高度情報通信社会推進に向けた基本方針

平成10年11月9日

高度情報通信社会推進本部決定

−目  次−
T.高度情報通信社会に向けた基本的な考え方
(1)高度情報通信社会の意義
(2)高度情報通信社会実現のための行動原則 〜3つの原則〜
[民間主導、政府による環境整備、国際的な合意形成に向けたイニシアティブの発揮]
(3)高度情報通信社会の構築に向けた官民の役割

U.高度情報通信社会の実現に向けた課題と対応
(1)電子商取引等推進のための環境整備
(2)公共分野の情報化
(3)情報通信の高度化のための諸制度の見直し
(4)情報リテラシーの向上、人材育成、教育の情報化
(5)ネットワークインフラの整備
(6)基礎的・先端的な研究開発
(7)ハイテク犯罪対策・セキュリティ対策・プライバシー対策
(8)ソフトウェアの供給
(9)コンテンツの充実
(10)相互運用性・相互接続性の確保

V.国際的なイニシアティブの発揮
(1)電子商取引の制度的・技術的環境整備に向けた国際貢献
(2)世界的な情報通信インフラの構築、相互運用性・相互接続性の確保
(3)共同プロジェクトの実施
(4)ハイテク犯罪対策の推進

W.これからの進め方
(1)当面の目標 〜4つの目標〜
  [電子商取引普及、電子的な政府の実現、情報リテラシー向上、情報通信インフラ整備]
(2)関係省庁一体となった本基本方針の早急な実施
(3)フォローアップ
(4)基本方針の見直し

 
 

I.高度情報通信社会に向けた基本的な考え方

(1)高度情報通信社会の意義

  @高度情報通信社会の定義
 高度情報通信社会とは、人間の知的生産活動の所産である情報・知識の自由な創造、流通、共有化を実現し、生活・文化、産業・経済、自然・環境を全体として調和し得る新たな社会経済システムである。このシステムは、制度疲労を起こした従来の大量生産・大量消費を基礎とするシステムにとって代わり、「デジタル革命」とも言える変革の潮流を生み、経済フロンティアの拡大、高コスト構造の打破、活力ある地域社会の形成や真のゆとりと豊かさを実感できる国民生活等を実現するものである。

  A前基本方針策定時からの状況変化と改定の必要性
 ここ数年間の全世界的なインターネットの爆発的な普及、電子メールの活用、携帯電話をはじめとする携帯情報端末の普及、グローバルな移動通信システムの出現等に見られるように、前「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」策定時には想定し得なかったスピードで経済・社会の諸分野におけるネットワーク化が進展してきている。
 また、前「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」では触れられなかった電子商取引についても、数次の補正予算に基づく先導的な実証実験の実施や民間団体等によるガイドラインの策定等官民を挙げた取組みにより、本格的な実用化への気運が高まりを見せており、先進企業の中には、実際に電子商取引により利益を上げるところも出てきている。
 さらには、「行政情報化推進基本計画の改定について」(平成9年12月20日閣議決定)において、申請・届出等手続の電子化を原則として平成10年度末までに可能なものから行うことが決定され、また「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)において、平成10年度末までに原則としてすべての指定統計の調査結果について、行政から国民への電子的提供を可能とすることが決定される等、「電子政府」の実現に向けた取組みがここ数年で進展を示しているところである。
 このように、我々は今日、産業革命以降の「大量生産・大量消費」を至上命題とする経済社会から、「デジタル革命」による「情報の創造・流通」を基礎とする経済社会への移行、つまり新しい価値へのパラダイム・シフトをまさに目の当たりにしようとしている。
 このような変革期において、新たに生じてきた種々の政策課題への取り組み方を含めて我が国の高度情報通信社会の構築に向けた基本的な考え方と基本的な方向性を示す「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を真摯に見直し、前回策定時からの状況の変化を踏まえて新方針を内外に明確に示すこととした。この新方針の下、高度情報通信社会の構築を一層強力に推進する。

  B高度情報通信社会実現の効果
   i)経済構造改革の達成等
 高度情報通信社会の実現により、産業の生産性の向上、企業組織の改革、流通の合理化、仲介業務の効率化等がもたらされ、我が国経済の構造改革が推進される。
 また、情報通信ネットワークを通じたボーダーレスな最適化を目指す経済活動が発展することにより、全世界的な競争が促進され、我が国のみならず、地球規模での経済構造の変革が進展する。
  ii)真のゆとりと豊かさを実感できる国民生活
 高度情報通信社会の実現により、様々な社会コストの低減を通じ、国民生活全般にわたり、高コスト構造の是正による実質所得の増加、生活の利便性の向上による快適な暮らしの実現やストレスの低減、様々な取引の高速化・効率化等による余暇の創出等がもたらされる。
  iii)多様なライフスタイルの実現と新たなコミュニティの形成
 情報通信ネットワークの拡大等による新たな人間関係の形成等を通じ、従来の地理的な制約の枠を超えた新たなコミュニティの形成が促進されるとともに、在宅勤務やインターネットを通じた消費活動等、個人の価値観に応じた多様なライフスタイルが実現する。
  iv)次代の戦略産業である情報通信関連産業の発展
 電子商取引等の活用をはじめとして、経済活動や国民生活の様々な場面で情報化が進展し、旺盛な需要を背景とした情報通信関連技術の浸透が進む中で、情報通信産業が急速に拡大し、リーディング・インダストリーとしての役割を強めるとともに、情報通信関連技術を活用した様々な分野における新規産業が創出され、雇用の拡大がもたらされる。
  v)全国規模での社会構造の変化
 高度情報通信社会の実現により、物理的に移動することを必要とされる局面の減少、人口集積や規模の経済の優位性の低減等がもたらされ、東京圏をはじめとする大都市において過度に集積してきた人口、諸機能の地方への拡散、地域の自立的な発展が期待される。
  vi)国際化の一層の進展
 ネットワークを通じ、最適な条件を求めたボーダーレスの取引等が瞬時に行われることとなり、従来の社会・経済構造が大きく変貌を遂げ、また、様々な局面における国際的な関係が進展し、国際化の動きが加速化される。 

  C高度情報通信社会推進の一層の加速化の必要性
  i)経済構造改革等の強力な推進
 「デジタル革命」によるパラダイム・シフトが起きようとしている今日、「情報の創造・流通」が経済活動において重要であるという新しい価値観に基づき、我が国の経済構造や産業構造の改革を一刻も早く強力に推進することが必要である。情報通信の高度化を通じて産業・生活の効率化や活性化を図っていくことこそが、硬直的な産業構造の変革に当たっての重要な点であり、国を挙げて取組むべき課題である。仮にこれを怠るようなことがあれば、情報化により効率的な経済構造・産業構造への転換の進む米国をはじめとする諸外国に遅れをとり、新しい価値観の支配する21世紀において、中長期的な国際競争力の低下を招くことは必至である。
  ii)国際的なリーダーシップの発揮
 新しい価値観に基づく国際経済社会において中核を占めることになる電子商取引等の国際的なルール作りについて、米国と欧州が昨年基本政策を発表し、本年5月には日米政府間で電子商取引共同声明を発表し、さらには日本、米国、欧州の三極内での二国間協議やOECD、WTO、APEC等の多国(地域)間協議の場で活発な議論が行われる等、電子商取引等をめぐる国際的議論は急速に深化しつつある。我が国もこのような新時代のルール設定を積極的にリードしていかなければ、たちまち新ルールの下での落伍者となり、国際経済社会における従前のプレゼンスを失うことになりかねない。
  iii)新規産業の創出とそれによる雇用の創出
 昨今の米国の好景気と歴史的な低失業率の大きな部分は、革新的な情報通信関連技術の開発とそれを活用した創造的な新興企業に支えられており、我が国においても情報通信分野は新たなリーディング・インダストリーとして今後最も発展が期待される分野の一つである。また、情報通信関連技術の発達とその活用により、「デジタル革命」に対応したベンチャーなど新規産業の創出とそれによる雇用の創出が期待される。「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)にも述べられているように、平成13年度(2001年度)までの間に各種の必要な対応策のすべてを集中的に講ずることにより、民間の努力と相まって世界最高レベルまで我が国の情報通信を高度化することが重要である。
  iv)社会的な弱者への配慮・地理的な制約の克服
 高度情報通信社会を高齢者、身体障害者等に十分配慮した、人に優しい社会として早急に構築するため、これらの人々の自立や社会参加を容易にし、知的で文化的な生活を享受することができるよう誰でもいつでもどこでも使える、低廉で使い勝手のよいサービスや機器の普及に配慮すること等が必要である。

