別紙4
(平成9年8月18日 藤田宙靖委員)
以下に、甲案及び乙案の二案を提案する。なお、この両案の中間的な解決をすることも、排するものではない。
甲 案 (省数最多のケース … 13府省2大臣庁案)
I 省庁編成
1.総理府(総務省)
・ 組織
本府
外局 宮内庁
防衛庁(大臣庁)
国家公安委員会(大臣委員会)
警察庁(特別の機関)
海上保安庁(特別の機関)
・ 機能
(調整・人事・行政管理・監察)
賞勲・恩給・統計・選挙制度
男女共同参画
皇室
防衛
警察・海上保安
2.地方自治省
・ 組織
本省
外局 消防庁
・ 機能
地方行財政
地方公務員
地域開発、振興、過疎・離島対策
消防、選挙実施の監督・統制
3.外務省
・ 組織
本省
・ 機能
外交政策
安全保障政策
文化・国際交流
海外の邦人の生命財産の保護
旅券・査証の発給
国際機関その他多国間問題
国際協力(平和協力を含む)
開発援助
条約等国際約束の締結
国際情勢に関する情報の収集・管理
4.法務省
・ 組織
本省
検察庁(特別の機関)
外局 司法試験管理委員会
行政審判庁
経済部
公害等調整部
特許部
海難審判部
(国税審判部)
(公安調査庁・公安審査委員会)
・ 機能
司法制度
戸籍・登記等
犯罪捜査、刑事法令、刑の執行
更正保護、犯罪予防
国に対する争訟
人権擁護
出入国管理
司法試験
行政審判
5.大蔵省(財務省)
・ 組織
本省
外局 国税庁
・ 機能
予算制度、予算・決算の作成
税制、税の執行
関税制度、通関行政
資金運用部
国有財産の管理
国庫制度、国債制度
通貨管理
6.経済省
・ 組織
本省
外局 金融監督庁
・ 機能
市場経済の条件整備、競争政策
産業経済政策、
通商政策
貿易の管理、輸出検査
中小企業の振興等
金融
工業所有権
7.国土整備省
・ 組織
本省
・ 機能
国土計画の策定
公共施設(道路・港湾・空港等々)の建設・管理
治山、砂防、治水、河川事業
水資源利用対策
土地利用計画、地価対策
都市計画、公園、住宅、
建築基準
防災
8.交通・通信省
・ 組織
本省
外局 (気象庁)
・ 機能
交通政策、交通・通信ネットワークの策定
運輸事業監督
交通安全対策
情報通信政策
放送規律、電波利用
電気通信規律、電波割当
9.環境安全省
・ 組織
本省
・ 機能
環境政策、地球環境問題対策
環境保全対策、環境影響評価
大気汚染防止、排出ガス規制
水質汚濁・土壌汚染の防止
産業公害の防止、リサイクル
廃棄物処理対策
原子力安全
自然保護、森林保護、自然公園
公衆・食品衛生、水道
医薬品安全
10.食糧・エネルギー省
・ 組織
本省
・ 機能
食糧の安定供給・備蓄政策
食糧(米、麦等)、畜産、その他農産物の生産、流通、消費
農地制度・農業生産基盤
食料品の流通、規格
水産資源の保護、
エネルギーの安定供給・エネルギー政策
鉱業権、資源の開発
原子力開発、利用
電気、ガス等エネルギー事業の監督
11. 生活福祉省
・組織
本省
外局 中央労働委員会
(社会保険庁)
・ 機能
雇用対策、労使関係、雇用安定、雇用開発
労働基準、監督、労働安全
高齢、少子化対応政策
保健医療政策、医療機関整備
難病対策、老人対策
社会福祉、生活保護
援護、戦後処理
年金、保険制度
児童福祉、家庭対策、母子対策
消費者保護
12. 科学技術省
・ 組織
本省
・ 機能
科学技術政策
宇宙、海洋等開発
研究開発
13. 文部省(学術教育文化省)
・ 組織
本省
・ 機能
青少年健全育成政策
小・中・高等学校教育
障害者教育
教職員養成、学校施設整備
大学教育
学術研究
生涯学習、社会教育、博物館・美術館等
体育・スポーツ振興
文化振興
文化財保護
著作権保護
宗教法人
II 横串機構
1.水際行政・外国人犯罪(コアー:警察庁)
2.経済協力(コアー:外務省)
3.通商(コアー:経済省)
4.防災(コアー:国務大臣または国土整備省)
5.男女共同参画(コアー:国務大臣または総理府(総務省))
なお、横串機構の詳細については、省庁間の調整システムの構築に関し、私の指示により事務局によって作成された資料が用意されているので、参照されたい。
III 説明
○ 総理府(総務省)
