特別報道番組 「総理と語る」

日 本 テ レ ビ

放送日:平成9年4月5日(土) 10:30 〜11:25

出演者内閣総理大臣 橋本龍太郎
聞き手江崎玲於奈筑波大学長、73年ノーベル物理学賞受賞
寺島祐二日本テレビ報道局政治部長
永井美奈子

VTR
出演者佐高 信 評論家 水谷研治 東海総研社長 橋本久美子 総理夫人



橋本総理にずばり迫る、総理と語る

----- はじめに、久美子夫人に総理の仕事について聞いてみた。-----

[橋本久美子夫人] 例えば通産大臣とか大蔵大臣とかをしていたよりも、よっぽど、本当に大変なんだというか、もちろん、どのポストでも責任が重大なことには変わりないんでしょうけれども、やっぱりもっともっと大きいという意味では大変さを感じています。主人自身も大変だなとぼやいたりしますから。

[永井] 橋本総理大臣が総理大臣に就任なさってから、昨年の1月7日のことですから、1年3か月が過ぎました。奥様にとっても随分大変な1年3か月だったようですが。

[橋本総理] 大変だったと思いますよ。というのは、だって39人のお巡りさんにいつも守られた暮らしって考えられますか。

[永井] そんなにいらっしゃるんですか。

[橋本総理] ですから、例えば家内が外へ出ても、子供が学校の行き帰りでも、たまたま官邸の玄関の警備のお巡りさんが初めての方だと、みんな不審尋問を食っちゃう。同時に私は勝手に歩かせてもらえなくて、ですから、よく前は家内の運転の助手台であちこち走り回っていたんですけれども、今は決められた車以外に乗るのを許していただけないですからね。やはり全然異質の生活、よく我慢してくれていると思っていますよ。

[永井] 奥様から注文と言うと失礼かもしれませんが、こんな御意見がありました。ごらんください。

[橋本久美子夫人] やっぱり健康が第一だと思いますし、もちろん、健康ですけれども、いやおうなしに年も取っていきますから、何ていうんですか、私どももなかなか、これ是非食べてほしないと思っても、自分が食べないと思ったら絶対箸を付けないとかそういうことがあるので、なるべく出された物は何でも食べてくれるといいなとか、やはり本当に元気であればこそ、よき決断とか、よき判断力とかいうのも出てくるんだろうと思いますので。

[永井] 総理、いかがですか。

[橋本総理] 今後ちゃんと食べます。

[永井] 以前、ブッシュ元大統領がプロッコリーはきらいだというふうにおっしゃって、いろいろな物議を醸しましたけれども、総理はおきらいなものは。

[橋本総理] 余り僕好ききらいないんですよ。そして、何でも食べちゃう方なんです。その上で、やっぱり疲れてて、どうしてもこれ以上箸が進まないとか、それから今日は煮た野菜は食べたいけれども、生野菜は余り食べたくないなとか、その逆さとか、日によって調子がある訳ですね。
もう一つは、お昼御飯が公邸の中、あるいは官邸の中にいる間は決められたメニューで、それしか当たりませんから、そうすると、ときどき晩によく似たものが出てきてしまう場合がある訳です。
そうすると、私からすると、お昼に食べたよと。もういいよ。家内の方からすると、一生懸命こしらえたのに何よということになるんで、まさか、しかし一々官邸のお昼のメニューを届けて晩飯決めてもらう訳にもいきませんし、今のでちゃんと食べます。食べないときには理由を言います。

[永井] 江崎さんは御家庭ではどうなさっているんですか。

[江崎] 今の話、うちの家内もしょっちゅう言われておりますから、同じようなものです。

[永井] そうですか。総理は剣道もお上手でいらっしゃるし、以前お会いしたときには写真集もいただきました。こういった御趣味の方は就任なさってからいかがですか。

[橋本総理] 剣道はそれでも何回か、このペルーの事件が発生するまでは出来たんです。あの事件が起きてから、ペルーと日本と時差が14時間ありますから、そうすると、剣道の練習、夜どうしてもやる訳ですけれども、その時間というのはちょうどペルー側で動きが始まる時間なんです、朝になって。何となくする気が起きないんですよ。山は全然行けないし、写真も、サミットのときにカメラを持っていって、休日に写真を撮っていたら、遊んでいると報道されて、それはそうなんです、休日なんだから。