(2)高度情報通信社会実現のための行動原則

  @高度情報通信社会のあるべき姿
  i)誰もが情報通信高度化の便益を享受できる社会
 高度情報通信社会の最大の特徴は、シームレスな情報通信ネットワークを通じて、その先にある全ての情報をあたかも自分のところにあるかのように共有でき、また自分の情報をいつでもどこにでも迅速かつ的確に伝達できることにある。こうした便益を誰もが享受できる社会の実現を目指す。そのためにも、全国民を対象として、職場、教育・家庭などの場における情報リテラシーの向上を図る。また、通信料金のより一層の低廉化を目指す。
  ii)自由で安全な情報通信が確保される社会
 高度情報通信社会では、情報の価値が一層高まるとともに、その情報を前提に取引、生活等の広範な経済・社会活動が行われることになるため、現在以上に、情報通信についての安全性、信頼性の確保とプライバシーの保護が要求される。高度情報通信社会の脆弱性を克服するため、情報の自由な流通と民間の自由な活動の確保を大前提としつつ、情報通信に関する安全性、信頼性とプライバシーの確保に努める。併せて、国内の治安、防災、安全保障にも十分配慮する。
  iii)知的で多様なライフスタイル、真のゆとりと豊かさが実現される社会
 高度情報通信社会では、物理的、地理的な制約を克服し、求める情報を即時に入手したり、情報や仕事のやりとりをすることが可能となる。この結果、国民一人一人が知的な要求を満たすことが従来に比べて飛躍的に容易になるとともに、在宅勤務等の実現により多様なライフスタイルが可能になる。物質中心の豊かさから、真のゆとりと豊かさが実現される社会の構築を目指す。
  iv)地域に活力がもたらされる社会
 距離的障壁の克服を可能とする情報通信ネットワークは、中央と地方の情報ギャップを解消し、国土の均衡ある発展に資するとともに、地方の情報受発信能力を大きく向上させることができる。地理的、歴史的に多様な地方公共団体、地域住民、企業等の協力による地域情報化にも十分配慮することが必要である。
  v)国際的に円滑な情報の流通が実現される社会
 我が国として国際間の共同プロジェクト等の実施に協力することにより、情報通信の活用によっていかなる効用が生じるかを明確に示すことができる。また、開発途上国に対し、自らの有する情報通信に関する技術、ノウハウ等を積極的に提供していくことにより、世界的にバランスのとれた情報通信インフラの整備を目指す。

  Aあるべき高度情報通信社会を実現するための行動原則 〜3つの行動原則〜
  i)民間主導
 今日は技術革新のめまぐるしい時代であり、「デジタル革命」によりもたらされる新潮流の流れは速い。米国における情報通信関連分野の新興企業の躍進に見られるように、民間主体の自由な競争こそが、新たなビジネス環境等に速やかに対応し、こうした新潮流に追いつくことを可能にする。高度情報通信社会の構築は、公正有効競争の下、民間主導で進めることを原則とすべきである。
  ii)政府による環境整備
 こうした中で、政府の役割は民間活力を引き出す環境整備が基本となる。その際、政府は、情報通信関連技術の進歩が極めて速いこと、新たな技術の出現によってそれらを活用したビジネスや社会生活のあり方の可能性が多様な広がりを持つことに鑑み、法制度面での環境整備について、不必要な規制や制限を課し、これらの多様な可能性の実現の芽を摘むことがないように特に留意をしなければならない。また、仮に新たな規制等の関与を行う場合であっても、かかる関与は、明瞭、透明かつ必要最小限でなければならず、行政裁量の幅を無用に拡大したり、関係者にとって不確実性をもたらすものであってはならないことについては論を待たない。
 ただし、具体的にどの分野において、どのような政府の関与が妥当かについては、個々の分野毎に十分な議論が必要である。
  iii)国際的な合意形成に向けたイニシアティブの発揮
 政府は、今後情報通信ネットワークを通じて経済社会のグローバル化が一層進展していくことを踏まえ、国際機関や諸外国等との調整を行い、我が国の立場を生かしながら国際的な調和の確保や国際標準についての議論に積極的に取り組み、合意形成に向けてのイニシアティブを発揮していくことが重要である。 

(3)高度情報通信社会の構築に向けた官民の役割

  @民間部門の役割
 高度情報通信社会の構築に当たり、民間部門においては、情報通信関連技術の進歩の速さや多岐にわたる応用の可能性に対応するために、公正有効競争の下に創造性と主導性を発揮することが望まれる。
 具体的には、新たな情報通信関連技術の活用に伴い刻々と変化する市場のニーズを的確に捕捉し、これを満たす製品やサービスを機動的に提供するとともに、柔軟な発想の下に潜在的なニーズの顕在化を促す製品やサービスの開発に努め、市場にこれを迅速に提供することが求められる。
 また、情報通信関連技術の発展が非常に速いため、電子商取引に関するルールの形成やガイドラインの作成、情報通信関連技術のデファクト・スタンダードの形成に見られるように、市場で自律的に形成される規律が、従前政府が果たしてきた制度整備を迅速かつ有効に代替するケースもある。このため、民間部門が、こうしたルール形成において果たす役割は今後一層大きくなると考えられ、従来以上の主導性をもって事業活動を行っていくことが期待される。

  A政府の役割
 高度情報通信社会の構築に当たり、政府は、民間部門の自由な取組みが有効との基本認識の下、諸制度の柔軟な見直し、不必要な規制の緩和、公正有効競争条件の整備、基礎的・先端的な研究開発の推進、基盤整備に対する公的支援等、民間活力が適切に引き出されるような環境整備を実施していく。
 その際、政府としては、民間の努力や競争に任せているのみでは実現しがたい部分に集中して所要の措置を、情報通信分野が技術革新のめまぐるしい分野であることを踏まえつつ総合的・計画的に行うものとする。
 また、情報化において、ネットワークを利用した犯罪等不正行為への対策を実施するとともに地域間格差や高齢、身体の障害等に起因する個人間の格差を是正し、国民誰もが安心して高度情報通信社会の恩恵を受けられるように配慮することも重要である。
 政府は以上のような環境整備を行っていく一方で、情報通信関連産業の最大の需要家としての側面を有することを認識しなければならない。米国においては、長く政府部門が情報通信需要の先進的ユーザーとしての立場を務めている。我が国政府においても積極的に情報化の推進、情報通信関連調達の改善等に努めることにより、需要サイドの牽引を行うとともに、各省庁、地方公共団体等が連携して情報化による行政事務の効率化や行政サービスの向上を実現することにより、国民に対して情報化の意義を実体験として普及啓発していくことも重要である。
 なお、こうした施策の推進に当たっては、本基本方針に基づく情報化施策の具体的な内容を明確に国民に示すとともに、実施した措置の事後的評価を含めたフォローアップを行うことで透明性を高めることとする。

II.高度情報通信社会の実現に向けた課題と対応

 我が国として今後対応すべき具体的な政策課題と、講ずべき施策の基本的方向については、以下のとおりとする。

(1)電子商取引等推進のための環境整備
 本年6月に、高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会報告書「電子商取引等の推進に向けた日本の取組み」が最終的に取りまとめられ、今般同本部に報告されたことを受けて、政府としては、この報告書の提示した方向性に沿って、電子商取引等の推進に向けて積極的に環境整備を行っていく必要がある。