・ 総理府(ないし総務省)のあり方は、内閣機能のあり方をどう定めるかによって、大きく影響を受けるが、しかし、いずれにしても、総理大臣直轄であって総合調整事務・管理事務でないもの(その意味での実施事務)を行う組織が必要となることは、内閣機能の強化に関する私の意見書で、別に述べた通りである。しかし同時に、総理府の機能も、現状のように膨大なものであってよいわけではなく、現在総理府ないしその外局の機能とされている実施事務については、合理的な範囲内で、できる限り別の省庁へ移管さるべきものと考える。これが総理府についての考え方の出発点である。
・ 機能論の上では、「防衛」の機能は、他の機能から区別された独立性を見出し得るし、また、その受け皿となる組織についても、何らかの確定的かつ恒常的な組織が必要であることについて、委員間に争いはない。しかし、これを独立の「省」に担わせるのが適当か否かについては、意見が分かれており、ここでは、以下のような考慮に基づき、現状通り、総理府の外局としての「防衛庁」に担わせることが適当であると判断した。
第一に、自衛隊の合憲性の問題については、今日これを肯定する見解が広範に拡がってきた事実は認め得るが、しかしそういった状況の下でも、日本国憲法9条の下で全国家機能の中における防衛機能のありかたをどのように考えるかについては、未だ必ずしも国民的合意が形成されているとは言い難く、この問題が微妙な状況下にあることには、変わりはない。このような状況の下で、防衛庁を防衛省に格上げし、軍備増強を計るかの如き印象を与える国家行政組織の改変を行うことは、国の内外に対し、無用の摩擦をもたらすものであって、現実的に、必ずしも合理的な選択であるとは言い難い。
防衛機能を総理府の外局等の低次の組織に委ねている国はなく、我が国もこれと同様にすべきである、との指摘については、仮にそれが本来あるべき姿であったとしても、簡単にはそのようになれない、我が国固有の事情をもまた、考慮すべきであると考える。
第二に、「省」に格上げすることにより、自衛隊員の士気の向上が計られるという考え方があるが、この点については逆に、現行のように総理大臣が主任の大臣であること、すなわち総理直轄の組織であることにこそ、自衛隊員の誇りが存在する、との指摘もまた存在する。従って、総理府の外局としての防衛庁の位置付けを変更する必要は、この意味においてもまた絶対的なものではない。
・ 「治安」の機能についても、機能論としては独立性を認め得るが、その組織上の位置付けについては、そのコントロールのあり方を巡り、問題が残る。最大の問題は、国家公安委員会という行政委員会をそのトップに置く組織のあり方をどう考えるか、ということであるが、警察のような強力な実働力を抱える組織の最高の意思決定につき、単なる警察問題の専門家のみならず、一般常識を代表する国民からの意見を反映し得る現行のようなシステムを設けることには、今後その運用方法について更に検討さるべき点があることは別として、組織編成上の意義は、これを充分認めることができる。
なお、国家公安委員会の組織上の位置付けの問題については、総理府の実施機能を減らすという基本方針に立ち、また、機能論上、警察が有する「法秩序の維持」という観点に着目すれば、法務省との共通性を認め、法務省の外局とする考え方も或いはあり得ようが(例えば、現行制度の下でも、検察と警察の間の密接な協力関係は要請される)、「公安」と「人権擁護」との間にある相反関係、また、「防衛」の場合と同様、緊急時における総理大臣の指揮権の問題等を考慮すると、現行通り総理府の外局とするのが、最も合理的であると考えられる。
・ 因みに、海上保安、麻薬取り締まり、等の業務は、組織のスリム化、業務の統一化の見地から、警察業務に統合されてよいものと思われる。
・ 地方自治省の組織的位置付けについての帰趨によっては(乙案参照)、消防の警察への統合、また、選挙事務の総理府本府への統合、も考え得る。
・ 水際に関わる行政(出入国管理、税関等)については、「治安」の側面をも持つことは事実であるが、それぞれそれ以外の本来の機能を有するものでもあり、「治安」のみを理由に一組織に統合することは、困難である。水際に係る治安維持の問題は、警察をコアーとする横串機構によって対処さるべきものと考える。外国人犯罪の問題についても、これと同様である。
・ 現行制度上総理府の外局とされている他の諸機関については、後述の通り。
