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福田内閣総理大臣スピーチ

「低炭素社会・日本」をめざして
日本記者クラブにて

平成20年6月9日
福田内閣総理大臣スピーチ「低炭素社会・日本」をめざして日本記者クラブにて
写真提供:栗田格氏

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  総理の動き[ビデオ版] 「低炭素社会・日本」をめざして-平成20年6月9日

<はじめに>
(過去、現在、将来)
 先週、私は駆け足で、ドイツ、イギリス、イタリアと周って参りました。そして、4カ国のG8メンバーの4首脳と会談をしてまいりました。このサミットに向けて、この時期にお会いできてよかったというふうに思っておりまして、たいへん有意義な意見交換を行うことができたと思っております。
 そのイギリスに参りましたけれど、イギリスには、「アイアンブリッジ」と呼ばれる、18世紀後半に建設された世界最初の鉄橋でございまして、今も保存され、世界遺産となっていると、こういうものであります。
 産業革命の原点とも呼ぶべき、この鉄製の橋の建設が可能となったのは、それまでの木炭に代わって、コークス、すなわち、化石燃料を使用することによって、鉄を大幅に増産できるようになったわけであります。
 その「アイアンブリッジ」に象徴されます産業革命を支えたエネルギー、これはその後、石炭から石油へと代わり、人類は、まさに猛スピードで現在に至る近代社会を作り上げてきたと、そういうことに成功したわけでございます。
 しかしながら、21世紀に入りまして、資源の枯渇、そして温暖化という形でもって、そのような社会のあり方は、大きな岐路に立たされているということであります。
 私たちが、200年以上前の産業革命の功績に感謝するがごとく、今度は逆に、200年後の「将来世代」が、今現在の私たちをどのように振り返るのかが問われていると、こういう時であると考えております。
 こうした歴史の変遷の上に立って、私は、本日は、「地球温暖化問題」についてお話をさせていただきたいと思います。


(低炭素社会への転換)
 地球温暖化の問題は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)。ここで繰り返し警鐘を鳴らしておりますように、このまま手をこまねいていれば、「将来世代」を危機的な状況に追い込んでしまうということになります。
 さらに、こうした温暖化問題の背景にあります、化石エネルギーに大きく依存した世界の有り様は、すでに「現在世代」にも、大きな警鐘をならしているわけであります。
 私が今から大分前に、40年ほど前に石油会社におりましたが、当時の原油価格というのは、1ドルです。1バレル1ドルという時代でございました。我が国の戦後の高度成長は、石油という安いエネルギーによって実現した、と当時、そのように言っておりました。それが今や130ドルを超えるまでになりました。また、こうしたエネルギー価格の高騰も、それだけでなく、食糧の価格の高騰、量の確保にも深刻な問題を生じせしめていると、このようなことになっております。
 今こそ、私たちは、産業革命後につくりあげられた化石エネルギーへの依存を断ち切り、そして「将来の世代」のための「低炭素社会」へと大きく舵を切らなければいけない、という時に来たというように思っております。
 ただし、これは、日本一国の問題ではありません。温暖化は、国境のない地球規模の問題でもあります。「地球温暖化問題」を議論する際には、「世界」レベルでの広い視点が求められているということであります。
 一方で、低炭素社会を実現するのは、一人一人の「国民」でありまして、すべての「国民」が当事者であり、主役である、という視点も同時に忘れてはならないと思います。低炭素社会というのは、「国民」の行動なくしては、成り立たないということなのであります。
 低炭素社会の実現には、世界全体での取組と、足下での国民運動という二つの視座を同時に持ち続けることが必要になるわけであります。


