるのではないか、諸外国で一般小売店で販売されているものがあるのではないか、さらに、2)そもそも特定の製品群を医薬部外品へ移行するのではなく、医薬品自体のカテゴリーを見直すべきではないかとの意見もあるところである。

 消費者の利便性の確保とは、必要な情報の開示を前提として、消費者が必要なときに必要な医薬品を自ら購入できるという選択肢を確保するという意味を持つものであり、医薬品の安全性の確保と矛盾するものではないと考える。

 以上を踏まえ、規制緩和推進3か年計画(改定)において、医薬品の範囲については、15製品群についての上記の措置の「実施状況を踏まえつつ、必要に応じ引き続き見直す」とされたことを踏まえ、引き続き、医薬品のカテゴリーの見直しを検討するべきである。

 イ 一般用医薬品添付文書及び使用上の注意の記載要領

 一般用医薬品添付文書及び使用上の注意の記載要領については、本年8月に新たな通知が発出され、医薬品の使用に関しての注意等が、一般使用者にとってより見やすく、分かりやすいものとするよう改善が図られたが、その際、旧通知に基づく添付文書及び使用上の注意については、平成14年3月末までが猶予期間とされた。

 このため、医薬品購入についての消費者の適切な判断に資する観点から、一般医薬品の効能効果、副作用、飲み合わせ等消費者にとって重要な情報がより適確に分かりやすい形で提供されるよう、上記通知の実施状況を把握するとともにその周知徹底を図るべきである。

(1-2)医薬品一般販売業における薬剤師・管理薬剤師の配置義務の見直し

 ア 薬剤師の配置義務の総合的検討

 医薬品は適正に使用しなければ保健衛生上の危害を引き起こすことがあり、専門家である薬剤師による服薬指導がなされるべきであることから、薬事法上、薬局及び一般販売業の店舗には薬剤師を常時配置しなければならないとされている。

 しかしながら、実態としては、副作用の少ない医薬品については、服薬指導等がなされていない場合があり、また、薬剤師が不在の場合には、医薬品を販売できないこととなっているにもかかわらず実際に販売がなされている場合も散見される。この問題は、消費者が医薬品を購入する際の自己責任の在り方とも関連する問題である。

 この問題に関しては、平成10年12月、都道府県等に対して、薬局等における薬剤師による管理及び情報提供等の徹底について通知が出されているが、薬局等における医薬品の販売の実態について調査分析し、そのデータを公表した上、薬事法上の薬剤師の配置義務と実態とが乖離している場合にはその改善のためどのような措置を講ずるべきか、必要な対策を総合的に検討して所要の措置を講ずるべきである。

 イ 管理薬剤師の兼務規制の見直し

 薬事法上、管理薬剤師については、その薬局及び一般販売業の所在地の都道府県知事の許可を受けた場合を除くほか、その薬局等以外の場所で業として薬局等の管理又はその他薬事に関する実務に従事してはならないとされている。また、管理薬剤師は、服薬指導、その店舗に勤務する薬剤師その他の従事者の監督、その店舗の構造設備及び医薬品その他の物品の管理等を業務としている。

 しかしながら、実態として、管理薬剤師がすべての顧客に対し、常時服薬指導をしているとは認められず、また、従事者の監督、構造設備及び物品の管理についても、巡回等により十分対応可能であると考えられる。さらに、インターネットによる双方向通信等新しい技術の活用により対応できる余地も大きい。

 したがって、管理薬剤師の兼務規制の在り方については、勤務の実態、双方向通信等新しい技術の活用状況等を踏まえ、見直しを検討するべきである。また、この検討結果を踏まえ、必要に応じてその特例となる許可の活用について都道府県等に周知徹底を図る措置を講ずるべきである。

(1-3)食品・飲食店営業許可基準の適正化

 現在、飲食店営業その他公衆衛生に与える影響が著しい営業(政令で34業種を指定)については、都道府県知事の許可制となっており、都道府県知事は、業種別に施設基準を定めることとされている。