[永井] そうですね。ありましたね。

[橋本総理] ところが、休日でもカメラを持つとそういう批判を受けるんだとすれば、使えないなと、正直思いましたね。

[永井] ずばり、総理大臣の平均睡眠時間は何時間でいらっしゃいますか。

[橋本総理] 今出来るだけ寝るようにしています。だから、どれくらいかな。7時間くらいトータル寝ているんじゃないかな、ということにしましょう。

[永井] さて、この時間は就任1年3か月になられます橋本総理大臣に日本が直面している問題などについて、筑波大学学長でいらっしゃいます江崎玲於奈さん、そして日本テレビの寺島祐二政治部長と一緒にお話を伺ってまいりたいと存じます。
それでは、まず当面の問題として沖縄問題です。
アメリカ軍用地が5月14日で使用期限切れが来ます。それを継続使用するための法律改正の国会の審議が始まりました。この問題について語っていただきたいと思います。

[寺島] 審議が始まったんですけれども、問題は国と沖縄との溝がますます開いているというか、埋まる方向にないという状態だと思うんです。
そこで、やはり必要なのは、国の基本的な方針として、沖縄にあるアメリカ軍基地が日本全体の75%も集中していると。その過度な集中を減らすという国の基本方針を出す必要があるんじゃないかと思うんですが。

[橋本総理] これは大変歴史の長い話ですし、私たち自身が本当に国土全体の0.6 %しかない沖縄県に、米軍の基地の75%を集中していると。それは沖縄の皆さんに大変な迷惑を掛けているなと。そして、その苦しみというのは大変なものだろうなと。真剣にそう思っています。それだけに、少しでも基地の面積を減らしたい。そして、その重圧を少なくしたい。去年SACOの合意をつくり上げたのも、私はこれは日本側だけじゃなくて、アメリカの関係者も一生懸命やってくれたというのは本当に認めていただきたい。
それがしかし、沖縄の皆さんを満足させるだけのものではないということ、そういう批判は私は甘んじて受けないきゃならないと思うんです。
ただその上で、実は今度問題になっている幾つかの土地を使わせていただきたいという問題、この手続は平成7年の3月3日に手続を開始した話なんです。
ところがちょうど、それから数か月後、一昨年の9月に大変不幸な事件が沖縄で起きた。そして、それ以来随分いろんな問題が集中しました。それでもぎりぎりまで収用委員会の御努力で、こういう法律をつくらないで国の権原を認めていただきたいと願っていましたが、5月14日に使用権原が切れるという時期になっても、もう時間的に間がないんですけれども、収用委員会の日程が決められない。そういう中で、日本としてはこれは日米安全保障条約というのが国の安全、基本にかかわる問題ですし、同時にその条約を基盤にした日米関係というのは外交の上でも一番我々にとって大事な関係です。
その中で5月14日から15日にカレンダーが変わったとき、使用する権原がない、不法使用の状態をつくる訳にはいきません。本当に最低限、収用委員会が結論を出されるまで暫定使用を認めていただきたい。そして、出来るだけ収用委員会の作業で早くお答えをいただけるように、そう願っていました。もう時間切れが近いということで、今回最低限の特別措置法の改正を国会にお願いをすることになりました。
議論が二つあるんです。両極端なんです。
一つは、要するに、こういう条約上の義務を履行することなんだから、もともと県にお願いすることの方が間違っているので、国が全部するべきだという考え方が一つ。
もう一つは、沖縄県の方々の痛みというものを先行して考えられて、条約上の義務というものの方が後回しになってしまう。どちらにも私はそれなりの理由がある問題だと。

