[通商産業省に対する質問項目]

☆行政改革の趣旨に照らし、通商産業省において、今後取り組もうとする改革方策をご提示願いたい。
☆産業行政の今後の在り方について、どう考えるか。また、個別産業分野に着目した産業行政及び縦割り局の必要性についてどう考えるか。TD
☆通商政策・交渉に関し、外務省他関係省庁との関係、担当組織の在り方についてどう考えるか。
☆経済協力関係組織の一元化についてどう考えるか。
☆原子力行政とエネルギー行政、科学技術行政と工業技術院の技術開発行政との関係及び今後の組織の在り方をどう考えるか。
☆研究機関について、他の研究機関との統廃合を含め、組織の在り方についてどう考えるのか。
☆高度情報化の推進に対応した行政組織の在り方についてどう考えるか。
☆特許庁の独立機関化、貿易保険、工業標準、鉱山・電気・ガスに関する保安監督の民営化又は独立機関化、アルコール専売制度の廃止についてどう考えるか。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

通商産業省の自己改革への取り組みについて

 冷戦構造の終焉によりイデオロギー面での対立が解消した結果、市場経済が急速に拡大し、国家間の関係における「経済」の比重が相対的に増大しつつある。加えて、アジアを中心とする発展途上国の急速な経済発展、自由貿易体制の深化と拡大、情報通信技術の革新などを背景として、世界経済のグローバル化が一層進展し、企業による熾烈な国際競争が展開される一方、企業が各国の経済制度などを比較しながら、最適な活動環境を求めて「国を選ぶ」時代が到来している。
 各国は、事業活動の場として有利な環境を整備することにより、国家間の競争を自国に有利に進めるよう、官民連携の下に政策的対応を図っている。
 このような大競争時代にあっては、政策の有効性とともに、行政の在り方そのものも、国家間の競争の重要な要素である。
 従って、行政改革会議の議論において指摘されているように、国の行政が本来果たすべき役割や重点的に取り組むべき課題を明確にした上で、簡素で効率的な行政を実現していくことは、経済分野での政策遂行に当たる通商産業省が常に念頭に置くべきものである。
 通商産業省としては、このような認識の下に、各般の規制緩和、省内の組織改革、人事システム改革、業務の合理化などについて、以下のように取り組んできている。

1.規制緩和
(1) 規制緩和の推進は、新規事業の創出、各般の制度的制約や高コスト構造の是正を通じた魅力ある事業環境の整備という観点から、経済構造改革を進め、経済活力の維持・拡大を図る上で極めて重要な課題である。
 通商産業省は、「経済的規制については、原則自由、規制は例外的な場合のみとする」、「社会的規制についても、技術進歩や保安水準の向上、自己責任原則の重視などの環境変化に対応して本来の政策目的に沿った必要最小限のものとする」という原則に沿って、規制の大幅な緩和や撤廃に率先して取り組み、また、内外から寄せられた規制緩和の要望に対する検討状況についても率先して公表してきたところである(本年3月28日に改定された「規制緩和推進計画」においても、政府全体の項目数2,823項目のうち、通商産業省の規制緩和は579項目)。

(2) 最近の主な取り組みは、以下のとおりである。
<<経済的規制の緩和>>
○石油製品の輸入自由化(平成8年4月)[特石法改正]
【措置概要】特石法の廃止によりガソリンなどの輸入を自由化。
【経済効果】1)ガソリン価格が低下。▲16円(この間、原油価格は約6円上昇)
(平成6年1月→平成9年4月)
2)ガソリン価格の地域差の解消。県別最大価格差 約30円→約18円
(平成6年1月→平成9年4月)
○発電部門への参入の自由化(平成7年12月)[電気事業法改正]
【措置概要】電力会社以外の事業者による発電事業への参入の自由化。
一般電気事業者の電源調達に入札制度を導入。
【経済効果】平成8年度に実施された入札において、各電力会社は265万kWの入札を実施。
電力会社自らが行う場合の価格に比べて1割から3割安い304万kW(全国の所要開発量の1割強)の電源を落札。
○大口ガス需要家に対する供給規制の緩和(平成7年3月)[ガス事業法改正]
【措置概要】1)一般ガス事業者による供給区域外への大口供給の自由化。
2)一般ガス事業者以外の者による大口供給への参入の自由化。
3)一般ガス事業者と大口需要家の自由交渉による供給条件の決定。
【経済効果】1)新規参入は徐々に効果(数件の実績)。
2)一般ガス事業者による大口供給契約締結実績は645件。(平成9年3月時点)
○電気・ガス料金の制度改正(平成8年1月)
【措置概要】各事業者の経営効率化の度合いに応じて料金査定に格差を設定できるようヤードスティック方式を導入。
【経済効果】電気・ガス料金の引き下げ。改定率 電気:▲4.21% ガス:▲0.47%
○大店法の緩和(平成2、4、6年)[大店法改正等]
【措置概要】1)出店調整期間の上限を1年半に設定、更にこれを1年に短縮。
2)10,000u未満の出店は原則調整不要。
3)閉店時刻(午後6時→午後8時)、休業日数(年44日→24日)の届出基準を緩和。
【経済効果】1)出店調整に要する期間の大幅短縮。平均34ケ月→平均6ケ月(平成元年度→平成7年度)
2)大型小売店の大幅な躍進。大型小売店出店届出件数527件→2269件(昭和61年度→平成8年度)
○ストックオプション制度の創設(平成7年11月)[新規事業法改正]
【措置概要】ベンチャー企業の従業員に対して、当該企業の株式の価格が将来上昇した際に、あらかじめ定めておいた価格で買い取ることができる権利を付与する制度を創設。今般の商法改正により本制度は一般化。
【経済効果】企業の6割が制度活用に関心。既に8社が実際に利用(平成9年4月現在)。
○外国為替管理制度の見直し(平成10年4月施行予定)[外為法改正]
【措置概要】資本取引や特殊決済の許可・届出制を撤廃・事後報告制へ移行するなど外国為替管理制度を抜本的見直し。
【経済効果】複数国にまたがる多数当事者間での決済が大幅に効率化するなどにより、金融ビッグバンの先駆けとしての効果が既に発生。
○商品ファンドの規制緩和(平成8年4月、平成9年4月)
【措置概要】最低販売単位の引き下げ、解約禁止期間に係る規制の廃止、商品投資以外の運用制限の撤廃など。
【経済効果】投資家に新たな投資機会を提供(販売本数:22本)。(平成8年度現在)
○規制緩和一括法の制定(平成9年4月)[法改正]
【措置概要】輸出検査法・輸出品デザイン法の廃止、合併などに係る承継規定の整備、行政事務における民間能力の活用などのため16本の法律を改廃。
【経済効果】輸出者の負担の軽減や企業組織変更に係る事業者の負担の軽減など
<<社会的規制の緩和>>
○電気事業保安規制の緩和(平成7年12月)[電気事業法改正]
【措置概要】保安水準の向上、事業者の自己責任原則を基礎として、規制を必要最小限化。
【経済効果】認可対象の9割減、使用前検査対象の7割減、定期検査期間の延長などにより、大幅なコスト削減効果。
○保安規制の緩和(平成9年4月)[高圧ガス取締法、液化石油ガス法改正]
【措置概要】保安水準の向上、事業者の自己責任原則を基礎として、規制を必要最小限化。液化石油ガス販売事業の許可制を登録制に移行。
【経済効果】大幅なコスト削減。
1)定期検査を1年を基本としたものから4年とすることだけで、全国で年間300億円以上(試算)のメリット。
2)民間検査会社の法定検査への参入による検査の合理化 など
○製品安全規制の緩和(平成7年7月、平成8年1月、5月)
【措置概要】機器の安全水準の向上、自己責任原則を基礎として、電気用品取締法に基づく安全規制につき、人体に直接接触して危険が高い治療用器具などを除き、政府の認証を要する117品目を製造者の自らの自己確認で足りることとした(現在の政府認証品目:165、自己確認品目:333)。この他、消費生活用製品安全法、液化石油ガス法及びガス事業法の対象である製品についても同様に措置。
【経済効果】認証のための負担の軽減。
○工業標準化制度の見直し(平成9年9月施行予定)[工業標準化法改正]
【措置概要】国による許可制としていたJISマーク制度について、民間能力活用の観点から、国際ルールに基づき、内外の民間法人に審査権限を開放。
【経済効果】内外の民間法人による競争的、効率的な認証サービスの提供。

(3) 通商産業省として、今後とも、内外から寄せられる規制緩和の要望に誠実に対応するとともに、日本経済が抱える課題とこれに対処するための政策の目標を明確に設定し、必要な措置を積極的に実施する。
  この5月16日に、経済構造改革を具体化するプログラムとして、新規産業の創出及び魅力ある事業環境の整備を目指した「経済構造の変革と創造のための行動計画」が閣議決定された。これは、今後の経済構造改革の基本的方向と行動計画を示したものであるが、その中で、各課題ごとに目指すべき目標が明らかにされ、規制緩和を始めとした具体的措置が、期間を明示して示されている。通商産業省関連部分は、以下のとおりであるが、この実現に全力を挙げて取り組む。
○電力
【基本的方向】2001年までに国際的に遜色のないコスト水準とする。
【行動計画】・我が国の電気事業の負荷率(電気事業用資産の稼働率。その1%の改善が電力コストを約1%削減)を改善するための対応策を平成9年末までに検討するとともに、平成9年中に、負荷率改善目標を策定。
・発電事業分野において、電力会社自身の電源開発計画と、電発や独立発電事業者(IPP)の計画とを対等な条件で競争させるため、区分経理を含む新たな制度の導入について検討し、1年以内に今後の電力供給システムの在り方についての関係者間の合意を形成し、必要に応じ法改正を含め所要の措置。
・電力供給の信頼度と電気事業の効率化との関係を整理しつつ、平成9年末を目途に、送電・配電などの流通設備の今後の形成の在り方について結論。
・電力会社は、来年のできるだけ早い時期の料金引き下げの意向を表明。2000年に再度の料金改定申請を期待。
○石油
【基本的方向】2001年までにコストを含めて国際的に遜色のない水準のサービスを提供。
【行動計画】・石油政策全般につき、国際市場との連携強化など市場原理の導入を一層進め、供給コストの実質的削減を可能とする規制緩和・制度改革を2001年を目途に実施。このため、国際市場における石油精製業の競争条件整備などにつき、9年秋以降、石油審議会で検討。
・石油製品の輸出承認制について、承認要件の簡素化を9年度上期までに実施。
・ガソリン供給元証明を新規給油所登録の条件としないこととし9年度中に措置。
○ガス
【基本的方向】2001年までにコストを含めて国際的に遜色のない水準のサービスを提供。
【行動計画】・一般ガス事業間、競合エネルギー間の競争を促すとともに更なる安全の向上と保安対策の合理化の両立を確保。
・大口供給に係る規制の在り方などについて1年以内を目途に検討。
・民間の自主保安体制の整備を前提に、ガス保安規制を必要最小限かつ事後規制に重点を置いたものにする方向で9年中を目途に検討。
○大店法
【行動計画】・法的措置を含めた抜本的な検討を5月から開始し、本年12月までに結論を得た上で、所要の措置を速やかに実施。
○工場立地法
【基本的方向】緑地の整備や周辺環境との調和に配慮した既存工場の建替を促すことにより、 事業活動の高度化や生産性向上を促進。
【行動計画】・共通緑地の緑地面積比率への算入、地方自治体による緑地面積率の柔軟な設定の方向で見直す。
○製品安全規制(電気用品取締法、消費生活用製品安全法など)
【基本的方向】安全基準を、原則として性能の水準を定めた規定に改め、民間による製品規格作成・普及を促進。政府が認証する制度から民間機関が評価する制度へ移行。
【行動計画】・9年度中を目途に検討。
○商品先物市場
【基本的方向】我が国に国際水準の商品先物市場を整備。
【行動計画】・新規商品上場手続き、業務規制の在り方、委託手数料制度など制度全般について平成9年度中に見直し、法令改正を早期に実施。
○工業標準制度
【基本的方向】JIS規格全体(約8,000規格)について、生産者、使用者、消費者などの関係者自らがその必要性の有無を検証。
【行動計画】・JIS規格について、平成9年度までに約1,000規格の国際整合化作業を終了。
・平成9年度から3ケ年計画でゼロベースの総点検を実施。国家標準として整備する必要性が薄いものは廃止。

