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行政改革会議第25回議事概要

(集中審議第2日)

1 日時 平成9年8月19日(火) 10:00〜17:00
2 場所 キャピトル東急ホテル 竹の間
3 出席者
(会議)
橋本龍太郎内閣総理大臣(会長)、武藤嘉文行政改革担当大臣・総務庁長官(会長代理)、芦田甚之助、有馬朗人、飯田庸太郎、猪口邦子、河合隼雄、川口幹夫、佐藤幸治、塩野谷祐一、豊田章一郎、藤田宙靖、水野清、諸井虔、渡辺恒雄の各委員
(説明者)
(資金運用審議会懇談会)本間正明座長代理
(行政改革委員会)田中直毅官民活動分担小委員会小委員長、奥野正寛同参与
(政府)
与謝野内閣官房副長官、古川内閣官房副長官、田波内閣内政審議室長
(事務局)
水野事務局長(再掲)、八木事務局次長
4 議題
(1) 資金運用審議会懇談会座長談話について(説明聴取)
(2) 行政改革委員会官民活動分担小委員会の中間取りまとめについて(説明聴取)
(3) 省庁の再編について(討議)
5 会議経過

(1) 資金運用審議会懇談会の本間正明座長代理より、資金運用審議会懇談会座長談話について説明があり、これを受けて意見交換が行われた。

・財投債と国債との実態的な違いは何か、また、財投機関債を発行するとしても市場で消化できるのかとの質問があった。これに対し、本間座長代理から、1)国債は使途が限定されていない一般的な歳出に充てられるが、財投債は財投機関への資金供給に限定されているなど性格に違いがある。2)また、財投機関債が導入された場合の市場性については、政府がどのような形で関与(政府保証、利子補給等)をするのか、将来財投機関をどうするかといった政府の態度が、特に移行期においては市場に大きな影響を与えるので、政府が態度を明らかにしていかなければ市場は混乱するのではないかとの回答があった。

・郵便貯金の資金運用部への義務預託についてはどのように考えているのかとの質問があった。これに対し、本間座長代理から、委員の間で意見は集約されていないが、郵便貯金が資金を際限なく財投に注ぎ込んでいるから財投機関が過大融資をしてしまうとする意見と、それについては必ずしも因果関係が明らかではないとする意見とに分かれている。また、郵便貯金の財投への影響は、今後のルール設定の在り方で変化するし、すべて自主運用できるかという問題もある。さらに、公的金融が民間とは別に必要との判断はあり得る。いずれにしても自主運用を前提に財投(機関)債を購入するといった道もあり得るので、利害得失を明らかにして将来を見据えて結論を得たいとの回答があった。

関連して、資金運用審議会懇談会の結論はいつ出すのかとの質問に対し、本間座長代理より、行革会議の審議の推移を見ながら夏休み明け以降早急に作業していきたいとの回答があったところ、重ねて委員より、行革会議より資金運用審議会の方がこの問題に対しては専門であり、純粋に財投の問題として議論して早く結論を出してもらいたいと考えるとの発言があった。これに対し、本間座長代理より、行革会議や自民党行革本部があるので懇談会としてどこまで踏み込んでよいのか判断が難しい問題もあり、それぞれのホームグランドを整理してもらえると有り難いとの発言があった。

・厚生大臣は年金の資金運用部への預託をやめていくと明言しているが、どうして郵便貯金はそのようにしないのか、懇談会においてそのような議論はしないのかとの質問があった。これに対し、本間座長代理より、懇談会委員の間においては、郵便貯金についても年金と同様にしたほうがよいとの合意があると認識しているとの回答があった。

・財投の融資先には、国鉄清算事業団など不良債権化しているものもあると思うが、償還可能性について精査しているのか。年金、郵便貯金が自主運用するとしたら、入口から資金が入ってこないので債券を発行して対処する考え方か。あるいは出口の資金規模が小さくなるので入口も絞って最小化しようというのかとの質問があった。これに対し、本間座長代理より、不良債権の状況については踏み込んだ検討はしていないが、ストックとフローの問題は区別する必要がある。なし崩し的にずるずると財投から支出する状況は要検討であり、フローについて、政府の失敗があったとすれば今後繰り返さないような仕組みづくりが必要であるとの回答があった。

・国家が関与しなければならない領域があること、入口では預託をやめること、出口では債券発行により財投機関が自ら資金を調達することは理解する。残る中間については行革との関連でいまだ議論が足りず、金融が財政のバッファーとなっているという指摘もある。資金運用部の在り方が問題であり、将来中間部門は消えていくのではないかとの質問があった。これに対し、本間座長代理より、市場の失敗があるために財投があるという基本線にかんがみると、機関形態は別にして、公的資金供給の必要が無くなるというわけではないので、出口を止めてしまうということはできない。縮小するとしても、移行期の在り方については検討を要し、究極の姿と移行期の姿をしっかりと見据えて改革することが必要である。公的金融の分野で政府が能動的に関与できる部分を残しておいた方が良いとの指摘があった。

