文部省に対する質問項目

☆行政改革の趣旨に照らし、各省庁において、今後取り組むべきと考える(取り組もうとする)改革方策をご提示願いたい。
☆国立学校の独立機関化又は地方移管、民営化についてどう考えるか。
☆科学技術行政と大学・学術行政の関係及び組織の在り方についてどう考えるか。
☆大学を含めた国の研究機関全体の調整・管理の在り方及び研究機関の組織形態(統廃合、独立機関化等)についてどう考えるか。
☆義務教育関係、私学行政関係等の大幅な権限委譲を進め、地方に主体性を持たせるとともに、教育委員会制度を見直すべきとの考え方についてどう考えるか。
☆文化庁を外局として存在させる意義は何か。
☆博物館、青少年教育施設等の施設等機関の独立機関化又は地方移管についてどう考えるか。
☆生涯学習やスポーツについて、基本的に地方と民間に任せ、国の役割を縮小することについてどう考えるか。
☆国際文化・スポーツ交流について、我が国として一元的な実施を図るための組織の在り方についてどう考えるか。

文部省説明資料(平成9年5月21日)
行政改革の趣旨に照らし、各省庁において、今後取り組むべきと考える(取り組もうとする)改革方策をご提示願いたい。

1.課題と展望

(1)教育、文化、学術・科学技術―知的資産の創造と継承

 我が国が、創造力と活力のある国家として発展し、国際的にも積極的な役割を果たしていくためには、「教育」「文化」「学術・科学技術」という知的資産の創造と継承が、国の重要な機能の一つであると考えている。

1)少子・高齢社会に対応した人材育成の推進
 現在、臨時教育審議会答申の「個性重視の原則」、「生涯学習体系への移行」、「変化への対応」という3つの方向性を踏まえ、あらゆる教育段階にわたる教育改革を推進している。(平成9年1月24日に「教育改革プログラム」を策定、公表。)
 教育は全ての社会システムの基盤であり、少子・高齢化が急速に進むこれからの日本においては、社会の発展を支える一人一人の国民の能力をこれまで以上に発揮させていくため、質的に充実した人材育成政策が重要である。

 2)基礎的・独創的な研究の振興
 学術・科学技術は、人間が生み出す優れた知的資産として、産業経済の発展や豊かな国民生活の実現などに寄与し、我が国の発展と世界に対する貢献の基盤となるものである。
 とりわけ、我が国としては、今後、基礎的・独創的な研究を重点的に推進すべきであり、その中心を担う大学における学術研究の重要性が増している。

3)我が国固有の文化の創造・継承と世界への発信
我が国の優れた文化を次代に継承し、更なる文化の創造を図っていくことは、国民の精神的豊かさと我が国の発展にとって不可欠である。
また、我が国が、文化面において「顔の見える国」となり、世界の平和と発展に貢献していくためには、我が国固有の文化を世界に向けて積極的に発信し、文化交流を推進していくことが重要である。

(2)高等教育・学術研究に対する公財政支出の拡充

 1)高等教育に対する公財政支出の充実及び重点的配分
 質の高い高等教育は、活力ある経済社会を形成する鍵となるものであることから、高等教育全体に対する国の公財政支出を充実していくことが必要である。また、社会のニーズや大学改革の進展に応じて、資金の重点的配分を行っていくことが必要である。

2)研究費の拡充及び適正な評価に基づく重点的配分
 学術研究及び科学技術の発展のためには、基礎研究を中心に競争的な資金を含む研究費の抜本的な拡充を図ることが必要である。また、研究活動の一層の活性化を図るため、大学等の特性に配慮しつつ、研究課題等についての適正な評価システムを確立し、評価に基づく研究費の重点的配分を行っていくことが重要である。

2.業務及び組織の見直し

(1)地方・民間との役割分担を踏まえた行政施策の見直し

 1)学校教育における地方公共団体及び学校の主体性の拡大
初等中等教育については、地方公共団体が基本的な役割を負うものであるが、国は教育の機会均等を確保し、次代を担う国民を育成する観点から、学校制度の整備、教育課程の大綱的基準の設定、教科書検定の実施、教員資格の設定、教員給与や施設整備の財政負担など、一定の役割を果たしてきている。
今後、教育の個性化・多様化を進めるためには、学校や地方公共団体の主体性や裁量の幅を一層拡大することが必要であり、選択的な中高一貫教育制度の導入、教育課程の基準の弾力化、教育長の任命承認制の廃止を含む地方教育行政の制度の見直しなどに向けた検討を進めている。

2)生涯学習、文化、スポーツ政策のハードからソフトへの転換
 生涯学習、文化、スポーツの振興に関しては、地方公共団体や民間が人々のニーズに応じた施設の整備や活動機会の提供などの重要な役割を担っている。
国としては、基本的な制度の整備、地方や民間では行えない全国的規模の事業、指導的な人材の養成、総合的な情報提供、地方や民間への支援等、全国的視点に立った政策を実施している。
このような国の政策については、地方分権の観点や、地域や分野による差異はあるものの国・地方・民間において相当程度の施設整備が進んできているという実態に基づき、ハード面の整備に関する施策を縮小・重点化するとともに、ソフト面の施策を拡充することとしている。

3)産官学連携の新たな展開
 大学と産業界や国公立試験研究機関との連携・協力は、新技術・新産業の創出を通じた経済フロンティアの拡大をもたらすとともに、国全体としての研究活動の活性化や独創的な学術研究課題の発見・展開にもつながる。このため、大学と産業界等の共同研究制度、受託研究制度、受託研究員制度、共同研究センターの設置、奨学寄附金制度などを通じた産官学の協力の拡充に努めている。
 さらに産官学連携による研究活動を推進するため、1)国立大学等の教員の兼業制限を緩和、2)共同研究等の場の企業への拡大、3)休職により共同研究等に参画する場合の退職手当算定上の不利益を解消するための法律の改正、4)共同研究等の相手方民間企業が優先的に特許を利用できる期間の延長など制度改善を行ったところである。
 また、新たに国立大学の施設内に民間企業等による共同研究のための施設の整備を早期に図ることや知的所有権の流通促進について検討を進めている。
このような産官学連携の新たな展開を総合的に推進するため、関係省庁との連携を強化していくこととしている。

(2)内部部局の業務及び組織の見直し

 1)新たな行政課題に対応する組織改革
新たな行政課題に適切に対応するため、今後国の果たすべき役割を見定めつつ、文部省内部部局の組織改革を検討する。
 例えば、次のような観点から検討を進める。
 ○ 社会人の再教育機会の充実、少子・高齢社会への対応、男女共同参画社会の形成など、生涯学習社会の実現に向けた企画立案機能の強化
 ○ 研究活動の産官学連携の推進
 ○ 情報化の進展に伴う著作権保護の充実

2)実施業務の見直し
内部部局の企画立案機能の強化等の観点から、大学入学資格検定等の定型的な実施業務や、普及啓発等の目的によるイベントの実施業務の在り方等について検討する。

