別紙1

電気通信事業の経営形態の変更と全電通の対応

(全国電気通信労働組合中央執行委員長 佐々森和男)

1.電気通信事業の国営事業から公共企業体移行(日本電信電話公社誕生1952年)
国営事業としての電信80年、電話60年の歴史に幕を閉じる
2.日本電信電話公社へ移行して
(1) 公衆電気通信法、日本電信電話公社法、公共企業体等労働関係法の適用
(2) 財務会計制度は、官業的な前年度実績に基づく予算制度から、企業的色彩を持つ予算制度へ移行
(3) 建設資金は「電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律」(S58廃止)により電信電話債券の加入者負担による
(4) 団体交渉権が回復し労働協約が締結できる
(5) 賃金、手当についても団体交渉事項と明記
3.公社制度の問題点
(1) 団体交渉権の空洞化
(2) 認可、規制と統制によるニーズへの即応が困難
(3) 収支差額に着目した国庫納付金制度の創設
4.第二次臨時調査会答申
「分離・分割、民営化、新規参入」
5.第二次臨時調査会答申に対する全電通の態度
 国民・利用者の利便、さらには、わが国情報通信政策の将来の在り方からも、多くの問題を含んだ内容となっているものであり、「分離・分割、民営化、新規参入」に反対。
(1) 公企体の経営形態を堅持し、事業の公共性、公益性(ユニバーサルサービス)を守るなかで自主性を拡大し、運営の在り方として民間の経営の長所を積極的に取り入れる立場で、必要な改革を行う。

(2) 組合員の雇用の保障。
6.電電改革三法案、国会成立(1984年12月)
分離・分割は切り離し民営化を先行、「NTTの在り方」については、5年後論議
7.NTT発足による環境変化
(1) 当事者能力の確保(労働条件等団体交渉で決定)
(2) 労働基本権の確保(ストライキ権の確立)
(3) 事業領域の拡大(雇用の確保・拡大)
  等評価できるもの
(4) 事業計画、役員人事、サービス・料金等認可の規制
(5) 政府から業務、要員の効率化・合理化等の改善指導
  等特殊会社としての規制・行政指導
(6) NTT発足時における労使関係  
1)労使対等に基づく信頼関係の確立  
2)雇用の安定・確保  
3)既労働条件の継承  
4)経営協議会の設置、労使協議の充実  
 等を協約・覚書で確認
8.NTTの再編成について
(1) NTTの再編成法案成立(1997年6月)
  日本電信電話株式会社を純粋持株会社の下に長距離・国際会社と2地域通信会社に再編成
(2) NTT再編成に当たっての全電通の基本的態度  
1)日本の情報通信産業がグローバル化ならびに世界の規制緩和と大競争の流れに決定的な遅れをとらない。  
2)「利用者・国民の利益、国益」を基本にユニバーサルサービスの確保、地域間サービスの格差を生じさせない。  
3)事業運営と経営の自立・主体性が発揮できる規制の緩和、撤廃  
4)組合員の雇用・労働不安を生じさせないことを基本に、基本的労働条件の継承及び統一性の確保、団体交渉等ルールの確保等。


別紙2

たばこ専売の民営化への移行

(1997年10月1日 全日本たばこ産業労働組合)

