資料2
I.基本理念
- 1.IT革命の歴史的意義
- (1) IT革命と知識創発型社会への移行
- (2) 新しい国家基盤の必要性
- 2.各国のIT革命への取り組みと日本の遅れ
- (1) 各国のIT国家戦略への取り組み
- (2) 我が国のIT革命への取り組みの遅れ
- 3.基本戦略
- (1) 国家戦略の必要性
- (2) 目指すべき社会
- (3) 4つの重点政策分野
U.重点政策分野
- 1.超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策
- (1) 基本的考え方
- (2) 目標
- (3) 推進すべき方策
- 超高速ネットワークインフラの整備及び競争の促進
- 情報格差の是正
- 研究開発の推進
- 国際インターネット網の整備
- 2.電子商取引ルールと新たな環境整備
- (1) 基本的考え方
- (2) 目標
- (3) 推進すべき方策
- 早急に実施すべき分野
- 2002年までに達成すべき分野
- 3.電子政府の実現
- (1) 基本的考え方
- (2) 目標
- (3) 推進すべき方策
- 行政(国・地方公共団体)内部の電子化
- 官民接点のオンライン化
- 行政情報のインターネット公開、利用促進
- 地方公共団体の取組み支援
- 規制・制度の改革
- 調達方式の見直し
- 4.人材育成の強化
- (1) 基本的考え方
- (2) 目標
- (3) 推進すべき方策
- 情報リテラシーの向上
- ITを指導する人材の育成
- IT技術者・研究者の育成
- コンテンツ・クリエイターの育成
我が国は、21世紀を迎えるにあたって、すべての国民が情報技術(IT)を積極的に活用し、かつその恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向けて、既存の制度、慣行、権益にしばられず、早急に革命的かつ現実的な対応を行わなければならない。超高速インターネット網の整備とインターネット常時接続の早期実現、電子商取引ルールの整備、電子政府の実現、新時代に向けた人材育成等を通じて、市場原理に基づき民間が最大限に活力を発揮できる環境を整備し、我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す。
コンピュータや通信技術の急速な発展とともに世界規模で進行するIT革命は、18世紀に英国で始まった産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらそうとしている。産業革命では、蒸気機関の発明を発端とする動力技術の進歩が世界を農業社会から工業社会に移行させ、個人、企業、国家の社会経済活動のあり方を一変させた。これに対して、インターネットを中心とするITの進歩は、情報流通の費用と時間を劇的に低下させ、密度の高い情報のやり取りを容易にすることにより、人と人との関係、人と組織との関係、人と社会との関係を一変させる。この結果、世界は知識の相互連鎖的な進化により高度な付加価値が生み出される知識創発型社会に急速に移行していくと考えられる。
(2)新しい国家基盤の必要性
我が国は、明治維新を機に農業社会から工業社会への移行を始め、第二次世界大戦の終戦を機に規格大量生産型の工業社会を急速に発展させることに成功した。その結果、維新以来100年余りの短い期間で、西欧社会に対する経済発展の遅れを取り戻し、米国に次ぐ経済大国に成長した。この経済発展の恩恵は広く国民に行き渡り、国民生活の豊かさが飛躍的に向上した。この成功の要因は、我が国が工業社会にふさわしい社会基盤の整備を素早く的確に実現できたことにあるといえるであろう。
我が国が引き続き経済的に繁栄し、国民全体の更に豊かな生活を実現するためには、情報と知識が付加価値の源泉となる新しい社会にふさわしい法制度や情報通信インフラなどの国家基盤を早急に確立する必要がある。しかしながら、革命の常として、工業社会から知識創発型社会への変化は不連続であり、その過程では将来の繁栄を実現するための痛みにも耐えなければならない。我々国民一人一人は、明治維新、終戦といった過去の時代への幕引きがない中で、自ら素早く社会構造の大変革を実行することが求められているといえる。
(1)各国のIT国家戦略への取り組み
産業革命に対する各国の対応が、その後の国家経済の繁栄を左右したが、同様のことがIT革命においてもいえる。即ち、知識創発のための環境整備をいかに行うかが、21世紀における各国の国際競争優位を決定付けることになる。米国はいうに及ばず、欧州やアジアの国々がIT基盤の構築を国家戦略として集中的に進めようとしているのは、そうした将来展望に立ってのことである。