(3)審議会の見直し
文部省においては、初等中等教育の総合的な政策や文化政策を専ら検討する審議会が存在しないことから、既存の審議会の再編により設置することを検討する。

(4)国立大学の在り方の見直し
国立大学は、学術研究の推進、計画的な人材養成、学問分野や地域配置を考慮した大学教育の実現、大学教育への機会均等などの点から、我が国の大学の発展に大きな役割を果たしている。
 国立大学がこのような役割を果たしつつ、今後とも質の高い教育研究を実施、提供していくためには、予算の充実とともに、より効率的な運営を行っていくことが必要であると考えている。

【国立大学の当面の改革課題】

1)人事・会計制度の弾力化
 国立大学は国の機関であるものの、一般の行政事務とは性格が異なる「教育研究」を遂行する機関である。
 このため、教育公務員特例法や国立学校特別会計法による人事・会計の特例的な制度が設けられており、自律的な運営が期待されている。
 今後、各大学の運営の自主性を拡大しつつ、責任の明確化を図るためには、国立大学の運営に関する人事・会計制度及び運用の一層の弾力化を進めていくことが重要であると考えている。

2)事務局の一元化及び事務職員の削減
 国立大学の事務組織を一元化の観点から見直し、事務の簡素化・能率化を図る。これにより、事務職員の定員について、平成13年度までに約3,000人(事務職員の約1割)の削減を行うこととする。

3)教員養成課程等の入学定員の縮減
近年の児童生徒数の減少等に伴い、今後当分の間、教員採用者数が低水準で推移すると見込まれることから、全国の国立大学の教員養成課程の入学定員の約 5,000人の削減を図り、ピーク時(昭和61年度)の入学定員の約半分に縮減する。
また、その他の学部の入学定員についても、18歳人口の減少期を迎えることから、約 5,600人の臨時定員を平成12年度までに全廃する。

【大学に関する基本問題の改革】

1)管理運営システムの整備
効率的な運営を行う前提として、第一に、戦後から現在に至る検討を経てなお未整備の管理運営システムを整備し、各大学が自律性を確立していくことが必要である。
 具体的には次の点についての改善が必要と考えている。
 ○学長・学部長・評議会・教授会の位置づけや役割分担の明確化
 ○教授会運営の円滑化
 ○学外の意見を採り入れる仕組みの導入

2)教育研究の評価システムの確立
 第二に、効率性追求の結果として教育研究の質が低下することがないよう、大学にふさわしい客観的な評価システムを確立していくことが不可欠であると考えている。

(5)施設等機関の在り方の見直し

 1)国立青少年教育施設の地方移管の検討
 国立青少年教育施設(国立青年の家、国立少年自然の家)は、青少年の発達段階に応じた先導的プログラムの開発や成果の普及、全国的規模の指導者の養成等を行う機関として国の青少年教育施策を進める上で重要な役割を担っている。
 一方、地域との関わりをもった活動が行われている面もあることから、青少年教育振興に果たす国の役割と責任を踏まえつつ、地方との役割分担の観点から、今後、仮に地方からの要請があれば、個々の施設の状況を踏まえて地方への移管を検討したいと考えている。

2)国立博物館・美術館の運営の改善
国立博物館・美術館は、全国の美術館等の中核として、国民共通の財産である極めて価値の高い文化財や美術品を計画的に収集・保管し、広く鑑賞機会を提供するとともに、保存や修復等のために高度で専門的な調査研究を実施しており、国際的にも我が国の文化面での「顔」としての役割を果たしている。
このような役割を適切に果たし、質の高い事業を展開していくため、美術品の交流・寄付等を促進する仕組の検討を行うなどの運営の改善を進める。

3.他省庁に関連する検討課題

(1)学術・科学技術
基礎的・独創的な研究は、大学を中心として行われており、また、大学は豊富な研究者を擁し次代の研究者を養成する場でもあることから、国が科学技術政策として推進する研究開発においても大学との密接な連携協力が不可欠である。また、科学技術政策の重点が基礎研究にシフトしてきており、基礎・応用・開発研究の間もシームレスになりつつあることから、科学技術行政を学術行政とあわせて一体的に行っていくことは、十分考え得る方向である。
 その場合においても、個別具体的な政策目的のために必要な研究開発については、それぞれの所管省庁が責任をもって進めるべきものと考える。
 このような研究活動が各省庁を通じて効果的に行われるためには、学術研究から各省庁の政策目的を達成するための応用・開発研究を含み、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる分野にわたる総合的な学術・科学技術政策の樹立と各省庁の施策の調整のための組織体制を整備することが必要であると考える。

(2)文化・スポーツの国際交流
 国際化の進展により、文化・スポーツ活動が国内外を問わず国際的に展開する中で、文化・スポーツの国際交流と国内施策は切り離せないものとなり、国内外一体の政策が必要となっている。また、国際交流を価値あるものとするためには、文化・スポーツの専門知識を十分に生かしていくことが重要である。このため、国際交流と国内の基盤整備を一元的に推進する行政組織が必要であると考える。

(3)生涯学習と職業能力開発
 生涯学習施策においては、技術革新の進展、産業構造等の急激な変化に対応し、社会人が新たな知識や技術を習得し、職業能力の向上を図るリカレント教育の機会の充実を図っていくことが最重要の課題であるが、職業能力開発行政は、多様な学習機会を提供する生涯学習施策と深い関連を持つものであることから、今後とも、生涯学習行政との一層の連携が必要であると考える。

(4)青少年教育と青少年健全育成
青少年の健全育成を図る上では教育の果たす役割が大きく、文部省では学校、家庭、地域社会における教育を充実するとともに、三者の密接な連携による総合的な青少年教育を推進している。今後とも、青少年教育行政と関係省庁における青少年行政との一層の連携が必要であると考える。