2.組織及び人事システムの見直し

2−1.組織の見直し
(1) 通商産業省の組織については、これまでも時代の要請を踏まえて見直しを行ってきたところである。
○国営アルコール製造工場(7工場)を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)へ移管するとともに、アルコール事業部(本省)を廃止(昭和57年)。
○繊維製品検査所(14支所)と工業品検査所(28支所)を、通産検査所として統合(昭和59年)。
○流通・サービス分野の政策ニーズに対応するため、商務流通審議官を設置(昭和63年)。
○化学系の4研究所を2研究所に整理統合するとともに、横断的・融合的な研究への政策ニーズに対応する産業技術融合領域研究所を設立(平成5年)。
○環境基本法の制定に対応し、立地公害局を環境立地局に改組(平成5年)。
○通産検査所を製品評価技術センターに改組するとともに、22ヶ所の支所・出張所を9ヶ所に整理統合(平成7年、平成9年)。
(2) 今般、21世紀に向けて解決すべき日本経済の大きな課題に、省を挙げて、機動的に、的確に対処するとともに、政策に対する国民の信頼を高めるため、本年7月から、次のような組織・運営の改革を実施する。
1)プロジェクト・チーム制の導入
常に変動する国内外の経済社会の中で、強靭な経済を形成していくためには、専門的能力に基づき、日本経済の直面する課題を迅速に解決する能力を高める必要がある。
経済構造改革(新規産業の創出及び魅力ある事業環境の整備)を例にとってみても、わが国経済が直面する課題は、従来と比べて、広がりが大きく、また、多面的で総合的な対応を必要としている。
(21世紀に向けての我が国経済の課題の例)
○経済活力を維持するための既存産業の活性化と新規産業の創出
○内外から投資が行われるような魅力ある事業環境の整備
○発展途上国との間の高度な国際分業体制の構築
○地球環境問題の解決と経済活動の両立
○リサイクル、革新的生産プロセスの開発などによる循環型経済の構築
 このような、我が国経済が直面する諸課題に省を挙げて機動的に取り組むため、課題ごとに、以下の省内の関係部局を動員したプロジェクト・チームを設置する。
 ○産業の実態・動向を把握し問題を提起するとともに対策の実施を担当する縦割り局(個別産業担当局、資源エネルギー庁)
 ○問題を分析・整理し政策体系にまとめあげる政策担当局(産業政策局、環境立地局、資源エネルギー庁)
 ○国際的視点から政策を検討する部局(通商政策局、貿易局)
 ○予算・税などの政策手段を担当する部局(大臣官房、産業政策局)
 ○技術面から問題解決を担当する部局(工業技術院、特許庁)
 ○中小企業に関する政策手段を有する部局(中小企業庁)
 プロジェクト・チームは、課題別に複数設置され、このような挙省的課題に取り組むため各局に配置される特命審議官、参事官、企画官と関係課長などにより構成される(「経済構造改革」への対応は、このプロジェクト・チーム制を試験的に実施したものである)。
2)縦割り部局の大括り化
産業活動が国際化、多角化する中で、個別産業を所管する縦割り部局の産業実態分析能力を高めるとともに、より広い観点からの政策企画力を高めるため、20の産業担当課を大括り化して9課に再編し、1課で川上・川下産業など関連産業全体を把握することのできる体制を整備する。
 また、産業構造の変化に併せて、資源エネルギー庁石炭部を石炭・新エネルギー部に改組し、北海道通商産業局石炭部を廃止するなど石炭関係部局を再編する。
 ○鉄鋼業務課+製鉄課→鉄鋼課
 ○基礎化学品課+化学製品課+化学肥料室→化学課
 ○航空機武器課+宇宙産業課→航空機武器宇宙産業課
 ○原料紡績課+繊維製品課→繊維課
 ○日用品課+文化用品課→生活用品課
 ○住宅産業課+窯業建材課→住宅産業窯業建材課
 ○鋳鍛造品課を廃止
 ○発電課+技術課→電力技術課
 ○商業統計課+工業統計課→商工統計課
 ○鉱山課+石炭課→鉱山保安課
 ○産炭地域振興課を廃止
3)透明・国民参加型、新陳代謝型の行政システムの構築
政策に対する国民の信頼を高めるためには、政策立案過程の透明化や政策の客観的評価が不可欠である。このため、審議会の答申案や次年度の政策原案をインターネットのホームページに掲載するなどの手法により、政策の立案段階から国民の意見を反映し、国民との間で片方向の広報ではなく、双方向の対話型の広報体制を構築することにより、政策運営の透明性を向上させる。
また、一定年限を経た全ての政策について、省外有識者から、その効果やそれを継続する必要性について客観的な評価を受け、これを、政策、 組織、人事に反映し、政策の新陳代謝を進める。
このような、透明・国民参加型、新陳代謝型の行政を推進するため、大臣官房に新たに「政策評価広報課」を設置する。
(3) 通商産業省は、今後とも、産業構造の変化や経済分野における政策ニーズの変化を踏まえ、組織全般について不断に見直していくことが必要であると認識している。
 現在、エネルギー供給構造の変化を踏まえ、石炭関係部局の在り方についての検討を行っている。
  また、計量標準など産業活動の知的基盤をより一層整備するために、現在各研究所に分散されている計量標準などに関する研究体制を見直し、その組織の在り方について検討を行うとともに、必要に応じて研究組織の統合を含む組織改革を検討していく考えである。
2−2.人事システムの見直し
(1) 通商産業省は、これまで、高度な専門性を維持しつつも、セクショナリズムに陥ることにより政策の硬直化を招くことのないよう、また、職員の能力や適性に応じて適材適所の配置を行うことにより、職員の士気と自己研鑽意欲を高め、政策の企画立案能力を向上させるとの観点から、累次にわたり人事システムの改善に取り組んできたところである。
○専門分野ごとの閉鎖的な人事による弊害を排するため、5系列(情報、化学、機械、資源、公益)に細分化されていた技官の人事システムを統合一本化
○事務官と技官の区分に応じて固定化されていたポストを流動化
○能力に応じた人材配置を行うため、異なる試験種間でポストを交換・交流
○一定の政策分野の専門性の付与を前提としつつも、産業横断的な政策の企画立案を担当する部署と個別産業を担当する部署間の人事ローテーションを徹底
○民間のコスト感覚、機動性、経営センスなどの修得を目的に民間企業研修を実施(8年度はT種若手職員20名強を個別にベンチャー企業などに派遣)
○国際的な水準の政策企画立案能力を更に高めるため、国際機関や外国政府に職員を派遣(8年度からは、英国貿易産業省に職員が課長として出向)
○外国政府の職員の受入れ(米国政府及び英国政府の職員の受入れを8〜9年度から実施)
(2) さらに、今後、以下のように人事システムを見直す。
○事務官、技官の採用の一元化
T種事務官とT種技官の採用について、来年度入省者の採用から同一の採用チームによる一元的選考を実施する予定。
○客観的かつ職種横断的な人事評価システムの導入
事務官・技官や試験種にとらわれず職種横断的に適材適所で人事配置を行うベースとして、共通の尺度による総合的かつ客観的な人事評価システムの導入を検討する。
○人事配置、昇進管理における多様性・柔軟性の拡大
 専門性の高い職員の育成・処遇のためのキャリアパス作り、若手職員の抜擢など、年功序列型人事配置から、能力・適性に応じた人事配置を更に拡大するため、多様な制度改善の検討を進める。
○官民交流の拡大
専門的能力の高度化、民間感覚の行政運営への導入などの観点から、現行制度の枠組みの中で他省庁に率先して、民間企業研修の実施により取り組んできたところであるが、更に、官民交流促進法(退職手当の取扱いなどについて職員の不利益とならないよう国家公務員の身分を保持したままでの民間派遣を可能とする)の制定を待って、管理職レベルを含め、より長期間の交流の促進を図る。
○国際交流の拡大
米国、英国以外にも、EU、仏、加、豪政府などとの職員の相互交流の拡大を検討する。

3.国民負担の軽減などに資する業務合理化

(1) 通商産業省は、国民や産業界に対するサービスを向上するため、これまで、率先して行政の情報化に取り組むなど、業務運営を見直してきたところである。
○特許ペーパーレス計画の推進
審査処理を促進し、出願者に対するサービスを向上させるため、出願から登録までの一貫したコンピュータ処理システムを昭和59年から導入。平成2年から世界初の電子出願受付を開始。
○インターネットによる広報
平成7年4月に通商産業省ホームページ(http://www.miti.go.jp)を開設。電子メールを通じて、政策内容に対する質問などを受け付け、ほぼ全ての意見及び質問について即座に対応。政策への採り入れが可能なものについては政策に反映。
○許認可申請手続などの電子化
平成8年度から、通商産業省所管の6法律、40様式の許認可申請などについてフロッピーディスク(FD)の提出又はファックスを利用した受付を開始。
○保存義務書類などの電子化
 通商産業省所管の法律に基づき、保存義務が課せられた書類などについて、一定の技術的基準の下で電子媒体により保存することを許容。
○省内決裁の電子化
 本年1月から、省内の決裁をパソコンLANを活用して電子的に行う運用を一部開始。年度内に本格運用を予定。
○民間能力の活用による行政事務の効率化
特許審査の際の基礎情報の収集や統計業務における情報の入力作業、貿易保険業務における保険申込書や通知書の入出力作業、情報処理機器の使用の際の支援業務などといった定型業務について民間委託を行うとともに、高圧ガス製造施設などの検査業務、JISマーク表示の認定業務などの法令上の業務を民間事業者に開放。
○透明な政策運営(情報公開への積極的な対応)
原子炉設置許可に係る申請書や関係書類、電気事業法による工事計画認可申請書などを公開。
(2) 今後とも、産業界や国民と直接に接する部門や業務の執行部門を中心に、サービスの向上と効率化の観点から、以下のような業務運営の見直しに取り組む。
○特許庁業務の総合的電子化・効率化計画の推進
平成10年4月から、全国のパソコンからの特許のオンライン出願受付を開始する予定。また、特許業務に加え、意匠、商標、審判業務についても電子化・効率化を推進し、2000年を目途に、特許、意匠、商標の審査・審判の一次審査終了までの期間を12ケ月に短縮することを目指す。
○オンラインによる統計データ収集・提供
生産動態統計などの調査対象者の負担の軽減、調査データの収集・集計の早期化、統計データ利用の利便性の向上を図るため、オンラインによる調査データの収集・提供を行う「新世代統計システム」を構築し、2000年に運用を開始する。
○行政手続きのワンストップサービス、完全電子化
ワンストップサービスの実現を目指した許認可申請等の手続きの合理化、これらの行政手続を全て電子的に行えるシステムの整備について検討する。
(全許認可申請の電子化)
フロッピーディスク(FD)による申請を可能とする法令の対象を拡大し、平成11年に全ての許認可申請を電子化する。
(行政文書の情報システムの構築)
情報公開請求手続きや料金支払いがオンラインで可能となる情報システムの整備を目指し、本年度から、省内の資料を管理し、迅速に提供できる資料管理システムの構築に着手する。
○貿易保険の引受審査への民間知見の導入
プロジェクト・ファイナンス案件の貿易保険引受審査の前提となる信用リスク評価や国際法務問題の分析に民間の調査能力などの活用(ファイナンシャル・アドバイザーやリーガル・アドバイザーの導入)を図る。
○アルコール専売事業における民間製造委託制度の拡大
工業用アルコールの供給に市場原理を導入して制度の合理化を推進するため、競争入札形式で発酵アルコールの製造を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)以外の民間企業に委託する民間製造委託制度について、アルコールの需要動向も見据えつつ、一層の拡大を図る。

