規制改革委員会

ミレニアム規制改革シンポジウム〜豊かな21世紀を目指して〜

議事概要

平成12年3月13日(月)13:15〜17:30 於:経団連ホール

規制改革委員会 宮内委員長あいさつ要旨

● 過去数年間の委員会の活動成果については、これは国民の判断に仰ぐところだと思うが、規制というものが変わっていかなければならない、不必要なものは外していかなければならないということについての国民の理解は少しづつ得られてきたという感がある。

● 規制改革の経済効果については、様々な数字が出ており、徐々に経済的なインパクトを生み出している。

● こういう動きをさらにスピードをあげ、取り上げる範囲をできるだけ広くするという事を続けていくならば、失われた90年代と言われる日本の経済活動、あるいは構造改革の遅れを取り戻す大きな力になろうかとは思う。しかし一方で、制度的な枠組みにぶつかって、動かない、止まってしまうというような部分がたくさんある。

● 今後、経済構造、制度自身を改廃していくことまで視野に入れることができれば、この規制改革の動きがさらに大きな広がりを見せ、実質的な構造改革に資するものになるのではないかと、そんな思いもする。

● そういう規制改革の全体像について、皆様により一層の理解、認識を深めて頂くと同時に、現在、規制改革委員会が行っている作業の内容についても理解を頂き、色々なご意見を頂戴しながら、それを生かして、この重要な仕事を進めてまいりたいと思う次第である。

<第1部>

基調講演(規制改革をめぐるエピソード)

「タクシー事業における規制改革の状況」要旨

<旭リサーチセンター社長 鈴木良男氏>

● 運輸分野の規制緩和について、最初に取りかかったのは空港の問題であった。

● 規制緩和にとって、一番大事なものは参入の自由を与えるということと、価格決定の自由を与えるということである。

● 免許制という規制の中でも最も厳しいものを敷いているのが運輸分野のほとんどであった。

● 免許制については、形式基準、例えば安全条件や経営状態に関して、外形で判断して基準に合致さえすれば、その申請は必ず受け取るようにしなければならない。

● 規制緩和というものは、免許をやめて需給調整規制を外し、許可制にする、許可制になったものはその次にもっと緩やかな規制、例えば届出制にしていく、そして最終的には届出もいらないものにしていくと、こういう流れをとっていくべきものである。

● タクシーの規制緩和については、予定通り需給調整規制を廃止して、免許制を止めるという方向であり、価格については、上限価格制に移行する方向である。

● しかし、緊急調整措置を行う条項が残り、引き続き監視する必要がある。

● 運賃については、認可制とする理由は、追い越し禁止だけは避けたいということで、例えば初乗り300円でスタートしたものが、ある乗車距離になると、500円でスタートした人よりも高くなってしまうのでは、いかにも消費者が不便だという理由で運輸省がチェックするということである。運賃の規制については、厳重にその範囲内に限るべきである。

「司法制度改革の行方」要旨

<法政大学社会学部教授 福井秀夫氏>

● 最近、司法改革がブームになっているが、基本的な認識として、少し逆説的な言い方だが、司法改革は本質的なことではないが故に重要であると考える。なぜ本質的ではないかというと、やはり基本は立法改革ではないかと考えるからである。

● すなわち、法が明確で、法に基づいて判決がなされて、その判決どおり完全に執行がなされるのであれば、紛争が生じることが少なくなるであろうし、仮に生じたとしても、執行が粛々となされる。こういう世の中では、司法の役割は相対的に小さくなる。

● そういう意味では立法改革で、できるだけ紛争が発生しにくいように立法を作っていく。こちらがまず第一義的に重要であり、それでもなお発生する紛争に対しては、迅速に正義が正義として全うできるように司法が従前の役割を果たしていく。こういう分業が必要。そういう意味では、司法権の充実、あるいは司法改革、こういうものは必要悪だと考えるべき。

● 司法試験については、需給調整にも等しいような難関な司法試験が必要かどうかは疑問がある。そもそも質のコントロールを試験で行うという発想に問題がある。

● 様々な資格があるが、ほとんどの職業は、音楽家にせよ、様々なインストラクターにせよ、あるいは大学教授にしても一切資格要件がない。これらは基本的に市場の中で消費者に適正な質のサービスを適正な価格で提供していると判断されなければ淘汰されるだけのこと。なぜ、それが法曹分野、特に弁護士の分野に当てはまらないのか、市場での淘汰に委ねるということでなぜまずいのか、根拠が明らかでないと言わざるを得ない。また、最初に難関な試験を通ったということが、生涯にわたって弁護士の優秀さを証明するという想定は成り立ちにくい。