○ 地方自治省
・ 機能論上、地方分権が推進されれば自治省の存在意義は無くなる、との考え方があるが、必ずしもそのように単純には考えられない。第一に、憲法上一章を設けて地方自治が制度的に保障されていることもあり、「地方自治」の制度を国家全体としてどのように設計し運営するかについて恒常的に企画・立案する機能は、決して無くならないのみならず、また第二に、国と地方公共団体間、また、地方公共団体相互間での利害調整は従来にも増して重要な問題となるから、こういった問題を専担する独立の行政組織は、やはり必要である。また、地方公共団体を抑制するためではなく、むしろその独立性を強化するために、国側に何等かの窓口組織が存在することの必要性は、今後とも必ずしも無くならないものと思われるのであって、このことは、いわば、国民に基本的人権が保障されたからといって、人権擁護のための国家機能がもはや不要となるとは言えないのと、同じことである。
・ 問題は組織論上にあり、単独の省として設けるには、(現行制度上もまた今後想定されるものとしても)自治省は、他の省と比してその組織が余りにも小さ過ぎ、組織上のバランスからして、かなりの無理が生じると思われることである。現行制度上の北海道開発庁及び沖縄開発庁は、単独の組織としての存在意義をもはや認め難いので、廃止されるべきものと考えるが、その担ってきた課題は、本来主として地方公共団体に移管されるべきものと思われるので、これを地方自治省が大々的に引き継ぐべきものでもない。
また、選挙制度及び消防制度についての企画立案を、(上記のような意味でなおその必要性が認められる)「地方自治」についての企画立案を行う組織と同一の組織が行わなければならない必然的な理由も無い。
・ 以上に鑑みるならば、独立の地方自治省の存在は、上記に見たような意味での地方自治制度についての企画立案が、主任の大臣を必要とするだけの特に重要な意義を持つ機能である、との判断がなされる場合、しかも、組織上のバランスについての特別の例外を認めることによってのみ、認め得る。ここでは、甲案として、このような選択を行ったが、このような選択がなされるのでない限り、地方自治に関する組織は、総理府の外局としての「地方自治庁」(大臣庁)としての位置付けをする(乙案参照)以外には、おそらく考えられないものと思われる。委員間の意見も、およそ、この両案に分かれている。
・ なお、以上のような判断から、地方自治省を独立の省として設置する場合には、専ら組織上のバランスからして、現在自治省が所掌している消防・選挙の両事務は、便宜上そのまま地方自治省に残すことも考えられる。
また、地域開発・振興、過疎・離島対策等についても、地方分権が進んだ後にもなお残る機能について、ここでの地方自治省の任務とすることが考えられる。
○ 外務省
・ 「経済協力」については、外務省をコアーとした横串機構によって対処。
・ なお、省名については、再編成後は全省庁の名称を現行のものと変えるべきである、との意見もあり、それなりの理由が認められるが、名称変更にこだわり無理をするまでのことはないと考える。但し、適切な名称が見出されるならば、変更することを否定するものでは毛頭なく、このことは、外務省、そして、以下に見る法務省、文部省等について、全て同様である。
○ 法務省
・ 現行制度上、総理府を始めとした他省庁の外局とされ、「中立・公正」かつ「専門的識見」の見地から設けられている紛争裁断機関の機能を、それらが有する「法秩序の維持」の観点を重視し、法務省の外局としての行政審判庁の下に組織的に統合する構想を、試みに提案したい。これは、これらはいずれも、実質上日本国憲法76条2項第二文にいう意味での「裁判を行う行政機関」としての性質を持つものであり、現行制度上も、多かれ少なかれ、第一審裁判に代替する機能を負わせられていること(審決に対する第一審裁判の省略、事実認定に関する裁判所との一定の関係、等)に鑑みたものである。
