e-Japan重点計画 目次

7.横断的な課題

(1)研究開発の推進

  1. 基本的考え方
    情報通信分野は技術が発展の原動力となる分野であり、この分野における急速な技術の革新は、今後の高度情報通信ネットワーク社会の発展の基盤であり、日常生活まで含めた幅広い社会経済活動に大きな変革をもたらすとともに、情報通信産業のみならずあらゆる産業の変革を通じて我が国産業の国際競争力の強化をもたらす源泉となる。
    米国では、このような認識の下、IT革命という変革期において長期間にわたる情報通信分野に対する研究開発投資が継続された結果、情報通信分野において世界最高水準の技術力を有している。これに対し、我が国は、特定の個別分野を除いて、情報通信分野の技術水準に関しては米国に大きな遅れを取っており、これが情報通信分野における日米の競争力の格差につながっている。
    したがって、IT戦略本部と総合科学技術会議との連携の下、国、地方公共団体、大学、事業者等の相互の密接な連携を図りつつ、情報通信分野における創造性のある研究開発が推進されなければならない。
    なお、情報通信分野における研究開発の進展は、情報通信産業等の知識集約的な産業の創出・拡大のみならず、既存産業の革新のためにも重要であることから、情報通信分野固有の技術に加えて、製造技術との融合など、多分野の技術との融合的な研究開発を進めることも必要である。
    また、今後の市場拡大が期待される情報家電や情報端末についてのハード及びソフトの開発や標準獲得を戦略的に行うことが必要である。

  2. 研究開発の推進方策
    情報通信技術に対するニーズは多様であり、また情報通信分野では技術革新が急速に進展することから、 といった方策を通じて、情報通信分野における日本の技術力を戦略的に強化していくことが必要である。
    その際、政府の限られた人材、資金といった資源は、政府が中心的な役割を果たすことが期待されている分野へ、産学官の連携を強化しつつ集中的に投入されるべきである。
    産学官の連携の強化については、産学官の各セクターの役割分担や各研究機関の特性を踏まえつつ、産学官の有機的な連携を促進して、産業界と公的研究機関の共通認識の醸成や、産学官連携のための組織的取組の強化を図ることが必要である。
    研究開発システムの改革については、創造的な研究開発を展開していくため、特に競争的な研究開発環境を整備する必要がある。このため、研究者が研究機関の外部から競争的資金を獲得することに加え、研究機関の内部でも競争的な環境を醸成するなど、あらゆる局面で競争原理が働き、個人の能力が最大限に発揮されるシステムを構築することが必要である。更に、競争的な研究開発環境の実現と効果的・効率的な資源配分のためには、研究開発の評価システムについて、評価の公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映、評価に必要な資源の確保と評価体制の整備等が行われることが必要である。

  3. 重点分野
    情報通信分野において、今後政府として重点的に研究開発を進めていくべき分野としては、以下を指摘できる。
    高度情報通信ネットワーク社会の実現に必要な基盤技術としては、ネットワーク高度化技術、高度コンピューティング技術、ヒューマンインターフェース技術、更にはこれらの技術を支える共通基盤となるデバイス技術、ソフトウェア技術等が存在することから、これらの基盤技術の開発に重点をおくことが必要である。
    このうち、情報バリアフリー対策を含むデジタル・ディバイド是正のための研究開発や、公共分野の情報化に資する研究開発等、市場原理のみでは戦略的・効果的に開発し得ないものについては、国が率先する形で研究開発を推進することが必要である。
    なお、情報通信分野においては、研究開発の成果が直接新規事業の創出に結びつきやすいことから、民間企業を中心として、特に新規産業の創出の促進につながり得る技術開発を強化していくことが必要であり、国は、提案公募制度の充実など、そのための呼び水的な措置を講ずるべきである。

  4. IT21(情報通信技術21世紀計画)の推進
    ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)の一つであるIT21(情報通信技術21世紀計画)に掲げられている、2005年度までに全ての国民がインターネットを自由自在に活用して情報の入手等を安全・迅速・簡単に行える環境を創造するという目標の達成は、e-Japan戦略の目標達成のために不可欠であることから、研究開発を進めるに当たっては、IT21の着実な推進に特に留意することが必要である。
    IT21は二つの研究開発分野から構成されているが、インターネット分野については、世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成に必要な研究開発(2(3)@エ))の推進が重要である。そして、コンピューティング分野については、「キーボードといった特定のインターフェイスに縛られることなく、安心して、誰もが、高度な情報処理とネットワーク接続を簡単に行える新世代コンピューティングの実現」というIT21での目標達成のため、以下の分野における研究開発を進めることが重要である。

