| 森下一乗 | (株式会社ブライトキャリア代表取締役社長) |
| 久川博彦 | (日本労働組合総連合会労働対策局長) |
| 松井博志 | (日本経営者団体連盟政策調査局労務法制部労務管理課長) |
| 大久保幸夫 | (株式会社リクルートワークス研究所所長) |
5 議事概要
「雇用の流動化とセーフティーネットの整備」についての公開討論が行われた。冒頭、委員長による開会あいさつに引き続き、雇用・労働分野担当の主査である八代委員の進行により、委員会側の基調報告、出席者による意見陳述及び討議が行われた。その主な内容は以下のとおり。
(1)基調報告
【小嶌規制改革委員会参与】 規制改革委員会では、7月30日の論点公開に際して、労働問題に関し5分野17項目にわたる問題提起を行った。
その後、労働省の中央職業安定審議会において、関係政省令案等の諮問・答申が行われたが、必ずしも我々の考えどおりとはなっていない。本日は、未解決と考えられる問題点を中心に議論をしたい。
第一に、有料職業紹介事業に係る規制の見直しである。これについては、港湾運送業務及び建設業務以外の職業については、命令においてネガティブリストには含めないこととされた。このように、ネガティブリストの範囲が必要最小限に限定されたことについては高く評価されてよい。しかし、省令案を見ると事業所における有効求職者数500人に対して1人の割合で紹介責任者を置かなければならないなど、細かな規定が置かれており、これについては、例えば事業所単位で1人いればよいではないかといった意見も聞いている。また労働者派遣事業の場合は、100人に1人とされており、許可証にその氏名を明記しなければならないとされている取扱いとも相まって、非常に煩わしいと聞いている。
次に無料職業紹介事業だが、従前の許可基準が大幅に改められ、営利企業あるいは労働組合等が行う無料職業紹介について、その対象範囲に関する制限がなくなったことは高く評価する。我々としては、学校等以外が行う無料職業紹介事業についても、学校等の場合と同様に許可制から届出制への移行を検討すべきだと考えている。
労働者の募集に関する規制については、従前は中小企業の事業主がその所属する特定の中小企業団体に委託して行う場合のみ可能であったものを、今般、募集主の規模を問わず、すなわち大企業であっても、誰に対しても募集を委託できるように改められたことは高く評価したい。ただ、指針案を見ると、いわゆるスカウト行為を行う場合は職業紹介とみなされるため、職業紹介事業の許可を要するとされている。その結果、誰に募集を委託するかで許可が必要となったり不要となったりすることは疑問である。また、委託募集の許可制については、将来的にこれを届出制に改めることを検討すべきではないか。さらに、高等学校卒業者を対象とする文書募集の規制についても、その在り方の検討を急ぐ必要があると考えている。
労働者派遣事業に関する法規制の見直しについてだが、改正派遣法の中で特に問題だと考えているのは、派遣期間を1年に限定している点である。大阪府が登録型派遣労働者について実施した調査によれば、1年を超える派遣期間を希望する労働者が62.9%に上っている。1年という派遣期間の制限は、常用代替を防止するという常用労働者本位の考え方が前面に押し出され、肝心の派遣労働者の意思がないがしろにされているのではないかという印象を持っている。派遣法はいったい誰のための法律なのか。我々としては、派遣労働者の希望により1年の派遣期間の例外を認めてはどうかとか、この制限を受けない従来の26業種を拡大してはどうかといった提案をしている。また、ジョブサーチ型派遣については、本年の12月1日ではなく1年後の平成12年12月1日に実施予定とされているが、これを前倒し実施する余地もあるのではないか。さらに、職業紹介とも共通するが、新しく労働者派遣業の許可を取得するためには、事前に(約3か月)人的・物的設備を整える必要があると聞いている。これが小規模事業者の新規参入を著しく困難にしているのではないか。
労働基準関係規制については、有期契約については、新たにベンチャー企業を立ち上げるような場合には誰とでも期間3年の労働契約を認めるべきではないかという提案をしている。また、新たな裁量労働制については、来年4月から施行されるが、縛りがきつすぎるといった問題があり、むしろ現行裁量労働制の適用対象業務を拡大すべきではないかと考えている。さらに、解雇規制については、解雇権濫用法理が判例上確立しているが、その内容が厳しいために、かえって企業の採用意欲をそいでいるのではないかと考えられる。一方、労働者にとっても裁判に訴えなければ救済されないという問題がある。この問題については、立法化も含めて検討する必要があるのではないか。
