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第1回企画・制度問題小委員会議事概要

1 日時 平成9年7月9日(水) 10:00〜12:00
2 場所 内閣総理大臣官邸 大客間
3 出席者
(会議)
武藤嘉文行政改革担当大臣・総務庁長官(行革会議会長代理)、佐藤幸治(企画・制度問題小委員会主査)、有馬朗人、芦田甚之助、猪口邦子、河合隼雄、川口幹夫、塩野谷祐一、藤田宙靖、水野清、諸井虔の各委員
(政府)
古川内閣官房副長官、田波内閣内政審議室長
(事務局)
水野事務局長(再掲)、八木事務局次長
4 議題
(1) 行政改革の理念について(討議)
(2) 内閣機能の強化策について(討議)

5 会議経過

(1) 佐藤主査より本日の会議の進行に関して、1)行政改革の理念、2)内閣機能の強化、3)内閣の補佐・支援体制の3つの柱で進めることとしてはどうかとの提案があり、了承された。

(2) 行政改革の理念については、「余り盛りだくさんでは焦点がぼける」「できるだけ明確で簡潔に」といった第20回行革会議で出された委員意見を踏まえ、佐藤主査から資料(別紙1)に則して説明があり、引き続いて委員間の自由な討議を行った。述べられた主な意見は次のとおり。

・資料中「この国のかたち」という言葉は司馬遼太郎氏の用語なので、行革会議として新たな言葉に書き換えたほうがよいのではないか、あるいは引用するなら括弧をつけて司馬遼太郎氏の名前を明示すべきではないかとの意見があった。これに対し、「この国のかたち」とは「コンスティテューション(Constitution)」の意であり、通常は「憲法」と訳されるが、それでは意味が伝わりにくいので用いたものであるとの発言があった。

・1)理念の中に、国力の基盤となる「競争力の強化」という言葉を入れるべきではないか、2)「簡素・効率的・透明な政府」という部分は、「透明な政府」を「透明性の高い政府」とするとともに、「有能で実力のある政府」というニュアンスを入れるべきではないか、3)国際社会におけるルールづくりに積極的に関与するという点については、「主体的」では平板であり、国際的に国力の指標ともされているアジェンダ・セッティングという概念で示す必要があるのではないかとの意見があった。これに対し、自由で公正な社会となれば競争力は強化されるのではないかとの発言があった。

・1)理念に関しては委員の間で大きく意見が分かれているわけではなく、どのようにまとめるかという書きぶりが重要なので、誰か1人が書き下ろし、それをまた討議するということでどうか、2)理念は内閣機能や省庁再編など各論との整合性が必要であり、現時点でこれ以上議論するよりは、最終段階で再度議論する方がよいのではないかとの意見があった。

・行革に対して各省庁の反対が強い中で、国民の支持を得て、しっかりした再編の軸を作るためには、行革に対するプラスイメージが要る。何が21世紀の重要課題で、政府の意図はどこにあり、これをやると日本は良くなるというような、国民が期待・夢を抱くことができるような構図が必要ではないかとの意見があった。これに関連して、今の日本は暗い話題が多く、子供も親も希望が持てない状況なので、21世紀に希望が持て、元気づけられるような理念を最初に打ち出すべきではないかとの意見があった。

・1)中央省庁の再編の基本的な切り口となっている財政悪化を盛り込むべきである。国・地方合わせて500兆円にも上る借金の具体的な中身、およびそれと関連して肥大化した行政組織についての説明も要る。過去の大型補正予算などは政治の側にも反省すべき点がある。世論調査では国民はなぜ行革をやらなければならないのか分からないとの声もある。消費税アップのためのごまかしと思っている人もいたとの指摘があった。これに関連して、夢は夢でいいが、厳しい現実に対する認識も書くことが必要ではないか。明るい日本が見えるような構図に加えて、「官から民へ」「国から地方へ」という理念と整合する分かりやすい表現を使うとともに、総理のリーダーシップの発揮が求められていることを盛り込むべきではないかとの意見があった。

(3) 内閣機能の強化について、佐藤主査から、資料(別紙2)に則して説明があり、引き続いて委員間の自由討議が行われた。主な意見は次のとおり。

(基本的な考え方)

・まず、佐藤主査より、基本的な考え方として、1)内閣は「国務を総理すること」を主要な任務とする存在であること、2)そのためには、内閣の首長である内閣総理大臣のリーダーシップの発揮が重要であること、3)前記1)及び2)のためには、それにふさわしい内閣の機能の在り方を工夫し、内閣及び総理大臣の補佐体制の充実を図ることが不可欠であることという三つ点についてはおおむね合意があるのではないかとの見解が表明された。

・主査の説明により、自分の考えが整理されたように思う。

・基本的に賛成であるが、1)内閣と内閣総理大臣の関係をどう考えるか、これは内閣法改正の問題にも絡むのではないか、2)官僚側からの反対論として、分担管理制の下で行政事務の最終的な権限と責任は各大臣が有しており、大臣が1人でも反対すれば閣議決定はできず、総理の指揮監督も発動できないとの論法があるが、これにどう答えるかが課題ではないかとの意見があった。

(内閣機能の強化についての主査説明)

・佐藤主査から、内閣機能の強化策の具体的措置について、以下の諸点を補足しつつ資料に則して説明があった。
憲法上、国会は与党・野党という異質のものからなる存在であるが、内閣は同質的な存在であり、効率的・機動的に行動するものとして予定されており、議決の方法についても機敏かつ実効的な内閣の在り方の観点から判断すべきである。閣議の議決方法については、全員一致制が通説とはいえ多数決制も有力である。閣議の秘密と情報公開との関係はめりはりの問題である。
特命事項担当大臣について、日本では、まず行政各部があり、それに基づいて内閣があるという明治以来の積上げ型の発想があるが、むしろ、まず内閣があり、それに基づいて各省があるという発想に頭を切り換える必要がある。特命の一つとして各省担当があるといってもいいくらいで、特命担当大臣を特殊なものと考える必要はないのではないか。
総理の基本方針発議権について、現行内閣法でも対応可能であるとする考え方、対応できないとの考え方のほか、改正することにシンボリックな意味を見出して改正すべしとの考え方があり、今後議論したい。また、基本方針の例としての「予算の大綱」については、表現の問題はあろうが、主計局を持ってくるということは現実的でないにせよ、予算の基本的な方向づけについては、という趣旨でこのように書いたものである。また、行政各部に対する指揮監督に関連して、自衛隊法7条は通常内閣法6条の文脈で把えられるが、国防の根幹に係ることについては、内閣法にとどまらず、より重大な問題を含むもので、簡単な議論ではなく、行革会議で取り上げるべきかどうかも、問題である。また、この問題は防衛庁の位置付けにも絡む問題である。