    ア)ソフトウェア(人に優しく快適な情報化を実現するコア・ソフトウェア技術)

    i)人に優しいマン・マシン・インターフェース、超並列・高速処理の実現等に資するコア・ソフトウェア技術

    ii)コンテンツ市場創造形のソフトウェア・コンテンツ技術

    イ)ハードウェア(高速・大容量のコンピュータの実現)

    i)計算処理能力を飛躍的に向上させるデバイス技術

    ii)大容量の記憶装置を実現する材料・加工技術

(2)デジタル・ディバイドの是正

 高度情報通信ネットワーク社会においては、すべての国民がインターネット等を容易にかつ主体的に利用し、個々の能力を創造的かつ最大限に発揮出来る環境が実現されることが重要である。このため、地理的な制約、年齢・身体的な条件等に起因する情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差の是正を積極的に図っていくことが必要である。
  1. 地理的情報格差の是正
    地理的な制約による情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、過疎地、離島等の条件不利地域において、情報通信基盤の整備や情報通信技術を活用した公共サービスの充実等を推進する。

    ア)地域情報通信ネットワーク基盤の公的整備推進
    過疎地等の条件不利地域におけるインターネットの利用を促進するため、市町村の学校などの公共施設へのインターネット導入を推進する。また、地方公共団体等の公的主体の行う高速公共ネットワーク整備、CATVインターネット整備等を支援し、これを利用した地域住民のインターネットアクセスの円滑化を図る。

    イ)民間事業者による情報通信基盤の整備に対する支援
    過疎地等の条件不利地域において民間事業者が行う加入者系光ファイバ網、DSL等の高速加入者アクセス網の整備に対する支援を充実することにより、条件不利地域における情報通信インフラ整備を推進する。

    ウ)情報通信技術を活用した公共サービスの充実
    遠隔医療の実現のため、病院等をネットワークで結んで画像診断等を行う。また、医療情報の標準化を推進するとともに、電子カルテ情報等を安全に共有・保存・伝送するシステムの開発を行う。
    地域における生涯学習機会の充実のため、全国の市町村の公民館、学校などにおいて、教育情報衛星通信ネットワークを通じて提供される大学講座等を受信するための設備の整備に対する支援を行う。

  2. 年齢・身体的な条件の克服
    年齢、身体的な条件により情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、高齢者や障害者等に配慮した情報提供等のバリアフリー化や情報通信関連機器・システム等の開発を推進する。

    ア)情報提供のバリアフリー化
    国がインターネットを通じて提供する情報が視覚障害者にも利用しやすいものとなるよう、官庁のホームページのバリアフリー化に取り組むほか、視覚障害者に配慮した官報のインターネット配信等を行う。
    また、視聴覚障害者が健常者と同様に放送サービスを享受できるよう、視聴覚障害者向け放送ソフトの制作技術の研究開発を実施するほか、字幕番組、解説番組及び手話番組の制作費に対する助成を行う。

    イ)公共空間のバリアフリー化
    高齢者、障害者が利用しやすい案内標識等を交差点等に設置するとともに、携帯端末等を活用した歩行円滑化のためのシステムの開発・普及を推進する。また、高齢者・障害者が鉄道等の公共交通機関を容易に利用できるようにするための旅客サービス支援システムを開発する。

    ウ)学校のバリアフリー化
    すべての盲・ろう・養護学校等の授業において、コンピュータを活用できる環境を、子どもたちの障害の状態に十分配慮しつつ整備する。また、入院中の児童生徒等に対してインターネット等を通じて学習機会の提供を行えるよう研究開発を行うとともに、盲学校点字情報ネットワークシステムの充実を図る。

    エ)高齢者・障害者のための情報通信関連機器・システムの開発等
    高齢者や障害者が容易に利用できる情報通信関連機器・システム(パソコン等)の開発・普及等を促進する。また、高齢者や障害者が簡単にインターネット利用等をできるようにする技術等の研究開発や、高齢者、障害者にとってアクセシブルなホームページの点検システムを制作し、実証実験を行うなど、情報バリアフリー化を推進する。

(3)社会経済構造の変化に伴う新たな課題への対応

  1. 雇用問題への対応
    IT革命の雇用面に与える影響としては、企業の情報化投資による業務の効率化等に伴い雇用削減が行われる可能性がある反面、IT関連ビジネスの成長により新たな雇用が生み出される等プラス効果も期待される。このため、IT関連も含めたベンチャー企業の創出・育成につき、資金調達及び人材確保を円滑化するための施策や、技術力を持ったベンチャー企業を創出するための施策を総合的に推進し、IT関連の良好な雇用機会の確保を図ることが必要である。さらに、IT革命の進展に伴い、職業能力に関するミスマッチの発生が懸念されることから、働く人すべてがIT化に対応できるようにするとともに、IT関連分野等における良好な雇用機会の創出と、それら雇用増が見込まれる分野への円滑な労働移動が図られるよう、以下に掲げる施策を推進し、雇用問題に的確かつ積極的に対応する。

