警察庁追加説明資料(5月21日)

行政改革の趣旨に照らし、各省庁において、今後取り組むべきと考える(取り組もうとする)改革方策をご提示願いたい。

1 警察行政は国が直接関与すべき業務

(1)「治安(国民の安全)の確保」は行政が担うべき事務
 警察は、個人の生命、身体及び財産を保護し、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締りその他公共の安全と秩序を維持することを責務としている。
 この治安の維持という機能は、第139回国会における橋本内閣総理大臣所信表明演説に、「外交、防衛、治安、財政など国家存続のための機能」とあるように、国家存続のために必要不可欠のものであり、官民の役割分担では、正に行政(官)が担うべきものと考える。

(2)国は国家的観点からの調整、執行は都道府県
 現行の警察法では、地方自治を尊重する観点から、皇宮警察に係るものを除き、執行的性格を有するすべての警察事務を自治体としての都道府県の事務としている。
 その一方で、警察事務が国家的性格と地方的性格を併せ持つものであることから、警察庁長官が警察庁の所掌事務について都道府県警察を指揮監督することができるなど必要な仕組みが設けられている。
 このような事務配分を前提としつつ、犯罪の広域化、国際化、国としての危機管理機能の強化等の観点から、国の警察機関の機能は、今後より一層強化すべきものと考える。

2 改革方策

(1)いかにして「治安(国民の安全)の確保」を図るかが基本的視点
 今回の改革に際しては、警察について、その政治的中立性の確保、民主的運営の保障を図りつつ、治安、保安関係行政機構全体として、良好な治安水準を維持していくことが根本課題であると考える。

(2)「組織犯罪との対決」が21世紀に向けた治安確保上の最重要課題
 治安を取り巻く環境がより厳しくなっていく中で現在の良好な治安水準を維持していくためには、国民が犯罪の被害や交通事故に遭わないようにするなど市民生活の安全の確保を図ることが必要であるが、中でも、組織犯罪対策、危機管理対策が重要である。
 ことに、銃器・薬物の我が国への流入、外国人犯罪組織の日本進出等を踏まえ、テロ集団、暴力団、外国人犯罪組織等の組織犯罪に対する対策の推進が、21世紀に向けた治安確保上の最重要課題である。

(3)危機管理対策の強化は当面の緊急な課題
 危機管理対策については、行政改革会議において取りまとめた内閣の危機管理機能の強化に関する意見集約にもあるように、いわゆる危機管理機能の強化については行政全体の問題として、国民の期待が大きく、また、具体的な対策そのものは各省庁の責務である。
 このようなことから、警察庁においても、内閣機能の充実と並行して、自らの機能強化(事案対応能力の強化、インテリジェンス機能の強化)を図ることが当面の緊急な課題である。

(4)警察庁の組織・体制等の整備・充実が重要
 警察庁においては、テロ対策を含む危機管理対策、組織犯罪対策等をより効果的に推進していくため、これらに対処する部門(管区警察局における対応部門を含む。)の組織・体制の整備・充実、官邸との連携体制の強化等を図っていくことが重要であるものと考える。

(5)政府全体としては、治安、保安関係行政機構の機能の充実が必要
 組織犯罪対策、危機管理対策については、警察庁を含めた治安、保安関係行政機構全体としての機能強化が必要である。
 なお、治安、保安関係行政機構を一元化した場合は、「治安(国民の安全)の確保」という行政目的ないし機能(価値)の下に行政の諸資源を統合することとなり、マンパワーの効率的運用、情報の共有化など、運用の効率化を図ることができるものと考える。
 ただし、捜査権を有する機関である鉄道公安職員制度を廃止して都道府県警察の業務とした例のような場合には特段の問題はないが、治安、保安関係行政機構の執行部門は、国、都道府県、市町村に分かれているため、中央省庁において一元化が行われても、執行部門を統一できないものの場合には、中央省庁間における調整事務はなくなるが、執行部門相互間の調整に要する事務自体はなくなるものではなく、同一省庁内における国、都道府県、市町村というレベルの違いによって生じる調整事務が生じることとなるものと考える。
 いずれにしても、一元化するか否かについては、省庁再編全体の中で論じられるべきものであり、全体をとらえた高度の判断によるものであるべきものと考えている。
 なお、治安、保安関係行政機構を一元化した場合にあっても、個々の事務はそれぞれ法に定められた目的に従い行われるものであって、「犯罪捜査」目的以外のものが「犯罪捜査」目的から行われることになるものでないことは当然である。