・防衛庁を省にした場合、分担管理大臣が所掌することとなることに伴う問題はないのかとの発言に対して、自衛隊を動かすのは、内閣の長としての内閣総理大臣であるべきであり、検討すべき問題があるのではないかとの意見があった。

・内閣は、各省の上位に位置する存在であるという考え方に賛成であり、その上で、内閣総理大臣の権限をどうするかについて検討すべきではないかとの意見があった。関連して、1)内閣が各省の上位に位置づけられるのは憲法上当然のことで、重要なのは内閣が行政各部の積上げではなく、別個の存在であるということである。ただし、その場合にあっても各省庁は個別の事務を持つことになる、2)こうしたことを踏まえて、内閣法改正の要否を議論することになるのではないかとの発言があった。

・閣議決定が各省庁において確実に実施されているかどうかの検証が必要である。また、閣議で実質的な議論をすべきだが、現実には、閣議できちんと議論をすべき問題も簡単に通ってしまう。内閣を各省庁の上位に置くのはよいが、問題は、このような現実とのギャップをどう埋めるかであろうとの意見があった。これに対して、総理が基本方針について責任を持ち、閣議で議論するということになれば、状況は変わるのではないかとの発言があった。

・閣議の秘密保持も、大事な議論をする前提として必要となるものであるとの意見に関連して、1)閣議の内容が外に漏れるのは、内閣法の問題ではなく、各閣僚の意識の問題ではないか、2)現内閣では、対外的に公表しない旨申し合わせた事案については、秘密は良く保持されていると思う、3)国益にかかわるような問題は別にして、閣議の内容は、オープンにした方が良いという考えもあるのではないか、これは内閣の広報機能の在り方とも関連してくる問題ではないか、との発言があった。

・内閣府のような役所を作って、強い調整力を発揮させることはどうしても必要と考えるとの発言があり、関連して、湾岸戦争の経験からすると閣議を速やかに開くことができない場合もあるので、いざという時には少数だけで決定できる仕組みが、慣例ではなく、法制上必要ではないかとの意見があった。

・内閣機能の強化策について、官僚側からの反対論は別として、従来からの発想によれば国民の側においても、日本社会は多元的というより一枚岩に流れやすく、そこに強い内閣ができると独走するとの懸念が予想されるのではないかとの発言があった。これに対し、日本人はそういう認識を持つ傾向があるが、現在の国際情勢に適合するためには、その点について国民を説得する必要がある。官から民へ、国から地方へという改革を進め、国家機能を限定した上での機能強化であって、何もかも取り込んだままで強化するというものではない。議院内閣制は、内閣の首長たる内閣総理大臣が議会から選出されるという意味で、内閣の暴走を抑えるチェック機能を内在していると考えられるのではないか。もっとも、これまでは、こうした内閣の機能に対する抑制的な側面が強く働き過ぎたとも言えるのではないかとの意見があった。

・現在の行政システムは、先進国のモデルがあってこれに追いつく場合やナショナルミニマムの実現においては良く機能していたが、今後は今のシステムではやっていけない、また、分担管理制には各省庁の組織防衛的な動きをもたらし、組織エゴによって日本を危うくしたというマイナス面があることも示すべきであるとの意見があった。

・緊急措置について総理が事後的に閣議にかけて承認を得るとの考えに立つ場合、1)突発的な事態の態様に応じた対処の基本方針についてあらかじめ所要の閣議決定を行う方式との関係はどうなるのか。閣議決定が二重に必要になるということか。2)事後承認でよいということで内閣総理大臣が軽々に行動を起こすことになりかねないのではないかとの懸念があるとの発言があった。これに対し、1)原則として事後のみとなると考えられるが、様々な場合が想定されるので画一的に決められないのではないか。また、2)先の行革会議の危機管理に関する意見集約における提案は、現在の法制の中で可能な緊急事態対処を提案したものであり、内閣に係る新しい制度の下で緊急措置をどうするのかはこれから改めて議論すべき問題である。さらに、3)現行自衛隊法においては、緊急時の内閣総理大臣の自衛隊の出動命令に関し、国会の事後承認を定めた規定が存在するのであって、事後承認だから軽いということではなく、事後承認でも真剣なものであれば正しく機能するものと考える。なお、4)自衛隊の出動命令は、本来は国会が行うべきことと考えるとの発言があった。さらに関連して、事後承認が得られない場合に総理はどうなるのかとの発言に対し、内閣総理大臣は辞めることになるのではないかとの意見があった。

・内閣総理大臣がすべての事案につき責任を負うのでは、内閣総理大臣の負担が大きくなり過ぎるので、通常の問題についての対処は、所管の大臣に任せるべきであるが、その場合でも、最終的な権限と責任は内閣総理大臣にあると考えるべきではないかとの発言があった。

・内閣総理大臣の位置づけについて、1)明治憲法下の内閣官制の各大臣の首班と同じく「合議体の主宰者」とする説、2)合議体の主宰者と、他の国務大臣が補助機関にとどまる大統領などの地位の中間に位置するとする説、3)大統領型の国政指導を読み取ろうとする説の3つを挙げているが、第2の見解が当然に合理的である。例えば、経済政策で国が一つのベクトルを持てば各省庁はその手段にすぎない。経済学では政府部門は外生変数となるが、各省庁は内閣の定める政策目標を実現するための手段と位置づけるべきであり、内閣が各省庁より上位に位置しなければ合理的な政策はできない。この意味で、複数省庁にまたがる事案についての調整は先ず各省間で行い、その上で、省庁間で調整がつかない案件については内閣に上げて調整するとの考えはおかしい。内閣は総合調整ではなく目標設定を行うものであり、複数省庁にまたがる案件であろうと一つの省のみにかかわる事案であろうと、最初の目標設定は内閣が行うべきであるとの意見があった。これに関連して、1)日本人は内閣の首長に関する第2の見解が合理的と分かってはいても、第1の見解の方が好きという面はある。それを踏まえて、国民に対する説明を考えることが必要ではないか、2)内閣の首長に関する第1の見解は、昭和20年代の内閣運営を先例としているのではないか。当時は、明治憲法の思想が残っており、内閣の運営についても、憲法が変わったにもかかわらず明治憲法下に近い運用を行っており、戦後、憲法は変わったのに行政機構は変わらなかったことから、明治憲法との整合が意識されたのではないかとの意見があった。