4.地方分権

(1) 通商産業省の政策の中で、地方公共団体との接点が生じ得るのは、保安行政、中小企業行政、産業立地行政などの限られた分野ではあるが、地方の活性化、国民に対するサービスの向上などの観点から、これまで、以下のような地方公共団体への業務の委譲、必置規制の廃止、国庫補助金の整理合理化を行ってきた。
○地方公共団体への業務の委譲(機関委任事務化)
 工場立地法に基づく業務委譲範囲の拡大(平成4年)、商工会議所法に基づく指導監督業務の委譲(平成5年)、計量法に基づく業務・権限の委譲(平成5年)などを措置。
○必置規制の見直し
 計量検定所に係る必置規制(平成5年)、高圧ガス保安管理員と液化石油ガス検査員に係る必置規制(平成9年)を廃止。
○国庫補助金の整理合理化
 小規模事業指導費補助金(うち商工会・商工会議所の経営指導員に対する人件費など)の一般財源化(平成5、6、7年度)、従来4つに細分化されていた製革業公害対策補助金を統合、メニュー化(平成7年度)などを措置。
(2) 今後とも、国と地方との役割と責任の適切な分担による効率的な行政の実現を図るべく、地方分権推進委員会などでの指摘を踏まえ、地方分権を更に推進する。
○地方公共団体への業務・権限の委譲
地方分権推進委員会で自治事務化を求められた事項について、勧告の趣旨に沿うべく準備を進めている。
○必置規制の見直し
通商産業省関係で最後に残っている計量事務職員に係る必置規制を廃止する方向で検討している。
○国庫補助金の整理合理化
今後とも、個々の国庫補助金毎に不断に見直しを行う。また、地方公共団体の要望を踏まえ、産業再配置促進費補助金など補助に係る事務手続きの簡素化を進める。

5.技術開発関連制度の改革
規産業の創出の核となる技術開発を推進するに当たっては、技術開発資源の重点化・効率化を図るとともに、官民連携を軸とした新たな技術開発環境の整備を行うことが必要である。
 そのため、通商産業省は、率先して技術開発に関連する任用、人事管理、予算の運営管理などの諸制度を見直すとともに、評価システムを整備するなど、競争的・効果的な技術開発環境を整備してきたところである。
 今後とも、改革の速度を緩めることなく、一層の改革に取り組む。

6.特殊法人などの見直し

(1) 通商産業省所管の特殊法人・特別認可法人については、行政関係組織のスリム化、民間能力の活用という観点から、以下のように、民営化・民間法人化や整理統合に取り組んできたところである。
○過去10年間に6特殊法人を民営化・民間法人化
・高圧ガス保安協会、日本電気計器検定所、東京中小企業投資育成株式会社、名古屋中小企業投資育成株式会社、大阪中小企業投資育成株式会社の民間法人化
・沖縄電力の完全民営化
○石炭鉱害事業団を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に統合(平成8年)
○アジア経済研究所を日本貿易振興会(JETRO)に統合(平成10年度に実施予定)
(2) 現在、自由民主党行政改革推進本部の方針に沿って、以下のような具体的な検討を進めている。
○電源開発株式会社
「5年程度の条件整備期間を置いた後に、民営化する。その場合、財投など資金調達などにおける財務体質の強化、九電力による保有株式の売却などの措置を講じる。」
○繊維産業構造改善事業協会
「繊維産業構造改善臨時措置法が平成11年6月末に期限切れになるのに合わせて、廃止する。必要な事業は、中小企業事業団へ移管するなど一般中小企業対策と一体的に、実施する。」

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

産業行政の今後の在り方について、どう考えるか。また、個別産業分野に着目した産業行政及び縦割り局の必要性についてどう考えるか。

(21世紀に向けて日本経済が直面する問題)
1.「産業行政」のみならず、今後の行政全般の在り方を考えるに当たっては、21世紀に向けて我が国が置かれる状況を踏まえ、行政が取り組むべき課題を明らかにすることが必要である。
 行政改革会議の「中間整理」においても、内外の環境変化に関する「時代認識」として、国際環境面では、経済のグローバリゼーション、大競争時代の到来、アジアの台頭、環境・エネルギーなどの地球的規模の課題などが、また、国内環境面では、経済の成熟化、産業空洞化、少子化・高齢化、財政悪化などが、指摘されているところである。

<大競争時代の到来>
 冷戦構造の終焉によりイデオロギー対立が解消した結果、国家間の関係における経済の比重が相対的に増大している中で、市場経済の拡大、アジアを中心とする発展途上国の急速な経済発展、自由貿易体制の深化と拡大、情報通信技術の革新などを背景として、世界経済のグローバル化が一層進展し、企業による熾烈な国際競争が展開される一方、企業が各国の経済制度などを比較しながら、最適な活動環境を求めて「国を選ぶ」時代が到来している。
 各国は、事業活動の場として有利な環境を整備することにより、国家間の競争を自国に有利に進めるよう自国の経済システムの徹底的な改善を進めている。
 また、各国は、世界の貿易・投資、知的財産権、競争制度など国内外に共通するルールを自国に有利に改め、地球環境問題などの成長に対する制約要因を自国の経済に不利のない形で処理することにより、国家間の競争に勝ち残ろうとしている。
 その中で、経済政策は、民間の利益と国益とを同時並行的に拡大していく必須の手段であり、官民の緊密な政策調整が重要であるとの認識が強まっている。この結果、例えば、米国では、public-private strategic alliance=「官民の戦略的連携」が経済政策の基本概念となっている。
 このように、国内のあらゆる要素と国外のあらゆる制約を政策対象として、強い官民連携の下で、経済利益の拡大を目指した総合的な競争が行われているのが、大競争の現実である。

<経済活力の低下のおそれ>
 我が国においては、戦後日本の経済成長を支えた経済システムの制度疲労(各種規制や慣行による市場メカニズムの阻害、弾力性を欠いた企業や労働などに関する制度・慣行、非効率な各種経済インフラなど)が、高コスト構造となって現れるとともに、技術革新や新規産業を生み出す障害要因となっている。このような状況の中で、本来競争力を有する企業までが国外に立地するという産業空洞化が進展する懸念が高まっている。
 さらに、世界に例を見ない急速な高齢化・少子化の進展に伴い、労働力人口の減少や貯蓄率の低下が経済活力を低下させ、公的負担の増大が更なる活力低下につながるという悪循環を招来するおそれがある。

<経済に対する制約の高まり>
ASEAN諸国や中国などのアジア地域の急速な経済発展などを背景とするエネルギー需要の著しい増加などが、エネルギー需給の逼迫を招き、我が国経済にとっての制約となるおそれがある。また、地球温暖化に対応するために炭酸ガスなどの排出抑制が国際的に強化されれば、我が国経済に一層厳しい制約が課されることとなる。さらに、環境保全、安全確保、消費者保護といった社会的要請の高まりの中で、これらの価値と経済活力の維持・拡大との両立を図る必要性がますます増大している。

(参考)大競争における各国の対応例
○米国は、市場創造につながる大胆な規制緩和、知的所有権保護強化、半導体など戦略分野での競争力強化を目指した技術開発の強化、情報ネットワーク整備などを行っているほか、公的負担を引き下げるため大幅な減税を行うとともに、大胆な社会保障制度改革を目指している。また、日米包括協議のような二国間協議の場などを通じて、特許制度、流通政策、技術アクセス、競争政策といった極めて広範な政策分野についても米国の経済システムを踏まえて外国の経済システムの変更を求めている。
○EUは、域内単一市場の形成のみならず、競争政策、通商などの政策面での統合を進めるとともに、産業競争力強化を目指した累次にわたる包括的な技術開発計画の策定、世界標準の獲得に向けた戦略的な対応を行うなど、幅広い要素を対象に域内産業の競争力強化を追求している。
○ドイツは、「産業立地競争力強化プログラム」の策定などを通じ、規制緩和、税制、雇用制度、競争政策、社会保障制度、研究開発、教育及び職業訓練、経済的効率に配慮した環境政策、エネルギー供給の確保、交通網拡充といった経済に関係する広範な要素を対象として、産業立地競争力強化のための政策を一体的に進めている。
○イギリスは、対外貿易政策と国内産業政策とを一体的に遂行する体制を整備した上で、競争力強化の観点から、技術革新、輸出振興、労働市場政策、教育訓練、規制緩和といった広範な政策を総合的に展開している。
(通商産業政策の目的)

2.行政改革会議において、行政目的の明確化が多くの委員から指摘されているところである。通商産業省の行政分野においても、日本経済が直面する課題を踏まえ、追求すべき行政目的を一層明確化していくことが重要であると考える。
 我が国が豊かな国民生活を維持し、安定した雇用を確保し、質の高い福祉を維持し、財政の健全化を実現し、さらに、国際的な貢献を行っていくためには、その前提として、経済活力の維持・拡大が不可欠である。また、我が国が国際的な地位を維持・確保していくためにも、経済活力の維持・拡大が不可欠である。
 近年の通商産業政策は、日本経済を取り巻く困難な状況を克服して、「活力ある、危機や制約に耐えうる強靱な経済システムを形成すること」を目的として進められてきている。この政策目的を実現するためには、「通商産業省の重点課題」(4月11日行政改革会議提出資料)に述べたような政策課題に対応していく必要があるが、ここでその主なものを挙げると次のとおりである。