  @電子認証
 電子認証は、情報通信ネットワークを介してデータのやりとりをしている相手が真に本人であること、及びデータが改変されていないことを確認するためのものであり、電子商取引等の信頼性を確保する上で基本的な要素である。
 しかし、求められる認証のレベルや機能は取引形態によって千差万別であること、様々な認証方法や技術が急速に発達していること、また、本件に関する国際的議論も引き続き活発に行われていることから、取引当事者同士がその取引形態に応じて、必要な認証を自由に選択できるようにしつつ、公的関与のあり方も含め、認証システム全体のあり方について引き続き検討を行っていく必要がある。
 もちろん、電子認証の信頼性について判断材料となる情報が提供されることは重要であり、民間でのガイドラインの整備等による自主的な対応が促進されるべきである。
 政府としては、このような電子認証技術の発展やガイドラインの整備等の自主的取組みを促進するとともに、海外に法規制を導入する国がある場合にも、それが必要最小限であり、かつ、他国の認証を差別的に取り扱って国際電子商取引等の障壁となるようなものにならないよう働きかけていく必要がある。さらに、信頼できる電子認証の公正かつ中立な国際標準を確立する動きを積極的に支援していくとともに、商業登記制度など現行取引においても認証等の用に供されている公的制度に基礎を置く電子認証制度や電子公証制度の整備についても検討を行っていく必要がある。
 いわゆる電子署名については、手書きの署名や記名押印と少なくとも同等の法律効果を与えることとすべきであり、関係当事者の権利義務及び責任に関する基本的なルールの明確化を含め、そのための検討を進める必要がある。
 なお、UNCITRALにおいて1996年より行われているモデル法作成作業に引き続き積極的に参加するとともに、こうした国際的な議論との整合性にも十分留意する必要がある。

  Aプライバシー保護
 情報通信関連技術の発展により、電子化された情報を情報通信ネットワークを介して大量かつ迅速に処理することが可能となっており、また、蓄積、検索、利用、改竄も容易であることから、プライバシー保護の必要性が以前にも増して急速に高まっている。電子商取引等の発展には自由な情報流通が不可欠であるが、その前提として、プライバシーについては確実な保護が図られなければならない。
 しかし、個人情報の内容や用途、収集の方法は、業種業態毎に異なるため、基本的には、業種業態別に民間によるガイドラインの整備、登録・マーク付与制度の実施等の自主的対応が早急に推進されるべきである。一方、個人信用情報や医療情報等、機密性が高く、かつ、漏洩の場合の被害の大きい分野については、法規制等の公的関与が十分検討されるべきである。
 政府としては、民間による自主的取組みを促進するとともに、法律による規制も視野に入れた検討を行っていく必要がある。また、プライバシーの侵害に対する消費者の不安感を除去するため、事業者に対し個人情報の保護内容について消費者に十分な情報を提供するよう促すとともに、消費者相談窓口の充実に努める。こうした取組みにおいては、1980年に既に合意を得ているOECDプライバシー保護ガイドラインや、昨今OECD等で行われている国際的議論との整合性にも十分配慮する必要がある。

  B違法・有害コンテンツ対策
 違法・有害コンテンツの問題は、情報通信ネットワークの急速な普及により大量の情報が広範囲に流通し、居ながらにして様々な情報を即時に受発信できるようになった結果、一層大きな問題となってきている。これを放置することによって、ネットワークに対する社会的信頼性が失われ、電子商取引等の発展が阻害されるとともに、青少年に対する悪影響が生じることが懸念される。
 現行法でいうわいせつ物の頒布や名誉毀損に当たる違法なコンテンツの発信は、情報通信ネットワーク上でも当然違法であり、規制されなければならない。
違法ではないが青少年に悪影響を与える等の有害なコンテンツについては、新たに整備された法律による性的なコンテンツをインターネット等を用いて客に見せる営業の規制等のほかは、利用者(保護者等)の側がフィルタリング・システム等の技術的手段を使用することや民間の自主規制を基本とした対応を促進することとする。
 政府としては、違法コンテンツの取締の実効性を高め、上記の法律の適正な運用等に努めるとともに、フィルタリング・システム等技術の向上やネットワーク・プロバイダーの自主的なガイドライン作成の促進、さらには発信者・利用者双方の啓発等を図っていかなければならない。

  C消費者保護
 従来の商取引同様、電子商取引等においても消費者は知識や情報の偏在等により弱い立場に置かれることが多い。電子商取引等における消費者トラブルは近年増加しており、取引に関する十分かつ適切な情報の提供や、トラブルの未然防止措置・救済措置等透明で効果的な消費者保護策を整備することにより、消費者が従来の商取引と同水準の保護を得られるようにすべきである。また、消費者自身が適正な判断を行えるよう、消費者に対する教育及び啓発を行っていくべきである。
 従来の消費者保護法制が様々な取引実態や事業者による自主的対応等を基に構築されてきたことにかんがみれば、現行法制における解釈の明確化や先般、広告の適正表示の観点から強化された法律の適正な運用、苦情処理体制の整備と並行して、引き続き事業者によるガイドラインの整備等の自主的対応を促進し、また、必要に応じて法的制度の見直しを行うこと等についても引き続き検討していくべきである。さらに、取引が国境を容易に越えてしまうこと等の電子商取引等の特性に鑑み、OECD等においてガイドライン策定等に向けて行われている活発な議論に積極的に参加し、国際的整合性の確保や国際的な協力体制の確立に努める必要がある。
 なお、情報通信ネットワークを介して消費者に直接送信される宣伝・広告については、誇大広告・虚偽広告等の広告の内容自体の問題は基本的に既存の法的枠組みで対処されるべきであるが、宣伝・広告の一方的送り付けについては、広告審査、苦情処理に関する体制の整備やフィルタリング技術の開発・普及が促進されるべきである。

  Dセキュリティ・犯罪対策
 電子商取引等の発展のためには、その基盤インフラである情報通信ネットワークが、不正アクセスやコンピュータウィルス等の侵害的行為の脅威から守られ、安全性が確保されていることが極めて重要であり、このような侵害的行為に対しては、その的確な防止・検挙・訴追がなされるよう、法整備のあり方を含め、取締りの徹底方策について検討するべきである。
 政府としては、今後情報通信ネットワークにかかる新たな犯罪への対応に前向きに取組む必要があるが、このような情報通信ネットワーク上の犯罪行為においては、行為者の特定が事実上極めて困難であり、その取締りには限界があると考えられ、犯罪の発生自体を抑止することが重要であることから、犯罪の脅威を受ける側の防御措置の確立が肝要である。そのためには、これらの犯罪行為への対策の必要性に関する啓発はもとより、技術開発の促進や不正アクセス対策、暗号技術の不正利用対策等のセキュリティ対策について、ガイドラインの整備のほか、必要に応じた法的環境整備の検討を行っていく必要がある。なお、その際、1992年のOECD情報システムのセキュリティに関するガイドラインや昨年採択されたOECD暗号政策に関するガイドラインに定められた諸原則に従うべきことは言うまでもない。
 また、情報通信ネットワークを利用したマネー・ロンダリング等、情報通信ネットワーク固有ではない従来型の犯罪についても、その対策について、現実の商取引等についての規制との均衡に十分配慮しつつ、必要最小限の法的規制を視野に入れた検討を進めるべきである。

  E取引一般に関わる制度
 取引当事者間のルール設定は、従来の取引同様、私的自治を原則として当事者間において行われるべきである。ただし、取引当事者間によるルール設定の際に参照すべき電子商取引等における慣行等がまだ確立していない現時点においては、モデル約款やガイドラインは、法律関係を明確にし、取引についての不確実性を除去する点で特に有用であり、これらの策定にかかる取組みが促進されるべきである。
 また、電子商取引等は、対面・書面による意思表示を前提とした現行民商法が想定していない局面が考えられるため、既存の方式要件や、無権限取引、債権譲渡の第三者対抗要件等については、新たに検討を行って、ルールの明確化が図られなければならない。また、約款の効力や契約への取込みについても十分検討が行われる必要がある。ただし、取引の多様性と急速な技術進歩や、1996年採択されたUNCITRAL電子商取引モデル法等の国際的な議論との整合性にも十分配慮し、取引実態の蓄積を見極めつつ、電子商取引等の円滑な発展を阻害することがないように留意すべきである。

