別紙1
主要論点項目に関する意見

芦田甚之助

1. 行政改革の理念について

(1) 時代認識
日本の現状は少子・高齢化、経済のグローバル化、情報化、地球環境保全など大きな社会的、歴史的変化のなかにある。この大きな社会変化を乗り切るには、いまこそ生活と雇用の安定、格差の是正が確保され、勤労者・国民が生き生きと暮らせる生活重視の社会システムへの転換が急がれなければならない。
 しかし、この課題を担うべき行政は、従来型の産業優先と既得権益の擁護の政策をとり続け、膨大な財政赤字に落ち込み、勤労者・国民の期待に応えてはいない。

(2) 21世紀の日本社会の目指すべき姿
21世紀の日本社会については、勤労者・国民が「ゆとり、豊かさ、社会的公正」を実感でき、雇用の安定を確保し、安心、安全、環境を重視した持続可能な活力ある社会を実現することを目標にすえるべきである。そして政府、個人、民間組織(含むNPO)は、それぞれこれまでの既得権益の擁護の弊害を反省し、自己改革に取り組み、この新しい社会の実現に力を注がなければならない。

(3) 行政改革の理念
 この新しい社会の実現には、中央省庁への権限集中、官僚主導の政策決定、省庁縦割り行政など改革を妨げている問題を解決し、公正、透明、国民参加を基本として簡素・効率的な行政システムに改める必要がある。
 とりわけ、官僚主導型の現在の政府システムについては、立法、司法の機能を強化し、三権のバランスがとれた制度に転換する必要がある。そのため立法・政治における政策立案機能を強化し、行政への民主的コントロールを確保しなければならない。

(4) 6つの改革の関係
  同時に、生活と雇用の安定、質向上を実現するには行政組織の改革のみでは十分ではない。財政バランスを改善しつつ生活と雇用の安定など国民のニーズに的確に応えうる財政構造への改革、新産業や雇用の創出を促す経済構造改革や金融システム改革、さらに国民の安心を高める社会保障制度、個性と自主性を育てる教育改革などに取り組み、生活の総合的改善と社会の活力を強めなければならない。

(5) 行政改革の基本目標
これらの改革の推進にあたっては、その検討、立案、執行の各過程において勤労者・国民の声を十分に反映させ、わが国の民主主義を大きく前進させるものとしなければならない。

2. 国家(政府)機能の在り方について

(1) 民間と政府(立法、行政、司法)の役割分担
中央政府は、国民に対する責任を明示して、1)国の存立のために必要な事項(外交、防衛等)、2)人権、生存権、労働権などのナショナルミニマムの確保、3)全国的に統一して定めることが望ましい事項などを担い、個人や民間組織、地方公共団体では対応できない社会的、公的な諸課題に取り組み、市場機能の欠陥を補い、生活と雇用の安定・向上等を実現する公正で透明なシステムに変わらなければならない。

(2) 中央政府と地方政府の役割分担
 両者は対等な関係に立ち、中央政府は、個人や民間組織、地方公共団体が対処しがたい全国民的な諸課題についての公共サービスに責任を持つとともに、個人、民間組織、地方公共団体の活動が十分に発揮される条件整備を担う必要がある。
 地域の諸課題については、地方公共団体が主体的に公共活動を行えるよう、権限と財源を中央から地方に移転し、地域における個人、民間組織の努力が実る分権、分散型のシステムに変える必要がある。

(3) 公共サービスと民間サービスの補完関係
 国民への公共サービス水準を確保する観点から、行政、民間企業、非営利組織(NPO、NGO)の共存する最も効率的で確実なサービス供給の方法をさぐるべきである。個人の自助努力、社会連帯による相互扶助(共助)、公共サービスの三者が支え合うシステムを構築すべきである。

(4) 立法と行政の関係
 国会は、政策論議、立法、調査等の役割を強めると共に、行政に対する監視機能をたかめ、内閣の行政に対する政治責任を問い、国民の付託に応えなければならない。

(5) 司法の役割の強化
 規制緩和等のなかで、社会的法的ルールの確立とルール違反への的確な制裁が求められる。現状では裁判が長時間、高負担を要するとの弊害が大きく、法的ルールの明確化、訴訟指揮権の強化、行政裁量の最小限化などにより迅速、公正な司法制度に改める必要がある。

3. 組織改革のポイント

(1) 国の行政組織改革の基本視点
 生活の安定・向上の最適システムにむけ、公正、透明、国民参加を基本として簡素・効率の行政システムをめざすべきである。
 1)情報公開法の早期制定による行政情報の十分な公開
 2)国民の行政への民主的参加を担保する行政手続の整備・強化と行政監視制度の充実(政策・計画立案過程への国民参加の保障、審議会等の改革、オンブズマン制度の導入等)
 3)思い切った地方分権の推進による中央省庁の簡素化と地方自治体への関与の縮減・自主財源の強化
 4)行政指導による業界調整型行政からルール整備・監視強化型の行政への転換、および行政執行の計画、過程、結果についての評価制度の導入
 5)省庁間の縦割り行政や重複行政の排除、所期目標の達成度による評価や行政監査による業務の見直し等の効率的行政の実現