(自信を持って踏み出す)
 こういうような低炭素社会の実現は、現在の我々の世代に突き付けられた大きなチャレンジであるということは間違いありません。しかしながら、これを単に我々に課された「負担」だというようにだけ捉えたのでは、問題の解決にはならないと思います。
 第一に、低炭素社会への移行は、「新たな経済成長の機会」と捉えるべきであります。
 また、温暖化対策は、新しい需要を生み、そしてまた新しい雇用を生み出す、それと共に新しい所得も生み出す、そういうチャンスでもあります。低炭素社会とは、環境と両立する経済活動が、大きなチャンスを生む社会と言ってもよいのではないでしょうか。
 また、二酸化炭素の排出を負債と捉えようとすると、世界で生まれつつある新しい価値観は、トップレベルのエネルギー効率を誇る我が国の省エネ・環境技術に、高い国際競争力を保証してくれるものです。
 第二に、低炭素社会を実現するためのヒントは、実は「我が国の良さ、伝統」の中に既に存在していると思います。
 我が国の文化の源泉には、「自然との共生」という理念がございます。経済成長の過程で、環境破壊を伴うこともありましたが、その反省の上に立って、我が国は、環境との調和を旗印に、世界有数の経済大国を作り上げることに成功しました。
 この背景にもある「もったいない」の精神は、間違いなく新たな低炭素社会におけるキーワードとなるものです。
 こうした点を踏まえますと、私たちは、尻込みする必要はありません。今こそ、大きな自信を持って、低炭素社会に向けた第一歩を踏み出すべき時だと思っております。
 これから、そのための具体的な政策について、私の考えを述べさせて頂きますが、その前にまず、我が国が目指すべき目標について申し上げます。


<日本の長期・中期目標>
(長期目標)
 地球温暖化による影響が既に顕在化しているなかで、この危険な状況から脱するためには、CO2の濃度を一定レベルで安定させることが必要です。
 そのためには、2050年までに、世界全体で、CO2排出量の半減を目指さなければなりません。これは、我が国が世界に呼びかけた「クール・アース構想」の根幹をなす削減目標でございまして、G8及び主要排出国との間で、この目標を共有すること目指したいと思います。
 主要排出国の参加はもちろん、世界の全ての国々が何らかの形でこの問題に取り組むのでなければ、この目標の達成は不可能であります。その際、先進国が途上国以上の貢献をすべきは言うまでもありません。日本としても、2050年までの長期目標として、現状から60〜80%の削減を掲げて、世界に誇れるような低炭素社会の実現を目指してまいります。
 日本が地球を守る戦いの中で、先に発展をした国として、より厳しい責任を受け持つのは当然のことであると、私は考えています。


(中期目標)
 この2050年半減という長期目標を本当に達成していくためには、世界全体の排出量を、今後10年から20年くらいの間に、ピークアウト、すなわち頭打ちにさせなければなりません。
 「すぐ手が届く将来」のことを論じる以上、単なるかけ声とか、政治的なプロパガンダみたいな目標設定ゲームに時間を費やす余裕は、もはやありません。
 今や、それぞれの国が「確実な実現」に責任を負うことのできる目標に向けて、「地に足の着いた議論」を開始する段階に来ています。私がダボス会議で提案したセクター別のアプローチは、そうした現実的な解決策を見出す方法論にほかなりません。
 EUは、2020年までに90年比で20%の削減を目標として掲げております。これは現状(2005年)から14%の削減を意味します。日本は、省エネ先進国として、既にEU諸国を大きく上回るエネルギー効率を実現しておりますが、先般、2020年までに、現状から更に、EUと同程度の削減レベルである14%の削減が可能だという見通しを発表しました。
 90年以降の我が国の実際の排出量は、若干の増減はありますが、微増傾向にあるのが実態です。この2020年14%削減という数字は、これを、ここ1、2年のうちに確実にピークアウトさせて、2012年までの京都議定書上の目標を確実に達成することはもちろん、2020年に向けて更に大きな削減を実現して、引き続き世界最高水準の省エネ先進国として世界をリードしていくというものです。
 この数字は、決していい加減なものではなくて、セクター別アプローチを緻密に適用しまして、その時々に実現していると予想される最も進んだ省エネ、そして新エネ技術を具体的にどの程度導入していくことが可能かについて詳細に検証しまして、削減可能な排出量をひとつひとつ積み上げた結果得られたものです。
 コストもかかりますが、このような技術的開発をするというのは、ここまでは可能だという姿を具体的に示した世界初の試みであります。
 国別総量目標の設定に当たりましては、こうしたセクター別積み上げ方式についての各国の理解を促進してまいりたいと思っております。具体的には、我が国が行ったようなセクター別アプローチで、各国が実際どの程度削減することが可能なのか分析作業を行って、本年12月のCOP14にその成果を報告するよう、働きかけていくことが必要だと考えております。
 また、基準年につきましても、20年も前の1990年にいつまでも拘っていてよいのかといった論点もあり、セクター別積み上げ方式に対する各国の評価なども踏まえて、共通の方法論を確立するとともに、来年の然るべき時期に我が国の国別総量目標を発表したいと考えております。
 いずれにせよ、「世界全体」で近いうちにピークアウトするという目標を実現するためには、EUや我が国のみならず、主要排出国をはじめとする「全員参加」型の枠組みがどうしても必要であります。
 そのためには、先進国が途上国以上の貢献をすることを前提としながら、誰もが納得できる「公平かつ公正なルール」に関する国際社会の合意作りに向けて、粘り強く交渉してまいりたいと考えています。


