アジア女性基金事業実施に際しての総理の手紙

 政府と国民の協力により進められてきたアジア女性基金が事業を開始するに当たり、基金からお渡しする国民の償いの気持ち(償い金)に添えて以下のような総理の手紙を対象となる方々にお届けしました。

 いわゆる従軍慰安婦の問題を含め、先の大戦に係る賠償、財産・請求権の問題については、我が国としては、サン・フランシスコ平和条約、二国間の平和条約およびその他の関連する条約に従って誠実に対応してきており、これらの条約等の当事国との間では法的に解決済みです。

 しかし、政府としては、この問題が、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であると認識しており、道義的責任の観点から、アジア女性基金の事業に最大限協力してきているところであり、アジア女性基金の運営経費等の支援や基金が行う募金活動への協力、元慰安婦の方々に対する医療・福祉支援事業に対し資金拠出などを行うこととしたほか、これらの事業が行われるに際し次のような総理の手紙を発出することとしたものです。



拝啓

 このたび、政府と国民が協力して進めている「女性のためのアジア平和国民基金」を通じ、元従軍慰安婦の方々へのわが国の国民的な償いが行われるに際し、私の気持ちを表明させていただきます。

 いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。

 我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。

 末筆ながら、皆様方のこれからの人生が安らかなものとなりますよう、心からお祈りしております。

敬具

  平成八(1996)年

           日本国内閣総理大臣  橋本龍太郎 



従軍慰安婦問題への取り組み

△1991年12月    政府が、朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦問題につ

            いて調査を開始

△1992年7月    いわゆる朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦問題

            について(第一次調査)の結果を公表

△1993年8月    政府は、「いわゆる従軍慰安婦について」(第二次

            調査)の結果を公表

            政府が、軍の関与を認め、お詫びと反省の気持ちを

            表す

△1994年8月    内閣総理大臣談話において、従軍慰安婦問題につい 

            て国民参加の道を探ると発表

△1995年6月    官房長官が、政府の資金等による女性の尊厳事業

            基金の事業内容等について発表。

      7月    「女性のためのアジア平和国民基金」発足

            内閣総理大臣が、発足にあたって「ごあいさつ」

            を発出

      12月    政府が、基金を財団法人として許可 

△1996年6月    募金額が4億円を越える

      7月    募金から、元慰安婦一人当たり200万円をお渡

            しすること、同時に総理の手紙をお届けすること、

            また、医療福祉支援事業について、総額約7億円

            規模と正式に決定

      8月    比において、事業開始