11 教育

(1)教育の国際化の推進と教育へのアクセスの拡大

 ア 外国語指導助手の一層の活用

 JETプログラムは、我が国における外国語教育の充実を図るとともに、地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて我が国と諸外国との相互理解を増進することを目的として、昭和62年度から実施されている事業である。この事業により平成10年度は5,096人の外国青年がALT(Assistant Language Teacher:外国語指導助手)として招致され、全国の中学校及び高等学校において、日本人外国語教員と協力してのティームティーチング等に従事している。

 JETプログラム及び同種のプログラムによるALTの招致者数は年々増加しており、事業としては充実しつつあるが、我が国の教育における国際化を推進する観点からは、ALTを学校の職員として配置し、学校において児童・生徒が外国人教員と触れ合う機会を今よりも一層積極的に設けることが必要であると考えられる。また、ALTは、現在主として中学校及び高等学校で活用されているが、より年少期から外国語に接することの重要性にかんがみれば、小学校における活用も効果的であると考えられる。

 したがって、ALTを一層有意義に活用するため、平成12年度より可能なところから、ALTが各学校において職員として配置されるような方策を講じ、各学校に滞在する期間の長期化を図るべきである。その際、単に英語の発音訓練などにとどまることなく、部活動や学校行事への積極的な参加などによってその活用を一層進めるとともに、中学校、高等学校のみならず小学校においても積極的に活用されるような措置を講ずるべきである。なお、これと併せ、ALTについて実態把握を行うとともに、広く一般に対して情報提供を行うべきである。

 イ 帰国子女等の編入学機会

 高等学校への編入学については、法令上は高校の3学年を通じて編入学を行うことが可能となっており、制度的な制約はない。また、従来から、文部省から各都道府県に対し、特別定員枠の設定など、編入学の受入れ拡大について指導を行ってきているところである。

 しかし、帰国子女の高等学校編入学に当たっては、希望の高等学校に編入学することが依然として困難であるとの指摘もあり、海外勤務の家庭にとって深刻な問題となっている実態がある。現実に、現地の中学校卒業前に子女を帰国させたり、いわゆる逆単身赴任という状況も少なからず生じている。また、国内転勤のケースでも同様の問題が生じている。

 したがって、平成11年度中に、文部省から都道府県に対し従来から行っている指導に加え、受入れ時期の通年化、都市部以外の地域における受入れ校の拡充についても徹底を図ることによって、帰国子女の高等学校編入学の機会を一層拡大すべきである。同時に、国内転勤の場合についても、同様に高等学校転入学の機会の拡大を図るべきである。なお、帰国子女等の高等学校編入学についての実態把握を行うとともに、広く一般に情報提供を行うべきである。

 ウ 4年未満の在学で大学学部を卒業できる措置

 従来から、3年間の学部教育のみでも大学院に進学する道(大学院へのアクセス)は開かれていたが、その場合、学部教育の全課程を修了するものではないため、学部卒業とはならず学士号を取得できないという問題点があった。このことは、当委員会の第1次見解において指摘したところである。

 この点に関し、本年5月、学校教育法(昭和22年法律第26号)の一部改正が行われ、平成12年4月から、「大学は、・・・当該大学に3年以上在学したものが、卒業の要件として当該大学の定める単位を優秀な成績で修得したと認める場合には、・・・その卒業を認めることができる」(学校教育法第55条の3)こととされた。この制度改正によって、優れた成績を修めた学生が卒業を希望する場合には、各大学の自律的な判断により、3年以上4年未満の在学であっても学部卒業を認めることが制度的に可能となることについては評価する。今後は、各大学において、今回の措置が適切に実施されていくことが重要である。

 なお、一方で、学生の卒業時における質の確保を図るため、学生の成績評価を厳格に行うべきであるとの指摘が強まり、学生が1年間又は1学期に履修科目登録できる単位数の上限を定めることが大学の努力義務として課された(大学設置基準第27条の2)ところであり、このこととも適正なバランス・整合性を保って運用されることが求められている。

