1996年11月25日
(橋本総理)APECは、今回で発足以来8年目であり、本格的な行動の段階に入った。フィリピン会合は、マニラ行動計画の策定をはじめとして、内容のある多くの具体的成果が生まれたと思う。多様な文化を持ち、それぞれの文化を尊重し、また、発展段階の違う国がお互いに相手の立場を思いやりながら共に協力して進んでいくというAPECの特徴を活かしながら、貿易投資の自由化、円滑化ならびに経済技術協力といった二つの柱を車の両輪にしながら活動を一層強化し、具体的な成果を積み上げていくときに入ったと考える。
日本としても、当然ながら我々の過去の経験を生かしながらこうした方向に向けて出来る限り努力をしていきたい。漠然とした答えだが、私はそう考える。マルチの協力の問題もあるし、二国間の協力というものもあるが、どちらにしても日本は一層多くの役割を果たすものになっていくと考える。
(問)日本のITAに対する立場は如何。閣僚会合における話し合いのあり方に満足しているのか。
(橋本総理)ITAに関しては、当然ながらシンガポール閣僚会議までに取りまとめをするように呼びかけるという強いメッセージが発出されたことを評価している。今までのジュネーブでの会合でも積極的に推進してきたが、これから先もジュネーブでの交渉を引き続き積極的にリードしながら、APECメンバーをはじめとする各国の参加を働きかけていきたい。
(問)沖縄の普天間飛行場の代替ヘリポート問題についてお聞きしたい。総理は昨日の日米首脳会談で沖縄問題に区切りをつけたいと言われたが、12月2日の2+2では、ヘリポートの移転先とか候補まですっきり決まるものなのか、それとも大まかな方向性にとどまるものなのか、総理の見通しを聞きたい。
(橋本総理)沖縄県民の皆さんが基本的に理解してくれない限り、どのようなことを決めても実際の進展は難しいと思い、太田知事はじめ関係者との対話を大事にしてきた。2+2において、あなたの質問のように、非常にするどくきちんと答を出せたとしても沖縄県民のみなさんに十分説明が出来るほど、関係者の話し合いが煮詰まっているとは思っていない。それだけに、大枠を示す、あるいは方向性を示すという中で、その後の議論がどうすれば沖縄県民に受けとめて頂けるものになるかといった視点から考えて行くべきと考える。普天間以外にも、沖縄県に対して我々が果たしていかなければならない課題はたくさんあり、そうしたことにも我々は協力をしていきたいと考える。マスコミの皆さんにも是非協力をしていただきたいし、日米安全保障条約の持つ重みを考えると沖縄県民だけに負担をかけるのではなく、国民全体がその痛みを分かち合うという気持ちを持つことを願っている。
(問)総理は、今回の日中首脳会談において、中国との関係をどのように無償資金協力凍結の早期解除に向けて中国との関係を進められたのか。また、クリントン大統領が日米会談において保険協議の解決を主張したと言うが、どういう方向で解決に向かおうとしているのか。
(橋本総理)まず中国との関係については、明年、日中国交正常化25周年という節目を迎え、その年を日中関係の大きな前進のステップと出来るよう、心から願いながらさまざまな話を行っている。先日の日中首脳会談では、私はそのような思いの中で望んだし、江沢民首席も同じような気持ちを持っていただいたと思う。対中無償資金協力については、再開に向け鋭意検討を行っている。
また、クリントン大統領との保険協議に関する話については、今日、既に次官級の話が東京で行われているはずである。そして、その協議を受けてより高いレベルの話し合いも当然行われ、できるだけ早くこの問題に決着を図りたいと考えている。お互いの話し合いなのであるから、片方が100%自分の意見が正しい、相手が全面的に妥協すべきであるというのでは話し合いは成立しない。ですから双方で協力できる部分を探し、話し合いをまとめるという気持ちで交渉してくれるよう、今朝、マニラから大蔵省の交渉担当者に改めて指示を出した。米国側もそういう姿勢で交渉に望んでくれることを願っている。