労働市場におけるセーフティネットの整備については、最低賃金法等に定める罰金額について、抑止効果を伴った実効性のある額に引き上げるべきではないか、労働・社会保険について非常用労働者への適用の拡大を検討すべきではないか、雇用関係全般について相談できる窓口の整備や関係法律の遵守をより効果的にする仕組みの在り方について検討すべきではないかといった指摘をしている。
(2)出席者による意見陳述
【森下ブライトキャリア社長】 本日申し上げたいポイントは次の4つである。
第1に、これまでは主として失業の回避という雇用政策が行われてきたが、国民が真に求めているのは、求職者が希望する仕事に就けることである。また、雇うことに対する事業主の心理的負担を取り除くことが重要であり、そのため雇用に条件を付けすぎないようにする必要がある。さらに、労働契約を自由に行えるようにする必要があり、1年や3年などと期間を制限すべきではない。なお、失業は悪いことではなく、転職することは人生の一つの楽しさであると考えられるようにするため、失業中の生活補償を手厚くし、安心して転職できる環境を整えるべきである。
第2に、官民の役割分担の明確化が必要である。官は公平・無料であり、弱者保護、差別の禁止、失業対策、地域問題の解決に重点を置き、生活の安定を支えるべきである。一方、民はサービス、スピード、付加価値、有料、競争の中で、労働の流動化を担うべきである。また、民間事業者の管理・監督は、職業安定所から労働基準監督署などの専門組織に移管すべきである。さらに、雇用保険は、失業中の生活福祉として個人対象部分は社会保険庁へ統合することが望ましい。
第3に、雇用保険の改正に関しては、企業への雇用調整助成金システムを縮小し、本人給付へ重点を置くべきである。また、自発的失業者と非自発的失業者の区別をなくし、自発的退職者に対する3か月間の給付制限期間を廃止すべきである。さらに、雇用保険と職業紹介とが連動するようにし、安全な転職を実現すべきである。
第4に、労働契約の制度整備については、労働は有期であり、働く者と企業との交渉によるものとすべきと考える。解雇権については、労働者と企業とが納得できるような形で法的に整備すべきである。具体的には3か月の予告と、解雇事由の明文化が望ましい。また、高齢化社会への移行の中で、45歳以上の年齢を理由とする採用の差別を禁止すべきと考える。
次に、セーフティネットについては、情報が正しくスピーディに伝わるよう、インターネットを活用すべきである。また、個人と企業の双方に納得されるような「テンプtoパーム」(Temp to Perm:一時的雇用からから常用雇用へ)の仕組み作りが必要である。また、雇用保険を貰い切るまで働かないという現状の仕組みを改め、働かないより働いた方が得する仕組みを作るべきである。さらに、年齢給から能力給、職務給への切り換えによって高齢者の雇用を促進すべきである。
セーフティネットの拡充については、6か月以上の継続失業者、再転職者、雇用保険受給資格のない者に対する重点的な救済措置が必要である。そのために、長期滞留者に対する個別コンサルティングを実施するとともに、市場価値を上げるための能力開発支援を行うべきである。また、職安を通じないと各種雇用助成金が受けられないといった就職ルートの区分を撤廃し、民間企業を通じた就職であっても受給可能とすべきである。3か月以内の試用期間、3か月以内の派遣期間で働く者については、就職確定をせず、雇用保険の受給を継続することも安心感となる。個人による苦情処理の窓口を各県に設置し、企業と調整の上、裁判によらない早期是正が実現できるようにすべきである。
以上のような考え方に基づき、今回の職業安定法、労働者派遣法改正についての意見を述べたい。まず、職業安定法については、「3年後」のみではなく「3年ごとに」見直しを行うことが望ましい。また、事業所ごとの許可条件を企業単位にすべきである。「テンプtoパーム」は原則的に認めることが望ましい。インターネット紹介は、より詳細な労働者の権利保護をマニュアル化すべきである。手数料の上限を50%とする規制は必要ないと考える。500人に1人の管理者を置くという規制についても、一律に規制するのではなく、違反があれば摘発するという考え方に立つべきであり、例えばイエローカードシステムなども考えられてよい。