<具体的な政策>
 地球環境の現状を直視し、掛け声だけではなく、現実に温室効果ガスを削減するための具体的な動きを加速したい、これこそが私の思いであります。
 ではどうしたら実現できるでありましょうか。私が考えた具体的な政策は、大きく4つの柱から成っています。
1つは革新技術の開発と既存先進技術の普及、
2つ目は国全体を低炭素化へ動かしていくための仕組み、
3つ目は地方の活躍、そして
4つ目に、国民主役の低炭素化
です。


1.革新技術の開発と既存先進技術の普及
(革新技術)
 先ず、革新技術について申し上げますが、第一の柱は、技術の重要性であります。2050年に排出量半減、ましてや80%といった削減を行うためには、省エネを中心とする既存技術をどれだけ普及させたとしても足りないことはそれはもう明白であります。技術のブレークスルーなくして、実現できないという挑戦です。
 まだこの世に存在していない、温室効果ガスを生み出さない革新技術の開発に成功するという、鍵を握っているのであります。この開発には、大変な努力と、そしてある程度の年数がかかります。
 しかしながら、実際には、2050年の削減目標について、50%、若しくは60〜80%という、大きな目標値は掲げても、革新的な技術を開発するための具体策は、今、ほとんど聞こえておりません。逆に、それに振り向けられる世界の研究資金・開発資金ですね。第二次石油ショックをピークに、今ではその半分にまで減少しているのが現状であります。
 ところが、我が国の国情は違います。2005年のエネルギー分野における各国政府の研究開発投資を比較しますと、日本は米国や欧州諸国より、ずっと大きな研究開発投資を行っています。つまり、日本は、世界のどの国よりも真剣に、地球の将来を救う鍵となる革新技術の開発に力を入れている国だということなんであります。
 今年1月、私はダボス会議で、向こう5年間で300億ドルの資金を投入する「環境エネルギー革新技術開発計画」、そしてもう一つ、100億ドルの資金による途上国の対策を支援する「クールアース・パートナーシップ」構想を発表いたしました。
 今後とも、我が国は、環境先進国として、発展途上国や中国、インドなどの主要排出国に対して、先端的な省エネ技術やノウハウを積極的に提供していくつもりであります。しかしながら、温暖化問題の解決には日本の努力だけでは不十分でございまして、国際社会全体で取り組んでいく必要がございます。
 途上国の気候変動問題への取組みに対する支援として、米国、英国と一緒に多国間の新たな基金を創設することを目指していますが、日本としては、最大12億ドルの拠出を行うことといたしております。これからのサミットプロセスなどを通じて、より多くの国が参加するよう呼びかけてまいります。
 こうした途上国支援に向けた世界の輪は着実に広がりつつありますけれども、革新技術の分野での取組は、まだまだ立ち遅れていると言わざるを得ません。
 そこで、私は、革新技術の取組を一層加速するために、洞爺湖サミットにきまして、国際機関とも連携した「環境エネルギー国際協力パートナーシップ」これを私の構想として提案したいと思っております。
 これは、30年先、40年先をにらんだ革新的な太陽電池やCCS技術、次世代原子力発電技術などの技術開発ロードマップを世界で共有し、各国が自分の得意分野を分担しながら国際社会が協調して技術開発を進めていくというものであります。
 そして、そこで得られる成果、これは、国際社会の共有財産として、途上国にも普及させていくそういう仕組みを創ってまいりたいと思います。