1.はじめに
わが国におけるたばこ専売制度は、明治時代中国・旧ロシアとの戦争(日清・日露戦争)の戦費調達の一環として実施されました。第2次世界大戦の終戦後は、戦後改革の中で「公共企業体」として、日本専売公社が設立されました。その後たばこの市場開放の動きが強まるなか、政府の行政改革方針を受けて、他の2公社(日本国有鉄道・日本電信電話公社)とともに民間企業に転換し、日本たばこ産業株式会社(以下、「JT」という)が設立され、今日をむかえている。
2.JTの沿革
(大蔵省・専売局 → 日本専売公社 → 日本たばこ産業株式会社)
1875年(明治 8年):たばこ税則制定〜明治維新後の税による国費調達
1898年(明治31年):葉たばこ専売法制定〜日清戦争の戦費調達
1904年(明治37年):たばこ専売法制定〜たばこ製造も含めた専売制
1949年(昭和24年):日本専売公社発足〜たばこ・塩・樟脳の3専売法施行
1985年(昭和60年):日本たばこ産業株式会社発足
  現在に至る
3.民営化移行への経過等
(1) 背景
1)たばこ消費の鈍化
1970年代半ば頃から、成人人口の伸び率の減や喫煙と健康問題などにより、たばこの消費が急激に鈍化
1965〜1970年:伸び率5.1%、1970〜1975年:伸び率5.6%、1975〜1983年:伸び率0.7%
2)たばこ市場開放の動き
○日本専売公社(以下「公社」という)〜外国たばこの輸入を取り扱う特定の販売店で外国たばこを販売
貿易摩擦等の関係で、たばこの「市場開放」を求める声が強くなる
1984年〜外国たばこの販売を希望する全ての販売店で拡大
○輸入関税率の引き下げ
市場開放の一環として、輸入関税率(90%)が次の通り引き下げられた。
1981年:35%、1983年:20%、1987年:0%
○経営の自主性の欠如
市場競争激化のなかで
公社制〜政府の公的関与〜企業性が発揮できない

(2)専売制・公社制のもとでの労使の姿勢
1)公社〜1961年に「長期経営計画」、1968年に「これからのたばこづくりについて」と題する「新長期経営計画」等を策定
「納付金率法定化での自主経営」を基本方針とし、たばこ工場の統廃合と2交替制の導入、機械・設備の近代化・高速化などを進める
2)当時の全専売労働組合(略称「全専売」)
「専売制・公社制」を維持したなかで、たばこ・塩事業の民主的経営、雇用の保障と労働条件の向上を求め、「業務量の設定」「合理化に関する労働協約」などを締結

(3) 第2次臨時行政調査会
1)低成長・景気回復が遅れるなかでの増税、公共料金の引き上げ、健康保険の負担増などが行われるなかで、政府は財政建直しを理由に「小さな政府」づくりに向けての諸政策を検討するため、1981年に「第2次臨時行政調査会」を設置
2)第2次臨調の答申(1982年7月)
○当面政府が株式保有する特殊会社
国産葉たばこ問題が解決され、特殊会社の経営基盤が強化された段階で製造独占を廃止し、特殊会社を民営会社化
○全量買取制度および耕作許可制度を廃止し、面積・価格は契約制へ移行
○流通専売および小売人指定制度を廃止し、契約制へ移行 等

(4) 自由民主党専売改革大綱(1983年11月)
1)たばこの輸入自由化
2)日本専売公社を合理的企業経営が最大限可能な政府関係特殊法人に改組
3)新法人はたばこ製造を独占
4)国産葉たばこについて全量買取制度を維持
新法人内に価格・面積を審議する公正な機関を設置
5)小売販売の指定制、定価制を実質的に維持 等

(5) 全専売の方針
全専売は、すでに「専売制・公社制」の維持を前提に「国民のための専売公社」に向けた政策を明らかにしていたが、以上のような情勢を受けて次のような方針を決定。(1983年、第39回松山全国大会)
○日本のたばこ・塩産業の維持
○公社および関連事業で働く人の生活と雇用条件の維持
○葉たばこ耕作農民・販売店の条件維持
○当事者能力の付与と労働基本権の回復
○公共性の確保

(6) 制度改革を前に、全専売より会社に対し、以下の申し入れ(1983年)
1)日本専売公社と全専売労働組合は、制度問題進展にともなう制度問題について
○職員の雇用が実質的に継続される措置を講ずる。
○労働条件については、法律の適用関係の変更および今後の合理化の実施等にともなう労使の取り決めによるものを除き、原則として、現行条件を維持する。
なお、労働協約等の具体的取り扱い等について労使間で協議するため、制度問題の動向を見極めつつ、「協約委員会(仮称)」を設置する。
○共済年金制度は維持する。
○その他、法律の適用関係の変更等にともなう諸問題については、労使間で前向きに話し合う。
ことを前提としつつ、職員の不安解消の立場から、適切な対応をはかるものとする。
2)経営の自主性の確立については、その実現に向けて最大限努力する。