(参考)国立大学の管理運営に関する検討の経緯
昭和22年 3月学校教育法公布・大学令廃止(新制大学に関する規定が整備され、大学に教授会を置く旨規定)
23年10月大学法試案要綱発表(未成立)
24年 1月教育公務員特例法公布(大学管理機関について暫定的な定め)
5月国立学校設置法公布・新制国立大学70校が発足(1県1国立大学の原則により、旧制大学・高等専門学校等を統合)
9月国立大学管理法案起草協議会(我妻栄会長)設置
26年 3月国立大学管理法案を第10回国会に提出(第11・12回国会で継続審議されたが、結局審議未了、廃案となる)
28年 4月国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則(文部省令)制定
38年 1月中央教育審議会「大学教育の改善について」答申(学内管理機関の職務権限の明確化による学内管理体制の確立と学外者を加えた機関の設置を提言。)
文部省は、これを踏まえ、「国立大学運営法案」等2法案を作成したが、国会に提出するに至らなかった
44年 8月各地の大学紛争に対処するため、「大学の運営に関する臨時措置法」が公布(大学紛争の発生という非常事態において、学長に最長9月間大学の機能を中止する権限を与えるなど権限を集中)
46年 6月中央教育審議会「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」答申(国立大学が自律性と自己責任をもって運営されるための方法として、1)公的な性格をもつ新しい形態の法人、2)学外者を加えた新しい管理機関の設置等による管理運営の責任体制の確立、の2つの方法を提言)
48年10月筑波大学設置(新構想大学として、全学的に教員人事を審議する人事委員会、学長を補佐する副学長、学外者の意見を反映させるための参与会など、大学の管理運営のための新たな機関を設置)
57年 7月第二次臨時行政調査会第三次答申(「国立大学を含め、大学の設置、管理、運営の在り方について検討を行う」旨提言)
61年 4月臨時教育審議会第二次答申(ユニバーシティ・カウンシル(大学審議会−仮称)の創設について提言)
62年 4月臨時教育審議会第三次答申(国立大学について、学長のリーダーシップの発揮など各大学の自主・自律体制の確立、学外者の参加を得た諮問機関の設置・活用、行財政的諸規則の大幅な緩和・弾力化などを提言。将来に向かって国立大学への公的な法人格の付与など設置形態について検討すべき旨要請)
62年 9月大学審議会設置(学校教育法の改正)
平成 2年 4月第二次臨時行政改革推進審議会最終答申(国立大学について、「法人化など設置形態を含めて大学の組織・運営の在り方を検討する」旨提言)
7年 9月大学審議会「大学運営の円滑化について」答申(学長・学部長・研究科長のリーダーシップの発揮、評議会・教授会の運営の工夫や円滑化、決定手段の明確化など各大学が自主的に、かつ、責任をもって実行する体制の整備について提言。教授会の権限、全学的な審議機関の在り方など大学の管理運営組織の在り方、国公立大学の教員の人事についての教育公務員特例法の規定の見直しなど大学の組織運営の在り方に関しては、今後引き続き検討)

文部省説明資料(平成9年5月21日)

国立学校の独立機関化又は地方移管、民営化についてどう考えるか。

1.高等教育に対する国の責務

(1)欧米先進諸国では、高等教育に対する公財政支出が対国民所得比で我が国の2倍の水準にあるなど、国が高等教育の実施に対して積極的な役割を果たしている。これらの先進諸国では、より高度な教育の実施と学術研究の推進が、結局は社会の基礎となりその国の発展・繁栄につながることから、国が高等教育に積極的な投資を行っている。

(2)イギリス・フランス・ドイツ・オーストラリアでは大学数、在学者数ともに大多数を国立大学が占め、アメリカでは学生の約7割が州立大学に在学している。

(3)国土も狭く、資源も少ない我が国が、国際化・情報化・高齢化・少子化といった社会経済構造の変化の中で、今後とも創造性と活力のある国家として発展を続け、また国際社会において積極的な役割を果たしていくためには、質の高い教育研究を実施していくことが特に必要である。
  したがって、国公私を通じ高等教育全体に対する国の公財政支出を充実して、高等教育の一層の発展を図っていくことが、我が国にとって重要な課題である。

〔OECD加盟国の高等教育進学率及び公財政支出〕
(単位%)
(公財政支出の対GDP比率(1993年))
 高等教育への進学率
(1992年)
高 等 教 育全 教 育 段 階
カ ナ ダ2.26.7
メキシコ0.74.1
アメリカ1.35.2
オーストラリア1.25.1
日  本55.00.43.7
韓  国0.33.8
ニュージーランド36.71.56.4
オーストリア34.11.15.3
ベルギー52.61.05.6
デンマーク52.81.36.7
フィンランド1.87.3
フランス48.00.95.6
ド イ ツ49.00.94.5
ギリシャ29.30.83.4
アイルランド39.91.15.3
イタリア41.70.85.1
オランダ40.11.44.9
ポルトガル0.85.3
スペイン43.30.84.5
スウェーデン52.01.56.7
イギリス36.90.95.0
チェコ17.90.85.0
ハンガリー15.00.95.9
アイスランド0.74.6
ノルウェー38.01.57.6
ポーランド28.8
ス イ ス28.21.25.7
ト ル コ14.30.83.3
平  均37.71.15.3
OECD「図表でみる教育」(Education at a Glance)より作成

2.大学改革の進展と国立大学 

(1)現在、大学をより個性豊かで活力あるものにするため、平成3年に大学設置基準を大綱化・簡素化し、大学改革を進めてきている。その方向は、次の3点である。

1)世界的水準の教育研究の推進(高等教育の高度化)
 大学院の入学定員増や重点的配分経費の支出など 

2)大学の教育機能の強化、生涯学習等への対応(高等教育の個性化) 
 カリキュラム改革や社会人の勉学機会の拡大、自己点検・評価の推進など

3)大学の組織運営の活性化(高等教育の活性化)
 学長のリーダーシップ(学長裁量経費など)、副学長の設置や学外の有識者による外部評価の導入など

(2)国立大学では、既存の大学とは異なる新しい構想の下に設置した筑波大学(昭和48年)や、技術科学大学(昭和51年)、大学院大学(昭和63年、平成2年、3年)において、これらの改革を先導的に実施し、それが大学改革の流れにつながっており、現在の大学改革をリードしてきている。

3.国立大学の果たしている役割
 また、国立大学は、

1)学術研究の推進と研究者の養成・確保
 大学院の学生の6割以上が国立大学に在籍
 国際的な学術雑誌に掲載される研究論文の数をみても、我が国の国立大学は世界の大学に伍して上位を占めている     

2)学問分野構成や地域配置を考慮した大学の均衡ある発展に寄与
 私立大学の学生は三大都市圏に約8割が集中
 国立大学は三大都市圏以外の地域に6割以上在学

3)計画的な人材養成に寄与
 看護婦・医療技術者の養成等医療に必要な人材、工学系人材の確保

4)大学教育への機会均等の実現
 親の所得にかかわらず、比較的低廉な学費で、希望する学部に進学できるという大学教育への機会均等の実現
などに貢献している。

〔大学院在学者数の状況(平成8年度)〕
 国 立公 立私 立
修士課程
博士課程
70,754
34,267
4,614
2,432
40,534
11,749
105,021
(63.9%)
7,046
(4.3%)
52,283
(31.8%)

〔学部学生の専門分野別の状況(平成8年度)〕
 国 立公 立私 立
人文・社会系
医学・理工系
教育その他
24%
53%
23%
57%
31%
12%
65%
26%
9%

〔学部学生の地域別の状況(平成8年度)〕
 国 立公 立私 立
三大都市圏
その他の地域
36%
64%
48%
52%
76%
24%

4.国立大学の人事・会計上の特例的な仕組み 

(1)国立大学は国の機関ではあるが、一般の行政機関とは異なる特例的な制度が設けられている。
 例えば、

 1)国立大学の教員等の人事については、教育公務員特例法による特例的な扱い
 教員の採用に当たっては、教授会の議に基づき学長が選考を行うなど大学の判断を尊重する仕組み

 2)国立大学の会計については、国立学校特別会計法による特例的な制度
 寄附金を年度を越えて弾力的に使うことができる仕組み(委任経理金)、決算の剰余金をストックしておいて国立大学全体の施設整備のために使用することができる仕組み(積立金)、土地の売却収入をストックしておいて緊急性の高い国立大学の施設整備のために使用することができる仕組み(特別施設整備資金)など