● 法曹人口の拡大については、毎年3,000人とか5,000人という数を示す議論があるが、これは10万人でも、5万人でも全く構わないと思う。要するに一定程度の質の試験を通った、しかも最初の1回きり通ったということだけの印だということさえ分かっていれば、後は自ずと市場の評価で定めていく方が、むしろ優秀な法曹が世の中でたくさん活躍して頂けるのではないかと考えている。

● 兼業規制や法人化規制もあまり合理性がないと思う。アメリカではフランチャイズのシステムが一般的に行われていて、利用者が簡単に法曹サービスにアクセスできるようになったということが報告されている。日本もそのような方向を目指すべきではないかと考える。

● 弁護士の問題の中で、最大のあい路は業務独占。弁護士法第72条で、弁護士はあらゆる法律業務、法律相談を含めて、すべて業務を独占しているという建て前が貫かれている。イギリスなどでは、法律相談などは元々、法曹資格者以外の誰が有料でやっても構わない業務であった。フランスでも法律相談は基本的に自由。日本の弁護士は非常に特異。業務独占についてはもっと緩和する、ないしは、法廷代理権以外は全部、名称独占にとどめて、業務独占を撤廃しても何の支障もないと考えている。

● 裁判所の問題については、裁判官について、現在の日本国憲法では、内閣が任命して、10年の任期制だと明確に書いてある。今の憲法を遵守するという立場に立つ以上、なぜ永久に身分が保証されるような実態になっているのか、極めて奇怪である。

● 弁護士との交流や、民間企業の法務担当者が裁判官になるとか、大学の先生、ジャーナリストが裁判官になるとか、法曹一元での対応を行うことが裁判所改革の上で重要ではないかと思う。裁判所の制度インフラとしての裁判官を大幅増員するために民間から登用して、その代わり10年できちんと民間に帰って頂く。生涯裁判官で過ごすというのをむしろ例外にする。そういう必要がある。

● 民事執行については、執行現場が大変、混乱している。不動産執行などでも短期賃貸借保護や民事執行法の不備に伴うところが多くある。これも司法改革の重要な要素だと思う。

● ロースクールの問題については、最近ロースクールという形で、2、3年の大学院コースで、司法試験の優先受験枠を設けようという構想が各法学部で出されているが、これは問題のある構想だと思っている。本当に消費者のためになる法曹養成とは、あまり関係がない制度だと思う。需給調整付きでロースクールを設置したら、必ず品質の低下が起こる。目指すのであればアメリカ型のロースクール。設置は自由にして、ロースクール間で自由に競争させる。こういうのが望ましい方向ではないかと考えている。

「医療分野の規制改革の現状と課題」要旨

<河北総合病院理事長 河北博文氏>

● 医療の評価を行っていく、良いものを良いとし、悪いものを悪いとするということが日本では極めて遅れている。日本医療機能評価機構は95年に設立されて、日本には9,400程の病院があるが、5年間経って未だに310の病院しか認定を受けていないというのが現状である。

● 昨年の12月に出した規制改革委員会の見解では、最初に医療分野における法人形態の在り方ということを掲げた。病院あるいは医療を担う法人というのはどういう形態が望ましいのかということから初めた。

● それから病床規制の見直し、レセプトの電算化、保険者機能の在り方をテーマとした。

● たとえ社会保険であっても保険者というのはリスクマネージメントをしなければいけない。リスクに対する統計確率論によって、あるリスクに対して価格を設定して、自分の意思で参加する人達に対してどういう給付を行うのか、かつ、いかにリスクを低減させるか、リスクが起きた時の対応の向上というような努力がなされなければならない。

● 医療費体系の在り方については、現在の診療報酬体系というのは、医師が行う医療行為に対する費用弁済である。例えば病院の減価償却費、金利負担は一体どうするのかという議論が、この数十年間遅れてきてしまったというのが、日本の診療報酬体系であって、それを医療費体系に組み直すということである。

