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このコーナーの記事は私見に基づくものであり、
イノベーション25特命室の公式な見解を示すものではありません。


黒川顧問からのメッセージ・第4回「イノベーティブな人」の条件、
「フロネシス(Phronesis)」とはなにか?(2006/12/11)


 11月30日の第3回イノベーション25戦略会議では、野中郁次郎先生からもご意見を伺いました。とても印象に残るお話でした。このタイトルにあるテーマ「イノベーションを起こす人」をめぐる考え方です(野中先生の資料)。

 「キーワード」は、聴きなれない言葉と思いますが「『フロネシス(Phronesis)』のあるひと」です。先生の資料を追っていかれると、わかりやすいと思います。

 これをもう少しわかりやすく、野中先生の哲学的思索と合致する「イノベーティブな人」、「イノベーティブなマインド」についての考え方を伺いました。フランスで教育を受けた、総合科学技術会議の非常勤議員のおひとり、東北大学教授の原山優子先生のお話です。さすがに、ヨーロッパの高等教育を受け、仕事をされていた方です。ちょうど出たばかりの日本学術会議「学術の動向」11月号のジェンダー特集に寄稿されている上野千鶴子さんの文を読んでいたら、原山さんも引用していた言語学者ソシュール(Saussure)の同じ本が引用されていたのでびっくりしました。

 野中郁次郎先生が提示するこの言葉「フロネシス(Phronesis)」の意味ですが、原山さんの引用を再引用させていただくと、"この言葉の意味の重要性、あまり聞きなれない概念なので定義を引用すると「個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」となります。ここでキーとなるのが主観であり、その主観がよりどころとする価値体系の構成要素である倫理観、歴史観、社会観、政治観、美的感覚なのです。科学的知識と実践的知識を融合してアクションを取るイノベーティブなひとには規範的な側面においても卓越していることが求められるのではないでしょうか。"と。

 野中先生が例として挙げられる方の中に先週生誕100年を迎えた本田宗一郎さんがいますが(野中先生のスライドに本田宗一郎のすばらしい哲学が示してあります」)、産業分野でいえばほかにも松下幸之助、ソニーの井深大さん、盛田昭夫さん、トヨタの豊田喜一郎さん、クロネコヤマトの小倉昌男さんたちが私にはすぐに浮かびます(現在ご存命の方はちょっと控えさせていただきます)。

 このような哲学、思想にこそ、社会の変化をもたらすイノベーションを起こす「イノベーティブな人」、「イノベーティブなマインド」は深く無意識下に内在するのだと思います。そして、このような人たちのDNAをどのように引き続げるのか、これについても野中先生の資料から、ヒントがあります。

 「イノベーションな人」についてこのような理解が広がると、本当に活気のある、素晴らしい社会変革が起こるでしょう。そして、社会がいつも「内から新しくなる」(イノベートする)エネルギーを持ち、変革できるのです。そのような「イノベーションな人」が生まれやすい社会になってこそ、社会イノベーションが起こる「活気のあふれる」、「品格ある国家」になるのであろうと考えるのです。