(1) 既存産業の活性化、高付加価値化や新規産業の創出の円滑化を図るため、産業分野ごとの政策ニーズを的確に把握し、規制緩和の強力な推進、高度情報化の推進、技術の開発や人材育成、知的基盤の整備、関連する社会資本の効果的・効率的整備などの環境整備のための各般の施策を講じること。

(2) 国際的に魅力ある事業環境を整備するため、高コスト構造の是正、企業組織制度などの企業関連諸制度の改革、労働・雇用制度の改革などの制度・慣行の改革に取り組むこと。

(3) エネルギー需給の逼迫や地球環境問題などの深刻化など、我が国経済にとっての制約が高まりつつある中で、その解決のため国際貢献に努めるとともに、安定供給・環境調和・効率化を同時達成するエネルギー政策の展開や、原料調達から製造、使用、廃棄に至るまでの事業活動の全段階に環境配慮を組込むことにより事業活動の在り方そのものを環境負荷の少ないものに変えていくことなどを通じ、これらの制約要因を克服していくこと。

(4) 我が国産業の実力が十分発揮されるよう、国際ルールの設定、貿易摩擦の解決、海外での良好な事業環境の形成などについて、二国間、多国間の様々な国際的な場において、戦略的な通商政策を展開すること。

(5) 経済活力を維持・拡大する観点から、公的負担の水準や負担の態様についても方向を提示するとともに、外的状況の変化などにより経済が混乱(不況、インフレなど)することを回避するため、生産、設備投資、在庫などの産業活動の実態を踏まえ、必要な経済対策を機動的に企画立案すること。

 通商産業省は、以上のような経済分野における多岐にわたる要請を相互に背反させることなく、また、対外面と国内面の政策を違背させることなく、有機的に連携させつつ総合的に講ずるよう努めてきたところである。今後、我が国を取り巻く厳しい環境の中で、更にこのような総合的アプローチの強化が求められるものと考える。

(通商産業行政と他の行政分野の関係)

3.今後、経済社会がますます複雑化し、また、国民が求める価値も多様化していく中で、一省庁が打ち出す政策は、必然的に他省庁の行政分野にも深い関係を持つことになる。
 通商産業行政は、「活力ある、危機や制約に耐えうる強靱な経済システムの形成」を目指して取り組んできているところであるが、この目的を達成するためには、通商産業省を超えた関係各省庁との協調及び連携が必要となってきている。これまでも、経済構造改革を推進する観点から、金融関連制度、企業組織制度、企業税制、企業年金、労働・雇用制度などに関し、行政分野や行政目的を異にするほぼ全ての省庁から協力・連携を仰いだように、他の省庁に「通商産業行政」の目的の観点からの考え方を提示し、前向きな政策議論を展開してきたところである。例えば、「経済構造の変革と創造のための行動計画」は、他の省庁の所管する分野においての、新規産業の創造、幅広い制度・慣行の改善、物流・通信などのコストの低減など、通商産業省以外22省庁の協力を得てまとまったものである。このように、関係省庁による共同作業でなければまとまらない政策が増えてきている。
 行政改革会議の「中間整理」では、21世紀に向かって我が国の行政が重点的に取り組むべき行政目的として、経済活力の維持、健全な社会福祉、安全保障の確保、財政改革などが掲げられているが、各省庁が、このような明確な行政目的の下にそれぞれ異なる価値を追求することになれば、その価値を実現する政策間の調整は従来以上に重要になるものと考える。
 このような行政目的を異にする省庁間の議論は、従来の役所間の所管をめぐる権限争議としてではなく、各省庁の間の透明な形での建設的な政策論争として行われるべきものであり、その上で、最終調整は行政の追求すべき価値を総合的に実現する観点から官邸などにより行われるべきものと考える。その意味で、各省庁が他の省庁の行政に対して意見の提出や政策の提案が出来る仕組みと、それを調整する仕組みが必要とされると考える。

(個別の産業分野との関係)

4.通商産業行政を効果の高いものとするためには、政策対象となる経済主体が直面している課題や関連諸制度・慣行などの実態を把握・分析した上で政策の企画立案を行うことが不可欠である。経済の実態を十分に見極めずに政策を行うことは、政策の失敗、政策効果の減殺などを生じることとなる。
 通商産業省の産業担当部局即ち「個別産業分野に着目した縦割り局」は、次に例示するように、経済の実態の把握とその実態を踏まえた政策の企画立案及びその遂行のために必要な機能を有している。
○「経済構造の変革と創造のための行動計画」の策定に当たっては、200社に上る企業から、複数の想定為替レートの下における国際競争力の状況や海外投資の計画、海外を選択する理由、国内に留まる理由、逆輸入の見通し、雇用に与える影響などを聴取した上で、空洞化防止政策を総合して政策体系にまとめ上げている。
○日米自動車協議や日米構造協議に見られるように、通商交渉の対象は、貿易、投資、国際的な産業協力、国内の制度・慣行、部品調達システムなど産業活動全般にわたるものとなっている。このため、通商交渉は、各国企業の競争力、海外への投資動向、海外企業との提携状況など産業活動の実態を踏まえ、国内産業や国内制度との調整を図りながら進めている。
○企業関係税制、企業組織制度、企業会計原則、知的財産制度などの各般の経済制度は、産業の特性、例えば資本集約的産業か労働集約的産業か、技術集約的か否か、土地集約的であるか否か、自然独占性があるか否か、貿易財か非貿易財かなどによって、各産業に異なる影響を与え、それが各産業間の相対的競争力を変化させ、ひいては産業構造に変化を及ぼすものである。したがって、産業の高付加価値化や新規産業創出など、時代の要請に応じた政策目標の実現に当たっては、以上のような実態面における影響を分析しつつ、経済制度の設計・改革を行っている。
○地球温暖化や廃棄物などの近年の環境問題においては、事業者の通常の事業活動がもたらす環境への負荷が問題とされており、これに対処するためには、各産業における事業活動の在り方そのものを環境負荷の少ないものに変えていくことが必要である。このため、産業ごとの特性に応じ、多くの再生資源を利用する製品やリサイクルしやすい製品の開発、環境負荷の少ない製造方法の開発、廃棄物に応じたリサイクルシステムの構築など、原料調達、製造、流通、販売、使用・消費、廃棄といった事業活動の全段階を通じて環境配慮を組み込むための政策を立案し、実施している。

5.政策の現場で我が国の企業群と日常的に接する通商産業省は、我が国の民間企業の発展を最も強く認識してきた。通商産業省がカバーする産業分野は、世界の市場の中で概ね競争力を確保し国民経済の発展に寄与している。このような分野においては、今後とも、競争力を確保できるような事業環境を形成・維持していくことが必要である。
 しかしながら、その手法は、「個々の産業ごとの育成・支援施策」から、関連制度・慣行の是正・改善、規制緩和を通じた市場機能の強化、競争の促進を通じた生産性の向上や構造改善の推進、ルールの設定による市場の整備・創出、情報化の推進、次代を切り拓く技術の開発などによる「事業環境の整備のための施策」に移行している。
 また、国際環境の変動の中で競争力の確保がどうしても困難な場合には、いわゆる積極的産業調整を官民協力の下に進め、雇用への影響などの調整コストを最小化しつつ、産業構造の転換を円滑に進めることが必要となる。例えば、エネルギー革命の進展など厳しい経営環境にさらされてきた石炭鉱業については、経営多角化・新事業分野開拓など構造調整努力への支援措置や産炭地域振興対策を講じながら段階的な縮小を図り、地域や雇用への影響に十分配慮しつつ、海外に比しても円滑な転換が実現されてきている。

6.このように、経済状況や産業実態を的確に把握し、それを政策に反映することは、今後とも必要な機能である。しかし、そのような機能を確保するために、我が国の民間企業の発展の現状や置かれた状況に鑑み産業担当部局がどの程度まで必要なのか、また、産業横断的な経済課題を解決するために必要な部局(横割り部局)との有効な連携をどのように図るのか、などを不断に検証しながら、最も効果的な「縦割り部局」の在り方を常に追求していくことが必要である。

 このような観点から通商産業省においては、縦割り部局の組織の役割とその在り方について、これまでも、時代の要請を踏まえて柔軟に見直しを行ってきたところであり、7頁で紹介したプロジェクトチーム制の導入と産業担当課の大括り化も最近の状況を踏まえた見直しの結果である。今後とも、行政改革会議の議論などを踏まえて適切に見直していくことが必要であると考えている。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

通商政策・交渉に関し、外務省他関係省庁との関係、担当組織の在り方についてどう考えるか。

1.大競争時代において、世界の主要国は、自国の産業の利害と国の政策との戦略的連携の下に、自国の経済システムを徹底的に改善するとともに、世界の貿易投資、知的財産権、競争制度など国内外に共通するルールを自国に有利なように改め、地球環境問題など成長に対する制約要因を自国の経済に不利のない形で処理することにより、国家間の競争に勝ち残ろうとしている。

2.このような中で、我が国企業にとって自由で安定した事業環境を形成し、貿易・投資を双方向で拡大させることにより、世界経済の発展と我が国経済利益の最大化を目指すものが通商政策である。具体的には、次のようなものが挙げられる。

(1) 国際ルール形成や国際的な経済制度の調整を、我が国経済に有利になるように導くこと。
○日本の海外直接投資の約7割を占めるAPEC地域での投資環境改善を目指し、民間投資を促進するための各国の貿易保険機関間の連携強化とあわせて、投資ルールの策定を推進。この結果、昨年のAPEC首脳宣言で、投資環境改善のための取組み強化を明示。
○WTO成立に向けたウルグアイラウンド交渉においては、我が国産業の競争力の実態を踏まえた関税引き下げや、我が国の経験を踏まえたアンチダンピングルールや知的財産権ルールなどの貿易ルールを積極的に提案し、WTO成立に貢献。

(2) 国内産業実態を踏まえて、貿易摩擦の適切な解決を図ること。
○日米半導体協議において、市場シェアを指標とする管理貿易的手法を主張する米国に対し、半導体産業が国籍を超えた提携の時代にあるという産業実態を踏まえ、環境・安全対策、標準化、第三国市場のアクセス改善のための国際協力などを基礎とした高度な国際分業を構築するための枠組みを提案。米国産業界からの賛同を得て、旧半導体協定に代わって、日本提案に沿った新たな協力の枠組みが成立。
○日米自動車協議においては、メーカーの部品調達、メーカーとディーラーの関係など企業行動全般が協議の対象。管理貿易的手法を主張する米国に対し、民間企業とも十分な意思疎通を図りながら、流通慣行、部品調達システムなどの実態を踏まえた市場アクセス改善措置などの事業環境整備と民間企業の産業協力の推進を提示。これにより、管理貿易的手法を取ることなく交渉が成立。

(3) 貿易・投資上の各国の不合理な制度・慣行の是正を求めること。
○ブラジル政府による自動車の差別的輸入制限措置(ブラジルへの直接投資で先行していた欧米メーカーを優遇)により我が国からの自動車の輸出がほぼ完全に停止。我が国は国際ルール違反の是正を求める一方で、欧米メーカーと我が国メーカーとの間及び我が国自動車メーカーの間で実質的に不公平が生じないよう市場アクセスの改善を要求。ブラジル政府が関税割当制度を導入することで合意し、我が国からの輸出が回復。

