別紙1
四 国家機能の分類に関しての具体的検討(橋本四分類をベースとして)
○ 基本方針として、「橋本四分類」をベースに事務局によって作成された討議資料中の「国家機能と行政目的の整理(未定稿)」(本議事概要別紙2)を基にし、これら諸機能相互間の「共通性」及び「相反性」について検討することとするが、具体的検討に入る前に、一般論として、以下のことを指摘しておきたい。
1.第一に、いうまでもないことながら、「目的」のレヴェルをどの程度の抽象性のレヴェルに置くかによって、あらゆる国家機能は、究極的には国家機能として同一の目的を追求するものであることにもなり、また逆に、全てそれぞれ異なる目的を持つものである、ということにもなる。従って、省庁編成論の前提として機能論を行おうとする限り、それぞれの機能が一面で共通性を持つということだけでは、ここで言う「共通性」を認める決め手とはならないし、また、異なった側面を持つというだけでは、ここで言う「相反性」を見出すための決定的な基準とはなり得ない。問題は、我々が、どのような共通性を重視し、またどのような相反性を重要と考えるか、ということである。
2.「橋本四分類」は、「共通性」を基に行われているものであるが、同時に、「相反性」の判断についての一つの基準を示すものでもあると理解される。すなわち例えば、「労働行政」は、当然「経済行政」と相反する面を持つが、捉えようによっては、両者間には共通する側面もある。この点で、橋本四分類中、経済が 「U国富の確保・拡大」に、他方「労働」が「V国民生活の保障・向上」に分類されていることは、両者間の「相反性」の方を重視することを意味している。
同様のことは、「環境」と「国土・社会資本」との関係についても妥当するし、また、「財政」と「金融」が共にTに分類されるか、それともTとUに分属せしめられるかの問題も、まさに此処に関わる問題である。
3.今回の省庁再編の主要目的が「縦割り行政の弊害の排除」にあるとするならば、従来まさに「縦割り行政の弊害」を克服する目的の下設けられてきた省庁、そしてこれらの省庁に本来期待されていた一定の機能が存在するということが、今後の編成の一つの重要な手掛かりとなる筈である。すなわち、総合調整官庁としての、総務庁、経済企画庁、科学技術庁、国土庁等の存在がそれである。
現存のこれらの行政機関が、当初期待された調整機能を十分に果たし得ているかどうかとは別に、これらの機関に本来期待された「機能」そのものの意義については、今後の省庁編成にあたっても、十分に考慮されるだけの理由があるものと思われる。とりわけ、これらの機関が従来十分に調整機能を発揮できなかった理由の一つは、十分な実施機能を与えられていなかったことにあるとされるが、今後、中央省庁の機能が、主として「企画・立案」機能を中心としたものに集約されるとするならば、この点でも、これらの機関に本来期待されていた機能が、改めて脚光を浴びることになるものと思われる。
4.なお、「討議資料」において行われている機能の整理は、必ずしも、現状での国家機能に対する「水平的減量」及び「垂直的減量」の作業を経た上でのものではないため、これらの作業の結果如何によっては、以下の具体的検討結果が異なってくることも、当然考えられる。
○ 具体的な検討(叩き台素案……今後行われるべき検討作業の例示)
T 国家の存続(外交、防衛、治安、財政)
1 国際関係・安全保障
・「外交」と「防衛」は、友好的関係の構築ないし維持に向けての活動(外交)と、敵対的関係を前提としての活動(防衛)の違いがある点を重視し、危機的事態(戦争時)を除いては、相反するものと位置付け。
・なお、「外交」 と「対外経済」とは、仮に、目先の自国の利益を巡り相反することが生じ得ないではないにしても(外務省ヒアリングより)、より広い目で見れば共通する要素の方が大きいものとも位置付け得る。橋本四分類を踏まえた事務局資料では、T及びUに分かたれており、「相反」を重視する結果となっているが、それでよいか?