(2)このような特例により、自律的な運営が認められる趣旨は、国立大学が一般の行政事務とは性格を異にする「教育研究」を遂行する機関であり、一定の自主性、継続性をもたせる必要があるためである。

5.国立大学の今後の方向

 国立大学が今後とも発展していくためには、予算を充実すると同時に、より効率的な運営を行っていくことが必要であるが、その前提として、第一に、大学の管理運営システムの整備を図ることが必要と考える。戦後から現在に至るまで、国立大学管理法案(昭和26年)、大学の運営に関する臨時措置法(昭和44年)、筑波大学創設のための国立学校設置法改正(昭和48年)等の法制度化の試みや管理運営システムについてのさまざまな問題提起と検討が続けられてきているが、大学の管理運営システムが十分整備されていないことが、大学の自律性を確立する上で大きな妨げになっている。したがって、まず、このシステムの整備を行うことが必要不可欠である。
 第二に、効率性追求の結果として教育研究の質が低下することがあってはならず、そのためには、教育研究活動に対する評価システムを確立することが必要と考える。大学における教育研究活動を評価する試みとしては、戦後間もなく大学基準協会が設立されて以降、様々な試みがなされてきたが、平成3年の大学設置基準の改正により、大学自身による「自己評価」が制度化された。今後、この動きをさらに推進し、大学にふさわしい客観的な評価システムを確立していくことが必要不可欠である。

(1)国立大学の予算の充実

○ 国立大学はこれまでも、厳しい財政状況の下で、病院収入などの自己収入の確保や経費の削減に努め、他方で重点的配分を行う経費の比重を高めるなど、限られた資源の効率的な運用に努めてきたところである。

○ その結果、国の一般歳出に占める国立学校特別会計への一般会計繰入額の割合は4.4%(制度創設の昭和39年度)から3.5%(平成9年度)となり、国立学校予算全体の国費依存率は59%(制度創設時は82%)となっている。

○ 一方、国立大学の校舎などの施設のうち、建築後20年以上経過したものが全体の51%を占めるなど老朽化、狭隘化が進んでおり、また、研究支援者の不足が指摘されるなど国立大学の質的向上を図る上で解決すべき課題は多い。

○ したがって、今後、国立大学の予算をさらに充実していく必要があるが、そのためには、国立大学の自己収入の増加や外部資金の増加の努力のみならず、一般会計からの繰入などにより国立学校特別会計全体の充実を図っていく必要がある。
  その場合、国費の投入に当たっては、その重点的な配分を行いつつ、競争的な環境の醸成を図っていくことが重要であると考える。

国立学校特別会計への一般会計からの繰入率の推移
39年度 (創設時)82.1%
46年度 (ピーク時)83.5%
49年度 (80%割)78.5%
58年度 (70%割)67.1%
元年度 (60%割)59.7%
2年度60.3%
3年度60.5%
4年度62.8%
5年度63.2%
6年度62.8%
7年度62.0%
8年度60.5%
9年度59.4%

(2)国立大学の管理運営制度の整備改善

○ 今後、国立大学が、国民により良い教育を提供し、世界的水準の研究を推進するためには、こういった経費面での措置だけではなく、各大学の自主性を拡大しつつ、大学の責任の明確化を図り、大学自体が社会に対して責任ある大学運営を行えるように、さまざまな制度の整備を図っていくことが必要である。

○ 具体的には、国立大学の教育研究条件の整備を行いつつ、
 1)学長がリーダーシップを発揮できるような経費の工夫や副学長の設置、学長のスタッフ機能の強化など大学におけるリーダーシップの確立、
 2)学長・評議会・教授会の役割分担の明確化や教授会運営の円滑化など大学の管理運営の改善、
 3)柔軟な組織編成や事務組織の一元化等の一層の効率化の推進、
 4)人事・予算・会計制度及び運用の弾力化、
 5)大学の教育研究や管理運営に対する評価の実施及びその結果の公表の一層の推進、
 6)学外の意見を積極的に採り入れることができる制度的な仕組みの導入
などを図っていくことが必要と考えている。

6.国立学校の独立機関化、地方移管、民営化について

 国立大学の設置形態を考える前提として、国立大学の教育研究活動と運営に何を求め、そのためにどういう評価システムと管理運営システムが必要であるかということが明確になっていなければならないと考える。

(1)独立機関化
 国立大学の独立機関化については、独立機関がいかなる組織であるか整理がなされていないため現時点での回答は困難である。
 なお、国立大学が教育研究を遂行する機関であるという特質に鑑み、教育公務員特例法や国立学校特別会計法などの人事・会計制度の特例が設けられているが、これらの制度や運用のより一層の改善を図ることによって、設置形態を変更しなくとも国立大学の機能は十分発揮しうるものと考える。 
また、国立大学に独立採算制を導入するなどにより教育研究水準の低下を招くものであれば賛同しがたいところである。

(2)地方移管
 これまで移管が行われた13大学(15学部)は、すべて公立大学から国立大学への移管であり、いずれも地方公共団体の強い要請を受けて行ったものである。
 国立大学の地方移管については、国と地方の役割分担の観点から、地方公共団体からの強い要望があれば検討し得る事柄と考えるが、その場合も、教育研究水準の低下を招くことにならないよう配慮が必要と考える。

(3)民営化
 先程述べた国立大学の果たしている役割からみて、国立大学の民営化には賛成できない。
むしろ、国公私を通じて、それぞれの設置形態の特質に応じて、各大学が特色を生かしつつ、大学全体として多様な発展を遂げていくことが適切と考える。

文部省説明資料(平成9年5月21日)

科学技術行政と大学・学術行政の関係及び組織の在り方についてどう考えるか。

1.学術研究と科学技術の関係

 学術研究は、真理を探究するという人間の知的欲求に根ざし、研究者の自由闊達な発想と研究活動を源泉として行われる人文・社会科学から自然科学までのあらゆる学問分野にわたる幅広い知的創造活動であり、大学(大学の研究所を含む)を中心に推進されている。
一方、科学技術の研究は、国民経済、産業発展への寄与等特定の政策目的を達成するために行われる主として自然科学にかかわる研究開発であり、各省庁や地方公共団体の試験研究機関等において推進されている。そのような特定政策目的志向型の研究開発を支え、発展の基盤となるのが学術研究であり、科学技術の一層の発展を図るためにも、大学における学術研究の振興が重要である。

○ 学術研究と科学技術
(学術研究)
大学
 (科学技術)
国公立試験研究機関
特殊法人研究機関
<真理の探究>
○学問の全分野にわたる体系的発展
(人文・社会科学から自然科学まで)
○自由な発想による基礎的・独創的研究
○人材養成との一体的推進
協力・連携<新技術開発・実用化>
○主として自然科学にかかわる研究開発
○特定政策目的指向型の応用・開発研究
科学技術の発展の基盤 行政ニーズへの直結

