行政改革推進本部
−速報のため事後修正の可能性あり−

第13回規制改革委員会議事概要

(公開討論(その4)「都心部リノベーションを進めるために」)

1 日 時:平成11年10月29日(金)10時00分〜12時00分

2 場 所:中央合同庁舎第4号館共用第7会議室

3 出席者

(委員会)
宮内義彦委員長、鈴木良男委員長代理、西村清彦委員(住宅・土地・公共工事分野主査)、小林重敬参与(同分野副主査)
(有識者)
佐藤滋(早稲田大学理工学部教授)
大橋洋一(九州大学大学院法学研究科教授)
松井久生(住友不動産株式会社常務取締役)
(関係行政庁)
勝田三良(東京都都市計画局地域計画部長)
山本繁太郎(建設省都市局審議官)、加藤利男(建設省都市局都市計画課長)
(事務局)
齋藤内閣審議官、田部規制改革委員会事務室長、高野主任調査員

4 議事次第
(1)開会
(2)基調報告と意見陳述
(3)討論
(4)閉会

5 議事概要

 「都心部リノベーションを進めるために」について公開討論が行われた。冒頭、委員長による開会あいさつに引き続き、住宅・土地・公共工事分野主査である西村委員の進行により、委員会側の基調報告、出席者による意見陳述・説明及び討議が行われた。その主な内容は以下のとおり。

(1)基調報告

【西村規制改革委員会委員】まず、規制改革委員委員会における問題意識について説明したい。

 規制改革委員会で「都心部リノベーション」について取り上げたのは、この問題が、単にミクロの都市問題であるだけでなく、マクロの日本経済活性化の問題であるということである。そのためには、都市をいかに魅力的にするかということを主体に考えている。

 日本の都市の状態を表わす象徴的な例を出したい。現在株価の回復が見られる中で、都市部の地価の下落は相変わらず進んでいる。地価と株価は両方とも「ファンダメンタルズ」という点では、その予想収益の現在価値という意味をもっている。したがって、地価と株価は未来の評価という性格をもっている。株価は、企業の未来に対する評価であり、都市部の地価は日本の都市の未来に対しての評価である。このように考えると都市部の地価が下がり続けているというのは非常に重要な意味を持っていると考えられる。

 21世紀には、競争力のある企業は現在の「企業リストラ」で収益を回復するであろう。しかし、「企業リストラ」の中身は、日本経済の緩やかな縮小であり、日本企業の回復とは裏腹に、日本経済は「構造リストラ」なしに回復はないと考えられる。現在、地価が下落し続けているということは、日本経済が競争力を失っているのではないか。そのためには、国内の競争力、競争力とは魅力であるが、それをいかに回復するかが課題となってくる。規制改革委員会としては、都市の魅力の源泉は、単なる建物の連なりではなくて、街並みや都市景観のデザインにあるという考えをもっている。

 現在の都市空間であるが、「びっくり箱をひっくり返したような」「テーマパークのような」「混乱・混沌」とした街が日本の街である。21世紀以降の日本の都市の原風景は、「メリハリのある都市にしなければならない。そのためには、「都市デザイン」が重要になってくると考えられ、建物集積と空間集積の再配置、災害への対処と環境対策が必要になる。したがって、このあと話が出ると思うが、アップゾーニングだけでなく、ダウンゾーニングも必要になってくる。と同時に、都市に芽生えている「自生的秩序」も尊重しなければならない。特に規制改革委員会として強調したいのは、個性をもった都市を造るには、コストが掛かっても、長い目で見れば必ずペイするという考え方を取る必要があるのではないかということである。

 都心部のリノベーションを考える上で、都市計画の運営上の問題点がいくつか出てきている。

 第1点目としては、「厳しすぎる規制と野放図な開発の混在」といった一見矛盾したことがなぜ起こるのかということであり、これを本日のディスカッションの中で明らかにしていきたい。規制を設けると規制が自己目的化し、自己目的化しているために、規制が本来の趣旨を達成できず、逆に規制の範囲内で野放図な開発をもたらしているのではないか。この規制の自己目的化を避ける方法はないのか。また、このようなものを避けるために都市のデザインの構想が必要なのではないのか、といった問題について考えていきたい。

 第2点目としては、時間コストの問題が無視されているのではないか、納税者の視点が欠落されているのではないかという問題である。本来、当然のこととして考えられるべき計画作成から建設・維持を含めシステム全体の費用を削減するという考え方が不足していないか、特に費用として、住民・事業者の時間コストを正当に評価していないのではないか、といった問題について考えていきたい。それから、政府の様々な優遇策には、それ相応の政策コストが掛かっており、その負担は納税者である国民が負担しているという認識が不足してはいないか。果たして、税金は有効に使われているのか。また、それを担保するシステムがあるのかどうかということについて考えていきたい。

 第3番目のポイントは、透明性ということである。現在の都市計画は「突然天から降ってくる」と形容され、少なくとも普通の住民にとってはそのように見えてしまう。そうすると、都市計画の立案から、透明性を確保する必要があるのではないか。そして、事業に対する反対の多くは、こうした透明性の不足から生じる疑心暗鬼から出発しているのではないか。したがって、透明性を確保するにはどうしたらよいか、その方策について討論してみたい。