(2) 中央省庁の在り方について
 1)【分権化、民主化の推進】中央省庁の在り方を論ずる前提として、まず地方分権の推進、立法・政治の強化、情報公開を実現して中央省庁の権限集中を是正し、民主化をはかる必要がある。
 2)【企画立案と執行の分離】中央行政の効率化には、行政に対する政治の指導性を高め、政治の政策立案機能を強化することがまず必要である。
   中央省庁の再編にあたって、企画・立案と執行を分離するべきとの考えがあるが、これは、行政の国民への説明責任を強め、政治の指導力を強め・育成することにはつながらず、行政の効率化を進めるとは言えない。
   むしろ、地方分権と経済的規制の緩和を推進したうえで企画・立案と執行を一体的に運営することが、行政機能の効率化を進めると考える。
 3)【政治任命職の拡充】政務次官など政治任命職の役割強化と政治任命職のポスト増を行い、国会における説明責任を負わせる(政府委員の廃止)とともに、政策立案における政治の指導性と責任を明確にしなければならない。
 4)【中央省庁の再編】省庁体制の再編については、単に現在の省庁を統廃合するのではなく、公務の諸機能・目的に立ち入って業務群に分割分類し、時代に対応した政策目的によりその業務群を組み合わせるなどの政策論に裏打ちされた新しいやり方を検討すべきである。
   さらに中央省庁の機動性、弾力性を実現するため、省庁間の共同プロジェクトチームによる行政執行などの制度等を導入し、縦割り行政の弊害を排除する必要がある。
 5)【エイジェンシー】この議論では、概念を明確にして検討する必要がある。エイジェンシー化を執行幹部の契約制、数値目標による業務評価、業務執行の裁量権付与等の制度と理解するならば、これらの条件が整っていないわが国においては、業務評価や結果責任などをいかに行政に組み込むかの努力がまず必要である。
   拙速に形だけのエイジェンシ−制度を取り入れ、中央省庁の縦割り権限を温存することはさけるべきである。

(3) 内閣機能の強化について
 1)【検討の課題】内閣機能を高めるため、内閣を構成する総理大臣と国務大臣の関係、閣議における政策決定の手続き等について、内閣総理大臣の政治リーダーシップを明確にする在り方を検討すべきである。
 2)【指揮監督権の付与】内閣における総理大臣のリーダーシップを明確化するため、総理大臣に各省大臣に対する全般的な指揮監督権を与えるべきである。
 3)【閣議の討議による決定】閣議における政策決定の指導性と責任を高めるため、「事務次官会議」による閣議事項の事前調整の名による実質決定の在り方を改め、内閣での討議により決定する在り方にすべきである。
   また、大規模災害等の事態に対し、総理大臣が迅速、適切に指揮できる条件の整備・改善を行う必要がある。 

(4) 関連する行政諸制度について
 1)【公務員制度の改革】現行の公務員制度については、公務員に労働3権を保障し、雇用・労働条件については労使交渉により決める必要がある。さらに人事制度ではキャリアとノンキャリアの学歴偏重の昇進の是正、労使合意ルールによる省庁間・民間との人事移動・交流の拡大、キャリア職の共同採用など公務員の能力育成が促進される制度への改革、定年まで安心して働ける公平な人事制度と天下り規制など、公平で働きがいある制度に改めるべきである。
 2)【財投制度の改革】財政投融資制度は、社会資本整備等に貴重な役割をはたしてきたが、現状では、財政負担の先送り機能による行財政肥大化、不透明な投融資配分、事業会計原則の不備、巨額の国債保有やこげつき債権の存在など大きな問題を抱えるに至り、改革が欠かせない。
   その改革の第1は、資金運用部および財投対象機関(特別会計、政府系機関、特殊法人)の事業と会計の透明化、情報公開、第2には、国債引き受け、資金配分、事業の必要性や長期収支について国会論議を深める、第3には、業務監査、事業結果の評価制度の導入、第4には、財投制度の目標と役割達成に対応した組織の見直しの実施である。
   今後の財投制度は、中長期計画、事業採算性、公共性にもとづき厳格に投融資計画を定め、透明な運営に変えなければならない。
 3)【郵貯、年金積立金の自主運用の拡大】郵便貯金、簡易保険、厚生・国民年金の積立金については、自主運用の一層の拡大に努めるべきである。
   郵便貯金、厚生・国民年金の掛け金を資金運用部に預託する制度については、市場金利との連動性を強め、長期資金供給の役割をはたしていく必要がある。

4.行政改革における雇用の安定・確保対策について

 行政改革の推進においては、雇用が確保され、労働条件が維持されることが重要である。行政関連の分野で働く者の勤労意欲を高め、明るく働ける行政改革としなければならない。

(1) 行政改革の実施により、行政関係組織に働く者が雇用を失うことがあってはならない。

(2) 雇用の変更が予想される場合には、必ず事前に関係労働組合との交渉・協議を行う必要がある。またその労働条件の維持・確保に万全の対策が講じられなければならない。

以上

議事概要