 したがって、今後、今回の一連の制度改正の趣旨が各大学等において十分理解され、積極的かつ適切に導入・活用されていくよう、大学に対する周知徹底、実施状況の把握を行うとともに、広く一般に対する情報提供にも努めるべきである。

(2)外国人留学生の受入れ促進

 ア 日本語能力試験の見直し

 日本語能力試験は、日本語を母語としない者を対象として、日本語能力を測定し、認定することを目的として、国内の9都道府県及び海外の33国・地域の75都市において、昭和59年から毎年1回(12月に)実施されている。特に、外国人留学生の日本語能力を測定する試験として各大学の入学決定に際して利用されることが多く、私費留学生を中心に多くの留学生がこの試験を受験している。

 しかし、現行の日本語能力試験は実施場所や受験回数が限定されていることなどから、留学生にとって、また利用する大学にとっても、必ずしも利用しやすい制度であるとは言えない。さらに、日本語能力試験に加えて私費留学生統一試験を課している大学が多いため、外国人留学生にとっては二重の負担となっている。

 したがって、現在検討中の日本語能力試験に代わる新たな試験については、実施回数の複数化、実施場所の大幅な拡充など、その実施回数、場所、内容、方法等について早急に見直しを行い、遅くとも平成14年度からより利用しやすい試験制度として実施するため、そのための必要な準備を平成13年度中に完了すべきである。

 イ 国費留学生の入学先

 国費留学生の推薦方法としては、現在、大きく分けて大学推薦と大使館推薦の二種類がある。このうち大学推薦については、大学間の交流協定などを基礎として行われるため、留学生の入学する大学は事前に明確になっている。一方、大使館推薦による研究留学生の大学配置については、在外日本公館からの推薦を受けて、基本的に本人の希望を尊重した上で、文部省から各大学に受入れ依頼をし、大学が検討した上でこれを決定するという仕組みになっている。現在、大学に在籍する国費留学生のうち、公私立大学への在籍は約16%であり、残りはすべて国立大学に在籍している。

 大使館推薦による留学生の配置については、予算の制約や特定大学に集中することによる負担の問題等を避けるため、結果として個々の留学生が希望していたのとは異なる大学に配置されるケースも発生することがあり、意にそぐわない大学に配置された留学生の勉学意欲という点でもマイナス効果があるのではないかと考えられる。このため、国費留学生であっても、受入れ大学等が自主的に授業料負担をする場合や、その他の方法により授業料負担が可能となる場合などには、私立大学への入学をより柔軟に行えるようにすることが必要である。

 したがって、国費留学生制度については、留学生の希望と能力に応じた大学への入学ができるよう、留学候補者と受入れ大学の意向が優先される採用の在り方を速やかに検討するとともに、私立大学への入学促進も含め、国費留学生の希望と能力に応じた大学への配置が円滑に行えるよう必要な措置を、平成12年度中に講ずるべきである。

 ウ 渡日前入学許可の推進

 留学生については、現在のところ、渡日後に入学試験を行う方法が一般的であるが、この場合、わざわざ日本に来たのに結局留学できなかったという事態も発生し得ることから、心理的な面も含め、外国人留学生にとっての負担が大きい仕組みとなっている。

 この点、各大学においては、外国人留学生が入学許可を得る前に来日することを要せず、書類選考などによる選抜を行うAO入試(アドミッション・オフィス入試)の取組が進みつつあるものの、全体としてみれば、依然として通常の入学試験を行う方法が一般的である。