(7) たばこ関連法案
1984年の第101国会において審議され、衆議院では7月17日、参議院では8月3日それぞれの本会議において可決。
*たばこ関連法
1.たばこ事業法、2.日本たばこ産業株式会社法、3.塩専売法、4.たばこ事業法等の施行にともなう関係法律の整備等に関する法律、5.たばこ消費税法
4.改正された主な内容
(1) 経営形態
  会社発足時〜政府全額出資の特殊会社。株式は、2分の1以上を政府が保有することを法定化。当分の間、3分の2以上を政府が保有
  発行株式総数:2,000,000株(資本金1,000億円、券面額50,000円)
産業投資特別会計:1,000,000株
国債整理基金特別会計:1,000,000株
1994年および1996年の2次にわたる売却により、666,666株を放出

(2) 事業範囲
たばこ事業法に定められた本来事業およびそれに付帯する事業。会社の目的達成に必要な事業(大蔵大臣の認可)

(3) 当事者能力
政府の公的関与は、必要最小限とし、経営と所有を分離。事業計画、取締役の任免は、大蔵大臣の認可事項

(4) 葉たばこ関係
葉たばこ耕作を「許可制」から「契約制」に改める。耕作面積および買入価格は、葉たばこ審議会に諮りJTが公示する。なお、耕作農家で生産された葉たばこは、原料の用に適さないものを除き、JTがその全量を買い上げる。

(5) 製造独占
たばこの製造は,JTの一社独占とする。

(6) たばこ販売店の許可制および製造たばこの定価制
たばこ販売店の許可制および製造たばこの定価制については、当分の間これを維持する。

(7) 労使関係および職員(社員)の身分など
労働3法を適用する(「争議権」の回復)。なお、公社職員は、退職することなくJT社員として身分を継続され、共済年金も継続する。
 なお、専売労使で締結された諸協約類は、法改正等による必要な改定の上、原則として継続する。

(8) 塩専売制度
当面、公益専売制度を維持しつつ、自立化に向けて努力する。
(1997年3月31日で、塩専売制度は廃止)

以上


別紙3

独立行政法人の職員の身分に関する検討(追加資料)

1.これまでの議論の整理
独立行政法人の職員の身分は、原理論としては、従来どおりの公務員ではあり得ないが、政策論として、これを純粋に貫くことには現実性がないのではないかとの意見も踏まえ、「暫定的措置」として、国家公務員身分を維持できるような制度設計が可能かどうかを検討する。
2.制度設計の前提条件
1)中間報告で了解された独立行政法人の制度設計は変更しない。
2)国家公務員身分を維持するものである以上、原理論としては、独立行政法人の運営の自律性・自主性が損なわれるものであり、その制度設計と少なからず矛盾をきたすものであるが、「暫定的措置」であることから、両者の併存はやむを得ないものとする。
3)下記の案が法制的な詳細な論議に耐え得るものであるかどうかは、なお、今後十分に検討する必要があり、その留保条件付きで、とりあえずの試案として検討する。
3.具体案
(1) 具体案の内容
次のような2案が考えられるのではないか。
1)現在国家公務員である者については、独立行政法人に移行後も国家公務員としての身分を維持するものとし、独立行政法人において新規に採用した者等は、非公務員とする。この場合の公務員制度の内容は、現業並み(争議権なし、協約締結権を含む団体交渉権あり)とする。
2)独立行政法人の職員については、(新規に採用される者を含めて)当分の間、国家公務員とする。この場合の公務員制度の内容は、@案同様、現業並みとする。

(2) 1)案の検討
[公務員身分を維持する理由]
・国家公務員については、法律上、身分保障がなされているのであるから、独立行政法人に移行するに当たっても、移行時において現に国家公務員身分を保持している者については、激変緩和措置として、公務員としての身分は維持されるべきである。
(参考)ドイツの郵政民営化の例(別紙)