● 広告と広報については、医療法によって、日本の医療に関する情報というのが広告のしばりで規制されているが、広告と広報は分けた概念でなければいけないということである。

● 福祉分野においては、介護保険や保育サービスについて、規制改革によりどのように分かり易く、利用し易くするかという議論が12月まで行われた。

● 規制改革委員会が目指すのは、公正な競争、あるいは自己責任、情報の開示を通じて、国民が納得できる良質かつ安全な医療であり、分かり易いというのが極めて大切である。また、効率的で合理的な運営が必要であり、それを行うのに大事なのは、プロフェッショナルコミットメントとフェアコンペティション。

● 医療を変えていくキーワードとして、公正と選択肢と標準化というのが必要なのではないかと思う。

● 今までは質を向上させるということが、法の規制によるものだったが、今後はこれを規制緩和と情報の開示といったものに委ねないといけないだろうと思う。その時に医療の中での競争の在り方は、秩序ある合理性というのが良いのではないかと思う。

● 提供者だけの競争ではなくて、保険者の間に競争を生まなければ、良い保険者は育たない。

● 賢い利用者を育てるということも重要。国民が自己責任を持って、一人一人がもっと医療に関心を持つ。自分の健康に関心を持つことが大切である。

「情報通信分野の規制改革」要旨

<東京大学大学院工学系研究科教授 斉藤忠夫氏>

● 情報通信分野の規制改革を考える場合には、通信の形態が大きく変わる、変わりつつあるということを考えなければいけない。アメリカでは既に、日本ではあと数年を経ずして、通信の大部分の利用は電話ではなくて、インターネットになっていくと思われる。

● 通信容量の巨大化については、これは去年の中頃に郵政省の研究会が出したデータだが、ここ10年の間で、普通の人が使う通信の量が、今の量の1000倍ぐらいになるであろうと言われている。

● 規制は技術中立的なものであるべきだが、技術中立的な規制というのは、よく考えないと昔の通信形態をそのまま保つということにも繋がり兼ねないということがあり、それが通信分野における現在の状況ではないかと思う。

● 情報社会に向けて、社会が変革している背景には、エレクトロニクスの基盤が急速に進歩しているということがある。コストパフォーマンスの点で改善している、あるいは信頼性、安全性の点でも改善しているということによるのではないかと思う。1960年代の中頃に、大きな変革が始まったわけだが、これは技術の発展と需要の拡大が車の両輪となって進んできた結果としてできたのではないかと思う。

● 残念ながら、通信の分野、特に電話は30年前、3分7円であったのが、今は3分10円になっている。通信の性能は、信頼性その他良くなっているにせよ、決して安くなっていない。しかし、インターネットと当時のデータ通信ということで考えれば、値段は1000分の1くらいになっている。携帯電話においても同様のことが言える。

● 伝統的な通信の考え方というのは、世界的に安定した通信を作って、そして、相互運用性を確保していく。国ごとにサービスを実現していく。決まった通信のやり方があって、それで皆やって下さいということであったのではないかと思う。すなわち、安定した電話網の形成が重要であったかと思う。

● それに対して、今後は積極的に大量供給していくことが必要ということで、基本的な考え方の違いが出てきているのではないかと思う。多様なサービスが存在し、同時にポータビリティが要求されるということかと思う。電話機を買ってくれば、世界中どこでも通信出来るということよりは、通信をやろうとしてパソコンを買ってきた時に、それがうまく使えるかどうかというのは、パソコンを買ってきた人の責任ですと、不具合を負ったらそれぞれに解決していく必要があると、そういうようなことも新しい通信の考え方なのではないかと思う。こういうことも含めて、通信を提供する方も使う方も変わっていくということではないかと思う。

● 通信の競争の円滑化と活性化と新しい考え方の定着のためには、施設設置負担金や通話料による固定費回収などについての考え方の整理も必要になる。

● ここ2、3年の間で大きな改革が行われてきている。来年の3月には、番号ポータビリティ、すなわちNTTから他の会社に移った場合でもNTTの番号をそのまま使えるというようなことだが、これが多分実現されると思う。

● 市内サービスの低コスト化のためには、色々な代替手段を考えていく必要がある。それを活用し易くしていくための条件として、長期増分費用ということが議論されていることもご承知のとおりかと思う。

