鳩山内閣総理大臣年頭記者会見


平成22年1月4日

年頭記者会見を行う鳩山総理

  政府インターネットテレビ


【鳩山総理冒頭発言】

 国民の皆さん、新年明けまして、おめでとうございます。今年が皆様方にとってすばらしい1年でありますことを、まず、お祈りを申し上げたいと思います。

 百年に一度、政権交代、国民の皆様方が昨年実現をさせていただきました。これはむしろスタートラインだと私どもは考えております。官僚任せの政治ではない。国民の皆様方が主役になる政治をつくりたい。その思いで百年に一度の大きな改革を私たちはやるために政権交代を皆さんのお力によって実現を果たしました。いよいよこれからがスタートでございます。今日まで百日余りが経ちました。まだまだ至らぬ点も多くあると思います。試行錯誤で難しいところもあったと思いますが、しかし、国民の皆さんには政治は変わり始めたね、そのように思っていただけたのではないかと思っております。

 総理として、原点、初心に返って、国民の皆さんと一緒に新しい政治を、国民の皆さんのための政治をつくり上げてまいりたい。その正念場の1年だと覚悟を決めているところでございます。

 元旦に渋谷のオリンピックセンター、いわゆる派遣村を訪れました。多くの方が困っておられた。私は、日本に住まわれるすべての方が、憲法で保障されている最低限のお暮らし、住まいがほしい、働きたいけれども働く場所がない、そういう方々のために政府がしっかりと支えていけるような、命を大切にする政治を、本年1年つくり上げてまいりたいと考えております。そのためにも、命を大切にするために、景気・雇用が心配だと。多くの皆さんがそう思っておられると思います。私たちは景気が二番底になってはならない。させないぞと、その思いの下で、昨年の末、24兆円という事業費になりますが、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」をつくり上げて、そしてその下で第2次の補正予算を練り上げたところでございます。一刻も早くこの2次補正予算を成立させて、国民の皆様のお暮しを少しでも豊かさを感じていけるように仕立て上げてまいりたいと思います。

 そして選挙でさまざまお約束をいたしました、マニフェストあるいは与党3党でお約束をした合意、例えば子ども手当あるいは高校の無償化、更には農家の戸別所得補償制度、こういったものを今年はスタートさせてまいりたい。雇用や中小企業も含めて、子育てあるいは年金、医療、介護、教育、環境、こういった人の命をとことん大事にする新しい政治の姿を、来年度の予算としてつくり上げたつもりでございます。皆様方に、これが実現されれば、やはり画期的なことだなと思っていただけると思います。その予算を早期に成立させるために、政府としても全力を尽くしてまいりたいと感じております。

 また年末に、菅副総理の下で力を発揮していただいて、成長戦略、命を大事にする、国民の皆さんに希望を持って、これからも頑張るぞという思いになっていただくための成長戦略をつくり上げてきたところでございます。ややもすると、環境とか、あるいは高齢化、後ろ向きのようにとらえられてしまう、その発想をむしろ前向きにとらえる、環境だからこそ日本は世界一の環境産業をつくり上げていこうではないか、これからむしろ長寿、健康を維持するための新たなさまざまな施策をつくり上げて、世界で最もお年寄りが住みやすい国にしていこうではないか、前向きな発想で成長戦略をつくり上げてきたつもりでございます。供給サイドからむしろ需要サイドに、今まで経済のために人間が動かされてきた、おかしいじゃないか、むしろ人間のために経済がなければならない、その発想の転換をいよいよ今年は行ってまいりたいと思います。

 そして、私どもが1丁目1番地のように考えておりますのは、地域のことは地域で解決ができる、そういう社会に変えていきたい。何でもかんでも国が主導権を握りたい、そういう発想はもう古い。地域でできることは何でもかんでも地域で考えて結論を出す。そういう世の中に仕組みを変えていく。それこそ国民が主役の政治だと、そのように私たちは考えております。その意味で、「地域主権戦略会議」というものを起こしたところでございます。

 私が議長になって、このテーマを、例えば国と地方の協議の場の法制化を急いで行う。あるいは補助金行政などというものから、一括交付金の方向に変えていく義務づけ、枠づけ、こういったものを大幅に見直していく、地域のための予算というものを組ませていただく、このようなことを行っていきながら、国と地方の在り方が本格的に変わってきたなと、そのように皆様方に実感ができる1年にしていきたい、このように考えているところでございます。

 そのためには、政治主導を更にスピード感を持って進めていかなければなりません。内閣の中に、もっと政治家をしっかりと働いてもらえるような、そんな準備も行ってまいりたい。制度を新しくしていくことが極めて大事だと考えております。もとより事務次官会議の廃止とか、あるいは政務三役、こういった方々に大いに頑張っていただいて政治主導を始動させることはできたと思いますが、更に一歩も二歩も先に進めてまいりたい、このように考えているところでございます。