[問題点]
・一つの法人の中に国家公務員である職員と非公務員である職員が併存することになるが、人事・労務管理上問題はないか。例えば、争議権を有する職員と有しない職員とが混在することになり、給与決定において完全に労使交渉に委ねられる者と第三者機関の関与があり得る者が併存するが現実的か。(また、複数組合の対立問題を引き起こす懸念はないか。)
・さらに、国家公務員である職員と非公務員である職員とがそれぞれ労働組合を結成した場合、不当労働行為制度や労働協約制度の適用等労使関係法制の適用について困難な問題が生じるのではないか。
・このような異なる身分の職員の併存状態がかなり長期にわたり継続することになることに問題はないか。

[代替案]
・上記のような問題点を緩和するために、また、激変緩和措置としての趣旨から、国家公務員身分が維持される年限を設けることが考えられるのではないか。
・労働組合又は職員個人の選択により、上記により設定された年限の前であっても、非公務員身分に転換することを可能とする(この場合、退職金等で不利益が生じないようにする)措置が必要ではないか。

(3) 2)案の検討
[公務員身分を維持する理由]
・独立行政法人の趣旨に沿った自律的・自主的運営が定着するまでの間は、争議行為等労使関係の混乱により、国民生活に支障をきたすおそれがあることから、当分の間、国家公務員身分を与え、争議行為の禁止等の措置をとる必要がある。
※現職員だけでなく、全職員が国家公務員となることから、1)案のような職員にとっての激変緩和措置としての理由づけはできないのではないか。

[問題点]
・特殊法人を独立行政法人に整理する場合にも国家公務員身分を与える必要はないのではないか。むしろ、争議権の剥奪になるのではないか。
・新規採用者にまで国家公務員身分を付与すると、本来の姿(職員は非公務員)への道筋がつかなくなるのではないか。その結果、「当分の間」の措置が長期にわたり継続するおそれがあるのではないか。
・公務員身分を付与したままであれば、行政機関からの単なる看板のかけかえにすぎないとの批判を浴びるのではないか。

[代替案]
・本来の姿への道筋をはっきりさせるためには、「当分の間」の措置ではなく、年限のある措置とすべきではないか。

【備考】
職員はあくまで非公務員とするが、例えば、「国家行政組織法」を「国家行政組織及び独立行政法人に関する法律」に改め、同法において独立行政法人の公的性格を明確に位置づけ、組織と職員の公共的性格や地位を明らかにすることも可能性として視野に入れ得るのではないか。


(別紙)
ドイツにおける郵政民営化の際の職員身分


・公務員の中に、職員(Angestellte)及び労働者(Arbeiter)という私的契約グループと官吏(Beamte)という類型がある。官吏は、国家高権の行使(=公権力の行使)を担っている。官吏には掛金なしの恩給制度があり、国は官吏を終身面倒見ることになっている。官吏には協約締結権及び争議権なし。
・郵便事業は以前は基本法(=憲法)で国家高権の行使と位置づけられていたが、95年の郵政改革で株式会社化された。この際、郵便事業の仕事は国家高権の行使ではないという位置づけに変更された。(基本法改正)
・95年の改革により、郵便事業民営化に伴い職員は官吏ではなくなるところであるが、他方、官吏には身分保障があり(能力の欠如、非行等以外の理由では解雇されない)、民営化と官吏としての身分保障とを両立させるために、官吏は、株式会社化された郵便等の会社で官吏の身分を維持することとされた。ただし、会社が新たに採用する職員は民間人の身分である。
・したがって、官吏としての身分保障や服務規定がそのまま維持され、スト権も引き続き与えられない。
・官吏身分を維持する職員の給与については、官吏の給与法が適用され、それにより給与水準が決まる。給与は会社が支払うが、給与法に定める水準が支払えないときは国が補填する。
・上記のような措置は郵政民営化だけでなく、国鉄民営化の際にも取られている。


別紙4

評価機関に関する客観性・中立性の担保方策等について(追加資料)

○独立行政法人の評価結果は、運営実績とともに公表されることが義務づけられており、このようなディスクロージャーの徹底による恣意性の排除によっても相当の効果が期待されるのではないか。