● 規制緩和、規制改革、あるいは競争の活性化に関して考えなければいけないのは、従来のインフラをあてにした規制改革のみならず、新しく競争的にインフラ整備ができるような競争条件を整備していかなければいけないということ。それについてのボトルネックとして線路敷設権があるということである。

● さらに、新しいネットワークに向けての推進体制が必要である。これと規制改革が結びつかなければいけないと思う。規制改革と技術の進歩について、正しいコンセプトの広がりというものがどうしても必要である。現在の議論はどちらかというと電話に集中している。電話がいつまでも主たる通信であるような議論になりがちである。新しい技術をどのように広め、そして新しいネットワークがどのように国民のものとなっていくか、技術を十分こなすような仕組みが必要と考える。

● 新しい技術によって通信網ができる時には、通信サービスもしくは通信ビジネスというものが大きな転換期にあるわけである。通信事業者がどのようにサービスをし、どのような収益を得ているのかということについて、事業者が工夫をしていけるような規制であるべきと思う。

● 当面の問題としては、100倍から1000倍へのテクノロジーの条件を整備するということが非常に重要であり、具体的に言えば、インターネットが中心的な通信サービスになるという前提に立って、今の電話網にとらわれない通信網を創っていくということである。

● 今、非常に重要だと思うのは、加入者回線を使って、今の10倍から100倍の通信容量を実現できるADSLという技術があるが、これについての条件を整備するということが規制改革として重要なことではないかと思う。もちろんその次の時代としては、光ファイバーを使ったより高速の消費者向けの商品が必要である。


<第2部>

パネルディスカッション

テーマ:「これまでの規制改革の評価と今後の課題」
議事概要

パネリスト:ウシオ電機株式会社 会長牛尾治朗氏
多摩大学 教授中谷巌氏
政策研究大学院大学 助教授大田弘子氏
規制改革委員会 委員長宮内義彦氏
規制改革委員会 委員長代理鈴木良男氏
コーディネーター:規制改革委員会 委員八代尚宏氏

(八代氏)第2部は今後の規制改革の在り方について、パネルディスカッションを行いたいと思います。
 まずパネリストの皆様にお1人ずつ、これまでの規制改革の成果で評価している部分は何か、反対に遅れていると思われる部分はどこにあるのか。それから、今後何を優先的に変えていくべきかというような点についてお話しいただきたいと思います。

(牛尾氏)過去に比べますと進んだものはたくさんあります。金融、特に銀行、証券、損保に関しては大変大きな流れが出始めている。もちろんテレコミュニケーションについても大変な進歩です。
 しかし、今やグローバリゼーション、インターネットの時代になりますと過去対比よりも、大事なのは国際対比です。規制撤廃や構造改革、競争力の導入等についての国際対比になりますと、残念ながらアメリカや英国などの変化のスピードは早く、依然として差は開いているという事実があります。
 宮内さんほか皆さんの大変な御協力で進んでおりますけれども、そのスピードはスローだということを言わざるを得ない。

(中谷氏)昨年は私自身のことでこの規制撤廃、規制緩和のことと関連しまして、いろいろ世の中をお騒がせしてしまったわけですが、あの程度のことでもいかにゆっくりしか世の中が進まないかということを実感いたしました。
 失われた10年という言葉がよく言われておりますけれども、本気になって日本人全体が覚醒しないと、この21世紀、せっかくIT革命でいろいろなチャンスがある時期ですから、そのチャンスをうまく利用し損なってしまう。
 そうなると、少子高齢化とか巨大な財政赤字とか、いろいろな重石がいっぱい頭の上に乗っていますから、それを払いのける力が出てこない。この1、2年が本当に正念場だと思います。そういう意味で一番大事なのは、規制撤廃、制度改革の火を消さないように、我々自身が意識を常に高く持ってたたかう姿勢を見せるということなのではないかと思います。
 もちろん、規制撤廃で多少良くなった点というのはいろいろあります。全く違う分野から銀行業、金融業に参加するということも最近は許可されるようになってきたということは、まさにこの4、5年の間に起こったことでありまして、こういうことはポジティブに考えなければいけません。
 それから、ガソリンの輸入自由化後、例えばレギュラーガソリンの全国平均値というのは20円ぐらい下がりました。それによって淘汰されたガソリンスタンドはありますけれども、まさにそういう非効率な資本効率の低いところが淘汰されて、そのお金が効率の高い新しい分野に再配分されていくということが実は経済を飛躍させる元手になるわけですから、それを恐れていたらいつまでも構造改革というのはできないということでありまして、やってみれば携帯電話の普及等々でもわかりますように必ず大きな成果がある。
 日本人は制度がこう変わったんだよと納得したら猛烈にエネルギーが出て、そこから新しいものを創り出す。そういう意味では本当に天才的なところがあると思いますので、怖がらないでこの規制撤廃の流れというものを持続させる努力が極めて重要な段階に差し掛かっていると思います。