[寺島] 特措法の改正そのものは、新進党の賛成で可決されるのが確実な情勢なんですね。しかし、この問題で各党の動きを見ますと、一体橋本政権ではどの党が与党なのか、余りよく分からないという感じになってしまいます。
これをきっかけに、これまでの自民、社民、さきがけという政権与党の枠組みが変わるのかどうなのか。橋本内閣の政権基盤の基本方針をお伺いしたいと思うんですけれども。

[橋本総理] そこまで今、考えるゆとりないです。そして、今でも僕は本当に法案を審議している、その間にでも収用委員会が裁決決定をしていただいて、そういう努力をしないでも済むような状態が生まれればいいと、本当にそれは祈っているんです。
そして、この問題は実は必ずしも党対党というよりも、一人一人の沖縄に対するかかわり、あるいは思い、いろんなものがねじれて、一人ずつの心の中にありながら、それを最大公約数で、必要最小限のこの法改正というのにどれだけ多くの方々が賛成していただけるか。これは同時に日米関係というものが安全保障条約をベースにしているだけに、例えばアメリカの方から見たとき、非常に多くの方々が賛成をしてくだすったな、それだけしっかりした基盤のあるものだと受け止めていただけるのか。あるいはその点、同盟国と言っているのに日本は何だという思いをさせてしまうのかと、そういう問題もあります。

[寺島] 現実的には政権基盤について、梶山官房長官と自民党の加藤幹事長の考え方の違いが表面化していますよね。

[橋本総理] それだけ透明なんですよ。我々隠して物をやってないから。

[寺島] 端的な話、これをきっかけに政権基盤の考え方が変わる可能性があるという認識でよろしいんでしょうか。

[橋本総理] 分かりません。これは今審議は始まったばかりです。そして、それぞれの政治家がある意味ではこの問題は党派だけではなくて、自分の信念をかけて議論をされる。

[江崎] アメリカ辺りでも民主党と共和党ございますけれども、いろんな問題で党派を超えて決めるという問題もあるんじゃないですかね。ですから、そういう性格のものかもしれませんね、今回のものは。

[橋本総理] ある意味では一人一人の政治家自身が自分の心の中を問われるという問題の一つでしょうね。

[寺島] もう一つ、当面の問題で端的にお伺いしたいんですけれども、ペルーの日本大使公邸の人質事件なんですけれども、イースター休暇明けに最終局面が来るのではないかと期待されていた訳ですけれども、進展の様子が全く見られないんですが。

[橋本総理] この話は本当に、大変申し上げにくい部分を持っています。そして、100日を既に超えて、中に入って出てこられるお医者さんたちの話を聞いても、人質になっておられる方々、これは日本人だけではなくて、健康状態はそれなりにいいと、それから、精神的にも安定していると言われていますけれども、もう僕は本当に限界に近いと思うんです。
そして、日本政府として、フジモリ大統領を信頼しながら、今まで日本として出来るだけの努力をしてきました。そして今、本当にシプリアーニ大司教、ヴィンセント大使を始めとする、寺田顧問もそうですし、ミニグ赤十字代表、この保証人委員会の努力に我々の願いのすべてがかかっています。それだけにこの保証人委員会から我々が求められる協力は、今までも全力を挙げてやってきましたし、これからも全力を挙げて努力をしていきますが、どうぞマスコミの皆さんも、余り夢豊かな報道をしないでいただきたい。それが打ち返しになり、結局中にとじこめられている人たち、またMRTAの心理状態にも影響して、随分交渉を苦しくしている。そんな場面が何回がありました。無事に終わってほしい、本当に。

[永井] それでは、続きまして橋本政権の最重要課題であります行政改革について話を進めてまいりたいと思います。
こちらをごらんください。
総理は、行政、財政、社会保障、経済構造、金融、教育の6つの改革を公約していらっしゃいます。この中で国民が一番期待しているのが行政改革と言われております。日本テレビの世論調査の結果でも4人に1人がまずは行政改革というふうに言っております。
総理の基本的なこの行政改革に関するお考えというのをまず伺えますでしょうか。

