警察庁説明資料(平成9年5月7日)

国家公安委員会が、今後とも行政委員会として存続する必要性及び今後の組織の在り方についてどう考えるか。

1 国家公安委員会制度

(1)警察の根本課題
 警察は、その政治的中立性の確保、その民主的運営の保障を図りつつ、いかにして個人の生命、身体及び財産を保護し、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締りその他公共の安全と秩序を維持し、向上させていくか、ということを根本的な課題としている。

(2)公安委員会制度の趣旨
 公安委員会制度は、強力な執行力を持つ警察行政について、その政治的中立性を確保し、かつ、その運営の独善化を防ぐためには、国民の良識を代表する者が、警察の管理を行うことが適切であると考えられたことから設けられたものであり、国民の代表者として国会の両院又は地方議会の同意を得て任命される委員で構成される合議制の公安委員会が警察を管理するという制度が、中央・地方の双方においてとられているところである。

(3)治安に関する内閣の行政責任との関係
 一方、現行の警察法では、行政委員会である公安委員会制度を採用していることで治安に関する内閣の行政責任が不明確化することがないようにするため、国家公安委員会を内閣総理大臣の所轄の下に置き、国家公安委員会の委員の任免は内閣総理大臣が行うこととされているほか、次のような制度を導入している。
 その1は、国家公安委員会委員長は国務大臣をもって充てることとしていることである。
 その2は、警察庁長官及び警視総監の任免については内閣総理大臣の承認を必要としていることである。
 その3は、内閣総理大臣は緊急事態の布告をしたときは一時的に警察を統制するとされていることである。

(4)国会との関係
 国家公安委員会の委員の任免については、両院の同意を要することとされている。
 また、国会には、国務大臣たる国家公安委員会委員長が出席するほか、警察庁長官及び局長等が政府委員として任命されている。

2 国家公安委員会の役割

(1)警察庁の管理
 国家公安委員会は、警察庁を管理する。この国家公安委員会の「管理」の具体的内容は、国家公安委員会の所掌事務につき、その大綱方針を定め、その大綱方針に即して警察事務の運営を行わせるために、警察庁を監督することである。個々の具体的な都道府県警察に対する指揮監督等は、警察庁が行うものである。
(2)その他の国家公安委員会の権限
 このほか、国家公安委員会は、警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長、方面本部長及び都道府県警察の警視正以上の階級にある警察官を任免する等の権限を有している。

3 国家公安委員会の運営

 国家公安委員会は、原則として、毎週木曜日、公安委員会室において会議を開いている。
 会議の場においては、警察庁長官をはじめ警察庁幹部から、警察の活動状況等についての報告等を受けるとともに、高い識見に基づき、各委員から指導がなされており、会議の場において示された国家公安委員会の意思は、以後の警察の業務運営に反映されているところである。

4 結論  国家公安委員会は、警察の民主的運営と警察の政治的中立性の確保を図るために重要な機能を果たしていることから、今後も維持すべきものと考える。


治安、保安関係行政機構の一元化についてどう考えるか。

1 考え方の基本

 我が国の治安は諸外国に比べて良好な状態に保たれているが、治安、保安関係行政機構の在り方について考える場合、治安を取り巻く環境がより厳しくなっていく中で、現在の治安水準を維持することができるか否かという観点から考察することが重要であると考える。
 すなわち、国民が犯罪の被害や交通事故に遭わないようにするなど市民生活の安全の確保を図ることはもちろん、銃器・薬物の我が国への流入、外国人犯罪組織の日本進出等を踏まえた組織犯罪対策の推進、テロ、災害等に係る危機管理対策の推進等の重要な課題に取り組んでいくことが必要となってきている。これらのうち、犯罪の国際化への対応や危機管理対策については、関係法執行機関やマンパワーを有する省庁との連携が不可欠であり、治安、保安関係行政機構間の連携をより深めることがますます重要となってきているものと考える。
 また、現在、省庁の編成の考え方の一つとして行政の目的や機能等に着目した「大括り化」が議論されていると承知しているが、「治安(国民の安全)の確保」という行政目的ないし機能は他の行政目的ないし機能に付随するものではないものと考える。

2 一元化のメリット・デメリット
(1)一元化のメリット
 治安、保安関係行政機構を一元化した場合、一般に、次のようなメリットがあるものと考える。
1)マンパワーを有する官庁が統合されることにより、マンパワーの効率的運用を図ることができる
2)国際化が進む組織犯罪に対処する関係機関が統合されることにより、情報の共有化が進むなど業務の効率化を図ることができる
 なお、一元化された治安、保安関係行政機構の具体的な在り方に応じ、このほかのメリットも生じ得るものと考える。