(2) 行政改革委員会官民活動分担小委員会の田中直毅小委員長及び奥野正寛参与より、行政改革委員会官民活動分担小委員会の中間取りまとめについて説明があり、これを受けて次のとおり意見交換が行われた。

・特殊法人を第三者機関で評価することには賛成だが、特殊法人の態様は様々であり、どのような形で評価するのかとの質問があった。これに対し、奥野参与より、総務庁の行政監察に評価の例があり、まずそのやり方が考えられる。評価機関としては行政監察局、行革委員会、国会などが考えられるが、重要なことは、客観的評価を出させることであるとの指摘があった。また、田中小委員長より、Plan-Do-See-Checkという流れの中で連鎖が必要であって、自己審査、さらに第三者の評価により特殊法人の活動が国民にもより明らかになるのではないか。科学のように専門的なものを第三者が評価するのは難しいとしても、手順どおり行われているかどうかのチェックは可能であり、政府の法人に緊張と自己改善のモチベーションをもたらすことになるとの指摘があった。

・行革委員会の中間報告は論理的には素晴らしいが、この理論を具体的に当てはめる予定はあるのかとの質問があった。これに対し、田中小委員長より、具体的に特定のものをやることは難しいが、例えば事業性、競争性、可測性があれば、基本的には民営化という結果がでる。行革会議においてチェックする場合にも、その手順としてこの取りまとめをお使いいただければ有り難いとの回答があった。

(3) 藤田委員(主査)から提出された「集中審議の論点整理」(別紙3参照)に従い、各委員で意見が分かれている論点につき順次議論をしていくこととなり、まず、財政と金融につき、渡辺委員、水野委員、芦田委員より、意見開陳があり、これを受けて以下のとおり意見交換があった。

・大蔵省のヒアリングの際の財政と金融の一体性を確保することが必要とする論拠は、G7の出席者の問題と通貨制度の所管省庁であるということだけであり、分離の考え方に対するきちんとした反論となっていない。マクロの金融政策とミクロのそれとは区別して考える必要があり、マクロの金融政策は日本銀行が行うものである。他方、米国、英国、ドイツを見ても、日本のように大蔵省がミクロの金融行政を行っているところはなく、ミクロの金融行政を大蔵省が持たなければならない理由について何も説明されていないとの意見があった。関連して、G7の蔵相・中央銀行総裁会議は、経済問題全般を議論し、為替レートの協調を求める場であって、ミクロの金融政策の問題を議論するところではない。米国が日本に圧力をかけ、これを受けて大蔵省が日銀に圧力をかけ、財政が金融を支配したことがバブルの原因ともなったとの発言があった。これに対し、G7は、米国の恣意的な運営で議論が決まるものではなく、むしろドイツ連銀とその他の国の論争という展開になることが多い。為替を安定させるために、それぞれの国が財政政策・金融政策を抱えて出席するというのが実態であるという指摘があった。

・大蔵省が通貨の基本制度を所管するといっても、その根拠法である法律は、通貨の単位は円とする、貨幣は日本銀行券とするといった程度の法律であり、通貨制度を所管するということが、金融を支配する理由にはならない。また、金融の占める比重が次第に大きくなり、金融が財政から離れてきたというのが歴史の流れであるという発言があった。

・藤田委員の案では、産業を所管する経済省が金融を所管することとなっているが、経済は企業、家計、外国、政府の4者から成るのであり、産業をいくらまとめても産業構造になるだけで「経済」にはならない。金融は、経済のプレーヤーが活動しやすいルールを設定するというインフラを用意しているものであり、金融を産業所管省が所管することには反対であり、金融監督庁に金融制度の企画機能を移管し、財政と分離することで一体化の弊害を除くべきであるとの意見があった。これに対し、金融監督庁を作る際に多少拙速であり、出先機関として財務局を使わざるをえないなど無理があったが、財務局を金融監督庁の出先機関とすることで同庁をしっかりしたものにすれば、為替と通貨の管理は大蔵省に残してよいのではないか、その時も国際金融局と金融局を一つの局にすべきではないかとの意見があった。また、金融監督庁の業務を決めるときに、各省庁の権限を整理する時間がなかったために、農林系統や労働金庫など各種の金融機関に対する各省の監督権限を残してしまい、政省令の多くが関係省との共同政省令となったので、共同政省令をできる限り金融監督庁に移して、他に気兼ねなく監督検査できるようにすべきであるとの意見があった。

