−速報のため事後修正の可能性あり−

第9回規制緩和委員会議事概要

(公開討論「企業による病院経営についての検討と関連問題」等)

1 日時 平成10年11月17日(火)午後2時〜5時10分
 
2 場所 中央合同庁舎第4号館共用第1特別会議室
 
3 出席者
(委員会)宮内義彦委員長、鈴木良男委員長代理、石倉洋子、川口順子、神田秀樹、田中一昭、野口敞也、浜田広、A・ミリントン、八代尚宏の各委員
(厚生省)辻大臣官房審議官、中村大臣官房政策課長、阿曽沼健康政策局総務課長、角田健康政策局指導課長
(日本医師会)宮坂常任理事、竹内常任理事、櫻井常任理事
(日本病院会)中山副会長
(全日本病院協会)早川副会長
(日本医療法人協会)豊田副会長
(学習院大学)遠藤経済学部教授
(河北総合病院)河北理事長
(政府)阿部総務政務次官
(事務局)大澤内閣審議官、瀧上行政管理局長、江澤規制緩和委員会事務室長、高野主任調査員[行政管理局]江澤管理官、宮島管理官
 
4 議事次第
(1)規制緩和推進3か年計画のフォローアップ結果報告
(2)各分野の検討状況報告
(3)公開討論「企業による病院経営についての検討と関連問題」

5 議事概要

(1)「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月31日閣議決定)に定められた個別の規制緩和方策のフォローアップ結果について、総務庁行政管理局江澤管理官から、計画で改善措置を講ずることとされた個別624事項のうち平成10年度に措置予定のものは523事項であり、そのうち平成10年10月1日現在で措置(一部措置を含む)されているものは260事項となっている旨の報告があった。

(2)各分野ごとのワーキンググループ等における検討状況について、担当主査から説明があった後、意見交換が行われた。

(3)「企業による病院経営についての検討と関連問題」についての公開討論が行われた。冒頭、医療・福祉分野の主査である八代委員から、論点の趣旨等についての説明があった後、意見発表及び意見交換が行われた。その概要は以下のとおり。

[意見発表]

(八代委員)
・医療の問題は多面性を有するが、高齢化が進む中で大きな課題になっている。医療分野におけ るいくつかの問題のうち、企業による病院経営への参入の問題について競争原理の導入を図る必要があるとの認識から、公開討論のテーマとして取り上げた。これまで、医療は特殊な分野で、儲け主義で行うと消費者が不利益を被るとの考えから、営利企業の参入が規制されてきた。しかし、営利・非営利を問わず競争原理が働かず市場メカニズムが有効に機能していないことが医療サービスの水準に影響しており、その環境整備を図りたいと考えている。
・このテーマの背景には、広告規制、病床規制、社会保障制度等の問題もからむ。営利企業の病院経営への参入が認められることによる競争の促進の是非について、患者の立場に立って御議論いただきたい。

(厚生省)
・医療は、生命健康に直接かかわり、患者に対し公平な取扱いが求められるなど公共性が高く、また、我が国の社会に定着した国民皆保険制度に支えられているという特色がある。現時点において、営利法人による医療機関経営を認めることは、医療提供の適正化・効率化に必ずしもつながらないというのが、基本的なスタンスである。
・その理由としては、第1に、医療サービスには特殊性が認められること。医療は、一般の商品やサービスと異なり、患者自らが必要な医療サービスを事前に十分判断し選択することはできないものであり、営利法人の参入を認めたとしても、理論どおりに市場メカニズムが有効に働き、効率的な医療提供が行われるかどうか分からない。
・第2に、医療サービスは、すべての人に公平に等しく保障される必要があり、そのことが継続的、安定的に提供されることが重要である。営利法人は、利潤追求を第一義の目的としていることから事業が収益性の高い部分にのみ集中するおそれがあり、救急医療やへき地医療等の不採算医療への参入を期待することが難しい。ひいては、日本全体に必要な医療の確保に支障が生ずるおそれもある。
・第3に、これは大きな問題と認識しているが、医療費適正化の問題がある。我が国の医療は、全国民を医療保険でカバーし、公的財源に基づく医療保険制度により費用が負担されており、医療費の適正化は国家的な課題となっている。こうした状況の中で、現行診療報酬制度の下で営利法人が参入することは、利益率の高い医療に集中し、医療費の高騰を招きかねない。また、我が国の医療施設は、全国的にほぼ量的な整備は達成されていることから過剰傾向にあり、新たに営利法人の参入を認める必要性に乏しい。医療機関の経営主体の在り方については、医療審議会に設置された「医業経営と患者サービス向上に関する小委員会」において、引き続き検討していく予定である。