 第4点目については、この数年、都市計画制度の規制緩和が進み、緩和型のメニューは出来ているが、現場レベルでの活用ができないとの声が、我々が行ったヒアリングの中でも出てきている。そうすると、複雑な制度が、その時点での状況に対する単なるパッチワークで出来上がっているのではないか。そのために、事業者だけでなく、住民側にも分かりやすい制度になっていないのではないか。したがって、結局その制度が使われないでいる状況の中で、今後対処していくにはどうしたらよいかということについて考えていきたい。

 都市計画に関して、全ての利害関係者は共通の目的をもっている。それは、良い都市を創りたい、日本を良くしたいという気持ちをもっているという点である。しかし、全体として制度として組み上がったときにそれが必ずしもうまく機能していない。その点を何とかしたい、うまくいくための突破口を作りたいというのが、この公開討論の目的である。

(2)出席者による意見陳述・説明

【建設省都市計画課加藤課長】建設省からは、この分野におけるこれまでの規制改革の取組及び現在検討中である都市計画法の改正について、都市計画中央審議会の中間的取りまとめ内容を中心に説明したい。

 まず、平成9年度以来講じてきた主な施策について見ると、施策のねらいとしては、大きく4点あり、@都心居住の推進A土地の有効・高度利用の推進B市街地調整区域の計画的土地利用の推進C市街地再開発事業の促進である。

 都心居住の推進では、平成9年6月に高層住居誘導地区の創設をし、斜線制限の緩和、日影規制の適用除外など建設規制を緩和した。また、同月共同住宅の容積率規制の合理化を行い、共同住宅の共用廊下、階段を容積率制限の対象から除外した。

 土地の有効・高度利用の推進では、建築基準法を一部改正して、敷地の取扱いの合理化を図った。既存建築物を含む複数建築物の計画について、これらの建築物を同一の敷地内にあるものとみなして容積率などの規制を適用することとした(平成10年6月連担建築物設計制度の創設)。これによって、現行制度の下でも、自由な建築計画がいろいろ工夫をして建てられるようになった。

 再開発事業の促進の観点からは、今年の国会で、都市開発資金の貸付けに関する法律、土地区画整理法及び都市再開発法を改正し、第一種市街地再開発事業において事業計画前に市街地再開発組合を設立することを制度上可能として、無利子貸付制度の創設によってその資金調達を支援することとした(平成11年4月)。

 次に、都市計画制度の見直しについては、建設省としては、都市計画制度全体をどうするかということを主点に改正を進めている。都市計画法ができてから30年経ってしまい、当時の状況とは社会環境がずいぶん変化してしまっており、結果的に制度が複雑になってしまったことについては否定できない。そのような観点から、都市計画中央審議会において、現在、本格的に都市計画制度の見直し作業を進めているところである。都市計画中央審議会の計画制度小委員会での議論は、全部で大きく6つの柱を掲げている。

 第1点目としては、都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設である。これは、現在の都市計画制度では、マスタープランは都市計画区域にしか適用になっていない。線引きをするしないにかかわらず、都道府県全域について都市計画マスタープランを創設してはどうか、また都市計画区域を中心として全域について考えていったらどうかということである。これは、現状固定的になりがちな土地利用計画を始めとする都市計画について、土地利用・施設といったような都市計画上のツールを都市づくりを変えるための手段として積極的に活用していただくための前段階として、都市計画マスタープランを作ってみたらどうかというのが根本的な考え方としてあり、新たに創設してはどうかというのが一番目の大きな柱である。

 第2点目としては、都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方である。都心部リノベーションを考える上で、現在の都市計画制度の枠組みの下では、一歩都市計画区域の外に出てしまったら、そこには何の制限も掛かっていない。都市計画区域の内外を問わず、最低限度の土地利用をコントロールすることが必要な時代になってきているのではないかといった問題意識を持っており、双方をうまくコントロールすることによって、効果的な街づくりが行われるのではないかと考えている。

 第3点目としては、線引き制度及び開発許可制度の見直しである。これについても、市域の実情に応じて、地方公共団体が自由に決定できるような仕組みを導入してはどうかという考え方である。

 第4点目の既成市街地再整備のための新たな制度については、本日の都心部リノベーションを進めるために直接的に都市計画制度として対応するものだと考えている。その一つは、容積率の割増や適正配分等を行う既存の制度を再編し、多様な建築計画と街づくりを可能とする柔軟な制度を創設してはどうかという考え方である。これについては、都市計画としては、余り細かく決めすぎず、都市計画の目指すべき方向性を定めておいて、その都度多様な建築計画を評価することによって、用途地域の制限や建築基準法で定める各種の形態制限等を画一的に定めるのではなくて、それぞれの建築計画に当てはまるような分かりやすい建築制度をつくってはどうかということである。

 もう一つは、地区計画の話であり、いろいろなタイプの地区計画を一本化してはどうか。必要なところでは、どこでも地区計画が定められる、決定内容についても自由に決めていただけるというように自由化を行うという方向で考えたらどうかということである。

 さらに、都市施設についても、これまでの都市計画の決め方としては平面として決めていたわけであるが、都心部の有効高度利用という観点から、区域に加えて空間を都市計画決定事項に追加してはどうかという考え方である。

 第5番目としては、環境問題への対応である。これまではどちらかというときちんとした対応ができていなかったが、これからは環境問題等への対応のための制度を強化していくという考え方である。