3 補論

(1)公安委員会制度は政治的中立性を確保する上で重要な機能を果たしているが、「権力機関」の肥大化という懸念に対する一つの担保措置
 公安委員会は、警察の政治的中立性の確保、警察の民主的運営の保障について、重要な機能を果たしているものと認識しているが、上記担保措置としても機能するものと考える。
 なお、情報公開については、警察庁が治安、保安関係行政機構であることを理由に、一律にその対象から除外されるべきであるという見解は取っておらず、基本的には、その対象となるものと考える(情報公開に関する考え方については別紙1参照)。
 個人情報の保護に徹底を期することは当然であるものと考える。

(2)警察業務の一部分離には大きな弊害
 現行の警察組織では、捜査活動、交通規制等の交通警察活動、部隊活動、情報収集活動、通信活動等の諸活動を有機的に連携してその機能を発揮させているところであり、また、マンパワーとしても機能ごとの細分化を避け、総合的に運用しているところである。
 このようなことから、交通警察等警察業務の一部を分離することには大きな弊害があり、適当ではない(交通警察分離の弊害については別紙2参照)。

(3)危機管理において管区警察局は重要な機能
 管区警察局が犯罪の広域化等に対し、重要な機能を果たしていることは、「ヒアリング項目に対する回答(警察庁)」9頁以下にあるとおりである。
 ことに、テロ、災害等突発的に発生する事象に対する危機管理については、国として迅速な対応が求められるところである。
 このような場合において、的確な措置をタイムリーに講じていくためには、できるだけ発生現場に近い地点に国の指揮・活動拠点を設けることが望ましく、管区警察局は、このような危機管理における指揮・活動センターとして大きな機能を果たしている。
 危機管理を要する事態が発生した場合、国の警察機関の最前線である管区警察局は、いち早く情報収集に当たるとともに、管区警察局ごとに編成された管区機動隊、広域緊急援助隊の運用、管区警察局に置かれた機動警察通信隊の出動、管轄区域内の府県警察に対する指揮監督、警察庁・他の管区警察局との連絡・調整等に当たっているところである。
 なお、阪神・淡路大震災の際、近畿管区警察局は、「災害警備本部」を設置していち早く活動を開始し、広域交通規制、管区機動隊の派遣等重要な機能を果たしたところである。


別紙1

情報公開に関する考え方について

1 情報公開法制に関しては、昨年12月16日に行政改革委員会から内閣総理大臣に対し、全ての行政機関を対象とした「情報公開法制の確立に関する意見」が具申されたことを受け、政府において、この意見を最大限に尊重して、情報公開法案の立案作業を行っているところであるが、警察庁としても、他省庁と共同してこの問題に取り組んでまいりたいと考えている。

2 警察の保有する情報には、プライバシーに関する情報、それが公開されることによって犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれのある情報等、開示すべきでないものがある。
 情報公開法が制定された際には、法の定めるところにより、可能な限り情報公開に努めていく方針である。

3 なお、都道府県警察の保有する情報の公開制度については、当該自治体において判断されるものであるが、国の情報公開法が制定された場合には、その趣旨にのっとり、行われることが望まれているものと承知している。


別紙2

交通警察分離の弊害について

1 交通安全の水準低下(又は行政のスリム化に逆行)
 警察では、交通警察官、地域警察官、機動隊等の現有マンパワーを総合的に運用し、かつ、全国で約1,300の警察署を拠点として、24時間体制で、交通違反の指導取締り、交通規制等の交通警察活動を一体的に推進している。
 このようなことから、交通警察活動を警察とは別の機関で実施することとする場合、新たな機関が現在の交通警察官の人数分だけの体制となったときは執行力の低下を招き、交通安全の水準低下につながるものと考える。
 また、現在の交通安全の水準を維持しようとすると、多数の拠点整備や数万人単位の増員をしなければならないものと考える。

2 災害発生時、大規模行事開催時の危機管理・治安確保能力の低下
 災害が発生した場合やサミット、オリンピック等の大規模行事が実施される場合、緊急通行車両の通行、要人の身辺の安全等を確保するため、一般車両の通行を制限し、迂回路への誘導を図るなどの交通対策が極めて重要であり、警察では、交通警察活動と他の警察活動とが一体となって危機管理・治安確保に当たっている。
 このような交通対策を担当する交通警察部門を警察から分離した場合は、警察の危機管理・治安確保能力を著しく低下させることとなるものと考える。

3 道路行政との一元化は交通管理の分散化を招来
 道路管理者は、国(建設省関係、農林水産省関係、運輸省関係)、都道府県、市町村等に分散されていることから、これと一元化した場合、現在都道府県警察において統一的に行われている交通規制等の交通警察行政がバラバラに行われることにつながるものと考える。
 また、道路管理者を都道府県に一元化した場合は、より住民に身近な自治体である市町村から当該権能を剥奪することになり、地方分権の趣旨に適合しないものと考える。