(4) 産業協力、技術移転、裾野産業の育成、人材育成などを通じて、貿易・投資の拡大を図ること。
○自動車・家電について、東南アジア諸国に関する最適な国際分業体制の構築に向けて、技術移転の拡大、部品・中間財などを提供する裾野産業の育成に対する支援、関税制度や為替制度などに起因する貿易投資障害の除去、基準認証など諸制度の調和などを一つのパッケージとして、官民合同による政策対話を推進。
○我が国企業のアジア諸国への投資に伴い、日本から移転された技術やノウハウなどの保護を図るため、各国知的財産権担当官庁の体制整備の支援や我が国への大規模な研修生受入れ、二国間交渉における改善要求などを実施。

(5) 緊急輸入制限措置、アンチダンピング関税、補助金相殺関税などについて、国際ルールに基づき、我が国産業の被害実態を把握した上で、必要に応じ国内の構造改善の促進と併せて適切な措置を講ずること。

(6) 総合的な通商政策を関連地域との協調互恵の精神の下に推進する枠組みを形成し、我が国の通商利益の円滑かつ効果的な達成のための基盤とすること。
○1980年代末にかけて、世界の主要地域で地域貿易協定の動きが活発化する状況の中で、アジア太平洋地域の「開かれた地域協力」を推進する枠組みとして、APEC構想を提唱。関係国と調整の上実現。
○アセアン経済の発展のための政策と我が国の通商産業政策の有機的連携を確保する場として、日・アセアン通商産業大臣会合を1992年から定期的に開催。

3.以上の例示からも明らかなように、有効な通商政策を企画し、通商交渉を遂行するためには、国内外の産業実態を把握し、国内との調整を行う機能と一体的に遂行していくことが必要である。
 特に、通商交渉の対象は、貿易、投資、国際的な産業協力、国内の制度・慣行、部品調達システムなど産業活動全般にわたるものとなっているため、通商交渉は、これら産業の実態を踏まえ、国内産業や国内制度との調整を不可避的に伴うものとならざるを得ない(「対外交渉は即ち国内調整」)。

4.また、通商産業省は、通商政策の企画立案と総合調整の責に任じており、四極貿易大臣会合、ASEM経済大臣会合、APEC貿易大臣会合・閣僚会議などの場で、他の国内経済官庁との連携の下に総合的な通商政策を展開してきたところであるが、今後、更にこのような連携を強化していく必要があると考える。

5.通商政策と外交政策との関係については、「我が国経済活力の維持・拡大」の観点から求められる通商政策と、「平和の確保や友好な外交関係の維持・構築」を追求する外交政策とは、時には政策の方向が相反することもあることを念頭に置く必要があると考える。
 外交政策と通商政策各々の目的に応じて、外交を担当する組織と通商を担当する組織とで機能分担の上、相互の間で緊密な連携・調整を図り、さらに、必要に応じ官邸で調整するというチェックアンドバランスを確保する中で、全体としての政策の実を挙げていくべきではないかと考える。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

経済協力関係組織の一元化についてどう考えるか。

1.経済協力をめぐる内外の政治・経済環境は大きく変化している。冷戦構造の終焉に伴い、主要先進国の援助政策においては、発展途上国の共産主義化を回避するという従来の国際政治上の必要性が低下する一方、相対的に、自国の経済との関係を重視する傾向が強まってきている。我が国の経済協力においては、我が国経済・産業のグローバル化を支援する観点の重要性が増大している。また、我が国の厳しい財政事情も考えると、このような観点を踏まえた国民の納得が得られるような有効な経済協力政策の推進が強く求められていると考える。

2.一方、被援助国たる途上国においても、財政負担の軽減や民間の効率的な事業経営を活用する観点から公共インフラの整備に民間活力を用いる方向にあることなど、「途上国政府が先進国からの政府開発援助を得て実施する」という従来の考え方に変化が見られる。

3.以上のような援助国及び被援助国の双方の観点を踏まえれば、今後の経済協力の推進に当たっての重要な視点は次のとおりである。

(1) 民間活力活用の重要性
 公共インフラ整備のように従来政府の役割と考えられてきた経済協力分野においても、民間事業者の経営能力と資金を活用し、民間事業者が運営する、いわゆる民活方式の経済協力が、途上国、先進国双方から求められている。このような方式により、少ない政府資金であっても、官民併せた全体事業として途上国の大きなインフラ整備需要に応えることが可能となる。例えば、電力事業を例にとれば収益性の高い発電設備には民間資金を活用するが、収益性の見込めない環境保全設備は政府資金で手当てするなど、官民資金を組み合わせて、事業全体を組み立てていくことが有効である。

(2) 産業構造的手法の重要性
 海外に資源と市場を必要とする我が国にとって、途上国経済の発展と我が国の経済利益が相互補完関係にあることが望ましい。すなわち、経済協力によって、途上国の産業育成を支援する場合においても、その途上国の貿易収支のインバランスの改善に貢献するとともに、途上国における産業が高度化し、我が国との間でより適切な国際分業体制が構築されることが望ましい。 このような国際分業体制を効果的に構築するためには、途上国の技術発展段階を分析し、我が国の産業技術体系の中でどの部分を移転することが有効かといった見極めを行った上で、途上国との「政策対話」を通じ、その技術移転にとって障害となる関税制度や為替制度を改善することなどの多面的な対応が必要である。

(3) 通商政策との連携の重要性
 途上国の産業発展や投資受入れの円滑化のためには、知的財産権制度、標準制度、関税制度、為替制度などの制度的基盤(ソフトインフラ)の整備が必要である。民間企業がプロジェクトの実施主体として途上国に投資をし、その投資収益により資金を回収する場合には、例えば、途上国政府が投資制度や送金制度などを一方的に変更するリスクがある。従って、かかるリスクを除去するために投資保護に関するルールを適切に設定するなど、投資環境整備に関し、その途上国との二国間、その途上国を含む地域間の調整を行う必要がある。

(4) 経済協力の多様性の拡大
 途上国への経済協力は、従来の政府開発援助のみならず、途上国の経済発展段階や我が国との経済依存関係などに応じて、その内容は多様なものに拡大しつつある。
 貧困に苦しむアフリカ諸国などに対する経済協力と、世界の成長センターであり、我が国と貿易・投資を通じて深い経済依存関係にあるアジア地域に対する経済協力とは異なる。すなわち、アフリカ諸国に対しては、貧困対策など無償援助が中心となるのに対して、アジア地域に対しては、我が国との適切な国際分業体制の構築を目指した、産業協力や共同技術開発、貿易保険を活用した他の先進国との協調による投資促進、民間投資の促進のための環境整備など、従来の政府開発援助という概念では捉えられない広い概念の経済協力が中心となる。

4.以上のような経済協力分野における国内外の経済実態の変化を踏まえ、経済協力を効果的に進めていくためには、1)民間との連携、2)産業構造的手法の活用、3)通商政策との連携、4)経済協力の多様性への配慮、といった経済上の観点からの政策の企画立案、実施、評価が、従来以上に必要となっている。

5.一方、経済協力にとって、貧困対策などの人道援助、国際社会の安定のための援助、あるいは、国際社会との良好な関係の構築のための援助が重要であることは言うまでもない。
 このような外交上の観点と、経済上の観点とをバランスよく経済協力に反映させていくことが必要であり、今後の経済協力の推進体制は、経済上の観点と外交上の観点の双方が政策立案過程に反映される仕組みであることが必要である。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

原子力行政とエネルギー行政、科学技術行政と工業技術院の技術開発行政との関係及び今後の組織の在り方をどう考えるか。

【原子力行政とエネルギー行政との関係及び今後の組織の在り方】

(原子力行政の概要)
1.原子力行政は、
 1)基礎的研究から、商業利用まで(すべての開発段階)
 2)エネルギー利用(発電)から、放射性物質・放射線の医学・工学利用まで(多様な利用形態)
 3)原子力発電から核燃料サイクル(ウラン濃縮、再処理、放射性廃棄物処理処分を含む)まで(利用前から利用後までの対応)
といった極めて幅広い分野を対象に、研究、開発及び利用の推進から、これらの活動に対する安全規制まで、広範な内容を持つに至っている。
 この中で、通商産業省は、エネルギー行政の一環として、商業用原子力発電所の立地の促進及び安全規制、ウラン濃縮事業、燃料加工事業、使用済燃料の再処理事業の振興などを所管している。

 事業推進安全規制
一次審査二次審査
原子炉実用発電炉通商産業省通商産業省原子力安全委員会
研究開発段階炉、試験研究炉科学技術庁科学技術庁原子力安全委員会
ウラン濃縮、燃料加工、再処理、廃棄事業通商産業省及び科学技術庁科学技術庁原子力安全委員会
放射線利用関係各省科学技術庁原子力安全委員会
(注)事業推進は、放射線利用を除き電源三法交付金の交付事務所管で整理。
  研究開発段階炉:原子炉を開発するための途中段階の炉。例えば、FBR「もんじゅ」、ATR「ふげん」。
 試験研究炉  :材料試験や放射線実験を行うための原子炉
 廃棄事業   :これまでには低レベル放射性廃棄物処分事業のみが具体化
 放射線利用については、交付金制度及びダブルチェック制度はない。

(原子力行政をめぐる環境の変化)
2.通商産業省として、原子力行政とエネルギー行政をめぐる最近の環境変化を評価すれば、以下のような諸点が指摘できるのではないかと考えている。

1)アジア諸国の経済成長などを背景としてエネルギー需給が逼迫するおそれが高まり、また、地球温暖化問題に対する国際的取組の強化が求められる状況の中で、こうした問題に対処し、エネルギー源の適切な構成(ベストミックス)を実現していく上で、供給が安定し二酸化炭素を出さない原子力発電の重要性はますます増大している。

2)原子力発電所の運転開始以来かなりの年数が経つとともに、その数が増加したこと(現在51基)に伴って、使用済燃料の再処理や放射性廃棄物の処理処分問題が顕在化し、この問題の解決なしには原子力発電所の立地に国民の理解を得ることは難しくなりつつある。このため、これらの核燃料サイクルに係る政策と原子力発電に係る政策とを密接不可分なものとしてとらえ、これらに一体的に取り組む必要性が高まっている。一方、近年、主要な核燃料サイクル事業は民間企業による商業利用段階に達しており、核燃料サイクルについて原子力発電と異なる政策的取組を行う必要性は薄らいできている。

3)核融合研究に代表されるような、実用化には遠く、基礎的研究の積み重ねを行っているものは別にして、未だ商業利用段階に達していない原子力技術についても、その多くは、科学研究の段階を終えている。これらの技術について、実用化に向けて更に開発を進めるためには、実験室レベルの研究施設とは比較にならないほど大規模な施設が必要になっており、これら施設の開発・利用のためには、安全面でも立地面でも商業用原子力発電所と同様の厳格な対応が求められている。さらに、これらの技術開発には巨額の資金を必要とするため、当該技術のエネルギー政策上の必要性や経済性などを厳しくチェックし、適切な官民分担の在り方にも十分に配慮した上で、その開発を進めていくことが必要になっている。
(注)国内最小の商業原子力発電所:17万kw
FBR「もんじゅ」:28万kw
ATR「ふげん」:17万kw