・金融と財政について委員間には分離論と一体論があるが、日銀法の改正と金融監督庁の設置により金融に関する権限の多くが既に大蔵省から他に移管され又は移管されることになっているので、議論を整理するためには、今大蔵省に残っているものは何で、このうちどれを外すのかという議論をするのが建設的であるとの提案があった。これに関連して、財政と金融の一体か分離かというと大変な議論をしているような感を持たれるが、誰もメキシコやタイの通貨危機と大蔵省が全く関係ないとはいってないなど議論は整理されてきているので、うまく仕分して議論をすべきであるという提案があった。これを受けて、藤田委員から事務局に対し、大蔵省に残っている金融関係の事務に関する資料を提出するよう指示があった。

(4) 金融監督庁設立と日銀法改正によって大蔵省の所掌が具体的にどのように変わったのかについて休憩時間中に用意した資料に基づき事務局より説明があり、引き続き以下のとおり意見交換があった。

・金融監督庁の設立と日銀法の改正によって、大蔵省には設置法4条87号の「金融制度の調査、企画及び立案をすること」が残ったが、その中身が詳らかでなく、大蔵省に聞いてもその具体的な内容が不明確である。例えば銀行が投資信託を扱えるようになった際、大蔵省からは業務内容に関する細かな指針が出されたとの話も聞く。このように、同条を盾に大蔵省が金融業界の守り神のように睨みを利かすということではいけないのであり、大蔵省に残された企画立案機能はこの際分離すべきではないか。その手法については、例えば、金融監督庁を国家公安委員会のような行政委員会に改組し、ビッグバンに備えて割賦販売、先物取引、電子マネー決済等も視野に入れた金融サービス法を企画・立案するようにしてはどうか、との意見があった。これに対して、1)金融監督庁設立のポイントは金融行政における企画・立案と検査・監督の分離にあり、同庁はあらかじめ法令等によって決められたルールに基づき検査・監督をすることが予定されているのであって、今回仮に企画・立案機能をも金融監督庁に担わせるのであれば、議論が振り出しに戻ることになり、疑問がある。2)大蔵省の不祥事、不透明な行政、慢心は反省すべきだが、そのことと財政・金融の分離とは別問題である。なお、金融監督業務の重要性にかんがみ同庁は内閣府に置くべきであるとの意見があった。

関連して、金融監督庁の設立の経緯に関し、金融監督庁は住専処理問題が発端であり、当初、大蔵省に検査と監督が同居しているのはおかしいということで両者の分離を目指したが、その後与党3党の合意が形成される中で、検査・監督が企画と同居しているために検査が不十分になっており、従って、検査と監督とは同居させ、これらと企画・立案とを分離すべしということになった。同時に日本銀行の独立性についても議論が行なわれ、日銀法改正となった。かかる経緯に照らせば、今回企画・立案と検査・監督を一体化すると、当時の3党合意は何だったのかということになりかねないとの説明があった。

・3条委員会は形骸化しているケースもあり機能していない、金融監督庁に立派な長官がいれば、委員会方式を採る必要はない。企画・立案機能は大蔵省に残してよいのであって、むしろ、直ちに取り組むべき課題は、金融検査庁設立の際に各省に積み残した権限を然るべく統合することではないかとの意見があった。これに対し、実態として大蔵省内の銀行局の地位は主計局に比べて相対的に低く、主計局が金融にまで関与しており、住専処理を財政出動で解決した上、さらに2次処理も同じことをしようとしていることはおかしいとの意見があった。さらにこれに対して、大蔵省の行政の透明性を高めるのは自助努力でできる部分も有る。現在2001年のビッグバンを前に省内で議論をしているので、その辺を見極めるチャンスを与えるべきではないか。金融監督庁を作ったのに朝令暮改は良くないとの意見があった。

・企画・立案の中身は何か大きなものがあるように思われているが、通貨と為替の安定の機能を大蔵省に残すことは合意があり、それを除けば、それほど大きなものはないので、現在の金融関係の局は、国際金融局も含めて1つの局で足りるのではないか。いずれにしても、金融監督庁の設立の際の詰めはやや拙速であり、金融の検査・監督に労働省、農水省、通産省などが共管で関与する現状は改めて、理想とする検査・監督の一元化ができるような議論をしたいとの意見があった。