(日本医師会)
・医療関連(周辺サービス等の)分野への企業の参入には賛成するが、医療事業本体への企業の参入には断固反対である。医療及び医業は、直接、人の生命や健康の回復、維持等を目的とするものである。医療には、救急、へき地医療などの不採算部門が存在するが、不採算だからといって放置することはできない。営利企業は、出資者からの資本を最も合理的に運用し、出資者に利益をもたらすよう付託されたものであることから、不採算部門への参入は出資者への背信行為ともなるものである。企業にも社会的責任が存在するが、これは2次的なものにすぎない。企業の倫理は経済活動上の倫理であり、人の生命、健康に携わる医師、医療の倫理とは本質的に異なる。
・裁判例においても、医療事業は利益の追求を第一義とするものではないこと、国民の保健衛生上欠くことのできない公共性を帯びていてその性質上非営利であるべきことなどが指摘されている。地域医療は当該地域の医師、医療機関が協力し合って、地域住民の健康を守るということである。その内容は、予防接種などの公衆衛生活動や学校保健活動、病診連携、病病連携、救急医療における在宅当番医制、病院輪番制などの公共性が高い事業であるが、これは医療、医業が非営利であるからこそ可能なのである。しかし、営利企業が参入してくると、我が国の医療供給体制の根幹である地域医療制度は混乱し、ひいては国民にも不利益になる。
・医療施設の量は既に満たされ、病院間での競争は今でも行われており、企業の参入を認めた場合はむしろデメリットの方が大きい。我が国の医療保健制度は、国民皆保険健制度であり、負担の公平と給付の平等の理念の下、国民に誰でも等しく平等な医療が受けられることを保障してきており、世界一安い費用で、世界一の長寿国を築き上げてきた。

(日本病院会)
・医療は非営利を原則としており、マーケットベースに乗らないものは敬遠され、必要な医療を確保できないおそれがあるなど、営利を目的とする企業の活動にはなじまない。医療費は公定価格で統制経済下にあり、企業の参入で医療コストが下がるとは思われない。医療は一般の商品やサービスと異なり市場メカニズムが有効に働かない。国民皆保険の社会保障制度の下で、収入は単価掛ける患者数で決まり、利益を追求しようとすると、単価を上げるか患者数を増やすしかない。営利企業は利益を株主に配当しなければならないが、医療費は国民の保険料や税金で賄われている。不幸にも病気になって医療を受けたことによる報酬が株主への配当に回されることになる。
・営利企業の参入を認め大資本や海外資本が入ってくると、薬価の問題とか新商品の開発による医療費の増大など様々な問題が生じてくる。競争による医療サービスの向上を目的とするなら、まず既存の医療施設間の競争を促進すればよい。医療施設はどちらかといえば過剰ぎみであり、現在でも競争環境下にあって必死に努力している。

(全日本病院協会)
・国民は、それぞれ消費者、労働者など様々な側面を有するが、患者は社会的弱者であり、医療分野における患者を消費者という一面でとらえるのは適切でない。行政改革委員会の最終報告を読んだが、その前文に「消費者主権の考え方」、「消費者の視点に立って検討」等の記述がある。これは一面において正しいが、医療分野における患者イコール消費者という認識は間違っている。我が国は世界一の長寿国で、乳児死亡率も最低、しかも国民医療費は低くOECD加盟国の中で対GDP比17位とされている。これは医療の非営利性及び配当禁止の原則の下での医療機関の努力と国民皆保険制度によるものである。
・医療については、健康保険制度の枠があるので、たとえ営利法人が参入しても他産業と同様な市場活動は不可能である。我々は、医療の供給者であり、医療分野においても規制緩和がもっっと必要な点もあると考え、規制緩和委員会にも期待してきたが、規制緩和の焦点が営利企業の病院経営への参入問題に絞り込まれているのを残念に思う。