 以上のような状況変化を踏まえて、原子力行政とエネルギー行政との関係を検討する必要があると考える。

(原子力の開発・利用の推進と安全規制との関係)
3.原子力の安全規制の担当体制を検討するに当たっては、原子力発電所など原子力施設の立地を進めるためには、当該施設の安全確保を大前提として、地元住民をはじめとする国民の理解と信頼を得ることが不可欠である点を十分に考慮する必要がある。
 特に「もんじゅ」事故以降、原子力発電所の立地は各地で厳しさを増しており、国民の原子力政策に対する信頼感を回復するために、安全確保についても責任を有する行政庁が、これまで以上に前面に出て原子力の開発・利用に取り組む必要性が高まってきている。
 現在、商業用原子力発電所の開発・利用の推進を担当する通商産業省がその安全規制を担当し、研究開発段階炉などの開発・利用の推進を担当する科学技術庁がその安全規制を担当しているように、原子力の開発・利用の推進を担当する行政庁が安全規制も併せて担当し、原子力の開発・利用を推進する以上は原子力施設の安全確保にも全責任を負う体制とすることが必要である。(「安全確保に対する責任なくしては理解と信頼なし」)
 また、こうした体制においてこそ、担当行政庁は、原子力推進のための様々な場面を通じて地元住民の原子力の安全性への強い不安感を直接理解し、地元住民などの関心事項を安全審査に的確に反映するとともに、厳格な安全確保に最大限の努力を傾けることとなる。(「安全確保への不断の努力なくして原子力の推進なし」)

(ダブルチェックによる安全確保)
4.現行制度においては、安全確保に万全を期する観点から、担当行政庁の安全審査に加え、原子力安全委員会が中立的かつ専門的立場から安全性の再チェック(ダブル・チェック)を行うことにより、安全規制の中立性・客観性が確保されているところであり、今後とも、引き続きかかる体制を維持することが必要である。

5.なお、原子力の研究、開発及び利用に当たっては、平和利用に限りこれを行うことが我が国の基本方針であることから、原子力委員会の原子力の平和利用を担保する機能は、今後とも、引き続き維持することが必要である。

【科学技術行政と工業技術院の技術開発行政との関係及び今後の組織の在り方】

1.科学・技術は、連続性を持つものであるが、それを行政対象として見る場合には、その目的、対象の選定、研究環境、管理手法などの違いから、「科学研究」と「技術開発」に区分される。

2.「科学研究」は、自然界の法則の発見など真理の探究を通じ人類の英知を高めることを目的とするものであり、研究者個人の自由な発想に基づき、自由な研究活動ができる環境を整備することが必要なものである。
(例)素粒子論、霊長類研究、宇宙の起源の解明、数学理論など

3.他方、「技術開発」は、経済活力の維持・拡大、医療の充実、防災といった特定の政策目的を達成するための政策手段の一つであることから、その目的の明確化、工程の厳格な管理、政策目的に照らした成果の評価が必要とされるとともに、技術開発で得られる新技術を普及させる施策との一体的な政策展開が重要である。
(例)太陽電池の開発、超電導材料・素子の開発、電気自動車の開発など

4.通商産業省が担う経済活力の維持・拡大を政策目的とする「技術開発」を例にとれば、その政策目的の達成を目指して、以下のようなプロセスの中で実施されている。
1)政策目的を達成する上で必要な政策群を洗い出し、費用対効果を勘案して、最も効果的な政策パッケージを立案する中で、国による技術開発の推進の必要性を検討し、その実施を決定。
2)政策目的を達成する上で求められる技術開発の目標を設定。
3)最も実効性と効率性を上げうる技術開発制度(国立研究所による研究、官民連携による技術開発、補助金や融資などによる民間研究組織の活用)を選択。
4)進行中の技術開発の内容が政策目的との間で齟齬が出ないように工程管理。
5)技術開発終了後に当初の目標の達成度を外部の意見を取り入れて評価。
6)新技術を普及させるために、法令上の手当や予算上の措置など、他の施策と一体化して政策を展開。

(例)太陽電池の開発
1)二酸化炭素排出抑制という地球環境保全上の要請にも配慮しつつ、エネルギーの安定供給確保を図る観点から、新エネルギーの本格的な導入を政策目的として設定。エネルギー需給見通し上にも位置付け。[資源エネルギー庁]
2)この政策目的を達成するために、太陽電池の技術開発の推進を決定。[資源エネルギー庁、工業技術院]
3)技術開発の内容・要素に応じ、技術開発の目標を設定し、それぞれに最適な制度を選択。[工業技術院]
・太陽電池材料の基盤的開発の実施[工業技術院研究所]
・低コスト、高効率を目標とした太陽電池パネルの技術開発の実施[資源エネルギー庁及び工業技術院と産業界との連携]
4)技術開発の目標達成度を外部の意見を取り入れて評価。 [工業技術院]
5)太陽電池の用途に応じて、その新技術を普及させるための他の施策を一連の政策パッケージとして立案・実施。
・個人住宅への普及促進のため、太陽電池の設置の際の補助制度創設[資源エネルギー庁]
・太陽電池発電の電力会社への売電を円滑化できるように、必要な制度を整備[資源エネルギー庁]
・太陽電池の性能レベルを維持するため、その性能評価を行う試験方法を標準規格化[工業技術院]

5.このような一連の政策の中で技術開発を位置付けていることにより、「技術開発のための技術開発」に陥ることを回避し、経済活力の維持・拡大にとって真に効果的な技術開発が可能になると考えている。また、財政構造改革が進められている中で、特に巨費を投じる技術開発については、このような政策目的に沿ったプロジェクトの決定、管理、評価、実用化という考え方が、ますます必要とされると見込まれる。
 また、通商産業省は、このように技術開発成果の実用化を視野に入れ、官民連携による技術開発の推進のための制度の改革や国立研究所に係る制度改革に積極的に取り組んでいる。

6.このように、経済政策のなかで不可欠の要素である「技術開発」と、研究者個人の自由な発想の下に進めるべき「科学研究」を峻別し、これらをいかなる形で効果的に推進していくかについては、各々の性格を踏まえた検討が必要であると考える。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

研究機関について、他の研究機関との統廃合を含め、組織の在り方についてどう考えるのか。

1.技術開発の推進は、経済活力の維持・拡大を目的とした通商産業省の政策の重要な一分野と位置付けられるものであり、工業技術院の研究機関は、かかる技術開発の推進の中核的な実行組織として位置付けられている。
 具体的には、新規産業創出に資する電子情報・バイオ技術などの開発、既存産業の高付加価値化に資する新材料技術の開発、エネルギー政策上求められる省エネルギー・新エネルギー技術の開発などのほか、様々な産業活動に不可欠な計量標準の設定を始めとする知的基盤の整備などを実施している。
 その際、新技術の普及を促進させる制度や措置を一体的に講じることで、効果的な技術開発を目指している。

2.技術開発は、経済社会のニーズを踏まえ、柔軟に対応していく必要があるものである。
 通商産業省の研究機関の組織についても、経済や産業のダイナミックな変化を踏まえ、行政目的を達成する上で最も効率的な研究体制が実現されるよう、不断の見直しを行ってきている。
○平成5年に、化学系の4研究所を整理統合し、
・既存産業の高付加価値化に不可欠な新材料研究の取組み強化のため、物質工学工業技術研究所を設立。
・新規産業創出の中核的な分野である生物・生体系研究の取組み強化のため、生命工学工業技術研究所を設立。
○これとともに、電子、機械、バイオ分野などの横断的・融合的かつ独創的な研究への政策ニーズが高まったことへの対応と、他の研究所に先駆けて、多くの外国人研究者受入れなどの取組みを行うため、産業技術融合領域研究所を設立。

3.また、経済分野における政策上のニーズの変化に対応して、技術開発を効率的かつ効果的に進めるために、国立の研究機関に柔軟で競争的な環境を導入することが必須の課題であるとの認識に立ち、率先して、以下のような国立の研究機関に係る制度改革に取り組んでいる。
○工業技術院研究者の技術力をベンチャー企業などに積極的に提供し、他方、産業社会のダイナミズムを研究者が体感する道を開くため、研究者の企業における研究や技術指導に対して兼業を許可。(平成8年10月)
○産業への成果移転を促進させるとともに、研究者の、実態経済に貢献できる技術の開発を進める意欲を高めるため、研究成果(特許権など)を国と研究者自身との間で共有できる制度を導入。(平成8年11月)
○内外、官民を問わず優秀な研究者の結集により競争的な研究環境を整備するため、任期付任用制度を導入。(法律成立後、平成9年度開始予定)
○国立研究所に対し、第三者による外部評価を行い、評価結果を国立研究所毎の研究予算に反映させる制度を開始。(平成9年度)
○研究所ごとに所長の裁量で配分する予算とは別に、研究所を超えた研究者間での厳しい競争を促すため、研究所から技術開発テーマを提案させ、工業技術院本院が採択する競争的研究資金を導入。(平成9年度)
○研究者が高度な研究活動に専念し、効率的な研究活動を行えるよう、必要な研究支援者などの派遣を措置。(平成8年12月)

4.また、官民の連携により実施する技術開発制度についても、効率化の観点から、以下のような制度改革に取り組んでいる。
○プロジェクトのテーマ選定に当たり、第三者による外部評価を含め厳格に事前評価を行い、また、プロジェクトの中間段階及び最終段階においても、外部評価を含め厳格な評価を実施。この評価を行うための組織として、プロジェクトを推進する部署とは別に、工業技術院に技術評価課を本年7月に設置。
○産業政策上のニーズの変化に機動的に対応してプロジェクトを推進するため、技術開発の目標期間を原則5年以内に大幅に短縮するとともに、大規模なプラント建設を伴うことにより技術開発の継続が自己目的化する可能性があるものは実施しない方針を決定。

5.さらに、効率的・効果的に技術開発を行っていくために、関係省庁の研究機関と連携することが重要であり、バイオの研究などを関係省庁と共同・連携しながら推進。

6.今後とも、通商産業省の研究機関については、これまで取り組んできた改革を一層進めるとともに、必要に応じて研究機関の統合を含む組織改革を進めて行く考えである。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

高度情報化の推進に対応した行政組織の在り方についてどう考えるか。

1.情報処理・通信技術を活用した高度情報化の推進は、旧来の生産形態や流通構造などを革新し、産業の生産性を向上させ、産業を高付加価値型に変革する大きな原動力であり、将来の産業競争力を左右する決定的な要因となるものである。さらに、高度情報化の推進は、経済・社会の活性化、利便性の向上などにも大きく資するものである。
 近年、米国の経済・産業の活性化・効率化が目覚ましいが、その相当部分は広範な分野での情報化の急速な進展によるものと考えられる。

(様々な分野における情報化の進展)
2.通商産業省の所掌する分野をとってみても、次のように様々な分野において情報化が進展しており、行政としても、各々の分野の課題に応じて施策を講ずる必要がある。