(2)我が国のIT革命への取り組みの遅れ
それに対して我が国のIT革命への取り組みは大きな遅れをとっている。インターネットの普及率は、主要国の中で最低レベルにあり、アジア・太平洋地域においても決して先進国であるとはいえない。また、ITがビジネスや行政にどれほど浸透しているかという点から見ても、我が国の取り組みは遅れているといわざるを得ない。変化の速度が極めて速い中で、現在の遅れが将来取り返しのつかない競争力格差を生み出すことにつながることを我々は認識する必要がある。
こうした我が国のインターネット利用の遅れは、地域通信市場における通信事業の事実上の独占による高い通信料金と利用規制によるところが大きいと考えられる。また、インターネット網が低速で非効率な音声電話網の上に作られていること及び通信料金が従量制になっていることが、データ通信料金を高いものとする原因になっていた。1985年に通信事業の民営化が行われ、また最近になって外資規制の緩和などが行われたが、未だに数多くの規制や煩雑な手続きを必要とする規則が通信事業者間の公正かつ活発な競争を妨げている。これに加え、書面主義、対面主義による旧来の法律などもインターネット利用の妨げとなってきた。すなわち、インターネット普及の遅れの主要因は、制度的な問題にあったと考えられる。
我が国がこれまでの遅れを取り戻し、必要とするすべての国民に世界最先端のIT環境を提供し、更には世界への積極的な貢献を行っていくためには、必要とされる制度改革や施策を当面の5年間に緊急かつ集中的に実行していくことが求められる。そのためには、社会経済の構造改革の方向性と改革の道筋を具体的に描いた国家戦略を構築し、その構想を国民全体で共有することが重要である。
民間が自由で公正な競争を通じて様々な創意工夫を行い、IT革命の強力な原動力となることができるように、政府は縦割り行政を排し、国・地方が相互に連携して、市場原理に基づく開かれた市場が円滑に機能するような基盤整備を迅速に行う必要がある。
(2)目指すべき社会
我が国は、国家戦略を通じて、国民の持つ知識が相互に刺激し合うことによって様々な創造性を生み育てるような知識創発型の社会を目指す。ここで実現すべきことの第一は、すべての国民が情報リテラシー(*1)を備え、地理的・身体的・経済的制約等にとらわれず、自由かつ安全に豊富な知識と情報を交流し得ることである。第二は、自由で規律ある競争原理に基づき、常に多様で効率的な経済構造に向けた改革が推進されることである。そして第三は、世界中から知識と才能が集まり、世界で最も先端的な情報、技術、創造力が集積・発信されることによって、知識創発型社会の地球規模での進歩と発展に向けて積極的な国際貢献を行なうことである。
具体的には、次のような社会像を描くことができる。
(3)4つの重点政策分野
上記に描いたような知識創発型社会を実現するために、我が国は新しいIT国家基盤として、@超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策、A電子商取引と新たな環境整備、B電子政府の実現、C人材育成の強化、の4つの重点政策分野に集中的に取り組む必要がある。
我が国がIT革命を推進するためには、ハード、ソフト、コンテンツを同時並行的に、かつ飛躍的に発展させることが重要である。特に、市場競争原理に基づく超高速ネットワークインフラ整備と情報リテラシーの普及を含む人材育成は、IT革命の推進に不可欠な基盤となる。また、こうした基盤の上におけるITを活用した取引や活動を活性化するためには、電子政府の実現と、政府規制の緩和や新しいルール作りを通じた電子商取引の促進を図ることが必要となる。4つの重点政策分野の選定は、このような理由に基づくものである。
IT革命の実現のためには、個人、企業、国家といった各主体間の距離と時間を克服し大量の情報流通を可能とするネットワークインフラを国民が広く低廉な料金で利用できることが不可欠である。このネットワークインフラについては、@いつでも、どこでも、誰でも、A多種多様な選択肢やサービス、B安心、容易、安全確実、C安価、高速、効率的、D国内外無差別、グローバルな整合性、を基本要件としてその整備を推進する必要がある。