[橋本総理] 一言で言えば、これは実はどこまでスリム化出来るかということに尽きるんです。去年の衆議院選の間にも、実は私は地方分権とか官から民へ、そして、規制緩和というものを訴えながら、そういう努力をすれば当然仕事が減りますねと、それだけ中央の省庁は少なく出来ますねという言い方で行政改革を国民に申し上げてきました。
そして、その期間内に自分なりの考え方を整理して、行政改革だけではなくて、財政構造改革、経済構造改革、社会保障、これも構造改革、そして金融システム改革、最後まで迷いながら関係者をやっと説得出来たから、教育改革と、6つの改革という問題提起をした訳です。
これは実はみんな非常に細かく組み合わされて、第二次世界大戦に敗れた後、今日まで来る日本をそれぞれ支えてきたシステムなんです。ある意味では我々の暮らしの中にも何にも入り込んじゃっている。しかし、気がついてみると、それが日本の活力を今奪っているんです。ですから、その活力を取り戻さなきゃならない。そうすると、行政改革だけではない。これみんな必要なことなんですけれども、同時に言ったら欲張りだと言われて困っているんですけれどもね。

[永井] また構造上の改革という難しさもさることながら、やはり内に向けてのリスム化というところに難しさがあると思うんですけれども、例えば江崎さん、大学長でいらっしゃいますが、学内の改革というものの難しさと似ていらっしゃるんじゃないですか。

[江崎] そうでございますね。それは国の、橋本さんのやっておられるやつに比べますとスケールはうんと小そうございますけれども、やはり時代に応じて改革、先ほど総理がいろんな改革をおっしゃいましたけれども、やはり人間の考え方を変える、人間のライフスタイルを変える、仕事の仕方を変えるというところまでいかなくちゃいけないんじゃないか。
これは実はカリフォルニア大学の昔の学長をやったクラーク・カーという人が言った言葉で、学長たるものは一体何かということ。学長たるものは本当の指導者なのか、あるいは単なる役職保持者、オフィス・ホールダーなのか、あるいは本当の教育者なのか、あるいは単なるケア・テイカー、世話人なのか。それから権力を本当に行使されるウィルダー・オブ・パワーなのか、説得者なのか。
総理などは左の方でやっておられるんだと思いますけれども、日本のお役人の中には右の人が多いということが若干問題ではないかと思いますね。

[永井] いかがですか。

[橋本総理] というよりも、一番僕は面白いなと思ったのは、創造者なのか、意見の統一者なのか。それから権力の行使者なのか説得者なのか。実はここのところなんです。むしろ僕は第二次大戦後のこの50年というのは、むしろ日本という国、これはある程度目標がみんなそろっていましたから、むしろ創造者であったり、権力の行使者であるよりも意見の統一者、説得者、そしてある意味では世話人、そういう人の方が求められてよかったんじゃないでしょうか。

[江崎] そうですね。ケア・テイカー。それはこうだと思うんです。
西洋に追い付き追い越せ、日本の経済発展は西洋を真似してやる。そのときは、やはりグループと言いますか、集団、みんな一緒にやろうと。そういう時代、つまり協調精神とかそういうことが重要視された時代。ところが、今度の改革というのは、それぞれ個人がやってもらわなくっちゃ、時代を迎えたんじゃないか。やはり人間の改革。今までは確かにおっしゃるように、こちらの右側の人たちが。

[橋本総理] ですから、これが将来に向けた創造者なのか、あるいは創始者なのか、私は権力の行使者というのは余り好きじゃないです。だけれども、そういう言い方になるんでしょうね。そして、通りをよくするポンプなのかという、こちらの方が必要な時代。言い換えれば夢を自分で持って、そして、その自分の夢にチャレンジして、そしてそのチャレンジするだけではなくて、成功する可能性があるというのは、やはりこちらから見れば左側なんでしょうね。

[永井] この時期の強力なリーダーシップというのは必要だし、問われてくる時代だと思うんですけれども、この行政改革を行うに当たっての意気込みみたいなものを一言で、総理、お願いします。

[橋本総理] これは意気込みとか何とかというよりも、例えば私が今日、総理大臣を辞めさせられたとしても、明日、私の代わりにその席に就く方は、同じようにやっていかなければならない課題なんです。誰がなろうと。
そして、私自身の意気込みと言われると、これは本当に全力投球を続けますという言葉ですべてを申し上げるしかないんですけれども、私がとかいうことではなくて、誰がやろうとこれはやらなければなりません。それはそういう場面に日本は追い詰められているんです。

[永井] この後は行政改革の具体策について伺います。さて、総理の改革への取り組みについてこんな意見がありました。

[水谷] 改革が必要なのは何故か。今のままいったら将来の日本はないんだと、それくらい大変な事態になるということを切々と訴えるのが第一。
それから、大改革をやれば必ず落ち込む。悪くなる。景気がどんと落ち込んでくる。しかし、やる必要があるんだと。この言い方が重要なんです。その上で決断をしてやっていく。このやっていくのはいろいろありますよ。
例えば行政改革もその一つなんです。いろいろやらなければならない。やれるのは総理大臣だけです。総理大臣が決意を表明して、やっぱり取り組んでいただきたい。

[佐高] 自民党にとっては、官僚というはのはまさに身内、自分の体なんですね。自分の体を自分で切れるかという話だと思うんです。
その点、私は橋本さんという人は、余りに若くして政治家になって、官僚との関係が深いがために難しいのではないかという感じを強く持っていまして、何か私の心配のとおりに事態が進行しているという感じがします。

[永井] かなり厳しい意見でしたが、総理、いかがですか。

[橋本総理] 若くして国会に当選させていただいたことも事実です。そして、官僚の諸君を知っていることも事実です。ただ、そういうレッテルの張り方だけで済むような話ではないということだけは申し上げておかなければならない。
そして、私、本当にこのお年寄りの増えていく、そのスピードだけを考えたって、本当に我々は行政改革ばかりではない、この6つの改革を本当にやらなきゃならないんです。
私はこういう言い方で皆さんに改革というものを訴えてきました。そして、例えば何で社会保障構造改革が要るんだ。今毎年100 万人近い新しい年金の受給権の発生する方があります。それだけの人口の増えること、それは実はほかのものも含めていくと、社会保障関係費だけで毎年1兆円くらい新しいお金が必要になるということなんです。
しかし、それは、それじゃ借金として子供や孫の代にツケが残せるでしょうか。既にもう我々は子供や孫の時代から254兆円、国だけでです。借金をしてきました。
そしてよく国民負担率という言葉がありますね。これは普通は皆さんに払っていただいている税金と社会保険料、これを足したものを言うんですけれども、これだけだと今たしか38%をちょっと出たくらいです。しかし、これに国の借金まで、地方の借金まで入れていくと、実は既に45.2%、こんな数字になります。
これはパネルにしておけばよかったかな。経済審議会の皆さんがこういうものをつくったんでけれども、この図面を見てください。これ、今です。そして、まだ青い部分、すなわちマイナスの部分、ごくわずかです。

[永井] 青が赤字の部分ですか。

[橋本総理] そうです。25年、こんな姿になります。これは社会保障とか財政、破綻の構図です。そして、その国民負担率を私はだから財政構造改革の方で、とにかく赤字国債を2003年までに打ち止めに出来るようにしよう。そして、皆さんからいただく税金や保険料と借金を足したもの、その期間50%の中でとにかく食い止めよう。そのためには、来年の予算、平成10年の予算、これを今年の予算歳出の下にしようと、マイナスにするということを今めがけている訳です。
私は死に物狂いでそれをやっていかなかったら、この国の将来がないと本気で思うんです。

[江崎] そこでやはり1つの問題になるのは、省庁間の壁のようなものが、省庁の改編ですか。改編出来なければその壁を低くしていただくということ。例えば科学技術、日本、かなり科学技術基本法でお金を出していただく。これは必要条件で大変重要でございますが、それを一番エフェクティブに、有意義に使うためには、やはり省庁の壁というものを少なくするということが絶対に必要だと思うんです。