・金融検査・監督の一元化の話は、省庁再編の議論の中でまた変わるので、再編の議論を踏まえてもう一度戻ればよいのではないか、との意見があった。

・藤田委員(主査)より、座長試案の背景となる考え方につき、次のとおり説明があった。

金融を大蔵省から分離する場合、本来であれば金融を担当する省があってそこに金融監督庁を附置するのが然るべきであるが、それは省の大括りに反し、また、適当な置き場所の無い外局をなんでも総理府に付置することは避けるべしとの考えに立って、金融監督庁の置き場所としては経済省が適当ではないかと考えたが、もとより座長試案はたたき台であり、拘泥するつもりはなく、金融行政と産業行政を一緒にするのはいかがなものかとの大方の委員の指摘には首肯するところもある。他方、ここで念頭にある再編後の21世紀の産業行政とは現在通産省が行なっている種の産業行政ではなく、むしろ競争政策や消費者保護政策がその中核になるものと想定しているので、現在の産業行政を基準に、それとの一体性の適否を論じるのは適当ではない点を指摘したい。

・以上の意見・やりとりを踏まえ、藤田委員が以下の取りまとめを行い、了承された。

1)財政・金融の議論は分離か統合かの二者択一の議論ではない、2)通貨と為替の安定のための管理は大蔵省の権限として残る、3)大蔵省に残っている企画・立案機能の実態は何かにつき精査の要あるが、今日は結論は出せないので継続検討とする、4)金融監督庁を附置する先についても今後議論する、5)現在関係省庁と共管となっている金融監督庁の検査・監督業務を一元化する。

(5) 社会資本整備と環境の関係について、以下のとおり意見交換が行なわれた。

・国土整備(社会資本整備)と環境を一つの省(国土環境省)に統合する案を提出したが、これでは大きな役所になり過ぎることに加え、環境は、全ての行政分野に関係する重要な問題であり、いわゆる横串がふさわしい問題であるので、国土整備と環境とは分けて、環境については、現状と同様に総理府ないし総務省の外局が良いと考えるとの意見が述べられた。また、国土環境省とは別に総合交通省を設ける考えを出しているのは、国土整備と運輸省の事務とを一緒にすると大きくなり過ぎるためであるとの説明があった。

・国土整備を一つの役所にまとめると、約10兆円の公共事業費を一人の大臣の下に置くことになる。このため、3.7兆円の公共事業費を抱える道路局を建設省から分離して、総合交通体系という観点から運輸省とまとめるのも一案ではないか。この新省の機能としては、例えば、物流コストの削減等につき検討することが期待される。いずれにしても、公共事業担当の省は徹底したアウトソーシングが必要であるとの意見があった。

・国土整備は、国土を開発する機能と治山・治水といった国土を保全する機能の二つの要素を含むので、社会資本整備を一つの省に括ることが適当かどうかは疑問である。食料は、国土保全、国土管理の機能と一体化するのが適当ではないか。また、環境は単独で独立した省とし、他省庁に分散している環境関連事務を統合して環境安全省を設け、その上で、横断的調整機能を担うことが必要ではないかとの意見があった。

(6) 生活(労働)と福祉との関係について、以下のとおり意見交換が行われた。

・6,000万人の雇用労働者の利益を守るためには、労働行政を担う独立した省が必要であり、厚生行政と一括りにすることは反対である。国際的にもILOは政労使の三者構成で公正労働基準、労働者福祉の整備・向上を目指しており、労働、雇用、労働者福祉にかかわる政策目的を実行する独立の省が必要と考える。多くの先進国において、労働行政を担う独立した省が存在するのが普通であるとの意見があった。

・労働行政を担う独立した省が必要との考えには共感するが、省庁の数の削減の中で、どこかと大括りにならざるを得ないのであれば、福祉と一緒になることは次善の案ではないか。ただし、この場合でも雇用政策は今後一層重要になるので、雇用政策を重視している姿勢が看取できる名称を当てることが必要である。この意味で、生活福祉省に代えて、生活雇用省、生活労働省等の名称が考えられるのではないか。また、生活(労働)と福祉とを一体化する際には、その前提として、厚生省、労働省の双方について業務の見直しが必要であって、例えば現在の厚生行政のうち、食品衛生や公衆衛生等、労働行政との合併の趣旨に馴染まない業務については、一体化の対象とすべきでないのではないか。また、労働行政についても、雇用、労働条件の重要性にかんがみ、雇用政策局、労働条件局に改組すべきである。こうした業務見直しは、一体化された省の中で労働行政と厚生行政の規模がおおむねバランスがとれたものとなるためにも重要であるとの意見があった。