 最後に都市計画決定システムの合理化であるが、これについては、例えば、住民に身近な都市計画である地区計画については地域住民や民間事業者などから策定要請を制度化するといったものである。

 以上申し上げた内容で、都市計画中央審議会計画制度小委員会で議論が進められているが、現在建設省としても小委員会の下でいろいろな方々の意見照会を行っている。こちらにいらっしゃる皆様方も御意見等ありましたら、「都市計画制度の見直しに当たって」についての意見募集をしているので、建設省の方へおっしゃっていただければ幸いです。

【東京都都市計画局勝田地域計画部長】私は、都市計画の現場での実務を経験している立場からこの討論会に参加したと考えているので、その立場から、現在東京都において、用途地域・容積率について実際にどのように運用しているかということを中心に説明したい。

 まず、用途地域の根拠・目的であるが、その根拠は都市計画法第8条にあり、同条に基づき指定され、知事が決定をして大臣認可を受ける。目的については、用途地域制度は、良好な市街地環境の形成や、都市における住居、商業、工業などの適正な配置による機能的な都市活動の確保を目的として、建築物の用途、容積率、建ぺい率、高さなどを規制・誘導する制度である。

 用途地域の変更については、大きく分けて、一斉見直しと随時的な変更の二つがある。一斉見直しは、社会経済情勢を踏まえた法改正があった場合及び都市計画法に基づき5年毎に見直しを行い都市化の動向により必要と認められた場合とがある。前者については昭和48年と平成8年に、後者については昭和56年と平成元年に実施をした。

 随時的な変更については、@街路事業の完了に伴う沿道の土地の有効利用を図るための変更である「路線的変更」、A区画整理、再開発等の面整備事業の際に地区計画を併用して土地の有効活用を図るための変更である「面的変更」、B都市開発諸制度(特定街区、再開発地区計画、高度利用地区及び総合設計制度)を活用した変更でどちらかというと「スポット的な変更」の3通りがある。

 変更の基準・手続については、第1点目として、法改正時の用途地域指定に関する建設省の通達、第2点目として、その通達を受けて東京都で用途地域指定方針・指定基準を定め、それを踏まえて変更する。これについては基準化しており、一斉見直しの際に活用している。第3点目としては、随時的な見直しであり、地元説明、区・市の都市計画審議会を経て、区市町村で原案を作成し、都の都市計画審議会を経て変更するという手続である。

 都市開発諸制度の活用地区については、東京都全体で、特定街区が54件、再開発地区計画が33件、高度利用地区が109件、総合設計制度363件となっており、諸制度については活用されているということが言えるであろう。また、緩和のメニューであるが、都市開発諸制度も当初は容積率の1.2倍かつ200%からスタートし、その後いろいろ社会的ニーズに沿い1.3倍かつ300%、また現在では、都心居住・文化財の保護という観点からは500%までの緩和といったものがメニューに付け加わっている。

 都市計画手続に時間がかかりすぎるという指摘を受けるが、主なポイントとしては、説明会、行政との協議・調整に時間を要するということである。ただし、これについては、ケースバイケースで対応している。(都市計画手続の流れについては、面整備の一般例として説明があった。また、都市開発諸制度の実例について、代表的なものとして、@丸の内二丁目A日本橋室町二丁目B汐留C銀座の紹介があった。)

【住友不動産松井常務】東京の再開発事業で仕事をしており、実際に再開発事業あるいは跡地の開発事業に携わっている立場、実務者の立場から一言申し上げたい。

 先ほど建設省の都市計画課長から都市計画法の改正について説明があったが、その中で都道府県単位でマスタープランを作ってもらうという話があった。東京都では、23区レベルでいろいろマスタープランを作っているが、住民参加で議論すると、業務と住居が混在し、健康的で緑あふれる街づくりといった抽象的な概念が主体になりがちである。これについて、私どもの立場からは、時間をかけてもよいからもっと具体的なプランにもっていけるようにしたらどうかと考える。というのは、今日まで幸いに大きな地震は来ていないが、地震防災概念は抽象的ではなくこのような絵にするといった具体的なものにして、都市計画法の中にも空間の概念を取り入れるだけでなく、時間の概念も取り入れるべきである。例えば、経団連では、人口が減ってくる2020年までには東京を再生すると提言しているが、少なくともその辺りの時間までには、具体的にその絵が実現するというような目標を設定すべき時ではないかと考える。

 もう一つは、大きく基幹となる道路の件がある。街を再生するためには道路がいつ完成し、どのような状態で出来上がるのかということを示していただかないと、宅地は道路が完成して初めて宅地となるわけであるから、具体的な目標をもって宅地の再開発プランを進められない。現在から規制を緩和し、将来に向かって街が変わっていくというように積み上げているが、逆に10年先、20年先の街はこのようにすべきだという、一見飛躍的ではあるが、いろいろ工夫してその街を目指すような議論をしたらどうか。企業の場合は、例えば5年先には利益を2倍にする、そのためにはどうしたらよいかというアプローチをする。都市計画の場合にも、同じような考え方をぜひ持っていただけないかと考えている。