労働者派遣法については、1年間の期限規制は、企業の採用の柔軟性、雇用の拡大の観点からは望ましくないと考える。1年以上の派遣労働者について正社員としての採用義務を課すのではなく、「テンプtoパーム」を原則的に認めることのほうが望ましい。労働者派遣と下請契約(アウトソーシングを含む)との区分をより明確にすべきと考える。
このほか、裁量労働制については、縛りが厳しすぎて現実には使えない。解雇立法については、判例ではなく明確な条文が必要である。非常用労働者の社会保険等の適用は当然のことだと考える。
【久川連合労働対策局長】 7月の論点公開に対する連合としての意見は、10月5日付けで公表したとおりであるが、雇用労働分野の規制改革の検討に当たっては、雇用の悪化などの発生を事前に防止する対策をまずもって講じていただきたい。合わせて、不況の深刻化による失業増、労働基準法など現在の法違反を解決するための対策を優先させるとともに、企業の営業譲渡、分割、合併など経営形態の変更による労働者の解雇、労働条件の不利益を防止し、「失業なき労働移動」を担保するため、EU指令に見られる、企業組織の変更に伴う労働者保護法の早期制定が不可欠であると考えている。
次に、事前に頂いた3つの問題意識に対する意見である。
1番目の、労働市場における中立的な市場ルールの整備については、今回の労働者派遣法改正は、従来の枠組みを大きく転換し、派遣労働者の保護措置が強められたルールであると認識している。今後は、こうしたルールが確実に履行される環境づくりと検証行動を展開し、3年後の見直しに向けてスタートしたい。また、ジョブサーチ型派遣については、原則禁止を維持した上で、本人の申出・同意など一定の要件を満たす場合のみ例外的に認めることとし、来年12月から実施される運びとなったが、いずれにしても「テンプtoパーム」への道を開いたものと考えている。
雇用の流動化については、現在の我が国の社会制度は長期継続雇用を前提としていることから、離転職者に対して不利となっており、まずは職業能力開発など再就職を促進する体制を整備することが必要だと考える。したがって、派遣法については改正法の実効性を検証する期間を置くべきであり、安易な制度変更は急ぐべきではない。
2番目の、多様化する雇用形態や就労形態については、公正かつ安定した労働契約の確立が必要であり、労働基準法の改正あるいは労働契約法の創設が検討されるべきである。なお、委員会が提言される新たな解雇法制については、一つの検討素材ではあるが、罰則が伴わないと実効性確保の点で疑問が残ることになる。
また雇用形態の多様化の下で、労働基準法第9条の定義でカバーできない労働者の扱いをどうするかが問題である。さらに、今後純粋持株会社が増加する中で、労働組合法上の使用者の定義についても早急に規定すべきである。当面の課題はパート労働者などに見られる短期反復更新の取扱いだが、一定の基準を満たす場合には期間の定めのない正規型雇用とみなすべきだと考える。
社会保険・労働保険については、社会的セーフティネットとして全ての労働者に適用する方向での見直しが避けて通れないと認識している。当面は加入要件の改善を図るべきであると考えており、中央職業安定審議会における議論の結論に期待したい。
3番目の、監視・相談機能の整備については、5,400万人の雇用労働者のうち8割近くについては労働協約が存在しないという現状の中で、従来の集団的労使紛争の処理機能に加えて、パート・派遣など未組織労働者のために、新たに公的機関による個別紛争処理システムの確立が緊急の課題であると認識している。連合としては、民主党の協力を得て、現行の労働委員会の中に個別的労働関係担当委員会を設置するという内容の「個別労働関係調整法」を議員立法として提出する準備を進めているところである。
労働関係法制の実効性を監視・監督する機関としては、労働省の都道府県単位の出先機関として地方労働局が統合・設置されるため、連合は、この地方労働局において職安行政と労働基準行政が一体的に運営されるよう申し入れ、その動向を注視している。
労働相談の窓口としては、ハローワークや労働基準監督署などがあるが、現場解決が困難な状況も見られており、苦情・相談窓口の機能強化を図るため担当する職員研修を強化するとともに、ワンストップサービス体制の強化が必要である。例えば、東京都では労政局に三者構成による調整委員会を設置することを検討すると聞いているが、連合としても期待したいと考えている。