 したがって、例えばAO入試などにより、留学生が母国に居ながらにして書類選考等により入学者選抜を受けられるような、渡日前入学許可のシステムづくりを促進すべきである。当面は、平成12年度中に、大使館推薦による国費留学生について、専門教科及び日本語について一定の能力を有する場合、渡日前にその希望と能力に応じた大学を決定することについて検討するとともに、私費留学生についても、渡日前入学許可に関し各大学を強力に指導すべきである。同時に、留学生の便宜を考慮して、渡日前の奨学金予約制度を一層促進すべきである。また、現在検討中の日本語能力試験に代わる新たな試験を広く実施することによっても、渡日前入学許可を促進すべきである。

 エ 課程年数主義の弾力的運用

 外国において初等中等教育を受けた者が我が国の大学に入学するためには、原則として12年の教育課程を修了していることが必要(学校教育法施行規則第69条第1号)であり、初等中等教育の課程が12年未満の国において高等学校に対応する課程を修了した者については、指定された教育施設において我が国の大学に入学するための準備教育課程を修了し、かつ18歳に達することによって大学入学資格が認められる(昭和56年文部省告示第153号)こととされている。

 これは、国ごとに異なる教育内容に立ち入ることなく、教育年数が我が国と同様の12年であることをもってその水準を担保する、いわゆる「課程年数主義」の考え方によるものであり、これ自体は一つの考え方として、一定の合理性が認められる。しかし、一方で、日本語能力も含めて、我が国の高等学校卒業生と同程度の学力を有すると認められる留学生についてまで、一律に準備教育課程を課す必要はないのではないかとも考えられる。現行制度上、このような留学生については、大学入学資格検定に合格すれば準備教育課程を経ずに大学入学が可能となっているが、相当数の科目合格を求める大学入学資格検定を外国人留学生に課すことは、方法論として現実的ではない。

 したがって、12年の教育課程を修了していない者であっても、日本語能力も含めて我が国の高等学校卒業生と同程度の学力を有すると認められ、日本の大学教育を受けるに十分な能力を有する外国人留学生に対しては、より適切な方法でその学力を判定する方策を検討し、準備教育課程を経ることなく大学入学が可能となる道を開くべきである。

 オ 留学生の在留資格

 留学生の在留資格に係る在留期間については、出入国管理及び難民認定法施行規則の規定に基づき、個別審査によって在留期間が認定されている。これに関しては、本年10月1日に施行された同施行規則の一部改正により、留学の在留資格に係る在留期間が従来の「1年又は6月」から「2年又は1年」に延長されるなど、外国人留学生の在留資格について一定の見直しが行われたことを評価する。

 ただし、留学生の在留資格については、留学生の負担軽減の観点から申請取次制度の普及・拡大なども含め、手続の一層の簡素化・迅速化を図っていくことも重要であり、留学生の実態に応じ更なる改善策について検討を行い、平成12年度中に必要な措置を講ずるべきである。

(3)学校経営の自由化・弾力化

 ア 外部資金の調達(学校債)

 学校債の発行によって調達される資金は、当該学校の卒業生及び父兄を対象とする限られた範囲において行われる借入金であり、無担保、無利息であるのが通常である。学校債の発行については、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(以下、「出資法」という。)による不特定かつ多数の者からの「出資金」及び「預り金」の受入れの原則禁止のほかは、特に法的規制はない。

 学校債の発行に関しては、文部省管理局振興課長通知(昭和29年10月13日)が発出されており、それにより学校債に係る出資法の解釈が示されているが、その内容は必ずしも明確ではない。そのため、各大学において、どのような形での学校債が発行できるのかが理解されておらず、学校債の発行が大学の資金調達手段の一つとして十分に機能していない状況が見受けられる。

 したがって、学校債発行等による学校法人の経営基盤の強化が一層促進されるよう、平成12年度中に同通知を廃止又は改正し、学校債発行のルールを明確化・透明化すべきである。

 イ 子会社の設立

 学校法人が出資により株式会社を設立する例は従来から見られるが、これには、大学自らが収益事業としてこれらの事業を行う際、学校法人の学内事情によって意思決定のスピードが遅くなるなど、効率的な事業運営に支障が生ずる場合があることが背景にあるものと考えられる。