但し、現存の諸機関を、このような構想実現のためにどのように改組するかについては、多くの問題が残る。とりわけ、現行のこれらの機関には、単なる紛争の裁断だけでなく、第一次的処分を行う権限もまた与えられているものがあり(公正取引委員会による調査・処分、特許庁による審査等)、こういった機能をどう考えるか、という問題がある。理論的に言えば、審判機能のみを組織的に分離し、第一次処分については各省に権限を与え、一般行政手続法の世界に委ねるとの考え方が、一貫しようが、この点については、今後、行政委員会のあり方そのものをも含め、根本的な検討がなされなければならない。その際、紛争裁断という機能よりも、行政委員会による準司法手続そのものに他のシステムと違う固有性があることを重視し、この構造を維持するものとするならば、行政審判庁の組織上の位置付けとしては、法務省ではなく、総理府(総務省)の外局として位置付けることも、やむを得ない。
なお、国税審判部については、現行制度上の国税不服審判所には、第一審裁判に代替する機能は必ずしも認められておらず、また、通常行政との関係にもより密接なものがある等の理由から、とりあえずここには含めないこととしているが、しかし、理論的には、今後、国税不服審判制度そのものを改変することにより、行政審判庁へ統合する可能性も、考えられよう。
・ 現行の公安調査庁及び公安審査委員会が担っている機能については、実質上、既にその主たる意義は失われたものとして、破壊活動防止法と共に、その存在意義につき、再検討がなされて然るべきである。しかし、そこまでの法律改正をしないのであれば、これらの機関の従来通りの存続は、やむを得ない。
○ 大蔵省
・ 現行制度上大蔵省が担っている「金融行政」の機能は、金融秩序のあり方に関する企画・立案機能をも含め「財政」から分離し、他機関に委ねる。その理由は次の通りである。
「財政」と「金融」の関係については、機能論上は、どのような状況を前提とするかによって、両者は理論的に共通もし、また相反し得ることは、先に既に見た通りである(「覚え書き」その二)。再度敷衍するならば、両者の非分離が、過去我が国の財政・金融に様々な弊害をもたらしてきたことは、既に様々に指摘されている通りであるが、他面、金融危機の事態等にあっては、両機能の密接な協力が要請されることもまた、否定できない事実である。とりわけ、今日、我が国の経済が、一国限りの問題としてではなく、広く世界の経済秩序・金融秩序に影響を与え、また与えられるようになっている状況の下で、例えば昨今のタイの通貨危機の例に見られるように、我が国として早急かつ適切な支援体制を採らなければならないときに、財政支出と民間金融業の密接な連係プレーがなされなければならないといった事態は、今後とも、稀な例には止まらない可能性がある。
また、組織論上の問題としては、両者間の調整システムとして、どのような形が最も適切かが問題となるが、既に先に指摘したように(「覚え書き」その二)、省庁間調整であれば、微細な調整には円滑さが欠けるが、調整のプロセスは、対外的により透明なものとなり易いこと、逆に、省庁内調整であればまさにその逆が妥当すること、は、一般論としてやはり認めざるを得ないものと思われる。この点、省庁内調整においてプロセスの不透明性が残ることを前提とした議論は妥当でなく、情報公開制度の整備によって、この問題には充分対処し得る、との考え方もあり得るが、第一に、組織体を分けることに、組織相互間での見解の相違と調整すべき問題の所在を、単一組織である場合以上に透明・明確なものとする効果があることは、少なくとも一般論としてはやはり否定し難いこと、第二に、少なくとも、現在立法化が図られている情報公開法案の意図する限りでは、公開の対象となるのは、専ら「文書」化された情報に限られること、等の理由から、先に行った指摘は、やはり考慮されて然るべきものと考える。
このように、機能論上・組織論上共に、一般論としては、「財政」「金融」の分離・非分離論共に成り立ち得る。しかし、ここでは、このような一般論としてではなく、更に、政策選択上現在我々が置かれている具体的な状況を前提とした議論がなされるのでなければならない。すなわち、「財政」「金融」の相互関係につき、現在、「金融政策」並びに「金融業の監督」については、日銀の政策決定における独立性の強化、及び金融監督庁の設立という方法によって、既に政治的決着がなされている。先に見た、「財政」と「金融」の密接な協力関係が要請されるのは、主として「金融政策」のあり方を巡ってであるが、この点につき、両者の分離が既に決定されているとすれば、「分離」「非分離」問題の最も核心的な部分は、既に決着済みなのであり、そうである以上は、「金融システムに関する企画・立案」をどの機関が行うかということ自体は、さほど決定的に重要な問題であるのではないように思われる。そうであるとすれば、組織的に、なるべく簡明な整理の道を選ぶべきであって、それは、「財政」と「金融」の完全な組織的分離であろうと思われる。両者間の調整は、省庁間調整に委ね、また、内閣の強力な調整力を期待することとなる。
