(別紙2)

武藤総務庁長官英国行政改革実情調査結果の概要
目的
英国における行政改革の実情、とりわけエージェンシー制度導入の経緯及びその効果等について調査し、我が国における中央省庁の改革の検討に資する。
日程
1997年4月27日〜29日
訪問先
公務庁(トッパム国際副部長)、ロビン・バトラー内閣府長官、ピーター・ケンプ元ネクスト・ステップスPT責任者、ジェフリー・ハウ元副首相、ロバート・アームストロング前内閣府長官、刑務所庁(テイラー局長)、政府広報局(ダグラス長官)、デビッド・ハウエル前下院外交委員長
(訪問順)

調査結果概要
英国における行政改革の実情

 1979年の総選挙で保守党が勝利をおさめ、その結果誕生したサッチャー政権は、英国病からの脱却を目指して行政改革に取り組み、まず、1980年から4年間かけて政府の仕事を極力減らし、民間に移せるものは移した上で、政府自らが行わなければならない仕事もその効率向上を図って公務員の削減に努めた。その結果約75万人いた公務員の数を1988年までに約60万人へと約15万人あまり減少させることができた(その後も政府は公務員の削減に努め、現在の公務員の数は約48万人となっている。)。

 次に民間の仕事のやり方に着目し、より改善された行政サービスの提供を目指して公務部門の改革に取り組み、給与の決め方、業績達成目標、財務状況の改善目標等の目標の決定、長の人選、業務報告書などに独立採算制あるいは企業会計原則といった民間の手法を取り入れる方向で、政府の各省庁の執行部門を政策の企画立案部門から切り離すこととしたのがエージェンシーという制度である。そして、エージェンシーとして発足させたものが、そのままエージェンシーとして活動しているものと、最初はエージェンシーとしてスタートしたが、その後完全に民営化したもの(国有財産の管理、庁舎管理等)と両方ある。1997年3月現在のエージェンシーの数は130機関で、全国家公務員数の約4分の3に当たる38万6千人がエージェンシーで働いている。

 しかし、エージェンシーについても全てがうまくいっている訳でもなく、例えば、直接訪問した刑務所庁についていえば、そこで働いている幹部はうまくいっていると言っていたが、他では批判的な意見も聞かれた。

 また、執行部門と政策部門との間の齟齬を来さないよう、意思の疎通を図るため、

1)エージェンシーの長には公務員のみならず民間人も含めた幅広い層から最適な人材を登用しようとして、公募を行い、応募者の中から、まず書類で人数を絞り、次に、選考委員会(中立性を担保するための公務員人事委員会委員、所管省事務次官、専門家等がメンバー)が面接により1名を決定(補欠1名)し、所管大臣に推薦、それに基づき所管大臣が最終的に任命するというシステムにしている、

2)また、エージェンシーの目的、経営目標、期待される効果を明記した基本文書を所管大臣が作成し、その基本文書に基づいて最大限の自由な管理(例:内部人事、給与、賞与、物品管理、日常的財務会計などについて)をすることが認められている、

3)また、事業計画、業績目標値等について検討するため、エージェンシーの長と担当局長と大臣の任命する民間の委員によって構成される運営委員会が設置されている場合がある。
 換言すれば、エージェンシーは、あくまで公務部門の一部であり、組織(Constitution)に関わる変革ではなく、管理(Management)に関する変革であるということである。
 面会したすべての人が異口同音に言っていたことは、英国病から脱却し、英国をよみがえらせ、今日の活力ある繁栄をもたらしたのは行政改革の成果であり、とりわけエージェンシー制度の導入が相当貢献しているということであった。因みに、エージェンシー化の効果としては、具体的には次のようなことがある。

1)業務目標の達成率が高水準である(94年度80%、95年度83%、96年度79%)。96年度目標が設定された事項の中で49%が前年度を上回る実績を示した、

2)効率性を高めるのに貢献している。即ち、政府の経費削減の約6割(4億ポンド、約810億円)は、エージェンシーによるものである、

3)独自の給与体系を31機関が導入しているが、例えば特許庁では業績のあがったチームにはボーナスを支給することを考えている、

4)業務執行について1991年の市民憲章(Citizen's Charter)に基づき6原則が設けられている。
(イ)サービス基準の設定と公表、(ロ)情報公開、(ハ)選択と利用者の意見の反映、(ニ)丁寧かつ親切なサービス、(ホ)執行に誤りがあった場合の陳謝及び迅速な是正、(ヘ)効果的かつ出来る限り安価なサービスの提供