・労働・雇用行政が重要との気持ちは理解できるが、省庁の大括りによる縦割り行政の是正がこの会議の目標である点に留意することが重要であるとの意見があった。

・藤田委員の環境安全省案では、環境安全省の果たすべき機能として、自然環境、生活環境の保全に加え、国民の身体・健康の安全まで広げて考えているが、人体への安全を議論するのであれば、犯罪防止等も考えられるのであって、こうした考え方は、一つの省の中に実際に括られ得る業務の体系を無視した考えではないか。また、水俣事件のように企業・家計から環境へ排出された物質が人体に危害を及ぼすのは実際には稀であり、また、環境への物質の放出から人体への影響までは間のある話であって、環境行政は、人体への危害が及ぶ段階でこれを防ぐというより、環境へ物質が放出される段階でその規制を行うべきものであるとの意見があった。

・医療、年金、福祉をいかに効果的に充実するかが課題であるが、日本では医療が社会保障制度の中に位置付けられているので、生活福祉省から医療を分離すると社会保障制度の根幹が崩れてしまうことになるとの意見があった。これに対し、藤田委員の案では医薬品安全や公衆衛生については環境安全省が担当することになっているが、医療そのものを生活福祉省から分離し環境安全省が担うことにはなっていないので、指摘は当たらないのではないかとの意見があった。

・憲法が保障する働く権利を保障するのが政府の役割であり、グローバリゼーションの進展に伴い競争が激化することが見込まれる中で、労働者の保護、具体的には、雇用、労働基準、セ―フティネット、女性の労働参画等の必要性、重要性にかんがみれば、労働行政を担当する単独の省が必要であり、労働行政を福祉と一体化することには反対であるとの意見が再度述べられた。

・労働省の職業安定事業は不要になっているのではないか、また、労働省は労働者派遣事業に対し規制を課して結果的に雇用を阻害しているのではないかとの意見があった。これに関連して、職安や派遣規制にウェイトのかかった現在の労働行政は変える方が良く、雇用を重視する必要性や労働安全の重要性は理解できるところであるが、例えば、労働に起因する疾病とその他の疾病とを一体で考える等、医療、福祉、年金とともに、雇用を併せて一つの組織に置く方が効率的ではないかとの意見があった。

・労働と福祉を一括りにするのは賛成だが、省の名称には「雇用」を入れた方が良い。また、一括りする際には、厚生行政のうち産業廃棄物行政を環境担当省へ移管する等や、労働行政のうち職安を通じた就職が2割を切っていることにかんがみてその民営化等について検討することが必要ではないかとの意見があった。

・以上の議論の後、藤田委員(主査)より、生活(労働)と福祉の関係については、多くの委員が統合を支持したが、一方で強い反対意見もあった旨取りまとめたいとの提案があり、了承された。

(7) 藤田委員(主査)より、科学技術と学術の関係に関し、昨日の議論で科学技術会議の機能を強化した「総合科学技術政策会議」を設置することについては大筋合意が得られているのではないかと考える、との説明の後、以下のとおり意見交換が行われた。

・科学技術を担う独立の省の設置が望ましい。さらに、独立の省が設置される場合もされない場合も、現行の科学技術会議を強化した会議を、横串として政府全体を見られる場所に置くべきであり、この会議には人文・社会科学も含める必要がある。会議の名称については、科学と技術の協力体制の重要性に鑑み、「総合科学技術政策会議」等とすることが適当であるとの意見があった。

・多数の独立研究機関についてはその機能を強化すべきとの意見が多いが、これらの統合は実際には困難であり、各省庁に密着した目的の研究は各省に任せることとし、各省庁の範囲を超える広い目的の研究について、これを「総合科学技術政策会議」の下に置くべきか、あるいは科学技術担当の省の下にまとめて置くべきかについてはなお検討が必要であるとの意見があった。

・科学技術と学術を分離するのは不適当との意見があった。これに対し、科学と技術は分離すべきであり、若人の科学への想いを育むためにも、科学そのものの振興を担う省を設けるべきではないかとの意見があった。

・21世紀に向けて考えれば、科学を担当する役所を設けることは必要ではないか。また、この省には、各省の研究機関のうち各省事務に直結したものを除き、バイオ等総合的なものを置くことを考えてよいのではないかとの意見があった。

・科学技術庁の問題は、優秀な人材を集めながら、学術・教育・文化から切り離されて、科学技術に特化してしまい、他の分野が見えていないことである。従って、科学技術、学術、教育、文化は、一つの省にまとめるのが適当である。そうすれば、異なった分野の技官の間での対話も可能となる。その上で、この省より一段高いところに、人文科学も含め各分野の代表から構成される会議を設置し、最新のテクノロジーにいかに取り組むか、その研究体制はどうあるべきか等、行政のレベルを越えた大きな目標等について大所高所からの議論をすることが必要ではないかとの意見があった。