最後に、基調報告についていくつかコメントしたい。まず、職業紹介の責任者については、これまで置かれていなかったのは行政の怠慢であり、むしろ遅きに失するものである。人材サービス業としての職業紹介を行う以上、紹介責任者を置くのは当然である。次に、派遣期間が1年間に制限されていることについては、そもそも現在の派遣法の入り口に問題があった。一般的な派遣、社会的制度の求める派遣、それから今回の臨時的派遣、これらを一緒に積み上げてきたところが問題の根源である。連合は、派遣をテンポラリーなものに限定すべきだと主張してきた。ジョブサーチ派遣については、来年度の施行を期待したい。
【松井日経連政策調査局労務管理課長】 労働者派遣、職業紹介関係を中心にお話ししたい。今回の派遣法、職業安定法改正の出発点はILOの議論にある。1960年代から、有料職業紹介以外の求人サービスを行う事業者が増えてきて、それがILO条約違反ではないかということで議論が行われ、その過程で有料職業紹介というものが認識されていって、1997年のILO総会で条約改正が行われたものである。日経連としても、現行法制のもとでは市場が対応できなくなっているという認識を持っていた。
1年を超える派遣が可能な「専門的業務」(現在26)の範囲を拡大していくべきという意見もあるが、「専門的」業種とは何かという議論ができるのかという点で、我々の立場からは採れない意見である。また、常用代替を避けるということで派遣期間が1年間に制限されていることについては、派遣でなくても常用代替は起こっており、派遣だけで常用代替を図るという考え方がそもそもおかしいのではないかと主張してきた。全ての業務が短期雇用となるとは思わないが、短期雇用で間に合う分野も多いのではないか。ただ短期雇用で全てを解決できるとは思ってなく、長期雇用も必要だと考えている。また長期を望まない人も増えており、多様な就職のチャンネルを用意することが必要だろう。
労働市場の柔軟化には、企業内の処遇制度がもう少し市場にリンクしたものとなる必要がある。この点では、企業側としてもやらなくてはならないことがまだ多いだろう。
次に、基調報告中の指摘について述べたい。有料職業紹介の責任者だが、例えば1事業者1人ということも考えられるだろうし、インターネットを利用した求人が増えていけば、1人の責任者が見る求職者の数が500人までというのはむしろ少なすぎるということもあり得るだろう。無料職業紹介事業の主体が多様化することは、我々としても歓迎している。その意味でも、無料職業紹介事業は許可制から届出制とするべきである。有料職業紹介事業についても、連合側は許可制を主張しているが、我々はこれについても届出制でよかったのではないかと考えている。
委託募集については、いちいち許可制でやるべき時代だろうか。届出すら必要ではないのではないか。ただ、委託募集の範囲が広がったことについては少し前進したと考えている。新規高卒者の委託募集については、中央職業安定審議会でも十分な議論がなされなかったと思うが、無料職業紹介の範囲が拡大したことにも合わせて検討することが必要だろう。高卒者については、これまで学校と企業の関係が強く、本人の意思が反映されないことが多かったようなので、今後は若年者の転職を減少させるためにも、もう少し自由な方法を考えるべきだ。
派遣期間が1年に限定されたことについては、日経連としては、従来の26業務と同様の方法がベストだと考えている。26業務を増やすというのではなく、26業務以外のものについて、現行の26業務と同様に扱うべきだと考えている。1年以上同じ部署で受け入れられないというのは非常に厳しい規制だ。この点、「同一業務」について、指揮命令が行われる最小単位の組織であると同一であるとみなされることについては、委員会でも十分御検討いただきたい。
ジョブサーチ型派遣については、ベンチャーなどで人材を確保したいというニーズに応えるため、来年といわず、いますぐにもやっていただきたい。可能なら前倒しも検討すべきではないか。
申請書類については、少なくする方向で検討中と聞いており、その方向でお願いしたい。