・ しかし他方、大蔵省を「財政省」とし、純粋に財政機能のみを担わせるべきかどうかについては、別様の考慮をする余地がある。現行の大蔵省が担う機能の中には、国庫金の管理・国有財産の管理等、財政・金融以外の機能もまた、存在する。この機能を、財政担当部局が必ず担わなければならないという理論的な必然性は無いが、しかし他方、両者を分離しなければならない必然的な理由もまた存在しない。従って、「財政」及び「国庫管理」「財産管理」の両機能を果たす組織としての大蔵省を残すことには、それなりの意義があるものと思われる。このような見地からまた、「通貨管理」機能を大蔵省が担当することは、「財政」「金融」に関する上記の問題とは別に、考えられてよい。「通貨」の発行は、中央銀行の権限である、との意見があるが、中央銀行が行うのは、いわば事実上の「発券事務」であって、通貨の発行権限そのものを日銀が有するわけではない。「通貨」の発行権は、国の主権の一部を成すものであり、民間銀行が権能を有し、また責任を負うべきものではない。
・ なお、国税庁が、極めて強力な公権力行使の権限を持つことと、徴税における中立性・公正性の確保の見地から、これを行政委員会組織とすべきである、との提案がある。この考え方が示唆するところは極めて重要であるが、ただ、徴税事務は、極めて多くの案件を一時期に処理しなければならない性質のものであり、行政委員会組織を持った機関にそのような機動性が確保されるかどうかは、問題である。例えば国税徴収委員会のようなものを作ったとすれば、このような機関のなし得ることは、国税の徴収事務に関する企画・立案を行うことに止まり、実施そのものに関しては、やはり、そのための組織(丁度、国家公安委員会に対する警察庁のように、特別の機関としての国税庁か?)を設置しなければならなくなるものと思われる。徴税組織それ自体のそのような複雑化が、果たして合理的であるのか、問題があるとすれば、それは、むしろ、徴税実施事務について、外部から効果的なチェックを行うような制度・システム(例えば、納税者訴訟、徴税オムブツマンの如きもの)の設置によって対処さるべきものであろう、と考え、ここでは、国税庁の組織そのものには、変更を加えないままとした。
○ 経済省
・ 「財政」から組織的に分離された「金融」の受け皿として、現在のところ、総理府の外局として、金融(監督)庁が設置されることが想定されている。これは、金融システムの企画立案に携わる組織と金融業の監督に当たる組織は別組織でなければならない、との理由に基づくものとされるが、ただその実質は、「企画・立案」の機能が、当面、財政当局たる大蔵省の手に残されたため、「財政」と「金融」分離の見地から、ともかくも大蔵省とは同一の組織としない、というところに重点があったように思われる。金融システムの企画立案を行う組織と、金融業の監督を行う組織が、およそ省立ての上で組織的に分離されていなければならない、という実質的な理由は、必ずしも見当たらないのであって、監督業務の中立・公正を担保するためであるならば、それはむしろ、金融監督庁それ自体についての組織上・手続上の整備(行政委員会組織の採用、手続きの公正さの確保、等)によって、対処さるべきものと考える。総理府に担わせる実施機能は極力減少させる、という基本方針に立つならば、新たな省庁編成の下では、「金融」の受け皿組織についても、この見地から再度の検討をすることも考えられないではない。
専らこのような見地から、ここでは、このような受け皿組織を、一応経済省に求めているが、この点については、委員間に強力な異論もあり、必ずしもこれに拘泥する積もりはない。ただ、このような異論として、例えば、「金融」と「経済(特に産業)」の間には、「貸し手」と「借り手」としての相反関係がある、との指摘があるが、この点については、このような意味での相反があるのは「金融業」と「それ以外の産業」との間であって、必ずしも、「金融行政」と「経済行政」との間ではないのではないか、と考える。とりわけ、今後、特定の産業の保護・育成からは、国家行政は撤退することが前提となる以上、産業行政の意味は、従来とは大きく異なってくることに留意する必要があろう。