・技術、教育、研究の関係について独、仏の例を見ると、かつては組織的に分離する方向であったが、現在では逆に統合する方向であるとの発言があった。

・技術開発については、最早外国追随型では立ち行かず、外国と対等に渡り合うためにはいかなる技術が必要かとの基本に立ち戻る必要がある。これまで科学技術会議の政策委員を10年間務めた経験に照らして言えば、華々しい成果は挙げられなかった。したがって、新しい会議体が現在の科学技術会議の延長であってはならず、新しい会議体を作ればそれで問題が解決するという安易な発想を持つべきでなく、人選を含めしっかりした取り組みが必要であるとの意見があった。

・以上の議論の後、藤田委員より、科学技術、学術、教育、文化は、一つの組織的に統合することが適当であり、また、この省とは別に、あらゆる分野の英知を結集した会議体を設け、広範かつ重要な問題につき大所高所から議論をすることが必要である、との線で取りまとめたいと提案があり、了承された。

(8) 環境行政の在り方について、以下のとおり意見交換が行なわれた。

・環境庁の産業・開発を阻害する否定的なイメージを除き、21世紀に向けて積極的に対応していくため、各省の関連する行政を統合して環境省とするのが適当ではないかとの意見があった。

・省庁の全体数を勘案すれば、環境だけで独立の省にはしにくいため、農業用水の開放を条件に、大型農道や林道、干拓を除く農林水産行政を環境行政に統合することが適当ではないか、との発言があった。これに関連して、農林系の森林、自然環境保全を統合した独立の省とすべきとの発言があった。

・水に関係する行政は、下水道、工業用水・飲料水まで含めて水源から河口まで一元化すべきであり、これを環境省に持っていくかそれ以外にもっていくかを検討するのが適当であるとの意見があった。

・酸性雨・産業廃棄物・リサイクル等の課題に積極的に対応していくための技術開発に力を注ぐ必要があるとの意見があった。

・食糧と環境を一体化する案もあるが、食糧を国土保全と一体化し、環境には、産業廃棄物・ごみ処理、地球環境などの国際的問題等をまとめるのが適当ではないかとの発言があった。

・環境を独立の省とする場合、環境事業局のような局で実施を監督していくべきであり、また気象庁や林野庁を環境省の外局とするのが適当ではないかとの発言があった。

・環境庁の発足当時は、公害撲滅を至上命題としていたがために、現在必要とされている地球的規模の環境問題への対応で環境庁の国際競争力が非常に弱い事態になっている。また、廃棄物行政はいまや環境行政と切っても切れず、これを統合して環境庁を省とするのが適当であるとの発言があった。

・国土開発と国土保全の機能を分けて理解した上で、林野や下水道を含めた水行政、河川は国土保全の機能として整理すべきではないか。また、環境立地行政の一部を移す可能性もある。その場合、環境省が原生林を所管し、水源涵養林は国土保全の機能と考えるのが適当であるとの発言があった。これに対し、下水道事業を国土保全ととらえた場合、環境省の事業内容が他省に対して弱まらないか、また、上水道はやはり衛生の観点から下水道と取扱いを分けるべきではないかとの発言があった。これに対し、確かに上水道は下水道と扱いを異にすべきであるが、環境と下水道等の国土保全を一体化するのもまた、非常に大きな機能になり、かえって焦点がぼける。いずれにせよ、強大な社会資本整備の権限を分離する意味でも国土保全の目的を特化する意味でも、国土保全と国土開発の機能を分離すべきであるとの発言があった。関連して、下水道は、市街地開発など国土開発と切り離せない側面があり、調整が必要であるとの発言があった。

・国土開発と国土保全の線引きがどこでできるのか、ダム、治山・治水等は両面を備えており、港湾については保全機能である防波堤の事業もあるのであって、事業実施の側面では開発と保全は渾然一体ではないかとの発言があった。これに対し、今後のダムの主力は大きな電源ダムより飲料水確保や洪水調整機能を持ったものであるから、河川は流域で捉えて国土保全の機能と理解すべきであり、防波堤・防潮堤には保全の機能もあるが基本的には開発の機能と整理してもよいのではないか。ただし、海面埋立てなど保全と開発のどちらで整理するのか難しいものもある。また、民間で能力があれば、開発面・保全面の両面で工事を受注するだろうとの意見があった。

・原子力安全の一次審査は原子力行政による内部チェックが必要であり、環境省は二次的審査を行うのが適当であるとの意見があった。関連して、原子力エネルギーは21世紀の地球、日本にとって重要な研究テーマであり、科学的・中立的な研究が必要だが、とかく感情的反発を招きやすいため、規制中心の省ではなく原子力政策を担当する省の所管とし、原子力安全はダブルチェックするという現行の体制を維持すべきであるとの発言があった。