(宮内氏)ほとんどの経済的規制というようなものはクリアできる目途がついてきた感じがいたしますけれども、今、問題になっているのはいわゆる社会的規制です。これは国民の安全に関するとか、健康に関する、というようないろいろな理由でしかるべき規制があるわけですけれども、衣を脱いでみるとそれがある業界、ある団体の既得権益をつくり上げて、高コスト構造をつくり、国民に不便をもたらしている規制になっています。
 牛尾さんのおっしゃいましたとおり、過去に比べれば少しは進んだ。しかし、国際的に比べれば私どもがこの作業に入った後もやはり引き離されていったのだろうなと思います。したがいまして、我々委員を始め、この作業をやっている人間はこのままでいいのだろうかという焦燥感を持ちながら、それでもやれることだけはやらなければならないということでやらせていただいています。

(大田氏)規制改革のこれまでの評価は牛尾さんと中谷さんがおっしゃったとおりで大賛成です。それなりに進んだけれども、まだこれからだということだと思います。その上で今感じております問題点を3つ申し上げたいと思います。
 まず1点は、ここへきて大変な逆風が吹いているということです。これは政治家という逆風だけではなくて、国民の間でも少し熱が薄れてきているのではということを感じます。規制改革というのはなぜ要るんだということをもう一度国民に問いかける努力が改めて必要に思います。
 2点目ですが、規制改革を進める組織です。来年の省庁再編がチャンスで、このときに合わせて強い権限を持って、たくさんの人材を抱えて、内部のスタッフで規制の費用対効果まで、具体的なシミュレーションまでできるような組織をつくる。法案の骨子までつくってしまうような強い組織をつくるということが大変重要だと思います。
 3番目の問題として今の規制改革委員会の存在がアピールしなくなってきていると思います。この1年間思い切ってやり方を変えたらどうかなと考えます。影響の大きい規制をもう一度最後の詰めまでやったらどうでしょうか。つまり、フォローアップに徹してもいいと思います。もう一度世論を起こすことで、今の規制の議論というのは誰を守るために起こっているのか。弱者保護的に出てくるいろいろな議論というのは一体何なのか。後ろ向きの議論が結構あるのだというようなことをもう一度わかってもらうことが必要なように思います。

(鈴木氏)95年行政改革委員会がスタートしました。ここはやはりはっきりしたターニングポイントだったと思います。例えば電力について考えてみますと、9電力の地域独占を破って小売の自由化、発電する人は誰に売っても良いという世の中をつくろうとしているわけです。雇用の問題も今や有料職業紹介や労働者派遣はほぼ完全に自由化されるというようになってきたわけですね。
 そういう形で、私は規制の大骨は95年以降、着々と取っていったと実感を持っているわけでございます。最近いろいろな逆風が吹いているというけれども、これは、規制緩和が効果を出したことがわかってもらえたからと考えています。

(中谷氏)組織の改革についてですが、規制改革、規制緩和、規制撤廃をやろうとすると、一つの理念に基づいて、その理念を貫徹するプロセスですから、利害関係者が意志決定において発言力を持ちすぎるとなると、理念は貫徹できない。
 これは日本の社会の特徴かもしれませんけれども、戦略的な意志決定をするときに、利害関係者が意志決定の中にいる。そういうところに根本的な問題があるわけです。どうしてこれを払拭できないのか、というのが根本的な意識としてあります。