・日本人の学術に対する考え方は、各人の独創性を生かそうというボトムアップの考え方が強い。一方で、科学技術の振興政策は、国・行政のイニシアティブの下にトップダウンで行われなければならない場合もある。これに似ているのであって、要は、ボトムアップとトップダウンの双方の良いところを活かすという考え方が必要ではないかとの意見があった。

(4) 内閣の補佐体制について、事務局より資料(別紙5)について説明の後、猪口委員(別紙3)、藤田委員(別紙4)、水野委員(既提出済み、別紙5参照)より提出された意見について説明があった。これらを受けて意見交換があり、次回の企画・制度小委員会においてさらに議論を深めることとされた。委員による補足説明と意見交換の主な内容は次のとおり。

・猪口委員より次のとおり補足説明があった。
内閣官房の総合戦略室に課題ごとの戦略チームを設けることとされているが、この他に、5年から10年単位で長期的に課題に取り組む安定的な組織として「特別部」を設け、例えば「女性施策部」や「予算部」を設置する案を追加する。また、提出された資料では、「内閣広報局」とあるが、「局」の名称は大きな組織を連想させるので「内閣広報官」とする。この広報官は、官房長官(室)にリンクし、一般的な問題についての大局的な方針の広報を担当する。

・藤田委員より、別紙4に則して説明があった。

・水野委員より次のとおり補足説明があった。
総理府の名称はそれなりに適切な名称だと思われるが、その機能を見直して再編するとしても、同じ名称だとやはり現在の印象を拭い切れない。印象が強く、国民にアピールするように名称を変更する必要がある。現在の内閣官房が行っている雑務は、その再編後の内閣府的な組織に移行することにする。内政室と外政室の仕分は不要であり、総合戦略室で国内と海外にまたがる事項を担当する。現在の内閣官房の5室長は同格ではなく、情報調査室長と広報官が他の室長と比べて給与格付けが一格低くなっていること、また、情報調査室に総合調整の権限がないことも問題である。さらに、今後エージェンシー(独立行政法人)制度が導入された場合、その監督は所管大臣が行うことになるが、その省とエージェンシーが馴れ合いでものごとを進めてしまう懸念があるので、その関係をチェックする評価監視委員会を設置する必要がある。また、国と地方の紛争処理機関も必要である。なお、防災については、全てを社会資本整備担当省にもっていくのは問題であり、中央防災会議の議長が総理大臣であることからしても、内閣府に置くべきである。

(意見交換)

・事務局において各委員提案の趣旨、問題点等を整理するようにとの意見があり、了承された。

・議論の焦点は、1)内閣法を改正するのかどうか、改正するとした場合にどのような内容にするのか、2)内閣府的な組織をどのようなものにするのか、という2点に収斂されるのではないかとの意見があった。これに関連して、総理府の名称は、やはり変えるべきである。また、内閣法は改正すべきである。さらに、内閣法制局は独立性が高すぎ、内閣運営の上で足かせとなっているので内部部局とすべきであるとの意見があった。

・内閣と内閣総理大臣の基本的な位置づけについての考え方はだいたい合意がとれているのではないかとの発言があり、次回討議でその補佐・支援体制について更に議論することとなった。

・「内閣総合調整局」の長は、官僚及び官僚出身者が就任してはならず、国務大臣を置く必要がある。官僚等では、本人は中立に職務を遂行しているつもりでも、外部からは出身省の利害にとらわれているとの見方をされてしまうからであるとの意見があった。関連して、国務大臣を置く場合には「局」の名称が気になるとの発言があった。

以上
(文責 行政改革会議事務局)

連絡先:行政改革会議事務局   高野(電話03-3581-2641)  根本(電話03-3581-0270)

行政改革会議議事概要は、インターネット(官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/)の「最近の話題」又は「審議会」の欄)及びパソコン通信ネットワーク(PC-VAN及びGサーチ)でも御覧になれます。


別紙1

行政改革の理念と目標(佐藤幸治委員)

T 従来日本の国民が達成した成果をふまえつつ、より自由かつ公正な社会の形成を目指して「この国のかたち」の再構築を図る。
U そのため、まず何よりも、肥大化し硬直化した政府組織を改革し、重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素・効率的・透明な政府を実現する。
V このような政府を基盤として、自由かつ公正な国際社会の形成・展開を目指して、国際社会の一員としての主体的な役割を積極的に果たす。


別紙2

内閣機能の強化策に関して(佐藤幸治委員)

1 基本的な考え方

@ 日本国憲法上、内閣は「国務を総理すること」を主要な任務とする存在であることを重く受けとめるべきであること。
○ 憲法73条は、「内閣は、他の一般的行政事務の外、左の事務を行ふ」として、冒頭に「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」(1号)と定める。
○ ここに「国務を総理すること」とは、「国務が適当の方向を定められ、その方向性をとって進むよう、処理することである」(佐々木惣一)といわれるように、高度の政治・統治の作用をいう。

A 内閣がそれに託された「国務を総理する」任務を十全に遂行するためには、内閣の「首長」である内閣総理大臣のリーダーシップの発揮が極めて重要であること。
○ 関連する憲法の規定
66条1項内閣は、…その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
68条  内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。
内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
72条内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

○ いわゆる議院内閣制下にあって、国政に民意を反映させる方法には、(1)国民の中の様々な意見をいかに忠実に議会に反映させるかを第一義的に考え、どのような内閣(政策プログラムと担当者)を作るかは議員・政党間の話し合い・交渉に委ねるという行き方と、(2)議会と内閣とを一体的に考え、選挙にいかなる政策プログラムを誰に担当させるかの意義を担わせようとする行き方とがある。
日本の憲法学の大勢は、従来(1)の行き方を念頭においてきた。しかし、イギリスは、早くから(2)の行き方をとってきた(イギリスの総選挙は、実は総理大臣の選挙であると早くからいわれてきた所以である)。そして我が国であっても、国民主権の下にあって重要なのは、国政に民意を反映させることであって、追求すべきは(2)の行き方であるという見解が次第に有力になってきている。
 国内にあって解決すべき多くの諸課題をかかえ、かつ、グローバリゼーションの進展する国際社会にあって有意的な寄与を求められている我が国が今後追求すべきは、(2)の方向ではないか。
○ ドイツの憲法65条は、「連邦総理大臣は、政治の基本方針を定め、これについて責任を負う。この基本方針の範囲内において、各連邦大臣は、独立に、かつ自らの責任において、自己の所轄事務を指揮する」と定める。また、イタリアの憲法95条1項は、「内閣総理大臣は、政府の一般政策を指揮し、それにつき責任を負う。内閣総理大臣は、各大臣の活動を推進・調整し、政治的および行政的指針の統一を保持する」と定める。

