大蔵省不祥事に関する中間報告

−衆議院本会議における橋本総理の中間報告−

平成10年2月5日

1.去る1月26日、大蔵省大臣官房金融検査部に所属する職員2名が収賄の容疑で逮捕され、大蔵省に強制捜査が入りました。
 このような事態は、大蔵省、ひいては公務員全体に対する信頼を著しく傷つけるものであり、誠に遺憾であります。今回の事態を厳粛に受け止め、皆様にお詫び申し上げます。

 まず事実関係について御説明いたします。
 金融証券検査官室長宮川宏一(みやがわこういち)に対する被疑事実の要旨は、金融検査部による検査に関し便宜な取り計らいを受けたいなどの趣旨の下に、

(1)あさひ銀行総合企画部次長らから、18回にわたる代金合計約180万円相当の接待等の供与を受けるとともに、マンションの一室を購入した際、440万円の値引きを受けて、同額の利益の供与を受け
(2)また、第一勧業銀行企画部副調査役らから、17回にわたる代金合計約79万円相当の接待等の供与を受け
もって、自己の職務に関して収賄したというものであると聞いております。
 金融検査部管理課課長補佐谷内敏美(たにうちとしみ)に対する被疑事実の要旨は、前同様の趣旨の下に、
(1)三和銀行企画部部長代理らから、40回にわたる代金合計約161万円相当の接待等の供与を受けるとともに、6回にわたり、被疑者の飲食代金合計約25万円を支払わせて同額の利益の供与を受け
(2)また、北海道拓殖銀行顧問らから、12回にわたる代金合計約39万円相当の接待等の供与を受け
もって、自己の職務に関して収賄したというものであると聞いております。

2.本件については、今後、捜査当局の捜査状況も踏まえつつ、徹底的に事実関係を明らかにし、被疑者に対する行政処分はもちろんのこと、関係監督者に対する処分についても、厳正に行わせます。

3.また、私は、これまで、いわゆる公務員倫理法が必要とならないように、公務員倫理規程によって公務員が自らの行動をきちんと律してくれるものと信じていましたが、今回の事件で、倫理規程だけでは完全に徹底できないことが明らかになったのは極めて残念であります。したがって、この際、公務員の不祥事を根絶するための抜本的な対策として、公務員倫理に関する法制化等の検討を官房副長官に指示したところであり、2月2日、政府部内に「公務員倫理問題に関する検討委員会」を設け、第1回会合を開催したところであります。早急に作業を進めてまいりたいと考えております。

 公務員諸君には、今回のような事態に至った原因について深く思いをいたし、自らの行動を省みて襟を正し、国民全体の奉仕者として、使命感を持ってそれぞれの部署で勤務に全力を尽くすよう改めて強く求めたいと思います。

4.さらに、大蔵省出身の道路公団理事が逮捕された事件を契機として、退職した公務員のモラルのあり方や、いわゆる「天下り」問題について御批判があることも承知しております。そこで、先般、官房長官を通じ、「天下り」問題を含めた公務員制度の見直しについて、関係機関に対し速やかな検討を指示したところであります。

5.なお、大蔵省においては、今回の事件への反省を踏まえ、綱紀の保持を徹底するため、新たに金融服務監査官を大臣官房に設置したところでありますが、金融関連部局の職員と金融機関の関係について徹底した内部調査を実施させるよう指示いたしました。
 金融服務監査官は、民間金融機関等の検査・監督に従事する職員について、綱紀の保持状況の監視・調査を行うほか、弁護士に顧問を委嘱し、助言を求めることとされており、この制度の活用により、綱紀の保持の一層の徹底が図られるものと期待しております。
 内部調査については、できるだけ速やかに結果を取りまとめ、その結果、問題のある者及び関係監督者については厳正な処分を行わせます。

6.さらに、この際、金融行政に対する信頼を回復するため、検査体制、行政手法などに関し、抜本的な改革を進めてまいります。
 金融検査については、検査の基本的在り方を転換し、厳正で実効性ある検査体制手法を確立するため、
(1)早期是正措置の導入を契機として、金融機関による自己査定を前提としつつ、事後的なルール遵守状況等の把握に重点を置いた、新たな金融検査の在り方の検討を進めるとともに、
(2)民間専門家の登用、研修の強化・充実、主要国監督当局との人材交流等について検討を進めていくと聞いており、
 今後、早急に具体策を取りまとめ、実施を図らせることといたします。
 また、金融行政は、明確なル−ルに沿った透明性の高い手法に移行しつつありますが、こうした中で、さらに金融機関から意見を聴取したり、行政の考え方を説明するため、定例の金融連絡会を新たに設置します。これは、いわゆる「MOF担」の存在を必要としない行政に転換するとともに、行政の透明性を確保するための措置であります。

7.以上、概要を御報告いたしましたが、大蔵省の担当する業務は、国民の生活に多大な影響を与えるものであります。それだけに、国民の大蔵省に対する見方も大変厳しいものがあります。職員一人一人がそのことを深く自覚し、今回の事件を教訓として、自らを厳しく律していく必要があると考えます。
 そして、松永新大臣の下、綱紀粛正の徹底を図るとともに、改革を大胆かつ速やかに実施し、国民の皆様に信頼される新しい大蔵省を作り上げるため、職員一同、死に物狂いで努力しなければなりません。
 私としても、皆様の御協力も賜りながら、行政への信頼回復に全力を尽くしてまいりたいと考えております。