(牛尾氏)意志決定のプロセス全体を変えるような新たな組織というものをこの一年の間に世論を立ち上げて創っていけないかと思います。
 抜本的に強化して、内閣の中にかなりの力を持った形で存続させるという、そういう運動というのでしょうか。ここにいるみなさん方で是非、制度改革が推進できる形を創れるようにできないでしょうか。

(大田氏)制度を改革するときの理念に関しては、行政改革委員会の中に官民の役割分担の研究会というものがありまして、官が何をやるのかという基準はもう作られているわけですね。
 3つありまして、1つは民がやれることは全部民がやる、2番目は、官がやるときは最小のコストでやる、3番目は、官がやるときは、官がやらなくてはいけないことの説明責任を果たすと書かれているわけです。この基準を適用すれば、郵貯なんてとっくになくなっているはずなのです。
制度改革委員会がこういう理念で制度を見直していくことが必要で、その中にもちろん規制も入るわけです。この議論はもう一度起こすべきではないでしょうか。

(牛尾氏)来年2月までに、規制撤廃、制度改革というものが、この日本の行き詰まった状況を変えるということをもっと訴える必要があります。
 経済戦略会議とか、21世紀日本の構想懇談会のようなものを土台にして、日本の将来は、21世紀は改革しかないんだと、市場にゆだねることが大事だということをもっと言わないといけない。
 この2つの懇談会が軸になって国民運動を展開するためには、世論が政策選択で第一に改革を求めるという社会にしなければ成功しない。土光臨調は周りが2年間ぐらい改革ムード一本になったから、国鉄の民営化に成功したのだと思います。

(宮内氏)確かに土光臨調というのは相当の迫力だったと思います。中曽根さんがついていたというのが大きいと思います。世の中を変えていくのは政治です。
 経済界については、今、規制に守られているところへ手を突っ込んでいるというのが現状ですから、経済界が一致して規制改革をサポートしてくれるというのは難しいですね。最後はやはり国民の良識というところにいってしまうと思います。その中でやっているということをご認識いただいて、応援団をどう作るのかということを是非、一緒にお考えいただきたいと思います。

(八代氏)マスコミの役割について、御発言いかがでしょうか。

(大田氏)論調の中で気になりますのは、論壇の中でもだんだん逆風が強くなっています。反市場とか、反規制緩和の論調がだんだん強くなってきています。
 市場メカニズム万能論はいかがなものかという議論があるのですが、私の周りで、市場メカニズムが万能と言った人は誰もいません。市場メカニズムに欠陥があるということは、何十年も前から経済学は扱ってきたわけで、人間に欠点があるのと同じぐらい当たり前のことなんです。
 その上で、あらゆる規制はできた時は根拠があるのだけれども、もう要らなくなったものもたくさんあって、要らないのに残っているものを廃止しましょうという議論なのです。ですから、個別の規制が要るか要らないのかという段階に入ってきているわけですけれども、個別規制は無視して、市場メカニズム万能論は良くないという議論が出てきています。新聞の中にはこれを前面に出すところもあるわけで、本当は、市場メカニズム万能論はいかがなものかという議論が出たら、もう一歩詰める必要があると思います。

(宮内氏)少し別の観点で言うと、反市場主義というのと同じ意味合いで、日本の社会というものをアメリカのような社会にしたいのかと、そんな論調があります。何も我々はそんなことを主張しているわけではないのだけれども、そういう論調に対しては、マスコミがそれに対応するような書き方をしてもらいたいと思います。
 最近の、酒の問題などは各論として難しいのかなと感じます。酒類販売の自由化について、これは社会的規制であって、酒のような非常に問題の多い飲み物を自由にしていいのですか、という議論と、そういうものを自由化すると、どんどん郊外のスーパーにとられてしまって、商店街が寂れてしまって町の賑わいがなくなりますよという、全く違う話があります。
 距離基準を自由化するということと青少年に対する酒販売の問題の相関関係はほとんどないわけです。それから、町の商店街の賑わいというもの、郊外のスーパーへ消費者がどんどん行くというものもまた、酒類販売の自由化とは別の問題です。 少しかみ砕いて解説していただくと、世間の人は、なるほどそういう問題かというのがわかると思います。それを一歩手前のところで、賛成・反対という議論にされますと、議論が上滑りになって、結局、賛否両論ありということになってしまいます。
 マスコミに是非、規制改革というものの持つ意味合いと、もう一つは、総合的に見て、日本の国の21世紀のあり方、統制経済あるいは社会主義的な形の非常にパフォーマンスの悪い経済で日本はもつのかという、今度は大きな意味での問題の捉え方、そのどちらでもいいですから、もう一歩突っ込んでもらえれば、国民にわかってもらえるのではないかと思っています。