  F電子決済・電子マネー
 電子決済・電子マネーは、現在揺籃期にあり、未だ典型的な形態が確立しておらず、今後も様々な新たな形態が生じていくものと思われる。その意味で、民間部門の技術開発や創意工夫など自由活発な試みを促進することが当面重要となる。他方、利用者の保護と決済システムの安定性の確保は、電子決済・電子マネーが利用者からの信認を得て、発展するために不可欠の前提である。
 政府としては、この二つの要請のバランスを取りながら、当面、民間の動きを見守りつつ、この新たな分野について必要最小限の法的環境整備の検討を行っていく必要がある。
 具体的には、今後、電子マネー・電子決済にかかる公正な取引ルールと利用者保護のあり方、電子マネー発行体の適格性要件、電子マネー発行体の破綻時の対応等について、十分な検討を行う必要がある。

  G知的財産権
 電子化された情報はそもそも複製、改竄が容易であるとともに、情報通信ネットワークや大容量電子媒体の普及によって、特段資金も技術もない一般人でも容易にコンテンツを発信できる環境が整ってきている。電子商取引等の発展には、こうした情報技術の特性を踏まえた知的財産保護に関するルール作りが必要である。しかし、電子商取引等と関連する知的財産権問題においては、関係当事者間の利益の調整が複雑で、かつ、技術的解決が困難なものも多い。
 政府としては、1996年に採択された新条約など世界知的所有権機関(WIPO)における検討の成果を踏まえつつ、知的財産権法制の見直しを推進するとともに、その他関連法制度等も含めた幅広い観点から適切な知的財産保護のあり方を検討していくべきである。また、知的財産権の保護に資する電子透かし等無権限利用防止に関する技術や知的財産管理技術の開発を積極的に支援することも求められる。
 特に、著作権制度は、電子商取引等の発展に必要なコンテンツの質的・量的な充実を図る上で、必要不可欠な法的基盤であり、コンテンツの創作活動へのインセンティブを維持し、更に向上させるとともに、実際にソフトの利用が適切かつ円滑に行われるようにするために、著作物の利用をコントロールする措置等に関する望ましい制度上の対応や利用者のニーズに応じた円滑な権利処理に資する著作権権利情報の提供体制の整備等について早急に検討を進める。
 なお、電子商取引等の発展のためには、これを支える基盤技術の工業所有権の保護も不可欠である。

  Hドメインネーム
 ドメインネームはインターネットに接続されるホスト・コンピュータを表すインターネットにおける住所としての役割を有しており、インターネットを介した通信を行う上で、その重要性は日々高まっている。しかしながら、現状ではドメインネーム及びIPアドレスの不足、ドメインネームの国際的登録・管理の必要性の高まり、ドメインネームと商標に関する権利をめぐる紛争等、ドメインネームの抱える様々な課題が浮き彫りになってきている。
 政府としては、インターネット利用者の利便性を向上させるため、これらの課題の解決に向けた検討を進めていくが、その際、ドメインネームの登録、管理制度については、国際的に開かれ、公平で、かつ、市場原理に基づいたものとすべきである点に留意する。また、登録された商標権の侵害が生じないよう、ドメインネームの登録の際の商標権への配慮や苦情処理体制のあり方等の検討が必要である。

  I税
 電子商取引等の発達により、経済取引が複雑化・国際化し、誰が、いつ、どこで、どのような取引を、どれだけ行ったか、といった取引の実態を正確に捉えることが今後更に困難になっていくと考えられ、それに伴って、適正な課税のあり方を検討していく必要がある。
 電子商取引等への課税は、公平、中立、簡素であるとともに、電子商取引等が国際的規模で行われることから、国際的に見て二重課税や課税漏れがないよう、国際的整合性を確保することも重要である。こうした観点から、OECDにおける課税の基本的枠組に関する報告を踏まえた更なる検討等に向けて我が国としても努力していくべきである。

  J関税
 我が国においては、電子的に伝送されるコンテンツには関税がかかっていない。電子商取引における関税の取扱いについては、本年5月のWTO第2回閣僚会議において、来年の第3回閣僚会議までに包括的な検討を行うとともに、それまでの間、電子送信に関税を賦課していない現状を維持する内容の閣僚宣言が採択され、これを受けて9月に作業計画が策定されたところであるが、今後も引き続き、国際的な電子商取引等を促進する観点から、WTOの場等における具体的な議論に積極的に参加するべきである。その際には、WTO協定との関係を十分整理する必要がある。また例えば、各国の実務において、ソフトウェアがCD等の媒体に記録されて輸入される場合とインターネットを通じて伝送される場合とで、課税の取扱いについての整合性をどう考えるかといった点を含め、関税にかかる法的・実務的観点からの検討を早急に行う必要がある。

(2)公共分野の情報化

 [基本的な考え方]
 公共分野の情報化は、政府自身の情報化による行政サービスのコスト低減や国民の利便性の向上に資するものであり、社会経済全体の情報化を進める上でも重要な役割を担っている。また、政府自らがユーザとして先進的アプリケーションの導入を行うとともに、行政、教育、交通等公共サービスの基礎となる情報通信システムの関係省庁一体となった効率的な研究開発を行い、国民誰もが充実した公共サービスを享受できるようにすることが必要である。さらに今後、公共分野の情報化をより一層効果的なものとするためには、各省庁、地方公共団体等が連携して総合的・計画的に取組むことが必要である。

  @行政の情報化
 行政の情報化は、情報通信関連技術の成果を行政のあらゆる分野で活用し、行政の事務・事業及び組織を改革するものであり、その積極的な推進により、国民の立場に立った効率的で効果的な行政の実現を図るものである。
 現在、インターネットの急速な普及、電子商取引の実用化の動き等に見られる社会経済の情報化の進展に伴い、申請・届出等手続に係る国民負担軽減に対する要請が顕在化するとともに、行政と国民との間のコミュニケーションの活性化への期待が高まるなど、行政の情報化を取り巻く環境も急速に変化している。このような環境変化に的確に対応していくため、セキュリティの確保等に留意しつつ、「紙」による情報の管理から情報通信ネットワークを駆使した電子的な情報の管理へ移行し、21世紀初頭に高度に情報化された行政、すなわち「電子政府」の実現を目指す。
 このような観点から、行政の情報化については、「行政情報化推進基本計画の改定について」(平成9年12月20日閣議決定)に基づき、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。また、地方公共団体固有の事務・事業に係る行政の情報化については、「地方公共団体における行政の情報化の推進に関する指針」等を踏まえ、その一層の推進に努める。
○インターネット等の活用による統計や報告書等行政情報の電子的提供の拡充、タイムリーな提供、行政情報の所在案内システムの整備等による国民から行政情報へのアクセスを改善する。
○申請・届出手続に係る国民負担の軽減を図るため、手続の電子化、申請地制限の緩和、アクセスポイントの拡大を推進する。また、電子文書の原本性、受発信者の認証の仕組み、手数料の納付方法等の共通課題の早期解決を図る。
○各家庭・企業のパソコン又は身近な場所で各種の行政サービスを受けることができるようにする「ワンストップサービス」については、既存の公共施設である郵便局等も活用した実験を行うなど、制度的・技術的課題を解決しつつ段階的に実施する。
○電子商取引等国内外の情報化の進展に対応した調達手続、歳入歳出の電子化等、民間部門との整合性の取れた情報化を推進する。
○LAN、霞が関WANを活用した予算要求資料や公文書等の電子交換システム、総合的な文書管理システム等各種システムの整備を推進する。
○事務・事業の形態に応じ、情報システムの運営管理の外注化を積極的に行い、運営の簡素化・効率化・高度化を推進する。
○まちづくり、地域づくり等に関する都市計画情報等の総合的な提供や、住民の意見を円滑に聴取するための情報システムの整備を進める。
○住民基本台帳ネットワークシステムの構築や利用方策の検討等、国・地方公共団体を通じた総合的な行政の情報化を図る。
○公共事業の情報化において、設計図面、仕様書等の各種情報の電子化・標準化を図るとともに、電子調達システムや公共施設の維持管理システム等を導入することにより、公共工事の受発注者をはじめとする関係者において情報の交換・共有を可能とする環境を構築する。