 各都道府県における施設基準による許可の実態を見ると、例えば、コンビニエンスストアが飲食業許可を受ける場合においても、カウンター内の床のタイル貼り、床への排水設備の設置等を義務付けるなど、小規模飲食店を想定していると考えられる措置をそのまま新しい業態にも要求するなど、明らかに過剰と考えられる例があるとの指摘もある。

 以上のように公衆衛生上の観点から合理的理由が認められないと考えられる規制は改善するよう都道府県に周知徹底を図る措置を講ずるべきである。

(2)卸売業の構造変化を踏まえた規制の見直し

 ア 医薬品卸売一般販売業における管理薬剤師の配置規制の見直し

 医薬品の卸売一般販売業においては、医薬品の適正な使用を確保するために、副作用の情報提供等を製造業者や医療機関に対して、迅速かつ適切に行い、医薬品の品質が損なわれないように医薬品を適正に管理することが必要である。したがって、現在、卸売一般販売業においても、こうした業務を行うために必要な知識を有する管理薬剤師が実地に管理しなければならないこととされている。

 しかしながら、発達した情報通信網の利用などにより、卸売業を通じて副作用の情報提供等を行う必要性が低い場合もあり、また、医薬品の卸売業者については、製品を開封せずにロットを分け、各店舗へ配送する作業のみ行っているものも少なくない。

 この問題に関し、規制緩和推進3か年計画(改定)では、「平成11年度中に、医薬品卸売一般販売業において、管理薬剤師の配置の在り方について検討し、結論を得る」こととされており、医薬品卸売一般販売業における管理薬剤師の配置規制の見直しについては、平成11年度中に結論を得て、平成12年度中に必要な措置を講ずるべきである。

 イ 分社化された医薬品配送センター等における管理薬剤師の配置規制

 複数の薬局等を擁して医薬品一般販売業を含む会社が、自社の薬局等に医薬品を配送するための配送センター等を有している場合に、経営戦略上の観点から当該配送センター等を分社化し別法人化すると、当該配送センター等は、配送業務のみを行っている実態に何ら変更がない場合であっても、現行の薬事法上、新たに独立の卸売業者として位置づけられ、医薬品販売業に関する規定が準用される結果、新規に卸売業者として医薬品販売業の許可を受けなければならないこととなっている。

 このように、単に配送業務のみを行っている卸売業者の場合、上記の見直しが行われることによりその利便性が向上することとなる。

(3)申請書類・保存書類等の簡素化・合理化

(3-1)同一ビル内等の薬店移設の申請

 法令等の根拠に基づかない添付書類の問題については、「薬局及び医薬品の販売業に関する規制の緩和について」(平成6年12月28日付け薬発第1124号)及び「医薬品等に関する規制緩和」(平成7年12月28日付け薬企第84号、薬審第1159号、薬機第355号)において薬事法施行規則等に基づかない書類の添付を求めている地方公共団体はそれらの添付資料を求めないようにするよう都道府県に周知徹底が図られた。また、許可申請の際の添付書類については、平成8年の薬事法施行規則の改正等により、薬局の許可申請などの薬事法の規定による申請等の添付書類について簡素化が図られるとともに、上記省令改正等により、医薬品一般販売業の許可の申請の際に、当該申請以前と同一の書類が当該申請書の提出先である厚生大臣又は都道府県知事に提出されている場合は、当該同一書類の添付は省略することが可能とされた。

 しかしながら、同一ショッピングセンター内における薬店(医薬品一般販売業)の移設の場合には、構造物として全く新たなものであるとされ、改めて医薬品を適切に管理するために必要な構造設備を有しているか、再度確認することが必要であるとして、依然として同一ビル館内で単に平行移動をする場合を含めて新規に申請を求めている。ショッピングセンターは、時代の流れに合わせて常に流動的に売場配置等を検討していくものであり、同一ビル館内(あるいは同一法人内)において調剤業務を行わない薬店を移設する場合には、店舗の変更届出により処理をするなどの一層の簡略化を図る一方、例えば届出後の立入検査等により事後チェックを強化する方がより実態に沿った形である。