 私は、再開発の現場で30年くらい働いている。逆に言うと30年再開発の現場で働いている人間はなかなかいない。それくらい再開発は時間が掛かる。具体的には、西新宿六丁目南地区の東京医大病院の隣接地区についえては既に協議会の設立から28年経っている。たった二人の反対者のために着工できないできた。他の再開発もいくつかやっているが、着工までに平均10年強は掛かる。現在、アークヒルズの隣で進めている「六本木一丁目西地区」の再開発はすでに16年経っているが、二人の反対者を抱えている。現場はこのようなレベルである。

 時間を切るためにどうしても必要なのは、全員同意の壁をどこかで断ち切らなければならないということである。世の中に全員同意というのはあり得ない、未同意者がいることを前提に進めるべきである。西神田二丁目で再開発を進めたときも、道路を挟んでど真ん中に二人の反対者がいた。先程手続の話があったが、こうした問題を解決しない限りは、手続の前段で前に進まないという状況であった。当時は、敷地の区分を工夫して、それを都に認めていただいて何とか解決した。したがって、全員同意ということでいろいろなシステムが出来上がっているわけではあるが、そこに何とかメスを入れられないかと考えている。

 先程の「六本木一丁目西地区」の場合では、地権者はバブル時代からいろいろな夢を描いており、その結果、全員について同意が取れない。そこで、全員同意を諦め、その人たちは残していこうと考えた。残して手続を進めるためには、都市再開発法第111条により「同意率が高ければ、いろいろな手続を認可する」こととされているが、今までは同意率が100%に限りなく近くなければ認可した例がなかった。しかし、同意率が3分の2を越えていれば認可すべしという通達を建設省から出していただき、何とか認可だけは取り付けた。しかしながら、認可までは全員同意でなくとも進めることはできるが、やはり最後には全員同意でなければ着工ができない。

 最後まで反対している人をどうするかというと、都市再開発法では、行政代執行という制度があり、東京都23区では区長がやることになっている。しかし、区長は選挙の問題がありそこまでは踏み切れない。したがって、民間再開発で行政代執行をやったケースはない。そこで、実際は行き詰まってしまう。しかし、私どもとしてはそこでやめてしまうわけにはいかないので、反対者の権利はすべて再開発組合に移管するという形にして、そこに住んでいる人を単なる占有者にして、占有排除で強制執行の判決を出してくれと裁判所に訴えた。訴えられている者としては、再開発法に則って自分を排除しようとしているのであるから、行政代執行に則って区長がやるべきではないかという反訴をした。そこで、民間ではそのようなことはできないし、区もそのようなことはできないという文書を裁判所に出していただいた。そうすると、民法で保障されている所有権は誰が守ってくれるのかという話になり、ようやく裁判所で「占有排除・強制執行」の新判決を下していただいたということがあった。この話についても、相当の時間が掛かっているが、民間でやってもそこまでできたので、コンセンサスを作った上で、どこかで踏み切っていただくようにお願いしたい。

 つまり、やらなければならないコンセンサスを都市計画法の中で、特にマスタープランでそれを作っていただけないかと考える。やらなければならない、やらなければ、地震が来たら悲劇が起こるという考え方である。阪神大震災は、被災地が海に面して横に広がっていたので、すぐに救援物資が届いたが、首都圏の場合は、中に向かって広がっているので、道路・街路が寸断されると物資や水は届かないということも考えられる。

 したがって、幹線道路については、何が何でも造らなければならない。幹線道路が出来れば、それにつれて街路も造られてくる。その点についても、是非考えていただきたい。また、街路については、千代田区は街路が多すぎて緩和制度が使えない、震災復興で区画整理されすぎているところは高度利用しにくい。逆に、新宿区や港区のように街路が整備されていないところは、緩和制度が使いやすかったりする。そのようなことから、一つ一つミクロに見ていかないと、全部一律にやっても、現場に下りてくるとなかなか機能しないという現象が起きる。

 地震について話を戻すと、私どもは阪神大震災以後、地震に強い建物を造ろうということで、免震または制震ビルを採用し、その分賃料等少し高くなってしまうわけであるが、これがなかなかテナントに評価されない。コンセンサスづくりは、そのように地震が起きることなど考えていない人たちを相手にするわけであるから非常に難しいと考えている。

 最後に、業界・不動産協会等からお願いしている件であるが、都市再開発法における地区外転出の問題である。第一種市街地再開発事業における地区外転出で、そこに残れないやむを得ない事情があるときに特別控除制度の適用を受けるという規定についてはおかしいと考えている。これは、全員同意を前提に再開発を考えており、地区内に残りたくなくて転出していく者も再開発賛成者であるということを考えていない。地区外に転出した人の代わりに新たに転入者が入ってくるので、転出する者全員に「やむを得ない事情」は関係なく、支援するという方向に踏み切っていただきたいと希望している。

 かなり細かい内容で、本日の趣旨とは少しずれているかもしれないが、現場としてはこのような状況であるということで申し上げた。

【早稲田大学佐藤教授】今の松井常務の話は大変興味深く、いきなり議論に入りたいが、役割分担であるので、まず与えられたテーマについて説明する。住民とともに街づくりに取り組んできた経験から少し説明をすることとしたい。冒頭に西村委員がプレゼンテーションした中にもあったが、魅力的な都市づくりにどのように住民地権者が参加するかということである。