  A文化・スポーツ分野の情報化
 国民の文化志向の高まりと多様化に対応するため、文化財、美術品、地域文化、舞台芸術等に関する情報がより身近に得られ、かつ国内外に提供・発信される環境を整備するとともに、近年のスポーツニーズの多様化・高度化に対応する環境整備を図る。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○地域の伝統文化や産業、歴史的遺産等に関するデータベースの整備や情報提供体制の充実を図る。
○国立のスポーツ科学関連施設の整備等を通じ、スポーツ科学に関する情報の収集・分析・提供を推進する。

  B研究分野の情報化(学術の情報化を含む)
 我が国の将来にわたる持続的経済発展を可能とする観点から、人類の知的資産形成のための基礎となる科学技術の振興のための基盤をさらに整備することが重要である。また、大学などの研究者に学術情報の迅速かつ的確な提供及び国内外への普及を図るため、学術情報基盤の整備を推進することが重要である。このため、研究分野における情報化を促進することにより、世界最高レベルの研究開発環境を整備・維持し、研究水準のより一層の向上を図る。また、先駆的な研究活動は、社会全般の情報化を促進し、高度情報通信社会を実現するための先導的役割を果たすことが期待される。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○研究機関、省庁、国の枠を超えた研究機関間を結ぶ研究情報ネットワーク及び大学等を接続する学術情報ネットワークの高度化、高速化を図るとともに、アジア太平洋地域のネットワーク資源を相互に有効活用するなど国際協力によるネットワークの構築、充実を図る。併せて、研究機関におけるコンピュータ等の研究情報基盤の整備・充実、大学の学内LANの高度化を引き続き推進する。また、テストベットとして超高速の研究開発用ネットワークの構築を図る。
○研究情報基盤の整備に併せて、ネットワークや高性能コンピュータの利用技術の高度化及び利用研究等を推進するなど、ハードウェアとソフトウェアのバランスの取れた発展を図る。
○ネットワークを流通するデータベース等の情報資源(コンテンツ)を質的・量的に充実するとともに、情報資源の積極的な発信を図りつつ、情報資源の所在を的確に案内して統合検索を可能とするほか、大学及び試験研究機関の図書館に電子図書館的機能を整備するなど情報資源の円滑な流通を促進する。
○科学技術会議の場を積極的に活用することにより、各省庁、各機関相互間の協調の下に連携協力を深める。
○研究分野の情報化に関する研究開発を抜本的に強化するとともに、情報通信ネットワークを活用した研究開発成果の普及を促進する。

  C保健・医療・福祉分野の情報化
 少子・高齢化の進展に対応し、国民の誰もが情報通信の便益を享受できる社会を実現するため、国民生活に密接に関連する保健・医療・福祉分野について積極的に情報通信関連技術を活用し、保健・医療・福祉分野のサービスの向上を図る。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○健康や安全に関する情報、各種サービスの利用に関する情報など保健医療福祉情報のネットワーク化を図り、地域における総合的できめ細かなサービスの提供体制を確保する。
○診療支援システムの充実やICカード等を活用したシステムの整備、普及、各分野間、施設間での情報交換を可能とするための標準化などにより保健医療福祉サービスの質の向上、効率化を図る。
○マルチメディアを活用し、遠隔医療、在宅福祉(介護等)での新しい保健医療福祉サービスへのニーズに対応する。また、そのために必要な技術開発を行う。
○高齢者・障害者が使いやすい情報通信関連機器・システムの開発等により、これらの人々に十分に配慮した、人に優しい情報バリアフリー環境の整備を推進する。
○国際機関における保健・医療情報等の標準化に向けた検討に対し、積極的に貢献する。

  D道路・交通・車両分野の情報化
 最先端の情報通信関連技術を活用して、道路と車両を一体のシステムとして構築し、渋滞、交通事故、環境の悪化などの道路交通問題の解決、物流の効率化、新たな産業の創出等幅広い社会経済効果が期待される高度道路交通システム(ITS)の推進を図る。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○既に実用化されている道路交通情報通信システム(VICS)について、情報提供サービスエリアの全国展開やシステムの高度化を推進する。
○自動料金収受システム、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化、公共交通の支援、商用車の効率化等について、高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想に基づき、ITSの情報通信関連技術等に関する研究開発・実証実験の実施や地域におけるITSの推進、ITSに関する国内外における標準化活動等を推進する。
○ITSについて、国際会議等における国際情報交換、国際標準化等の国際協力を積極的に推進する。

  E公共輸送分野の情報化
 情報通信関連技術を活用して、旅客や貨物の輸送に関連する分野において利便性、安全性、効率性等の向上を図る。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○ワイヤレスICカードを活用した汎用電子乗車券の導入を促進し、公共交通機関の利便性の向上を図る。
○旅客・貨物の移動に際し、必要かつ有益な情報を提供する情報ネットワークの整備等を推進する。
○港湾諸手続をEDI化するためのシステムを整備し、手続のペーパーレス化及びワンストップサービス化を図る。
○衛星を活用した航空衛星システムを整備し、航空管制処理能力の向上及びこれによる航空交通容量の拡大を図る。

  F防災・気象分野の情報化
 防災対策において情報の迅速な収集・伝達等を図り、国民が安心して暮らすことのできる社会を実現するため、国、地方公共団体、住民を結び付ける災害に強い高度な防災情報通信システムを構築する。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○衛星通信等を利用した災害時等の情報収集・提供のための情報通信システムの構築を推進する。また、それを活用して、気象や地震・津波等に関する情報を迅速に収集・解析し、ケーブルテレビ網、防災行政無線等と合わせて予・警報や地震・津波に関する防災気象情報等の的確な提供に努める。
○災害時の機動性を確保するため、総合的な防災情報通信システムの高度化を推進する。
○地域住民等と公共施設管理者との相互連絡による災害時の情報収集・提供のための防災管理システムの構築を図る。
○各種防災情報のデータベース化、公共施設管理の高度化のための光ファイバ及びその収容空間等の防災対策に資する基盤の整備を推進する。
○気象衛星システムの整備により気象観測等の充実を図る。

  G環境分野の情報化
 地球環境問題に関する情報の収集、解析、提供を促進するため、情報通信関連技術を活用した地球環境のモニタリング・予測、環境情報提供システムの開発・普及を推進する。
 このため、以下のような施策を総合的、計画的に推進する。
○情報通信関連技術を利用した地球環境モニタリング等の研究開発、導入、普及やシミュレーション技術による地球変動予測など地球環境に係る情報の収集・解析等のシステムの整備等を推進する。
○環境情報データベースの整備、環境情報を提供するための情報通信ネットワークの開発・導入・普及、情報提供装置等の基盤整備を強化する。

  H労働・雇用分野における情報化
 情報通信関連技術を活用して,国民へのタイムリーな求人・求職等の情報提供、効果的かつ効率的な職業能力開発、労働関係情報の総合的な提供を推進する。さらに、通勤負担の軽減、ゆとりある生活の実現、働きながら子育てをすることを希望する男女に対する環境の整備のため、情報通信を活用して自宅、職住近接のサテライトオフィス等で仕事を行うことを可能とするテレワークについて、官民問わず積極的に試行・導入して普及促進を図る。特に、就業対策及び経済社会の再活性化の観点から、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)等の支援を行う。
 このため、以下のような施策を総合的、計画的に推進する。
○公共職業安定機関において、情報通信ネットワークを活用して雇用情報等を効果的に提供するシステムを整備し、公共職業能力開発施設等において、マルチメディア関連機器や情報通信ネットワークを活用して、効果的かつ効率的な職業能力開発を推進する。
○データベースの整備等を通じた労働関係情報の総合的な提供を推進する。
○テレワークの普及促進を図るため実態調査、情報提供等に努めるとともに、共同利用センターの整備等の実施を推進する。

  I地理情報システム(GIS)の整備・相互利用の推進
 各種行政計画の策定、環境保全、救急医療、防災、福祉、危機管理等の幅広い分野において応用が期待されるGISについて、国、地方公共団体、民間の間の緊密な調整・連携を通じた整備・相互利用の推進を図る。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○GISの整備に不可欠な国土空間データ基盤(国土に係る基盤的なデータ)の整備を推進するとともに、データ整備における重複投資を回避するため、所在情報の検索を行うクリアリングハウスの整備を行う。
○GISによる地図データ等の提供、流通、相互利用を促進するため、個人情報保護、電子データの提供条件等、データの管理流通に関するルール等の検討を進める。
○インターネットの活用等情報通信システムを利用した分散型GISの開発等を推進する。