派遣禁止の政令指定が医師と看護婦ということだが、これを加えるべきではない。中央職業安定審議会でも厚生省からヒアリングを行ったが、なぜ派遣された医師・看護婦がダメで、週1出勤とかの非常勤の医師・看護婦はよいのかが理解不能であり、最後まで反対した。なお、外国では派遣の医師・看護婦も働いている。派遣法の適用除外とするなら、その理由を明示すべきであると考えている。
【大久保リクルートワークス研究所所長】 雇用の問題を考える上で非常に重要なのは、個人のキャリア開発を支援する機能を持った市場をつくることである。どうしても個人の視点が議論の中から落ち易い傾向にある。ジョブのマッチングだけでなく、個人の能力開発が組み込まれた市場社会が必要だ。例えば、キャリア・カウンセリング、アセスメント、能力の棚卸しなどのサービスをどこが提供するかという問題がある。サービス料の支払いは個人自身が行うことも考え得る。
高校生の市場についてだが、十分な選択肢がないことと、専門性を持った人からの就職指導が行われていないという問題がある。高校生の就職については、現状を見直さない限り、ますます厳しくなっていくだろう。
派遣については、確かに正社員になれないでやむなく派遣労働者になっている人もいるが、それと同じかそれ以上の人は、派遣という働き方に魅力を感じているというのも事実である。最近ではむしろ後者が増える傾向にある。派遣期間が1年間に制限されているが、やっと職場に慣れ、派遣元・派遣先の双方にとり大変良い状態であるのに、なぜ辞めなければならないのか。本人が望む場合は、引き続き派遣されるような方法が採られることが望ましい。正社員が優遇され、その他の(多様な働き方をしている)人々が冷遇されるという現状は良くない。
民間の人材サービス会社をうまく活用するという方法がある。この分野自体、雇用の吸収力が期待されている有望分野であり、新規参入も非常に多い。しかし、このような新規ビジネスは、法律と相性が悪くギャップがあるというのが常である。すなわち、日進月歩のニュービジネスに法律が追いつかないという図式である。特に、インターネットについては、仕事のマッチングのために大変望ましいツールであると感じている。つまり双方向性があり、情報流通コストが低いため、求人・求職双方のジョブサーチコストを下げることができる。今の法律では、職業紹介事業はオフィスを持って斡旋を行うことを前提としているため、オフィス賃料、責任者設置のコストがかかり、紹介手数料を押し上げている。これからはインターネットを利用した斡旋を認めていくべきだろう。
また、人材採用のアウトソーシングビジネスの位置づけについて、これを認めるのか、また発展させていくことが望ましいのかについてのコンセンサスが見えて来ない。今の経営者は人材採用をできる限りアウトソーシングすることを望んでいる。有料職業紹介と委託募集の境界もあいまいである。
また、官の政策が民間の足を引っ張っていることもある。典型的なのは、各種雇用助成金がハローワークを通じた職業斡旋でしかもらえないということだ。
労働市場の問題としては、ミスマッチの問題が大きい。日本の企業が重視する「職務遂行能力」というのは、労働者が失業して労働市場に出て来た際に、非常に分かりにくいものである。このように能力評価が分かりにくいというリスクをヘッジするために、ジョブサーチ型派遣が非常に有効に機能するのではないかと考えている。現在は解雇が制限されているため採用が慎重になる。解雇は中小企業では日常的に行われているが、大企業では非常に制約されているのが実態である。ミスマッチについては、地域間のミスマッチの問題もある。これまで地方の人材を東京が吸い上げてきたという現象が見られたわけだが、その結果、東京では有効求人倍率が低く、地方では高いという図式が生じている。
もう一つ年齢のミスマッチの問題がある。35歳を過ぎたとたんに求人数は急に減り、45歳を過ぎると更に落ち込む。この年齢による雇用差別の問題をどうするか。
派遣の世界で可能性を秘めているのは製造業だと思っている。これからは熟練工が別の会社に派遣され、その技術を分け与えていくことが期待されるのではないかと考えている。
(3)意見交換
【委員会】 若干の補足をさせていただきたい。常用代替についてだが、今年の労働白書を見ると、マクロで見ると一般労働者が減少しパート労働者が増加しているので常用代替が進んでいるように見えるが、ミクロで見ると一般労働者が減少しパートが増えているという事業所は12.7%しかなく、むしろ一般も減り、パートも減ったという事業所が41.5%と最も多いのが実態である。この数字を見る限り、パートによる常用代替は実は進んでいないのではないかという印象を持つ。さらに、派遣労働者の場合、その数はパート労働者の1/20程度であり、常用代替を問題とすることに無理がある。常用代替の防止という考え方に基づいて1年の期間制限を設けたのは、そもそも前提に誤りがあったのではないか。