 第一に都市計画は複雑なプロセスであるから、その複雑なプロセスをどう説いていくかということを考えなければならない。規制改革は、パイを大きくするだけでなく、複雑なプロセスで障害になっているものをどう取り除くかということである。この点が解決されないとこの話はうまく進まないのではないかと思う。

 もう一つは、先程から空間の話や具体的な像の話が出ているが、高容積で複合的かつ大規模な都市再開発については、現在の都市計画法上もある種対応できている。また、一方で、戸建住宅地とか歴史的市街地の中において修復保全を図るということもできている。しかし、その中間の話がない。住民地権者が都市づくりにスムーズに入っていくためには、中規模なものとして自分の生活を再建させて自分の力でやれる範囲の再開発が、今の二つのものを媒体するようなものとしてあればスムーズに住民が参画できると思う。(具体的な事例をいくつか挙げて説明があった。)

 上尾周辺中仙道沿道地区については、保全型・修復型ではなく、大規模な再開発でもない。その中間的なものであり、非常に複雑なプロセスがあり、そのコスト及び時間に対するコストも掛かる。このような事業を進める場合、仮に反対者がいた場合は手厚い経済措置等パイを大きくすることで対応していた。しかし、先程西村委員が述べられたダウンゾーニングをする、例えば、400%のものを200%しか使えないようにすることによって、おもちゃ箱をひっくり返した形でない美しい街並み・環境か進んでいくというプロセスが生まれると思う。良いものを造っていくためのダウンゾーニングをしたときに、一部に反対でもあれば、ダウンゾーニングも進まないわけである。一つの例であるが、このようなことが進むことによって、プロセスについても進んでいくと思うのだが、これがなかなか進まない状況である。

 この地区では、住民の方から主体的に自分たちで像を造ってゆき、それに行政が合意をし、模型を造り地区計画として担保するという方法提案した。行政が合意をしたものについては、一部の反対者がいる場合でも、ある程度の総意が整っている場合にはそれを実行していくということが必要なのではないかと考えている。この問題は非常に小さいプロジェクトではあるが、日本中で小さな都市の中でこのことを必要としている事業はものすごくたくさんある。30年、40年でこのようなことがうまく進むようになれば、先程の経済活性化の話は仕事がたくさん出てくるということで対処できると思う。このプロセスを作ることが重要である。

 もう一つ例を挙げると、これは六番町の話であるが、住民の方々が今のような形でいろいろなシミュレーションをやり、都市計画の原案を作って、千代田区の公社がそれを基にして話し合いを始めた。よいところまでいったが、一部の反対者が障害になって都市計画が作れなかった。都市計画が作れないと一部のものが出来てしまって他のものは出来ない。このような障害は、アップゾーニングをするにしろダウンゾーニングをするにしろ、プロセスの中にある障害を取り除いていくということがこれからの規制改革の一番の題目なのではないかと考えている。そのためには、目標空間イメージ(市街地像)をきちんと社会的に合意をしていくということをやっていかないとならないであろう。非常に複雑なプロセスであれば、それを財政的にも仕組み的にもそして合意を形成していくための都市計画の技術としても援助する必要がある。合意を形成するための技術のはお金がかかるが、その方法についても考えていくことが、規制改革ということで重要であると考える。

 このような問題が解けていけば、住民の人たちは安心して再開発や都市づくりに参画できる。一人二人の反対は、都市計画の問題ではなく、福祉や人間の心の問題等が掛かってくるので、別の対応をしていかなければならない問題であると考える。都市計画としては、そこに行くまでの複雑なプロセスをどう認識し、どう解いていくかという改革を進めていくことが重要なのではないかと思う。

【九州大学大橋教授】本日は、街づくりにおける住民合意手続がどうあるべきかということについて主に法制度の面から考えを述べたい。

 まず、行政手続は非常に多面性を持っている。行政手続法は1925年にオーストリーで制定されたが、その際には、オーストリー・ハンガリー帝国が小さくなり、その小さくなった国を何とか維持しなければならないという行政改革の目的から、経済能率性を上げるために作られたものであった。しかし、隣国ドイツに入ると、権利擁護を目的とした権利保障のための手続として発展し、アメリカではそれが市民参加の手続となった。日本では、権利擁護と市民参加の面が着目されてきたが、近年では経済のグローバル化に伴う考え方や市場経済を重視する考え方から、欧米でも手続の迅速化ということがルネッサンスを迎えてきている。このような中で、現在行われている様々な行政システムをめぐる改革の問題、手続の問題は、今申しあげた3つの問題をどう制度化していくかということである。

 制度設計の具体的試みとして、地区計画に代表される詳細計画について、市民の計画提案制度を構築した場合にどのような法律問題が出てくるのかということを考えてみたいと思う。一つのモデルとして、情報公開および市民参加を重視して様々なコンサルタント派遣を含む支援策を確立した下に、市民の協議会や住民が作った協定が出来た場合には、地区計画の策定権者である市町村に対して地区計画の策定を提案する。地区計画の内容は、規制的なもの、緩和的なもの、両者の混合型のものを含むこととする。その場合の一つの試みとして、協議会や協定における同意は全員同意ではなく、例えば3分の2や8割で足りる、とした場合にどのようなことが生ずるかということを考えてみたい。