2.学術行政と科学技術行政の現状

【文部省】
 大学を中心として、研究者の自由な発想に基づき、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる学問分野にわたる学術研究を人材養成と一体的に推進している。
 なお、研究者の意見を学術行政に適切に反映させるため、幅広い分野の研究者等で構成する学術審議会を設置し、その意見を踏まえて施策を展開している。(委員:30人以内、科学研究費補助金の配分審査等のための専門委員:約2,000人)

【科学技術庁】
 科学技術(人文科学のみにかかわるもの、大学における研究にかかわるものを除く)に関する行政の総合的推進のため、関係省庁の総合調整を行うとともに、国立試験研究機関等において特定分野の研究及び試験を実施している。

【各省庁】
 各省庁の政策目的を達成するため、国立試験研究機関等において所掌にかかわる試験研究を実施している。

【科学技術会議】
 内閣総理大臣の諮問に応え、科学技術(人文科学のみにかかわるものを除く) 一般に関する基本的かつ総合的な政策の樹立等を行っている。総理府に設置され、その事務局は、文部省と科学技術庁で共同して担当している。

○科学技術関係経費 計3兆28億円(平成9年度予算)の省庁別内訳
文部省科学技術庁通商産業省農林水産省その他
1兆2,890億円
(42.9%)

(24.5%)

(15.7%)

(3.4%)

(13.5%)

3.学術行政及び科学技術行政の在り方

(1)大学を中心とした基礎的・独創的な研究の振興
 産業経済の発展や豊かな国民生活を実現し、世界に対して我が国が積極的に貢献していくためには、学術研究を通じた知的資産の創出が重要であり、あらゆる研究の基盤となる基礎的・独創的な研究を重点的に振興していくことが不可欠である。
 このため、基礎的・独創的な研究の中核をなし、優れた研究者を豊富に擁する大学の役割が極めて大きい。

〔基礎研究費の割合の比較〕
 基礎研究応用研究開発研究
大学・大学共同利用機関54.6%36.5%8.9%
国公民営の研究機関(会社等を除く)20.4%25.0%54.6%
総務庁「科学技術研究調査報告」より作成

〔研究者数の比較(平成8年4月現在)〕(グラフ)(略)

(2)研究活動の振興と人材養成の一体的な推進
 研究活動の振興を図るためには、次世代の研究者の養成が不可欠であり、その機能を担っているのは大学である。
 大学における研究活動と研究者の養成は密接不可分の関係にある。若手研究者の育成が研究活動の中で行われることにより、双方の相乗的な効果を生んでおり、今後とも、一体的に推進していくことが必要である。

(3)学術・科学技術政策に関する総合的な企画・調整・推進体制の整備
 我が国の学術・科学技術研究を積極的に推進するためには、学術研究から各省庁の政策目的を達成するための応用・開発研究までを含む総合的な学術・科学技術政策の企画機能を強化するとともに、各省庁の施策を調整し、相互の緊密な連携協力によって効果的な施策展開を図ることがますます重要になっている。
 このような要請に応えるため、今後、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる分野にわたる総合的な学術・科学技術政策の樹立と各省庁の施策の調整を行い得る組織体制の整備を図っていく必要がある。
 なお、省庁の枠組みを見直す際、基礎研究支援事業、人材養成関係事業、情報ネットワーク整備等については、大学における学術研究を基盤としながら、一体的に推進することが考えられる。

文部省説明資料(平成9年5月21日)

大学を含めた国の研究機関全体の調整・管理の在り方及び研究機関の組織形態(統廃合、独立機関化等)についてどう考えるか。

1.国立大学と国立試験研究機関等との相違
 大学(大学の研究所を含む)における学術研究は、人文・社会・自然科学のあらゆる分野にわたる幅広い知的創造活動であって、研究者の自由な発想を源泉として進めることにより十分な成果が期待されるものである。
 また、大学における研究と教育は、学問の創造と伝承という密接不可分の関係にあるため、大学院、学部、研究所において有機的連携を保ちながら行われており、今後とも一体として行われるべきものである。
 一方、国立試験研究機関等において行われる試験研究等は、各省庁の特定政策目的を達成するためのものである。
 このように、国立大学と国立試験研究機関等とは、基本的にその研究の目的・性格を異にするものであるため、一般的には、これらを直ちに統合することは困難である。

2.国の研究機関全体の調整の在り方

(1)しかしながら、近年、基礎研究重視の潮流の中で、特定政策目的の達成に役割を果たす国立試験研究機関等において、大学と類似した研究活動が行われたり、多くの大学の研究者の協力を得て大規模な研究事業が行われる例もみられる。このため、次のような課題が生じている。
 1)国立試験研究機関等の役割・位置付けや大学における研究との関連についての再検討
 2)国立試験研究機関等における上記のような大規模な研究事業と学術政策との調整

(2)政府全体として推進すべき重要な研究開発課題については、学術研究の観点から国立大学が、また、特定政策目的の観点から国立試験研究機関等が、それぞれ果たすべき役割を踏まえ、例えば宇宙開発研究や核融合研究の場合のように、政府全体としての総合的な企画・調整体制の下、研究開発が進められるよう、関係省庁間の連絡・調整を一層推進することが必要である。
 さらに、国の研究機関における研究活動のうち、基礎研究の部分については、大学における学術研究を基盤としながら、研究者交流、研究施設設備の利用等の面において、関係研究機関が一層連携・協力できるような体制を整備することが必要である。

3.大学の研究所の組織形態の在り方
 大学の研究所の独立機関化については、独立機関がいかなる組織であるか整理がなされていないため現時点での回答は困難である。
 大学の研究所の組織形態に関しては、大学における研究と教育は一体不可分であることから、大学の組織形態と一体として検討する必要がある。

文部省説明資料(平成9年5月21日)

義務教育関係、私学行政関係等の大幅な権限委譲を進め、地方に主体性を持たせるとともに、教育委員会制度を見直すべきとの考え方についてどう考えるか。

1.現行の制度

(1)学校教育とりわけ義務教育は、地域において行われる必要があり、地方が基本的な役割を負うものであると同時に、次代の我が国を支える国民を育成する教育であり、国の存立にかかわる国家としての重要な機能のひとつである。
 したがって、国と地方が適切に役割を分担しつつ一体となってこれを実施していくことが肝要であり、現行制度もこのような考え方に基づいて構成されている。

(2)すなわち、国は、憲法26条に定める国民のひとしく教育を受ける権利を実質的に保障するため、全国的に一定の教育水準を確保する観点から、1)学校制度など基本的な枠組みの整備、2)教育課程の大綱的な基準や教員の資格など必要な基準の設定、3)教員給与や施設など基本的な教育条件の整備のための財政的措置などを行い、地方公共団体は、公立小・中学校等を設置・管理し、義務教育の直接の実施主体となっている。
 このような国と地方の役割分担の考え方については、私学分野においても同様であり、国は、私学行政に関する基本的枠組みの整備を行い、地方公共団体は、私立小・中・高等学校等の所轄庁として直接指導・助言に当たっている。