(1) 産業分野の情報化
情報化は、複雑な流通経路に起因する流通コストや設計・生産コストの削減など業種ごとに各産業が抱える様々な問題を抜本的に解決し、生産性を著しく向上させる方策であり、産業分野における情報化施策は、各産業の特性や、それが抱える問題に応じて、きめ細かく実施する必要がある。
○繊維産業においては、流行商品という商品特性、川上・川中部門の中小企業性の強さ、川上・川中・川下のそれぞれの産業形態の差異などに伴う複雑な流通構造などの問題を、情報化により克服することが課題。そのための一つの方策として、中小企業でも活用できる情報システムの構築・普及や、オープンネットワークを用いて川上から川下まで結ぶことにより市場の動向に迅速に対応(クイックリスポンス)するための商品情報の標準化やシステム構築が重要。
○自動車産業においては、情報化により、設計・生産を抜本的に効率化しコストを削減することが課題。そのための一つの方策として、部品メーカを含め系列を越えて設計図面のやりとりや取引を電子的に行うため、仕様の標準化や分散されたデータベースを共同利用する技術の確立が重要。
○鉄鋼産業においては、流通コストを情報化により削減していくことが課題。このための一つの方策として、取引に係る情報などを電子的にやりとりするEDI(電子情報交換システム)の構築を行い、これをオープンネットワーク上で広範な関係者が活用できるような、技術開発と仕組み作りが必要。
○石油化学産業においては、現在の輸送部門の高コストを情報化により克服することが課題。このための一つの方策として、標準化された物流EDIの構築が必要。
○出版業においては、大手取次会社を中心とする複数ネットワークの存在による、注文情報などの伝送の非効率性や流通在庫負担を、情報化により克服することが重要な課題。このための一つの方策として、商品情報データベースの標準化や、出版店から取次会社、書店までを包括的に結ぶネットワークの構築が必要。
○化学品、自動車、家電製品など製品のリサイクルや再使用の分野においても、電子情報技術の特性を活用し、販売された製品の履歴を管理するデータベースを構築することなどにより、ユーザニーズに応じた中古品などの市場創設やリサイクルの円滑化などを技術的に支援することが重要。

(2) 中小企業と情報化
 中小企業が内外の厳しい環境の下で、経営資源の制約などの不利性を克服して、新たな展開を図るためには、情報処理・通信技術の活用により、事業の効率化、情報発信、他企業との連携関係の強化などを図ることが重要である。このため、すべての中小企業が情報化のもたらす変化や恩恵を均等に享受できるよう、業種・業態に応じたアプリケーション・ソフトの開発や、人材育成などの中小企業に対する施策を推進することが必要である。

(3) 消費者行政と情報化
 情報化の進展に伴い、消費者の購買活動や消費者に対する購買の働きかけなどがネットワークを通じて電子的に行われるようになると、電子的に蓄積される個人情報の適正な保護やインターネットを使った詐欺行為への対応など、従来の消費者保護対策に加えて、新たな措置を講じることが必要となる。

(4) 商取引と情報化
 商取引についても情報技術の導入により、従来のルールでは対応困難な問題が生じることとなる。このため、商取引約款や業界のガイドラインによる新たなルール整備のほか、情報化の進展に応じ、契約法(民商法など)の見直しなども必要となる。

(5) 行政と情報化
 情報技術を活用して各種の行政手続上の申請や届出などを電子的に行うことは、行政の効率化や利便性の向上に大きく貢献するものである。既に、特許の出願において実施されているが、こうしたシステムを他の行政手続きにも広げていくことが重要である。

(情報通信技術の進展を背景とした産業業態の変化)
3.デジタル技術の展開やネットワークの進展などを背景に、幅広い産業において、提供するサービスや商品の革新などが進み、従来とは異なる形態の産業へと変化しつつある。
 すなわち、
○流通業やクレジットカードなど金融サービス業がネットワークを活用して様々なサービスを提供する業態に進化し、従来とは変化した産業となりつつある。
○工作機械や自動車などの産業においても高度な情報処理・通信技術を商品に実装して提供しつつあり、その意味で情報産業化しつつある。
○オンラインで行う情報処理サービスなど一部の分野においては、従来「情報」に位置付けられていたサービスと「通信」に位置付けられていたサービスとを併せて提供する業態が発生している。
このように、非常に幅広い産業においてダイナミックな業態の変容を呈しているところであり、こうした情報通信技術を活用する産業の在り方について、その多様性と実態を踏まえた対応が求められているところである。

(通商産業省の役割)
4.高度情報化への対応に関しては、引き続き技術開発やインフラ整備が求められるが、それだけではなく、今やあらゆる分野で情報通信技術を駆使し、従来の社会・経済を変革していくことが急務。通商産業省としては、高度情報化を今後とも迅速かつ円滑に推進していくため、情報化の推進が必要とされる幅広い分野で、個別分野における課題や各分野に共通する課題に的確に対応すると同時に、こうした課題を踏まえつつユーザーと供給者たる情報関連産業との有機的な連携を図っていくことが必要であると考えている。具体的には、例えば、次のような役割を果たすことが必要であると考えている。

(1) 各々の産業分野の具体的な課題に応じて、それぞれの分野への情報技術の導入の促進や、その分野に共通する事項についての標準化やルールの設定などの施策を通じた情報化の推進
○設計情報などの電子的表現形式の標準化及びその実証実験
○EDI(電子情報交換システム)の様式などの標準化及びその実証実験 など

(2) 産業横断的な影響をもたらす関連諸制度の見直しや適切なルールの設定
○消費者保護制度の見直し
○行政への申請手続きなどの電子化 など

(3) セキュリティやプライバシー問題など情報化の「影」の部分の課題解決
○コンピュータ・ウィルス対策基準の策定
○情報システム安全対策基準の策定
○個人情報保護ガイドラインの策定
○個人信用情報保護の在り方の検討 など

(4) 以上のような多様な課題を基本的に解決し、幅広いユーザーニーズに柔軟に応えられる基
盤的なハード、ソフトの情報技術の開発
○先端的な電子情報技術開発支援(超微細加工技術、超先端並列処理技術など) など

 こうした課題が解決されることによって、産業の競争力や効率性が向上する一方、情報関連産業はユーザーニーズを的確に捉えた製品・サービスを市場に提供することが可能となり、ユーザーの選択の拡大につながるという好循環が形成される。

(政府全体の対応)
5.さらに、高度情報化は各省庁が所掌する分野すべてに関わる課題であり、それぞれの行政分野において、例えば、次のような、情報通信技術の活用による高度化や情報通信技術の進展に伴う新たな環境への対応が必要である。
○教育現場にコンピュータやネットワークを導入し、優れたソフトウェアを活用するといった教育の情報化の在り方の検討。
○輸出入、出入港時の通関、検疫などの手続の電子化によるペーパーレス化及びワンストップサービス化の検討
○コンピュータやネットワークを用いた新たな犯罪形態に対する防止・取締体制や関連法令の整備についての検討。
○経済活動の電子化に伴う、課税の在り方など税制度面での対応の検討。

 このように、「高度情報化」あるいは「情報通信の高度化」が国民生活や産業活動のあらゆる局面に浸透し、影響を及ぼすことから、「高度情報化」への対応については、それぞれの行政分野において知見と責任を有する行政庁が、自らの分野における情報化の推進を課題として進めていくべきものと考える。
 なお、政府全体としての方向付けや政策の推進に当たっては、現在、内閣に設置されている高度情報通信社会推進本部のような省庁横断的組織での対応が有効であると考える。

通商産業省説明資料(平成9年6月4日)

特許庁の独立機関化、貿易保険、工業標準、鉱山・電気・ガスに関する保安監督の民営化又は独立機関化、アルコール専売制度の廃止についてどう考えるか。

1.今回の行革の考え方として、政策執行部門の効率化・スリム化や政策企画立案部門の問題解決能力の強化という考え方は、重要な基本方向であると考える。

2.「独立機関化」に関しては、弾力化された予算・組織面での管理の下で、自主的な創意工夫による効率的な政策執行を可能とするものであるとの方向性は明らかになりつつあると考えるが、それを我が国の行政組織の中でどう具体化していくかについては、現時点では必ずしも明確になっているとは言い難い。

3.「独立機関化」の考え方を具体的に検討する際には、少なくとも以下のような基本的共通事項についての考え方の整理がまず必要となるものと考える。
(1) 独立機関の職員に国家公務員としての地位を与えるのか否か。
(2) 運営の自由度をどこまで増大させることができるか。具体的には、
○現在、査定当局により詳細に管理されている定員、課室などの設置、改編など、定員・組織管理における自由度をどこまで拡大できるのか。
○現在一律に定められている俸給表などの給与体系の自由化、昇級や昇格に関する裁量の拡大、業績に応じた賞与の支給といった、給与・人事面における自由度をどこまで拡大できるのか。
○現在の個別予算費目毎の管理から、総額だけを管理するように自由度を拡大するとともに、多年度予算を容認するといった、予算執行面での自由度をどこまで拡大できるのか。
○国有財産、物品管理体系について、会計間を超えた資産の活用、手続きの迅速化などどこまで
自由な利用と処分を認めるのか。

(3) 独立機関の責任体系をどうするのか。例えば、組織管理の自由度拡大に伴い、「独立機関」の業績や決算に関する説明責任は強化されるべきであるが、企業会計原則の導入や業務目標の設定により、コスト分析や効率性の向上度合いが客観的・外部的に計測可能となる仕組みを工夫することがどこまで可能か。

(4) 個別案件の執行と執行手続きの企画立案とが一体不可分となっていることから、執行部門に企画立案部門を置かざるを得ない場合に、執行部門にどこまで企画立案機能を認めるのか。

4.また、以上のような共通の論点を整理した上で、個別具体的な行政分野にどのように適用するかについては、個別の行政分野の特性に応じた整理が必要となると考える。
例えば、
○排他的権利の付与、監督・命令などを伴うような権力性の高い分野をどう考えるか、
○個々の案件処理に政策判断が伴うような業務をどうするか、
○国際的な行政形態の「横並び」が重要である場合はどうするか、
など、個別の分野の特性を十分に配慮することが、「独立機関化」の考え方の中でどう可能なのかが極めて重要な論点となるものと考えられる。

5.当省関連で例示された行政分野の現状及び特性は、別紙のとおりである。

(別紙)

<特許庁の独立機関化について>

1.業務の概要
(1) 業務内容
 工業所有権行政は、発明などの知的創造の成果の保護・活用を図ることを目的としている。特許庁は、特許、実用新案、意匠及び商標について、独占的な権利の付与、及びその権利の取消しや訂正に関する審判を行うとともに、工業所有権政策の企画・立案を行っている。
 我が国は、科学技術創造立国の実現に向け、知的財産の創造→権利設定→権利活用からなる「知的創造サイクル」の構築を図る必要があり、工業所有権行政は、21世紀の我が国にとってますます重要になると考える。

(2) 職員数(平成9年4月現在) 2,529名(うち、審査官・審判官が1,628名)

(3) 予算(平成9年度) 871億円(特許特別会計)