 このモデルの新規性はどこにあるかというと、第一点は地区計画を一本化し簡素化するということである。第二点目は、従来の全員同意の仕組みを一度動かしてみることである。第三点目として、ボーナス型(緩和型)で動いてきた地区計画を、既成市街地における規制型の地区計画として活性化することを考えてみる。街づくりには誘導は非常に大事であるが、規制権限というものが根本にないと行政誘導はうまくいかない。また、従来余り活用されていなかった協定制度を組み込むとどうなるかという点についても考えてみたい。

 個別的な課題として一番大事なのは、市民が3分の2同意で提案をしてきたときに、その提案を法的にどう見るかということである。それは、市民の一つの共同体としての意思・要望にとどまるのか、自治体など計画策定権者を拘束することができると考えるのかということである。その場合には、自治体の判断過程が省略されるから、時間コストが削減されるかとみられる。しかし、私は、要望は自治体による計画策定の始動契機であって、判断権は自治体に留保されると考える。つまり、市民側の要望があっても自治体側の説明責任・応答責任が残されると考えたい。その理由としては、3分の2同意ということで、共同体意思の実態や真摯な説得を確認することや、反対者のエゴの排除が的確に行われたかということをチェックしなければならないからである。また、土地問題については収集がつかなくなる場合もあり、公益的判断権をもった者を存在させることが、結果的に時間的コストの削減になる場合もある。

 それから、若干技術的な点ではあるが、同意をカウントするときに面積要件か頭数かということであるが、居住空間ということを考えると借家人まで含めるという考え方もある。また、同意数が3分の2か8割かということについては、共同体としての市民の意思確認と考えれば、80%以上などとパーセンテージは高くなくてもよいのではないかと考えている。手続における時間管理ということを考えると、応答期間等を設定する考え方を取り入れたり、利害関係者の中にプロジェクト・マネージャーを入れるといった考え方も可能である。

 最後に、同意に伴う損失補償の問題が残る。地区計画を策定した場合に、ダウンゾーニングのケースのよって不利益を被った人たちをどう考えるのかという問題である。この場合は財産権の内在的制約や土地の特質をどう考えるのかということがポイントになる。土地はその置かれた環境の中で、初めて捉えられるものである。例えば、相隣関係に基づく規制を被っているのであれば、規制を被っているだけの土地でしかあり得ない。そして、規制が計画に反映されているのであると考えると、そのような人たちからの損失補償は不要であるという考えに傾く。また、そのような人たちが実際に投資をしている状況があるのであれば、補償は必要であるという考え方も出てくると考えられる。

(3)意見交換

【西村委員】残りの時間で、提起された問題についての公開討論を始めたい。議論に入る前に、規制改革委員会から他の規制改革の分野と今回の住宅土地の分野とはかなり性格が違うので、その点について委員会側から説明をする。

【鈴木委員長代理】都市計画、土地利用の難しさは、それが、生産、消費、労働、生活、教育、余暇、老後、といった社会のありとあらゆる、人生のありとあらゆる活動が複合的に全てそこで行われる点である。これが、単なる生活活動のみ、消費活動のみの問題であれば、当委員会が他の分野で論じているように、規制緩和と自己責任、競争原理と市場原理という方向で論ずればよいと思うが、土地利用規制の問題をそれだけで論じてよいかという懸念がある。この問題が、日本においても、なかなか国民の賛同を得られない点ではないか考えている。

 都市問題というのは、ほとんどが東京の問題といってもよいであろう。それを前提とすると、今の東京の現状、我が国の経済状況、住民の意識、事業者の能力等を考えたとき、どのような開発、どのような保全のルールが適当かという議論であると考えている。

 そうした観点から、ご専門の皆様方のご議論を期待している。

【西村委員】次に、小林副主査より、現在議論になっていることについて、若干の補足的な説明をしていただく。

【小林参与】先程からの説明の中で、いくつかかなり重要な視点が出ているように思う。

 西村主査から、これからの大都市リノベーションについて魅力ある都市を創っていくことの必要性について話があった。魅力ある都市作りには、佐藤教授からも説明いただいたように、様々な利害関係者がそこにいる中で、かなり詳細な計画を作っていくプロセスが必要である。様々な利害関係者がいるということは、計画を作るにあたって、行政を含めて、どういう計画でどういうものを作るかできるだけ公開していくこと、情報公開、透明性が極めて重要であると考えている。

 佐藤教授から、住民の中に入るケースの話があったが、やはり専門家が住民に対して一定の契約的な支援を行うべきである。詳細な計画を住民をベースに考えるといっても、実際にはそれは不可能である。住民が提案するという話が都市計画制度の中でも議論されているが、提案するに当たって、詳細な計画を魅力ある都市づくりをするための支援制度が必要なのではないか。逆に言うと、時間コストを削減するために、そのような専門家を育成しなければならない。そのような専門家が日本にどれだけいるかというと、なかなかいない。今まで我が国では、このようなことにお金を使ってこなかった。お金を使わないことには、人材は育たない。したがって、このようなことにお金を使うことが、リノベーションについても重要であるし、時間コストの削減にもなり、魅力ある街づくりが可能になる。是非、そのような方向で考える必要があるのではないか。

【西村委員】大橋教授から具体的な提案が出ている。それは、松井専務、佐藤教授の議論と深くかかわっている。これらの点について、建設省、東京都からそれぞれお答えいただきたい。