(3)また、教育委員会については、教育行政の中立性と安定性を確保し、教育行政の基本的方針の決定が幅広く住民の意向を反映して行えるよう、地方公共団体の長から独立した、合議制の行政委員会として設置されているところである。

義務教育における国・都道府県・市町村の関係
 教 職 員建  物教 育 課 程
・給与費の1/2を国庫負担・1/2又は1/3を負担ないし補助・大綱的な基準としての学習指導要領の設定
・都道府県への指導・助言
都道府県・給与費を負担
・任命権を持つ
 ・都道府県内における教育課程の基本的基準の設定
・市町村への指導・助言
市町村・教職員は市町村の職員
・服務監督権を持つ
・建設費を負担・学校への指導・助言(教育課程の編成は各学校で行う)

2.今後の方向

(1)子どもたちの様々な能力や個性を引き出し、多様な人材を育成するためには、今後、学校や地方公共団体の裁量の幅を一層拡大する方向で施策を推進する必要があると認識しており、現在、教育課程の基準の弾力化などについて検討している。

教育課程の基準の変遷
 主たるポイント主 な 内 容
昭和30年代・系統的な学習の重視・基礎学力の充実
・道徳教育の徹底
昭和40年代・教育内容の現代化・算数、数学、理科を中心に学問分野の進展に対応して内容を現代化
昭和50年代・ゆとりのある充実した教育・標準授業時数の削減
・教育内容の精選
現 行・個性重視の教育・生活科の新設
・中・高校の選択履修の幅の拡大
今後の方向・生きる力の育成・教育内容の厳選
・中・高等学校における選択学習の幅の一層の拡大
・「総合的な学習の時間」 の設定

(2)また、教育行政制度についても、時代や社会の変化・進展に対応し、住民の多様なニーズに応じた行政が展開できるシステムとするため、見直しを行う必要があると考えている。このため、文部省においては、教育委員会を中核とする現行地方教育行政制度に関し、
 1)主体的な教育行政を促進する観点からの国、都道府県、市町村の関係の在り方の見直し
 2)学校の主体性を高める観点からの教育委員会と学校との関係の在り方の見直し
 3)教育長の任命承認の廃止、教育長に適材を確保するための方策
 4)教育行政に地域住民の意向を反映するための方策
などについて、今年度中を目途に成案を得るべく、検討を行っているところである。

○ 文教行政における国と地方公共団体の関係(図)(略)

文部省説明資料(平成9年5月21日)

文化庁を外局として存在させる意義は何か。

1.文化庁が外局として設置された経緯

(1)文化庁は、昭和43年、文化局と文化財保護委員会とを統合して、新たに文部省の外局として設置された。

(2)これは、文化局所掌の芸術文化行政と、文化財保護委員会所掌の文化財保護行政とを一体化し、文化行政を総合的な形で調和的・効果的に推進しようとしたものであり、このことにより我が国に古くから伝えられた文化を継承し発展させつつ、その基盤の上に立つ新しい文化の振興を図る体制を整えたのである。

(3)このように、文化庁は、文化局と文化財保護委員会がそれぞれ所掌していた企画・立案機能の統合により、文化という一定規模のまとまりを持った行政分野を所掌することとなったことから、文化政策の総合的な企画・立案を行う組織として文部省の外局という形で設置されたものである。
 したがって、文化庁は、いわば諸外国の文化省に相当するものであり、文化庁が存在することにより、我が国の文化行政の推進体制が名実ともに明確になり、諸外国の文化省や、国内外の文化団体との交流・協力が円滑に行われてきている。

(文化省を設置している国)(例)
○英国      国民文化財省
○フランス    文化省
○イタリア 文化財省
○韓国    文化体育部
○カナダ    文化遺産省
○スウェーデン 文化省

2.文化行政と国の役割

(1)文化は、それ自体が価値を有するとともに、経済の発展や社会の活性化に寄与するものである。また、文化の交流は国際社会における相互理解の促進にも大きく寄与する。
 このように、文化は公共的性格を有するものであることから、文化庁は、長期的展望に立って我が国の文化の振興を図るため、総合的な政策の企画・立案を行い、文化の基盤整備を進めている。

(2)文化行政のねらいは、国民の自発的な文化活動の促進を図るとともに、国民が文化を享受し得るための条件を整備することを基本としつつ、市場経済原理や民間・個人の活動が及びにくいところを支援することによって、全体として文化の振興を図っていくことである。
 このような方向に沿って、文化庁は地方公共団体、民間との連携・役割分担を図りながら文化行政を推進している。
また、文化の振興は広範かつ多岐にわたる行政分野にかかわるようになってきていることから、これらの行政分野全体を視野に入れつつ、文化立国を目指した総合的な文化政策を推進していくことが必要である。

(文化庁の施策)

1)文化の基盤の整備
○ 文化振興のための施策の企画・立案
○ 著作権制度の整備
○ 国語施策の推進
○ 宗教法人制度の整備
○ 文化財保護制度の整備
○ 文化に関する税制の整備
2)我が国の芸術水準の頂点を高めるための支援
○ 創造性の高い芸術創造活動への支援
○ 芸術家等の人材育成・顕彰
3)民間や個人では維持しがたい分野への支援
○ 伝統文化の保存・活用
○ 現代芸術の振興
○ 若手芸術家の育成
4)地方公共団体・民間との連携・協力の推進
○ 民間芸術団体の支援
○ メセナ活動の振興
○ 地域文化活動の振興への協力
5)国民全体の財産である文化的資産の保存・管理・活用
○ 文化財保護施策の推進
○ 国立博物館・美術館の整備充実
6)文化の国際交流・協力
○ 芸術文化の国際交流
○ 文化財保護の国際協力

文部省説明資料(平成9年5月21日)

博物館、青少年教育施設等の施設等機関の独立機関化又は地方移管についてどう考えるか。

● 国立博物館・美術館について

1.国立博物館・美術館の役割

(1)国立博物館・美術館は、極めて価値の高い文化財や美術品を計画的・体系的に収集・保管し、国民に広く鑑賞機会を提供している。
 これらの文化財や美術品は、我が国のトップクラスの貴重な国民共通の財産であり、この保存や修復等のため、高度で専門的な調査研究を実施している。

(2)国立博物館・美術館は、我が国の博物館・美術館全体のセンターとして地方の博物館・美術館に対する指導的な役割を果たすとともに、ネットワーク形成の中核的機能を果たしている。
例えば、次のようなことから公私立博物館に対する支援を実施
○所蔵する文化財・美術品の貸出や地方巡回展の実施
○公私立博物館・美術館の連携・協力の促進
○公私立博物館・美術館の学芸員を対象とする研修の実施

(3)国際化の進展する今日、国立博物館・美術館は、我が国の文化面での「顔」としての役割を果たしており、また、これまでの実績に基づいた国際的な信頼の下に、文化財や美術品を介した国際交流の拠点となっている。