「防衛」と「治安」は、敵を対象とする活動(防衛)と、自国民を対象とする活動(治安)の違いがあることを重視し、危機的事態を除いては、「相反」と位置付け。
2 秩序・安全
・「防災」は、緊急時における救助活動については「治安」と共通。それ以外においては、「防災」はむしろ「国土整備」と共通(国土庁・自治省等ヒアリングより)。両者を横断し、「防災」を別機能として想定するか否かは、別に検討の余地あり。
・「財政」は、国家活動のための支出を抑制する機能を持つものである点を重視し、全ての国家機能に対し相反するものと位置付け。
・なお、「財政」と「金融」との相互関係については、以下のように考える。
「財政」は公的資金の出入であり、「金融」は私的経済分野での資金配分のメカニズムであるから、「財政」が金融市場のルールを乱すような事態が生ずることを想定し(eg. 金融機関への国債の押しつけ)これを重視すれば、両者は相反する関係に立つ。
但し、両者は、緊急時においては明らかに共通する面がある(全金融秩序の崩壊の防止)ほか、平時における相互関係についても、国の総合的経済政策を実効あらしめるためには「財政」「金融」共に協力しなければならない、という前提に立つ限り、両者がそれぞれ独走することは許されない、という関係にある。
このどちらを重視するかは、機能論としては俄に判断し難く、省庁編成の在り方については、後に行う組織論の結果をも十分に踏まえた上で、政治的に決断すべき問題である。
U 国富の確保・拡大
3 経済
・「経済と産業」に関しては、マクロ経済と個別的分野の経済政策とが相反する可能性(個別分野の利害の考慮によって、マクロの視点が歪められるおそれ)と、両者が相互に効率的に機能するメリットのどちらを重視するか、が問題となるが(経済企画庁ヒアリングより)、この点に関してはまず、規制緩和が進んだ場合「産業」に関し国家行政として残る内容は何かを、再点検する必要がある。
・「経済」と「財政」については、上述「財政」と「金融」の項を参照。
・「情報通信」は、「産業」としては「経済」と、「技術」としては「科学技術」と、「施設」としては「国土・社会資本整備」と共通する面があり(郵政省ヒアリングより)、これらの側面毎に相反性を認め「情報通信」の分野を分断することが適当かどうかには、問題が残る。従って、「情報通信」を別機能として想定するか否かは、別に検討する必要がある。
・「エネルギーの安定供給」については、それ自体としてはいうまでもなく極めて重要な機能であるが、平常時においては、今日では主として市場に委ねらるべきものとすれば、国家機能としては、むしろ「危機管理」の問題と考えるべきことになる。
平常時において国家行政として残る機能があるとすれば、それは何か?
4 国土・社会資本
・「社会資本整備」については、「企画・立案」機能を問題とする以上、総合的な「国土整備計画(全国総合開発計画・国土計画・土地利用基本計画」etc.)と共に括られ、その下に立つべきもの。
・「社会資本整備」と、整備された社会資本を用いて行われる個別行政分野(都市建設、交通、通信、衛生、農村整備等々)における目的の固有性との相互関係については、施設整備それ自体を目的とし利用目的を十分に考慮しない社会資本建設が進むおそれがあるのではないか、との危惧が述べられるが(運輸省・農水省等ヒアリングより)、単なる「公共事業の実施」ではなく「国土整備」の見地で括るならば、このような問題は、少なくとも相当程度解消されるのではないか?。
・なお「交通体系の整備」その他、上記の個別行政分野については、上述の他、規制緩和が進んだ場合国家行政として残る内容はどのようなものかを、再点検する必要がある。
V 国民生活の保障・向上
5 国民生活
・「環境」は、環境資源の「保全」を図るものである点において、「消費」を前提とする他の一切の機能とは相反することを重視すべき。とりわけ、「環境」は、将来の世代の利益をも代表するものである点で、主として現在の世代の利益実現を図る他機能に対して相反する、という面も重視さるべきである。
なおその際、病原菌や薬害等に対する安全の確保機能にも、 「環境」との共通性を見るか(「自然環境」と「生活環境」)?
・「食糧の安定供給」は、エネルギー供給と同様、それ自体としてはいうまでもなく極めて重要な機能であるが、平常時においては、今日では主として市場に委ねられるべきものとすれば、国家機能としては、むしろ「危機管理」の問題と考えるべきことになる。
平常時において残る国家機能があるとすれば、それは何か?
・「労働行政」と「福祉行政」等とは、相互に異なる面は持つものであるにしても(労働省・厚生省ヒアリングより)、少なくとも機能論としてその「相反性」を重視するだけのものは無いと見てよいか?