ジョブサーチ型派遣についてはいろいろな意見が出された。連合は1年間の検証が必要という意見だが、私はこの制度はすぐ実施すべきだと考えている。というのは、今回派遣法を改正した目的の一つは派遣から常用への転換を図るということにあり、ジョブサーチ型派遣はこのような改正法の目的に合致すると考えられるからである。
解雇規制については両面あると思う。すなわち現在の解雇法制は、在職者には有利に働くが、これから就職しようとするものや再就職しようとするものには不利益に働くものであり、中立的な制度となっていない。私はこれまで、判例の方が立法より柔軟な対応が可能と考えていたが、硬直化した判例を変えるためには立法による解決が必要と考えるようになった。訴訟当事者の利害調整しか行えない裁判では、インサイダーの利益は守れても、アウトサイダーの利益は無視されてしまう。そういうことから、ワークス研究所の提案にもあるように、正当な理由がなければ解雇できないとした上で、採用後1年間の解雇等についてはその例外(適用除外)を認めるといったような考え方も検討してよいと思う。
この後の時間では、ジョブサーチ型派遣、解雇規制を中心に議論を進めたい。
【委員会】 外資系の企業は人材募集をアウトソーシングしたいと考える傾向が強いという話だったが、もう少し説明してほしい。
【リクルートワークス研究所)外資系企業は日本企業と比べて人事部の機能が違う。外資が日本に進出する場合には、当地のコンサルティング会社と契約し、ヘッドハンティングを行ってから募集を行うのが通常である。その際に、日本の派遣法や職業安定法は、若干制約となっている。
【日経連】 外資が日本に進出する場合、人事部までは持って来られず、派遣会社に対して雇い入れる前提で派遣を依頼することが多い。こうした現状にかんがみれば、紹介目的派遣を正式に認めてもよいのではないかと考える。
解雇規制の法制化の是非については、その内容次第だ。現状よりも一層厳しいものになるかどうかは、やってみないと分からない。判例の整理解雇に関する4要件は非常に厳しいものだが、法制化によってこれ以上に厳しくなるようでは困る。先程話に出た、試用期間中の解雇を緩やかにすることも一つの方法だと思う。解雇することが難しくなることにより、南欧の国ではアウトサイダーの採用を手控える傾向にあると聞く。いずれにしても、解雇立法を検討する場合には、少なくとも現状よりも緩やかになる方法で検討をお願いしたい。会社が倒産しても解雇は無効である、という判決が出るなどというのは異常だ。
【連合】 派遣の常用代替防止ということについては、今回、派遣法の趣旨目的に変更がなかった以上、やはり常用代替防止は基本的部分として守って行かなければならないものだと考えている。欧米では派遣労働はジョブサーチのため臨時的に行われるものと位置づけられており、それと比べると日本の「一時的要員不足の補充」という考え方は大きく異なるものである。この「臨時的」という国際レベルに合わせるのか。その際にはさらに労働者保護法制が必要となろう。日本の制度はいいとこ取りの設計ゆえ、おかしいところがあるのは事実だが、今回の法改正では派遣労働の位置付けは変わらなかった。現在、派遣による常用代替が進んでいないのは、これまでは派遣対象業務が専門的なものに限られていたことを考えれば当然であり、改正派遣法施行後広く派遣業務が認められるようになると、やはり常用代替が加速していくことになるのではないか。
日本の賃金構造は4つに分かれている。常用雇用、派遣、パート、地域別最賃(最低賃金)である。常用代替の問題を根本的に解決するには、このような多重な賃金構造を変えるしかないだろう。例えばドイツでは就業促進法に基づき、賃金や福利厚生、年金などについての差を設けないようにしている。やるからにはそういった環境整備が必要だ。
ジョブサーチ型派遣については、解雇規制の問題、労働者保護法の問題などの問題が解決していない中で、ジョブサーチ型というものだけが先行してしまうのはいかがなものかと考える。