また、ネットワークインフラの整備については、民間が主導的役割を担うことを原則とし、政府は自由かつ公正な競争の促進、基礎的な研究開発等民間の活力が十分に発揮される環境を整備する。競争政策の遂行にあたっては、「利用者の利益の最大化」と「公正な競争の促進」を基本理念とし、通信その他の関連する法律や諸制度でこれにそぐわないものについては、抜本的な改正を直ちに行う必要がある。
なお、ネットワークインフラの整備を推進する過程においては、ベンチマーク手法(*3)を導入するなどして、我が国のインターネット環境を国際的に比較して常に世界最高水準にあるように努めることが必要である。
(2)目標
(3)推進すべき方策
上記目標を達成するために、政府は以下の方策を講ずる。
インターネット上での電子商取引は、@誰でも参加できる、A民間主導で市場が形成される、Bスピードが速い、C国境のない市場が形成されるなどのサイバー空間の特徴をもち、紙ベースで行われていた取引が電子化されることによる利点にとどまらず、これまで想像もできなかったような市場が形成され、新たな取引形態が生まれると考えられる。
そのためには、誰もが安心して参加できる制度基盤と市場ルールを整備し、サイバー空間を活性化するとともにその活力を維持するための制度を構築し、更には利用者の要求の変化に柔軟に対応するための制度を実現する必要がある。サイバー空間上での電子商取引を発展させ、普及させるためには、事前ルールは最小限とし、新たに発生した紛争を解決するためのメカニズムを構築する、いわゆる事後チェック型ルールへの転換が重要になる。また、消費者や事業者など、電子商取引の参加者への障壁を取り除くとともに、取引の透明性の確保や不正への的確な対処など、参加者の信頼を得るための方策も検討する必要がある。
また、電子商取引は、国境を越えたグローバルな取引をも容易に可能とすることから、国際間の商取引を円滑に行えるような仕組みを構築するとともに、我が国からの参加者がハンディキャップを背負うことのないよう国際的に整合性を持ったルール整備を行うことも重要である。
(2)目標
事業者間(B to B)及び事業者・消費者間(B to C)取引の市場規模は、2003年に1998年の約10倍(事業者間取引の市場規模が1998年の約10倍:70兆円程度に、また事業者・消費者間の取引が1998年の約50倍:3兆円程度)になるとの予測があるが、これを大幅に上回ることを目指す。
(3)推進すべき方策
上記目標を達成するために、政府は以下の方策を講ずる。
電子政府は、行政内部や行政と国民・事業者との間で書類ベース、対面ベースで行われている業務をオンライン化し、情報ネットワークを通じて省庁横断的、国・地方一体的に情報を瞬時に共有・活用する新たな行政を実現するものである。その実現にあたっては、行政の既存業務をそのままオンライン化するのではなく、IT化に向けた中長期にわたる計画的投資を行うとともに、業務改革、省庁横断的な類似業務・事業の整理及び制度・法令の見直し等を実施し、行政の簡素化・効率化、国民・事業者の負担の軽減を実現することが必要である。
これにより誰もが、国、地方公共団体が提供するすべてのサービスを時間的・地理的な制約なく活用することを可能とし、快適・便利な国民生活や産業活動の活性化を実現することになる。即ち、自宅や職場からインターネットを経由し、実質的にすべての行政手続の受付が24時間可能となり、国民や企業の利便性が飛躍的に向上する。
このように、電子政府は、ITがもたらす効果を日本社会全体で活用するための社会的基盤となるものである。
(2)目標
文書の電子化、ペーパーレス化及び情報ネットワークを通じた情報共有・活用に向けた業務改革を重点的に推進することにより、2003年度には、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現し、ひいては幅広い国民・事業者のIT化を促す。
(3)推進すべき方策
上記目標を達成するために、政府は、@明確な目標設定と進捗状況に対する評価・公表、柔軟な改定、A業務・制度の改革、B民間へのアウトソーシングの推進を3原則とし、下記を盛り込んだ実現計画を定める。その際、主要プロジェクトについて、運用費・開発費別の投資の見込み額及びその効用を国民・事業者に明らかにする。2003年度中に、計画の実施状況について評価・分析し、その後、新計画を策定・実施する。その際、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を中心に各省庁間の有機的な連携を確保する。