(2)一元化のデメリット
 治安、保安関係行政機構を一元化させることは「権力機関」の肥大化につながるとの見方をされることがあり得ることから、適切な担保措置を講じなければ、国民の危惧を増大させることが懸念される。

3 結論

 いずれにしても、治安、保安関係行政機構を一元化するか否かについては、省庁再編全体の中で論じられるべきものであり、全体をとらえた高度の判断によるものであるべきものと考える。

危機管理、災害対策、情報(インテリジェンス)機能について、政府全体として充実させていくにはどうしたらよいか。

1 総論

(1)事案対応能力の向上とインテリジェンス機能の強化
危機管理機能を強化する(突発事態に迅速、的確に対応できるようにする)ためには、
1)テロ、災害その他の突発事態発生時の事案対応能力(執行力)の向上
 2)平時において、テロ等の突発事態を未然に防止し及びテロ等の発生時に効果的な対応をとれるよう準備するための、国の公安に係る情報機能(インテリジェンス機能)の強化
の双方を図ることが必要である。

(2)危機管理関係省庁の機能強化と内閣による総合性確保の必要性
 事案対応能力の向上を図るためには、警察庁等事案発生時に直接自らが対応する省庁の機能強化を図ること(執行力の強化)が、何よりもまず重要である。他方、執行権限を有する省庁だけで政府として必要な対応をすべて講じることは不可能であり、行政の総合性を発揮する観点から内閣機能の充実を図ることも重要な意義を有するものと考える。
 また、国の公安の維持を図る観点から、警察庁自体のインテリジェンス機能の強化を図っていくことが重要であるが、その際には、防衛庁、外務省等と情報交換等連携の強化を図っていくことが、今後とも必要であると考える。

2 政府全体における警察庁の位置づけ
 警察は、26万人強のマンパワーを有し、全国各地に数多くの拠点を有し、24時間体制で地域に密着した活動を展開するとともに、交通規制権限、捜査権限を持ち、24時間運用している独自の情報通信システムを有している。また、警察は、公共の安全と秩序の維持という責務を果たすため、日頃から、必要な情報の収集・分析を行っている。
 警察庁は、直接に活動を行う都道府県警察と常に緊密な連絡をとり、指導・調整・指揮監督を行うとともに、警察独自の通信網を設置・管理・運用している。
 このようなことから、政府全体として危機管理能力の向上を図る際、警察庁はその核となる存在の一つであるものと考える。

3 警察庁としての対応

(1)事案対応能力の充実・強化について
 警察においては、従来から、災害等の危機に強い警察独自の通信網の整備、集団警備力としての管区機動隊の整備等を行うなど、事案対応能力の強化を図るため各種の施策を講じてきた。
 また、近年の情勢にかんがみ、ハイジャック等の重要凶悪事件に対応するための特殊部隊(SAT)の新設、大規模災害に対処するための広域緊急援助隊の新設、警察庁・管区警察局と現場との情報連絡体制の充実等の措置を講じたところである。
 しかし、地下鉄サリン事件におけるサリンの使用等これまでの常識では計り知れない新しい形態の事態が発生していることから、常に、新たな事態に対処することができるよう能力の向上を図っていかなければならないものと考える。

(2)インテリジェンス機能の充実・強化について
 警察においては、公共の安全と秩序の維持という責務を果たすために必要な情報の収集・分析を行ってきており、さらに、オウム真理教という従来とは全く異なるタイプのテロ集団の出現にかんがみ、情報収集・分析体制を強化したところであるが、引き続き一層の機能向上に努めなければならないものと考える。

(3)官邸との連携体制の強化
 阪神・淡路大震災の教訓にかんがみ、現場の状況をリアルタイムで伝達できるようにするため、官邸と警察庁の間に画像送信ルートを設置するなど、官邸との連携体制の強化を図ったところである。今後とも、官邸の対応部門とのより一層の連携強化に努めなければならないものと考えている。

4 結論
 このようなことから、危機管理、災害対策、情報(インテリジェンス)機能を政府全体として充実させていくためには、これらの機能を自ら果たす警察庁等の省庁の機能強化と、内閣機能の強化とが並行して行われるとともに、連携の強化を図ることが重要であるものと考える。