B 内閣が「国務を総理」し、内閣総理大臣が内閣の「首長」にふさわしいリーダーシップを発揮できるようにするためには、それにふさわしい内閣の機能のあり方を工夫し、内閣および内閣総理大臣の補佐体制の充実を図ることが不可欠であること。
<付随的条件>
@ 国会、裁判所についても改革を促し、日本国の統治権力の適正な抑制・均衡のあり方を追求すること。
A 行政組織の再編成にあたって、行政組織内にあっても適正な抑制・均衡がはたらくような工夫をこらすこと。
B 国政のあらゆる場面で、いわゆる情報公開を徹底すること。

2 具体的措置

(1)内閣機能の強化について
(イ)基本的視点
@ 憲法は、行政権が合議体である内閣に属するものとしつつ、その内閣が権能を行使する場合の方法について明示していない。そのことは、転変する政治状況の中で、内閣が、閣僚の自由な討議をふまえつつ、機敏かつ実効的な意思決定ができるよう、内閣の機能のあり方については基本的に内閣自身の意思に委ねる趣旨と解される。
○ 憲法は、国会について、議事手続や会議の公開制について定め、また、裁判所について、厳格な裁判の公開原則を定めているが、内閣については、その種の定めをおいていない。
○ 内閣法4条は、「@内閣が其の職権を行うのは、閣議によるものとする。A閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。B各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる」と定め、閣議の定足数や議決方法については、明文の規定をおいていない。

A 従来慣行としてとられてきた閣議の全員一致制は、明治憲法の場合と違って、日本国憲法上の不可避的な要請ではなく、全員一致制をとるか多数決制をとるかは、機敏かつ実効的な内閣機能のあり方から判断さるべきである。
○ 明治憲法55条1項  国務各大臣ハ天皇ラ輔弼シ其ノ責二任ス
○ 閣議の議決方法については、従来、全員一致制説が通説であるが、多数決制説も有力である。全員一致説は、内閣の一体性と連帯責任制を根拠とするが、多数決制説は、各大臣が格別に平等に天皇を輔弼していた明治憲法下の場合と異なり、内閣総理大臣が他の大臣を任意に罷免することのできる権限をもち優越的地位を占める体制の下、多数決で足りるとすることにも根拠があり、内閣一体性の原則と多数決とは必ずしも矛盾しないとする(少数派は決定に従いともに責任を負うか、あるいは、責任を負えぬとして辞職するか、罷免されるかのいずれかを選択できる)。
なお、多数決制の場合、内閣総理大臣の意に反する決定がなされる可能性が指摘されることがあるが、内閣総理大臣が閣議を主宰し、また大臣を任意に罷免することのできる体制下にあって、そのようなことは起こりえないと解される。

B上述のように、憲法が閣議の議事手続や公開制について何ら規定を設けていないということは、閣僚間の実のある率直な議論を期待してのことであって、閣僚はそのことの意義を十分に考慮し、秘密の保持についても配慮しなければならない。省庁の大括り再編案は、閣議における議論を実質化し、閣僚の責任を一層重いものとする意味合いをもつことに留意すべきである。
なお、省庁の目的別編成の狙いは、省庁間の争いが所掌をめぐる権限争いに堕することなく、むしろ目的(省庁)相互間の活発な政策論争を国民の前に提示せしめることにあるが、そのことと閣議のあり方そのものとは区別して考えられなければならない。
○ 閣議の秘密保持の重要性は、特にイギリスにおいて強調されている。
○ 行政情報一般の公開制の徹底を図る必要があるが、そのことと閣議そのものの非公開制とは矛盾しない。
○ 内閣の職務行使のあり方は内閣自らの自主的運営に委ねられ、他律的な規範の拘束になじまず、憲法が職権行使の方法について明示的規定をおいていないのもその趣旨と解される。
 昭和27年8月の衆議院解散の効力が争われた苫米地訴訟では、解散決定が総理大臣ほか数人の閣僚のみによって行われ、閣議決定がなかった点も問題にされ、第一審判決は、天皇に対する助言について適法な閣議決定があったとはいえないとしたが(東京地判昭和28年10月19日行集4巻10号2540頁。なお東京高判昭和29年9月22日行集5巻9号2181頁は、原判決を取り消し、請求を棄却)、最高裁判決は、解散という「極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為」であることを理由に、その法律上の有効無効を審査することはできないと判示した(最大判昭和35年6月8日民集14巻7号1206頁)。いわゆる統治行為論(政治問題の法理)を持ち出すまでもなく、解散以外の事柄についても、およそ閣議のあり方は司法審査になじまないものと解される。
(ロ)具体的措置
@ 閣議の決定方式
従来の閣議における全員一致制にも合理的な理由があるが、過去の経験と今般の行政改革の理念に照らし、内閣機能の強化・活性化のため必要とあれば、先例にとらわれることなく、多数決制の採用も考えられうるのではないか。
A 関係閣僚会議
複雑化・困難化する行政課題に内閣として迅速かつ効果的に対処するため、関係閣僚会議を機動的に開催する必要がある。
なお、関係閣僚会譲が実質的意義を発揮するよう、その設置に当たっては、設置目的を明確にし、目的達成後は速やかに廃止し、また、構成員を関係の深い閣僚に限定するなど、実効性・機動性重視の運営を図るべきである。
また、閣僚間での実質的な討議の促進を図るため、閣僚懇談会の活用が図られて然るべきである。
○ イギリスのサッチャー内閣がその指導性を発揮するに当たって、内閣の各種委員会を活用したことはよく知られている。

B 特命事項担当大臣
複数省にまたがる案件について、内閣としての統一的なコンセンサスの形成やイニシアチブの発揮を行うため、その必要に応じ、特命事項担当大臣を置く。その場合、当該大臣が任務を効率的に遂行しうるよう、関係閣僚会議の主宰など、各種の仕組みの整備を図るとともに、補佐するスタッフ組織を機動的に整備する。
(2)内閣総理大臣の指導性発揮について