・大型プロジェクトは、環境大臣が承認しないと実施できないくらいにしないと、社会資本整備が暴走する危険性があるとの発言があった。

・公衆衛生、医薬品安全等は環境行政にはなじまないという意見があった。

(9) 国土整備について、以下のとおり意見交換が行われた。

・環境を独立の省とし、国土保全の機能を別途一体化する場合、食料は国土保全の機能と理解してよいのではないかとの意見があった。

・3.7兆円の膨大な道路特定財源は強大であり、国土保全と国土開発の機能を分離してもなお強大である。したがって総合交通省は別途機能を分離すべきであるとの発言があった。関連して、交通行政で鉄道と道路が別々の省の所管とするのは整合性を欠くとの意見があった。

・道路と通信をまとめると国土整備の機能が強すぎることへの歯止めになるとの意見があった。関連して、情報産業は今後世界的規模でますます大きくなっていく分野であり、人間のコミュニケーション手段をまとめる意味で情報交通省が適当ではないかとの意見があった。これに対し、そういうまとめ方は将来的な発展が余りないのではないかとの意見があった。さらに関連して、交通の実態は公共工事的なものであるが、通信は放送の内容に関する規制の問題、電子マネーなどの高度に技術的な問題などを含むものであり、交通と通信の一体化は適当ではないとの意見があった。関連して、情報・通信・放送を截然と区分するのが適当かどうか疑問であり、共通点としてある電波監理・監視等の機能は行政の恣意的取扱いを避けるため、3条委員会が適当ではないかとの発言があった。関連して、情報通信は日本の将来を左右する重要問題なので、国として焦点を当てた研究体制を築く必要があるとの意見があった。

・これに対し、国土開発と国土保全の機能を分離するなら、交通の機能を国土開発に含めてもさほど大きくないし、交通はあらゆる開発の基本であるから国土開発の機能に含めるべきではないかとの意見があった。これに関し、開発と保全の機能を分けるなら農水省の相当部分は保全機能に、交通は開発の機能に分類するのが適当であるとの発言があった。

・藤田委員の案のように食料とエネルギーを一体化して考えるのは、危機管理で共通性があるにしても、性格が異なるので無理ではないか、エネルギーと食料とは相反する面があるのではないかとの意見があった。これに対し、藤田委員(主査)から、国民生活からみた機能の共通化の観点から一体化を考えたものであり、あくまでたたき台であるから固執しないとの発言があった。これに対し、食料を国土保全の機能と考えるのが委員意見の大勢なので、エネルギー問題は経済省に戻ると理解すべきではないかとの発言があった。関連して、安全には国防上の問題のほかに、エネルギーの問題があるため、食料の問題を含め国家安全保障会議の機能とし、内閣が扱うことが適当であるとの意見があった。

・道路と鉄道はほとんど出来上がっており、これからはその保全が重要と考えるが、これを国土開発と考えるのか、国土保全と考えるのかとの質問に対し、鉄道の開発はそうでもないが、道路を作れと言う要望は依然として強く、メンテナンスは開発の延長という考え方で国土開発の機能に分類してよいのではないかとの発言があった。

・原子力安全行政については、開発から安全まで一体という伝統的な考え方もあり、環境省でダイオキシンの大気放出のチェックなどと同様に原子力安全のチェックを行うこととし、原子力行政を担う行政庁で第一次チェックを行うべきではないかとの意見があった。これに対し、それは国土開発の面でも同様であり、第一次的に環境への配慮を欠く行政分野はあり得ないとの発言があった。

・これまでの議論の経緯を踏まえ、藤田委員から、環境は環境安全省として独立させること、食料は国土保全の機能に分類すること、電波監理等情報通信固有の分野は3条委員会とすること、エネルギー行政は産業省の所管とすることで取りまとめたいとの提案がなされ、了承された。

・これに関連して、国土開発と国土保全の機能の間の線引きには微妙な点はあるが、交通は国土開発の機能に分類することが意見の大勢と考えてよいかとの提案に対し、交通行政は国土開発省の外庁として大臣を長とすべきではないかとの意見があった。これに対し、省の外庁として大臣を長とする庁を置くなら、それは省とすべきであり、かえって省庁の数合わせという批判を呼ぶのではないかとの発言があった。関連して、国土開発と交通は大括りの基本的考え方に立てば一体として考えるのが適当であり、大臣が公正な立場を堅持すればよいとの意見があった。

・国土開発の機能について、地方建設局に仕事を移していって本省を身軽にすれば問題はないとの発言があった。関連して、その場合地方の仕事に位置づけられていき、一つの地域で河川管理計画を立てられるような道州制の実現が必要であるとの発言があった。