(4)このような国立博物館・美術館の役割の基幹部分は、国際的に見ても国の責務とされている。

2.国立博物館・美術館の独立機関化、地方移管について

(1)国立博物館・美術館は、次のような点において、従来から組織運営の効率化やサービスの質の向上等に努めるとともに、国民のニーズや社会の変化に対応してきている。
○施設管理業務について民間委託を可能な限り実施。
○他の博物館・美術館との連携・協力による展覧会の開催。
○国立博物館・美術館として、国際的に見ても少ない職員数で効率的な運営を実施。
○児童生徒を対象とする美術鑑賞教室の開催、無料観覧日の実施、夜間開館の導入等。
○長年の信頼に基づいた寄贈・寄託制度の活用。
○運営全般について外部の意見が反映される評議員会の設置。

(2)国立博物館・美術館の独立機関化については、独立機関がいかなる組織であるか整理がなされていないため現時点での回答は困難である。
 なお、仮に各博物館・美術館が国から独立した組織として独立採算により運営を行うとするのであれば、次の理由から賛同しがたい。

 1)国立博物館・美術館は、文化財や美術品に関する調査研究、保存・修復技術の向上、学芸員等の人材養成等、国の文化政策上重要な機能を担っており、このような機能を十分に果たすためには、文化政策の企画・立案と一体となった運営が不可欠である。

 2)国立博物館・美術館の事業は、文化財や美術品の収集・保存・公開、調査研究等の地道かつ基礎的な内容が大部分であり、採算性が極めて低く、国による相当の財政措置が不可欠である。

 3)国立博物館・美術館は、国民共通の財産である優れた文化財や美術品を鑑賞する機会を広く国民に提供する役割を負っていることから、観覧料金を相当のものにとどめておく必要がある。

 4)英国をはじめとする諸外国においても、国立博物館・美術館の運営費の大部分は、国から支出されている。

(3)国立博物館・美術館の地方移管については、各博物館・美術館のいずれもがナショナルセンターとして、調査研究、保存・修復等様々な機能を担うものであり、一つの地方公共団体のみによって運営することは適切ではない。
 また、地方移管が運営面での改善に直ちにつながるかどうかについても疑問である。

● 国立青少年教育施設について

1.国立青少年教育施設の役割

(1)青少年の健全な育成を図るためには、学校における教育とともに、学校外で様々な体験を豊富に積み重ねることが大切である。とりわけ、人間関係の希薄化や社会参加活動の経験の不足が指摘される現代の青少年に対し、豊かな自然の中での集団宿泊訓練を通じて、多様な生活体験、交流体験、野外活動体験などの機会を増やしていくことが必要である。
 青年の家、少年自然の家等の青少年教育施設は、団体宿泊訓練によるグループ活動の促進や自然の中における集団的な生活・活動の体験の提供を行う教育機関として、青少年教育の振興に重要な役割を果たしている。

(2)国立青少年教育施設(国立青年の家:13施設、国立少年自然の家:14施設)は、青少年を取り巻く社会環境の変化に対応した青少年教育の充実のため 次のような役割を担っている。

 1)実践的・先導的プログラムの開発やモデル事業の実施により、地域に密着した公立の青少年教育施設や青少年団体等にその成果を普及し、指導的な役割を果たしている。

 2)公立の青少年教育施設(青年の家:411施設、少年自然の家:294施設)間の連携・交流のセンターとしての役割を果たしている。

 3)青少年の活動が学習活動・ボランティア活動・スポーツ活動・文化活動・国際交流活動など多様な広がりを持つ中で、全国的規模の指導者の養成や地域の青少年団体活動の振興に資する指導者の研修を行っている。

2.国立青少年教育施設の独立機関化、地方移管について

(1)国立青少年教育施設の独立機関化については、独立機関がいかなる組織であるか、整理がなされていないため現時点での回答は困難である。
 なお、仮に各施設が国から独立した組織として独立採算により運営を行うとするのであれば、次の理由から賛同しがたい。

 1)国立青少年教育施設は、青少年の発達段階に即して、その時々の教育課題に応じた先導的プログラムを開発し、その成果を普及させるとともに、公立青少年教育施設間の連携・調整を行うなど、国の青少年教育施策を進める上で重要な役割を果たしている。このような役割を十分に果たすためには国の青少年教育施策と一体となった運営を行うことが必要である。

 2)国立青少年教育施設がこのような役割を果たすために必要となる経費は政策的な経費として国の責任において財政措置を行う必要があり、独立採算にはなじまない。

(2)国立青少年教育施設の地方移管については、青少年教育振興に果たす国の役割と責任を踏まえつつ、地方との役割分担の観点から、仮に地方からの要請があれば、個々の施設ごとに検討してみたい。

文部省説明資料(平成9年5月21日)

生涯学習やスポーツについて、基本的に地方と民間に任せ、国の役割を縮小させることについてどう考えるか。

● 生涯学習について

1.生涯学習社会の実現に向けて

(1)生涯学習社会の実現は、「個性重視の原則」、「国際化、情報化などの変化への対応」と並び、臨時教育審議会(昭和59〜62年)で打ち出された教育改革の3つの基本理念の1つ。
 文部省は、昭和63年に生涯学習局を設置し、平成2年に制定したいわゆる「生涯学習振興法」や同法による生涯学習審議会の答申等に基づき、生涯学習社会の実現に向けた基盤整備に努めている。

(2)「生涯学習」という言葉は、我が国社会に定着しつつあり、地方や民間において様々な学習活動が活発になってきているものの、生涯学習社会の実現に向けた取組は、まだ緒に就いたばかりである。
技術革新の進展、産業構造や雇用環境等の急激な変化に対応し、今後の我が国産業社会の発展を支える人材を供給するため、社会人が新たな知識・技術を習得し、不断にキャリアを向上させる再教育機会を充実することがますます重要となってきている。
また、多様な学習機会の充実は、個人の生きがいや社会の活性化に大きく寄与するとともに、高齢社会への対応や男女共同参画社会の形成のためにも必要となっている。

(3)このような社会的要請に応え、施策を積極的に展開していくことは、社会システムの基盤である人材育成政策として、また、人々の生きがいづくりのための政策として、極めて重要度の高い行政課題である。
 特に、全国的な観点に立って学習基盤を整備し、地方や民間の活動を促していくことは、国に課せられた重大な責務であり、今後国の役割は一層増大するものと考えている。

☆生涯学習社会とは、
『人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される』ような社会(平成4年7月生涯学習審議会答申)

<背景と必要性>

1)学歴社会の弊害の是正
偏差値教育の問題など学歴社会の弊害の是正は、現在進められている教育改革の最重要課題。学歴だけではなく、様々な「学習の成果」(実力)がきちんと評価される社会を築いていくことが必要。

2)社会・経済の変化へ対応するための学習の必要性
情報化、国際化、産業構造の変化等に伴い、社会人は絶えず新しい知識や技術の習得を迫られている。これらの学習基盤を整備することは、学習者自身のキャリア向上のみならず、社会システムの基盤である人材の育成政策として、社会・経済の発展に寄与。