広域事案、国際犯罪への対応力の強化を図る観点から、都道府県単位の警察組織の在り方についてどう考えるか。

1 国と地方の間における事務配分の基本的考え方
 現行の警察法では、地方自治を尊重する観点から、皇宮警察に係るものを除き、執行的性格を有するすべての警察事務を自治体としての都道府県の事務としている。しかし、警察事務は、本来国家的又は全国的性格を併せ持つものであることから、国家的又は全国的要請に応じ得るように必要な仕組みが設けられている。
 すなわち、警察の組織単位は都道府県警察とされ、警察職務の執行は都道府県警察が行うものとされているが、警察庁長官は、警察庁の所掌事務について、都道府県警察を指揮監督すること等が定められている。

2 広域事案への対応

(1)都道府県警察は、必要に応じ、管轄区域外において職権行使することができる。

(2)一の都道府県の能力をもってしては処理することができない事案に対応するため、警察庁又は他の都道府県警察に対して援助の要求をすることができる。

(3)警察庁は、広域事案について全国的観点からの指導・調整・指揮監督を行うことができる。なお、警察庁には、地方機関として管区警察局が置かれており、管区警察局は管轄区域内の府県警察に対して指揮監督を行っている。
 警察庁・管区警察局は、例えば、
ア 複数の都道府県において同一の犯人によるとみられる窃盗事件が発生した場合、関係都道府県警察の共同捜査を行わせること
イ 複数の都道府県の境界付近において発生した事案の初動捜査に当たるため、関係警察が共同の捜査隊を編成した場合、管区警察局がその指揮官を派遣するなど所要の調整を行うこと
   ※平成6年の警察法改正により指揮の一元化に関する規定を整備
ウ オウム真理教事件のような広域組織犯罪が発生した場合、個々の事象の発生場所にかかわらず、警視庁や大阪府警察等にその処理を指示すること
   ※平成8年の警察法改正により警察庁長官の指示権等を新設
などを行っている。
 なお、数都道府県の地域に関係のある重要な犯罪の捜査に必要な旅費、物件費、捜査費その他の経費については、国庫が支弁している。

(4)広域事案に対応していくためには、複数の都道府県にまたがる通信手段の確保が不可欠であるが、これを警察庁が全国を統一的に設置・管理・運用している。大規模な事故や災害等の発生時においては、警察活動に必要な通信手段を迅速に確保する必要があるが、管区警察局の機動警察通信隊が臨時の通信系の設定その他警察活動に対する情報通信面での広域的な支援を行っている。

(5)全国的な幹線道路については、国において、交通規制を斉一化し、全国的な観点から交通の安全と円滑を図ることとしている(道路交通法において国家公安委員会の都道府県公安委員会に対する指示権を規定)。高速道路については、各管区警察局に置かれる高速道路管理官がその事務を処理している。

(6)一の都道府県の集団警備力(機動隊等)をもってしては対処することができない事案に対応するため、当該管区内の府県警察の警察官から構成される管区機動隊を管区警察局ごとに編成し、管区警察局の指導調整の下、サミット等の警備をはじめとする様々な治安事象に対処している。
 また、大規模災害に対しては、都道府県警察の枠を越えた迅速な広域的対応が必要であることから、現場における救出救助活動に従事する警備部隊と広い範囲における緊急輸送路の確保等に従事する交通部隊から構成される広域緊急援助隊を同様の方式により編成し、これに対応している。

(7)警察庁では、都道府県警察から手配された「人(指名手配被疑者等)」、「物(盗難品等)」等をコンピュータで管理し、都道府県警察の現場警察官からの照会に回答している。また、被疑者写真、犯罪手口原紙や被疑者指紋を一括して管理し、都道府県警察からの照会に応じている。

3 国際犯罪への対応

 国際犯罪に対処していくため、国内の関係法執行機関との連携を図るほか、外国の法執行機関等との間における情報交換をはじめとする密接な連携、協力を行っていくことが重要である。外国の法執行機関等との間での国際協力は、国の機関である警察庁が実施していかなければならないことから、警察庁としては、平成6年に国際部を新設するなどして外国法執行機関等との連携を更に強化するとともに、都道府県警察のオペレーションについての指導・調整を図っていくこととしている。
※ 警察庁は、国際的な捜査協力を行う上で重要な役割を果たしている国際機関であるICPO(国際刑事警察機構)に加盟している。

4 結論

 犯罪の広域化等に対処するため、既に述べたとおり、現行法の基本を踏まえた上で、都道府県警察相互間、都道府県警察と警察庁との関係についての所要の法改正が行われてきたところであり、これにより全国警察が一体となった取組みが可能となっている。
 以上のことから、1で述べた国と都道府県の間における事務の配分の基本については、今後とも維持されるべきものと考える。


行政改革会議(目次)第12回議事概要