・ マクロ経済については、内閣機能の強化策の中にこの問題を取り入れるか否かによって、結論が左右されるところが大きいが、仮に内閣に「財政経済諮問会議」のような組織が置かれたとしても、それは、内閣機能の性質上、おおむね、現在経済企画庁調整局が行っている、経済全般の運営基本方針・毎年度の経済大綱の策定等の作業を行うに止まらざるを得ないのではないかと思われる。ここでは、このような意味で、内閣で担当する機能以外の作業を担当する部局が別に存在することを前提として考えた。
・ 「経済」については、「産業」のみならず、「運輸」「労働」「情報・通信」等、広い範囲での国家行政機能が関係してくるが、「交通」「労働」「情報通信」等については、「経済」とは別の観点から別の省立てをするものとし、市場経済の条件整備、競争政策の企画立案等、今後の我が国経済秩序の根幹に関わる機能を中心として、「産業」をここに括るものとする。
・ 中小企業の振興については、このような機能が、今後とも国の行政機能としてなお必要であるとしても、内局中に独立の局立てをすることで足りるのではないかと思われる。
○ 国土整備省
・ 単なる「社会資本整備」ないし「公共施設の建設」ではなく、より総合的な見地からの「国土整備」を担う組織として構成する(「覚え書き」その二を参照)。「社会資本整備」ないし「公共施設の建設」自体は、一定の目的を達成するためのツールであるに過ぎず、それ自体が目的であるわけではないから、国家行政機能の一つとして捉える限りは、どうしても「国土整備計画の策定と実現」という目的と結合させることが必要となる。
なお、「開発省」の名称の提案もあるが、「開発」の語は、人材開発、技術開発その他、様々の語と結びついて用いられるところであり、単独に用いたのでは、必ずしも内容を特定しない憾みがある。また、ここでいう「国土整備」は、国土の単なる「開発」のみならず、計画的利用等をも含めた概念であり、例えばドイツ語の Raumordnung の語に対応したものを考えている。
・ なお、「防災」について横串機構の創設が要請される。その際、この機構自体に独立の大臣を置くことも考えられるが、そうでない限りは、国土整備省がコアーとなるのが妥当であると思われる。
○ 交通・通信省
・ 「交通」「情報通信」は、それぞれ、事業規制、国土整備、科学技術、等々に密接に関係し、従って、それらの見地から、「国土整備」、「産業(経済)」等に包含することも、選択肢としては可能である。しかし、ここでは、当面次のような考え方から、標記のような一省を別立てすることを考えた。
第一に、「国土整備」は、極めて広範な対象を持つので、仮に実施事務をアウトソーシングしたとしてもなお、その組織はかなり巨大なものとなり、組織論上、省庁間のバランスの見地から、いささかの問題が残る。従って、この省の場合には、通常とは逆に、理論的に分離が可能であり、それなりの合理性を持つものは、総合的な国土整備省を設立する趣旨と抵触しない限りで、組織的にも別立てをすることを考える余地がある。
第二に、機能的に見て、「交通行政」「情報通信行政」には、それぞれ、単なる事業規制や施設整備等に止まらないソフト面において、固有の側面を見出すことが可能である。例えば、情報通信という新たなメデイアを用いた経済取引が円滑に行われるためのセキュリテイ対策、インターネットにおける倫理規定の整備、そして未来型地域交通システム等、環境負荷が少なく、経済的合理性のある物流、人流システムの開発等、いわば「人・物・情報」の交流・移動に関するルール・秩序の設定維持等がそれである。こういった機能はすなわち、21世紀における新たな社会制度、システムの設計・運営に他ならず、独立の省を置くだけの意義は、認め得るものと言えよう。