3)社会の成熟化に伴う学習需要
自由時間の増大、高齢化等社会の成熟化に伴い、心の豊かさや生きがいのための学習需要が増大。これに応えて、学習基盤を整備することは、学習者の自己実現のみならず、地域社会の活性化、高齢者の社会参加など、社会全体にとって有意義。

2.生涯学習施策に関する国の役割

 生涯学習の振興に関しては、公民館や図書館など学習施設の整備や学習機会の提供は地方公共団体の責任において行われており、民間においても専修学校やカルチャーセンターなどの民間教育事業者・団体が大きな役割を果たしている。
 こうした地方や民間の基本的な役割を踏まえつつ、文部省としては、生涯学習に関する制度の整備、地方や民間では実施困難な全国的規模の学習基盤の整備、及び地方や民間の取組への支援を中心として、次のような役割を果たしている。

(1)生涯学習に関する制度の整備
 地方や民間が主体的に学習機会の提供等を実施することを基本としつつ、全国的な観点に立った学習基盤を整備するため、生涯学習に関する行政組織等の推進体制、学習成果の評価や学習施設・専門的指導者に関する制度の整備を図っていくことが必要である。

(2)地方や民間では実施困難な全国的規模の学習基盤の整備
 全国的規模・観点から効果的に実施すべき学習基盤の整備として、生涯学習振興のための中核的機関である放送大学の全国化の推進、拠点施設の設置運営、高等教育機関の生涯学習機能の充実等に資する施策を実施していくことが必要である。

(3)地方や民間の支援
 全国的モデルとなる学習事業など各地の先導的取組への支援、活動事例の収集・提供、全国的な集会の開催、民間団体への援助、教育行政と民間教育事業者との連携の推進、指導者・リーダーの養成・研修等を通じ、地方や民間の多様な取組を支援していくことが必要である。

(生涯学習の振興に関する国の施策)

1 生涯学習に関する制度の整備
1)生涯学習振興法による国や地方の生涯学習推進体制の整備
2)学習成果の評価に関する制度の整備
 ・学校外の学習成果の大学等における単位認定の促進
 ・入試・採用等における評価システム改善の促進
 ・多様な評価の仕組みの開発
3)学習施設や専門的指導者に関する制度等の整備
 ・公民館、図書館、博物館等の学習施設に関する制度の整備
 ・専門的指導者(社会教育主事、司書、学芸員)に関する制度の整備
2 地方や民間では実施困難な全国的規模の学習基盤の整備
1)生涯学習振興のための中核的機関である放送大学の全国化の推進
2)国レベルの拠点施設(国立科学博物館、国立オリンピック記念青少年総合センター、国立青少年教育施設、国立婦人教育会館)の設置運営
3)高等教育機関の生涯学習機能の充実
 ・大学等におけるリカレント教育の支援・促進
 ・専修学校等の振興
4)国レベルの情報提供システムの整備
3 地方や民間の支援
1)各地の先導的取組の支援・普及
 ・全国的モデルとなる先導的な学習事業への支援(cf. 青少年の体験活動、ボランティア活動、高齢者や女性の社会参加)
 ・学習施設の機能高度化への支援(cf. 施設間広域連携、CS利用、マルチメディア化)
 ・各地の活動事例の収集・提供、全国的な集会の開催
 ・専門的指導者の養成・研修
2)民間教育活動の振興
 ・生涯学習関係団体の活動への援助
 ・民間リーダーの養成・研修
 ・教育行政と民間教育事業者・団体との連携の推進

● スポーツについて

1 スポーツ振興の推進
 スポーツは、人々の心身の健全な発達に資するとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に寄与し、さらには諸国民の相互交流を促進するものである。国としては、学校体育・スポーツ、競技スポーツ、生涯スポーツにそれぞれの側面から、積極的にスポーツの振興を推進する必要がある。

2 スポーツに関する国と地方・民間との関係

(1)学校における体育・スポーツについては、地方及び各学校が主体的に教育を実施することを基本としつつ、全国的観点から、児童生徒の発達段階や特性に応じた教育が適切に実施されるよう確保されることが必要である。
 国としては、教育課程の大綱的な基準を定めるとともに、体育施設の整備や指導者の養成・確保等のための条件整備に関する支援を図る必要がある。

(2)競技スポーツの振興については、世界的競技水準の動向を踏まえつつ、全国的視野から、競技力向上の施策に取り組む必要がある。
 このため、国としては、ナショナルレベルでの大規模なトレーニングセンターの施設整備、競技力向上のための全国規模のシステムの構築、競技団体等を通じた選手活動への支援等を中心に行っていく必要がある。

(3)生涯スポーツの振興については、国民それぞれの体力、年齢、目的に応じ、身近にスポーツに親しむ環境の整備を行うことが重要であり、国民のスポーツニーズに的確に対応しうる地方や民間スポーツ団体による各種取組が行われている。こうした地方や民間の基本的な役割を踏まえ、国としては、全国的な観点に立って、スポーツ施設の整備、指導者の養成・確保、スポーツ団体の育成、先導的な事業の実施等の基盤整備を行いつつ、地方や民間の活動を支援・促進し、生涯スポーツの一層の推進を図る必要がある。

(スポーツの振興に関する国の施策)
1)学校における体育・スポーツの充実
2)競技スポーツの振興  
3)生涯スポーツの振興  

文部省説明資料(平成9年5月21日)

国際文化・スポーツ交流について、我が国として一元的な実施を図るための組織の在り方についてどう考えるか。

1.国際文化・スポーツ交流の現状

(1)文部省は文化・スポーツの振興の観点から、外務省は外交の観点から、国際文化・スポーツ交流に関する行政を行ってきた。

(2)本来、文化やスポーツは国際性を有するものであるが、近年の国際化の急速な進展の中で、現実に文化・スポーツ活動が国内外を問わない広がりの中で展開されるようになり、関係者の国際的連携も深まっている。

2.国際文化・スポーツ交流に関する行政課題

(1)このような国際化時代にあっては、文化・スポーツの国際交流と国内施策は切り離せないものとなり、次のような国内外一体の政策が求められている。
 1)我が国の伝統を大切にしつつ国際的視野に立った優れた文化を創造し、発信・交流する文化立国を目指した総合的文化政策
 2)我が国のスポーツの水準向上を図りつつ世界のスポーツ界に貢献する総合的スポーツ政策

(2)また、国際交流を文化・スポーツの振興や相互理解・友好親善等の面で価値あるものとするためには、文化・スポーツに関する専門的知識を生かして、交流施策の質的充実を図ることが重要である。

3.今後の国際文化・スポーツ交流に関する行政組織の在り方

(1)上記の課題を効率的・効果的に達成するには、文化・スポーツ団体と密接な関係を有し専門性を備えた行政組織が、国際交流と国内の基盤整備を車の両輪のようにした総合的文化・スポーツ政策を一元的に推進する必要がある。

(2)これにより、国際的視野を持った文化・スポーツの振興が図られ、深いレベルでの相互理解や友好親善が増進されるとともに、事務の重複を防いで行政の簡素化・効率化に資することができる。