(既存先進技術の普及:再生可能エネルギー)
 今ある技術をどのように普及させていくのかという問題があります。低炭素社会を実現するには、このような革新技術が開発されるまでは、既にある先進的な技術をフルに活用していくことになります。
 先ほど申し上げた2020年までに現状から14%の削減を実現するためには、太陽光、風力、水力、バイオマス、未利用のエネルギーなどの再生可能エネルギーや原子力などの「ゼロ・エミッション電源」の比率を50%以上に引き上げると同時に、新車販売のうち2台に1台の割合で次世代自動車を導入するなど、いくつかの野心的な目標を実現していかなければなりません。
 特に、最近まで日本のお家芸であった太陽光発電の普及率で、現在ドイツの後塵を拝していますが、太陽光発電世界一の座を奪還するため、導入量を2020年までに現状の10倍、2030年には40倍に引き上げることを目標として掲げたいと思います。
 そのためには、電気事業者による世界最大級のメガソーラー発電の全国展開に加えまして、新築持家住宅の7割以上が太陽光発電を採用しなければならない計算となるわけであります。
 コスト削減や系統安定のための技術開発を進めると同時に、一家庭当たり毎月500円のコストを負担しているドイツの例も参考にしながら、大胆な導入支援策や新たな料金システムについても検討しなければなりません。
 原子力に関しては、CO2排出ゼロという特性そしてエネルギー価格の高騰傾向を反映して、先進国のみならず途上国でも積極的に原発を導入する動きがあります。引き続き安全安心を大前提に原子力政策を推進していくとともに、こうした国際的な動きに対して、日本の優れた安全技術を提供し、核不拡散に対する厳格な姿勢を伝えていくことは、我が国に期待されている重要な役割だと考えています。


(既存先進技術の普及:省エネ)
 次は、エネルギーの使い方についてです。日本は、産業界の優れた技術力と国民の「もったいない」精神によりまして、世界のなかでも最もエネルギー効率のよい構造となっています。
 こうした低炭素化を更に押し進め、それを世界に広げていくことを通じて、世界に貢献してまいりたいと思います。
 そのためには、格段の省エネを進めるということに尽きます。
 例えば、2012年を目指して、全ての白熱電球の省エネ電球への切り替えを進めていきます。蛍光灯型電球に換えることで、必要な明るさは保ちながら、消費電力は5分の1、寿命は10倍になります。その他にも、ブラウン管テレビを液晶テレビに切り替えたり、ヒートポンプ技術など日本が最先端を行く省エネ技術を組み込んだ給湯器やエアコン、冷蔵庫の導入を加速させることによって、電気代を安くしながら、大幅にCO2を減らすことがでるのであります。
 また、現在、省エネ住宅・省エネビルの義務化に向けた制度整備、ビルへの新エネ導入の加速、200年住宅の普及促進など、幅広い分野での低炭素化政策を強力に推進してまいります。
 また、エコビジネスや良質な環境社会資本整備に公的資金や民間資金が流れやすくするための基準や仕組みを整備すると、日本の金融・資本市場が環境配慮のトップランナーとなることを目指してまいりたいと思います。


2.国全体を低炭素化へ動かすしくみ
 2番目の柱でありますけど、国全体を低炭素化へ向けて動かすための仕組みです。


(排出量取引)
 環境問題の解決には政府の役割も大きいことではありますが、あくまでも排出削減の実際の担い手は民間であることを考えるならば、CO2に取引価格を付け、市場メカニズムをフルに活用し、技術開発や削減努力を誘導していくという方法を積極的に活用していく必要がございます。
 こうした手法のひとつとして、EUでも、2005年から域内排出量取引制度が始まっていますが、我が国としても、いつまでも制度の問題点を洗い出すというのに時間と労力を費やすのではなく、むしろ、より効果的なルールを提案するくらいの積極的な姿勢に転ずるべきだというのが私の考えです。
 そのため、今年の秋には、できるだけ多くの業種・企業に参加してもらい、排出量取引の国内統合市場の試行的実施、すなわち実験を開始することとします。
 それは、自ら経験してこそ、排出量取引のルール作りに説得力ある意見を言うことができるからであります。その際、実際に削減努力や技術開発に繋がる実効性あるルールを、そしてまた、マネーゲームが排除される、健全な、実需に基づいたマーケットを作っていくことが重要であると思います。
 ここでの経験を活かしながら、本格導入する場合に必要となる条件、制度設計上の課題などを明らかにしたいと考えております。技術とモノ作りが中心の日本の産業に見合った制度はどうあるべきか、その点はしっかりと考えてまいります。
 日本の特色を活かせる設計をこの面において行い、国際的なルールづくりの場でもリーダーシップを発揮してまいります。