 学校法人が出資により設立する株式会社については、法令上特段の制約はないが、従前の公益法人(社団法人及び財団法人)の運営に関する指導監督基準において、株式の保有については、当該営利法人の発行済株式総数の2分の1未満とするとされていたことを受けて、学校法人についても2分の1未満を目安としつつ適宜指導が行われていた。

 公益法人については、平成8年9月に、新たに公益法人の設立許可及び指導監督基準が閣議決定され、これにより原則として株式の保有が禁止されたが、学校法人については、私立学校法上明文により、収益事業を行いその収益を私立学校の経営に充てることにより教育研究活動の維持発展を図ることができるものとされていることから、その趣旨に従い、引き続き一定の範囲で株式の保有が認められてきた。

 しかしながら、大学の教育研究活動と緊密な関係を有する事業などを株式会社の形態で行おうとする場合には、学校法人のイニシアティブが十分に働くよう、2分の1以上の株式の保有を望むことは当然であると考えられる。

 また、学校法人からの相談を待って指導を行うという現在の対応では、学校法人が自らの判断で迅速に株式会社の設立を行えるような明確なルールになっているとは言い難い。

 したがって、平成12年度中に、学校法人が出資により株式会社を設立する場合のルールを明確化し、大学の教育研究活動と緊密な関係を有する事業など一定範囲の事業については、その発行済株式総数の2分の1以上を学校法人が保有する株式会社(子会社)の設立が認められることを明確にするべきである。また、学校法人の情報公開やその経営の健全性確保の観点から、例えばこれらの株式会社(子会社)の状況を学校法人の財務諸表中に開示することについても、併せて検討すべきである。

(4)学校法人及び大学設置認可の弾力化・透明化

 ア 設置経費、開設年度の経常経費についての弾力的扱い

 私立学校法(昭和24年法律第270号)第25条第1項により、「学校法人は、その設置する私立学校に必要な施設及び設備又はこれらに要する資金並びにその設置する私立学校の経営に必要な財産を有しなければならない」こととされている。これに関する詳細な審査基準が学校法人の寄附行為及び寄附行為変更の認可に関する審査基準(昭和50年文部省告示第32号。以下「審査基準」という。)であるが、審査基準においては、文部大臣が所轄庁である学校法人の設立に係る寄附行為の認可に際し、施設・設備の整備に要する経費(設置経費)及び開設年度の教員人件費など学校の運営に必要な経費(開設年度の経常経費)の双方が、学校法人設立認可の申請時において収納されていなければならないとされている。しかしながら、これらの設置経費や開設年度の経常経費は、必ずしも認可申請の時点で現金で収納されていることが必要不可欠なものではなく、本来は、それぞれの経費を要する時点で現金化されていれば足りるものである。

 また、同様に、審査基準では、施設及び設備について、私立学校の安定的継続的な教育研究活動の運営の確保の観点から、原則として負担付又は借用のものは認められていないが、経済社会情勢の変化に応じて資産管理の面においても柔軟な学校経営を行えるようにとの観点から、基準の在り方について検討する必要がある。

 したがって、平成12年度中に審査基準を改正し、文部大臣が所轄庁である学校法人の設立認可申請に際しては、設置経費及び開設年度の経常経費について、申請時に全額現金で収納されていることを要しないこととし、国債など金額が確定しており資金計画に基づいてその現金化が確実になされる有価証券や、確実な保証があると所轄庁が判断する寄附などの弾力的な形態を認めることとすべきである。また、安定的継続的な学校経営を行い、かつ教育研究活動を行う上で支障がないような財政的基盤を有していると考えられる場合に、施設及び設備についてリース方式を認めるなど弾力的な対応を検討すべきである。