○以上に加え、評価機関による評価は、目標に照らして法人の運営実績を評価し、その改善点等を指摘するなど、業務運営実態を踏まえつつ実施するものであることにかんがみ、客観性、中立性を担保するための措置を追加するとすれば、以下のような方策が考えられるのではないか。

1.委員会の独立性
 委員会が独立してその職務を行うことを保障するため、委員にはその任期中一定の身分保障を与えてはどうか。
 例えば、委員は心身の故障のため職務の執行ができないなど一定の場合を除いて、その意に反して職を罷免されないこととしてはどうか。
2.委員の選任
(1)当該省又は当該独立行政法人と一定の関係にある者又はあった者(例えば、直接の利害関係者、取引先、役職員及び役職を退任して一定年限を経ない者等)を選任できないこととしてはどうか。
(2)委員の職務の性格に照らし、その専門性を確保する見地から、民間企業の経営経験者、監査分野における有識者等を積極的に任用することを運営指針として明確化することとしてはどうか。
3.評価手法
独立行政法人については、原則として企業会計を採用することとされており、可能な限り客観的な数値に基づいて評価を行うべきとの観点から、一定規模以上の法人の財務運営評価については、原則として、民間の監査法人による会計監査を受けた財務諸表に基づくこととしてはどうか。

【備考】独立行政法人のディスクロージャーの概要
業務の概要
財務諸表
決算報告
中期計画、年度計画
運営評価委員会の評価結果
監事の監査結果
役員に関する事項 等


別紙5

「独立行政法人」に関する追加意見

(渡辺恒雄委員)

一般に国家公務員の要件とは
1)国の事務に従事していること
2)国の任命権者から任命されること
3)原則として、国から給与を支給されること
の三要件であるが、3)の要件は例外が多々ある。従って、1)国の事務に従事し、2)法人の長等最高管理者(複数)は国の任命権者から任命されるが、3)給与は国から支給されず、法人の独立採算性により、法人から支給される――こととする。すなわち国家公務員の名称は維持しながら、試験、任命、勤務条件、給与等は国家公務員法の適用を柔軟にして、法人が独立してこれを定めるよう、「独立行政法人法」により、特例を定める。
国家公務員でありながら無給であるなど、国家公務員法の特例法による職種には以下のようなものがある。
△「保護司」(約5万余人)
 一般職の国家公務員であり、非常勤職員とされ、国家公務員法等の法律、人事院規則のすべての規定が適用される。しかし、特例法たる「保護司法」が国家公務員法に抵触する部分については、保護司法が優先される。
 保護司は、保護司法によると1)人格、2)熱意、3)生活の安定、4)健康……等の4要件を満たした者から法務大臣が委嘱し、この委嘱は地方更正保護委員会に委任することができる。(同法第3条) また「保護司には給与を支給しない」が法務省令により、職務執行に要する費用を支給できることとなっている。(同法第11条)
△「民生委員」
 国家公務員ではない。「民生委員法」第5条は、厚生大臣が委嘱することになっているが、1)この委嘱とは、公法上の任命行為でなく、むしろ私法上の無名契約の一種とみなすべきである。2)民生委員に関する費用は「都道府県が負担し、国庫が補助する」旨の規定はあるが、少額で、いわゆる人件費と称するべきものではないとされている。B名誉職で無報酬で共同社会に挺身奉仕をなすを本旨とする――等の理由により、国家公務員ではないとされる点で「保護司」とその法的地位で対照的である。
△「労災防止指導員」
 一般職国家公務員である。「労災防止指導員規定」(昭和40年12月18日労働省訓令第10号)に基づく労災防止指導員は、同規定第2条により、労働大臣が任命することになっており、「非常勤」であるが、身分は「一般職国家公務員」とされている。
△「人権擁護委員」
 国家公務員ではない。人権擁護委員は、人権擁護委員法により、全国で2万人以下と定数が定められ、「法務大臣が委嘱する」(第6条)とされているが、同法5条で「人権擁護委員には、国家公務員法は適用されない」とされている。
以上「保護司」(一般職国家公務員)、「民生委員」(国家公務員ではない)、「労災防止指導員」(一般職国家公務員)、「人権擁護委員」(国家公務員ではない)などと、同じ名誉職的非常勤、無給与でありながら、国家公務員の身分の有無についてはまったく異なる扱いを受けている。
したがって、独立行政法人に対して「国家公務員」の名称を用いるか否かは、厳格な法解釈は必要でなく、立法政策上の問題と思われるので、「独立行政法人職員」をすべて国家公務員として位置付け、国家公務員法の特定条項について、適用除外を特例法で定めればよいでのではないか。
*例外措置の別の例
国が地方公共団体の事務に従事する者のうち、社会保険の事務または職業安定関係の事務に従事する「地方事務官」は、地方自治法付則第8条により、「当分の間これを官吏(国家公務員)とする」とされている。(「当分の間」という法律用語は、事実上無期限のことがある。)

私案

独立行政法人については、これまで検討された方向に沿って、半官半民的法人とするが「国家公務員」の名称を与える。国家公務員法を若干修正、若しくは「独立行政法人法」を特別法として制定して、実態は民間企業の競争原理に基づく自主、自発的経営を可能にしつつ「国家公務員」の身分をほとんど変更することなく、本来の目的を達する方策を考える。以下、国家公務員たる三条件に即し、新しい独立行政法人の職員の身分、給与、任用、定員等についての法制上の問題点について述べる。

<第一案>

1)「国の事務」
 「国より委託された公共性の高い事務であるが、市場経済原理を導入した運営により効率化され、かつ国民に対するサービスを向上することの出来る事務」は国家公務員法上は「国の事務」と同等とみなす旨、特別法で規定する。
2)「身分・給与等」
 一般職国家公務員とするが、国から給与を支給されず、独立行政法人の利益の中から人件費として支給されることとする。そのため、「国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法」を準用し、「国営企業」を「独立行政法人」と書き換える。同法第3条の2項を削除する。同法中、「主務大臣」を「独立行政法人の長」と書き換える。第4条を適用除外とし、第5条を「職員の能率の向上により収入が予定より増加し、また経費を予定より節減した場合、特別の給与として支給できることとする」との条文以外は削除する。また「国営企業等労働関係法」を「独立行政法人関係法」と書き換える。同法第2条第1項の「ホ」以下として右のほか今回の行政改革で独立行政法人の事務とされたものを加える。同法第4章「争議行為」を残すかどうかは慎重かつ早急に検討する。
3)「任用・定員」
国家公務員の採用は国公法によれば競争試験を原則としているが「競争試験以外の能力の実証に基づく試験」(選考という)を定めているので、独立行政法人職員の任用は「選考」を柔軟に活用する。独立行政法人の長の任命は所管省庁の大臣(長官)が行うが、法人職員の任命は大臣(長官)が法人の長に委嘱し、政府が直接職員の人事に干渉できぬようにする。

<第二案>

「国営企業等労働関係法」及び「国営企業職員給与等特例法」の二法を廃止して、「独立行政法人法」を新たに作り、そこに法人とするこれまでの国営企業及び新たな行政事務を書き込み、「職員の身分は国家公務員」とするが、1)企業会計原則の導入、2)国家公務員法の適用除外条項、3)給与並びに労働関係等に関する規定――等を盛り込む。これは身分を国家公務員としながら、当該行政法人の効率化、競争原理の導入などをはかるものである。なお、独立採算を原則とするが、公共性の高い研究機関等には国から補助できるよう、条件付きで特例を設けるものとする。
(注)以上の措置により、国から給与を支給されない国家公務員は「行政機関の職員の定員に関する法律」(総定員法)第1条第1項の職員の定員に含まないものとする。前記「保護司」等はこの定員に含まれない。また国家公務員法第2条第4項によれば、人事院がある職が国家公務員に属するか否か、及び一般職か特別職のいずれに属するかを決定する権限を有するとなっているので、独立行政法人職員を「一般職国家公務員」とすることは、立法政策上の問題として人事院の権限で定めればよい。


議事概要 別紙