(日本医療法人協会)
・医療法にも非営利性の原則が明記してあり、人の病気を儲けの対象にしてはならない。営利企業の参入は、医の倫理、医療の公共性に反する。我が国の医療は、全国どこでも安い費用で診療を受けられ、色々な面で世界最高の水準にある。医療費は先進国において最下位、大きな手術の費用でみると米国の約3分の1であることなど世界に誇れるものである。この優れた日本の医療の現状は、非営利の原則に基づき構築されたものである。
・利益の追求を目的とする営利企業が参入すると、不採算部門の切捨て、国民への均一・平等な医療の供給体制が崩壊する。資本力が圧倒的に強い企業の参入は、医療を寡占状態にし、結果として医療費の高騰を招く。また、国民には、いつでもどこでも医療を受けることのできる社会保障制度が整備されているが、営利法人の参入による保険者権限の膨張により、医療の質の低下を招き、ついには社会保障制度が崩壊しかねない。

(遠藤教授)
・医療市場に参入すればインパクトを与えるであろう企業が存在することは承知しているが、現状では営利企業の参入については反対である。医療市場においては、診療報酬の支払いに第三者的支払者が介在していること、診療報酬が公定価格であること、医師・患者間に情報の非対称性が認められることなどの特性があり、市場メカニズムが有効に機能しない分野である。
・また、医療事業から生じた利益は、他に有利な投資対象があっても医療の質の向上のために再投資しなければならないという非営利の制約がある。患者が医療施設を選択することは自由で、民間病院は独立採算性であり、現在でも医療機関相互の競争原理を通じたパフォーマンスは達成されている。誘発需要を抑制する病床規制もあり、営利企業が参入してもコストパフォーマンスの向上は図られず、単なるオーナーチェンジを生むだけではないか。
・営利企業が医療提供を行う上でのメリットがよくわからない。例えば、資本市場からの資本調達は容易になるが、株主からの利益配当の圧力が強まる。営利企業のディスクロージャーの対象は財務データが中心であるが、患者の欲しい情報は自分の診療情報や医療機関の質に関する情報であり、財務情報は患者の役に立たない。営利企業の参入により、何がどのように良くなるのか示して頂きたいと思っている。諸外国の状況を見ると、フランスなど多くの先進国では認可による営利企業の参入を認めているが、その多くは小規模で株式公開もしていない。例外的な存在として、アメリカの Investor owned hospital が産業として活動している。しかし、アメリカの営利企業経営病院の実態をみると、高い料金設定、不採算医療の抑制、支払能力の低い患者の消極的な受入れなど、クリームスキミング(いいとこ取り)的な傾向が見られ、コストは非営利病院と同等かむしろ高い場合が多い。
・営利企業の参入の問題は、診療報酬、医療法人制度、病床規制の在り方をめぐる総合的な議論の中で検討されるべきである。

(河北理事長)
・営利企業の病院経営については、積極的に賛成はしていないが、少なくとも排除する必要はないと考えている。医療分野の規制緩和に当たっては、「公正」「選択肢」「標準化」を念頭におき、ゆとりのある制度を目指すべきである。例えば、対GDP比7%の医療費を確保すべきと考える。医療事業全体の枠組みに関する概念は明確でなく、医療は産業なのか、あるいは配給事業なのかを十分議論する必要がある。
・私は、市場原理を導入した方が一層医療全体の枠組みを拡大することができると考えている。現在の医療制度は非営利を原則としているが、先程来の議論を聞いていても、非営利についての精神論と経営論が混在しており、明確に区分して議論する必要がある。資本主義にも計画があり、社会主義にも市場があるとの言葉があるが、制度、患者の権利、市場の三座標軸のバランスを考えるべきである。
・市場競争原理を導入するための環境整備としては、医療倫理の確立、徹底的な情報の公開、公正な経済的基盤の整備等が必要になってくる。営利であれ非営利であれ、病院経営は他の事業と比べても何ら特殊ではない。医療法人は遅れている。医療の分野においても、雇用の確保、内需の拡大、技術革新、国際貢献等の社会的な不可価値を高めていくことが必要と考えている。

[意見交換]

(委員)ただ今の説明で共通している命題は、非営利とは何かということ。医療法人という名前であればよいのか。名前が医療の質を担保するのか。日本の医療が世界一といわれるが、3時間待って3分診療という実態も指摘されている。医療は統制経済である旨の説明があったが、どうすればこれをやめることができるのか。営利企業の参入によりよくなる証明をすべきとの発言があったが、逆に参入させないことによるメリットの説明責任が必要なのではないか。営利企業が参入してくると医療が寡占状態になるとの説明があったが、なぜ医療の質が保障されないと自ら主張している営利目的の病院をおそれるのか。