(イ)基本的視点
@ 憲法は、内閣総理大臣をもって内閣の「首長」とするが(66条1項)、その意味をめぐって、大別して三つの見解がある。
第一の考え方は、本条にいう「首長」とは、明治憲法下の内閣官制の各大臣の首班と同じく「合議体の主宰者」の意味であるとするものである。すなわち、首長は、内にあってはその合議体の議長となり、その事務を指揮監督し、外に対してはその合議体を代表する任務をもつ者である、とされる。日本国憲法上、内閣総理大臣は、国務大臣を任意に罷免できるなど、一般国務大臣に優越する地位を認められているが、内閣の合議体の一員としては、どこまでも他の国務大臣と対等の地位をもつ者であり、そうでなければ合議体は成立しえないとする。
第二の考え方は、「首長」とは、明治憲法下の同輩中の首席としての内閣の首班たる地位と、その者一人が行政権の主体として行政の責任者となり、他の国務大臣はその補助的機関たるにとどまる大統領などの地位の中間に位置すると捉えるものである。それは、一方では、内閣総理大臣が直接国会によって選出され、国務大臣の任免権及び訴追の同意権をもち、また行政各部の指揮監督権を有する意味において、他の国務大臣の上位に位し、内閣全体を統率する立場にあるとみるとともに、他方では、行政権は合議体たる内閣に帰属し、その責任もまた内閣全体として負うことを考慮しようとするものである。
第三の考え方は、内閣総理大臣の国務大臣の任免権を重視し、任免権者が任免される者と同格でありうるはずがないとし、内閣総理大臣の大統領制型の国政指導を読みとろうとするものである。

A 上記三つの見解のうち、当初有力に主張された第一の見解及び比較的近時において主張されるようになった第三の見解は必ずしも多くの支持はなく、大勢は第二の見解を支持しているものと解される。もっとも、第二の見解といっても、内閣総理大臣の優越性と、内閣の合議体性のいずれをより重視するかによって、具体的内実において幅が生じうるところである。ただ、いずれにせよ、この第二の見解は、現代国家における上述のような内閣総理大臣の役割変化をふまえて、内閣総理大臣をもって「政治の一般方針を定め」(ドイツの憲法)ないし「政府の一般政策を指揮し」(イタリアの憲法)、それにつき責任を負う立場の者と捉えることと両立しうるものである。つまり、この場合、内閣は、それぞれの行政事務を分担管理する大臣の単なる集合体ではなく、総理大臣の「政治の一般方針ないし一般政策」を共有しつつ、一体となって国政にあたる合議体ということになる。そしてこのように理解すること、内閣が「国会に対し連帯して責任を負ふ」(66条3項)と矛盾するものではない。

○ イタリアの憲法9条2項は、「各大臣は内閣の行為につき連帯して責任を負い、その所管の行為につき個別に責任を負う」と定める。

B 現行の内閣法は、第三の見解とは相容れないことになろうが、第一の見解とはもとより、第二の見解とも両立しうる。ただ、第二の見解によった場合、内閣法は弾力的に解釈され、さらに、手直しの必要がないかどうかの課題が生じる。

○ 関連する内閣法の規定
4条内閣がその職権行うのは、閣議によるものとする。
閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。
各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。
5条内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。
6条内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
7条主任の大臣間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する。
8条内閣総理大臣は、行政各部の処分又は命令を中止せしめ、内閣の措置を待つことができる。
12条2項内閣官房は、閣議事項の整理その他内閣の庶務、閣議にかかる重要事項に関する総合調整その他の行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整及び内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務を掌る。
(ロ)具体的措置
@ 基本方針・政策の発議
内閣総理大臣は、その地位の重要性に鑑み、基本方針・政策の発議をなしうるという趣旨の規定を内閣法に設けるべきであるとする見解と、内閣総理大臣は、閣議の主宰者として、また、国務大臣として、案件の如何を問わず閣議に発議することが内閣法上認められているのであって、法改正をするまでもないという見解とがある。後者の見解は、基本方針・政策の発議権を規定することは、あたかも内閣総理大臣にかかる発議を義務づけるような感じにならないか、また、明文化によって、内閣総理大臣の発議権が基本方針・政策にかかるものに限定される、あるいは他の国務大臣の発議の内容が限定される、との誤解を生まないか、を懸念する。
しかし、内閣法の構造は、従来ともすれば、内閣総理大臣の「首長」性についての、上述の第一の見解との結びつきで理解される傾向がなかったか。現代国家のあり方及び日本の現状に照らし、第二の見解に立って、内閣総理大臣が基本方針・政策を提示し、それに責任を負うことを内閣法に明記することの意義はないか、が問題になる。
○ 基本方針・政策は、対外政策や安全保障政策の基本、行政・財政運営の基本や予算の大綱、経済政策の基本等に及ぶのみならず、個別政策事項であっても国政上重要なものも含みうるであろう。内閣総理大臣がこうした基本方針・政策の発議をなし、推進するについては、企画・立案面でこれを支える補佐体制が不可欠であるが、それについては、(3)で扱う。
A 行政各部に対する指揮監督
憲法72条は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する」と規定する。本条について、「代表」とは元来対外的関係について成立する観念であり、対内的関係では成り立たない、つまり、行政各部の指揮監督は同じ行政機構中の関係であるから、個々に行政各部を指揮監督するとは、内閣を「代表して」行うのではない、とする見解がある。
しかし、一般的には、「内閣を代表して」とは「行政各部を指揮監督する」にもかかるものと解されている。その根拠は、行政権は合議体たる内閣に属するものであり、また、内閣と行政各部とは相互に別個の存在である、という点にある。そして、内閣法6条にいう「閣議にかけて決定した方針に基いて」も、自衛隊法7条に「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊〔防衛庁長官を含む〕の最高の指揮監督権を有する」とあるのも、この趣旨を受けてのものとされる。
しかし、「閣議にかけて決定した方針に基づいて」を厳格に受けとめるならば、特に危機管理の局面において、迅速かつ適切な措置をとることが困難になる。この危機管理の局面において、どのような手順・方法で当該危機に臨むかについての枠組みを予め、例えば、内閣成立時の最初の閣議で決めておくというようなことが考えられるが、内閣法はそのことを許容すると解されるか。あるいは、内閣法を改正してそのことを明記すべきか。あるいは、まず内閣総理大臣が緊急措置をとり、事後的に閣議にかけて承認を得ることができるような仕組みが望ましく、そのことを内閣法に明記すべきか。さらに、国防にかかわる緊急事態を想定するとき、事柄は一層難しい課題をはらんでいる。
○ 事前の閣議決定によるといっても、どのような内容・程度のものを考えるか。危機を類型化し、類型別の決定を要するのか、あるいはごく概括的なものでよいのか。ごく概括的なものでよいということになると、白地委任のようなものとならないか。それならば、むしろ、事後的に閣議にかけて承認を得ることを要求する方が適切ではないか。
本会議は、「内閣の危機管理機能の強化に関する意見集約」(9.5.1)において、「突発的な事態の態様に応じた対処の基本方針について予め所要の閣議決定をしておき、総理大臣が迅速に行政各部を指揮監督できるようにすること」を求めたところである。政府において早急にその具体化を求める必要があるが、それで十分といえるか。
○ 大森(政)政府委員(平成8年6月11日〔衆〕内閣委)
「『閣議にかけて決定した方針』と申しますのは、個々具体的な事態に即応した、本当の具体的な方針をその都度決定しなければならないというわけではないというふうに解されておりまして、あらかじめ事態、想定される事態に備えまして、内閣としての基本的な方針をあらかじめ定めておきますと、事態に応じた適切な対応をするために、その都度閣議を開いて方針を決めなければならぬというものではないわけでございます」
上記のような緊急事態以外の通常の場合において、内閣総理大臣が行政各部を直接指揮監督する必要がどの程度存するかは一つの問題である。国政全般に対し基本的な責任を負う内閣総理大臣が、行政各部の扱う個別的行政事務にかかずり合うことは必ずしも好ましいことではなく、担当大臣がその所管事項につきそれぞれ責任を負う体制は合理的なものといえよう。ただ、このような体制を自己目的的にかつ形式的に受けとめることは妥当ではなく、弾力的な運営が妥当ではないか。
○ 大森(政)政府委員(平成8年6月11日〔衆〕内閣委)
「現在の内閣法の規定は非常に弾力的にできておりまして、運用の妙により、あらゆる場合にほぼ対応できるというのが私どもの感想でございます。
そこで、お尋ねの件につきましてお答えいたしますと、内閣法4条をごらんいただきますと、内閣総理大臣は、内閣を構成する大臣の一人として、案件のいかんを問わず、案件をみずから主宰する閣議に付議することができるということになっていることは間違いございません。したがいまして、内閣総理大臣がみずから起草した政策に関する基本方針と申しますか、そのようなものを閣議にかけて決定するということは、現行法の運用として十分可能でございますし、また毎国会ごとに行われていることでもございます」