(3)情報通信の高度化のための諸制度の見直し
 情報通信関連技術の飛躍的な発展に伴い、現行法体系の中には、技術発展の現状に鑑み実行することが困難あるいは極めて非効率な規定が多く出現している。かかる問題意識から、前「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」策定以降、「高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会報告書」や「行政情報化推進基本計画」(平成9年12月20日閣議決定)、「規制緩和推進計画」(平成7年3月31日閣議決定)、「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月31日閣議決定)等において情報通信の高度化のための諸制度の見直しを検討・実施してきたところであるが、今後ともこれら諸制度の目的にも配意しつつ、ユーザーである国民の視点に立って見直しを推進する必要がある。
 そのため、以下の施策を引き続き推進する。
○書類の電子データによる保存を促進する。
○申告、申請手続の電子化・ペーパーレス化を図る。

(4)情報リテラシーの向上、人材育成、教育の情報化

  @全ての人の情報リテラシーの向上、特に高度情報通信社会の発展を支える人材の育成
 全ての人々が基礎的な情報活用能力を身につけることができる環境の整備に努めるとともに、高度情報通信社会の発展を支える専門的な人材の育成を推進する。特に、人材の育成にあたっては、コンピュータ等の情報機器の操作能力・活用能力を向上させるだけでなく、知的財産権制度やセキュリティ等の高度情報通信社会において重要性が高まっていくルールについて正しく理解させることも重要である。情報リテラシーの向上は、全国民を対象として達成すべき喫緊の課題であるため、以下の施策を含めて、さらに様々な角度から推進する。
○初等中等教育においては、学校教育活動全体で、児童生徒の発達段階に応じたコンピュータ等の情報機器及びインターネット等のネットワークの適切な活用の体験等を通じ、児童生徒の情報活用能力の向上を図る。高等教育においては、高度な情報利用により教育の充実に努める。
○全教員がコンピュータを授業で活用するための基礎的な知識・技術を習得できるよう、衛星通信の活用も含め研修の充実に努める。
○専門的な人材を育成するため、高等学校における職業学科及び大学、大学院、高等専門学校、専修学校等における情報関連の教育研究体制の一層の整備を図る。
○高水準の情報通信に関する技術者や先端的な研究者の育成・確保を図る。
○社会教育において、情報通信に関する継続的な学習機会を地域の住民に提供していく。その際、学習の機会の少ない主婦層等、家庭における情報活用能力の向上に配意する。こうした学習機会の充実を図るため、社会教育指導者等の養成段階における情報通信関連の学習内容の充実を図る。
○あらゆる分野の就業者が情報通信の高度化に対応できるような職業能力の開発・向上に努める。
○社会活動や企業活動を通じて情報通信に関する専門知識を有する高齢者等の知見の有効活用を図る。

  A学校教育等におけるインターネット活用などの情報環境の整備
 全人的な人格形成を目指した教育活動の中で、高度情報通信社会の進展に対応して、コンピュータ等の情報機器やインターネット等のネットワーク、データベース等を適切に活用することにより、子供一人一人の個性に合わせた学習機会を確保し、創造力、思考力、表現力の一層の涵養を図る。また、小・中学校等に、インターネット接続されたコンピュータを活用できる環境を整備するとともに、これらを活用した教育を推進するなど、情報教育の一層の充実を図ることによって、次代を担う人材を育成する。さらに遠隔教育やへき地教育における活用等を通じて、教育機会の拡大や教育方法の充実を図る。
 また、社会教育においても、衛星通信によるネットワーク等を効果的に活用することを通じて地域における多様な学習ニーズに対応するため学習機会の充実を図る。
 このため、以下のような施策を総合的、計画的に推進する。
○各種教育機関において、コンピュータ等の情報機器、ソフトウェア、インターネット等の整備を一層推進する。
○教育機関におけるインターネット利用料金の低廉化を促進するとともに、小・中学校等へのインターネット導入の着実な整備を推進する。
○情報教育のためのカリキュラムの整備を行う。
○高等教育機関の学内LANの整備及び大学間における衛星通信ネットワークの整備を推進する。
○図書館・博物館等社会教育施設におけるネットワーク構築、データベースの整備やマルチメディア化を通じた情報提供体制の充実を図る。

(5)ネットワークインフラの整備
 21世紀初頭に向けて、高度情報通信社会の構築に向けた動きを加速・推進するためには、情報・知識の創造・流通・共有化を支える高度な情報通信インフラを総体的に整備していくことが必要である。
 その際、「デジタル革命」を支える基盤として、次世代インターネット、光ファイバ網、グローバルな移動通信システム等の各種ネットワークインフラをシームレスに接続するとともに放送のデジタル化を図り、もって「トータルデジタルネットワーク」の構築を目指す。そのために所要の技術開発を積極的に進めていく。
 情報通信ネットワークインフラの整備に当たっては、低廉な利用料金の実現、地域間のアンバランスの是正、災害に対する脆弱性の克服、諸外国の動向に十分配意して促進する。基本的には公正有効競争の下で民間主導を原則とするが、将来需要を見越した巨額投資の短期的な立ち上げには、投資促進のための政策支援が必要である。併せて、災害の多い国土の特性に鑑み、地上回線と衛星回線といった多様なインフラの長所、短所を踏まえた幅広い整備が必要である。
 このため、以下のような施策を総合的・計画的に推進する。
○光ファイバ網の全国整備を2005年までに実現できるよう努力する。
 加入者系光ファイバ網を補完するものとして、2000年までに高速の加入者系無線アクセスシステムの実用化を推進する。
○民間主導による光ファイバ網整備の原則の下、事業者への負担軽減、道路、河川、下水道等の公共施設空間の一層の活用、公共施設管理用等の光ファイバ網及びその収容空間(情報BOX等)の民間事業者等による活用のための環境整備を図る。
○地震等に対する情報通信網のセキュリティ確保等のため、公的支援により電線類地中化を推進するとともに、安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備のため、電線共同溝等の整備を推進する。
○衛星や成層圏に滞空させた飛行船(成層圏プラットフォーム)を利用した次世代通信・放送システム実現のための研究開発を推進する。
○世界各国で利用でき、簡単な動画像の送受信も可能な次世代型の携帯電話など、「デジタル革命」に対応した新たな移動通信システムの導入を促進するために必要な研究開発並びに標準化を推進する。
○情報通信ネットワークの安全性、信頼性の向上を図る。また、人体や各種無線、電子、医療機器等に対して、安全かつ安心して電波を利用できるような環境の確保に努める。
○放送のデジタル化はサービスの多様化、高度化、電波の利用効率の向上をもたらすとともに大きな経済波及効果が期待されることから、全放送メディアのデジタル化を積極的に推進する。特に基幹的な放送メディアである地上放送については、2000年にはデジタル放送を開始できるよう制度整備を行うとともに、デジタル放送への円滑な全国的移行を図るための環境整備を推進する。また、地域の総合的な情報通信基盤として重要なケーブルテレビの普及・高度化を推進する。