 イ 大学設置認可の審査体制

 大学の設置認可に当たっては、大学設置・学校法人審議会において審査が行われるが、同審議会(委員数65名)において、大学関係者以外の委員は、産業界出身の委員3名を含め現在わずかに5名である。この点、規制緩和推進3か年計画(改定)において、「今後の社会の変化を見通した大学の新しい試みにより一層適切に対応していく観点から、大学設置・学校法人審議会の委員について大学関係者以外からの積極的な登用を図る」こととされていたが、本年5月における委員改選に当たっては、大学関係者以外の登用が十分に行われなかったものと、当委員会としては認識している。

 大学設置・学校法人審議会では、大学等の設置構想が適切であるかどうか、またそれらが設置基準に合致しているかどうかといった観点からの審査を行っているが、産業界も含めた社会のニーズを迅速かつ的確に反映した設置認可が行われるためには、大学関係者のみならず幅広く関係者の意見を審査に反映させることが必要不可欠である。学問分野にもよるが、大学関係者以外の者の方が、社会のニーズを踏まえた審査を行うことのできる場合があるとも考えられる。

 また、専門的観点から個別具体的事項の審査を行う専門委員の氏名については、審査の公正を期すという観点から非公表の扱いとなっているが、氏名が非公表では、審査が不透明となるとともに、責任ある審査が担保されないとも考えられる。

 したがって、大学設置・学校法人審議会について、次の委員改選時に、産業界出身者を始めとして大学関係者以外の委員を委員全体の2割を目途に積極的に登用するとともに、併せて専門委員の氏名を公表すべきである。なお、その際、専門委員の氏名については、審査事務の円滑な遂行確保といった観点から即時の公表が困難であるならば、最低限、事後の公表を実現すべきである。

 ウ 大学学部の学科の新設・改廃、学科定員の変更

 現在、私立大学の学科の新設・改廃及び定員の変更に関する学則の変更については、所轄庁である文部大臣の認可事項となっている(私立学校法第5条第1項第1号)。学科の新設・改廃の審査に当たっては、大学設置基準に定める数量的基準を満たしているかどうかの審査と、学部の学科としての適合性についての審査を行っており、その中で学科の名称についてもカリキュラム内容を的確に表しているかどうかといった観点から審査を行っている。

 これらの認可制度について、同一設置者内での定員が増えない範囲での学科の設置や定員の変更の場合に審査期間を大幅に短縮するなど、一定程度、手続の簡素化が図られてきたことについては評価する。しかし、これらの事項が文部大臣の認可に掛からしめられているため、各大学が学科の設置や定員の変更を検討する場合に、手続的に少なからず負担となっていることは否めない。このことが、大学にとって、社会が真に必要としている人材の育成に意欲的に取り組もうとすることを阻害している要因の一つではないかとも考えられる。

 したがって、大学が社会全体、とりわけ産業界の求める人材像を素早く察知し、社会の変化や技術革新の急速な進展に迅速に対応できるよう、大学学部の学科の新設・改廃及び学科定員の変更については、手続の簡素化を踏まえた各大学の取組等も含め大学改革全般の進捗状況を見つつ、少なくとも、学部の収容定員の範囲内であれば、これらを大学の主体的な判断で行えるようにすることについて検討すべきである。

(5)教育への補助の効率化

 日本育英会の奨学金については、第1種奨学金(無利子)と第2種奨学金(有利子)とがあるが、いずれも現在は、原則として当該学生・生徒が在学する学校を通じて出願し、学校長の推薦に基づいて採用を行う仕組みを取っている。また、奨学生の採用方式には、進学前に進学を条件として奨学金の貸与を予約する予約採用と、進学後に出願する在学採用とがあり、現在、予約採用と在学採用の比率は概ね3対7となっている。

 第2種奨学金については、本年度からの制度の大幅な充実によって、ほぼ希望者全員に貸与することが可能となった。しかし、第1種奨学金については、現在、大学ごとに一定の人数枠が目安として示され、それに基づいて貸与者が決定される仕組みになっており、同じ家計状況の学生であっても、在籍する大学によって奨学金が支給される者と支給されない者とが発生し得ることになる。