別紙3

〔内閣機能強化のための機構改革についてのメモ〕の追加メモ(猪口邦子委員)

1.提出理由
 第20回行政改革会議(7月2日)における会長=内閣総理大臣からの指摘の中に:
@ 国家としての総合戦略を練るところがない
A 広報をどのように強化するべきか
という、内閣機能強化の機構改革を考える際に極めて重要なポイントが含まれていたことを踏まえて、6月25日に提出したメモを部分的にバージョン・アップすることとした。なお、この追加メモの触れていない部分については既存メモのままとする。

2.新内閣官房の機構案の新提案 ――総合戦略室について

1) 機能

中央省庁大括りの行革理念を反映させ、内閣官房も大括りの機構改革を行い、それぞれの担当の副長官補の下に、@危機安保室、A中央情報室、 B社会経済室、の3室をおくことをすでに提案したが、第3室は社会経済ではなく、総合戦略系の「総合戦略室」とし、統轄者は、官房副長官補(総合戦略担当)とする。国内での積み上げ方式を前提にする調整という消極的な表現はあえて避け、首相直属のこの精鋭機関においては、重要な政策選択や世界会議対応のための、国家としての総合的な政策戦略を構築し、知的武装を行い、また国際的総合調整のための総理と担当大臣のシェルパ機能を果たすこと等を中心的使命とする。その中には従来型の国内の総合調整も含まれようが、より積極的にトップダウン方式で総合戦略を編み出し、それに基づき行政各部で調整が行われる形も実現していく。総合戦略室は、国内問題や国際会議に向けた突破力のある知的理念を提示したり、意欲的でリーダーシップのあるアジェンダを設定し、既存メモで指摘したagenda settingの国力を体現していく機関として位置づけられよう。

2) 機構運営における留意点

[有識者] 国家として内外に対するそのような重要な政策戦略をトップダウン方式で編み出すに当たって、その機関が内輪の閉鎖型であれば強力な密室政治へと傾斜する危険性もあることに十分注意しなければならず、国民の意識や期待感から遊離したり、当該イシューエリア(問題領域)の国際動向に疎いことのないよう運営されなければならない。そのためには、総合戦略室における各戦略チームには、民間からの研究者や専門家など有識者を積極的に登用し、専門内容に即して各省庁から選ばれる行政官とともに総合戦略の形成に寄与する機会を開いていく。そのような有識者は当該イシューエリアにおける政策戦略について市民社会に解説していくなど国家と社会をつなぐ知のラインとしても機能する。なお、この場合、一部の審議会で見られるような外国人登用は、国家としての政策戦略の中枢を組み立てるという使命に照らして適切でない。

[シンクタンク] 他方で政策戦略を形成するに当たっては、国内のシンクタンクや学界の成果を参考にしたりするほかに、世界的に有力な海外のシンクタンクに助言やポジション・ペーパーの下書きを求めたりすることはむしろ積極的に行い、国際標準に照らして遜色なく、また国際社会から見ても魅力的でインパクトのあるイニシャティブを編み出せるよう、英知を結集する開かれた運営を基本とする。

[戦略チーム] 総合戦略室は最小の基本事務体制のほかは、課題ごとの戦略チームにより構成される。各チームは、関連省庁から招集される行政官と前述の有識者らからなり、行政官もできるだけ個人の実力と資質に基づき選んで登用する。そのようなチームの編み出す政策戦略について行政各部の理解と受容を取りつけるのは副長官補及び副長官(事務)の責任であり、チームそのものは、そのような権力関係などを考慮して構成するのではなく、できるだけ純粋な実力ベースで人材を結集する。その際には、関連分野のみでなく、課題横断的にチェックするべき観点から意見をのべることのできる人材も含めるようにする。たとえば、女性の視点、環境影響の視点、対米関係の視点などは大半の場合において有用なチェックポイントであり、そのような観点から見て適切でない政策戦略は総合戦略たりえない場合が想定できよう。なお、戦略チームは、長期間設置したままにせずに、直接の使命を果たした後には、内閣官房からは外し、必要な場合には省庁レベルでのフォローアップチームを残すか、緩やかなネットワークとして非公式に情報交換する形へと移行させていく。内閣官房で抱えるチームの数は、5から10の範囲が、総理がプライオリティを置く分野の規模としては適切ではないかと思われる。20や30もある場合には、総花的になってプライオリティが明確ではなくなり、官邸のヴィジビリティをむしろ確保できなくなるのではないかと考える。数ヶ月の短期集中的なチームが相次いで機能していく時差方式で多くの分野をカバーすることは可能であり、その方が内閣広報戦略とも効果的に連動することが可能になるであろうと思われる。