(税制改革)
 次に税制であります。市場メカニズムを活用しながら削減を加速する手法は排出量取引に限られるわけではなく、特に民生部門における自主的な削減努力を促す方法として、税制の活用やCO2の「見える化」を積極的に考えていく必要があります。
 秋に予定している税制の抜本改革の検討の際には、道路財源の一般財源化後の使途の問題にとどまらず、環境税の取扱いを含め、低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直し、税制のグリーン化を進めます。
 例えば、自動車や家電製品、そして住宅建築にもCO2排出を抑制するインセンティブとしての税制を活用することが考えらないものかどうか、といったような多様な観点から検討を行ってまいります。
 なお、先進国が中心となって、革新技術の開発や途上国の支援を共同して行うための財源として、国際社会が連携して地球環境税のあり方、こういったようなことについても研究していく必要があると考えています。


(見える化)
 自分の出す炭素に自ら責任を持つことが求められるのは、産業界だけの話ではありません。国民一人ひとりが、低炭素社会の実現に向けて、賢く、そして責任ある行動をとることが必要となります。
 そのためには、CO2排出の見える化によって、消費者が的確な選択を行うための情報を提供すること、これが重要となります。
 イギリスなどでは、製品や食品の製造から輸送、廃棄に至る過程で排出されるCO2を測定して商品に表示する、カーボン・フットプリント制度やフードマイレージ制度が試行されております。これを国際的にも広げていこうという動きがございます。
 我が国としても、このカーボン・フットプリント制度などの国際的なルールづくりに積極的に関与して、そして、わが国の国内での削減を進めるために、来年度から試行的な導入実験を開始したいと思っております。そのための準備を関係省庁に指示するとともに、産業界にも協力を要請してまいります。これが軌道に乗れば、世界最大級の取組みになると期待されます。


3.地方の活躍
 次に、地方の活躍、貢献について申し上げます。大きな柱の3つ目であります。地方の果たすべき役割は何かということであります。
 低炭素社会における農業と林業の重要性は、これまでとは比較にならないものがございます。食料自給率を高めるということは、海外からの輸送にかかるCO2排出を減らすことにもつながりまして、林業の振興は、CO2の吸収源を増やすことにつながってまいります。
 農業や林業の担い手である地方は、これからは、バイオマスなどの国産エネルギーの供給源、供給基地としても重要な役割を果たしていくことになるわけであります。
 低炭素社会を実現するということは、地方がその先導役を果たすことに他ならず、それぞれの地域が、食糧もエネルギーも地産地消型に近づいていくことになるでありましょう。
 あまり知られてないことでありますけれども、既にわが国の76の自治体が、地域内に民生用電力需要を上回る再生可能エネルギー電源を保有しているという調査がございます。こういった取組をさらに全国に広げることで、日本が世界をリードしていくことがであります。
 このような地域の取組を大きく推進し、優れた事例の横展開をはかるために、全国から10程度の環境モデル都市を選び、政府のバックアップのもとに、大胆な革新的な取り組みを進めてもらうことにしております。
 大都市、中都市、小都市、農村や山村など、日本のさまざまな地域が、それぞれの地域に適したやり方を模索しながら大きな削減を図り、国も全国の地域も国民もそれを応援し、その過程から学んだことを自分たちも活かしていく、という好循環を生み出すことで、日本全体の大きな削減を実現してまいりたいと思います。