 また、社会人等の既卒者については、卒業してから相当程度の時間が経過しているような場合であると、卒業校を通じて奨学金制度に関する情報を入手したり奨学金申請を行ったりすることの負担は少なくないと考えられる。

 したがって、あらゆる学生にとって奨学金制度を公平なものとする観点から、大学という組織ではなく学生という個人に着目して奨学金が支給されるよう、在学採用から予約採用へのシフトも含めて、奨学金予約採用制度の一層の充実を図るべきである。また、特に社会人等の既卒者に関しては、奨学金予約採用制度の広範な周知を図るとともに、申請手続等について利便性を高める方策について平成12年度中に検討を行い、必要な措置を講ずるべきである。

(6)インターネットを用いた高等教育の促進(教育面における産学連携)

 大学や大学院で学ぼうとする社会人が着実に増加しつつある中で、地理的、時間的な制約により、大学や大学院での学習を希望しながらもその実現が困難な社会人も少なからず存在すると考えられることから、これらの学習ニーズに一層適切に応えていくことが必要である。

 通信制の大学・大学院も設置されてはいるが、大学通信教育の場合は、少なくとも20単位以上については面接による授業を行うことが必要とされており(大学通信教育設置基準第6条)、一定時間以上の通学が義務づけられる仕組みとなっている。

 近年、急速な普及を見せているインターネットを用いて大学教育を行うことは現行制度上でも可能ではあるが、現行の大学設置基準及び大学通信教育設置基準においては、メディアを利用して行う授業として位置付ける場合には同時かつ双方向に行われることを要件とするなど、インターネットの教育メディアとしての機能・特質に応じた明確な位置付けはなされていない。また、実態を見ても、あくまで通常の授業の一部として利用されているにすぎず、本格的なインターネット授業が展開されるには至っていない。他方、米国ではインターネットを本格的に利用した教育が行われ、注目されている。

 正に現在、情報通信技術が著しい発展を続けている中で、インターネットは新たな学習ツールとして限りない可能性を秘めており、インターネットなどの情報通信ネットワーク上でのみ授業を行い単位を認定する、といった新しい教育形態が急速に進展することが十分想定されるところである。

 一方、教育における国際化の観点からは、例えば、外国に在住しながら我が国の大学教育を容易に受けられるようにするなど、インターネットを利用した我が国と海外との間の大学教育の相互連携や、外国大学との単位互換を推進することの必要性も高まっている。

 以上、大学教育としてのインターネットの活用について述べたが、そもそもインターネットによる教育は、大学以外の多様な民間教育機関等においても提供されているものであり、それらを大学教育の内容や方法の多様化・豊富化促進のために活用していくことも効果的であると考える。

 したがって、今後、広く多様な主体によってインターネットによる教育が展開されていくことが想定される中で、特に大学教育については、社会人等が大学教育にアクセスしやすいような学習機会の整備を図るという観点から、インターネットを活用した大学教育の位置付けの明確化や、インターネットを活用した教育を推進するための環境整備の在り方(外国大学との単位互換も含む。)、大学設置基準等の見直し(同時かつ双方向の要件、面接授業の在り方等を含む。)などについて速やかに検討を進め、必要な措置を講ずるべきである。その際、発展の著しい情報通信技術を効果的に活用するため、大学が企業と連携しつつ教育内容・方法の開発を行うことについても視野に入れる必要がある。

 なお、来年度文部省の大学審議会において検討が行われることになっている単位累積加算制度に関しても、大学以外の民間教育機関等によりインターネットを利用して提供される様々な教育サービスも念頭に置いた検討が行われる必要があると考える。

(7)研究面における産学連携

(7-1)国立大学と企業との共同研究・受託研究

 ア 手続の簡素化・迅速化

 研究面における産学連携は、新技術・新産業の創出、地域における産業振興などを通じ、我が国経済の活性を図る観点から極めて重要であるとともに、大学自体の学術研究を活性化するためにも有効である。