(6)基礎的・先端的な研究開発
 政府は、民間事業者の創意工夫による新サービスの開発やネットワークインフラの整備を一層促進するため、基礎的・基盤的研究開発を推進するとともに、民間事業者が行うハードウェアやソフトウェアの先端的・独創的な研究開発における競争に歪みを生まないよう留意しつつ、効果的にインセンティブを与えていく必要がある。
 情報通信関連技術は、その応用範囲が広く、多くの分野で「道具」として用いられる。従って、単に情報通信関連産業の発展に寄与するものではなく、例えば電子商取引による産業・社会の情報化、シミュレーション技術による地球変動予測など他分野の研究の加速化等により、あらゆる産業や国民生活の高度化・効率化、地球環境問題の解明に貢献するものとして捉えることが重要である。
 このように、情報通信関連技術の研究開発は、世界全体の課題やフロンティアを切り開くとともに、産業・経済を牽引する原動力となることから、政府としてもその推進を継続的に図っていくことが不可欠である。
 特に近年、インターネットの普及・利用が一段と進む中で、高速・大容量・高品質の次世代インターネットの実現へ向けた取り組みが行われるなど、日進月歩の技術進展の中、技術の流れを先取りするような研究開発を推進していく必要性が高まっている。
 このような観点から、以下の点に留意しつつ必要な施策を講ずる。
○多岐にわたる研究開発主体から、更に多様な独創的技術・新技術を効果的に引き出すため、研究開発の推進について競争的視点を一層盛り込んでいくことが必要である。
○高度情報通信社会を現実のものとするためには、研究開発成果が事業化等を通じて社会に提供されることによって、産業・社会や国民生活の高度化・効率化を図るとともに、ベンチャー企業等の成長を通じた新規産業・新規雇用の創出につなげていく必要がある。
○研究開発成果の事業化等の円滑化のため、欧米諸国で行われているように、研究開発成果である知的財産権を開発者に帰属させることで事業化へと誘導することといった手法の有効性が認識されるべきである。
○大学・国研等の技術シーズと産業界側のニーズを相互に認識した上での、真に有効な産学官連携の促進を図る。
○研究開発における国際協力の促進を図る。
○研究開発用超高速ネットワークをテストベッドとして広く民間に開放し、21世紀の超高速ネットワークの中核となる技術の研究開発を推進する。

(7)ハイテク犯罪対策、セキュリティ対策、プライバシー対策

高度情報通信社会の進展に伴い国民の利便性が向上する反面、情報通信技術を悪用したハイテク犯罪や不正アクセスのような不正行為、情報通信分野におけるプライバシー侵害の事例が増加している。高度情報通信社会の実現のためには、こうしたいわば「影」の部分に対しても、産業界による安全対策・プライバシー保護措置の実施や情報の種類に応じた政府による法制度の整備を含めた適切な対処が必要である。特に、ハイテク犯罪対策は、サミットにおいて先進国間共通の重要な政策課題として確認され、情報通信分野におけるプライバシー保護についてもEUで指令が採択されるなど、国際的な認識も高まっているところである。
 こうした課題への対処としては、以下の対応を図る。
○コンピュータ・ウィルス対策や情報通信分野における暗号化技術の開発及び普及等を促進する。
○不正アクセスについては、所要の技術的課題及び必要な法制度の整備について早急に検討を進める。
○暗号技術の不正利用対策については、必要に応じた法的環境整備の検討を行う。
○民間事業者等における個人情報の管理の一層の適正化を図るため、個人情報の取扱いに係るガイドラインの内容の充実を図るとともに個人情報の保護レベルの国際的調和の在り方等について検討する。
○ハイテク犯罪に的確に対処するため、法執行機関等の体制の整備について早急に検討を進めるとともに、産業界との対話を促進する。
○個人情報の電子掲示板への書き込み等、ネットワーク上のプライバシー侵害等に関しては、侵害者を特定するため、発信者の匿名性を制限する法制度の整備について、早急に検討を進める。

(8)ソフトウェアの供給
我が国の社会システムにおいて、情報通信の更なる高度化を図っていく上では、ハードウェアの性能の向上と同時に、より優れたソフトウェアの潤沢な供給を確保することが必要不可欠である。また、社会の隅々にまで、情報通信が浸透していくことにより、現在以上に多様なソフトウェアを円滑に供給していくことも不可欠である。
 よって、我が国においても、高度かつ多様なソフトウェアを供給する層の厚いソフトウェア産業を育成していくことが必要である。
 以上のような認識に立って、以下のような施策を講じていくことが必要である。
○資金調達力の乏しいソフト系ベンチャー企業が円滑な資金調達を実現するための環境整備を図る。
○優れたソフトウェアが供給されるよう、適正な価格設定が可能となるような評価手法や所要の流通システムの構築等、ソフトウェア市場環境の整備を図る。
○多様なアプリケーション開発の基礎となる基盤的ソフトウェアに関する技術開発に積極的に取り組む。

(9)コンテンツの充実
 インターネットの爆発的な普及や放送のデジタル化によるチャンネル数の増大等、高度情報通信社会におけるメディアの多様化、大容量化の進展により、ネットワーク上を流通する情報資源(コンテンツ)を質的・量的に充実させる必要性が高まっている。
 コンテンツの質的・量的な充実を図るためには、制作者の権利及び既存の著作権が適切に保護され、その利用が円滑に行われる体制を整備し、既存のコンテンツの再利用、多面的な利用を促進する必要がある。
 また、多様なコンテンツの供給を確保する上では、マルチメディア人材教育などコンテンツ制作に資する環境の整備が必要である。
 さらに、青少年の健全な育成に配慮したコンテンツの制作・利用体制の整備が必要である。
 このような認識に立ち、以下のような施策を講じる。
○コンテンツの制作者が円滑な資金調達を実現するための環境整備を図る。
○コンテンツの制作や流通に関する情報提供や共同利用施設の充実、技術の研究開発等を通じた制作・流通環境の整備を図る。
○優れたコンテンツの円滑な流通を促進するため、コンテンツの制作・流通に係る契約関係、著作権処理の明確化等、適正な取引慣行の醸成を図るとともに、利用者のニーズに応じた有用な著作権権利情報の提供体制の整備を進めるほか、電子すかし技術等権利保護技術の開発と実用化を促進する。

(10)相互運用性・相互接続性の確保

 各種の機器・システムの相互運用性・相互接続性の確保は、企業、個人等のユーザーが情報通信ネットワークを用いて様々な事務・業務を効率的に行うための基盤となるものであり、その重要性は高まってきている。
 情報通信分野の標準化は、公的標準のみならず、民間レベルのフォーラムや個別企業など様々な主体によるいわゆるデファクト・スタンダードにより提供されるようになっており、その現状を踏まえた対応が重要となっている。
 こうした中で、ITUやISO等の国際的な標準化機関の動きと整合性を取りつつ、システムやサービスの提供者のみならず、ユーザーの利便性の向上の観点に立ち、オープンなインターフェイスの確保に重点を置くとともに、デファクト・スタンダードの迅速かつ円滑な公的標準化を支援する等、官民が協力して相互運用性・相互接続性の確保を図ることが必要である。
 このような観点から、以下のような施策を講ずる。
○技術開発速度に合わせた迅速かつタイムリーな国際標準化を促進する。
○国際標準化を支援するための研究開発を促進する。
○デファクトスタンダードについて、迅速な手続きでの公的標準化を促進する。
○公的標準の一層の開発と普及を図る。
○公的システムにおけるオープンなインターフェースの採用を推進する。