・ 「交通・通信」につき独立の省立てをする理由は、専ら上記のような理由に基づくものであるから、これを、単純に、現在の運輸省と郵政省を統合したものと考えてはならない。例えば、道路・港湾・空港等の設置管理については、これらの配置を含めた交通・通信ネットワーク案を策定するのは交通・通信省の任務であるが、それを総合的国土整備計画の中に組み入れ、現実の建設計画を立てるのは、国土整備省の役割である。また、情報通信に関しても、情報通信産業の規制にかかる任務は、おおむね産業行政の一部と考えるべきであって、交通・通信省の任務は、専ら、例えば、有害な放送内容の規制基準の策定、チャンネルの割り当て等、情報通信固有の見地からの関与に止まる。
・ 気象庁については、アウトソ−シングの可能性がある。
○ 環境安全省
・ 環境問題は、今日必然的に、全ての行政分野に関係するものであるから、縦串の省立てをするのでなく横串機構によって対処することも、理論的には考え得る。しかし、今日世界的な趨勢として、環境問題を総合的に担当する独立の省を置くのが一般的になりつつあること、また、環境問題に対する我が国の関心を広く内外に示すためには、独立の省立てをする方が望ましいと考える。
「環境」と他の機能とを組み合わせた一省を設ける案も、もとより不可能ではなく、その場合には、「環境」に上記のような性格があることから、そのどの面を強調するかによって、様々な組み合わせが可能となる。この点ここでは、今回の省庁再編に当たり、その省が、国民に対して何をしてくれる省なのか、を明確にし、その必要性を訴えるような編成を行うことが重要であるとの見地に立って、組み合わせを考えることとした。このような見地に立った場合、今日、環境問題が特に重要視されるのは、将来に向けて人間の生存基盤を確保することと共に、国民の身体・健康の安全の確保についての根本的な不安があるからであることに、目を向ける必要がある。そこで、環境行政の持つこのような機能に重点を置いて、自然環境に加え生活環境をも対象とすることとし、薬事、公衆衛生等に関する行政を、ここに含めることとした。
・ 「社会資本の整備」が純粋に「公共施設の建設」であり「開発」であるとすれば、このような機能と「環境」との間には相反が生じることとなり、両者を組織的にも分けることが不可避となるが、前者を「国土整備」として、「総合的国土整備計画の中に位置付けられた社会資本の整備」としての性格を与えると、総合的国土整備計画の中には、当然に環境問題の考慮も含まれることになる筈であるから、両者は必ずしも相反関係には立たないことになる。この見地からすると、両者を組織的に統合することにも、それなりの合理的理由があることになる。しかしここでは、第一に、「国土整備」がそのように総合的な性格を持つ機能であるにしても、しかしやはり、その中心は、「社会資本の整備」、ないし「公共施設の建設」等となるであろうこと、また、第二に、「国土整備省」のスリム化、第三に、先に見たように環境問題についての我が国の関心をアピールすることの重要性等を考慮して、両者はやはり分離することが必要であると考えた。
・ なお、上記の趣旨から、さしあたり「環境安全省」の名称を付したが、この名称自体については、更に、考慮の余地がある。
・ 林野行政については、今日もはやその意義を失った独立採算制の国家事業としての林野事業からは撤退して、公の施設としての林野の管理という見地に専念するものとし、その限りでは環境行政の一環として捉えることとする。
○ 食糧・エネルギー省
・ 食糧・エネルギーの安定供給の確保については、規制緩和が進むことにより、平時においては市場の機能に委ねられる部分が多くなるとすれば、国家行政としては、危機管理(例えば、総合的備蓄計画の策定・実施等)がその主たる任務となる。しかし、平時における機能が全く無用になるとは必ずしも考えられないのであって、例えば、価格の乱高下無く安定的な食糧供給を確保するための市場環境整備、中長期的なエネルギー需要を充たす安定的なエネルギー開発(電源開発・新エネルギー開発等)や省エネルギー支援措置などは、平時から着実な展開が必要な施策であると考えられる。また、国民の安心感の上からも、こういった機能を専担する独立の省を置くことが、望ましいものと考えられる。