 国立大学における企業との共同研究・受託研究については、これまでも経費使用区分の弾力化等が進められたこともあり、その件数は年々増加を続けているが、一方で、依然として手続の煩雑さなどが指摘されているのも事実であり、それが共同研究・受託研究の飛躍的増加に向けてのボトルネックになっているのではないかと考えられる。

 したがって、企業にとってもまた大学にとっても、共同研究や受託研究がより簡便に行えるよう、諸手続の一層の簡素化・迅速化を図るべきである。特に、受託研究費等を翌年度に繰り越して使用する場合の繰越手続については、抜本的な簡素化を図り、可能な限り速やかに実施すべきである。また、これまでに講じられてきた制度改善や規制緩和措置については、それをマニュアル等の形でより明確に示すとともに、関係教職員に対する研修の充実などを図ることにより、大学の各学部・研究所等の現場まで十分に徹底されるような措置を講ずるべきである。

 イ 受託研究の間接経費(オーバーヘッド)の見直し

 企業が国立大学に受託研究を委託する場合、企業は、研究に直接的に必要となる経費(直接経費)のほかに、直接経費の30%に相当する金額を間接経費として負担している。これは、国(国立大学)の人的・物的財産を当該企業のために使用することの対価として徴収されるものであり、このこと自体には一定の合理性があると認められる。

 しかし、直接経費が当該大学に全額交付されるのに対し、間接経費は国立学校特別会計全体の財源として組み込まれ直接的には当該大学に交付されないことが、受託研究を積極的に行おうとする大学のインセンティブの阻害要因となっているのではないかと考えられる。

 このため、平成12年度から、間接経費の一定割合について、産学連携のインセンティブを高める経費として受託研究を行う当該大学に配分されるよう、受託研究の仕組みの改善を図るべきである。

 ウ 共同研究・受託研究に従事する非常勤職員の給与の弾力化

 国立大学において共同研究や受託研究に従事する非常勤職員の給与については、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)第22条第2項において、「各庁の長は、常勤の職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で、給与を支給する」こととされている。この趣旨は、非常勤職員の勤務形態、内容等が多様であり、立法技術的にも一律の定めが困難であるため、仮にその者を常勤職員として採用したならば決定するだろう給与を基礎として、時給、日給等を決定することとしたものである。

 しかしながら、非常勤職員の給与については、一般的な計算式が定められ、これによりがたい場合には、文部大臣への協議が必要となっている。このため、採用しようとするポストの職務の複雑高度性、採用の困難性等あるいは採用しようとする者の優れた業績、高度の技術、豊かな経験等を個別に評価した大学自身の判断による柔軟、弾力的な給与の決定が困難な実態となっている。

 したがって、特に、国立大学において企業との共同研究・受託研究に従事する非常勤職員の給与については、当該研究が契約に基づき行われるという特殊性にかんがみ、その効率的遂行に必要があると当該大学が認める場合には、当該大学限りで、一定程度弾力的に給与決定が行えるような基準の弾力的な運用と手続の簡素化について、平成12年度中に必要な措置を講ずるべきである。

(7-2)国立大学教官等の兼業

 ア 国立大学教官のTLO職員兼業

 昨年8月、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(平成10年法律第52号)が施行され、現在、この法律に基づく技術移転機関(以下「TLO」という。)の設立が進んでいる。今後、TLOの活動により、大学から民間企業への技術移転が一層促進されていくようにするためには、国立大学教官が企業への技術コンサルティング活動を行い、国立大学と民間企業との架け橋としての役割を果たしていくことが求められている。

 しかし、国立大学教官がTLOの職員を兼業することは可能であるものの、TLOの職員を兼業した国立大学教官が他の企業のコンサルティング活動を行うという兼業形態は認められていない。