【ブライトキャリア】 職業選択の自由が保障されている中で、働き方の多様化が認められていない状況が見られる。組合側の主張も分かるが、派遣を差別しすぎているのではないか。真剣に派遣労働者として働きたいと考えている人が少なからず存在することもまた事実である。そのような人に対して公平でないと思う。どういう働き方をするかについて多様な形を認めていくことが雇用の流動化ではないか。こういったものをオープンに認めていく必要があると考える。その前提として、労働契約自由の原則が実現されていないのではないかという問題もある。労働者の交渉力を高めていくことが必要だ。
また、流動化を進めるために、民間と公共職安、すなわち有料であることと無料であることによる役割分担が必要である。
【ワークス研究所】 試用期間について着目している。企業と労働者との、ある種の「お見合い期間」として、積極的に位置付けて行きたい。職業能力開発については、これまでは企業内OJTが中心であった。それゆえ、外部機関による供給に限界があり、うまく機能していなかったわけであるが、1つのアイディアとして、例えば一定水準の能力がある人には、企業で試用期間として1年間のOJTを行うことにしてはどうか。その延長線上に「テンプtoパーム」の問題がある。これからは、「テンプtoパーム」が派遣の中心になっていくのではないか。ジョブサーチ期間としての「テンプtoパーム」を期待したい。
【委員会)その際、1年間の期間制限についてはどう考えるか。1年間のOJTではいかにも短すぎる。3年の有期雇用契約の範囲を拡大し、それを活用することも考えられてよいのではないか。
【ワークス研究所】 有期雇用契約の範囲はもう少し広げるべきだとは考えている。しかし、1年の契約期間であってもそれを更新していけばよいので、余り大きな論点ではないのではないか。
【委員会】 しかし、判例によれば、1年契約の更新を続ければ、期間の定めのない契約と同じこととされており、裁判に訴えれば勝てるが、訴えなければ解雇されるということでは常用雇用の場合と同じではないか。この点をどう考えるか。
【ワークス研究所】 その問題はあると思うが、通常、1年間でこの仕事をやってくれという指示を出すのが普通だ。正社員の解雇規制と期間更新の人の解雇規制は違うだろう。
【委員会】 制度がどのようなものを目指しているかは別として、これからの派遣の考え方として、派遣がテンポラリーな労働力であるという位置づけには疑問がある。景気変動の激しい中で、仕事の繁閑も大きくなっている中、仕事がないときは椅子に座っているだけというのは非効率である。まずは派遣元に力をつけてやり、マーケットを拡大することが必要ではないか。
【委員会】 連合からの説明で、外国の例がヨーロッパに限られていたが、ドイツやフランスは常に10%程度の失業率を抱えている国である。低失業率を守り、成長を続けているアメリカが国際的動向を示す例として触れられていないのはなぜか。
【連合】 派遣法のそもそもの仕組みとして、派遣はテンポラリーなものとして設計されている。その特例として26業種が指定されていると認識している。今回の法改正でも、従来の枠組みは変えられていないし、ここが出発点であった。ただ、果たしてテンポラリーとしての位置づけで良いのかどうかについては、3年後の見直しに向けて議論が必要だ。派遣元に力をつけるということには賛成だが、やはり派遣元にとって派遣先はユーザーであり、派遣先の求めを断れないのが実態だ。現在、派遣事業許可の拡大により料金のダンピング合戦が行われていて、これが派遣労働者の賃金に影響を及ぼしている。連合としても、派遣が一つの働き方であることは事実として受け止めており、肝心なことは公正・透明なルールが確立されることだと考えている。
なぜアメリカについて触れていないのかについてだが、アメリカはかつてダウンサイジングが起こり、その反動でパート・派遣労働者が増えている。また、アメリカはスキルを持つ者と持たざる者との賃金格差が拡大傾向にある国であり、連合としてはアメリカを目指すべきモデルとしては選ばなかったということもある。
【委員会】 派遣ビジネスは若い事業であるから、派遣元の交渉力が弱いというのはある程度やむを得ない。しかし、派遣先であっても商品のダンピング合戦を行っているのだから、派遣元についてだけ派遣料金のダンピングを指摘するのはおかしいのではないか。また労働者の方にも選択の自由はある。