III. 国際的なイニシアティブの発揮

(1)電子商取引の制度的・技術的環境整備に向けた国際貢献

 各国における高度情報通信社会の構築に向けた取組は、世界情報インフラ(GII)構想の実現に向けた発展の段階を経て、世界情報社会(GIS)の構築に向けた動きに移行してきている。世界情報社会の中核をなす電子商取引は、本質的にグローバルなものであることから、国際的なルールづくり等の基盤形成に関する国際的な議論が急速に進められてきている。我が国は民間の活動を中心にした実証実験やルールづくりを通して多くの知見や技術を有しており、また、電子商取引等検討部会報告書「電子商取引等の推進に向けた日本の取組み」において電子商取引を推進するための方針が明確に示されたところである。我が国は、今後の様々な国際的議論の場において、我が国の文化的価値観や商慣行等を踏まえつつ、これらを積極的に紹介する等により国際的なルールづくりに可能な限りの貢献をすることが必要である。
 また、国際的なフォーラムにおける議論については、限られたリソースの中で最大の効果を得られるよう、各フォーラム間における作業の重複がないようにすることに注意を促しつつ、我が国として可能な限り貢献することが肝要である。主な個別の国際フォーラムにおける議論については、以下の点に注意して参画していくことが必要である。
 OECDにおいては、本年10月にオタワにおいて開催されたOECD電子商取引閣僚級会議において合意された特に6項目の重点課題、すなわちプライバシー保護、電子認証、消費者保護、課税、情報通信インフラへのアクセス及び電子商取引の社会経済的インパクトに関する問題についてOECDアクションプランにおける他の分野の作業に留意しつつ取組んでいくことが重要である。なお、電子署名等については、UNCITRALにおいて、電子商取引の法律的側面の議論を一層深化させることが必要である。その際、必要に応じ我が国の法的環境の特性を反映させるべく努力することが必要である。
 WTOにおいては、電子商取引の貿易的側面に関する議論が進められており、関税についての考え方を整理すると共に、電子的手段を活用した自由なモノの流通及びサービスの提供が可能な限り確保され、電子商取引を一層促進するような環境を構築すべく議論に参加していくべきである。
 APECは、その文化、言語、歴史等において極めて多様な国・地域の集合であり、経済社会の発展の程度もまちまちである。電子商取引に関しても、域内における普及促進に関する議論が行われているが、情報通信インフラの整備状況等に相当程度の差が見られ、その多様性を十分に尊重しながら議論を進めていくことが重要である。我が国は、アジア・太平洋地域の一員であることを十分に認識し、また、アジア市場の有するポテンシャルを十分に引き出すべく主導的な役割を果たすべき立場にあることを認識すべきであり、電子商取引に関する知見を積極的に紹介し、ボトム・アップに貢献すべきである。
 更に、これら多数国(地域)間における議論の他、必要に応じて二国間の議論を進めることも有効である。我が国は、本年5月、日米政府間の電子商取引共同声明を発表し、電子商取引を促進する上での基本原則、個別課題についての政策の具体的方向性について日米政府間の合意を示した。国際社会の枢要なプレーヤーである日米間における今後の共通の指標の合意は、両国間のみならず国際的議論にも大きな影響を及ぼしている。今後、我が国は、同宣言に明示された様々な考え方を国際的な議論に反映すべく努めていくとともに、他の諸外国・地域とも積極的に対話を行っていくことが必要である。

(2)世界的な情報通信インフラの構築、相互運用性・相互接続性の確保

  @世界的な情報通信インフラ構築に向けた動き
 持続的な経済成長の実現、雇用の拡大、地球的環境問題の対応等の課題を解決する上で、情報通信の果たす役割が極めて重要であるとの観点から、各国において高度情報通信社会に向けた取り組みが進められてきたところである。また、平成7年2月には、ブラッセルにおいて、G7の閣僚会議が開催され、グローバルな高度情報通信社会の実現のための基本原則や具体的な政策課題、国際的な共同プロジェクトの推進について合意がされており、高度情報通信社会に向けた取組を世界的な規模で実施しようとする世界情報インフラ構想に沿った動きが進められている。

  A全世界的な取組の必要性
 真の意味でのグローバルな高度情報通信社会を実現するためには、先進国のみならず開発途上国においても情報通信の高度化が進むことが重要であるが、そのためには先進国政府が、適切な協力策を講じていくことが必要である。また、多様な情報通信端末やネットワークを国際的に相互に接続し、さまざまな情報通信サービスを利用し得るよう、オープンでシームレスな情報通信ネットワークの構築を図る必要がある。このため、各国共通のグローバルなビジョンの下に、各国がその国内施策を展開させていくことも必要であり、その前提として、ITUやISOなど関係国際機関も含め、円滑な政策協調・情報交換体制の整備を進めていかなければならない。具体的には、民間投資の促進、競争原理の一層の導入、技術革新の成果を踏まえた規制の見直しに配慮する必要がある。特に、世界情報インフラの構築のために必要な標準化や、国際周波数調整、開発途上国支援等の課題への取り組みが行われているITUにおける活動へ積極的に参加することが必要である。また、ICカードの規格やその利用、多言語情報処理、暗号・認証技術やセキュリティ技術の評価に関するISOにおける標準化等の取り組みにも積極的に対応していかなければならない。我が国としても、国際間の共同プロジェクト等のデモンストレーションの実施に協力することにより、情報通信の活用によっていかなる効用が生じるかを明確に示すとともに、途上国に、自らの有する情報通信に関する技術、ノウハウ等を積極的に提供していくことにより、世界的にバランスのとれた情報通信インフラの整備を図る。
 また、相互運用性・相互接続性を確保するため、公的な国際標準化機関における活動やデファクト・スタンダードを作成するための国際的な活動へ積極的に参加するとともに、相互運用性・相互接続性の確保に関係した研究開発、実証実験等を進めていく必要がある。特に、アジア・太平洋地域においては、APT(アジア・太平洋電気通信共同体)を通じて相互運用性・相互接続性の確保のための標準化プログラムを主導する等の活動を推進していく。

(3)共同プロジェクトの実施

 国際的フォーラムにおけるルールづくりを主体にした議論の他、国際的な電子商取引や世界的な情報通信インフラの整備等を進展させるために、また、その実施上の問題点を抽出するために、G8やAPEC、APTにおいて様々な国際的な共同プロジェクトが実施されており、今後とも知見を蓄積しつつ、積極的に進めることが必要である。

(4)ハイテク犯罪対策の推進−G8による取組み

 ハイテク犯罪については、グローバルなコンピュータ・ネットワークの発展に伴い、その対策が一国だけでは完結せず、世界各国の協調が必要なことから、以下のような活動に取り組む。
○従来の法的な枠組みとの整合性に十分留意しつつ、国際的な捜査共助及び法執行機関間の協力のあり方に関する議論に積極的に参加する。
○高度情報通信社会の発展に資する形でのハイテク犯罪防止のため、産業界と政府との間での対話を進める。

IV.これからの進め方

(1)当面の目標
 21世紀の発展基盤として、かつ大きな経済効果を有するものとして期待されている情報通信の高度化を図ることは、一両年中に我が国経済を回復軌道に乗せるという内閣の方針、及び平成13年度(2001年度)までに各種対応策を集中的に講ずることによって世界最高レベルまで我が国の情報通信を高度化することを目指す、としている「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)に合致している。かかる観点から本基本方針で示した3つの行動原則を踏まえつつ、高度情報通信社会の構築を推進していくために特に重要な以下の4点を当面の目標として定める。
  @電子商取引の本格的な普及に向けて、解決すべき課題について必要な検討を行い、所要の措置を講ずる。
  A公共分野の情報化に向けて、政府として積極的な取組を行う。
  B高度情報通信社会の発展を支える人材の育成や情報リテラシーの向上を図る。
  C電子商取引等の普及や情報通信の高度化・多様化・パーソナル化へのニーズに対応した情報通信インフラの基盤整備を民間事業者の活力を生かして促進する。

(2)関係省庁一体となった本基本方針の早急な実施

 本「高度情報社会推進に向けた基本方針」に基づき、政府として具体的かつ明確な目標、スケジュールを示したアクション・プランを早急に作成する。その際、必要に応じ、関係省庁連絡会議による連携を図ること等により政府が一体となって所要の措置を早急に実施する。
 特に電子商取引については、「経済構造の改革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)において、「電子商取引の本格的な普及に向けて検討すべき制度的課題のすべてについて早急な検討を行い、その結果を踏まえて、平成13年(2001年)までに必要な措置を講ずる」こととされているところであるが、高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会報告書「電子商取引等の推進に向けた日本の取組み」も踏まえ、これを可能な限り前倒しして実施することとする。
 さらに、全国民的な情報リテラシーの向上を図ることは、経済活力、国際競争力を維持向上させていく上で不可欠の要素であり、また、多数の省庁が関係することから、政府一体として取組む。

(3)フォローアップ

 政府は、従前のとおり高度情報通信社会推進本部及び有識者会議において、以下の要領で本基本方針のフォローアップを実施していくこととする。
  @内閣官房内閣内政審議室は、アクション・プラン作成後年一回、その進捗状況に関する報告を受け、本基本方針に基づく情報化施策全体の実施状況を郵政省、通商産業省等の協力を得てとりまとめ、高度情報通信社会推進本部に報告する。
  A高度情報通信社会推進本部は、内閣官房内閣内政審議室からの報告を公表するとともに、有識者からの意見を踏まえ、所要の措置を講ずる。

(4)基本方針の見直し

 情報通信関連技術の急速な進展等に鑑み、遅くとも平成13年度(2001年度)末までには、本基本方針の更なる見直しを行うものとする。