 この点、国立大学教官がTLOの職員を兼業した上で、TLOの業務として他の企業に対する技術コンサルティングを行えるようになれば、TLOを通じて技術移転を行った研究成果を生み出した教官が、当該研究成果に関して技術指導や追加的な研究開発を行うことにより、より円滑な特許等の実施が図られるメリットがあると考えられる。また、教官がTLOを介して技術コンサルティング活動を行うという形態を採ることにより、企業側としても、ビジネスライクに技術コンサルティングを受けやすくなるものと考えられる。

 したがって、国立大学教官がTLOの職員を兼業した上で、TLOの業務として民間企業に対する技術コンサルティング業務を行うことについて、手続の透明性を確保しつつ、平成12年度からこれを認めるべきである。

 イ 国立大学教官等の民間企業役員兼業

 国立大学教官等の民間企業役員兼業については、当委員会の第1次見解における指摘及び規制緩和推進3か年計画(改定)を踏まえ、政府部内において検討が進められてきた。その結果、まずTLO(技術移転機関)への役員兼業については、承認基準等を定める人事院規則を制定し、平成12年4月1日から施行される運びとなったことを評価するとともに、今後は、制度の円滑な施行がなされるよう、当委員会としても実施状況を注視していくこととしたい。

 一方、TLO以外の一般企業への兼業については、本年6月18日、内閣に内閣官房内閣内政審議室長を議長とする「国立大学教官等の民間企業役員兼業問題に関する連絡会議」が設置され、省庁横断的な検討作業が行われてきた結果、本年11月30日、次のような対応方針が閣議了解された。

国立大学教官等の民間企業役員兼業に関する対応方針について

(平成11年11月30日閣議了解)

1 国立大学教官等の民間企業役員兼業について、現下の社会経済情勢等にかんがみ、憲法が定める公務員の全体の奉仕者性を踏まえた国家公務員法体系の下、次のとおりの方針で対応する。

(1)国立大学等から民間への技術移転を促進する観点等から、国立大学教官等が、その研究成果の事業化を企図する民間企業の役員を兼業することについて、一定の要件の下、みちを開くこととする。

(2)上記(1)の役員兼業の公益性を明確にし得るよう、国が研究成果の事業化を図る企業に対して人的支援を行う必要があることを含む各般の措置を盛り込んだ産業技術力の強化を図る法案を次期通常国会に提出することとする。

(3)国立大学教官等が、民間企業の監査役を兼業することについて、一定の要件の下、みちを開くこととする。

2 人事院に対し、上記1(1)及び(3)の各兼業についてみちを開くため、必要な要件、手続等を定める国家公務員法第103条に基づく人事院規則の制定など所要の措置を講ずるべく検討方要請する。

 国立大学教官等の一般企業への役員兼業については、当委員会の第1次見解及び規制緩和推進3か年計画(改定)を踏まえ、政府部内で速やかに検討体制が整えられ、予定よりも期限を前倒しにして結論を得たこと、また、内容的にも、従来は原則として禁止されていた役員兼業について、一定の範囲ではあるが兼業の道が開かれたことについては、一定の前進があったものと評価する。

 当委員会としては、当面、上記の閣議了解中にある産業技術力の強化を図る法案の策定及び承認についての具体的な要件や手続等を定める人事院規則の制定を注視していくこととしたい。

 国家公務員としての全体の奉仕者性との整合性の観点で求められる公益性の判断は、社会情勢、社会通念の変化、関係制度の改正等によって変わり得るものであり、これら関係制度の変化や公益性に関するコンセンサスの形成状況等について留意しつつ、さらに役員兼業規制の在り方について検討を深めていくべきであると考える。

 また、この兼業問題に関連して、真に企業統治機能の充実強化を図っていこうとする観点からは、他面で、取締役及び監査役の在り方などの企業法制全体に係る問題について、議論を深めていくことが必要であると考える。


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