(日本病院会)統制経済をやめろというような極端なことは言っていない。また、3時間待ち3分診療の話があったが、様々な工夫で待ち時間の短縮が図られており今ではそのようなことはない。

(日本医師会)患者が自分で自由に医療機関を選択して診療を受けられることが我が国の医療の特徴である。ただ、医療の内容は一般に分かりにくい面もあるので、できるだけ診療に関する情報を提供するように努めている。医療は公定価格でやっており、勝手に価格を決められない。そこに営利企業が参入してきても上手くいかない。我が国の医療制度は、現在可能なあらゆる医療を患者に提供できる制度だから、医の倫理を大切にしなければならない。それを守らない者は自然淘汰される。

(全日本病院協会)弱者という言葉を使ったのは、商品を選択する権利と情報を有し商品を買う一般の消費者と異なり、患者は受け身で医療の情報を知り得ない立場にあるということである。市場競争における敗者とは意味合いが違う。

(日本医療法人協会)多くの医療法人には持ち分があり完全な公益法人にはなっていないが、医療法人は剰余金を得ても配当が禁止され、医療のために再投資することが義務づけられており、営利法人とは決定的に異なる。昨年の医療法の改正により、特別医療法人制度が設けられた。現在、医療法人は、営利と非営利の中間的な存在であるが、完全な公益法人に向かう方向で努力したい。

(遠藤教授)営利企業が参入すると、病床の増加、医療費の増加など利潤動機がネガティブに働き、クリームスキミングを誘発する。外国の例でみても営利法人の方が廃院率が高く、地域医療の継続性の面からも問題がある。

(委員)営利法人は利益の追求にのみ奔走しているわけではなく、そのすべてが配当できるほど利益をあげている状況でもない。アメリカの営利病院制度は患者からどのように受け止められているのか。また、市場競争原理導入のために公正な経済的基盤の整備が必要との話しがあったが、どのような趣旨か。

(遠藤教授)アメリカの場合、クリームスキミング的な傾向もあり、患者の評価はかなり厳しいのではないか。また、資本の独占化が進んでいる。我が国で参入を認めた場合も、参入者がいるのか消費者から支持されるのか、よく分からない。

(河北理事長)現在の診療報酬制度は、昭和33年に医療行為に対する費用弁済として制度化されて出来た。国公立病院には毎年1兆円の税金が出されているが、そのような補助のない民間の病院も同じ医療サービスを提供している。コストにはオペレーションコストとキャピタルコストとがあるが、それに対応できる条件を整備した上で、国公立病院を民営化すべきである。

(日本医師会)病院の中には閉院するものもあるが、継続されるもの、新たに参入して診療所を開設する者もある。営利企業の参入のメリットの一つはサービスの向上といわれるが、医療サービスの向上は患者に分かりにくい。病床規制についてはどのように考えているのか。

(委員)厚生省、医師会、薬剤師会、薬品業界などは、これまで護送船団方式でやってきた。金融分野に見られるように護送船団方式は長続きしない。医師は聖職といわれるが、なぜ聖職なのか観念論に止まっている。例えば、宅急便のクロネコヤマトが、不採算と分かった上で離島も配達のエリアとして全国展開を図っているように、企業も利益だけを目的としているわけではない。多様な業者の参入をなぜ拒むのか。医者の世界は数少ないムラ社会である。

(日本医師会)たとえ話しをすると、清涼飲料水は数百種類あるそうだが、そのすべてを陳列して販売することはできないので、9割の消費者が購入を希望する20種類に絞って販売を行うそうである。一般の商品の場合はそれが可能であるが、医療の場合はそれができない。護送船団といわれたが、対GDP比18位の費用で世界最高水準の医療を提供している。

(委員)これまでの医療制度がそれほど素晴らしいのであれば、誰が参入してきてもおそれる必要がないのではないか。新規参入はその分野の活性化をもたらす。

(委員)市場メカニズムが万能とは考えていない。病床規制についても色々な意見がある。しかし、競争原理が働くと医療情報の公開、医療器具の開発等も進む。医の倫理を言われるが、医療現場で患者を人間として扱っているのか疑問を感じることもある。

(日本医師会)小規模の診療所も大きな病院も連携して地域医療を行っている。そのような所に営利企業が参入すると医療現場が混乱する。

(委員長)日本が世界第2位の経済大国になったのも株式会社が頑張ったからであり、ある特定の分野においてのみそれが作用しないとは考えにくい。
 いずれにしても、本日はどうもありがとうございました。

(文責:規制緩和委員会事務室)