・ しかしその際、従来採られてきたような、「食糧の安定供給の必要」=「食糧の国内供給力の確保」=「(米作)農家の保護育成」=「(米作)農家の定着の促進」=「農村居住環境の向上」=「公共施設・福祉施設の建設の必要」といった論理は、「食糧の安定供給の確保」の名目の下に、とめどもなく国家行政機能を拡大するものであり、チェックが加えられなければならない。そのため、例えば公共施設の整備に関しては、農村においてそれが必要であるとしても、この省が有する権限は整備計画の策定までとし、総合的国土整備計画との関係においてその現実の建設計画を立てるのは、国土整備省の任務とする等の、権限の仕分けが必要である。
・ なお、食糧とエネルギーとでは、対象が全く異なるため、従来はこれらの機能は通産・農水の両省に分けられていたが、今後の省庁編成に当たって重要なのは、対象とする業種の違いではなく、国民生活から見た機能そのものの共通性と相違とであり、その意味においては、この両者は、同一の意義を持つものとして位置付けることができる。
・ また、エネルギー行政の中でも、原子力の開発・利用と原子力の安全確保とは、一面相反するところがあり、しかも、安全確保の見地からのチェックの必要性は極めて大きいことから、後者については環境安全省の任務とすることとした。
○ 生活福祉省
・ 少子高齢化の社会への移行に伴い、他面では自己責任に基づく社会運営が不可欠となることから、働く意思と能力のある者は、それに応じて働く場を確保し、そうでない者には、それに応じた生活の道を保障される等、ライフサイクルに応じた総合的な生活設計を行うことが必要となる。このような生活設計は、第一次的には個人のなすべきことであり、またその条件整備も、第一次的には市場が行うことが期待されるが、しかし、公的な支援の必要が無くなるとは言えない。地方分権が進むにしても、国家全体としての制度設計・企画立案の機能はなお残るものとして、このような機能を担当する省を設ける。
・ なお、福祉と別に労働問題を専任する省を独立に設置すべし、との提案(すなわち、総合的な「生活福祉省」構想に対する反対意見)については、上記のような要請が広く存在する今日、何故に両者を必ず分離しなければならないのか、その理由が必ずしも理解できない。
・ 男女共同参画社会の建設という問題については、国務大臣または総理府(総務省)をコアーとする横串機構を設置。
・ 社会保険庁については、アウトソーシングの可能性がある。
○ 科学技術省
・ 科学技術は、全ての行政分野と関係するので、何らかの横串機構によって対処することも、理論的には考え得るが、ここでは、21世紀に向けて、科学技術立国を目指す我が国の姿勢を国の内外に広く示す意味において、独立の一省を設けることを考えた。
○ 文部省
・ 学術研究の振興、教育、文化の保存・振興等を担当する組織として、文部省を独立に存続させる。科学技術省と一体として一組織を構成することも、考えられないではないが、ここでは次の理由から、そのような道を選択しなかった。
学術研究・教育の振興とりわけ自然科学系のそれは、科学技術の振興と密接な関係を持ち、従って、両者間には、充分な協力体制が敷かれるのでなければならないが、しかし他面で、特定の政治目的・行政目的との間に保たるべき距離については、相違があり(「覚え書き」その二を参照)、しかも、学術研究・教育の存在意義を問う場合には、この距離の有無が、決定的に重要な意味を持つ。とりわけ、「科学」の位置付けにつき、この観点は、見落とすことができない。従って、両者は組織的に分離し、協力システムは、何らかの横串的な機構によることとするのを適当と考える。
・ 両者の分離に対する批判的な意見の骨子は、基本的には、今日、「基礎」と「応用」の二分、そして、前者は「大学」で、後者は「大学外」という単純な分業の構想は、もはや成り立たない、というところにある。その限りでは、全くその通りであると考えるが、学術研究・教育における外部圧力からの自由の必要性、並びにこの自由を保護する独自の組織の必要性を重要視する上記の見地から、ここでは、分離論を採用したい。
・ 但し、両者を、平行した二つの省として対立させるのが最善の道であるか否かについては、更に検討する余地がある。むしろ、科学技術を、専任の国務大臣をコアーとする横串機構に委ねることも考えられないではないのであって、これが乙案の一内容である。
乙 案 (省数最小のケース … 10府省3大臣庁案)
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