[世界会議] 20世紀は戦争の世紀であったが、21世紀は国際会議の世紀となろう。主要な世界会議や国際会議についてはすべて、基本的には総理大臣の下の総合戦略室で、関係省庁の協力を総合して国家としての対応戦略を積極的に練って推進し、国際会議で指導性に富む日本を作り上げる。平和な時代の国際的な知の戦線への参謀本部という比喩を用いることも可能であり、国際会議を知的に制する、勝つ戦略を目指し、業務評価も厳しく行う。

3) 内閣広報機能の強化について

[内閣広報局] 内閣広報機能は、官邸のヴィジビリティを高め、内閣の知的指導力を示すためにとりわけ重要な機能であり、国内に止まらず、国際会議対応なども含めて対外的に戦略的広報を展開できる能力が必要である。内閣のスポークスマン機能を担うのは、閣僚メンバーであり、総理に代わって政治的な含意を含めて発言できる官房長官であるが、より一般的な問題については国内はもとより海外プレスや対外広報も含めて効果的に対応できる魅力的なスポークスマン(ウーマン)を別に行政内部および政治任命で登用することも必要である。内閣広報戦略は官房長官室にリンクする内閣広報局を設けて行い、官房長官のブリーファーである広報局長が事務の責任者となる。一般問題対応のスポークスマンは内閣広報局に所属する。内閣広報局は官房3室と同様に官邸の中に置くが、規模は25名程度とし、広報局長以外は5人程度の内閣審議官をおき、それぞれに2人程度の課長補佐をつけ、その他係長等から成る若い勢力の事務体制を提案したい。広報局は内閣との綿密な連絡の中で総合広報戦略を作り、方針決定を行うが、実施の段取りは新総理府=首相府の方に受皿を作り、内閣審議官のうち一人を首相府併任として中核的実施=受皿のチーフとする。なお、広報局長の人事は、既存メモで提示した複数省庁間の競争原理(サーキット方式)を用いる。

[内閣官房総合戦略室との連動性] 内閣広報局は重要な課題についての国家の総合戦略の発信機能を担うため、上記の総合戦略室と密接に動き、総合戦略室の広報機能も担う。なお、内閣官房3室のうち、内閣広報局は総合戦略室とのみ公式の連携を維持し、中央情報室や危機安保室とは民主主義の原理を考えて一定の距離をおく。別紙に概念図を示す。

(事務局注:猪口委員より補足説明があり、次の2点につき訂正があった。
1)内閣官房の総合戦略室に課題ごとの戦略チームを設けるが、この他に、5年から10年単位で長期的に課題に取り組む安定的な組織として「特別部」を設け、例えば「女性施策部」や「予算部」を設置する。
2)「内閣広報局」の「局」という名称は大きな組織を連想させるので「内閣広報官」とし、この広報官は、官房長官(室)にリンクし、一般的な問題についての大局的な方針の広報を担当する。) 内閣機能強化組織図


別紙4

内閣機能強化についての意見(藤田宙靖委員)

T 問題検討の基本的方針

1.総理大臣を中心とした内閣(ないし総理府)において担われるべき国家機能(以下単に内閣機能と称する)は何かを整理した上で、それぞれの機能を実施するにふさわしい組織(機関)の在り方如何を考える。

2.このような組織(機関)の設置可能性につき、憲法を含めた現行法の枠組みとの関係から検討する。

U 内閣機能の内容と、組織の現状(概略)

      内容                 組織
      1.企画立案(総合戦略)       内政審議室・外政審議室他
      2.総合調整
          組織管理            総務庁
          人事管理            総務庁・人事院
          予算管理            大蔵省
          法制管理             内閣法制局
       3.監査・評価            総務庁
      4.情報収集・管理          内閣情報調査室他
      5.危機管理             内閣安全保障室他
       6.広報               内閣広報官室
V 私の出発点(4月2日発表意見)
1.内閣官房は、企画立案機能を中心とする、少数精鋭で小回りの利く組織とする。
2.総合調整機能を行う組織(現在の総理府を改編した「新総理府」ないし「内閣府」)は、かなり大規模なものとなる筈である。
3.いずれにせよ、新たな総合調整組織には、実施機能は持たせず、これらは、他の又は新設の省庁に委ねる。

W 検討

1.最大の問題点は、総合調整機能のどこまでを内閣に行わせるかであるが、内閣の「強化」を目指す以上は、合理的な範囲内で、しかしできる限り、内閣の所管とする途を探るべきこととなる。

2.この見地からしてまず考えられるのが「内閣府」構想であるが、「内閣府」については、以下のように、その法制上の性格付けについて、若干の問題がある。
すなわちまず、現行の内閣法では、内閣の組織については、内閣官房を必置としている(12条1項)他は、「別に法律の定めるところにより、必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる」と定めている(同3項)に止まる。従って、この規定を前提とする限りは、「内閣府」は、性質上「内閣官房」であるか、それとも「その他必要な機関」のいずれかであることになる。しかし、前者とすれば、上に見た「小回りの利く少数精鋭の組織」としての官房のイメージとは相容れないから、むしろ「その他必要な機関」の方に属するものと考えなければならない。
ところで、ここで言う「その他必要な機関」として、現在置かれているのは、内閣法制局、人事院、安全保障会議、等である。これらは、いわば、一定の目的を限り、その目的を有効に果たすために置かれている「補助部局」であって、総合調整を包括的に行う「内閣府」は、これらとはややイメージを異にするように思われる。従って、仮に「内閣府」を置くものとするならば、この限りで、内閣法の改正が必要になるのではないかと思われる。
また、「府」の名称を用いると、国家行政組織法上の諸機関との関係において、いささかそのイメージが明確でなくなる。従って、このような構想を活かすのであるならば、むしろ「内閣総合調整局」とでも称すべきものではないか、と思われる。
なお、内閣法を改正し、このような機関を置くことについての、憲法上の支障は無いものと考える。内閣の組織の在り方につき、強いて限界があるとするならば、いわゆる「担当大臣による事務分担の原則」であって、内閣自体が行政を分担することはできない、ということであろうが、「総合調整」事務は、内閣が担うにふさわしくない事務では全くないから、主任の大臣としての総理大臣が担う実施事務をも内閣に行わせようというのでない限り、問題は存在しないというべきである。