 したがって、同一ビル館内で単に平行移動する場合等の申請手続等について、実態及び現状に沿った形で検討していくべきである。

(3-2)薬局等を開設する法人役員の診断書提出の見直し

 薬局及び薬店開設の際、申請者が法人の場合においては、薬事関係業務の遂行に当たり、業務決定や業務の直接代行等重要な影響を持つ役員が麻薬中毒者等であることにより起こりうる事故等を未然に防ぐために、その業務を行う役員に関する医師の診断書の提出を許可申請時に求めている。

 しかしながら、チェーン展開をする薬局・薬店が増える等流通業の新たな実態を踏まえた形で、より迅速に手続を進め、消費者のニーズに対応していく観点から、これについて見直しを図るべきである。

 なお、平成9年3月、法人においてその業務を行う役員であっても、当該法人において、薬事に関する業務に係る意思決定等に直接関与しない者については、医師の診断書に代えて、「精神病者又は麻薬、大麻、阿片もしくは覚醒剤の中毒者」でないことを疎明する書面を提出することでよいこととする措置が採られている。

 したがって、この緩和措置を拡大し、申請者が法人の場合において、すべての役員について医師の診断書は提出しないこととすることにつき検討すべきである。

(3-3)薬歴管理の電子化

 薬歴の管理については、平成5年4月30日付け薬務局長通知及び同局企画課長通知並びに平成6年3月16日及び平成8年3月8日付け医療課長通知において定められているが、紙による管理を特段義務づけているものではなく、現在既に電子媒体による管理を可能としている。また、上記の医療課長通知では、保険薬局が薬剤服用歴管理指導料を算定するに当たっては、薬歴の記録について、「同一の患者について全ての記録が必要に応じ直ちに参照できるよう保存・管理されていなければならない」こととしているところである。

 しかしながら、1台のコンピュータで患者の一部負担額の計算等の診療報酬請求に係る電算処理及び薬歴管理を行っているため、コンピュータの容量の限界等により薬歴情報を迅速に取り出すことができないような場合に、保険薬局が上記内容を要件とする薬剤服用歴管理指導料を算定するためには、紙による薬歴の保存をするべきとの指導をしている都道府県がある。このように、実際には、電子媒体による薬歴の管理は効果的に利用されていないのではないかという意見もある。

 したがって、薬歴の電子媒体による管理において、基準となるソフト等を開発し、その項目について一定の基準を示すこと等により、事業者の効率性及び消費者にとっての安心感を与えるべく所要の措置を講ずるべきである。

(3-4)医薬品販売業者の自己点検記録の保存期間の見直し

 現在、医薬品販売業者に対しては、自己点検記録の5年間の保存が義務付けられているが、実態としては、その作成に多大なコスト・時間を要し、書類の保存についても保管経費が必要になっている。

 したがって、不要なコスト増加を防ぐ観点から、許認可等の申請書類の簡素化・合理化、書類の保存義務の見直しなどを規制緩和推進3か年計画(改定)に基づく政府の対応を引き続き注視していく。

(4)大店立地法の適切な運用の確保

 近年の小売業をめぐる様々な環境変化を基に、現行の大規模小売業の事業活動の調整に関する法律による調整の使命は終焉しつつあることや、一方で大型店の出店に伴う各種生活環境上の問題への対応といった新たな社会的要請に応える政策対応が必要であることなど、産業構造審議会流通部会・中小企業政策審議会流通小委員会合同会議が平成9年答申において示した提言に沿って、平成10年6月に大規模小売店舗立地法(以下「大店立地法」という。)が制定、公布された。また、平成11年6月に「大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針」(以下「指針」という。)が公表されるとともに、平成11年10月には大規模小売店舗立地法施行規則が公布され、平成12年6月1日の大店立地法の施行に向けての体制が整いつつあることについては評価する。