【建設省】実務に携わっておられる方々の意見を伺って、我々と同じ悩みをもっているという印象を受けた。また、冒頭西村委員からこの公開討論の趣旨を説明していただき、なるほどと思う反面と違うと感じる点があるので申し上げたい。3点コメントしたい。

 本日の議論は、都市計画制度が運用まで含めてどうあるべきか、そしてどう改善するべきかというためにあると思うが、基本的な考え方の中で、制度を評価する基準、制度を改革内容を評価する基準として、都市の景観あるいは建築物の連なりを考えていこうとするイリュージョンの部分があり、都市の魅力とも関連している。日本の都市像が、これからどうあるべきかという考え方は我々も持っているが、そのことと制度がどうあるべきか、制度の改革がどうあるべきかということとは違うと考えている。制度を運用し、プロセスをたどって出来上がった結果が像であり、制度を評価することは少し違うのではないかという認識をもっている。

 具体的に申し上げると、近代の都市計画制度は20世紀の始めに導入され、戦前においてもいろいろな都市計画の努力が行われていた。現実に、おっしゃるようなすばらしい景観をもった街がたくさん存在している。また、戦後の都市の再生の中できちんとした街になっていないところがあることも事実であるが、そのことをもって、制度がどうこうという議論はおかしいのではないかと考えている。的確に運用されれば、すばらしい街がたくさんできている事実はあることは忘れてはいけないと思う。

 余談であるが、外国人が日本の都市を見て感動を覚えるのは、戦災で焼け残ったところであり、焼けた後、都市計画制度を駆使して区画整理をやったところについては、必ずしも感激しないという話がある。これについても、少し考える必要があるのではないか。

 二番目は、都市計画を評価するのに何を基準にしているのかということである。我々としては、都市計画制度の原点は何かということに帰る必要があると考えている。帝国憲法でもそうであるが、日本国憲法の第3条の国民の権利及び義務、また第29条で「財産権はこれを侵してはならない」と私有財産の保証を謳い、2項3項で、「財産の内容は公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と謳っている。実は、都市計画法の手続で決めるどのような建築物を建ててよいかということは、憲法29条2項で規定されていることになる。

 このような枠組みの中で我々は仕事をしているが、問題は、公共の福祉とは何かということである。公共の福祉とは、我々の共通する利益である。みんなの共通する利益のために土地所有要件の中身を定めるということである。これは都市計画制度の出発点である。

 一般論としては、あまりにも無秩序でどうにかしたいと誰もが思っているということであるが、自分のプライベートな部分を侵されるのはいやなわけである。それは、一人一人のエゴであるという人はいるが、それは普通の感情であって、それを持ってはいけないとは言えない。それらを踏まえた上で、全体の利益をどのように確認していくかということが、例えば、地区計画レベルの共通のコンセンサスである。そのような全体の利益を確保できるものが、優れた制度であると考えている。

 もう一つ、社会全体の利益と言った場合に、それぞれに広がりが違う。その社会の広がりに応じて、共通の利益同士が対立をする。そのときに、都市計画の制度でどのように調整するのか、うまく調整できる制度が良い制度であると考えている。今後の制度改革においても、そのことを中心に制度改革をしていきたいと考えている。計画がなければ、土地を建物の敷地としてはいけないという制度をもっている西ヨーロッパの国もある。しかし、制度を導入するには行政の力がいる。力がないのにそれを望むことはなかなか厳しいと感じているのが実感である。

 最後に第3点目は、西村委員のおっしゃった地価の問題である。ちょっと認識が違うと感じた点は、今は地価が下落しているが、地価が高騰していたときに地価をどう評価していたかということについての違和感である。なぜバブル時期に土地が高騰したかというと、都市計画の立場から見れば、健全な土地取引は、土地の上にきちんとした建物を建築してその建物と併せて収益を上げるということであろうが、必ずしもそのような目的で土地の取引は行われなかった。そして、バブルが崩壊をして地価が下がり続けているわけであるが、その一番の理由は、土地本位制ということで経済が成り立っているときに、世界で金が下落したと同じような状況が起きて金融の収縮が起こった。これが今の地価の状況に影響を及ぼしており、この地価下落があたかも都市計画制度の有り様とダイレクトに結びついているようなお話があったことについて異論があると最後に指摘させていただく。

【西村委員】地価を使う際のこの問題点は、私のプレゼンテーションシートの真ん中にきちんと書いてあるのでそれを参照していただきたい。

 それでは、東京都からもお願いする。

【東京都】私からは運用の立場で申し上げたい。私どもで扱っているゾーニングの手法は、ニューヨーク型とパリ型の中間的なものであり、緩やかな制限を伴う用途容積制度とスポット的な都市開発制度と地区計画とを組み合わせて出来ており、制度としては一定の水準に達していると考えている。東京を例にとっても、骨格的なものについては、相当整備されている。しかし、災害後の復興において、経済的な要件もあり、若干道路が未整備な地区があり、防災上危険な地域があることも事実である。

 そして、制度上の問題として、運用の仕方等が問題で現場がなかなか動かないということもあると思っている。理由としては、地域ごとの将来像が明らかになっていない、共通の認識に立っていないという点が一つあると思う。都市計画諸制度を使う場合にも、開発事業者と地域住民とは利害が相反する立場に立つことが多く、制度の中身についても詳細を極めているということである。例えば、東京都においても、運用面でなるべく公平性を保とうとするあまり、(空地の種類によって係数掛けをする等)あまりに複雑になって、さらに深みにはまっていくというケースがあるのではないか。