 事業仕分けは、国民の皆さんに大変御評価をいただいたところであります。更にそれを規制改革の問題、制度改革の問題に広げて、こういうものも事業仕分けでやってもらいたいと思っております。独立行政法人の改革とか公益法人の改革なども事業仕分けの中で積極的に、こういう独立行政法人も要らないんではないか、変えた方がいいんではないか、そういう議論をしていただきたいと考えているところでございます。天下りの禁止なども更に徹底をしてまいりたいと思います。

 私は、国政のある意味で半分は、外交安全保障ではないか、そのように考えております。昨年百日間で8回海外にまいりました。特にアジアの首脳の方々と多く議論をさせていただいて、日本という国が少しずつ政権交代で変わってきているなと、その思いを実感していただいたのではないか、そのように感じております。

 気候変動問題あるいは核軍縮、不拡散、こういった問題において日本という国がそれなりのメッセージを出しているね、そのように感じていただいたのではないかと思います。

 更に私は、やはり日米同盟、これを基軸にしながら、一方でアジアを重視する東アジアの共同体を構想してまいる年にしてまいりたいと考えております。そのためにも、普天間の移設問題も解決をしていかなければなりません。この問題に関しては、沖縄の県民の皆さんのお気持ちを大事にしながら、しかし、一方で、日米の合意もある、この思いの下で、決して無駄に時間を浪費させるつもりはありません。期限をしっかり切って、数か月の中で沖縄の県民の皆さんにも、アメリカの皆さんにも御理解をいただいて、与党三党、検討委員会をつくりましたので、その中でしっかり議論をして結論を出すことを国民の皆さんにお約束をいたしたい。それがやはり、日米安保のある意味で軸となることだ。そのように思っておりまして、将来的に時間がかかったけれども、いいものができたね。そのように思っていただけると、私なりに感じているところでございます。

 今年1年が、まさに民主党や連立政権の正念場ということではありません。政治が大きく国民の手に戻ったかどうか。それを確信していただける1年にするための正念場だと思っています。おじいちゃんには、おばあちゃんには、安心できる世の中になったね。若い皆様方には、働きたいけれども働く場がない。そうではなくて、働きたいから職業が見つかったよ。そう思っていただける1年にしたい。そして、お子さん方には未来を、希望を持って進めていけるな。そういう実感を持っていただける1年にしていきたい。このように感じております。

 身を粉にして本年1年、私の指導力の下で精一杯、内閣は国民の皆さんのためにある、その原点を忘れずに行動してまいることをお誓い申し上げて、年頭に当たっての私からのメッセージといたします。

 どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。



【質疑応答】

(問)
 新年明けましておめでとうございます。

 今年の夏には、最大の政治決戦である参院選が予定されております。それで、参院選にどのように臨むのかというのをお尋ねしたいんですけれども、まず、内閣の現在の顔ぶれで参院選に臨もうとされるのか、それとも、内閣改造を直前にでも行って新しい布陣で臨むお考えがあるのか。

 それと、衆参の同日ダブル選挙の可能性は、現時点では検討されるお考えはあるのか。

 それと、これは総理の立場としてというよりも民主党代表としての立場ということになるかもわかりませんけれども、参院選の勝敗ライン、目標をどういうふうにお考えになるのか。

 この3つをお尋ねしたいと思います。

(鳩山総理)
 先ほど申し上げましたように、今は、まずは予算を成立させる。そして、国民の命を守る。その政権をこれから更に今年、大きく加速をさせていく1年にしたい。そう思っております。したがって、今、この段階で私が考えることは、いかにして国会の中で国民の皆さんに予算を成立させて、国民の命を守る政治をつくっていくか。ここにすべてが集約されております。したがって、その先の参議院選挙のことを、今、申し上げるようなタイミングではない。そのように考えております。

 すなわち、その前に、内閣改造があるなどというようなことも一切考えているわけではありませんし、まして衆議院との同日選挙を念頭に置いているというものでもありません。そのような発想はなく、まずは国民の皆様方のために、その選挙のときまでベストを尽くす。そのときに、参議院選挙でどう闘うかというのがおのずから生まれてくる話だ。そのように考えておりまして、今、年頭に当たって勝敗ラインのことなども申し上げる立場ではない。そのように考えております。


(問)
 今月中に通常国会を召集されますけれども、今、予算については言及されましたが、それ以外にも国家戦略室の局への格上げの法案ですとか、外国人の地方参政権を与える法案などが重要法案として考えられると思うんですけれども、これらの重要法案の成立について、どのような時期でどのように成立を図っていこうと考えていらっしゃるのか。また、通常国会においては総理の偽装献金事件について、総理の政治責任などの追及や野党側からはその使い道などについて、さらなる説明が求められると思いますけれども、どのように対応していかれるお考えでしょうか。

(鳩山総理)
 まず国会におけるさまざまな法案、当然のことながら民主党をはじめ与党の皆さんとの間の調整が必要であります。その調整がまだ残っていると思っております。いわゆる政治主導で行っていくための法案、あるいは国会法の改正といった議論があり、また地方参政権の議論もあろうかと思います。これは与党と調整をしっかりと行う。それがまず肝要だと思っております。