2.業務の特性
(1) 工業所有権行政は公権力行使の要素が大きい。
1)独占権の付与の適否を判断するための審査
 排他的独占権である特許権などが設定されると、模倣が禁じられ、侵害などに対しては、民事上・刑事上の責任を追及することも可能となるなど、出願人及び社会一般の利益に大きく関わる。このため、特許権などの付与に際しては、技術的・法律的観点から、独占権付与の適否を厳密に判断するための審査が行われる。
2)準司法的機能を有する審判
 審査結果をレビューする手段である審判は、地方裁判所に代わり第一審としての機能を有する(準司法性)。

(2) 工業所有権行政では、審査・審判と一体的に重要な企画立案が行われており、次のような企画立案業務には、専門知識を有する審査官・審判官が実務経験を踏まえて携わっている。
1)21世紀の知的創造時代に向けた工業所有権施策の企画立案
 「経済構造改革プログラム」においても、わが国における新規産業の創出などの観点から、1)知的財産権の保護対象の拡大、2)損害賠償額の引上げ、3)大学・研究所の「知的財産権振興」、4)「休眠特許」の活用、などを積極的に推進していくことが盛り込まれている。
2)経済活動のグローバル化に対応した制度運用の国際的な調和や特許紛争の解決を図るための国際交渉
3)政策ニーズの変化や国際交渉の結果を踏まえた国内制度・運用の見直し

(3) 審査・審判は、高度・専門的な判断を求められる業務である。
 審査・審判は、技術分野毎の特性や技術水準などを踏まえて、出願1件1件の技術内容を膨大な技術文献データベース(約4,200万件)内の文献と対比して、1)産業上の利用可能性、2)発明の新規性、3)発明の進歩性について見極め、独占権付与の適否を判断するものであり、高度・専門的な判断が求められる業務である。このため、特許庁では、審査・審判官として幅広い視野と専門知識を兼ね備える優秀な人材(審査官・審判官はT種国家公務員であり、そのうち8割が大学院修了)を恒常的に確保することに努めている。

(4) 特許庁は、これまで効率性・質・透明性を追求し、その成果を上げてきた。
1)効率性及び質の追求
 特許庁では、出願から登録までの一貫したコンピュータ処理システムを世界に先駆けて導入することなどにより、業務の効率化・高度化を図り、審査期間を短縮することに努めている(日本特許庁の審査官一人当たりの特許件数は、エージェンシー化された英国特許庁の約3倍)。
2)透明性の追求
 審査・審判手続においては、審査ガイドラインの公表、審査記録の開示など、手続の透明性を追求している。また、審判における審査結果のレビューや、司法判断を通じて行政の責任が明らかにされている。
(5) 英国、米国などの主要国の特許庁においても、企画立案と審査・審判との一体的な展開が図られている
 英国特許庁は、工業所有権行政の専門性に鑑み、エージェンシーの中では例外的に、企画立案と審査などとを一体的に展開している。
 また、米国特許庁は、日本特許庁とほぼ同様の組織形態となっている。
 今後行政改革会議において審議を行うに当たっては、以上のような工業所有権行政の特性に十分留意し、工業所有権行政の円滑な遂行に資するよう組織の在り方について検討されることを希望する。

<貿易保険について>

1.業務の概要
(1) 業務内容
 貿易保険は、輸出、海外投資などの民間企業の国際的な活動が直面するリスクのうち、相手国の外国為替送金制限、戦争、収用など民間企業の対応力を超えたリスクを国の信用力、相手国との国レベルでの交渉力などを背景としてカバーする制度である。また、途上国との関係では、公的資金供給が伸び悩む中で、民間資金の供給を促進するものである。
(2) 職員数(平成9年4月現在) 215名

(3) 予算(平成9年度:貿易保険特別会計)
(単位:億円)
収入保険料収入回収金
539763
支出支払保険金事務取扱費支払利子借入金償還等
86753146236
(注)なお、8年度末における借入金残高は4,041億円

2.業務の特性
(1) 引受けについて個別のケース毎に高度な政策的判断が必要である。
 貿易保険の引受けに当たっては、相手国の政治的安定性、経済状況などを踏まえることはもとより、日本企業のアジアなどへの国際展開の支援、旧ソ連邦に対する積極的支援といった通商政策上の判断を踏まえて国別・案件別に政策的判断を必要とするものである。

(2) 事故の場合には、外国政府を相手方として、回収交渉を行うものである。
 事故が発生した場合には、外国政府を相手方として、政府が直接回収交渉を行うことが必要である。さらに、近年の事故の太宗が政府間合意による債務繰延べを原因として発生しており、債務繰延べ交渉から回収交渉まで一貫して政府が行うことにより効率的・効果的回収が可能となる。

(3) 諸外国との対等な競争条件の確保が必要である。
 貿易保険は、各国とも、自国の企業の輸出などの対外取引の発展を目的に公的な制度として運営しており、企業の競争条件の観点からOECDなどの場における国際調整が行われている。このため、我が国としても、各国との対等な競争条件を維持することが必要である。また、プロジェクトの大型化に伴うリスクシェアやリスク管理の強化のため、各国貿易保険機関などとの政策調整を行うことも重要である。(12機関と協力協定を締結済み)

(4) 事業収支が予測困難であり、公的制度でなければ運営できない。
貿易保険は、戦争など1ケ国全体にわたる事故が突如発生することなどにより、大数の法則が働きにくい。また、事故が発生した場合には、巨額の保険金支払となることが少なくないのみならず、15〜40年の長期の回収を要することなどから、長期間にわたる大きなリスクに対応できる安定的な制度として、国が運営することが必要である。

<工業標準について>

1.業務の概要
 ISO(国際標準化機構)及びIEC(国際電気標準会議)などにおける国際標準化活動に我が国の意見を反映させることや、日米、日欧、日英などの政府レベルの標準政策に関する国際的政策調整を中心とした、国際標準化政策を推進している。
 我が国の国家標準である日本工業規格(JIS)の制定・改廃、認証制度に係る企画立案も、こうした流れの中で国際的な整合性を確保しつつ実施している。

2.業務の特性

(1) 標準は市場の重要なルールであり、特に国際標準の形成について戦略的な対応が不可欠である。
 グローバル化した経済社会では、国際市場を形成するルールの持つ重要性が高まっている。国際標準は、品質管理、省エネルギー、新素材、電子情報技術など幅広い分野の市場のルールとして重要な役割を果たしており、国際標準を戦略的に制定することが自国の利益に直結している。例えば、米国や欧州は、標準を産業の競争力強化と市場獲得の手段として位置づけ、官民一体で戦略的に対応している。今や、「国際標準を制するものが市場を制する」と言われる時代であり、国際標準の獲得に向けた企画立案の重要性が高まっている。

(2) 国際的な調整が標準政策の要である。
 先端技術などについて、自国産業の競争力強化を図るという戦略の下に自国の標準の国際標準化や、貿易投資の円滑化に向けた規格・認証制度の整合化を目指し、欧米諸国との間で二国間、多国間の政策調整が重要となっている。また、我が国としては、アジア・環太平洋諸国と連携し、国際規格の提案能力を高めることが必要となっている。1995年にWTOの「貿易の技術的障害に関する協定」が発効したことにより、このような標準政策の国際的調整の動きが一層活発化しており、国際標準化政策の重要性は増大している。

(3) 標準行政のうち定型的業務の部門は民間に移管している。
 標準行政の定型的業務の部門については、規格の原案作成業務の民間委託に加え、本年3月の工業標準化法改正により、JISマーク表示工場の認証業務を民間に開放したところであり、標準行政は、企画立案や国際的政策調整に重点化してきている。

<鉱山保安について>

1.業務の概要
(1) 鉱山への立入検査、施設設置計画の認可・施設検査、保安技術職員などへの講習教育など鉱山の操業の安全を確保する業務
(2) 災害発生時における被災者救出の指揮及び原因調査、鉱害問題発生時の原因調査、司法捜査、改善措置命令などの災害対応業務
(3) 鉱害監督検査、鉱害関連施設の設置計画の認可・施設検査、休廃止鉱山の鉱害防止監督などの鉱害防止業務

2.業務の特性
(1) 公権力行使そのものである。
 鉱山保安監督業務は、鉱山保安法に基づいた検査監督などを行い、必要に応じて鉱業停止命令などを行うなど、公権力の行使そのものの業務である。
 また、監督業務を行う鉱務監督官は司法警察権を有している。
(2) 産業政策との連携を図る必要がある。
鉱山保安は、複雑に入り組んだ数十qに及ぶ閉鎖空間という鉱山の特殊な実態を踏まえた対策が必要な分野である。鉱業は、他産業と比較して災害発生率が高く、特に、一たび坑内爆発などの災害が発生すると数百人の犠牲者が出る可能性があることから、保安の確保は産業の存立基盤そのものである。このため、産業政策と密接な連携を図ることが重要である。

<電気・ガス保安について>

1.業務の概要
(1) 原子力を含む発電施設や送電施設などの電気工作物及びガス製造工場やガス導管などのガス工作物の工事、維持、運用などの各段階において、検査、改善命令などを行い公共の安全を確保する業務
(2) 電気配線などの欠陥工事による災害を防止するための電気工事に係る安全を確保する業務
(3) 粗悪な電気用品やガス消費機器による危険や障害を防止するための業務

2.業務の特性
(1) 公権力行使そのものである。
 電気・ガス保安業務は、電気事業法、ガス事業法などに基づき、検査・監督や、必要に応じて改善命令、停止命令などを行うものであり、公権力の行使そのものの業務である。
(2) 事業規制との一体性を確保する必要がある。
 電気・ガス事業は、ひとたび事故が発生すれば、広範囲に及ぶ被害の発生や大規模な停電、供給停止などを引き起こす可能性を常に内包した事業分野であり、保安の確保は事業の存立基盤そのものである。このため、各事業法においては、電気工作物、ガス工作物の安全確保そのものを法目的とし、事業規制と保安規制が一体化している。
(3) 原子力安全の特殊性に留意する必要がある。
特に原子力発電所など原子力施設の開発・利用を行うためには、地元住民を始めとする国民の理解と信頼が不可欠である点に留意し、原子力の開発・利用を推進する前提として、安全確保に直接全責任を負う体制をとることが不可欠である。

<アルコールについて>

1.業務の概要
(1) 業務内容
アルコールは酒類として飲用に供されるとともに、その溶解性、殺菌性などの性質から化学工業などの基礎原料としても広範に利用されている。アルコール専売事業は、アルコールのこのような性質にかんがみ、酒類への転用を防止することによる酒税の確保などを目的として、政府が工業用アルコールの製造、販売などを管理するものである。
(2) 職員数(平成9年4月現在) 233人
(3) 予算(平成9年度) 361億円(アルコール特別会計)

2.留意点
(1) アルコールについては、これまで累次にわたり、効率化に向けた制度改革を行ってきている。
1)昭和57年に製造部門を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に移管し、厳しい合理化に努めた結果、生産性が移管時の約2.4倍に向上した。
2)平成8年度には、NEDO以外にも民間メーカーが競争入札の形で製造に参入することにより競争原理が働く制度を採用した。今後も、民間メーカーによる製造量の拡大を行う方針である。
(2) なお、アルコールについては、専売制や効率的な実施体制の在り方について別途、行政監察を受けており、行政改革会議における議論とともに当該監察の結果を踏まえて対応する必要があると考えている。