・建設省の河川局は国土保全省に統合されるが、国土開発省は、道路と運輸省が統合され、さらに北海道開発庁、沖縄開発庁、国土庁が入れば相当大きくなるとの発言があった。関連して、運輸省は規制緩和で小さくなるので、交通は国土開発省に入れてもよい。建設省の仕事をなるべく地方に譲っていくことで、道路はある程度大きくても割り切るべきではないか。国土庁の土地局など大部分は国土保全省の機能となるのではないかとの発言があった。

・国土保全と国土開発とを分離した場合に、国土総合整備計画といったものを作る機能が必要ではないかとの発言があった。これに関連して、全国総合開発計画(全総)をつくる全国総合開発審議会(国土庁が事務局)が内閣にあるが、実態は建設省が中心である。この計画の下に各種の建設5カ年計画があり、開発指向でどんどん開発が進んでしまうので、チェックが必要であり、これを何とかしなければならないとの発言があった。また、この問題は官邸機能強化、内閣府との関連で、総合戦略としての全国総合開発計画の一本でよい。縦割り行政をやめて、横串のシステムに切り替えていけば、その問題も無くなるとの意見が出された。

・今日までの論議でどこまでまとまったかを、明日までに整理してもらいたい、との発言があった。これを受け、藤田委員より、事務局において整理したペーパーを同委員が確認した上明日配布したいとの発言があった。その上で、名称の問題は今後別途検討することとして、1)環境安全省を独立させ、国土保全省の機能に食料を入れ、国土開発省の機能に交通を入れる、2)情報・通信については、電波監理等を3条委員会とするが、どこに置くかは未定であり、産業の振興については経済省の所掌に入れる整理ではどうかとの発言があり、了承された。

(10) 防衛について、以下のとおり意見交換が行なわれた。

・防衛庁を防衛省に昇格すべきとの意見が述べられた。これに対し、基本的には本格的に議論すべき問題であり、内閣法6条も改正すべきであると思うが、今回の行政改革の仕上がりを考えると慎重に対処すべき問題ではないかとの発言があった。関連して、この問題は、指摘されるように国家の在り方についての哲学の問題であり、従来、日本での取上げ方は腰が引けていた。本格的に取り上げるには、自衛権の発動を行政権とした現在の整理でよいのかという基本問題から合憲性の問題等も含めて別途の体系を建てて議論しなければならず、まだ準備が足らない、この問題の本質的なことを議論せず名前だけを変えるのは問題であり、今の段階で無理をすべきはない、との意見があった。

・これに対し、総理府の大臣庁を無くすという今回のような時にこそ防衛庁を省にすることが自然であり、省に昇格すべきとの委員も多いのだから今議論すべきである。今の自衛隊員は誇りが持てない状況にある。今この議論から逃げたら、いつまでたっても議論できない。省への昇格は信念であるので提案は取り下げることができないとの発言があった。

・防衛庁の問題は、自衛隊員の士気高揚の問題からではなく、安全保障上の観点から議論すべきであり、外務省の北米局をどう機能強化するのか、防衛庁のどこが安全保障政策を遂行する上で不都合なのかなどを議論すべきである。自衛隊員の士気高揚は「省」への格上げ以外の方法もあるのではないか、如何に脅威をなくするのかという協調的安全保障の中での対話、合同演習、国連のPKOでの貢献などを行うことで、誇りと士気を高めることが可能ではないのか。組織的問題として考えるだけでなく、安全保障政策の在り様が今のままでよいのかという観点からの議論として「省」への格上げが必要であるというならば一つの考えと思うが、今の段階では、安全保障の機能をどう強化すべきかということではないかとの発言があった。これに対し、そのような国際交流をしている隊員はごく少数であり、問題は自衛隊員が集まらない状況にあるということである。高邁な国際政治学の議論では国防は割りきれない、大使館付きの駐在官も劣等感をもっているので、本来「国防軍」ぐらいにしないといけないが、「庁」を「省」にすればずいぶん違うとの意見が出された。関連して、外務省の考えている安全保障と防衛庁の考えている安全保障は異なるが、エネルギーや食料問題なども含めて、総合的にこのようなものを考える「国家安全保障会議」を官邸につくることを提案しているとの発言があった。

・「省」への昇格を提案しているが、この議論はなかなか収れんしないので、中間報告では両論を併記すべきではないか、政治が判断すべき問題ではないかとの発言があった。また、政治的な問題であるので、中間報告には2つの考えがあることを記してもらいたいとの意見があった。

・これらの意見を受け、藤田委員(主査)より、この問題は簡単に収れんしないし、多数決ということにもならないので、両論併記としたいとの発言があり、了承された。

以上
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