 したがいまして、当然調整が済めば、それを法案として提出を申し上げたいと思っておりますが、まずはそのための調整が必要だと思っております。早くてもやはり大事なことは国民の皆様方の命を守るための補正予算、そして本予算をしっかり上げるということが当然のことながら先に行われるべきことだと思っておりまして、その後にさまざまな法案というものを提出して、成立を図っていきたいと考えております。

 私自身の政治資金の問題に関してでございます。この件に関しては昨年末に御案内のとおりの状況となりました。私も記者会見をいたしました。私としては自分の知り得る範囲の中で、できる限り説明を尽くしたつもりでありますが、これは私自身もなぜという部分もかつてあっただけに、なかなか国民の皆さんにすとんと落ちない部分もあろうかと思います。これからも説明責任という意味では、できる限り説明する努力を払ってまいりたいと思います。検察の方としては、そちらの方では結論を出されたということであって、いわゆる偽装献金問題に関しては、その方向で決着が付いたと思っております。しかし、国会の中で議論というものがあれば、当然そこに自分なりに丁寧にお答えをしてまいりたいと考えております。使い道などに関しても私がどこまで把握できるかということはありますが、それなりの説明は行ってまいりたいと思います。


(問)
 先ほど日米関係について御発言がありましたが、今年は日米安保50周年の節目の年になると思います。総理がお考えになっている同盟関係、日米同盟の理想的な同盟関係の在り方というのはどのようにお考えになっているのか。具体的なイメージをお聞かせ願えますか。

(鳩山総理)
 私は日米安保が改定されて50周年の今年は、ある意味で大変大きな年だと。むしろそれを是非チャンスとして活用したい。そのように考えております。すなわち日米同盟は安全保障というものが軸になることは言うまでもありませんが、さまざまなレベルで日本とアメリカがお互いに不可欠な関係にあるんだということを示していくことが重要だと思います。グローバルな課題もございます。気候変動の問題もあるし、あるいは核不拡散の問題もあります。こういった問題に対しても、むしろ積極的にお互いの立場というものを主張できる、言うべきことはしっかりと言いながら、お互いに信頼関係を増していく。言いたいことがあっても、これはどうせ難しいからといって相手に対して、ただ従うということではなくて、言うべきことは、はっきりと申し上げることができる。そしてその中で、むしろ信頼関係を高めていく。こういった日米関係というものをつくり上げていきたい。重層的な形で日米同盟を深化させる大事な年だと考えております。


(問)
 憲法改正についてお伺いします。総理は過去に新憲法試案を出されたりしておりますけれども、昨年末も若干言及がありました。総理として憲法改正に臨むお考えがあるのかどうか。その場合、どこをどのように改正されるおつもりなのか。改正に向けた議論をどのように進めるおつもりなのか。また、憲法審査会を動かすお考えがあるのかどうかについてお伺いします。

(鳩山総理)
 憲法に関しては、当然、政治家ですから、自分なりの憲法というものはかくあるべしという議論は当然政治家ですから、国会議員ですから、一人ひとりが持ち合わせるべきだと思います。その意味で、私は自分としての、自分が理想と考える憲法というものを試案として世に問うたところでございます。それはむしろ安全保障ということ以上に、地域主権という、国と地域の在り方を抜本的に変えるという思いでの発想に基づいたものでございました。

 ただ一方で、内閣総理大臣として憲法の遵守規定というものがございます。その遵守規定、当然憲法を守るという立場で仕事を行う必要がございます。そのことを考えたときに、憲法の議論に関しては、いわゆる連立与党3党、特に民主党の考え方というものを、憲法の議論を進めていく中でまとめていくことが肝要かと思っておりまして、私は憲法の議論というものを国会議員として抜きにするべきではないという発想を持ちながら、しかし、今の現実の経済の問題など、国民の皆様方の切実な問題を解決させていくことが政府の最重要課題だという状況の中と、それから、やはり遵守規定の中で、憲法の議論は与党の中で、また、これは超党派でというべきだと思いますが、しっかりと議論されるべきではないかと思っております。

 したがって、憲法調査会の話も国会の中で、与党と野党との協議でお決めになっていただくべき筋の話だと思っております。


(問)
 本来、政権発足時にお伺いすべきことなんですが、1問目の質問と関連しまして、総理はそもそも、こちらにも並んでおられますけれども、今の閣僚は少なくとも次の総選挙までいてもらうんだという発想で政権を発足させているのか、必要に応じて改造を行うお考えがあるのか、特に政治主導ということで考えますと、一内閣が長く続くということも必要かと思いますがいかがでしょうか。

(鳩山総理)
 これは大変大事な御質問だと思います。私はやはり閣僚というものがころころと代わる、そのことで国民の中の信頼という以上に、世界の中における顔としての大臣がなかなか見えない。結果として、国としての存在感が薄いということになっています。したがいまして、できる限り私は閣僚の皆様方には長く務めていただきたいと考えておりまして、そう安易に内閣改造を転々と行うという発想をとるべきではないというように、国益の上からそう思っております。