    ア)ITに関する職業能力の開発

    i)IT職業能力習得機会の確保・提供
    ITに係る公共職業訓練について、離職者・在職者を含めた幅広い労働者の訓練ニーズに応じた多様なコースの整備・拡充を図る。また、公共職業能力開発施設等で、夜間・土日も含め、パソコンを活用したITに係る職務上必要な実践的・応用的能力の習得を支援するとともに、自宅や事業所でのIT職業能力習得機会を提供するため、教育訓練ソフトを配信するシステムを開発する。

    ii)IT化に対応した先導的な教育訓練コース・システムの開発
    高度な情報通信技術者やITを活用した新たな事業展開に対応できる人材育成に資する先導的・体系的な教育訓練コースや、公共職業能力開発施設間を結ぶ仮想ネットワークによる実地体験型等の新たな訓練システムを開発する。

    iii)IT分野の能力開発に係る情報提供・相談等
    全都道府県に「地域IT化能力開発支援センター」を整備し、IT化に対応した職業能力開発施策の展開に係る連絡調整や労働者等に対する情報提供・相談等を行う。

    iv)「中小企業IT化人材育成支援プログラム」の実施
    中小企業におけるIT訓練の実施を促進・支援するため、地域の事業主団体と連携を図り、企業のIT教育訓練を推進する者の育成機会の提供等、各企業のIT訓練体制の整備を支援する。

    イ)雇用機会の創出と円滑な労働移動の促進
    IT関連分野等における雇用機会の創出を支援するための施策を講ずる。また、それらの分野への円滑な労働移動を促進するため、事業主による在職中からの計画的な再就職援助等を行うこととし、このため、関係法令の改正案を国会に提出するなど、所要の制度整備を行う。

  2. その他の課題への対応
    IT革命が進展するに伴い、雇用問題以外にも、個人の孤立化や人間関係の希薄化、更には有害情報の氾濫等を通じた青少年の健全育成への影響や、ハイテク犯罪や違法情報の流通等の問題が生じることが懸念されることから、こうした問題についても的確かつ積極的に対応する。

    ア)青少年の健全育成
    個人の孤立化等に適切に対応するため、学校教育における情報教育の充実を図るほか、道徳教育や学校内外における体験活動の充実等を図る。また、青少年を取り巻く有害環境について関係団体が自主的な取り組みを行うよう促す。

    イ)違法行為、違法・有害情報の流通への対応
    ハイテク犯罪等の違法行為に対しては、既存の法令等を適用して厳正に対処するとともに、違法・有害情報を選別・格付けするための技術の開発や情報通信関係団体等における自主的なルールの策定を支援していく。

(4)国際的な協調及び貢献の推進

 インターネットは世界的規模で急速に普及していることから、高度情報通信ネットワーク社会の実現のためには、グローバルなインターネット網の確立に向けた国際的な協調と貢献に積極的に取り組んでいくことも必要である。
即ち、世界中でインターネットが利用されるようになってこそ、我が国におけるインターネット利用にも多大なメリットがもたらされることに鑑み、インターネット及びそれを活用した電子商取引等の普及の促進に向け、我が国としても、国際的な規格や準則等の整備や研究開発のための国際的な連携強化に積極的に取り組んでいく。
また、昨年の九州・沖縄サミットで採択されたIT憲章にも明記されているように、国際的なデジタル・ディバイドの解消は喫緊の課題となっていることから、アジアの一員であり、かつ世界第二の経済大国でもある我が国として、アジアを始めとした世界の開発途上地域に対する技術協力等の国際協力を積極的に進めていく。
更に、愛知県で開催される2005年日本国際博覧会を、本重点計画に盛り込まれた施策の成果の世界に対するデモンストレーションを総合的に行う場として活用することを検討する。

(5)高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の役割等

 本部長である内閣総理大臣のリーダーシップの下、今後とも、本重点計画に基づいて、IT革命の推進のために必要な施策の実施に政府一丸となって全力で取り組んでいく。
具体的には、本重点計画に掲げられた施策の着実な実行を確保するため、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、毎年春に本重点計画の見直しを行うとともに、毎年春と秋に施策の推進状況の調査を行い、その結果を随時公表することとする。また、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、引き続き、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策で重要なものの企画に関して審議し、その施策の実施を推進することとする。
また、政府は、本重点計画に盛り込まれた施策について、広報活動等を通じて、国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずる。