内閣総理大臣式辞





 本日ここに、天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、戦没者遺族及び各界代表多数の御参



列をいただき、全国戦没者追悼式を挙行いたしますことは誠に意義深く、また、感慨



新たなものがあります。



 先の大戦が終わりを告げてから今日まで、五十二年の歳月が過ぎ去りました。苛烈



を極めたあの戦いの中で、祖国の安泰を願い、家族を案じつつ、戦場に散り、あるい



は戦禍に倒れ、さらには戦後、遠い異郷の地に亡くなられた三百万余の戦没者の方々



の御心情に思いを馳せ、残された御遺族の深い悲しみを思うとき、今なお悲痛の思い



が胸に迫るのを禁じ得ません。ここに心から御冥福をお祈りいたします。



 また、あの戦いは、我が国のみならず多くの国々、とりわけアジア近隣諸国に対し



ても多くの苦しみと悲しみを与えました。私は、この事実を謙虚に受けとめ、深い反



省とともに、謹んで哀悼の意を表するものであります。



 戦後我が国は、焦土の中から立ち上がり、平和を国是とし、幾多の困難を乗り越え



て、国民のたゆまぬ努力により目覚ましい発展を遂げてまいりました。



 この平和で豊かな今日においてこそ、過去を謙虚に振り返り、戦没者の方々の尊い



犠牲を次の世代に語り継ぐとともに国際社会において、再び戦争の惨禍を繰り返すこ



とのないよう、恒久の平和を確立することが、我々に課せられた重大な責務でありま



す。そして、このことこそが、過去に対する償いとなり、犠牲となられた方々の御霊



を鎮めることとなるものと信じるものであります。



 本日この式典に当たり、先の大戦から学びとった多くの教訓を改めて深く心に刻み、



国際社会において重要な地位を占める一員として、世界の恒久平和の確立と、心豊か



に平和に暮らせるより良い社会の実現のため、全力を尽くすことを、ここに改めて誓



うものであります。



 終わりに、戦没者御遺族の皆様の深い苦しみと今なお消えぬ心の傷に思いを致すと



ともに、皆様の今後の御平安を切に祈念申し上げまして、式辞といたします。





   平成九年八月十五日



                  内閣総理大臣  橋本 龍太郎