(八代氏)最後に、一言ずつお願いしたいと思います。

(牛尾氏)2001年の参議院選挙が終わってから2年間ぐらいというのが、あるべき改革が実行しやすい政治的な状況であるという判断を持っています。この改革は、日本の向こう15年間ぐらいの運命を決める大事なことで、どうやって国民のムードを動かすかということを考えると、今から1年間ぐらいが最も大事な時期になります。日本の国が変化に即応し、効率を高めて、総合力を発揮できる国にしないといけない。これは民間が入らなければ改善できない発想です。そういう流れを国民に訴える時に来ているということを申し上げたい。

(中谷氏)おそらくこれから2、3年の間というのは、猛烈な勢いでインターネット等のIT革命が、日本の社会にも本格的に上陸して来る時期だと思います。若い人たちを始めとして、意識は確実に変わっております。変化の兆しは見えていると思います。
 ニューエコノミーとオールドエコノミーと分けるとすると、オールドエコノミーの方の部分、自己改革できないところ、あるいは規制撤廃できないところ、旧態然とした形て残るところというのは、自動的に時間が経つと世の中から置いていかれると思います。
 ただ、それには大きなコストがかかってしまう。経済資源がオールドエコノミーからニューエコノミーの方に移っていくことを促進する制度改革がいろんなところでできれば、もっとコストを少なくして、主役の交代が起こりうるわけです。コスト計算という観点から考えて、一刻も早くオールドエコノミーがニューエコノミーの方に移っていける仕組みを創るという気持ちにならないといけない。

(宮内氏)我々のミッションは、次の世代に、世界に誇れる経済システムを残していくということだと思います。今、この逆風に負けないということが当面の第一の課題。二つ目は規制緩和推進3か年計画の再改定作業です。また、来年の4月以降の動き方について、皆様方のご理解もいただいて、何とか、英知を傾けて、もっとスピードが上がり、もっと本格的な取り組みのできるようなものを作っていただきたいと、そのように思っております。

(大田氏)私は、業界の中の良識派に期待したいと思います。今残っている規制は、大抵は政治力が強い分野です。政治力を使うことで延命は図れるかもしれませんけれども、中長期的に考えるとプラスは何もない。
 激しい構造改革が起こっているときに、規制に守られていることのコストは計り知れないと思います。多分、業界の良識派の方々は、そういう危機感を持っておられると思います。さはさりながら、業界の中で、反対派を説得していくには、大変なパワーがいりますので、是非、外圧を創るという意味で、新しい、強い規制改革の組織ができることを応援していただきたいと思います。業界の中から改革が起こるように、働きかけていただきたいと思います。

(鈴木氏)まさに規制緩和というのは総論賛成各論反対なのです。要するに、どなたに聞いても、競争というもの、規制緩和に対してはみなさん賛成なのです。イクセプトミーなだけなのです。ほとんどの人たちは、激しい競争を日本中でやっているわけです。その競争も知らない連中が、競争が怖いって言っているのが、今の現象です。これを超えていかないとだめだと思います。今日の議論を参考にしていただいて、もし皆様方の中に イクセプトミーの方が、その産業の方がお見えになるのだったら少しこの際お考え直しをしていただきたいですね。

(八代氏)ありがとうございました。日本はかつて、最も成功した社会主義国家といわれていたのですが、今は失敗した社会主義国家になっている。是非世界に誇れるような成功した市場主義経済システムを復活させるということが大事だと思います。
 大田さんは業界の中の良識派に訴えるということですが、私はそれに加えて、官庁の中の良識派というものも存在しているわけで、規制の矛盾を最も感じておられるのは現場の官庁の方であるわけでして、そういう人たちと是非組んでいきたい。規制改革委員会を、最後の一年にせず、それがさらに大きな組織になって復活することを祈りまして、本日のシンポジウムを終わりたいと思います。

(以上)
(文責 規制改革委員会事務室)