4.国民が主役
 次に、4つ目の柱でございますけれども、それは、国民が主役である、という点であります。低炭素社会をつくっていくためには、国民一人ひとりがその意義と重要性、やり方、メリットと負担を理解して、行動する必要があります。
 国民は、観客席で低炭素社会への動きを見ているのではなく、一人ひとりがその「演じ手」であり、「主役」であるのです。低炭素社会をつくっていくためには、知ること、新しい社会を描くこと、行動すること、そして伝え広げることが大切であります。
 意識の高い人々は、もうすでに活発に動いております。そういった人たちがもっと動けるように、そして周りに広げていけるように、政府の役割は、低炭素型に行動を変えたくなるような仕組みづくりを提供するとともに、まだ意識していない人たちに対し、気づきのきっかけを提供していくということであります。
 そのために教育は非常に重要な役割を担います。義務教育はもちろん、生涯を通してのあらゆるレベル・あらゆる場面での教育において、低炭素社会や持続可能な社会について教え、学ぶ仕組みを取り入れていかなければなりません。
 また、低炭素社会を実現していくためには、ライフスタイルを変えていく必要がありますが、そうした意識を全国民で共有する方法のひとつとして、サマータイム制度があります。この制度の導入については、与党でも現在検討が進められておりまして、なるべく早く結論が得られることを期待いたしております。
 もうひとつ、国民の意識転換を促すものとして、クールアース・デーを設定したいと思っております。
 今度のG8サミットが7月7日の七夕の日に開催されることにちなみまして、この日は一斉消灯し、天の川を見ながら、地球環境の大事さを国民全体で再確認する運動が、現在展開中であります。
 これを今年だけの取組としないためにも、7月7日を「クールアース・デー」として、一斉消灯運動のみならず、毎年毎年、低炭素社会への歩みを国民みんなで確認する様々な取組を行う日にしたいと思います。
 この他にも各地のNGOや地域のグループの力を活かして、日本全国で、国民がリーダー役となって周りの人たちに環境の重要さを伝え、広げ、引っ張っていく、そのような躍動感あふれる様々な取り組みを支援し、広げてまいります。


<最後に>
 以上、色々申し上げましたけれども、この低炭素社会の実現に向けて、日本が何を行うべきかについて、申し上げたわけでございます。
 「地球温暖化問題に関する懇談会」というのがございまして、政府で今それを主催して行っておりますけれども、まもなく、より具体的な政策提言をまとめてくださると思っております。本日申し上げたのは、この懇談会やまた与党内でのこれまでの議論、NPOなどの有識者の方々との意見交換を通じまして、私なりに、地球環境問題に取り組むべき基本姿勢について考えをまとめたものであります。
 現在、福田内閣として、社会保障制度改革、税制抜本改革、消費者行政の一元化、公務員制度改革など大きな課題に正面から取り組んでおりますが、これらに共通していることは、これまでのやり方や発想を変えなければ、今の時代を乗り切るための本当に望ましい解決策には至らないということであります。
 地球環境問題も、何か派手なことをやれば解決するというものではありません。産業界のみならず国民ひとり一人が発想を転換して、そして世界の国々とともに、息長く着実にものごとを進めていくということが何よりも重要なのであります。この問題は、経済、社会、コミュニティ、ライフスタイルの全てを変えていかないと対応できない問題であります。
 200年以上前につくられた先ほど申し上げたイギリスのアイアンブリッジが、現代の世界遺産として、産業革命という先祖たちの成功を今に伝えているように、200年後の将来の子孫たちが、我々の努力を「低炭素革命」として、誇らしく振り返れるようなものにしていかなければならないと考えております。
 この低炭素社会づくりの革命に真剣に取り組んでこそ、国際社会における日本の存在感を高めることができ、また、世界をリードしてこそ、日本の経済を更に強固にすることができる、だからこそ我々は、低炭素社会を実現していかなければならないと考えているわけであります。
以上でございます。


<配布された参考資料について>
 お配りしている表がございます。なかなか有意義でございますから後でゆっくり見てください。1990年と2005年、1990年というのは京都議定書の基準年になった年です。それを基準として取りたいという国があるということでありましたけれども、今とは相当様子が変わっております。2ページでございますけれども、1990年と2005年の各国の二酸化炭素排出量が書いてございますけれども、この間にどれだけ違っているということです。例えば京都議定書に参加した国は、1990年で41%。今それが、29%に減っております。一方、中国は11%が19%に増えておるということです。アメリカは若干減少ということでありますけれども、左側の1990年は41%とアメリカの23%を足しますと64%です。ところが今、50%なんです。要するに、黄色い部分がこれだけ増えているということです。そういうことを考えますと、昔の1990年の基準をいつまでも取ってこれから推し量ろうというのは、これは無理があるというのが我々の考え方なんです。やっぱり新しいデータに基づいて、そしてその変化をきちんととらえていかないと、将来の計画もなかなか立っていかないというように考えておるわけであります。

 その後にいろいろ資料ございますけれども、後ほどどうぞ見て頂きたいと思います。