 荒川区・国立市で高層マンションの計画が発生しており、この地域にないような突出した建物が計画されている。そして、地域住民から反対運動が起こっている。それに伴い、高度制限の条例を制定しようという動きがあった。国立市では、景観条例に基づいて高さ制限を制定しようという動きがあった。これは一例であるが、街づくりにおける利害の対立があり、間に立つのは行政である。したがって、第三者として専門的な立場でジャッジをする人が必要ではないかと考えている。

 都市計画制度そのものは、市民レベルで分かりやすいものであるべきであり、それは都市計画制度全体、また運用にもかかわるものであると考えている。

【西村委員】他の方々からも意見を頂戴したい。

【住友不動産松井常務】先程は、規制緩和のメニューをいろいろ提示していただいたが、結構私どもも活用はしている。

 しかし、東京都の場合は日影条例がある。日照権をどのように考えるか、それによっていろいろな規制があり開発の難しさになっている。あるエリアにおいては、それはあきらめるということまで踏み込んでいくと、いろいろな制度が生きてくると考えている。

 もう一つ容積の問題であるが、現在の規制緩和のやり方は、制度上何かとのバーターで容積率を上げるということになっている。例えば、道路を上地するとか、歴史的建造物を造るとかいうことと取引関係になっている。本来の規制緩和というものは、それでよいのかということを疑問に思っている。

【佐藤教授】松井氏の指摘されていることはよく分かる。また、西村委員の御意見とも今までは隔たりを感じていたが、本日はほとんど合意できると感じた。

 しかし一つだけ違う点は、厳しすぎる規制ではなく、不合理な規制ではないか。例えば、一人二人の反対をパイを大きくすることで問題が解決できるかというと、そうではないのではないか。法に書かれている制度でなくて、社会的な制度である。いろいろな問題を解決するには、専門家が必要になるが、そのためにはお金が掛かる。専門家はボランティアではやらない。我々が使っているお金より安いお金でしかコンサルタントは入れない。事業費の何十分の1だけでも、きちんと専門家に対してペイをするということをやっていけば、合意形成はできると考えている。しかし、ごく少数の一人二人が反対するという問題は、別の形で対処しなければならないだろう。都市計画、福祉、心理学、精神学等いろいろな分野の専門家が入っていって解決しなければならないことを残してしまって、最後に不幸なことが起こってしまう。

 したがって、私は総合的な制度を構築することが必要であると考えている。

【大橋教授】私が興味を持った点について申し上げる。東京都勝田部長のおっしゃった専門的第三者の必要性という点は、私が申し上げたプロジェクト・マネジャーの一種である。それには、行政がやるか、民間がやるか、第三者機関がやるかという点については、国によってバラエティがあるが、制度自体は必要であると考える。

 それから、利害関係の対立の中で、その調整役として行政が介在することの必要性という点である。これは、規制改革委員会に対しても申し上げたいが、普通の規制改革であれば、単に行政が退けば良いということで単純であるが、土地問題の場合は有限の土地という空間に対してパイをどう切るかということが問題であり、それぞれの土地が外部に影響を出し合っているため、どうしてもその調整役が必要になる。仮に行政が退いた場合はどうなるかというと、結局民事の権利紛争として表面化し裁判所は一杯になる。司法制度を改革し、裁判所を増やせばよいという話では済まなくなり、もっと混沌とした社会になる。本来、行政制度の重要な機能は予防司法であって、紛争を予防するということにある。そこで私は、根本を押さえてしまったほうが、社会的コストは遙かに安くすむと考えている。

 それから、建設省山本審議官からあった財産規制の点であるが、その主体は国であると同時に自治体である。自治体の取組は今まで不十分ではあったが、地方分権を迎えて道筋が出来上がりつつある。さらに、今の行政制度を見て思うことは、解決策が見えないようなものが非常に多い。一つの考え方として、法律は動かないものではなくて、実験的に動かしてやってみるという実験法律の考え方はどうか。国レベルで実験をすると影響が大きいので、自治体である程度パイオニア的にやってみて、やる気のある自治体同志で競争が起きるように法律の中で支援していくことも必要ではないかと本日議論をしていて感じた。

【西村委員】時間が迫ってきたが、基本的に公開討論は議論を戦わせる場ということで、こういう形で納めさせていただきたい。

 最後に一言申し上げたい。表面上はそれぞれ対立しているように見えるが、実は皆さん同じ思いである。なぜうまくいかないのか、うまくいっているところがなぜ広がっていかないのか、広げることができないのか、それに対する障害は何か、単に都市計画が悪いとか事業者が悪いとかいう問題ではなくて、もっと深い問題が都市計画の規制改革にはある。その問題に対して直視をし、それぞれがその違いを分かり、議論していくことが結果的に合意を得ることになる。

(4)閉会

【鈴木委員長代理】今回の公開討論は結論を出す場ではなく、本日の意見交換を十分に参考にしつつ、ワーキング・グループの場を中心に12月の見解に向けて更に検討を進めていきたいと考えている。

(文責:規制改革委員会事務室)