[橋本総理] 私本当に今の御指摘すごい大事だと思うんです。そして、その中でもむしろ国の科学技術、研究開発への投資というのは、基礎研究の部分に絶対厚目に投資をしていかなければなりません。その代わりむしろ、応用研究の部分は、私はどんどん民間で育てていただく。それが大事だと思うんです。
私自身国の機能というものを大きく分けたとき、国が存続していくために必要な機能と、それから国の富みをつくり出す機能と、国民の生活を安定させていくための機能、そして、教育とか文化の機能もある。
その教育と文化の機能と実は暮らしを豊かにする機能と富みを増やす機能と、これをずっと横につないでいく1つの線というのは、まさに科学技術、しかも創造的な科学技術研究というものが日本でどこまで出来るかです。
そして、今までその意味では必ずしも国の役割、そして、民間の役割というものが整理されてなかった。そして、国も応用研究に近い部分に随分よけいな投資をしてきた分があると思いますが、むしろこれから、財政がこれだけ厳しいんですから、今年の予算より実は来年はマイナスにしようとしている訳ですから、その中でやはり重点的に基礎研究の分野に国は厚みを付けていく。
また、科学技術基本法のベースというのはそういうところではないですか。

[江崎] そうですね。それは大変結構なことだと思うんです。

[永井] 具体的な改革の対象としてこんな意見があります。

[水谷] 郵政3事業は基本的には民間の出来ることなんです。それをまだ依然として官がやらなければいけないかというと、私は疑問があるんです。ただ、やめるとなったら、その影響というのは非常に大きいです。広範なところへ影響します。
例えば、郵便貯金ということは、財政投融資に直接関係してくる。じゃ、それも考え直さなければいけない。考え直しましょうや。必要であれば考え直す。もちろん、それに伴って多くの利害関係が出てきます。そして、マイナスになる人は反対しますよ。大反対が沢山出てきます。しかし、やるんです。何故か。必要だから。

[永井] 必要だからという意見がありましたけれども、まず、寺島さんの方から、その必要だからというところ、お願いします。

[寺島] 金融ビックバンというのが自由で公正でグローバルな改革をするということなんですけれども、その競争、金融改革から離れたところに郵便貯金が存在するということになりますと、かなりバランスが取れないものになるんじゃないかと、基本的にそう思うんですけれども。

[橋本総理] いや、別にそうじゃないんですよ。というのは、別に議論していない訳じゃないんですから。ただ、金融システム改革はまさに市場の話でこれは民間の話です。ただ、国民が資産運用される。安心して預けられるという意味では同じことですし、政府がその部分をやっている。だから、これは実は行政改革の方で非常に激しい議論が今行われている訳です。行政改革会議でね。
そして、財政投融資の要るところ要らないところ、これは議論いろいろあります。実はこの問題は離島とか山の中とかいう場所で意見を伺うのと都市で伺うのと違う議論です。だけれども、検討する必要があることは私もそのとおりだと思いますよ。

[寺島] 検討の対象というのは当然だと思うんですけれども、今の水谷さんのような方向性のある意見に対して、総理自身はどういうふうにお考えですか。

[橋本総理] 今、僕、この問題については意見を言わないことにしている。何故かというと、非常に自由な議論が進んでいるんです。そして、頑強に今の制度がいいと言っている方もあります。
それから、思い切って全部民営化してしまえ。その代わり過疎地や離島の場合は、便利なところよりも料金が掛かったってしようがないじゃないかとおっしゃる方もあります。
それから逆に、両方一緒にやればいいじゃないかと。まさにクロネコヤマトと郵便小包一緒に競争すればいいじゃないかという意見もあります。
そして、私、正直、どんどんどんどんこれから議論変わっていくと思いますよ。
同時にもう一つは、財政投融資という、国民から貯金でお預かりをしたものを運用する機関としてこれが動いている。だけれども、それが適切か。そういう意味での見直しもある訳です。
だから、一つ方向からだけでは議論出来ない部分があることは分かってください。その上で、今でもいろんな公団の名前が挙がっていますね。それが整理統合の対象にされたり、あるいは今特殊法人は、実は私、党の方にちょっとお願いしているんだけれども、党の方で廃止の方針を打ち出されているものも出てきてる。どんどんどんどん今そういうふうに動いているんです。
だから、単線運転じゃないというところだけは分かってください。

[寺島] 郵便貯金を財源にした特殊法人の事業なんですけれども、総理自身もお触れになりましたけれども、特殊法人によっては、まるで崩壊した社会主義の官僚のやり方を見るような部分がありますね。だから、いい面というのがよく分からなくて、郵便貯金の集め方にしても、国の信用をバックにして集めて、使い方も弊害ばかりが目立つというふうな印象が非常に強いんですね。

[橋本総理] これは私、決して全部特殊法人が、今あなたの言われたようなものばかりだということに賛成する気はありませんよ。ただ、逆に特殊法人というものも絶対に見直さなければならないと。そして、既に見直し作業は始まっている。
これは村山さんのときにつくっているので、一定のものを今動かしていますけれども、それ以外に残っている特殊法人全部を爼上にのせていかなければなりません。今全部を一度に私のところばかりで出来ないから、実は行政改革会議で中央省庁をやりながら、行革委の方に規制緩和の仕事をお願いし、地方分権推進委に分権の方をお願いし、そういう形の中で実は特殊法人は党の方にどんどん作業をお願いしている。第一弾がこの間出ましたけれども、この次恐らく政府系金融機関に対して、これもみんな特殊法人です、チェックが入っていくでしょう。そして、それは統合されるかもしれないし、もう民営にしていいということになるかもしれないし、当然それは変わります。

[永井] この後は日本の未来像についてお話を伺います。
改革というのは必要に迫られて、今しかないという総理のお言葉がありましたけれども、改革のその後というのが私たちにはまだ見えてこないというのがあるんですが、5年後、10年後の日本の将来について、総理、いかがですか。

[橋本総理] 5年後に、あるいは10年後、財政構造改革はまだ進んでいる最中ですから赤字は減りますし、それから赤字国債もどんどん減っていきますけれども、まだまだ実は国の財政としては大変厳しい状態です。ただし、その間に例えば中央省庁の問題について、私は今年の11月の末までに成案を得ると。そして、それを法律化して来年度には国会で議論していただくんだと言っていますから、こういうのは余り時間をはっきり言っちゃいけないんだそうですね。だけれとも、これは正式に国会でも申し上げていることです。そういう姿で、いずれにしても、今の中央省庁の在り方は変わるでしょう。そして、その間に地方分権の方も大きく動くでしょう。ですから、そういう意味では行政はいずれにしても、もっとおおぐくりなもの、そして国と地方、それから官から民へという流れが加速した状態で変わっていっていると思います。
それから、社会保障構造改革もその途中ですけれども、当然のことながら今よりも随分 変わってくるでしょう。
そして、これは今度はまさに先生の方の分野なんですが、私、本当に教育というもの、私たちまさに敗戦のときは小学校2年生ですから、一番戦後の混乱した時期の小学生、中学生です。そうすると、本当にある意味では質のそろった平等なというのが常につきまとって、余り創造性とか夢とかチャレンジとかいうものに余り縁がありませんでした。教育は僕は随分変わっていると思います。また、変わってもらわらなきゃ困るんです。
そして、研究開発という点でも、さっきお話ししていたように、国の投資というのは基礎研究の部分にどんどんどんどんシフトしていく。その代わりむしろ応用研究は民間に任せていく。その中で私は今、一番問題なのは活力がなくなってきていることです。それはシステムが限界に来た。そうすると、少なくともその活力は取り戻しつつあり、夢を追えるという状況に、5年、10年という間に向けていきたい。

[江崎] やはりこれは日本の1つのルネサンスじゃないかと思うんです。日本の新しい再生なんで、そのためには、ヨーロッパのルネサンスの歴史をたどりますと、やはり今総理がおっしゃったように、創造性が非常に高く評価される社会ですね。
もう一つは、そのルネサンスは、人・物・金が自由に国境を超えて、非常に国際交流が盛んだということがルネサンスの条件だと思うんです。
てすから、我が国も出来るだけ日本の何と言いますか、今までの文化というのはいろいろな規制とか何とかがあるということは、閉鎖的な社会をもっとオープンな社会にもっていく。
私アメリカに長くおりましたからよけい思うんですが、アメリカで活躍しているのは外国人が随分活躍している訳です。アメリカに貢献している訳です。世界中の人たちがアメリカに来てやる。そういう日本にやはりもっていく必要があるように思うんです。
それから、人たちが自由闊達に出来る。資本主義本来の競争というものが自由に行われるような社会。それから、いろんな産業の面でも公正な競争が行われるという、国際的な公平な競争が行われる、そういう社会にもっていく。そういうことがまた日本の、今度は強さになっていく。やはり日本がリーダーシップを取っていかなくちゃいけない面がいろいろあるんじゃないかと思うんです。

[寺島] 痛みがあった後、もっと自由で伸び伸びとした世の中があるという、痛みがどんな痛みなのか今のところよく分からないし、もっとよくなるのはどういう姿なのかよく分からないということではないかと思うんですけれども。

[橋本総理] 例えば社会保障の仕組みも今のままで持たないとすれば、ぎりぎりその時代の若い方々が背負えて、しかも、私たちよりももう少し若い世代まで掛かってくるのかな。そのころ年を取ってお世話になる者が心配しないで済む仕組みというのは何だと。これ今より厳しいものになるんです。
ただ、それと並行して、規制がなくなるということは、その代わり今度は自分が責任です。自分の責任で、例えば江崎先生の場合だったら研究ということだと思いますよ。そういうものに挑戦していける。実現の可能性がある。
要するに、自分で責任を持つ代わりにその夢を本気で追える。そういう時代をつくっていきましょうということなんです。

[永井] 9月には自民党総裁としての任期が切れて、党内からは再選支持の声も揚がっている。また、国民の中からももういたずらな政変は望まない。とにかく前へ進むことが望みであるという声もあります。
橋本政権は今後、どのように。

[橋本総理] 今はとてもそんなところまでいきません。だって皆さん3月危機で3月に内閣つぶれるってさんざん言っていたじゃない。それをようやく乗り切った。
冗談抜きにして、今の一つの、このテーマの中のどれ一つだって楽なものはない訳ですから、本当に時間の与えられる限り全力を尽くしてやっていくと。今はそれしかないです。

[永井] では、寺島さんから。

[寺島] 改革には当然のことながらさまざまな抵抗が出てくると思うんです。去年、総選挙のときに総理にお伺いしたことで、改革の推進力は国民の支持であるというふうにおっしゃいました。国民の支持が今どうなっているかというふうにお感じですか。

[橋本総理] 間違いなしに、今、支持は私には余り沢山ないと思いますよ。そして、それは少なくとも消費税の税率を引き上げたこと。特別減税の継続を止たということだけでも相当厳しいと思っています。
同時に、この沖縄に対する対応というものも、一般の方々から見れば、あるいは残酷に見えるかもしれません。そういう意味では、プラスの材料がある訳じゃありません。
そして、今申し上げているようなテーマは、進めていけば進めていくほど、例えば今までのルールで楽をしていた方は損する話ですから、マイナスが出てくるんです。
だから、私たちは出来るだけのことを本当にやっていきたいし、だれもこの責任を逃れることは出来ないし、私であろうとなかろうと、必ずやらなきゃならないことだし、ただ、それは喜んでいただけるばかりの仕事では絶対にありません。

[永井] 江崎さんから一言総理に。

[江崎] 大変いろいろ難しい問題があることは承知です。しかし、非常にオプティミスティックな見方をしますと、私などは戦争中、戦後のあの疲弊した状態から日本は立ち直った訳です。そういう意味で、何か日本人にはバイタリティーみたいなものを持っているに違いない。それをどういうふうに喚起するか。そこが総理の非常に重要なお役目だと思うんですけれども。

[橋本総理] まさにだから教育の方でも、先生方に本当に創造性を持った若い人たちを育てていただきたい。そういう人が夢を追えるような社会を我々は準備をしていく。そういうことじゃないでしょうか。

[永井] 本日は長時間にわたりましてありがとうございました。

橋本総理] ありがとうございました。