ASEM2開会式における橋本総理大臣スピーチ
平成10年4月11日
ブレア首相、御列席の皆様
アジア欧州会合第2回首脳会合の開会にあたり、アジア側調整国の一つとしての立場から、ブレア首相、チュアン首相、サンテール委員長と並び御挨拶申し上げる機会を得たことは私の光栄とするところであります。
今回の会合は、アジアと欧州の首脳が一堂に会すること自体が画期的であった一昨年のバンコクの第一回会合に比べ、異なった歴史的な瞬間にあることに印象づけられています。
先ず、最大の違いは、「右肩上り」の経済成長をとげてきたアジアが、為替の大幅な下落に示される、経済・金融上の困難に遭遇したことです。また我が国の経済に対する外からの様々の懸念も伝わって来ています。
アジアからこの会合に参加する者として次のことを明確に申し上げておきたいと思います。
第一に、アジア経済は総じて底力は強く、当面の困難もそう遠くなく克服され、必ずや再び成長軌道に復帰します。既に、最悪の時期は過ぎ、新しい歩みが始まりつつあります。
第二に、このためにも、我が国は、必要な経済対策を講じ、同時にアジア各国への支援を実行します。
確かにアジアと言っても、歴史・伝統・文化さらには経済の発展段階も様々で、今回の通貨金融危機、経済困難の原因も、またその影響も国によって異なっています。アジアのいくつかの国は過剰な資本の流入、振り返ってみると高過ぎた為替相場などの反動として、昨年来、急激な為替の下落、資金調達の困難などに見舞われました。しかし、永年、アジアの隣国の経済発展に、政府として協力し、民間企業として参画してきた経験を持つ日本としては「アジアの奇跡」が、実は各国国民の英知と努力の賜であることを知っています。アジアに豊富な知的、人的資源がある限り、当面の試練も次の飛躍への足場固めになるものです。
我が国は、長年にわたって、円借款の供与や、民間企業による技術移転など、アジアに協力し、共に発展してきました。そして、今回の通貨危機に際し、IMFや世界の国々と協力し、タイ、韓国、インドネシアに積極的な支援をしてきました。支援は資金にとどまるものではありませんが、我が国が世界でも最大の資金支援を行っていることは御承知の通りです。この関連では、昨日夕刻、スハルト大統領より電話にて、IMFとの交渉が最終段階にあるとの御連絡を頂き私も大変喜んでいるところです。
もとより一体化の急速に進む世界経済にあって、欧州を始めとする国際的な支援・協力があればあるほど、アジアの回復もより速やかに進みます。そのようにして、アジアが再び世界経済をリードする一つの柱となることは間違いありません。
目を欧州に向ければ、この地域も時代の要請に応え、新たな段階に大きな一歩を踏み出し、拡大と深化に向けた大きな進展がみられています。アジア同様、古い歴史と伝統と各国の独自性を障壁ではなく、逆に力の源泉として、「一つの通貨」に象徴される広域的一体化を進める欧州の姿は、欧州から多くを学び、世界の中に於けるその歴史的役割を見守って来たアジアにとって、深い感慨を覚えざるを得ません。「ユーロ」の出現も単に欧州経済の効率化と言った問題を越え、新たな基軸通貨に成長しうるものとしてその影響は世界に及びます。昨年来の経済困難が通貨危機に端を発しているアジアの諸国にとっても、深い含蓄のある動きとして、注目しています。
アジアも欧州も、いわゆるグローバリゼーションの急速に進む世界経済の中にあって大きな変革期を迎えています。また、世界経済というシステムによって地理的位置と関わりなく、かつてなく密接に結びつけられています。そのような両地域の首脳がこの二日間、共に語り、相互に理解を深め、現状についての認識の共有を図ることにより、両地域の将来に一層の明るい展望が開けるでしょう。
21世紀は、もうそこまで来ています。これまでに、10回、20回と世紀の変わり目をそれぞれ独自に経験して来たアジアと欧州が今度は相携えて新世紀を迎えようとしています。このロンドンでのASEM首脳会合は、アジアと欧州が歴史的に存在した敷居をまたぐという共通の作業を行うに当り、大きな踏み石となり、大きな道標となることを確信しています。