・「男女共同参画社会の建設」についても同様か?
W 教育や国民文化の継承、醸成
6 教育・文化・科学
・「教育」については、既存のものの「配分」と考えれば、「学術」とは相反する面も出てくるが、「創造」の部分を重視すれば、むしろ両者は共通する面を持つことになる。
・「科学技術の振興」に関しては、「学術・教育」との相互関係が問題となる。この点、「科学技術」は「防衛」「治安」「経済」等他の分野と相反することは比較的少ないのに対し、「学術・教育」は、これらと相反する事態が比較的容易に想定し得ることを考慮する必要がある。
X その他の機能を巡る問題点
・「地方自治制度の在り方についての企画・立案」機能のように、国家の基本構造(憲法秩序)に関するような制度に関わる機能をどう考えるか(地方自治制度は、日本国憲法上、天皇、戦争放棄、基本的人権、国会、内閣、司法、財政と並び、独立の一章を設けて保障された制度であることの重みをどう考えるか)?
(事務局注:藤田委員の「覚え書き」その一は、行政改革会議第21回議事概要の別紙として添付)
別紙2
(「新たな中央省庁(本省)の編成の考え方(討議資料)(案)」別紙1-1)
○国家の機能としては、以下の4つの柱を基本に、整理することができるのではないか。
T 国家の存続
U 国富の確保・拡大
V 国民生活の保障・向上
W 教育や国民文化の継承、醸成
○以上の4機能を担う行政目的として、以下のように行政目的(課題)の整理を試みたが、どのように整理することが適切か。その際、これらの行政目的(課題)は、上の4機能の複数にわたり得るものがあることに留意する必要があるのではないか。
(T 国家の存続)
1 国際関係・安全保障
1−1 外交(国際社会の平和秩序維持、良好な国際環境の主体的形成、地球環境問題の解決)
・外交
・国際交流
・開発援助
1−2 我が国の平和、安全秩序の維持・確保
・防衛
2 秩序・安全
2−1 治安(国民の生命・財産の安全)の確保
・警察、海上保安、麻薬取締等
2−2 防災・災害対策の推進
・防災、災害対策、事故対策
2−3 法・社会秩序の維持・確保
・法制度の整備、法秩序維持、人権擁護
(U 国富の確保・拡大)
3 経済
3−1 健全な財政の確保
・財政、税制、財投、国有財産管理
3−2 通貨の安定と金融秩序維持
・通貨管理、金融システム管理
3−3 マクロ経済政策
3−4 産業の競争基盤の強化
・産業政策、中小企業
・競争政策、経済取引ルールの整備、知的財産保護
3−5 対外経済関係の円滑な発展
・対外経済関係
3−6 情報通信の高度化
・放送通信規律維持、情報化対応ルール整備
3−7 エネルギーの安全・安定供給の確保
・省エネ、新エネ、エネルギー安全保障(備蓄、開発)、原子力開発、公益事業規制
4 国土・社会資本
4−1 国土の整備・開発・保全
・社会資本整備
・土地利用計画・規制、利水、治水
・都市計画、地域整備
4−2 総合交通体系の整備
・交通社会資本整備、交通秩序、安全規制
(V 国民生活の保障・向上)
5 国民生活
5−1 環境の保全・自然保護
・排出規制、土地利用規制、自然保護、環境社会資本整備、環境影響評価
・廃棄物対策(排出規制、回収システム、処分場整備)
5−2 食料の安全・安定供給の確保
・食料安全保障、農林水産業振興、農業等基盤整備、農山漁村振興
5−3 国民生活の安定・福祉の向上
・福祉(高齢者・障害者対策、生活保護)
・年金
・医療、保険、薬事、公衆衛生
・消費者保護
5−4 雇用の安定・確保
・職業安定、労働基準、保安・労働安全
5−5 男女共同参画社会の建設
・労働・雇用条件整備、保育・介護対策等社会進出支援
(W 教育や国民文化の継承、醸成)
6 教育・文化・科学
6−1 人材の育成、文化の振興
・青少年の育成
・教育
6−2 文化・スポーツの振興等
・文化の振興、継承・保存、著作権保護
・スポーツ振興
6−3 科学技術の振興
6−4 学術振興
議事概要/