21世紀は、世界的な広がりの中で英知を競い合う時代であり、IT革命が進展する中で日本が産業競争力の強化と国民生活の利便性の向上を実現し、国際社会において確固たる地位を確立するには、人材という基盤が強固でなくてはならない。そのためには、第一に、国民全体がITの知識を身に付けITの便益を享受できるようになり、更に知的創造力・論理的思考力を高めることが必要である。第二に、国民の情報リテラシーの向上に向けた指導を行える人材を確保する必要がある。第三に、ITのフロンティアを開発する技術者・研究者及びコンテンツ・クリエイターを育成する必要がある。
(2)目標
2005年のインターネット個人普及率予測値の60%(平成12年版通信白書)を大幅に上回ることを目指し、高齢者、障害者等に配慮しつつ、すべての国民の情報リテラシ−の向上を図る。
小中高等学校及び大学のIT教育体制を強化するとともに、社会人全般に対する情報生涯教育の充実を図る。
IT関連の修士、博士号取得者を増加させ、国・大学・民間における高度なIT技術者・研究者を確保する。併せて、2005年までに3万人程度の優秀な外国人人材を受け入れ、米国水準を上回る高度なIT技術者・研究者を確保する。
(3)推進すべき方策
上記目標を達成するために、政府は以下の方策を講ずる。
(注)
| *1 | リテラシー:読み書きの能力。識字。転じて、ある分野に関する知識・能力。 |
| *2 | コンテンツ:情報の内容、中身。特に静止画や動画、音声等の素材を表す。 |
| *3 | ベンチマーク手法:ある基準と比較することによってそのギャップを埋め、現状を根本的に改革するための手法。アメリカのゼロックス社の経営評価で最初に導入された。 |
| *4 | M)bps:(Mega)bits per secondの略。bpsはデータ通信における情報の通信速度の単位であり、1秒間に通信することのできるビット数を表す。Mbpsは10 の6乗bps。 |
| *5 | 高速インターネットアクセス網:音楽データ等をスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、現時点ではxDSL、CATV、加入者系無線アクセスシステムを利用したインターネット網が代表的な例。 |
| *6 | 超高速インターネットアクセス網:映画等の大容量映像データでもスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、現時点では光ファイバーを利用したインターネット網が代表的な例。 |
| *7 | アクセス(系)(網):通信事業者の基幹回線ネットワークとユーザーを結ぶ回線網。 |
| *8 | アドレス空間:IPアドレス(ネットワークにおける通信相手の存在場所を識別するために使用する)が存在する論理的な空間のこと。現在のIPv4のIPアドレス空間は32ビット、IPv6になった場合128ビットに増える。 |
| *9 | セキュリティ:情報セキュリティ。情報通信を利用する上での安全性。 |
| *10 | IPv6:IPの次期規格の名称で、アドレス長が現行の32ビットから128ビットへ拡張されるなどの特徴がある。 |
| *11 | 支配的事業者:市場における(価格及び供給に関する)参加の条件に著しく影響を及ぼす能力を有する事業者。 |
| *12 | ハブ:活動等の中心・中枢。 |
| *13 | ノーアクションレター:官公庁の担当者が照会にかかる取引等が行われた場合にこれに対する処分を行わない旨表示し、照会者に回答する書面のこと。米国の証券取引委員会(SEC)などに例がある。 |
| *14 | 情報財契約:ソフトウェアやデジタルコンテンツなどの情報財についての取引契約。 |
| *15 | インターネットサービスプロバイダー:インターネットへの接続サービス等を提供する電気通信事業者。 |
| *16 | ミレニアムプロジェクト:平成11年12月に内閣総理大臣決定された、新しい千年紀を迎えるに当たっての国家プロジェクト。このうちの「教育の情報化」プロジェクトにおいては、2001年度までにすべての公立小中高等学校、盲・ろう・養護学校(約39,700校)がインターネットに接続できるようにする。また2005年度までに、全ての公立小中高等学校等が、各学級の授業においてコンピュータを活用できる環境の整備を行えるようにする。 |
| *17 | NPO: Nonprofit organizationの略。行政・企業とは別に社会的活動をする非営利の民間組織。 |
| *18 | インキュベーション:新規産業の育成・誘致のため、公的機関等がベンチャー企業に低コストで場所、機器、助成金などを提供するもの。 |