行政サービスの効率化に関する主な目標と実績例
  目標の種類目標値実績
高速道路エージェンシー効率化・93年度の運営経費から20%削減
・全国の18事務所を11に削減
・2280人の常勤スタッフ数(94年10月)を、95年10月までに1975人に削減
達成
・達成
・達成
質の向上・工事区間は、2.5マイルを超えない
・工事箇所間は、最低6マイル以上を置く
・98.8%達成
・99.5%達成
雇用サービス効率化 ・効率化により5800万ポンドのコスト削減・7500万ポンド削減
質の向上・都市内部にいる失業者の27%を就職させる・27.5%を達成
社会保障給付エージェンシー効率化・効率化により5000万ポンドのコスト削減・7227万ポンド削減
質の向上・所得手当の92%以上が適切に給付・98.89%が達成
パスポート・エージェンシー効率化・1旅券当たりの処理コストを3.2%減少
・申請から発券までの処理日数を9日
・5.2%を達成
・6.7日を達成
質の向上・定期調査で顧客の9割以上が満足・98%が満足
  (注)各目標と実績は、95年度のもの。

  なお、昨今のエージェンシー制度をめぐる議論には次のようなものがある
(1)エージェンシー化による効果について議論となっている点
 1)任期付きの外部人材(有能な民間経営者)の登用及び自由な管理による思い切った合理化、効率化の推進
   −相当効果が出ている庁と、十分な合理化、効率化を達成できていない庁(消防大学校、健康保険年金庁、児童保護庁等)がある。
 2)独自の給与、待遇の設定による勤労意欲の高まり(特許庁の例等)
 3)事業に対する明確な目標の設定、外部評価、公表
   (運営委員会による審査、年次報告書公表による議会、国民による監視) 
   −内閣ではこの効果を重視

(2)制度の枠組について議論となっている点
 1)政策企画立案と執行の連携確保
 2)大臣と長官の責任範囲の明確


(別紙2の別添)

行政執行機関のエージェンシー化について

1 経緯
  サッチャー政権下で首相の効率性向上問題顧問であったサー・ロビン・イブスとそのスタッフが、首相の顧問を受け、1988年、行政執行機関の管理・運営の抜本的改革策として提言。
  その後、首相府効率性向上室(現在は内閣府公務庁)が中心となって具体化を推進。

2 現状
  1996年末現在、国家公務員49万8千人中、38万6千人(約4分の3)がエージェンシーに所属。
エージェンシーは現在130機関。代表的なものは以下の通り。
(ア) 国民全般に対するサービス提供機関
・自動車運転免許局  ・土地登記局  ・旅券局  ・社会保険給付業務庁
・雇用安定庁  ・気象庁  ・公文書館  ・高速道路管理局  ・刑務所庁
(イ) 行政機関に対するサービス提供機関
・政府広報局  ・公務員大学校  ・統計局  ・造幣局
(ウ) 研究機関
・資源研究所
(エ) 規制機関
・会社登記局  ・薬事審査局  ・特許局  ・車検局

3 エージェンシーとは何か
一言で言えば、執行部門の組織に対して業務目標を明示させる一方、目標達成・業務改善のための自律的な組織運営上の判断が可能となるよう、可能な限り財務管理・人事管理上の裁量の余地を高めるための組織管理の仕組み。
  具体的には、
oエージェンシーの長の任命は、原則として民間人等も含めた公募による。
o長は、所管大臣に対して、業務達成目標、財務状況の改善目標等を示す。
(業務達成目標としては、例えば許認可処理期間の短縮、処理ミスの削減、サービスの内容の向上等が具体的に数字を示して掲げられる。また、財務状況の改善に関しては、収支の均衡、赤字の削減が具体的な数値目標として掲げられる。)
o予算の次年度繰越、手数料等の収入を組織の独自の収入とすることが可能とされる等、財務管理面で組織の裁量の余地が拡大される。
また、人事管理面でも、一般職員の給与は組織の中で交渉・協議して決定し、また採用・昇進等を独自に行うことが可能とされる等、裁量の余地が拡大される。
 (各エージェンシーは、こうした点を定めた組織の基本文書を所管大臣と協議の上定める)
o業績が目標を上回れば、長と職員は、組織の予算の範囲内でボーナスを得ることも可能とされる。(業務向上に対するインセンティブ)
o他方、各エージェンシーは毎年度達成された業績を公表しなければならない
また、民間会社・団体並みの財務報告書も公表される。
(こうした組織運営の透明化により、議会・国民による監視が可能となる)


14回議事概要