【連合】 それは同感だ。派遣元は派遣社員のトレーニングなどそれなりの努力をしている。問題はやはり派遣先だと思う。例えば、どのような業務を任せるかがはっきりしなかったり、責任者が不在だとか、事前面接が横行しているといった状況がある。派遣法を知らないという派遣先企業が存在するのも事実だ。派遣先の責任の明確化を示すことができなかったという点では今回の法改正は不十分だと思っている。
【委員会】 派遣法自体が公平さに欠けている面があるのではないか。派遣スタッフと常用労働者とを中立的に扱う仕組みになっていない。派遣法第25条にあるとおり、長期雇用を重視して代替を防止するというのが基本的な考え方である。少なくとも制度の中立化を図らない限り、公平なルールにはならないだろう。派遣法は本来、派遣労働者のための法律であるべきなのに、逆に常用労働者の利益を優先させる法律になっている。この結果生じる派遣労働者の不利益をできる限り軽減するためには、やはり派遣労働者が希望した場合には1年を超える派遣期間を認めるとか、26業務を拡大するとかいったことも考えていく必要があるのではないか。ジョブサーチ型派遣も直ちに実施して何ら問題ないと考えている。なお、事前面接の禁止についても、一律にこれを禁止するのはかえって派遣労働者の利益を損なう面があることに注意する必要がある。
【日経連】 日経連としては、むしろ26業務に寄せていってほしい。さきほど派遣料金のダンピングによってスタッフの給与にしわ寄せがいくという話があったが、派遣労働の時給についてはインターネットで一部情報交換が行われるなどしており、そういうことはないのではないか。市場が拡大すればするほど、派遣会社の選択肢が増え、より良い派遣会社に移っていくことができるようになる。事前面接については、派遣における試用期間として有効な面もあるし、派遣労働はスキルを買うものだとしても、それには人が付いてくるものであり、必要なものであると考えている。日経連はこれを厳しくすることについては反対してきた経緯がある。
【委員会】 派遣という働き方はこれから拡大していくと思うが、派遣で働く人全員に社会保険加入させることは、事業主にとっての負担が大きい面があるとの意見については、どう考えるか。
【ワークス研究所】 派遣労働者の社会保険加入については、まず派遣労働者の移動が極めて激しいという問題がある。また、派遣労働者は能力開発をして資格を取っても賃金が上がらないという問題がある。これらのオペレーションは難しい。
【ブライトキャリア】 今の雇用不安をいかに解決するかを考えると、現行制度における雇用保険の問題も職業安定所と民間の関係も、50年の旧職安法の歴史の中で機能不全に陥っているのではないか。こういった点も規制改革委員会で検討してほしい。
45歳以上の雇用における年齢差別の禁止についても、高齢化時代における雇用の流動化の中で重要な問題である。
【委員会】 本日の議論を振り返って、いくつか申し上げたい。
労働市場は規制緩和が進んでいると言われており、確かに対象職種のネガティブリスト化など進んでいるが、一方で1年間の派遣期間制限も課されるなど、実質的に「使えない規制緩和」が多過ぎるのではないかと懸念している。
改正派遣法は果たして派遣労働者の利益を守るものなのかどうかも議論された。労働規制は、一般には労働者の利益を守るためのものであるわけだが、派遣労働者と常用労働者との利害は必ずしも一致していないのが、難しい問題だ。
賃金と雇用のトレードオフの問題をどう考えるか。アメリカは賃金格差の大きな労働市場と言われているが、それは無業の主婦の低賃金パート就業による面もある。世帯主ではない労働者が増加する中で、果たして賃金格差が大きい米国が、雇用機会の格差の大きい欧州と比べて、一概に悪いと言い切れるのか。
現状の判例による解雇規制の問題については、既に連合が明確な提言をしているなかで、経営者側も何らかの対応が必要とされているのではないか。どういうときに解雇を認め、どういう時に解雇を規制するのかの基準を明確なものにすることは、労働者と企業の双方にとって重要な問題である。
(4)閉会
【委員長】 雇用を増やすためには、企業の競争力が必要である。一方で、働く人の意識は多様化している。企業は、競争を通じて経済を活性化させていくことにより、新たな雇用をつくりだすことができる。両者の折り合いをどう付けるのかがポイントとなるだろう。是非前向きな形のものを模索したい。本日のテーマに関しては、12月の見解取りまとめに向け、今後ともワーキング・グループ等の場を通じて検討を進めていきたい。
(文責:規制緩和委員会事務室)