 しかしながら、新法である大店立地法については、地方公共団体である都道府県・政令指定都市が法の実際の運用を行うこととなるため、地方自治体相互間で著しく運用が異なることは、大型店設置者にとっても、運用主体たる自治体にとっても好ましくない結果をもたらすことが懸念される。例えば、環境問題対策等の名の下に上乗せ規制や恣意的な運用がなされる可能性が全くないとは言えないとの指摘がある。したがって、設置者が合理的な根拠を示せば、指針の数値とは異なる数値を基準として使用できることとしているが、各地方自治体がそれらの数値の合理性の判断基準を確立する過程についても、国として十分に注視していく必要がある。

 このような中で、大店立地法の運用において、法の適正な運用という観点から、国が法律の解釈についての見解を示しつつ、通産省及び各通産局に、設置者や地方公共団体及び消費者からの相談を受け付ける窓口の設置をするとしており、これによって地方自治体相互間の運用が、合理的かつ円滑に、適正な水準でなされていくことを期待する。

 このため、大店立地法の施行において、地域社会全体の調和と公平かつ透明な手続が確保され、また特定の対象者のみが過度の負担を強いられないようにするとの観点から、産業構造審議会流通部会・中小企業政策審議会流通小委員会の中間答申を踏まえ、指針については、大店立地法の施行後5年以内に国が必要な見直しを行うこととすべきである。また、当委員会としても、今後の進捗状況及び大店立地法の施行状況等を引き続き注視していく。

(5)農産物検査の在り方(※)

 米穀の生産者は、その生産した米穀を主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号。以下「食糧法」という。)の計画出荷米(注)として売り渡す場合等には、その売渡しのとき等に国の検査を受けなければならないこととされている。

 農産物検査については、平成9年12月の行政改革会議最終報告において、「積極的に民営化、民間移譲を検討する必要がある」とされ、これを受けて、国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画(平成11年4月27日閣議決定)において「民営検査への移行に向けて所要の法的措置を講ずることとし、平成12年の通常国会を目途に所要の法案を提出する」とされたところである。

 当委員会では、昨年度の第1次見解において、「農産物検査を民営化するのであれば、食糧法施行時からの流通事情の変化等も踏まえ、@検査に対する信頼性の確保の観点や流通の円滑化のための規制は必要最小限のものとし、A産地や流通業者が自らの商品の品質に責任を持つという視点を踏まえ、市場原理を活用して民営化することが必要である」との指摘を行った。さらに、同見解において、「農産物検査の民営化の在り方に対する当委員会の指摘を踏まえつつ、市場原理を活用した関係者のコンセンサスが得られるような新制度の在り方を検討すべきである」とし、今後の検討方向を示したところである。規制緩和推進3か年計画(改定)においても、「農産物検査について、早期民営化に向け、市場原理を活用した関係者のコンセンサスが得られるような新制度の在り方の検討を進める」とされている。

 以上の指摘等を踏まえ、食糧庁において、昨年の農産物検査の実施業務の民営化検討会(食糧庁長官の検討会)の中間とりまとめ(平成10年6月29日)の内容から更に踏み込んだ検討が進められた。本年6月に示された「新たな農産物検査制度のあり方について(案)」では、昨年の中間とりまとめにおいて、検査に対する信頼性の確保のために必要とされていた「一定の要件を満たす個人に対する検査実施者の資格の付与」が削除されるなど、産地や流通業者が自らの商品の品質に責任を持つ検査の在り方を目指すべきという当委員会の指摘に沿って一定の前進が見られたことについては、評価する。

 農産物検査制度については、以上の経緯を踏まえ、検査を実施する民間検査機関の参入の仕組みについて、適切な検査を行うために必要な一定の要件を満たした者が参入できる登録制とするなど、市場原理を活用した関係者のコンセンサスが得られるような制度とすべきであり、今後、早期民営化へ向けて、法制度の整備を急ぐことが必要である。

(注) 自主流通米及び政府米として、第1種登録出荷取扱業者(農業協同組合等)又は政府に売渡し等を行う米穀


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