それと同時に、我々は金融システム改革を真正面から取り上げようとしている。西暦2001年までに日本の金融市場が、ニューヨークやロンドンに肩を並べる市場となるよう、日本の金融システム全体を変えようとしており、これに逆行するような結果を出すわけにいかないと考える。
(問)コミュニケの中で、2000年までに関税をかなりなくすという表現があるが、バシェフスキーUSTR代表代行の話ではゼロ・タリフであるとの見解を述べている。総理は、この解釈に賛成か、また、他の首脳の方々はどういう考えであるのか。
(橋本総理)私は、バシェフスキーUSTR代表代行の解釈が正しいかどうかを有権的に解釈する立場にない。本日の非公式会合においては、他の首脳からも私自身もそのような視点からの意見を言う状況ではなかった。
(問)ラモス大統領はODA法の改正に関してどのような発言を行ったのか。また、それに対する日本の疑念は何か。
(橋本総理)ラモス大統領から、ODA法について特定の中味の説明はなかった。ただ、フィリピンは経済協力の最重要国であるので、経済社会開発を引き続き積極的に支援していくため、第21次円借款供与の意図を表明した。ODA法の問題については、ラモス大統領以下フィリピン政府の尽力を頂き、円借款の実施に問題がないとの判断であり、そのうえで供与の意思表明を行った。これからも引き続いて、円借款の円滑な実施のためにフィリピン政府と緊密に協議していきたい。
(問)日本のスポークスマンは、APECへの新規加盟問題に関して、日本はベトナムとペルーの加盟を支持するが、ロシア加盟については留保すると述べたが、ロシアに対して日本はどのような懸念を持っているのか。
(橋本総理)私の代理で会見をした人が誰か分からないが、APECの中で今日首脳レベルでも議論になったのは、モラトリアムを解除して新規加盟を受け入れるのか、受け入れるとすればどんなルールで受け入れるのかと行ったことである。確かにペルー及びベトナムについては、新規加盟受け入れの道を開けるなら開きたいという気持ちを持っている。しかし、プリマコフ外務大臣に先日会った際には、APEC加盟の話は出なかった。ロシアがアジア太平洋地域においてのあらゆる政治的プロセスに関心を持っていることは承知しており、また、一昨年の中小企業大臣会合の際にメンバーに加わりたいとの意見があったことも承知している。今後の新規加盟については、閣僚レベルで一つの考え方を示したばかりであり、未だ首脳レベルでどこを入れ、どこを入れないかを線引きする状況ではない。今後、ロシアが正式に加盟の希望を表明した段階で、当然検討する対象になろう。
(問)今回の会合で日中、米中関係の改善が見られたと言うが、総理が中国に対する無償ないしは有償の円借款を再開するに当たって、中国の民主主義の進展という問題を考慮されるのかどうかを伺いたい。
(橋本総理)中国が我々と違った政治体制を持っていることは、皆さん承知の通りである。我々は、中国の改革開放路線を支持してきたし、中国を国際社会の中に迎え入れることがアジア太平洋地域の安定を築いていく上でも、世界にとっても重要であると考える。質問の趣旨が分からないが、例えば中国と米国も、違った点を認めあったうえで、非常に円満な関係を築いたと聞いている。私は、クリントン大統領が4月に訪日した際にも、中国との関係を改善すべきであると述べていたので、そういう方向になったことを喜んでいる。有償資金協力についても、当然のことながら我々は努力をしていくつもりである。
(問)今回の宣言の中で、紛争調停の役割については触れられていないが、果たして紛争調停の機能はAPECの中ではどのように位置づけられるのか。
(橋本総理)APECが紛争処理、あるいは紛争の調停機関としての役割を持っているとは思っていない。APECは、加盟各国がお互いに、経済情勢も歴史も現実の社会状態も違うことを認めあった仲間であるので、紛争処理・調停機関と行ったぎくしゃくした体制にはないと私は考える。お互いがお互いの違いを認め合いながら協力をしていく、その中で解決できるものは解決するというものと考える。紛争処理メカニズムといったものを作り、事務局を置くようなものではないと考える。