3.内閣法の改正を伴わず、しかも、総合調整機能を、通常の省庁と横並びの「新総理府」のような機関に行わせるのでなく、内閣レヴェルで行うこととするのであるならば、考えられるのは、(ちょうど、現在の内閣法制局及び人事院が、それぞれ法制管理機能・人事管理機能を担っているのと同様に)、各調整機能毎に、例えば、「内閣行政管理局」「内閣予算局」といった別個の局立てをすることである。ただ、この場合には、それぞれの機能毎に、(現在の法制局長官、人事院総裁のように)独立のヘッドが必要であることになる。

4.なお、内閣官房の在り方については、基本的な考え方として、企画立案(総合戦略)を主たる任務とするものとし、他の諸機能は、それとの関係で不可分なもののみに絞るべきではないかと思われる。その上で、その具体的な組織の在り方は、本来、時の総理大臣が最も使い易いように、できる限り柔軟なものとしておくべきであり、あまり詳細な法制を敷かない方がむしろ事物の本質に適うのではないか、と考える。ただこの点、総理によっては、むしろ自由があり過ぎることにかえって当惑される場合もあるかどうか、その辺をも踏まえ、更に考えることとしたい。

5.また、内閣の機能の他に、いわゆる総理直轄事務(主任の大臣としての総理大臣の事務)の組織的位置付けの問題がある。このような事務は、ア)全く新たに生じた事務、イ)各省庁の消極的権限争議の結果によるもの、ハ)総理自身が新たに積極的に行おうとする事業、の三種類のものがある。この中、ア)及びイ)については、当面受け皿となる組織を内閣内に置くにしても、なるべく早急にいずれかの省庁に配分する権限を総理大臣が持つことによって、解決を図ることが考えられるが、問題はハ)のケースである。問題は多々あるが、いわゆる「内閣府」構想につき、上記のような組織的解決をされるならば、専らこういったケースを中心とした受け皿として、別に「新総理府」を設けることも、必ずしも背理ではないものと考える。
また「宮内庁」の位置付けの問題があり、省庁再編との関係で、「新総理府」設置の可能性を、現段階では残しておく必要があるものと考える。

以上を踏まえて導き出される結論を、現段階での試論として、取り敢えず以下のように提示したい。

 ○(甲案 内閣法の改正を伴うもの)
    内閣
     内閣官房    (総合戦略)
             (情報収集・管理)
             (危機管理)
             (広報)
     内閣総合調整局
       行政管理部  (組織管理)
       人事部    (人事管理)
           人事院
       予算部     (予算管理)
           経済財政諮問会議
       監査部    (監査・評価)
     内閣法制局   (法制管理)
    総理府
             (新規プロジェクト等の受け皿)
             (賞勲・統計等の実施機能)
             (宮内庁?)
コメント:
・「情報収集・管理」については、独立の「内閣情報局」とすることも考え得る。「広報」についても同様である。
・「人事院」及び「内閣法制局」については、両者とも現在のまま別立てにする可能性、また、逆に、法制局も「内閣調整局」の中の「法制部」とする可能性、等、この他にも種々考え得る。
・「経済財政諮問会議」の構想は、おそらくは水野案と同様の発想に基づくものであるが(故に名称を水野案から拝借)、要するに、予算管理につき、従来のシステム下でも理論的には内閣に主導権が保障されている筈であったにも拘わらず、現実にそれが充分機能してこなかったのは、この問題につき、内閣に十分なスタッフ機能が備わっていなかったためと考え、経済審議会・財政審議会等の各種機関の機能を統合し、予算編成の基本方針等につき、内閣として、スペシャリストの力を動員することが可能であるようにしようというものである。
なお、現在内閣には、法律に基づき必要に応じて設けられている機関として「安全保障会議」があるが、上記の構想の下で、これをどうするかは、同会議の実態等を踏まえた上で、今後改めて検討したい。

○(乙案 内関法の改正を伴わずとも何とか可能と思われるもの)

    内閣
     内閣官房
     内閣行政管理局
     内閣人事局
        人事院
     内閣予算局
        経済財政諮問会議
     内閣法制局
     内閣監査局
    総理府
コメント:
・内閣官房の構成、情報機能の位置付け等については、甲案について述べたと同じ。
・経済財政諮問会議についても、甲案について述べたと同じ。
・安全保障会議についても同様。

Y 内閣法6条及び4条問題について

1.内閣法6条の規定が、日本国憲法上当然に要請されるものである、という内閣法制局の見解には、かなりの疑問があることは、4月2日発表の私の意見において述べた通りである。その限りにおいて、私は、渡辺意見に同調する。
ただ、このような法制局見解は、現在の我が国の学界において、相当の支持を得ているものでもあり、これを覆すには、相当のエネルギーが必要であることも否定し得ない。他方、6条の意義に関しては、法制局自身、後退に後退を重ね、今日では、総理の施政方針演説のようなものが下敷きになっておれば6条の制約はクリアーされるものとされている。
そうであるとすれば、現段階で、6条の法文自体の改正問題に多大のエネルギーを費やすまでの必要があるかどうか、そのエネルギーは、他の重要な問題に向けた方が合理的ではないか、というのが、私の考え方である。

2.他方、内閣法4条については、現行法上も、内閣総理大臣には基本方針の発議をすることが可能である、とされるが、それはあくまでも、(他の大臣と同等の立場での)主任の大臣としての総理大臣としてであるか、或いは、閣議の座長としての(形式的な)立場においてである。問題は、内閣の長としての総理大臣が内閣の中で本来どのような位置付けをされるべきか、という、より本質的なところにあるのであって、この基本的な問題を解決するために内閣総理大臣の発議権を明文化すべきではないか、が、まさにここでの問題なのである。従って、このコンテクストにおいては、内閣総理大臣の発議権を明文化することは、内閣法6条の規定を変えないことと裏腹の関係に立つのであって、その意味で、今回の行政改革の中において、理論的に極めて重要な、かつ象徴的な意味を持つ。この意味において、もし4条の改正がなされないというのであれば、私としてはむしろ、6条改正説に加担せざるを得なくなるものといわなければなるまい。
なお、4条を改正して内閣総理大臣の基本方針発議権を明文化すると、他の諸大臣の発議権を制約することになるとか、内閣総理大臣の発議権の範囲に逆に枠をはめることになる、という反論は、例えば条文の定め方によって、どのようにでもクリアーできる問題であり、本質的な問題では全くない。


内閣・総理府の組織の在り方についての意見のパターン(未定稿)

【例1:豊田委員案】

【例2:諸井委員案】

【例3:藤田委員 甲案】

【例4:藤田委員 乙案】

【例5:水野委員案】

【例6:猪口委員案】

【例7:渡辺委員案】

【例8:事務局作成討議資料より】

臨時行政調査会(一次臨調)における内閣府構想(昭和39年9月)